平成24年7月17日判決言渡平成23年(行ケ)第10098号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年6月26日判決原告新世代株式会社被告特許庁長官指定代理人仁科雅弘同鈴野幹夫同田部元史同横井巨人同芦葉松美 主文 1 特許庁が不服2009-17930号事件について平成23年2月9日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「ストロボスコープを使った入力システムを備える情報処理装置」とする発明について,特許法41条に基づく優先権を主張して平成14年11月28日に特許出願をした(特願2002-346052。優先日:平成14年6月27日,以下「本願」という。)。 原告は,平成21年7月2日付けで拒絶査定を受け,同年9月24日,拒絶査定不服審判(不服2009-17930号事件)を請求した。 特許庁は,平成23年2月9日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同月22日に原告に送達された。 2 特許請求の範囲平成21年2月17日付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1は次のとお 。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同月22日に原告に送達された。 2 特許請求の範囲平成21年2月17日付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1は次のとおりである。 「【請求項1】ストロボスコープを使った入力システムを備える情報処理装置であって,ストロボスコープ,前記ストロボスコープの発光時および非発光時にそれぞれ対象物を撮影する撮像手段,前記ストロボスコープの発光時の映像信号と非発光時の映像信号との差に基づいて,前記対象物の位置,大きさ,速度,加速度および運動軌跡パターンの情報の一部または全部を算出する第1の手段,および前記第1の手段によって算出された前記情報に基づき情報処理を行う第2の手段を備え,前記対象物は再帰反射体を含む,情報処理装置。」(以下「本願発明」という。) 3 本件審決の理由本件審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであり,その要旨は,次のとおりである。 (1) 容易想到性について本願発明は,特開平4-241885号公報(甲1。以下「刊行物1」という。)に記載された発明並びに特開平10-222285号公報(甲2。以下「刊行物2」という。)及び特開2001-209487号公報(甲3。以下「刊行物3」という。)に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (2) 本件審決が,上記判断を導く過程において認定した刊行物1記載の発明,本 願発明と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点,刊行物2,3記載の技術は,次のとおりである。 ア刊行物1記載の発明「ストロボライト20を間欠的発光させて多重高速撮影した画像データをCPU3で画像処理す 物1記載の発明との一致点及び相違点,刊行物2,3記載の技術は,次のとおりである。 ア刊行物1記載の発明「ストロボライト20を間欠的発光させて多重高速撮影した画像データをCPU3で画像処理するゴルフゲーム模擬装置の制御手段であって,ストロボライト20,前記ストロボライト20の間欠的発光が行われると同時にゴルフボール13とゴルフクラブ34を高速多重撮影するCCDカメラ14,15,前記CCDカメラ14,15から出力された画像データを二値化して,前記ゴルフボール13とゴルフクラブ34の外形形状の認識を行ない,クラブヘッドの進入向き,打点位置,ボールスピード,飛出し角度を算出し,これらのデータからボール13のバックスピン量,サイドスピン量を算出し,ボールの弾道計算を行って飛行位置の計算を行い,さらに,ボールの各飛翔位置,落下位置,転がり,停止位置をCRTディスプレイ10に示されているコースマップ上に表示するCPU3,および,そのデータが送信され,スクリーン9上にボール弾道を表示するCPU5を備えるゴルフゲーム模擬装置の制御手段。」イ一致点「ストロボスコープを使った入力システムを備える情報処理装置であって,ストロボスコープ,前記ストロボスコープの発光時に対象物を撮影する撮像手段,前記ストロボスコープの発光時の映像信号に基づいて,前記対象物の情報を算出する第1の手段,および前記第1の手段によって算出された前記情報に基づき情報処理を行う第2の手段を備える情報処理装置。」