平成18(行ウ)10 在留期間更新申請不許可処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年2月22日 名古屋地方裁判所 棄却
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判決文本文10,995 文字)

- 1 -平成19年2月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成18年(行ウ)第10号在留期間更新申請不許可処分取消請求事件口頭弁論終結日平成18年12月14日判決主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求原告が平成17年9月14日付けでした在留期間更新許可申請について,名古屋入国管理局長が平成18年1月5日付けでした不許可処分を取り消す。 第2事案の概要本件は,日本人の配偶者等の在留資格を有するスリランカ民主社会主義共和国籍の原告が,在留期間の更新を申請したところ,名古屋入国管理局長(名古屋入管局長)から,日本人の配偶者等の在留資格に該当する活動を行うことが十分に立証されていないなどとして不許可の処分を受けたので,同不許可処分の取消しを求めた抗告訴訟である。 前提事実(証拠等を掲記した事実のほかは争いがない。)( ) 当事者等 原告は,1971年(昭和46年)9月16日生まれのスリランカ国籍の男性である。 名古屋入管局長は,法務大臣から在留期間更新の許否の権限を委任された者である(出入国管理及び難民認定法(入管難民法)21条3項,69条の2,入管難民法施行規則61条の2第7号)。 被告は,名古屋入管局長の所属する行政主体である。 ( ) 原告の在留資格取得に至る経緯 - 2 -ア過去の在留状況原告は,平成5年8月6日,成田空港より他人名義の旅券を使用して本邦に不法入国したが,平成6年8月18日,同空港より自費出国した(乙2号証,4号証)。 イ原告の再入国状況原告は,平成9年2月12日ころ,大韓民国から貨物船で千葉県船橋市付近の港に到着し,本邦に不法入国した(乙2号証,4号証)。 ウ在留特別許可に至る事情原告は,平成14年2月19日, 告の再入国状況原告は,平成9年2月12日ころ,大韓民国から貨物船で千葉県船橋市付近の港に到着し,本邦に不法入国した(乙2号証,4号証)。 ウ在留特別許可に至る事情原告は,平成14年2月19日,愛知県稲沢市長に対し,日本人のAとの婚姻を届け出た上,同年3月14日,同市長に対し,居住地を稲沢市小沢2丁目21番20-503号,世帯主を原告本人として外国人登録手続をした(乙2号証,3号証)。 原告は,同年4月8日,Aとの婚姻を理由に本邦での在留を求めて名古屋入国管理局(名古屋入管)に出頭し,名古屋入管入国警備官は,同日,原告に対する違反調査を行った(乙2号証,4号証)。 原告は,同年10月9日,愛知県稲沢市長に対し,Aと離婚した旨の届出をしたが,これを速やかに名古屋入管に届けなかった(乙2号証,3号証,10号証,弁論の全趣旨)。 原告は,同年12月27日,愛知県稲沢市長に対し,日本人のB(昭和17年4月18日生)との婚姻を届け出た上,平成15年6月9日,岐阜市長に対し,居住地を岐阜市H町コーポI,世帯主をB,続柄を夫として外国人登録記載事項の変更登録手続をした(乙2号証,5号証,6号証)。 原告は,平成15年10月3日,Bとの婚姻を理由に本邦での在留を求めて名古屋入管に出頭したところ,収容令書に基づき名古屋入管に収容された(乙2号証)。 名古屋入管入国警備官は,同日及び同月6日の両日,原告に対して,違- 3 -反調査をするとともに,同月3日,Bから任意で事情を聴取した(乙2号証,6号証ないし8号証)。 名古屋入管入国審査官は,同月3日及び14日,原告に対し審査をした上,同日,原告が入管難民法24条1号(不法入国)に該当する旨認定し,原告にその旨通知した(乙9号証ないし11号証)。 原告は,同日,上記認定に異議があるとして口頭審理の請求をした 告に対し審査をした上,同日,原告が入管難民法24条1号(不法入国)に該当する旨認定し,原告にその旨通知した(乙9号証ないし11号証)。 原告は,同日,上記認定に異議があるとして口頭審理の請求をしたが,名古屋入管特別審理官は,平成15年10月24日に口頭審理をした上,同日,上記認定には誤りがない旨判定し,原告にその旨通知した(乙2号証,10号証,12号証,13号証)。 