(原審・さいたま地方裁判所越谷支部平成12年(ワ)第849号管理費等請求事件(原審言渡日平成13年6月14日)) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要本件は,別紙物件目録記載の1棟の建物(以下「本件マンション」という。)の区分所有者全員をその構成員とする建物の区分所有等に関する法律(以下「建物区分所有法」という。)3条の区分所有者の団体(管理組合)である被控訴人が,本件マンション506号室(別紙物件目録記載の専有部分に係る区分所有権の目的たる建物。以下「本件建物」という。)の区分所有者である控訴人に対し,建物区分所有法8条及び被控訴人の管理規約(以下「本件管理規約」という。)26条に基づき,本件建物の前の区分所有者が延滞していた平成4年1月分から平成10年4月分まで合計173万9920円の管理費及び特別修繕費(以下「本件管理費等」という。)の支払を求めた事案である。 控訴人は,管理費等の請求債権は民法169条の定期給付債権に当たるので,本件管理費等のうち弁済期から5年を経過した分は時効消滅している,被控訴人が管理費等を永年にわたり前の区分所有者に対して請求しないでおいて控訴人に管理費等を請求するのは権利の濫用に当たるなどと主張して,被控訴人の請求を争った。 原判決は,管理費等の額が毎会計年度ごとに総会の決議で決定されることを理由として,管理費等は定期給付債権に当たらないと判断し,また,控訴人の権利濫用の主張も排斥して,被控訴人の請求を全部認容したので,控訴人が控訴をした。 1 前提となる事実(当事者間に争いがな ことを理由として,管理費等は定期給付債権に当たらないと判断し,また,控訴人の権利濫用の主張も排斥して,被控訴人の請求を全部認容したので,控訴人が控訴をした。 1 前提となる事実(当事者間に争いがない事実は証拠を掲記しない。)(1) 被控訴人は,本件マンションの区分所有者全員により構成される本件マンション及びその敷地(別紙物件目録記載の敷地権の目的たる土地)並びに付属施設の管理を行うことを目的とする建物区分所有法3条の管理組合である。 (2) 控訴人は,平成10年3月31日,訴外会社Aから,本件建物を買い受け,同年5月1日,所有権移転登記をした(甲1,乙8)。 (3) 控訴人が本件建物を買い受けた当時,下記のとおり合計173万9920円の本件管理費等の滞納分が存在したが,訴外会社Aは,控訴人に対し,本件管理費等については訴外会社Aが被控訴人との間で処理をする旨約した(甲2,乙8,9)。 記ア平成4年1月分管理費(不足分) 金 1万5340円修繕積立金(月額2210円) 金 2210円小計金 1万7550円イ平成4年2月分から平成5年8月分まで管理費(月額1万5700円) 金 29万8300円修繕積立金(月額2210円) 金 4万1990円小計金 34万0290円ウ平成5年9月分から平成9年12月分まで管理費(月額1万5700円) 金 小計金 34万0290円ウ平成5年9月分から平成9年12月分まで管理費(月額1万5700円) 金 81万6400円修繕積立金(月額8670円) 金 45万0840円小計金 126万7240円エ平成10年1月分から平成10年4月分まで管理費(月額1万5700円) 金 6万2800円修繕積立金(月額1万3010円) 金 5万2040円小計金 11万4840円合計金 173万9920円(4) 控訴人は,被控訴人の構成員であるところ,被控訴人の管理規約には,以下の定めが存在する(甲5)。 20条区分所有者は,対象物件について,その価値及び機能の維持増進を図るため,常に適正な管理を行うよう努めなければならない。 22条1項敷地及び共有部分等の管理については,管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし,バルコニー等の管理のうち,通常の使用に伴うものについては,専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。 25条1項区分所有者は,敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため,次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。 (1) 管理費(2) 特別修繕費25条2項管理費等の額については,各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出 るため,次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。 (1) 管理費(2) 特別修繕費25条2項管理費等の額については,各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。 25条3項管理費等の額は,毎会計年度の収支予算案により,総会の承認を受けるものとする。 26条管理組合が管理費等について有する債権は,区分所有者の包括承継人及び特定承継人に対しても行うことができる。 27条管理費は,次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。 (1) 管理員人件費(2) 公租公課(3) 共用設備の保守維持費及び運転費(4) 備品費,通信費その他の事務費(5) 共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料(6) 経常的な補修費(7) 清掃費,消毒費及びごみ処理費(8) 管理委託費(9) 管理組合の運営に要する費用(10) その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用41条1項管理組合の総会は,総組合員で組織する。 46条2項総会の議事は,出席組合員の議決権の過半数で決し,可否同数の場合には,議長の決するところによる。 47条次の各号に掲げる事項については,総会の決議を経なければならない。 (1) 収支決算及び事業報告(2) 収支予算及び事業報告(3) 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法(中略)(12) 組合管理部分に関する管理業務委託契約の締結(13) その他管理組合の業務に関する重要事項58条1項管理組合は,第25条に定める管理費等・・・について,組合員が各自開設する預金口座から自動振替の方法等により翌月分を毎月末日までに一括して受け入れる方法により徴収するものとする。ただし,臨時に要する費用として特別に徴収する場合には別に定めるところによる。 58条2項組合員が前項 ら自動振替の方法等により翌月分を毎月末日までに一括して受け入れる方法により徴収するものとする。ただし,臨時に要する費用として特別に徴収する場合には別に定めるところによる。 58条2項組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には,管理組合は,その未払金額について,総会の決議を経て遅延損害金を加算して,その組合員に対して請求することできる。 58条3項前項の遅延損害金は,第27条に定める費用に充当する。 59条1項収支決算の結果,管理費に余剰を生じた場合には,その余剰は翌年度における管理費に充当する。 59条2項管理費等に不足を生じた場合には,管理組合は組合員に対し第25条第2項に定める管理費等の負担割合により,その都度必要な金額の負担を求めることができる。 (5) 被控訴人は,通常,上記(4)の管理規約の定めに従い,管理費等につき次のような処理をしている(弁論の全趣旨)。 被控訴人は,理事会において,前年度の支出金額や支出項目その他前年度決算実績に基づいて,前年度と同様にするか変更する必要があるか等を勘案して管理費等の額の案を決定し,前年度の額を変更しない場合には,特別の審議をしないで決算終了後3か月以内に開催される(本件規約41条3項,54条)被控訴人の通常総会において予算案の承認決議を受ける形式で管理費等の額を決定し,収入支出のバランスが大きく崩れた場合には,同じく決算終了後3か月以内に開催される通常総会の決議をもって管理費等の額の改定を行う。 2 主たる争点と主たる争点に関する当事者の主張(1) 本件管理費等は時効消滅しているか。 ア控訴人の主張(ア) 本件管理費等は,民法169条の定期給付債権である。すなわち,管理費は,区分所有者であれば当然に負担しなければならないものであり,会計年度ごとに総会によって いるか。 ア控訴人の主張(ア) 本件管理費等は,民法169条の定期給付債権である。すなわち,管理費は,区分所有者であれば当然に負担しなければならないものであり,会計年度ごとに総会によって決定され,賦課されるものではないから,管理費は定期金債権であり,各月の管理費は,定期金債権の支分権たる定期給付債権であるので,民法169条の規定により弁済期から5年を経過することにより時効消滅するものである。 (イ) 被控訴人は,本件管理規約により,本件マンションの敷地及び共用部分等の管理をその責任と負担において行うとされている。また,被控訴人は,権利能力なき社団であるところ,社団の構成員である本件マンションの区分所有者は,被控訴人を維持すべく,その財政的,経済的負担を甘受しなければならないものであり,建物区分所有法においても本件管理規約においても,本件マンションの区分所有者は,敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため,共用部分の共有持分に応じて算出される管理費等を,翌月分を毎月末日までに支払うべきものとされている。 このような管理費等の性質に照らすと,本件管理費等は,社団としての管理組合である被控訴人とその構成員たる区分所有者間の規範ないしは基本的債権関係に基づき,1年以下の時期をもって定期に金銭を給付させることを目的とする債権であることが明らかである。 (ウ) なお,本件規約が,管理費等の具体的な額について総会の承認を受けるものとしたのは,本件規約自体で管理費等の具体的な金額を定めると管理費等の増減を適宜に行うことが困難となるために金額の決定を総会の承認を要するとしたものにすぎず,総会の承認を受けることによって初めて管理費等の債権債務が発生・成立するわけではない。 (エ) 上記のとおり,本件管理費等のうち,平成4年1月分から 額の決定を総会の承認を要するとしたものにすぎず,総会の承認を受けることによって初めて管理費等の債権債務が発生・成立するわけではない。 (エ) 上記のとおり,本件管理費等のうち,平成4年1月分から平成7年12月分までの管理費等合計104万0200円は,平成12年11月30日の経過をもってすでに時効により消滅している。 控訴人は,被控訴人に対し,平成13年3月1日の原審第1回口頭弁論期日において,上記消滅時効を援用するとの意思表示をした。 イ被控訴人の反論(ア) 管理費等は,管理業者への管理委託費,各種設備の保守点検費,水道光熱費,保険料,備品消耗品費,通信費有線放送等聴取料などの費用に充てられ,各区分所有者が区分所有権を有することに基づきその都度発生するものである。そのため,管理費等の額は,毎会計年度の収支予算案により,総会の承認を受けるものとされ,その収支予算は総会の決議を受けなければならないとされている(本件規約25条3項,47条(2))。したがって,区分所有者の管理費等の支払義務は,被控訴人の毎期の総会によって具体的に生じるものであり,管理費等の請求債権は,基本たる定期金債権の存在を前提とするものではない。そうすると,その消滅時効期間は,民法167条1項により10年である。 (イ) 控訴人は,本件管理費等が,社団としての管理組合である被控訴人とその構成員たる区分所有者間の規範ないしは基本的債権関係が,民法168条に規定する定期金債権であり,支分権たる本件管理費等請求債権の基本となる債権である旨主張するところ,そうであるとすれば,この基本となる債権は同条により消滅時効にかかることになるが,区分所有者は,区分所有建物を所有し共用部分の共有持分を有する限り,その時点での管理費等の納付義務を負うものであり,基本となる債権が消滅 ,この基本となる債権は同条により消滅時効にかかることになるが,区分所有者は,区分所有建物を所有し共用部分の共有持分を有する限り,その時点での管理費等の納付義務を負うものであり,基本となる債権が消滅時効にかかったため管理費等の納入義務を将来的にも全く負わない区分所有者が存在することになるなどのことは理論的に認め得ないものである。したがって,控訴人が主張する被控訴人とその構成員たる区分所有者間の規範ないしは基本的債権関係をもって民法168条に規定する定期金債権であるということはできないし,本件管理費等請求債権をその支分権であるということもできないのである。 (2) 被控訴人の請求は権利の濫用として許されないか。 ア控訴人の主張被控訴人は,控訴人に対し,訴外会社Aらが滞納した平成4年1月分から平成10年4月分まで6年分を超える多額の管理費等を請求しているが,このように,管理費を長期かつ多額に至るまで請求,回収しないでおき,控訴人に対して全額請求することは権利の濫用として許されるべきではない。 イ被控訴人の反論滞納金額は,本件建物の売買契約時に,重要事項説明書により必ず表示されるものであり,その滞納金額を前提として代金額が決定されるから,買主が不測又は不当な損害を被ることはない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の消滅時効及び権利濫用の抗弁はいずれも認めることができず,被控訴人の本件管理費等の請求は理由があるから認容すべきものと判断する。