ウ相違点(ア) 相違点1 本願発明では,撮像手段が対象物を「(ストロボスコープの)発光時および非発光時にそれぞれ」撮影しており,情報の算出を「発光時の映像信号と非発光時の映像信号との差」に基づいて行っているのに対して,刊行物1 では,撮像手段が対象物を「(ストロボスコープの)発光時および非発光時にそれぞれ」撮影しており,情報の算出を「発光時の映像信号と非発光時の映像信号との差」に基づいて行っているのに対して,刊行物1記載の発明では,撮像手段が対象物を撮影するのは発光時のみであって,情報の算出も発光時の映像信号のみに基づいて行っている点。 (イ) 相違点2算出される情報が,本願発明では,「(対象物の)位置,大きさ,速度,加速度および運動軌跡パターンの一部または全部」であるのに対して,刊行物1記載の発明では,(ゴルフボール13とゴルフクラブ34の)外形形状,クラブヘッドの進入向き,打点位置,ボールスピード,飛出し角度である点。 (ウ) 相違点3撮影される対象物が,本願発明では,「再帰反射体を含む」のに対して,刊行物1記載の発明では,再帰反射体を含まない点。 エ刊行物2記載の技術「情報処理装置([画像抽出装置]。なお[]は刊行物2の用語を示す。以下同様。)において,ストロボスコープ([照明光]又は[発光手段101])の発光時および非発光時にそれぞれ撮影し,発光時の映像信号([照明光を対象物体に照射して得た画像]又は[第1の受光手段109で受光した像])と非発光時の映像信号([外光のみの光があたる環境下で得た対象物体の画像]又は[第2の受光手段110で受光した像])との差に基づいて情報の算出を行うこと」オ刊行物3記載の技術「情報処理装置([筆跡通信システム]。なお[]は刊行物3の用語を示す。以下同様。)において,対象物([筆記用具])が再帰反射体([再帰反射部材])を含むことにより,撮像する画像から再帰反射体([再帰反射部材])の像を容易に区別でき,対象物([筆記用具])の指示位置の検出が容易になること」第3 当事者の主張 体([再帰反射部材])を含むことにより,撮像する画像から再帰反射体([再帰反射部材])の像を容易に区別でき,対象物([筆記用具])の指示位置の検出が容易になること」第3 当事者の主張 1 取消事由に関する原告の主張本件審決は,本願発明と刊行物1記載の発明との相違点1,3についての判断を誤り(取消事由1-1,-2),本願発明の顕著な作用効果を看過し(取消事由2),本願発明と刊行物1記載の発明との相違点を看過し(取消事由3),刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術,刊行物3記載の技術との組合せ阻害要因を看過した(取消事由4)ものであり,本件審決の結論に影響を及ぼすから,違法として取り消されるべきである。 (1) 相違点1についての判断の誤り(取消事由1-1)ア本件審決は,ノイズ成分を除去する刊行物2記載の技術が本願の優先日前から公知なのであるから,刊行物1記載の発明において,照明等のノイズ成分が生じるおそれがある場合に,刊行物2記載の技術の「ストロボスコープの発光時および非発光時にそれぞれ」撮影し,かつ,「発光時の映像信号と非発光時の映像信号との差」に基づいて情報の算出を行う事項を適用することは,当業者が容易に想到し得たことであると判断したが,誤りである。 イ刊行物1では,プレイヤー1がゴルフクラブ34でボール13を打球するのを高速多重撮影する際は,室内は暗い。また,刊行物1の【図2】に示されるように,CCDカメラ14は,ゴルフボール13と同等の高さで,かつ,ゴルフボール13を正面から撮影する場所に配置され,CCDカメラ15は,天井に配置され,真下を撮影する。以上のように,室内が暗いことと,CCDカメラ14,15の配置から,刊行物1記載の発明では,映像信号に写り込んだ太陽光や白熱灯を除去するといった本願発明の課 15は,天井に配置され,真下を撮影する。以上のように,室内が暗いことと,CCDカメラ14,15の配置から,刊行物1記載の発明では,映像信号に写り込んだ太陽光や白熱灯を除去するといった本願発明の課題は存在しない。そして,刊行物1記載の発明に,本願発明の課題(差分をとる理由)が存在しない以上,刊行物1記載の発明に,発光時及び非発光時の差分を計算する刊行物2記載の技術を適用することの動機づけはない。 ウ刊行物1の【図2】に図示されるように,被告がノイズ成分として挙げる光源(ストロボランプ20,CRTディスプレイ10,プロジェクター8及びスクリーン9)は,カメラ14及びカメラ15から見て,対象物(ゴルフボール13,ゴ ルフクラブ34)の背景に配置されないから,これらの光源が,ノイズ成分として無視できない程度のものとは考えにくい。 刊行物1では,暗所での高速多重撮影を条件とするので,段落【0014】が,室外の明るい場所や高速多重撮影の際に外光が入る環境にゴルフゲーム模擬装置を設置できることを意図した記載でないことは明らかであり,暗所を確保できる空間の例として「室内」を挙げたにすぎないから,刊行物1において,ゴルフゲーム模擬装置が配置される空間では,高速多重撮影の際に外光がノイズ成分となることはない。 本願発明は,「特定の使用環境」ではない「一般家庭の室内」でのノイズを除去することを課題とする。