平成28年12月20日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成28年(ワ)第15029号特許権侵害行為差止請求事件口頭弁論終結日平成28年11月17日判決 原告株式会社ホウショウEG 原告有限会社モグラ研究所 原告スピーダーレンタル株式会社 原告株式会社ノアテック 原告有限会社向陽 上記5名訴訟代理人弁護士柴田肇 中川英俊 中川彩子 由田恭子 岩﨑大輔 島幹彦 藤本佳大 杉下龍輔 三和田健介 西田京平同訴訟代理人弁理士井川浩文 被告株式会社サンリツ 同訴訟代理人弁護士鍋谷博志同訴訟代理人弁理士宮田信道 主文 原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙装置目録記載の装置(以下「被告装置」という。)を使用してはならない。 2 被告は、被告装置を使用して別紙方法目録記載の工事方法(以下「被告方法」という。)を実施してはならない。 第2 事案の概要 本件は、発明の名称を「雨水浸透坑掘削装置,雨水浸透管敷設工法および雨水浸透構造体」とする特許権(以下「本件特許権1」という。),「雨水浸透坑掘削装置」とする特許権(以下「本件特許権2」という。)及び「連結装置およびこれを使用した雨水浸透坑掘削装置」とする特許権(以下「本件特許権3」という。)を有 本件特許権1」という。),「雨水浸透坑掘削装置」とする特許権(以下「本件特許権2」という。)及び「連結装置およびこれを使用した雨水浸透坑掘削装置」とする特許権(以下「本件特許権3」という。)を有する原告らが,被告に対し,被告による被告装置及び被告方法の使用が本件特許権1~3の侵害に当たると主張して,特許法100条1項に基づく被告装置及び被告方法の使用の差止めを求める事案である。 - 3 - 1 前提事実(当事者間に争いがない事実及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)当事者ア原告株式会社ホウショウEGは油圧機器の製造販売等を業とする株式会社,原告有限会社モグラ研究所は土木工事に関する機械器具等の企画,製造等を業とする有限会社,原告スピーダーレンタル株式会社は土木,建築に関する機械器具等の企画,製造等を業とする株式会社,原告株式会社ノアテックは水処理剤の開発,製造等を業とする株式会社,原告有限会社向陽は石油製品の卸,小売等を業とする有限会社である。 イ被告は,土木,建築工事用資材の製造及び販売等を業とする株式会社である。 原告らの特許権ア原告らは,本件特許権1~3の特許権者である(以下,番号に従って,その特許を「本件特許1」,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書1」などという。)。 本件特許権1特許番号第4465029号出願日平成21年7月14日(特願2009-165829)登録日平成22年2月26日 本件特許権2特許番号第4648991号出願日平成22年8月2日(特願2010-173960)登録日平成22年12月17日 本件特許権3特許番号第4693940号出願日平成22年11月25日(特願2010-262821 平成22年8月2日(特願2010-173960)登録日平成22年12月17日 本件特許権3特許番号第4693940号出願日平成22年11月25日(特願2010-262821)- 4 -登録日平成23年3月4日イ本件特許権1の特許請求の範囲請求項1及び7,本件特許権2の特許請求の範囲請求項1並びに本件特許権3の特許請求の範囲請求項7の記載は次のとおりである(以下,それぞれに係る発明を「本件発明1①」,「本件発明1⑦」,「本件発明2」及び「本件発明3」という。)。 本件発明1①「敷設すべき雨水浸透管を挿通できる程度の内径を有する金属製管体と,この金属製管体の内部で回転可能なオーガスクリュとを同時に圧入して,上記雨水浸透管を敷設するための雨水浸透坑を設ける装置であって,上記金属製管体が挿通できる貫通孔を有する基台と,この基台に立設された油圧ジャッキと,この油圧ジャッキに支持されて昇降可能なスライダと,このスライダに支持されつつ金属製管体を保持する保持手段と,上記金属製管体の上部に支持されて上記オーガスクリュを回転させるモータとを備えたことを特徴とする雨水浸透坑掘削装置。」 