- 1 -令和2年11月13日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和2年(ネ)第1222号損害賠償等請求控訴事件(原審大阪地方裁判所平成31年(ワ)第1580号)口頭弁論終結日令和2年9月2日判決控訴人(一審原告) P1ことP2同訴訟代理人弁護士溝上哲也被控訴人(一審被告) 株式会社ザシティ同訴訟代理人弁護士中田明同松村幸生 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,4764万円及びこれに対する平成30年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人は,その運営するウェブサイト(http://city.saikyou.biz/)に,別紙謝罪広告目録記載の謝罪文を,別紙掲載条件目録記載の掲載条件により,1か月間掲載せよ。 4 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 5 仮執行宣言第2 事案の概要以下で使用する略称は,特に断らない限り,原判決の例による。 - 2 - 1 前提事実(争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実。書証は枝番号を含む。)(1) 当事者等(甲1,45)控訴人は,P1の屋号で,主にパチンコ店向けにホームページ制作,システム開発,サーバー構築,販促ツールの開発・販売等を行う個人自営業者である。 被控訴人は,遊技場経営等を目的とし,東京都,神奈川県,埼玉県等に の屋号で,主にパチンコ店向けにホームページ制作,システム開発,サーバー構築,販促ツールの開発・販売等を行う個人自営業者である。 被控訴人は,遊技場経営等を目的とし,東京都,神奈川県,埼玉県等において,14店舗のパチンコ店の企画・運営を行っている株式会社である。被控訴人の取締役はP3,P6及びP7であって,代表取締役はP3である。 株主は2名であり,P6が120株,P7が80株を有している。 (2) 本件コンテンツ(甲5,6)控訴人は,商品名を「X1」,「X2」及び「X3」と題する,パチンコ店向けの顧客誘引を目的とするゲームコンテンツ(以下,前二者を「X1」といい,これと「X3」を合わせて「本件コンテンツ」という。)を開発・販売している。 本件コンテンツは,これを導入したパチンコ店が,メールやSNSを利用して,顧客に対し,携帯電話の画面上でスロットゲーム等をするよう促し,ゲームで「大当たり」が出た場合に表示される画面(当選画面)に,特定の遊技機を示唆する画像や,特定の遊技機を示唆する扮装(コスプレ)をした女性の画像を使用することで,当該遊技機がパチンコ店の推奨機種であることを示し,パチンコ店に出向くよう顧客を誘引することができる。 (3) 本件講習会の実施及びその内容埼玉県警察は,平成30年10月3日, 同県北部において営業するパチンコ店の管理者(店長等)を対象とした管理者講習会(本件講習会)を実施した。 本件講習会において,埼玉県警察の担当者は,受講者に対し,風俗営業等- 3 -の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)及び同法に基づく埼玉県条例違反となり,行政処分の対象となる広告宣伝について説明し,そのような広告宣伝を行わないよう注意を促した。もっとも,控訴人の商品の名称である「X1」や「X3」が 律(風営法)及び同法に基づく埼玉県条例違反となり,行政処分の対象となる広告宣伝について説明し,そのような広告宣伝を行わないよう注意を促した。もっとも,控訴人の商品の名称である「X1」や「X3」が明示されることはなかった。 (4) 本件メッセージの送信及び転送等(甲7,8)本件講習会に出席した被控訴人の深谷店店長であるP4は,平成30年10月3日,ライン(メッセージや画像・動画のやり取り等を行うSNSアプリ)上の,被控訴人の経営する各店舗の店長や本社の従業員等17名が参加するメッセージグループ(店長ライン)に,「本日の埼玉県北地域の管理者講習の内容共有です。」として,本件講習会で指摘された事項を,「みなし機について」及び「広告宣伝について」の各表題の下それぞれ要約したメッセージ(本件メッセージ)を送信した。 本件メッセージの中において,「広告宣伝について」の②として「名指しでX1は禁止。