刊行物1では,ゴルフゲーム模擬装置は,「特定の使用環境」に置かれ,本願発明が想定する「一般家庭の室内」(段落【0006】)ではない。 そして,刊行物1では,ゴルフゲーム模擬装置が「特定の使用環境」に置かれるので,ノイズ成分が無視できない程度に生じるとの被告の認識は失当である。 (2) 相違点3についての判断の誤り(取消事由1-2)ア本件審 では,ゴルフゲーム模擬装置が「特定の使用環境」に置かれるので,ノイズ成分が無視できない程度に生じるとの被告の認識は失当である。 (2) 相違点3についての判断の誤り(取消事由1-2)ア本件審決は,「刊行物1記載の発明と刊行物3記載の技術は,いずれも撮影された画像から対象物の位置を検出するものであるから,刊行物1記載の発明において,対象物の位置の検出を容易に行うために,刊行物3記載の技術の対象物が「再帰反射体を含む」事項を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである」と判断したが,誤りである。 イ刊行物1記載の発明では,【図2】に示されるように,CCDカメラ14は床面に配置され,CCDカメラ15は天井に配置され,ストロボランプ20は,床面から少し離れた,プレイヤー1の腰の高さ付近に配置される。一方,刊行物3では,「再帰反射テープ6の部分はTVカメラ4に設けられたLED5の発する光を光源の方向へ返」す(段落【0026】)。これは,再帰反射材の一般的な性質であり,光源からの光は,再帰反射材に反射されると,その反射光は,光源に戻って行く。 したがって,刊行物1記載の発明のゴルフクラブ34に,刊行物3の再帰反射材 を取り付けた場合,刊行物1記載の発明のCCDカメラ14,15及びストロボランプ20の配置では,ストロボランプ20からの光をゴルフクラブ34に照射しても,反射光はストロボランプ20に戻り,CCDカメラ14,15には入射せず,撮影ができない。この点は,ボール13に再帰反射材を取り付けた場合でも同じである。このことは,刊行物1記載の発明に,刊行物3記載の技術を適用することの阻害要因となる。刊行物1によれば,CCDカメラ14,15はゴルフボール13及びゴルフクラブ34を前方正面及び上方から多重高速撮影するので,CCDカメ 記載の発明に,刊行物3記載の技術を適用することの阻害要因となる。刊行物1によれば,CCDカメラ14,15はゴルフボール13及びゴルフクラブ34を前方正面及び上方から多重高速撮影するので,CCDカメラ14,15の位置は【図2】に図示された配置に必然的に決定される(段落【0018】,【0026】)から,再帰反射された光を受光するためにストロボランプ20の位置をカメラ14とほぼ同一の方向に向けて配置するならば,カメラ15には反射光が入射せず,カメラ15の存在意義が没却され,逆に再帰反射された光を受光するためにストロボランプ20の位置をカメラ15とほぼ同一の方向に向けて配置するならば,カメラ14には反射光が入射せず,カメラ14の存在意義が没却され,刊行物1記載の発明の目的を達成することができない。 また,刊行物1記載の発明の目的は,段落【0004】に記載されるように,「実際のゴルフコースでゴルフゲームをしているような体感を覚えることができ,しかも,メンテナンスが容易なゴルフゲーム模擬装置を提供」することである。仮に,刊行物1記載発明のゴルフクラブ34のクラブヘッドやボール13に,刊行物3記載の再帰反射材を取り付けたとすると,クラブヘッドとボール13とは毎回激しい衝突を行うものであるので,再帰反射材が破損することもあり,頻繁にメンテナンスを行うことが要求されるものと推測できる。したがって,刊行物1記載の発明の目的(メンテナンスの容易性)を阻害してまで,当業者が,刊行物1記載の発明に刊行物3記載の技術を適用することは考え難い。 (3) 本願発明の顕著な作用効果の看過(取消事由2)ア本件審決は,「本願発明が奏する効果は,刊行物1記載の発明,並びに,刊行物2及び3に記載された技術から予測できる範囲内のものであって,格別なもので はない 作用効果の看過(取消事由2)ア本件審決は,「本願発明が奏する効果は,刊行物1記載の発明,並びに,刊行物2及び3に記載された技術から予測できる範囲内のものであって,格別なもので はない」と判断したが,誤りである。 イ本願発明では,対象物は再帰反射体を含み,再帰反射体からの反射光は,強度を維持したまま再帰反射して戻っていく(再帰反射体が理想的な場合。ただし,精度の高い再帰反射体でない場合でも,撮影手段による受光強度は,表面が一様な散乱面からの反射光の受光強度に比べて大きくなる。)から,刊行物2記載の技術(刊行物2の【図1】の装置)と比較して,対象物から撮像手段までの遠近に強く依存することなく,対象物を精度良く検出することができる(本願発明の第1の効果)。 ウ刊行物2記載の技術では,対象物体の距離の変動による反射光画像の画質への影響を抑制するため,発光状態決定手段501及び最大画素値検出手段500を搭載する(【図17】参照)ように,追加の回路や制御が必要となる。