本件発明1⑦「請求項1ないし6のいずれか1項に記載の雨水浸透坑掘削装置を使用する雨水浸透管敷設工法であって,予め金属製管体およびオーガスクリュを油圧ジャッキのストローク数回分に合わせた長さに構成し,雨水浸透管を埋設すべき街渠ますの上部開口部周辺に前記基台を設置し,上記金属製管体を前記保持手段で保持するとともに,該金属製管体の内部にオーガスクリュを配置し,上記金属製管体の上端に前記モータを設置するとともに,該モータの駆動軸を上記オーガスクリュの回 金属製管体を前記保持手段で保持するとともに,該金属製管体の内部にオーガスクリュを配置し,上記金属製管体の上端に前記モータを設置するとともに,該モータの駆動軸を上記オーガスクリュの回転軸に接続し,上記オーガスクリュを回転させつつ,上記スライダを下降させること- 5 -により金属製管体およびオーガスクリュを同時に下降させて,街渠ますの底部を貫通させ,かつ,該金属製管体およびオーガスクリュを地中に圧入し,所定の下降終了時に,前記保持手段による金属製管体の保持を解除し,かつ,上記モータをオーガスクリュから取り外したうえで,上記スライダを上昇させ,既に圧入された金属製管体およびオーガスクリュの上端に,同種の金属製管体およびオーガスクリュを継ぎ足し,保持手段による金属製管体の保持ならびにモータの該金属製管体の上端への設置およびオーガスクリュとの接続の後,再び金属製管体およびオーガスクリュを圧入し,上記操作を繰り返し,予定する深さまで金属製管体およびオーガスクリュを圧入した後,オーガスクリュを撤去し,残余の金属製管体の内部に雨水浸透管を挿入し,この雨水浸透管の内部に交換可能な内部フィルタを充填した後,金属製管体を撤去してなることを特徴とする雨水浸透管敷設工法。」 本件発明2「雨水浸透管を挿通できる程度の内径を有する円管体と,この円管体の内部で回転可能なオーガスクリュとを同時に圧入して,上記雨水浸透管を敷設するための雨水浸透坑を設ける掘削装置であって,油圧発生装置を搭載するクローラ型の走行体と,この走行体に突設された支持アームと,この支持アームに支持されるスライド基部と,このスライド基部に内蔵された第一のシリンダ部材と,この第一のシリンダ部材の一端に支 置を搭載するクローラ型の走行体と,この走行体に突設された支持アームと,この支持アームに支持されるスライド基部と,このスライド基部に内蔵された第一のシリンダ部材と,この第一のシリンダ部材の一端に支持されて進退可能に設けられ,上記スライド基部に係合されて上記進退方向が規制されるフレーム構造体と,このフレーム構造体に内蔵された第二のシリンダ部材と,この第二のシリンダ部材の一端に支持されて進退可能に設けられ,上記フレーム構造体に係合されて上記進退方向が規制さ- 6 -れるスライダと,このスライダの表面に突設された平面部と,この平面部に保持されて上記オーガスクリュを回転させる回転駆動体と,この回転駆動体の駆動軸周辺に配置され,上記円管体を保持する円管体保持部とを備えたことを特徴とする雨水浸透坑掘削装置。」 本件発明3「雨水浸透管を挿通できる程度の内径を有する円管体と,この円管体の内部で回転駆動されるオーガスクリュとを同時に圧入して,上記雨水浸透管を埋設するための雨水浸透坑を設ける雨水浸透坑掘削装置であって,請求項1ないし6のいずれか1項に記載の連結装置によって,穴掘建柱車のブーム先端に設けられた回転駆動体に上記円管体およびオーガスクリュが装着されたことを特徴とする雨水浸透坑掘削装置。」なお,本件特許権3の特許請求の範囲請求項1の記載は,以下のとおりである。 「穴掘建柱車のブーム先端に設けられた回転駆動体に,オーガスクリュおよびこれを包囲する円管体を装着するための連結装置であって,上記回転駆動体によって回転駆動される駆動軸とオーガスクリュとの中間に介在され,該駆動軸とオーガスクリュとを着脱可能に支持する駆動連結部材と,上記回転駆動体の周辺に装着されるホルダ部と,このホルダ部に支持され,かつ側面部に排土孔を有する排土 オーガスクリュとの中間に介在され,該駆動軸とオーガスクリュとを着脱可能に支持する駆動連結部材と,上記回転駆動体の周辺に装着されるホルダ部と,このホルダ部に支持され,かつ側面部に排土孔を有する排土用スペーサと,この排土用スペーサに連結され,かつ上記円管体の一端を着脱可能に支持する円管体アダプタとを備えたことを特徴とする連結装置。」ウ本件発明1①,1⑦,2及び3は,それぞれ以下の構成要件に分説される(以下,それぞれの構成要件を「構成要件1A」などという。)