(機種画像を送るなら)」,同じく③として「名指しでX4で機種,メーカーなどを示唆する物は禁止。」との記載部分(本件部分)が存在した。 被控訴人の川越店店長であったP5は,本件メッセージを閲覧し,これを,株式会社ジーズ(以下「ジーズ」という。)及び株式会社DMM(いずれも,パチンコ店を取材して,広告宣伝を雑誌やウェブ上に掲載することを業とする取材会社である。)の担当者に転送するとともに,内容について電話で問い合わせた。 控訴人は,同月23日ころ,取引先からの情報提供により,被控訴人以外のパチンコ店に本件部分の内容が流布していることを知った。 2 控訴人の請求と訴訟の経過控訴人は,被控訴人に対し,P4が,本件講習会において,名指しで「X1」及び「X3」を利用した広告,宣伝は禁止されるとの説明がなされた旨の本件- 4 -メッセー 2 控訴人の請求と訴訟の経過控訴人は,被控訴人に対し,P4が,本件講習会において,名指しで「X1」及び「X3」を利用した広告,宣伝は禁止されるとの説明がなされた旨の本件- 4 -メッセージを被控訴人の他の店長らに送信した行為,及びこれを閲覧したP5が当該メッセージを社外の第三者(取材会社)に転送した行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知又は流布する」不正競争行為(平成30年法律第33号による改正前の不正競争防止法〔以下「不競法」という。〕2条1項15号。令和元年7月1日の改正法施行後は21号であるが,以下,同改正前の号による。)に該当し,あるいは,P4及びP5が,真偽の確認をせず,また外部拡散の防止等をせず,虚偽の情報を送信,転送したことは,不法行為に当たり,被控訴人に使用者責任が成立すると主張して,不競法4条,又は民法709条,715条1項に基づき,損害賠償金(逸失利益)4764万円及びこれに対する平成30年10月3日(本件メッセージの送信の日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。 以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,不競法14条に基づき,ウェブサイトへの謝罪文の掲載を求めている。 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却した。 控訴人は,これを不服として,本件控訴を提起した。 3 争点(1) 控訴人と被控訴人は不競法2条1項15号の「競争関係」にあるか(2) 本件部分の内容が不競法2条1項15号の「虚偽の事実」に当たるか(3) 本件メッセージの送信行為及び転送行為等が不競法2条1項15号の「告知又は流布」に当たるか(4) 不法行為責任及び使用者責任の有無(5) 損害の発生及びその額(6) 信用回復措置の必要性 ージの送信行為及び転送行為等が不競法2条1項15号の「告知又は流布」に当たるか(4) 不法行為責任及び使用者責任の有無(5) 損害の発生及びその額(6) 信用回復措置の必要性 4 争点に関する当事者の主張次のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」第2の3に記載のとおりであるから,これを引用する。 - 5 -(原判決の補正)(1) 原判決6頁20行目の「著しく」の次に「客の」を加える。 (2) 原判決6頁25行目の「生活安全課」を「生活安全局」に改める。 (3) 原判決9頁11行目の「乗せられ」を「載せられ」に改める。 5 当審における控訴人の主張(1) 争点(1)(控訴人と被控訴人は不競法2条1項15号の「競争関係」にあるか)について次のことからも,控訴人と被控訴人は,不競法2条1項15号の「競争関係」にあるといえる。 ア不競法1条に照らすと,同法は,事業者間の公正な競争の確保を趣旨とするものであって,そもそも競争関係が存する場合に限定されていない。したがって,不競法2条1項15号において,告知者が競争上不当な利益を得ることまで要件とするべきではない。同号の「競争関係」は緩やかに解するのが相当である。 イ誹謗者が,一体となって事業を行っているグループ会社の一員である場合は,グループを構成する他の会社の行っている事業と,誹謗の相手方の事業との間において,その需要者又は取引者を共通にする可能性がある場合には,「競争関係」にあると判断されるべきである。 