これに対して,本願発明では,対象物に再帰反射体を設けるだけで追加の回路や制御を必要とすることなく,簡易かつ安価に撮影手段と撮影対象物との間の距離の変動の問題を解決できる(本願発明の第2の効果)。 エ刊行物2記載の技術では,対象物体106よりも反射光抽出手段103に近い位置に非対象物体が存在する場合は,差分画像上では,抽出されては困る非対象物体が対象物体106よりも強く写り込んでしまい,対象物体106の検出が困難ないしは,できなくなる。これに対して,本願発明では,対象物よりも撮像手段に近い位置に非対象物が存在する場合でも,対象物は再帰反射体を含むので,非対象物より強くはっきりと差分画像に写り込み,対象物を精度良く検出できる(本願発明の第3の効果)。 オ刊行物 りも撮像手段に近い位置に非対象物が存在する場合でも,対象物は再帰反射体を含むので,非対象物より強くはっきりと差分画像に写り込み,対象物を精度良く検出できる(本願発明の第3の効果)。 オ刊行物2記載の技術では,撮影手段と撮影対象物との間の距離の変動の問題を解決する場合,表面が一様な散乱面である手を撮影するので,遠くの対象物には強い発光が必要になる。これに対して,本願発明では,再帰反射体を具備することで,刊行物2記載の技術と比較して,小さい発光量でも,遠くの再帰反射体を検出でき(本願発明の第4の効果),省エネルギーの観点からも刊行物2記載の技術より優れた顕著な効果を奏する。 カ本願発明では,対象物に再帰反射体を含めることにより,ストロボスコープの発光時と非発光時との差が際立ち,精度良く対象物を検出できる(本願発明の第5の効果)。これに対して,刊行物1記載の発明及び刊行物3記載の技術では,発光時と非発光時との差分を求めておらず,発光時と非発光時との差を際立たせるといった課題は存在しない。また,刊行物2には,発光時と非発光時との差を際立たせるといった課題を示唆する記載はない。したがって,再帰反射体を具備したことに基づく本願発明の第5の効果は,刊行物1~3に記載の構成から予想し得るであろう範囲を超えた格別に顕著な作用効果である。 キ上記本願発明の第1~第5の効果については本願の明細書等に明記されていないが,明細書等から当業者がこれらの効果を推論できることは明らかである。 (4) 本願発明と刊行物1記載の発明との相違点の看過(取消事由3)ア刊行物1記載の発明は,暗所において(甲1の段落【0015】,【0030】),ストロボランプ(ストロボスコープ)を使用し(甲1の【図1】),高速で多重撮影を行う(甲1の段落【0032】 3)ア刊行物1記載の発明は,暗所において(甲1の段落【0015】,【0030】),ストロボランプ(ストロボスコープ)を使用し(甲1の【図1】),高速で多重撮影を行う(甲1の段落【0032】)。これは,刊行物1記載の発明が,一般的なストロボ撮影を行っていることを示す。 これに対して,本願発明では,一般的なストロボ撮影,すなわち,多重撮影を行っていない。本願発明では,「撮像手段」は,「前記ストロボスコープの発光時および非発光時にそれぞれ対象物を撮影」する。 イ刊行物2記載の技術では,発光手段の発光時と非発光時のそれぞれにおいて,電荷蓄積期間を設けており,多重撮影を行っていない(甲2の段落【0079】,【図5】)。このように,副引用発明である刊行物2記載の技術は多重撮影を行わず,一方,主引用発明である刊行物1記載の発明は多重撮影を行うものであり,両者は全く異なる機能,作用を有する,異なる技術である。 ウしたがって,主引用発明と副引用発明とを組み合わせる動機づけは存在しないから,本件審決が,「刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基づいて,上記相違点1に係る事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである」とし た判断は誤りである。 (5) 刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術,刊行物3記載の技術との組合せ阻害要因の看過(取消事由4)ア刊行物2記載の技術は,段落【0021】に記載されているように,手や身体の一部に色マーカや発光部を取り付けなくても,簡易に動きを入力できる入力装置を提供することを目的とする。一方,刊行物3記載の技術は,入力手段(筆記用具)に再帰反射材(マーカに相当)を取り付けるものである。 したがって,刊行物1記載の発明に,刊行物2記載の技術と刊行物3記載の技術とを同時に適用することは, 刊行物3記載の技術は,入力手段(筆記用具)に再帰反射材(マーカに相当)を取り付けるものである。 したがって,刊行物1記載の発明に,刊行物2記載の技術と刊行物3記載の技術とを同時に適用することは,刊行物2記載の技術の目的を阻害する。 よって,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術を適用しようとする場合は,刊行物1記載の発明に刊行物3記載の技術を適用することはできない。