原告は,同日,上記判定を不服として,法務大臣に対し,異議の申出をしたところ,法務大臣から委任を受けた名古屋入管局長は,同日,原告に対し,在留資格を日本人の配偶者等,在留期間を1年として,本邦における在留を特別に許可した(乙2号証,12号証,14号証,15号証)。 ( ) 本件不許可処分に至る経緯 原告は,平成16年9月29日,在留期間更新許可申請をしたところ,名古屋入管局長は,平成17年2月4日,原告に対し,在留期間1年(在留期限は平成17年10月24日)として,在留期間更新許可をした(乙2号証)。 原告は,平成17年9月14日に,在留期間更新許可申請(本件許可申請)をしたところ,名古屋入管局長は,平成18年1月5日,「あなたが提出された資料等からみて『日本人の配偶者等』の在留資格に該当する活動を行うことに係る十分な立証がなされているとは認められません。」との理由を付して,在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとは認められないとして,本件許可申請につき不許可の処分(本件不許可処分)をし,同日,これを原告に通知した。 ( ) 本訴提起 - 4 -原告は,平成18年2月13日,本件不許可処分の取消しを求める本訴を提起した(当裁判所に顕著な事実)。 争点 本件不許可処分の適法性いかんについて,原告と日本人Bとの婚姻関係に実体があったと認められるか否か 8年2月13日,本件不許可処分の取消しを求める本訴を提起した(当裁判所に顕著な事実)。 争点 本件不許可処分の適法性いかんについて,原告と日本人Bとの婚姻関係に実体があったと認められるか否か。 争点に関する当事者の主張(被告の主張)下記のとおり,原告はBと同居しておらず,同人との生計も別であって,フィリピン人女性Cと同居ないしそれに近い生活を送っており,Bとの形式的な婚姻関係は,原告の本邦における在留を一義的な目的として形成されたものであるから,本件不許可処分当時,原告とBとの婚姻関係に実体はなかった。すなわち,原告は,Bの配偶者としての活動を予定しているとはいえず,「日本人の配偶者等」の在留資格に該当しない。したがって,本件不許可処分に係る名古屋入管局長の判断が,事実の基礎を欠き,又は事実に対する評価が合理性を欠くとはいえないから,裁量権の逸脱又は濫用はなく,本件不許可処分は適法である。 ( ) 原告とBの居住関係等 下記の事情を総合すると,原告とBが同居し,両名が夫婦共同生活を営んでいたとは認められない。 アBの住所地(岐阜市H町)から原告が勤務していたFの所在地(愛知県稲沢市J町)までは約25キロメートル程度で,通勤時間は片道1時間以内であるのに,原告は,Bと同居することなく,友人のアパート等を転々としていた。 イ原告とBの供述には,原告の居住状況や勤務状況について,多くの相違点や矛盾点が認められ,とりわけ原告は「衣服などの荷物はほとんど岐阜の自宅に置いてある」「岐阜の自宅へは毎週土曜日の夜か日曜日に帰り,- 5 -その日のうちに稲沢に戻ってくる」などと供述しているのに対し,Bは「(原告の)衣服などはほとんど友達の車の中に置いてある」「(原告は)いつも朝6時に家を出て7時半ころには帰宅する」などと供述するな その日のうちに稲沢に戻ってくる」などと供述しているのに対し,Bは「(原告の)衣服などはほとんど友達の車の中に置いてある」「(原告は)いつも朝6時に家を出て7時半ころには帰宅する」などと供述するなど,両名の供述内容は根本的な部分で相違している。 ウBは,原告の外泊先や使用している車,荷物を置いている友人の名前等について全く認識していなかった(原告は,「土日,岐阜の自宅に車を止めている。」などと供述しており,Bが原告の使用している車を認識していないことは明らかに不自然である。)。 エ原告は,平成16年6月ころまでの勤務先であったGからは現金で給与を受領していながら,Bに対する金銭の受け渡しは,同人の銀行口座に振り込む方法によって行われており,このことは原告とBが同居生活を送っていなかったことを裏付けるものである。 オ原告が,愛知県稲沢市内のアパートからBとの婚姻を理由に岐阜市内のコーポIに転居した際,同所に原告の荷物を搬入した形跡はない。 ( ) 原告とBとの生計が同一でないこと Bは無職で主婦をしていると主張しているが,Fにおける原告の平成16年分及び平成17年分の源泉徴収票の「控除対象配偶者の有無等」欄には「無」に印が付され,「配偶者特別控除の額」欄は「0円」と記載されていることに照らせば,原告はBを扶養しておらず,その生計も別々であると推認することができる。 