。 本件発明1①1A 敷設すべき雨水浸透管を挿通できる程度の内径を有する金属製管体と,この金属製管体の内部で回転可能なオーガスクリュとを同時- 7 -に圧入して,上記雨水浸透管を敷設するための雨水浸透坑を設ける装置であって,1B 上記金属製管体が挿通できる貫通孔を有する基台と,1C この基台に立設された油圧ジャッキと,1D この油圧ジャッキに支持されて昇降可能なスライダと,1E このスライダに支持されつつ金属製管体を保持する保持手段と,1F 上記金属製管体の上部に支持されて上記オーガスクリュを回転させるモータとを備えた1G ことを特徴とする雨水浸透坑掘削装置。 本件発明1⑦1H 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の雨水浸透坑掘削装置を使用する雨水浸透管敷設工法であって,1I 予め金属製管体およびオーガスクリュを油圧ジャッキのストローク数回分に合わせた長さに構成し,1J 雨水浸透管を埋設すべき街渠ますの上部開口部周辺に前記基台を設置し,1K 上記金属製管体を前記保持手段で保持するとともに,該金属製管体の内部にオーガスクリュを配置し,1L 上記金属製管体の上端に前記モータを設置するとともに,該モータの駆動軸を上記オ 設置し,1K 上記金属製管体を前記保持手段で保持するとともに,該金属製管体の内部にオーガスクリュを配置し,1L 上記金属製管体の上端に前記モータを設置するとともに,該モータの駆動軸を上記オーガスクリュの回転軸に接続し,1M 上記オーガスクリュを回転させつつ,上記スライダを下降させることにより金属製管体およびオーガスクリュを同時に下降させて,街渠ますの底部を貫通させ,かつ,該金属製管体およびオーガスクリュを地中に圧入し,1N 所定の下降終了時に,前記保持手段による金属製管体の保持を解除し,かつ,上記モータをオーガスクリュから取り外したうえで,- 8 -上記スライダを上昇させ,1O 既に圧入された金属製管体およびオーガスクリュの上端に,同種の金属製管体およびオーガスクリュを継ぎ足し,保持手段による金属製管体の保持ならびにモータの該金属製管体の上端への設置およびオーガスクリュとの接続の後,再び金属製管体およびオーガスクリュを圧入し,1P 上記操作を繰り返し,予定する深さまで金属製管体およびオーガスクリュを圧入した後,オーガスクリュを撤去し,1Q 残余の金属製管体の内部に雨水浸透管を挿入し,この雨水浸透管の内部に交換可能な内部フィルタを充填した後,金属製管体を撤去してなる1R ことを特徴とする雨水浸透管敷設工法。 本件発明22A 雨水浸透管を挿通できる程度の内径を有する円管体と,この円管体の内部で回転可能なオーガスクリュとを同時に圧入して,上記雨水浸透管を敷設するための雨水浸透坑を設ける掘削装置であって,2B 油圧発生装置を搭載するクローラ型の走行体と,2C この走行体に突設された支持アームと,2D この支持アームに支持されるスライド基部と,2E このスライド基部に内蔵された第一の て,2B 油圧発生装置を搭載するクローラ型の走行体と,2C この走行体に突設された支持アームと,2D この支持アームに支持されるスライド基部と,2E このスライド基部に内蔵された第一のシリンダ部材と,2F この第一のシリンダ部材の一端に支持されて進退可能に設けられ,上記スライド基部に係合されて上記進退方向が規制されるフレーム構造体と,2G このフレーム構造体に内蔵された第二のシリンダ部材と,2H この第二のシリンダ部材の一端に支持されて進退可能に設けられ,上記フレーム構造体に係合されて上記進退方向が規制されるス- 9 -ライダと,2I このスライダの表面に突設された平面部と,2J この平面部に保持されて上記オーガスクリュを回転させる回転駆動体と,2K この回転駆動体の駆動軸周辺に配置され,上記円管体を保持する円管体保持部とを備えた2L ことを特徴とする雨水浸透坑掘削装置。 本件発明33A 雨水浸透管を挿通できる程度の内径を有する円管体と,この円管体の内部で回転駆動されるオーガスクリュとを同時に圧入して,上記雨水浸透管を埋設するための雨水浸透坑を設ける雨水浸透坑掘削装置であって,3B 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の連結装置によって,穴掘建柱車のブーム先端に設けられた回転駆動体に上記円管体およびオーガスクリュが装着された3C ことを特徴とする雨水浸透坑掘削装置。 