逆に,刊行物1記載の発明に刊行物3記載の技術を適用しようとする場合は,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術を適用することはできない。以上のように,刊行物1記載の発明に,刊行物2及び刊行物3記載の各技術を同時に組み合わせることに対して阻害要因が存在する。 イしたがって,審決が,「本願発明は,刊行物1記載の発明,並びに,刊行物2及び3に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである」とした判断は誤りである。 2 被告の反論(1) 相違点1についての判断の誤り(取消事由1-1)に対しア刊行物1記載の実施例のゴルフゲーム模擬装置内において,CCDカメラ14,15が撮影を行っている時点で光源となり得るものとしては,「ストロボランプ20」,「CRTディスプレイ10」,「プロジェクター8」及び「スクリーン9」がある。そして,CCDカメラ14,15で検出される光のうち,上記各光源からの直接光,及び,ストロボランプ20から発光され,ゴルフクラブ13又はゴルフクラブ34によって反射された反射光以外の反射光が,審決でいうとこ ろの「ノイズ成分」に相当する。また,刊行物1の段落【0014】には,「この発明の一実施例のゴルフゲーム模擬装置は,たとえば室内に設置され」と記載されるように,刊行物1 記載の発明のゴルフゲーム模擬装置の設置場所は,実施例の 。また,刊行物1の段落【0014】には,「この発明の一実施例のゴルフゲーム模擬装置は,たとえば室内に設置され」と記載されるように,刊行物1 記載の発明のゴルフゲーム模擬装置の設置場所は,実施例のような室内に限定されていない。したがって,刊行物1 記載の発明のゴルフゲーム模擬装置は,それが室外に設置される場合には,外光も上記「ノイズ成分」となる可能性があるものである。してみると,本件審決が述べたように,刊行物1記載の発明のゴルフゲーム模擬装置において,「使用する環境により」,上記ノイズ成分が無視できない程度に生じることが考えられ,このような場合などに,「必要に応じて対象物以外のノイズ成分を除去すべきことは,当業者が当然に想定するべき一般的な課題に過ぎず」(本件審決8頁22~24行目),刊行物1に記載の発明において,ノイズ成分を除去しようとする動機づけがないとはいえない。 イ刊行物1(甲1)の【図2】に記載の実施例では,対象物(ゴルフボール13,ゴルフクラブ34)の背景には,符号「1」で示されるプレイヤーがおり,プレイヤーの衣服や装身具等により反射された光がノイズ成分となるおそれがあることは明らかである。また,刊行物1記載のゴルフゲーム模擬装置においては,プレイ中にスクリーン9やCRTディスプレイ10に動画が表示されており,ノイズ成分となる光は,CCDカメラ正面から到達する光のみではなく,スクリーン9やCRTディスプレイ10の映像に由来する光もノイズとなり得るものである。 また,原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものではない。本願の明細書段落【0089】は,設置場所の例示にすぎず,設置場所を原告が主張するように,「一般家庭の室内」と限定的に解釈すべき理由は見当たらない。現に,出願当初の明細書(甲4)の段落【0036】には,「 細書段落【0089】は,設置場所の例示にすぎず,設置場所を原告が主張するように,「一般家庭の室内」と限定的に解釈すべき理由は見当たらない。現に,出願当初の明細書(甲4)の段落【0036】には,「医療機器等のマンマシンインターフェース」が用途の1つに挙げられていた。 (2) 相違点3についての判断の誤り(取消事由1-2)に対しア乙1の1頁に定義されるように,「再帰反射」とは,「広い照射角にわたって, 入射光の方向にほぼ沿う方向に,選択的に反射光が戻るような反射」であり,「再帰性反射体」とは,「その反射光のほとんどが再帰反射である面又は器具」である。再帰性反射体は,乙1に記載されるように「反射シートや車両用反射器として広く用いられている」ものであり,夜道において,車両のヘッドライトから少しずれた位置に着席する運転者が,前方の車両に取り付けられた反射器や,反射シートを備える道路標識を容易に認識できるように,再帰性反射体により反射された光は,光源に完全に一致する方向だけではなく,光源の近傍周囲の方向にも届くものであることは,技術常識である。そして,刊行物3には,段落【0026】,段落【0046】に記載されるように,再帰性反射体を利用すると,反射光が光源の近傍周囲の方向に戻るため,光源の近傍に設けられたカメラで撮像した際に明るく写り,再帰性反射体の像を容易に区別して検出できることが示されている。 