そのように判断する理由は,次のとおりである。 (1) 争点(1)(本件管理費等は時効消滅しているか)についてア民法169条は,「年又ハ之ヨリ短キ時期ヲ以テ定メタル金銭其他ノ物ノ給付ヲ目的トスル債権ハ5年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス」と規定している。これは,一般に定期給付債権といわれ, るか)についてア民法169条は,「年又ハ之ヨリ短キ時期ヲ以テ定メタル金銭其他ノ物ノ給付ヲ目的トスル債権ハ5年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス」と規定している。これは,一般に定期給付債権といわれ,基本権たる定期金債権(民法168条1項)から発生する支分権であって,かつその支分権の発生に要する期間が1年以下である債権を指すものといわれている。また,民法が定期給付債権につきこのような短期の消滅時効を定めたのは,定期給付債権の場合,例えば賃料,扶養料,給料等の典型例に見られるとおり,その弁済がないとたちまち債権者に支障を生じるのが常であって慣習上債権者が請求を怠ることが少なく債務者も長く弁済を怠ることが少ないからであるとともに,その額が通常多くないため支払がされた場合にもその受取証の保存が怠られがちで証拠方法の保全が困難であるため,短期消滅時効の制度を設けて債務者を救済することを目的としたものといわれている。 イ本件マンションの区分所有者は,本件規約により,被控訴人に対し,管理費等として翌月分を毎月末日までに一定の金銭を納付することを義務づけられているから,これらの管理費等が基本権たる定期金債権から発生する支分権としての性質を有するものであれば,管理費等の請求権は,定期給付債権として5年間の短期消滅時効の適用を受けると解されるので,管理費等が基本権たる定期金債権から発生する支分権としての性質を有するか否かについて検討する。 ウ管理費等は,本件マンションの共用部分の管理に関する費用であり,前記第2,1(4)のとおり,本件規約によれば,管理費としては,管理員人件費,公租公課,共用設備の保守維持及び運転費,備品費,通信費その他の事務費,共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料,経常的な補修費,清掃費,消毒費及びごみ処理費,管理委託費,管理 ,管理員人件費,公租公課,共用設備の保守維持及び運転費,備品費,通信費その他の事務費,共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料,経常的な補修費,清掃費,消毒費及びごみ処理費,管理委託費,管理組合の運営に要する費用,その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用が挙げられている。また,特別修繕費は,修繕積立金であり,経常的な大修繕又は不測の事故等の特別の事由により必要となる修繕等の費用である。 管理費は,抽象的には,本件マンションの区分所有者が,その地位に基づいて当然負担しなければならないものであるが,その性質上,その額は,共用部分の管理のため現実に要する費用を基準として定められるものと解される。また,特別修繕費も,毎月一定額を積み立てるのが通常であるとしても,特別の必要がある場合には,追加徴収等が必要となる場合が当然に考えられる。そこで,「管理費等の額については,各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。」(本件規約25条2項),「管理組合は・・・管理費等・・・について,組合員が各自開設する預金口座から自動振替の方法等により翌月分を毎月末日までに一括して受け入れる方法により徴収するものとする。」(本件規約58条1項本文)とされ,原則として毎月一定額の管理費等が徴収されることになっているが,当初策定された予算案では賄えないような臨時の出費等が生じた場合には,毎月徴収する管理費等とは別に,管理費等を臨時,特別に徴収することが予定されている(本件規約58条1項ただし書)のみならず,収支決算の結果,管理費に余剰を生じた場合には,その余剰は翌年度における管理費に充当され,管理費等に不足を生じた場合には,組合員に対し,共用部分の共有持分に応じて算出された割合により,その都度必要な金額の負担を求めることができる(本件規約59 その余剰は翌年度における管理費に充当され,管理費等に不足を生じた場合には,組合員に対し,共用部分の共有持分に応じて算出された割合により,その都度必要な金額の負担を求めることができる(本件規約59条1項,2項)とされる。