また,原告は,Bに対して1月当たり10万円前後の金額を振り込んで送金しているが,生活費としての送金であるとは認めがたい。 ( ) Cとの同居ないしそれに準じた交際 原告は,平成12年ころからCと交際し,同人名義の携帯電話を使用していたことがあるが,在留特別許可を得た直後の平成15年11月1日,原告はD名義で,愛知県稲沢市K町所在のアパート「L」205号室の賃貸借契- 成12年ころからCと交際し,同人名義の携帯電話を使用していたことがあるが,在留特別許可を得た直後の平成15年11月1日,原告はD名義で,愛知県稲沢市K町所在のアパート「L」205号室の賃貸借契- 6 -約を締結し,同所で,Cと同居又はそれに準じた交際をしていたことが,同アパートの家主であるEや近隣住民及び原告の知人女性(匿名)の調査から明らかになった。 ( ) 原告らの婚姻が原告の本邦における在留を一義的な目的として形成された ものであることア婚姻経緯の不自然さ原告は,Bと知り合って婚姻するに至った経緯について,新岐阜駅近くのパチンコ屋でBと知り合い,3,4回くらい同人と会い,お互いの身の上話をするうちに結婚を意識するようになり,婚姻届出をした旨の供述をしている。 これに対してBは,新岐阜駅近くのパチンコ屋で原告と知り合い,どちらともなく話し掛け,何となく好きなタイプだったので,電話番号を交換し,何度か電話を繰り返し,原告と出会ってから5,6か月後に再び原告と会って婚姻の話をし,婚姻に至ったとの供述をしている。 両名の供述の内容は上記のとおり大きく相違しており,事実経過としても甚だ不自然,不可解である。また,原告及びBは,婚姻の理由についてあいまいな供述に終始している。 イ婚姻の目的原告及びBは,両名の婚姻が原告の在留を一義的な目的としたものであることを半ば自認している上,上記アのような婚姻の経緯は不自然であり,婚姻の時期も,原告の違反調査が開始された後で,原告の前妻との離婚届出がされた平成14年10月からわずか2か月後の同年12月であったことも不自然である。これらの事情に照らすと,原告が,Bとの婚姻届出をした目的は,専ら「日本人の配偶者等」の在留資格を得て日本に適法に滞在し続けることにあったこと,一方,Bにおいても,原 月であったことも不自然である。これらの事情に照らすと,原告が,Bとの婚姻届出をした目的は,専ら「日本人の配偶者等」の在留資格を得て日本に適法に滞在し続けることにあったこと,一方,Bにおいても,原告との婚姻届出をする見返りに,原告から定期的に金銭を受領することを意図していたこと- 7 -が明らかであり,原告がBと婚姻する際,同人に110万円を支払ったこともこれを裏付けるものである。 (原告の主張)原告は,平成14年12月27日にBと婚姻し,それ以降,同人と婚姻生活を営んでおり,その婚姻関係には実体があった。名古屋入管局長はその婚姻生活の実態を誤認し,本件不許可処分をしたのであるから,本件不許可処分は裁量権の範囲を超え,又はその濫用があったものであって,違法である。 なお,被告の指摘する点に対する反論は以下のとおりである。 ( ) 原告とBの居住関係等に関する事情について ア原告の外泊について原告とBの住居であるコーポIには,平成17年11月から平成18年1月までの間,Bの娘夫婦が泊まっていたため,その間,原告は同僚のスリランカ人かボリビア人の友人の家に泊めてもらっていたものである。 それ以外の期間については,仕事で遅くなって帰宅できない場合を除いて,基本的に自宅から通勤しており,原告とBは実際に同居していた。 イ原告の衣服に関する供述についてBは,名古屋入管入国審査官に対し,原告の作業着は友達の車の中に置いてあると説明したのであり,原告の衣服がほとんど友達の車の中に置いてあるとは説明していない。したがって,この点について原告の供述と矛盾することはない。 ウ原告の外泊先に関するBの認識についてBは,原告の携帯電話が繋がれば心配がないので,外泊先等の友人の名前や住所は気にかけていない旨名古屋入管入国審査官に対して説明した。 した 盾することはない。 ウ原告の外泊先に関するBの認識についてBは,原告の携帯電話が繋がれば心配がないので,外泊先等の友人の名前や住所は気にかけていない旨名古屋入管入国審査官に対して説明した。 したがって,Bが原告の外泊先の友人の名前や住所を認識していなかったことは,原告とBとの婚姻関係に実体がないことの根拠とはならない。 ( ) 生計の同一性について - 8 -原告は,毎月,Bに生活費15万円程度を渡し,扶養義務を果たしていたのであり,原告とBの生計は同一であった。なお,被告が指摘する源泉徴収票は勤務先のFが一方的に作成したものであり,原告は,配偶者控除や配偶者特別控除を知らなかった。したがって,源泉徴収票の記載から,原告がBを扶養していないことや両人の生計が別々であることを推認することはできない。 ( ) 原告とCとの交際について 原告が,「L」205号室の賃貸借契約を締結したことや,同所でCと同居するなどして同人と交際していた事実はない。 原告の使用する携帯電話がCの名義となっているのは次の事情によるものである。すなわち,原告は,平成13年ころ,前妻Aの友人としてCと知り合い,同人にGを紹介し,平成15年ころから,一緒にGで働いていたところ,同人は「永住者」の在留資格で在留していたので,携帯電話の契約名義人になってもらったものであり,その料金は,原告の口座から引き落として支払っている。 ( ) 原告とBとの婚姻の目的 原告が,Bと婚姻するに当たって110万円を同人に支払った事実はなく,両名は,原告の在留を一義的な目的として形式的に婚姻をしたものではない。 第3当裁判所の判断 在留期間の更新許否に関する判断及び法務大臣等の裁量権について( ) 在留期間更新の際の判断内容 入管難民法21条3項は,在留期間の更新申請につ 婚姻をしたものではない。 第3当裁判所の判断 在留期間の更新許否に関する判断及び法務大臣等の裁量権について( ) 在留期間更新の際の判断内容 入管難民法21条3項は,在留期間の更新申請につき「法務大臣は,当該外国人が提出した文書により在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り,これを許可することができる。」と規定しているところ,在留期間の更新は,本邦に在留している外国人の申請により,現に有する在留資格を変更することなく,従前許可された在留期間に引き続き,さ- 9 -らに一定期間本邦に在留できる法律上の地位を付与する処分であるから,その許可は,当該外国人が現に有する在留資格に属する活動を引き続き行おうとする場合,すなわち,当該外国人が,更新時において,その有する在留資格に該当する要件を充足していることを当然の前提としており,その要件を欠く者の在留期間の更新は認められない。 ( ) 日本人の配偶者等の在留資格該当性について 本件許可申請は「日本人の配偶者等」の在留期間更新許可を求めたものであるところ,日本人の配偶者等の在留資格該当性が認められるためには,日本人との間に法律上の婚姻関係が形式的に存在することのみではなく,現実に日本人の配偶者としての活動が認められることが必要であるというべきである。そして,その活動の内容・範囲については,社会通念に従って判断されるべきであり,日本人の配偶者である外国人が,我が国においてその配偶者である日本人と同居し,互いに協力し,扶助しあって(民法752条),社会通念上夫婦共同生活を営むという実態が必要である(在留資格変更の事案における最高裁判所平成14年10月17日第一小法廷判決・民集56巻8号1823頁参照)。したがって,婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を欠き,形式上の 営むという実態が必要である(在留資格変更の事案における最高裁判所平成14年10月17日第一小法廷判決・民集56巻8号1823頁参照)。したがって,婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を欠き,形式上のものに過ぎないような場合,すなわち,夫婦としての実体を有していない場合には,「日本人の配偶者等」の在留資格該当性を認めることはできない。 ( ) 在留期間の更新許否に関する法務大臣等の裁量権 国際慣習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく,我が国の憲法上も,外国人は本邦に入国する自由,在留の権利又は引き続き本邦に在留することを要求する権利を保障されていない。入管難民法は,かかる原則を踏まえ,我が国に在留する外国人の在留期間の更新について,法務大臣ないしその委任を受けた地方入国管理局長(「法務大臣等」という。)