ここで刊行物1の記載についてみるに,刊行物1の【図2】には,符号「20」で示されるストロボランプと,符号「14」で示されるCCDカメラとを,ほぼ同一の方向に向けて配置した様子が記載されているものの,ストロボランプ20とCCDカメラ14,15との位置関係が,【図2】に図示されたようなものに限定されることを示す記載もないので,上記技術 ,ほぼ同一の方向に向けて配置した様子が記載されているものの,ストロボランプ20とCCDカメラ14,15との位置関係が,【図2】に図示されたようなものに限定されることを示す記載もないので,上記技術常識も考慮すれば,刊行物1記載の発明において,対象物の検出を容易に行うために,刊行物3記載の技術の再帰反射部材を適用して,再帰反射部材で反射された光を撮像するようにすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。してみると,刊行物1の【図2】に図示されているストロボランプ20とCCDカメラ14,15との位置関係が,ゴルフクラブ34に上記再帰反射部材を取り付けた場合に,当該再帰反射部材によって反射されたストロボランプ20からの光が,CCDカメラ14,15に入射しないような関係であるとしても,そのこと自体は,刊行物1記載の発明に刊行物3記載の技術を適用することを妨げる事情とはならない。 刊行物1記載の発明において刊行物3記載の再帰反射材に係る技術を適用することにより,複数あるCCDカメラ14,15の一方で対象物検出が難しくなるので あれば,各カメラに対応したストロボランプを設け,これらを同期させて発光させるようにすることは,当業者であれば適宜なし得ることである。また,刊行物2記載の技術は,1つの「反射光抽出手段102」によりジェスチャーやポインティングなどの情報を得ることができるものでもあるところ(【図2】),刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術を適用することにより,刊行物1記載発明のゴルフボール13やゴルフクラブ34の動きは,「CCDカメラ14」から置き換えられた「反射光抽出手段102」により認識できるので,仮にCCDカメラの台数が1台になったとしても,刊行物1記載の発明の目的が達成できなくなるようなことはない。 イ刊行物1記載 14」から置き換えられた「反射光抽出手段102」により認識できるので,仮にCCDカメラの台数が1台になったとしても,刊行物1記載の発明の目的が達成できなくなるようなことはない。 イ刊行物1記載のゴルフクラブ34のクラブヘッドやゴルフボール13に刊行物3記載の再帰反射部材を設ける場合には,これらのストロボランプ20(CCDカメラ14)の方向に面する部位に設ける必要があることは自明であり,クラブヘッドとゴルフボールとが相互に衝突し合う部位,すなわち,ストロボランプ20に面する方向とは平行で,ストロボランプ20からの照射光が届きにくいような面に設けるようなことはしないと考えるのが普通である。このように,クラブヘッドとゴルフボールとが相互に衝突し合う部位に再帰性反射体を設けるわけではないことを前提とすると,原告主張のような阻害要因があるとはいえない。 ウ本願発明には,ストロボスコープの設置数や,対象物が備える再帰反射材の数について特定できる記載はなく,本願の発明の詳細な説明にも,これらの数が特定のものに限定される旨の記載はない,一方,プロセサやコンピュータの数が増えることも容認している(段落【0147】)。他方,刊行物1には,ストロボランプの配置が【図2】に示されたようなものに限定されることを示す記載はないから,刊行物1記載の発明において刊行物3記載の再帰反射材に係る技術を適用することにより,複数あるCCDカメラ14,15の一方で対象物検出が難しくなるのであれば,各カメラに対応したストロボランプを設け,これらを同期させて発光させるようにすることは,当業者であれば適宜なし得ることである。 (3) 本願発明の顕著な作用効果の看過(取消事由2)に対し 再帰反射は,乙1に記載されたとおり「広い照射角にわたって,入射光の方向にほぼ沿 は,当業者であれば適宜なし得ることである。 (3) 本願発明の顕著な作用効果の看過(取消事由2)に対し 再帰反射は,乙1に記載されたとおり「広い照射角にわたって,入射光の方向にほぼ沿う方向に,選択的に反射光が戻るような反射」であるところ,一般的な反射との対比において,反射光の輝度が高く,距離による影響が小さくなるとの作用効果が得られることは自明である。このような作用効果については,刊行物3の段落【0026】の記載,乙2の請求項1に再帰反射性材料を「測量用標的装置」に適用することが開示されていること,乙2の2頁左欄22~36行目の「《作用》球状レンズによる屈折と反射層とで照射光軸に平行な理想的再帰性反射が得られる。……視準器側からの照射光源により自然光等の外的反射光と区別することができる」との記載,同3頁左欄1~8行目の「《効果》……本考案の測量用標的は何れも光の反射効率や輝度を良好に保つ構成がなされているので,……測点の画像が良好な輝点となる輝度を出し易く,自動的な視準を得やすくしている。……標的の反射光がコントラストを明瞭にしているので,視準が容易である」との記載によっても裏付けられている。 