このように,管理費等については,毎年,共用部分の管理のため現実に要する費用を徴収することが予定されているので,「管理費等の額は,毎会計年度の収支予算案により,総会の承認を受けるものとする。」(本件規約25条3項),収支予算及び事業計画は総会の決議を要する(本件規約47条(2))こととされ,徴収額が前年度と同様の場合には決算終了後3か月以内に開催される通常総会における予算の承認決議という形で管理費等の額が決定されるが,前年度の管理費等の収入支出のバランスが大きく崩れた場合は,決算終了後3か月以内に開催される通常総会において管理費等の額の改定の審議を行い,管理費等を改訂する慣行となっている。 このように,管理費等は,原則的には毎月一定額を支払う形になっているものの,共用部分の管理の必要に応じて,総会の決議によりその額が決定され,年単位でその増額,剰余金の管理費組み入れ等による減額等がされることが予定されていることを考慮すると,管理費等については,毎年要する経費の変化に応じてその年額(したがってその12分の1に当たる月額)が定まるものであって,どの年にもその額が一定となるものではないから,本件規約25条1項による区分所有者の管理組合(被控訴人)に対する管理費等の納入義務は,一定の金銭の支払を目的とする債務とはいえない。すなわち,被控訴人が区分所有者に対して同項の管理費等の納入を求めることができる権利は,民法169条の解釈適用上その存在が予定される基本権たる定期金債権の性質を具備するものとは認めがたく,それゆえ本件管理費の納付 人が区分所有者に対して同項の管理費等の納入を求めることができる権利は,民法169条の解釈適用上その存在が予定される基本権たる定期金債権の性質を具備するものとは認めがたく,それゆえ本件管理費の納付(支払)を請求する債権も基本権たる定期金債権から発生する支分権の性質を具備するものとはいえないのである。 エ次に,民法169条が定期給付債権につき短期消滅時効を定めた目的に照らして,本件管理費等の請求債権が定期給付債権に当たり,5年の消滅時効にかかるか否かを検討する。 管理費等は,上記ウのとおり,毎年,通常総会の決議によりその額が決定され,本件マンションの各区分所有者に各自の負担額が周知徹底されるものであって,賃料,扶養料,給料等の典型例に見られるような,その弁済がない場合に債権者に深刻な支障が直ちに生じるということにはならず,ある種の公共的な負担金に近い性質がある(したがって公共的精神に乏しい区分所有者にあっては管理費等の支払を怠り,延滞額が累積する例も生じやすい。)と認められるのであり,また,管理費等については,銀行口座からの自動振替の方法によることが一般化してきており,本件マンションにおいてもこの方法により管理費等を支払うことが規定されているのであり,管理費等については,「支払がされた場合にもその受取証の保存が怠られがちであって証拠方法の保全が困難である」ということも考えにくい。このように見てくると,民法169条が短期の消滅時効を定めた目的に照らすと,管理費等の支払について同条を適用し,短期の消滅時効にかからせる必要性は乏しく,かつ,適当でもないといわざるを得ない。特に,被控訴人のようなマンション管理組合の場合,管理費を滞納している区分所有者に対し,訴訟を提起するなどの方法を含め,未払の管理費等を請求するためには,建物区分所有法26条 ないといわざるを得ない。特に,被控訴人のようなマンション管理組合の場合,管理費を滞納している区分所有者に対し,訴訟を提起するなどの方法を含め,未払の管理費等を請求するためには,建物区分所有法26条4項,本件規約59条2項などの規定により,総会の決議を経ることを要し,かつ,本件でも実際に見られるように弁護士に委任することが必要となる例も多いため,そのような手続きを踏み,費用を投じて請求し,未収分の回収を図ることは,区分所有者多数の同意をとりまとめることを含め事実上かなりの困難を伴い,相当の時間を要することになるのであるから,管理費等の請求債権を短期の消滅時効にかからせることは,管理組合,ひいては遅滞なく管理費等を支払っている善良な区分所有者のいわれなき負担・犠牲において,管理費等を遅滞している区分所有者を不当に利することになるおそれがある。