シティグループは,株主構成及び役員構成に照らすと,実質的に同一の会社というべきであり,訴外シティコミュニケーションズのウェブサイトの記載内容に照らすと,一体となって事業を行っているということができる。 (2) 争点(2)(本件部分の内容 すと,実質的に同一の会社というべきであり,訴外シティコミュニケーションズのウェブサイトの記載内容に照らすと,一体となって事業を行っているということができる。 (2) 争点(2)(本件部分の内容が不競法2条1項15号の「虚偽の事実」に当たるか)について本件部分の記載は,不競法2条1項15号の「虚偽の事実」に当たるところ,原審の判断手法は誤っている。 - 6 -ア不競法2条1項15号の「虚偽の事実」に当たるか否かの判断に際しては,本件部分の記載が端的に虚偽であるか否かが判断されなければならない。すなわち,埼玉県警察の担当者の説明と,本件部分の記載を対比して,埼玉県警察の担当者が本件講習会で,① 控訴人の商品「X1」の名称を示して機種画像を送るなら禁止と説明したか否か,② 控訴人の商品「X3」の名称を示して機種,メーカーなどを示唆するものは禁止と説明したか否かが判断されなければならない。 イしかし,前記前提事実(3)(4)のとおり,本件講習会において,控訴人の商品の名称である「X1」及び「X3」は,いずれも明示されなかったにもかかわらず,本件部分では,「名指しでX1は禁止。(機種画像を送るなら)」,「名指しでX4で機種,メーカーなどを示唆する物は禁止。」と記載された。 ウ以上のとおり,本件部分は,前記①②いずれについても,控訴人の商品名が受講者に明示されていなかったにもかかわらず,「名指しで」示されたと記載された点において虚偽である。それ以外の記載においても,①の場合は機種画像を送れば禁止,②の場合は機種,メーカーを示唆すれば禁止との条件が付されていたにすぎず,使い方によっては禁止されない場合があると読み取れるとしても,その記載によって埼玉県警察が控訴人の商品が禁止対象となると示したことが否定されるものではなく, れば禁止との条件が付されていたにすぎず,使い方によっては禁止されない場合があると読み取れるとしても,その記載によって埼玉県警察が控訴人の商品が禁止対象となると示したことが否定されるものではなく,本件部分が全体として客観的事実に反するものであったことに変わりはない。 これに対し,埼玉県警察の本件講習会の担当者の説明内容とP4の立場ないし理解を対比するという原審の判断手法は,誤りである。 (3) 争点(4)(不法行為責任及び使用者責任の有無)についてP4及びP5の行為は不法行為を構成し,被控訴人には使用者責任が成立する。 - 7 -ア P4の行為についてP4は,あえて「名指しで」という事実と異なる表現を選択し,虚偽のメッセージを店長ラインに送信したのであるから,注意喚起のためには受け手が誤解して控訴人の信用が毀損されても構わないという認識であったというべきである。 また,店長ラインの利用については全くルールが定められておらず,いわゆる社内の情報を除き,外部から取得した公開情報については,そのグループ外に転送することが許容されていたと考えるのが自然である。 したがって,送信内容が外部に漏洩することは,P4において容易に予見できたというべきであるから,P4は,外部流出を防止する措置をとるべき義務を負っていたところ,この義務を怠ったというべきである。 イ P5の行為についてP5は,本件メッセージを取材会社に転送したが,転送先のジーズの担当者であるP8(以下「P8」という。)は,単なる情報の共有であり,P5から外部に出さないよう要望されたことはなかったと述べている。 P5は,店長ラインに掲載された内容を外部に告知する際は,内容が事実であるかを確認した上で告知するか,真偽不明であれば少なくとも第三者への伝達を ないよう要望されたことはなかったと述べている。 P5は,店長ラインに掲載された内容を外部に告知する際は,内容が事実であるかを確認した上で告知するか,真偽不明であれば少なくとも第三者への伝達を禁止して告知する義務を負っていたところ,この義務を怠ったというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」第3の1(原判決14頁17行目から21頁8行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)- 8 -(1) 原判決14頁19行目の「甲2ないし4,22」を「甲2~4,35~41,45,46」に改める。 (2) 原判決14頁20行目から15頁7行目までを次のとおり改める。 「ア訴外シティコミュニケーションズは,不動産の売買,交換又は賃貸借等の業務,経営コンサルタント業務,労働者派遣事業等を目的とする株式会社である。その取締役はP7,P6及びP3であり,代表取締役はP7及びP6である。(甲2)訴外シティコミュニケーションズは,自社の会社概要において,被控訴人告及び訴外シティデザインを含む7社をグループ会社(シティグループ)として紹介している。(甲4)イ訴外シティデザインは,広告デザインの企画及び制作並びに広告代理業務,コンピュータソフトウェアの開発,販売及び保守,インターネットのホームページの企画,制作及び保守,情報処理・情報提供サービス,映像・音声等のウェブコンテンツ及びデジタルコンテンツの企画,制作,翻訳,編集及び配信等を目的とする株式会社である。その取締役はP7及びP9であり,代表取締役はP7である。(甲41)訴外シティデザインは,シティグループで運営する店舗内で使用するディスプレイや販促物のデザイン制作を行っているほか( 社である。その取締役はP7及びP9であり,代表取締役はP7である。(甲41)訴外シティデザインは,シティグループで運営する店舗内で使用するディスプレイや販促物のデザイン制作を行っているほか(甲22〔3頁〕),ゴルフ関連のアプリ「みんなのスイング」及び算数計算アプリ「クイズ!せんごくさんすう」等を制作するなどしている。(甲38,46)ウ他のグループ会社の事業内容は,インターネットカフェ・マンガ喫茶等の企画・運営,サウナ&カプセルホテル等のスパ事業の企画・運営,アニソンカラオケカフェ等サブカルチャー事業の企画・運営,スクールの運営,不動産賃貸及び管理等である。(甲4)エ訴外シティコミュニケーションズと被控訴人の本店所在地は同一であるが,これと訴外シティデザインの本店所在地は異なる。(甲2,41,弁- 9 -論の全趣旨)オ訴外シティコミュニケーションズのウェブサイトには,「沿革」において,各グループ会社が設立された時期が記載され,「業績・財務情報」において,グループ全体のものと思われる売上高,経常利益,店舗数及び社員数等が記載されている。また,「ブランド紹介」において,被控訴人のブランドである「THECITY」及び「BELLECITY」とともに,訴外シティデザインのブランドである「シティデザイン」及び「スマイルアップ」が掲載されている。そして,「組織図」において,代表取締役が管理部門と営業部門を統括するものとされ,営業部門の中に,被控訴人の事業は「パーラー事業部」として,訴外シティデザインの事業は「デザイン事業部」として位置付けられている。(甲35~37,39)」(3) 原判決19頁18行目の「記憶で」を「記憶であるが」に改める。 2 争点(1)(控訴人と被控訴人は「競争関係」にあるか)につい 部」として位置付けられている。(甲35~37,39)」(3) 原判決19頁18行目の「記憶で」を「記憶であるが」に改める。 2 争点(1)(控訴人と被控訴人は「競争関係」にあるか)について(1) 不競法2条1項15号の「競争関係」同号は,競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為を不正競争行為と定める。その趣旨は,他人に対する不当な攻撃により,その者の競争条件を不利にしておいて,自ら営業上の競争によって有利な地位に立とうとすることが許されない点にあると解される。 上記の趣旨に照らすと,「競争関係」については,現実の商品販売上の具体的競争関係があることは要しないものの,同種の商品を扱い,あるいは同種の役務を提供するなど,相手方の商品等を誹謗したり,信用を毀損したりするような虚偽の事実を告知することによって,相手方を競争上不利な立場に立たせ,これによって告知者が競争上不当な利益を得るような関係の存在が必要であると解する。 (2) 控訴人と被控訴人の関係控訴人は,パチンコ店向けの販促ツールの開発・販売等を行う事業者であ- 10 -り,被控訴人は,パチンコ店の企画・運営を行う株式会社であるから(前記前提事実(1)),被控訴人は控訴人の商品を購入する顧客という立場にあり,同種の商品を取り扱ったり,同種の役務を提供したりするという関係にはない。また,控訴人の需要者・取引者は主にパチンコ店等の経営者である一方,被控訴人の需要者・取引者は一般顧客であって,被控訴人が他のパチンコ店に販促ツールを販売するといった事実は認められないから,両社の顧客は共通しない。 (3) 控訴人の主張についてア控訴人は,被控訴人が訴外シティコミュニケーションズを筆頭とするシティグループのグループ会社で 販売するといった事実は認められないから,両社の顧客は共通しない。 (3) 控訴人の主張についてア控訴人は,被控訴人が訴外シティコミュニケーションズを筆頭とするシティグループのグループ会社であり,同グループを構成する会社である訴外シティデザインが控訴人と競合する事業を行っていることから,控訴人と被控訴人は競争関係にあると主張する。 確かに,訴外シティコミュニケーションズ,訴外シティデザイン及び被控訴人その他の会社は,「シティグループ」というグループ会社を形成し,訴外シティコミュニケーションズの代表取締役(P7及びP6)がグループの管理部門と営業部門を統括し,営業部門の中にはパーラー事業部として被控訴人が,デザイン事業部として訴外シティデザインがそれぞれ位置付けられていること(前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の1(1)オ),被控訴人の取締役はP3,P6及びP7であり,代表取締役はP3であるところ(前記前提事実(1)),訴外シティデザインの取締役はP7及びP9であり,代表取締役はP7であることからすると(前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の1(1)イ),被控訴人と訴外シティデザインとの間には,人的,資金的なつながりの存在を推認することができる。 しかし,被控訴人と訴外シティデザインは,事業内容を異にしており(前記前提事実(1),前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」- 11 -第3の1(1)イ),実質的に同一の会社であるとまでは認め難い。また,その点を措くとしても,訴外シティデザインが取り扱っている商品のうちゴルフ関連のアプリ「みんなのスイング」及び算数計算アプリ「クイズ!せんごくさんすう」は,いずれも,パチンコ業界と直接関連するものということはできず,控訴人と被控訴人との間で り扱っている商品のうちゴルフ関連のアプリ「みんなのスイング」及び算数計算アプリ「クイズ!せんごくさんすう」は,いずれも,パチンコ業界と直接関連するものということはできず,控訴人と被控訴人との間で,需要者又は取引者を共通にするものとも認め難い。 以上によれば,被控訴人が事実を告知することによって,控訴人を競争上不利な立場に立たせ,これによって被控訴人が競争上不当な利益を得るような関係が存するということはできないというべきである。 イまた,控訴人は,被控訴人が自らの店舗の顧客に対し,メール等で店舗情報を配信するサービスを行っているのであるから,被控訴人の店舗の競合店が控訴人の販促ツールを導入することを阻止すれば被控訴人の利益となるとも主張する。 しかし,上記のような関係を競争関係と評価し得るとしても,それは被控訴人と他の競合するパチンコ店との間に存するのであって(被控訴人の競合店が控訴人の提供する販促ツールの使用を控えることにより,被控訴人が有利となる。),控訴人と被控訴人との間に存するものということはできない(被控訴人の競合店が控訴人の提供する販促ツールの使用を控えることにより,控訴人の売上が減少するとしても,これを控訴人と被控訴人との間の競争関係ということはできない。)。 (4) 本件メッセージの送信と転送本件メッセージの送信と転送は,控訴人と被控訴人間の競争関係を前提として,控訴人に対し,被控訴人が有利な立場に立つという関係にはない。その理由は,原判決「事実及び理由」第3の2(3)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (5) まとめ- 12 -以上によれば,控訴人と被控訴人との間に不競法2条1項15号の「競争関係」があるとは認められない。 3 争点(2)(本件部分の内容が「虚偽の事実」に る。 (5) まとめ- 12 -以上によれば,控訴人と被控訴人との間に不競法2条1項15号の「競争関係」があるとは認められない。 