3D 穴掘建柱車のブーム先端に設けられた回転駆動体に,オーガスクリュおよびこれを包囲する円管体を装着するための連結装置であって,3E 上記回転駆動体によって回転駆動される駆動軸とオーガスクリュとの中間に介在され,該駆動軸とオーガスクリュとを着脱可能に支持する駆動連結部材と,3F 上記回転駆動体の周辺 装置であって,3E 上記回転駆動体によって回転駆動される駆動軸とオーガスクリュとの中間に介在され,該駆動軸とオーガスクリュとを着脱可能に支持する駆動連結部材と,3F 上記回転駆動体の周辺に装着されるホルダ部と,3G このホルダ部に支持され,かつ側面部に排土孔を有する排土用スペーサと,3H この排土用スペーサに連結され,かつ上記円管体の一端を着脱可- 10 -能に支持する円管体アダプタとを備えた3I ことを特徴とする連結装置。 被告の行為等ア被告は,遅くとも平成27年8月7日以降,被告装置を製造し,被告方法を使用した雨水浸透管埋設工事を請け負うための営業活動をしている。 イ被告装置は,別紙写真のとおり,タイヤが付いたフォークリフトを使用したものであり,金属製管体はフォークリフトの爪の下方に設けられた連結部材に取り付けられている。 2 争点 本件発明1①及び⑦の技術的範囲への属否ア被告装置につき文言侵害の成否イ同,均等侵害の成否ウ被告方法について 本件発明2の技術的範囲への属否 本件発明3の技術的範囲への属否 3 争点に関する当事者の主張 (本件発明1①及び⑦の技術的範囲への属否)について(原告らの主張)ア被告装置は本件発明1①の基台,油圧ジャッキ及びスライダをフォークリフトによって代用したものであり,本件発明1①の構成要件を全て充足する。 イ被告装置が本件発明1①の構成要件を文言上充足しないとしても,本件発明1①においては,金属製管体が保持手段によって保持され,保持手段がスライダによって支持されるから,スライダによって間接的に昇降作動する金属製管体を装着するために必要な空間が存在すれば,その空間は「貫 ①においては,金属製管体が保持手段によって保持され,保持手段がスライダによって支持されるから,スライダによって間接的に昇降作動する金属製管体を装着するために必要な空間が存在すれば,その空間は「貫通孔」として機能することになる。したがって,「貫通孔」は本件発- 11 -明1①の本質的部分でなく,また,「貫通孔」を被告装置のフォークリフトの車体の外側(前方)に設けられた空間に置き換えても同一の作用効果を奏するから,上記空間は「貫通孔」と均等である。 ウ被告装置が本件発明1①の技術的範囲に属することを前提とすれば,被告方法は本件発明1⑦の構成要件を全て充足し,その技術的範囲に属する。 (被告の主張)ア被告装置はフォークリフトをそのまま使用したものであり,基台や貫通孔が存在しないから,少なくともこれらの点で本件発明1①の構成要件を充足しない。 イ被告装置のフォークリフトの本体が「基台」に相当するものとすると,「貫通孔」が存在しないことになる。この点につき原告らは均等を主張するが,本件発明1①において基台の上方に設けられた保持手段により鉛直方向に保持されている金属製管体を土中に圧入するためには,基台に金属製管体を挿通するための「貫通孔」を設けることが必要不可欠となる。したがって,「貫通孔」は本件発明1①の本質的部分であるから,均等をいう原告らの主張は失当である。 ウ被告装置が本件発明1①の技術的範囲に属しない以上,被告方法が本件発明1⑦の技術的範囲に属することはない。 (本件発明2の技術的範囲への属否)について(原告らの主張)被告装置はフォークリフトを使用するものであるが,本件発明2における「クローラ型の走行体」とは一般的な工事現場に使用される一般的な走行体をいうと解すべきであるか )について(原告らの主張)被告装置はフォークリフトを使用するものであるが,本件発明2における「クローラ型の走行体」とは一般的な工事現場に使用される一般的な走行体をいうと解すべきであるから,被告装置のフォークリフトは構成要件2Bを充足する。 また,被告装置は,一対のシリンダが二段階分の昇降移動をするものであ- 12 -り,本件発明2と同様の作用効果を奏するから,構成要件2E及び2Gを充足する。 そして,被告装置は本件発明2の他の構成要件を全て充足するから,その技術的範囲に属する。 (被告の主張)被告装置は少なくとも次のア及びイの点で本件発明2の構成要件を充足しない。 