がこれを適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に限り許可す- 10 -ることとし(21条3項),在留期間の更新の許否を法務大臣等の広範な裁量にかからしめている。したがって,入管難民法21条3項の在留期間の更新の許否の判断が違法となるのは,上記判断が全く事実の基礎を欠き,又は事実に対する評価が合理性を欠くことなどにより,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限られると解すべきである(最高裁判所昭和53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁参照)。 争点についてそこで,名古屋入管局長が,本件許可申請について,その在留資格である日本人の配偶者等に該当する活動を行うことに係る十分な立証があるとは認められないとして本件不許可処分をしたことが,上述した裁量判断として違法というべきか否かにつき検討する。 ( ) 前記前提事実欄記載の事実のほか証拠(乙6号証,7号証,18号証,証 人B るとは認められないとして本件不許可処分をしたことが,上述した裁量判断として違法というべきか否かにつき検討する。 ( ) 前記前提事実欄記載の事実のほか証拠(乙6号証,7号証,18号証,証 人B)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,前記のとおり,平成9年2月ころ,本邦に不法入国し,平成14年2月19日,日本人のAと婚姻し,愛知県稲沢市M所在のハイツNに居住していたが,間もなくAの所在が不明となり,同年10月9日,同人と離婚したこと,原告は,それから程ない同年12月27日,パチンコ屋で知り合ったBと婚姻届をしたこと,その後,原告とBは,外国人の入居も受け入れる物件を探し,平成15年5月ころ,岐阜市H町所在のコーポIをBにおいて賃借し,同所に原告とB及び同人の母親が転居したこと,そして,Bは原告から月々10万円前後の金員を受け取り,コーポIの家賃その他の生活費に充てていたこと,原告は,当時愛知県一宮市内のGという事業所で稼働しており,Bと同居しているものとして,平成15年10月24日名古屋入管局長により在留資格を日本人の配偶者等,在留期間1年とする在留特別許可が認められ,平成17年2月4日,在留期間1年の更新が許可されたこと,これらの事実経過が認められる。 ( ) しかしながら,以下の各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって検討して - 11 -みると,次の諸事情を指摘することができる。 ア原告は,平成16年6月ころから,愛知県稲沢市J町のFに勤務するようになったが,この勤務先へは,上記コーポIから自動車又は電車を利用して片道1時間程度であり,通勤に大きな支障があるとは解されないところ,原告は,コーポIに帰らずに友人宅等に宿泊していることが頻繁にあったと認められる。その外泊頻度について,原告は名古屋入管職員の事情聴取に対し,車に1週間 通勤に大きな支障があるとは解されないところ,原告は,コーポIに帰らずに友人宅等に宿泊していることが頻繁にあったと認められる。その外泊頻度について,原告は名古屋入管職員の事情聴取に対し,車に1週間分の衣類を積んでおり,週末の1日だけ日帰りでコーポIへ帰っていると述べ,他方,証人Bは,原告は週2回程度外泊していたなどと供述しており,両名の説明内容は必ずしも符合していないが,いずれにしても原告の外泊は相当の頻度であったことが明らかと認められ,原告本人が供述するように,その中に残業等で遅くなったことによるものが含まれているとしても,その頻繁な外泊の状況は,原告とBのコーポIにおける同居の実態について疑問を抱かせるに足るものいうべきである(乙18号証,20号証)。 イ原告は上記のとおり,G,次いでFで稼働して得た給与から,Bに毎月10万円前後の金員を与えていたが,これを現金の手渡しによらずに振込送金で行ったことが相当回数にわたって認められるところ,基本的に日常の生活を共にし,また,ときには残業等で外泊の必要が生じるとしても,自宅と勤務先が片道1時間程度の距離にある状況の中で,このような振込送金の方法による生活費の授受がしばしばなされることは,同居生活の実態にある夫婦の間においては,特段の事情がなければ理解し難いことといわなければならない。