3 争点(2)(本件部分の内容が「虚偽の事実」に当たるか)について(1) はじめに不競法2条1項15号の「虚偽の事実」とは,客観的事実に反する事実をいうが,本件メッセージの受け手が本件部分を読んだ場合,本件講習会において,埼玉県警察の担当者が,本件講習会において,「X1」や「X3」の商品を特定して,これらを用いて特定の機種を示唆する宣伝を行った場合は行政処分の対象となり得る旨の説明がなされたと理解するものと認められる。 しかし,担当者は,商品名を特定しておらず,その点において,客観的事実と齟齬が生じているといえる。 ところで,本件メッセージは,P4が認識した事実を表現したものであるところ,そこには,P4の主観や告知の意図も加わる結果,必ずしも,客観的事実を正確に表現しきれなかったり,齟齬が生じたりすることがあり得る。 しかし,だからといって,本件メッセージ(P4が認識した事実であり,受け手によって認識される事実)が直ちに虚偽の事実となるとはいえない。 そこで,次に,P4が本件メッセージの本件部分に相当する事実を認識するに至った経緯や,これを店長ラインによって告知した経緯を検討することとする。 (2) P4が本件講習会において認識した事実その1(「X1」について)前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の1(3)のとおり,埼玉県警察の担当者は,本件講習会において,店舗からメールでスロットゲームの配信を行い,そのスロットゲームに当選した者に対して,待受画面をプレゼントするという形で画像を送り,それにより機種を示唆するような行為が禁止されることなどを説明したが,その際 ールでスロットゲームの配信を行い,そのスロットゲームに当選した者に対して,待受画面をプレゼントするという形で画像を送り,それにより機種を示唆するような行為が禁止されることなどを説明したが,その際,特定のコンテンツの名称は挙げなかったものの,規制の対象となる当選画面の例を映写した。 - 13 -前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の1(2)のとおり,「X1」は,顧客のメールやラインのアドレス宛にメッセージ及びスロットゲームに誘導する画像等を送信し,顧客がスロットゲームをして大当たりが出た場合に特典として携帯電話用待受画像等を含む当選画面を表示させることを特徴とする集客用コンテンツであり,当選画面に出てくる特定のアニメのキャラクターを見た顧客が,それに関連する機種が当日の推奨機種であると推測し,パチンコ店に出向くことを期待するものであり,担当者の上記説明に該当するものである。それだけではなく,P4は,担当者が映写した当選画面が,「X1」の当選画面と酷似していたため,担当者の説明が,「X1」を利用して機種を示唆する広告を送信した場合,処分の対象になる旨を説明しているものと認識した。 (3) P4が本件講習会において認識した事実その2(「X3」について)また,前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の1(3)のとおり,埼玉県警察の担当者は,本件講習会において,「X1」と同様にゲームをして,当選した者に対し,女性が機種を連想させるようなコスプレをしている画像を送って販促するものも禁止されることを説明した。 前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の1(2)のとおり,「X3」は,同様に顧客のメールやラインのアドレス宛てにメッセージ及びゲームに誘導する画像等を配信し,当選画面に「X6」等の文字及び 1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の1(2)のとおり,「X3」は,同様に顧客のメールやラインのアドレス宛てにメッセージ及びゲームに誘導する画像等を配信し,当選画面に「X6」等の文字及び女性の写真を表示させることを特徴とする集客用コンテンツであり,当選画面における女性の服装や所持品等により,特定の機種を示唆することができ,写真を見た顧客が,示唆された機種が当日の推奨機種であると推測して,パチンコ店に出向くことを期待するものであり,担当者の上記説明に該当するものであった。 上記説明の際,特定のコンテンツの名称は挙げず,規制の対象となる当選画面の例を映写することもなかったが,P4は,以前,店長として出席した- 14 -会議の中で,「X3」が発売されると聞いたことがあり,その商品の特徴から,担当者が説明する集客用コンテンツは,「X3」であり,パチンコ店がこれを利用して,機種を示唆する宣伝を行った場合,処分されるものと認識した。 (4) 本件メッセージを作成,送信する必要性P4が本件メッセージを送信した相手(情報の受け手)は,店長ラインの構成員である。店長ラインの構成員は被控訴人の経営する各店舗の店長や本社の従業員等17名であり(前記前提事実(4)),パチンコ店の業務を円滑に遂行する上で,どのような広告宣伝行為が警察による規制の対象となるのかを理解しておかなければならず,本件講習会で説明された内容を迅速かつわかりやすく共有する必要性が高かったというべきである。 そのような受け手の性質に照らすと,伝えられる情報の内容として重要なのは,どのような広告宣伝行為が警察による規制の対象となるかという点である。 そこで検討するに,本件講習会において「X1」や「X3」という具体的な商品名が明示されることはなかったものの(前 要なのは,どのような広告宣伝行為が警察による規制の対象となるかという点である。 そこで検討するに,本件講習会において「X1」や「X3」という具体的な商品名が明示されることはなかったものの(前記前提事実(3)),埼玉県警察の担当者の説明内容は,前記(2)及び(3)で説明したP4の認識したとおりであって,「X1」と「X3」を例にして説明するというものであったということができる。 そうすると,P4としては,店長ラインの構成員との間で広告宣伝の規制対象となる行為を迅速に,かつ,わかりやすく共有する目的で,「X1」や「X3」を用いて,特定の機種を示唆するような形式の広告宣伝行為が禁止されることになった旨を伝えなくてはならず,端的に「名指しでX1は禁止。 (機種画像を送るなら)」,「名指しでX4で機種,メーカーなどを示唆する物は禁止。」と表現したものといえる。 以上を総合すると,P4による本件メッセージの本件部分をもって,「虚- 15 -偽の事実」に当たるということはできない。 (5) P5による本件メッセージの転送について前述したとおり,本件メッセージの本件部分が虚偽の事実ということはできないので,P5の転送についても,これを虚偽の事実の告知又は流布ということはできない。 (6) まとめ以上のとおり,P4が店長ラインに送信し,P5が取材会社に転送した本件メッセージは,「虚偽の事実」に当たらない。 4 争点(4)(不法行為責任及び使用者責任の有無)について当裁判所も,P4が本件メッセージを店長ラインに送信した行為及びP5が本件メッセージを取材会社に転送した行為は,いずれも,不法行為を構成するものではなく,そのため被控訴人に使用者責任は成立しないと判断する。その理由は,原判決「事実及び理由」第3の4(原判決24頁1 本件メッセージを取材会社に転送した行為は,いずれも,不法行為を構成するものではなく,そのため被控訴人に使用者責任は成立しないと判断する。その理由は,原判決「事実及び理由」第3の4(原判決24頁1行目から25頁7行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 これに対し,控訴人は,ジーズの担当者であるP8が,P5から外部に出さないよう要望されたことはなかったと述べている旨主張する。 しかし,社内の共有内容を業務上の理由から取引先等に連絡する場合は,情報管理を慎重にするよう依頼するのが通常であること,控訴人が根拠とする通話記録(甲42~44)は,令和2年4月の通話内容が記録されたものであるところ,本件メッセージが転送されたのは平成30年10月であって,相当程度の期間が経過しており,記憶が減退していてもおかしくないこと,P8は,被控訴人担当者からの質問に対して,P5からの電話については覚えていないという内容の回答をしているのであって,P5からの要望があったことを否定しているわけではないこと(乙8)に照らし,控訴人の上記主張は採用することができない。 5 小括- 16 -以上のとおりで,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がない。 第4 結論よって,以上の判断と同旨の原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官倉地康弘 裁判官三井教匡 - 17 -(※ 別紙「謝罪広告目録」及び「掲載条件目録」は省略) 三井教匡
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