主文 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。事実 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の事実上の主張ならびに証拠の関係は、以下に付加するもののほか原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。(控訴人)一本件株式の発行は商法二八〇条の三の二の規定に違反する無効のものではない。すなわち本件増資前の株主は、被控訴人、A、B、C、D、E、Fの七名であつたところ、被控訴人に対しては増資について事前の相談をし本人自らよく事情を知つており、また当時病気療養中であつたことから同人に対しては通知をしなかつたことに相当の理由があり、また本件の実質的株主は被控訴人およびAであつて他の株主は名義上のものにすぎないからこれらの者に対して通知、公告を欠いたとしても被控訴人の新株引受権を害したことにならないから本件新株の発行は無効ではない。二本件株金の払込みは会社資金を流用したものではない。もつともGの場合は金一〇万円のうち金五万円は会社資金から立替えてもらつたが、同人はこれを昭和四四年五月八日会社に返済している。(被控訴人)本件新株発行当時の株主が控訴人主張のとおりであることを認める。(証拠関係)(省略) 理由 一請求原因第一、二項の各事実は当事者間に争いない。二成立に争いない甲第四号証の一ないし五、同第五号証、証人Gの証言、被控訴本人(但し後記措信しない部分を除く)および原審ならびに当審における控訴会社代表者本人(但し後記措信しない部分を除く)尋問の結果を総合すれば、つぎの事実が認められる。号証、証人Gの証言、被控訴本人(但し後記措信しない部分を除く)および原審ならびに当審における控訴会社代表者本人(但し後記措信しない部分を除く)尋問の結果を総合すれば、つぎの事実が認められる。 の一ないし五、同第五号証、証人Gの証言、被控訴本人(但し後記措信しない部分を除く)および原審ならびに当審における控訴会社代表者本人(但し後記措信しない部分を除く)尋問の結果を総合すれば、つぎの事実が認められる。号証、証人Gの証言、被控訴本人(但し後記措信しない部分を除く)および原審ならびに当審における控訴会社代表者本人(但し後記措信しない部分を除く)尋問の結果を総合すれば、つぎの事実が認められる。被控訴人は昭和四二年四月二〇日Aらと控訴会社を設立し、代表取締役に、右Aは取締役にそれぞれ就任し、被控訴人は外交を主として担当、右Aは内にあつて被控訴人から控訴会社代表者印を預つて同会社の経理事務などを担当してきたものであること、しかしながら昭和四四年二月ころ増資の必要が生じたので被控訴人が資金を調達してきて増資をすることとなつたが同人が病に倒れたために資金の調達ができなかつたこと、そこで右Aはやむを得ず昭和四四年三月一五日ころ当時控訴会社の代表取締役であつた被控訴人には無断で、同人名義を冒用して同年四月三〇日を払込期日とする額面株式一、〇〇〇株(発行価額五〇〇円)を発行することとし、同年四月三〇日うち四〇〇株を右Aが、うち各二〇〇株をG及びHが、うち各一〇〇株をI及びJがそれぞれ引受け、同人ら名義をもつて株式の払込みがなされていること(もつとも右Gの払込金一〇万円のうち五万円は同人が一時借入金名義でその頃控訴会社の資金のうちから流用したが、その後一、二ケ月のうちに返済した。)が認められる。右認定に反する被控訴本人および原審並に当審における控訴会社代表者各尋問の結果は措信せず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。三しかして右新株発行について、新株発行に関する取締役会の議決を経ていないことは当事者間に争がないけれども、この場合における取締役会の議決なるものは会社の内部意思決定に止まるから取引安全の見地を考慮すれば、その議決の欠缺という違法の故をもつて新株発行を直ちに無効ならしめることは相当でない。(最高裁判所昭和三六年三月三日判決民 議決なるものは会社の内部意思決定に止まるから取引安全の見地を考慮すれば、その議決の欠缺という違法の故をもつて新株発行を直ちに無効ならしめることは相当でない。(最高裁判所昭和三六年三月三日判決民集一五巻三号六四五頁)但し、このことはあくまでも外部的には会社を代表する正当な権限を有する者によつてその新株発行の手続が会社の行為として適法に履賎されたことを前提とする。 (最高裁判所昭和三六年三月三日判決民 議決なるものは会社の内部意思決定に止まるから取引安全の見地を考慮すれば、その議決の欠缺という違法の故をもつて新株発行を直ちに無効ならしめることは相当でない。(最高裁判所昭和三六年三月三日判決民集一五巻三号六四五頁)但し、このことはあくまでも外部的には会社を代表する正当な権限を有する者によつてその新株発行の手続が会社の行為として適法に履賎されたことを前提とする。しかるに前段認定のように本件新株発行手続は、控訴会社の代表取締役であつた被控訴人には無断で同人名義を冒用した平取締役のAによつて履賎されたのであるから、外部に対する関係で有効な新株発行手続が履まれているとはいえないのであつて、この点において既に本件新株発行はこれを無効であると断ぜざるを得ない。<要旨>のみならず本件新株発行について新株発行事項の公告または株主に対する通知がなされていないことは当</要旨>事者間に争がなく、この欠缺もまた本件の新株発行を無効ならしめるものである。けだしこの通知公告を欠くときは株主の新株発行差止請求権を不当に奪うことになるからである。控訴会社は控訴会社の実質的株主は被控訴人とAだけであつて他の数名の者は名義上の株主であるに過ぎないし、また被控訴人に対しては増資について事前に相談し被控訴本人自からよく事情承知していたから本件新株発行については公告または通知を要しないという。しかしたとえ名義上の株主にすぎないものであつても、いやしくも法律上株主の地位にある者の法律上の権利義務はこれを全く無視することはできないし、またたとえ新株発行の公告または通知は事前にその発行事項を承知していた株主に対してはその必要性がないと解し得るとしても、そのためにはその株主において、予め商法二八〇条ノ三ノ二に定める各公示事項について具体的に承知せしめられていることを要し その発行事項を承知していた株主に対してはその必要性がないと解し得るとしても、そのためにはその株主において、予め商法二八〇条ノ三ノ二に定める各公示事項について具体的に承知せしめられていることを要し、単に抽象的にその増資の必要性ないし計画について知らされていたというだけでは公告または通知の欠缺を正当ならしめる理由としては不充分であると解すべきところ、原審における証人Gの証言および原審における被控訴人本人、原審ならびに当審における控訴会社代表者の各尋問の結果によれば被控訴人は本件新株発行について予め或る程度抽象的には控訴会社の増資の必要性ないし計画について知らされていたところがある事実はこれを認めることができるけれども、それ以上に前記法条の公示事項について具体的に、すなわち新株発行の種類発行数等について具体的に知らしめられていた事実はこれを認めるに足りないところである。 よび原審における被控訴人本人、原審ならびに当審における控訴会社代表者の各尋問の結果によれば被控訴人は本件新株発行について予め或る程度抽象的には控訴会社の増資の必要性ないし計画について知らされていたところがある事実はこれを認めることができるけれども、それ以上に前記法条の公示事項について具体的に、すなわち新株発行の種類発行数等について具体的に知らしめられていた事実はこれを認めるに足りないところである。そうであるとすれば本件新株発行に関する公告または通知の欠缺を正当化せしめるものとして控訴会社の主張するところはこれを採用することができない。以上の理由によつて結局本件新株発行はこれを無効とすべくこれが無効であることの確認を求める本訴請求はこれを正当として認容すべきである。四してみれば、これと同趣旨の原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴用の負担につき民訴法八九条、九五条を適用して、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官菅野啓藏裁判官渡辺忠之裁判官中平健吉)
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