したがって,原告主張の本願発明の第1,第3~第5の効果は,再帰性反射体を使用したことにより生じる再帰反射自体による自明な作用効果であって,刊行物3の記載から当業者が予測し得たものである。 また,このような作用効果を有する再帰反射は,乙1の8~9頁に記載された解説図1,2の記載から明らかなように,再帰性反射体によって生じるものであり,その再帰反射に回路や制御を必要としないことも自明である。よって,原告主張の本願発明の第2の効果は,再帰性反射体を使用したこと自体による自明な作用効果であって,刊行物3の記載から当業者が予測し得たもので 再帰反射に回路や制御を必要としないことも自明である。よって,原告主張の本願発明の第2の効果は,再帰性反射体を使用したこと自体による自明な作用効果であって,刊行物3の記載から当業者が予測し得たものである。 さらに,上記各作用効果は,原告も認めるように本願の明細書及び図面に記載されたものではない。原告は,明細書等の記載からこれらの作用効果は推論できると主張するものの,これらの作用効果が上記のとおり自明なものであるがゆえに,推論できたものというべきである。 したがって,本件審決の効果の予測性についての判断に誤りはない。 (4) 本願発明と刊行物1記載の発明との相違点の看過(取消事由3)に対しア刊行物1には,ストロボの発光とカメラの撮影との関係について,以下の記載がある。 「【0018】CPU3はマルチバスコントローラ19を介して画像制御器32に接続される。画像制御器32にはCCDカメラ14,15と……とストロボ電源33が接続される。CCDカメラ14,15はプレイヤー1が打球するのを前方正面および上方から多重高速撮影する。……ストロボ電源33はストロボランプ20を発光させる。ストロボランプ20が発光すると,CCDカメラ14,15は……撮影する。画像制御器32には同期I/O16とフレームメモリ17,18が接続される。同期I/O16は画像制御器32を介してCCDカメラ14,15に同期信号を与える。フレームメモリ17,18はCCDカメラ14,15で撮影された画像データを記憶する。」「【0023】……プレイヤー1の正面前方と上方に設けられているCCDカメラ14,15には,画像制御器32に接続された同期I/Oボード16から同期信号が与えられる。CCDカメラ14,15の撮影出力である画像信号はフレームメモリ17,18に与えられて記 れているCCDカメラ14,15には,画像制御器32に接続された同期I/Oボード16から同期信号が与えられる。CCDカメラ14,15の撮影出力である画像信号はフレームメモリ17,18に与えられて記憶される。フレームメモリ17,18に記憶された画像はマルチバスコントローラ19を介してCPU3に与えられる。CPU3は同期I/Oボード16から出力される同期信号に同期させてストロボ電源33に制御信号を与え,ストロボランプ20を間欠的に閃光させる。同時に,CPU3はCCDカメラ15の出力の画像信号を記憶しているフレームメモリ18で画像処理方法の1つである二値化を行ない……」しかしながら,上記刊行物1の記載からは,刊行物1記載の発明の「多重撮影」の態様が,甲8(22頁(A)欄)に記載されたタイミングチャートの態様(以下「原告主張態様」という。)のものとは断定できない。 一方,「多重撮影」の態様としては,乙3(第1図),乙4(【図1】)及び乙5(【図3】)に開示されるようなタイミングチャートの態様(以下「第二態様」とい う。)のものもあり,刊行物1記載の発明の「多重撮影」の態様が,第二態様のものであることも否定できない。そして,刊行物1記載の発明の「多重撮影」が,原告主張態様のものであるか第二態様のものであるかにかかわらず,上記刊行物1の記載から,二値化される画像信号がストロボランプ20の発光時の画像信号であることは明らかであるので,本件審決には,原告が主張するような相違点認定の看過はない。 イ刊行物1記載の発明の「多重撮影」が原告主張態様又は第二態様のいずれのものであるかにかかわらず,刊行物1記載の発明のゴルフゲーム模擬装置では,ノイズ成分が無視できない程度に生じると考えられ,このような場合などに,必要に応じて対象物以外のノイ 様又は第二態様のいずれのものであるかにかかわらず,刊行物1記載の発明のゴルフゲーム模擬装置では,ノイズ成分が無視できない程度に生じると考えられ,このような場合などに,必要に応じて対象物以外のノイズ成分を除去すべきことは,当業者が当然に想定するべき一般的な課題にすぎず,一方,刊行物2には,当該一般的な課題の解決手段であるノイズ成分を除去するための発明が開示されているから,一般的な課題及びその解決手段との観点から,両発明を組み合わせる動機づけがあるというべきである。 機能及び作用の観点から検討しても,刊行物1記載の発明の「多重撮影」が第二態様のものとすると,刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術とは,ストロボの発光とカメラの露光とが同期する多重撮影である点において,共通の機能及び作用を有する。