すなわち,これらの区分所有者が,管理費等の納付を怠りながら,他の善良な区分所有者の負担・犠牲のもとに現実に共用部分を使用し,又は利用することになることを考慮すると,その不当性は無視し得ないものがあるといわざるを得ない。 オ以上のように,本件管理費等の請求債権が基本権たる定期金債権から発生する支分権としての性質を有するものではなく,また,管理費等を短期消滅時効にかからしめることは民法169条の立法目的に必ずしも沿うものではなく,むしろ,管理費等につき同条の短期消滅時効の規定を適用するとすれば,不当な結果を招来するおそれがあることを考慮すると,管理費等については,同条の適用はなく,一般の債権として10年の消滅時効にかかるものというべきである。なお,控訴人引用の判例(最高裁判所平成5年9月10日第2小法廷判決・平成3年(オ)第878号・公刊物未搭載)は,区分所有建物の管理会社たる株式会社から区分所有者たる にかかるものというべきである。なお,控訴人引用の判例(最高裁判所平成5年9月10日第2小法廷判決・平成3年(オ)第878号・公刊物未搭載)は,区分所有建物の管理会社たる株式会社から区分所有者たる株式会社に対してその前主である株式会社の未払分につき提訴された管理費等請求事件の事案についてされた判断であり,本件と事案を異にし,本件に関する判例とすることは,適切でない。 そうすると,本件管理費等のうち平成4年1月分から平成7年12月分までの管理費等が弁済期から5年の経過により時効消滅したことを認めることはできず,控訴人の消滅時効の抗弁は理由がない。 (2) 争点(2)(被控訴人の請求は権利の濫用として許されないか)について控訴人は,被控訴人において永年前所有者が滞納した管理費等を控訴人に請求することは権利の濫用として許されない旨主張する。前記第2,1(2),(3)のとおり,控訴人は,訴外会社Aから本件建物を買い受ける際,訴外会社Aとの間で,本件管理費等については訴外会社Aが被控訴人との間で処理をする旨合意しているのであるが,これによれば,本件管理費等延滞の事実を知って本件建物を買い受けたことが明らかであり,かつ,控訴人と訴外会社Aとの間の本件管理費等の負担の合意を第三者たる被控訴人に対し主張し得ないことも容易に理解することができるし,また,そのように理解するべき事柄であるから,訴外会社Aが本件建物の売買契約における合意に反し延滞している本件管理費等の支払をしない場合(この場合には控訴人が訴外会社Aに対して然るべき責任追及をする途が残されている筈である。)には,控訴人が,建物区分所有法8条及び本件規約26条に基づき,被控訴人に対し本件管理費等を支払わなければならないことを当然予期し得たところといわなければならない。したがって,被控訴人が控訴 ある。)には,控訴人が,建物区分所有法8条及び本件規約26条に基づき,被控訴人に対し本件管理費等を支払わなければならないことを当然予期し得たところといわなければならない。したがって,被控訴人が控訴人に対し訴外会社A等が延滞していた本件管理費等の支払を請求することは,権利の濫用とは認められず,控訴人の権利濫用の主張は,筋違いの論難というほかなく,採用の限りでない。 2 よって,被控訴人の本訴請求は全部理由があり認容すべきところ,これと同旨の原判決は正当であり,本件控訴は,理由がないから棄却することとし,控訴費用の負担につき民事訴訟法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第9民事部裁判長裁判官雛形要松裁判官小林正裁判官萩原秀紀物件目録(1棟の建物の表示)所在草加市a町b番地c建物の番号 Bマンション構造鉄筋コンクリート造陸屋根6階建床面積 1階 537・36平方メートル2階 605・66平方メートル3階 605・66平方メートル4階 473・83平方メートル5階 417・51平方メートル6階 162・54平方メートル(専有部分の建物の表示)家屋番号 a町b番cのd種類居宅構造鉄筋コンクリート造2階建床面積 5階部分 53・97平方メートル6階部分 番号 a町b番cのd種類居宅構造鉄筋コンクリート造2階建床面積 5階部分 53・97平方メートル6階部分 26・12平方メートル(敷地権の目的たる土地の表示)土地の符号所在及び地番 草加市a町b番c地目宅地地積 1435・77平方メートル
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