ア被告装置のフォークリフトはタイヤを用いた走行体であり,クローラを用いていないから,「クローラ型の走行体」(構成要件2B)を充足しない。 イ本件発明2は,二つの別個のシリンダが設けられ,それぞれ別個にフレーム構造体ないしスライダベースを昇降させるものである。これに対し,被告装置の二つのシリンダは一体として動作して爪を上下させる構造となっているから,被告装置は構成要件2E及び2Gを充足しない。 (本件発明3の技術的範囲への属否)について(原告らの主張)被告装置はブームでなくフォークリフトを使用するものであるが,フォークリフトの爪は二段階に高さを調整することが可能であり,本件発明3の「穴掘建柱車のブーム」と同様の作用効果を奏するから,被告装置は構成要件3B及び3Dを充足する。そして,被告装置は本件発明3の他の構成要件を全て充足するから,その技術的範囲に属する。 (被告の主張)被告装置はフォークリフトの爪を用いたものであり,穴掘建柱車のブームを用いたものでないから,本件発明3の構成要件のうち少なくとも構成要件3B及び3 ,その技術的範囲に属する。 (被告の主張)被告装置はフォークリフトの爪を用いたものであり,穴掘建柱車のブームを用いたものでないから,本件発明3の構成要件のうち少なくとも構成要件3B及び3Dを充足しない。 第3 当裁判所の判断- 13 - 文言侵害の成否本件発明1①は金属製管体が挿通できる貫通孔を有する基台(構成要件1B),基台に立設された油圧ジャッキ(同1C)及び油圧ジャッキに支持されて昇降可能なスライダ(同1D)を有する雨水浸透坑掘削装置であるのに対し,被告装置は,フォークリフトを用いたものであって,上記の基台等を備えているとは認められない。 この点に関し,原告らは,フォークリフトの車体が基台に該当する旨主張するが,そのように解するとしても,これが「貫通孔」を有しないことは原告らの認めるところであり,また,油圧ジャッキが基台に立設されていることなど他の構成要件の充足性について原告らは何ら具体的主張をしていない。 したがって,文言侵害が成立しないことは明らかである。 均等侵害の成否原告らは「貫通孔」(構成要件1B)について均等を主張するのみであり,であるが,念のため検討する。 原告らの主張は,「貫通孔」は本件発明1①の本質的部分でなく,被告装置のフォークリフトの車体(「基台」に相当する。)の外側(前方)に設けられた空間が「貫通孔」と同一の作用効果を奏するから,均等侵害が成立する旨をいうものである。 そこで判断するに,本件明細書1(甲1の2)の記載によれば,本件発明1①は,従来の雨水浸透構造体においては工事そのものが大規模なものとなって街渠ます等の市街地における排水構造体として実施できないなどの問題点があったので(背景技術。段落【0002】,【0003】),その課題を解決するために, においては工事そのものが大規模なものとなって街渠ます等の市街地における排水構造体として実施できないなどの問題点があったので(背景技術。段落【0002】,【0003】),その課題を解決するために,小規模な工事によって浸透性を有する地盤に浸透管を- 14 -到達させることのできる浸透坑掘削装置を提供することを目的としたものであり(発明が解決しようとする課題。段落【0005】,【0006】),雨水浸透管を敷設すべき場所に基台を設置し,これに油圧ジャッキ,スライダ等を設けて,スライダの下降により金属製管体及びオーガスクリュを地中に圧入するという構成を採用することで(課題を解決するための手段。段落【0007】,【0008】),雨水浸透管を埋設すべき街渠ますの周辺に基台を設置する程度のスペースを利用して雨水浸透坑を掘削することができ,小規模な工事により十分な深さの雨水浸透坑を設けることができるという効果を奏する(発明の効果。段落【0024】)発明であることが認められる。 そうすると,本件発明1①は,少ないスペースを利用した小規模な工事とするために,基台上に油圧ジャッキ,スライダ等を設け,このスライダの下降により金属製管体及びオーガスクリュを基台の直下の地中に貫通孔を通して圧入するとした点に特徴があるということができる。これに対し,被告装置においては,雨水浸透管を敷設すべき街渠ますの側方にフォークリフトを配置するものであって,そのためのスペースを必要とするから,本件発明1①とは本質的部分を異にすると解すべきである。 