証人Bが供述するように,家賃の支払期限が迫っていた場合がある等の事情を考慮に入れるとしても,なお上記の振込送金の状況,経過は,原告とBの同居の実態について疑問を残すべきものというべきである(乙27号証)。 ウ原告は,Bが無職で収入がなく,勤務先からの給与について形式的には- 12 -配偶者控除の対象となり得るものであるにも関わらず,Fの給与について控除対象配偶者がいないとの取扱いによって配偶者控除を受 告は,Bが無職で収入がなく,勤務先からの給与について形式的には- 12 -配偶者控除の対象となり得るものであるにも関わらず,Fの給与について控除対象配偶者がいないとの取扱いによって配偶者控除を受けていないことが認められる。実体をともなう正常な夫婦関係にある者であれば,上記の控除を受けるための申告を失念することは,一般に考え難いことというべきであり(なお,原告の本邦における稼働期間,経過に照らすと,原告が上記の制度を知らなかったとは解されない。),原告がこれを勤務先に申告していなかったことは,Bとの婚姻関係の実体についての原告自身の意識を反映したものともうかがわせるのであり,また,Fの関係者等も,原告が既婚者であるとの認識をもっていなかったことを推認させるものである(甲3号証,乙20号証)。 ( ) 上記( ) 記載の事実経過によれば,原告とBの婚姻は実体を伴うものであ るかのごとくであるが,なお上記( ) に検討したとおりの諸事情を併せ勘案 してみると,その婚姻関係は,同居の実態や意識等において,正常な夫婦としての結合関係の希薄さを否定できないものがあると解される。 そして,原告はBと婚姻届をした当時31歳であるのに対し,妻となるBは60歳で,その年齢差は親子ほども離れており,そのような男女の夫婦としての結合もないわけではないが,例外的なものであることも否定できないというべきである。 また,証人Bは原告との婚姻について「だれでもというか,やっぱり結婚しないと生活できないし。」「でも,やっぱり結婚が一番いいかなと。みんなしてますよ,お年を召されても。」などと述べて,原告との婚姻の大きな目的が自己の生計の維持にあったことを自認しており,他方,原告には日本人女性との婚姻によって本邦での在留資格を保持する必要性があったことは明白で 年を召されても。」などと述べて,原告との婚姻の大きな目的が自己の生計の維持にあったことを自認しており,他方,原告には日本人女性との婚姻によって本邦での在留資格を保持する必要性があったことは明白であるところ,男女の婚姻に至る事情に利害,打算や生活設計上の背景等があることは,それ自体必ずしも異とすべきことではないとしても,一方の在留資格保持の必要性と他方の経済的な必要性という利害の合致が婚姻の- 13 -基本的な目的となっており,一組の男女としての全人格的・精神的な結合関係は希薄と認められる実態の婚姻関係は,在留資格を保持させる利益と生活費との対価関係が強度に露呈するものであって,その生活費の実体は在留資格を保持させることの謝礼と評価すべきものにすぎず,このような婚姻関係を,なお正常な婚姻と見るべきであるかは,はなはだしく疑問といわなければならない。 以上の諸点を総合して勘案してみると,名古屋入管局長が,本件許可申請に対し,原告には日本人の配偶者の在留資格に該当する活動を行うことにつき疑問があり,在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当な理由があるとは認められないとして本件不許可処分をした判断は,全く事実の基礎を欠くとか,又は事実に対する評価が合理性を欠くことなどにより,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかとして,その裁量権を逸脱・濫用するものと解することはできないというべきである。 なお,被告の主張に係る,原告とCとの交際関係の実態については,本件全証拠によっても,これを認めるに足りない。 結論 そうすると,本件不許可処分は適法であり,その取消しを求める原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部中 適法であり,その取消しを求める原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部中村直文裁判長裁判官- 14 -前田郁勝裁判官尾河吉久裁判官

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