したがって,均等をいう原告らの主張は失当である。 被告方法について以上によれば,被告装置が本件発明1①の技術的範囲に属するとは認められないから,被告方法が本件発明1⑦の技術的範囲に属するとも認められない。 主張は失当である。 被告方法について以上によれば,被告装置が本件発明1①の技術的範囲に属するとは認められないから,被告方法が本件発明1⑦の技術的範囲に属するとも認められない。 (本件発明2の技術的範囲への属否)について 前提事実のとおり,被告装置のフォークリフトはタイヤを用いて走行するものであり,クローラを用いたものでないから,被告装置が「クローラ型の走行体」(構成要件2B)を充足しないことは文言上明らかである。 - 15 -これに対し,原告らは,「クローラ型の走行体」とは一般的な工事現場に使用される一般的な走行体と解釈すべきである旨主張するが,特許請求の範囲の文言から離れた解釈である上,本件明細書2をみても上記解釈を裏付ける記載は見当たらないから,これを採用することはできない。 本件発明2は,第1のシリンダ部材(構成要件2E)と第2のシリンダ部材(同2G)を有し,前者がフレーム構造体(同2F)を,後者がスライダ(同2H)をそれぞれ進退させるものであって,二つのシリンダ部材は相互に独立した動きをすると認められる。一方,原告らは,作用効果の同一性を主張するのみであり,被告装置の構成につき,どの部材が第1及び第2のシリンダ部材に該当し,それぞれがいかなる部材を進退させるかについて何ら具体的な主張をしていないから,上記各構成要件の充足を認める余地はない。 したがって,被告装置が本件発明2の技術的範囲に属するとは認められない。 (本件発明3の技術的範囲への属否)について原告らは,被告装置のフォークリフトの爪と本件発明3の「穴掘建柱車のブーム」は同様の作用効果を奏するから,被告装置は構成要件3B及び3Dを充足する旨主張する。 そこで判断するに,被告装置のフォークリフトの爪が 告装置のフォークリフトの爪と本件発明3の「穴掘建柱車のブーム」は同様の作用効果を奏するから,被告装置は構成要件3B及び3Dを充足する旨主張する。 そこで判断するに,被告装置のフォークリフトの爪が本件発明3の特許請求の範囲にいう「穴掘建柱車のブーム」でないことは明らかである。さらに,被告装置と本件発明3の作用効果について検討すると,本件発明3は,本件明細書3(甲3の2)の記載によれば,住宅が密集した地域において住宅用のブロック塀等に妨げられることなく少し離れた位置において操作可能な雨水浸透坑掘削装置である(段落【0007】,【0008】,【0022】)のに対し,被告装置は,フォークリフトを使用したものであって,上記のような位置からの作業を可能とするものでないから,本件発明3の上記作用効果を奏しないと- 16 -解される。したがって,その余の点を検討するまでもなく,被告装置が本件発明3の技術的範囲に属するとは認められない。 4 結論以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川 浩 二 裁判官林 雅子 裁判官中嶋邦人- 17 -(別紙)装置目録【装置の名称】浸透スクリュー工法に使用する「オーガ搭載フォークリフト」【装置の概要】 1 フォークリフトの爪部分にオーガ掘削装置を設けた雨水浸透坑掘削装置である。 2 フォークリフトの爪部分上部に油圧モータを搭載し,オーガスクリュを回転させる構造を有している。 3 オーガスクリュを金属製管体の内部に配置し,フォークリフトの爪部分を下降させることによっ 。 2 フォークリフトの爪部分上部に油圧モータを搭載し,オーガスクリュを回転させる構造を有している。 3 オーガスクリュを金属製管体の内部に配置し,フォークリフトの爪部分を下降させることによって圧入させる構成である。 - 18 -(別紙)方法目録【方法の名称】浸透スクリュー工法【方法の概要】 1 オーガ掘削装置をフォークリフトの爪部分に設置した装置を使用して立坑を掘削し,その立坑を雨水浸透用として使用する。 2 金属管体の内部に設置したオーガスクリュを回転させながらフォークリフトの爪部分を下降して地中に圧入する。 3 掘削長がフォークリフトの爪部分の昇降範囲を超える場合は,金属管体とオーガスクリュを継ぎ足して掘削を継続する。 4 掘削後は,オーガスクリュを抜き取り,浸透スクリュケーシングを挿入し,浸透促進ボールを充填する。
▼ クリックして全文を表示