刊行物1記載の発明の「多重撮影」が原告主張態様のものとしても,両発明は,動きのある対象物を,ストロボスコープを使用して撮影し,その動きを認識するという共通の機能及び作用を有するものであり,刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術とは,全く異なる技術ではない。 (5) 刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術,刊行物3記載の技術との組合せ阻害要因の看過(取消事由4)に対し原告が引用する刊行物2の段落【0021】は,従来技術を説明するものであって,その記載は以下のとおりである。 「【0021】……また,手や身体の一部に色マーカーや発光部を取り付け,画像によりそれらを検出し,手・身体の形,動きなどを捉える装置もあり,一部実用化さ れている。しかし使用者の利便性を考えると,操作の度に装置を装着しなくてはならないというのは大きなデメリットであり,応用範囲を非常に制約する。また,データグローブの例に見られるように,装置を手などの可動部に装着して使用 者の利便性を考えると,操作の度に装置を装着しなくてはならないというのは大きなデメリットであり,応用範囲を非常に制約する。また,データグローブの例に見られるように,装置を手などの可動部に装着して使用する装置は耐久性が問題になりやすい。」この記載から明らかなように,同段落は,使用者の「手や身体の一部に色マーカーや発光部を取り付け,画像によりそれらを検出し,手・身体の形,動き」を認識する場合においては,「操作の度に装置を装着しなくてはならない」こと等が問題であることを説明するものである。すなわち,手や身体の一部にマーカー等を装着する場合における問題を説明するものにすぎず,手や身体以外の物品等にマーカー等を装着する場合について述べたものではない。本件審決が,刊行物2記載の技術を適用するとしている刊行物1記載の発明は,「ゴルフボール13とゴルフクラブ34の外形形状」を認識対象とするものであって,上記問題は無関係である。 本件審決で認定した,刊行物2記載の技術は,対象物がどのようなものに対しても適用できる技術であることは当業者に明らかであり,本件審決には,原告が主張するような組合せ阻害要因はない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,原告主張の取消事由1-2(相違点3についての判断の誤り)及び取消事由4(刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術,刊行物3記載の技術との組合せ阻害要因の看過)は理由があり,審決は,違法として取り消されるべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 取消事由1-2(相違点3についての判断の誤り)について(1) 本願発明の内容本願発明は,ストロボスコープを使った入力システムを備える情報処理装置に関し,特に,ストロボスコープで照射した対象物の映像信号を処理する情報処理装置に関する(本願の明細 (1) 本願発明の内容本願発明は,ストロボスコープを使った入力システムを備える情報処理装置に関し,特に,ストロボスコープで照射した対象物の映像信号を処理する情報処理装置に関する(本願の明細書(甲4,甲6)の段落【0001】)ものである。 従来の体感ゲーム装置では,①対象物(例えば,バットやラケット)の操作情報 (位置,速度,向き)の要求を充足できない,②ストロボスコープを用いれば,上述のような,対象物の位置や速度を把握することができるが,得られた映像信号をリアルタイムで解析する具体的な手法は開示されていない,③撮影した映像信号から対象物を抽出し,その対象物の位置を求め,その位置情報をゲーム装置やコンピュータの入力とする方法は,特定の使用環境ではうまく動作するが,一般家庭の室内では正確な位置情報を得るのはかなり困難であるなどの問題があった(段落【0002】,【0004】~【0006】)。 そこで,本願発明は,ストロボスコープを用いてコンピュータやゲーム機にリアルタイムで入力を与えることができる新規な情報処理装置を提供することを目的として(段落【0007】),特許請求の範囲に記載した構成を採用し,ストロボスコープが対象物を明るく照射することにより,撮像結果における対象物と対象物以外とのコントラストを高め,対象物の検出を容易にしており,また,第1の手段が複数の発光時映像信号と複数の非発光時映像信号とのそれぞれの差を算出することにより,移動体である対象物以外の静止画像や固定光源等のノイズ成分の影響を抑えて対象物の位置,大きさ,速度,加速度,運動軌跡パターンを正確に,かつ簡単な情報処理で検出することが可能となり,そのようにして算出された情報に基づいて,第2の手段が所定の情報処理を行い,そのときに,対象物が再帰反射体を含むので ,加速度,運動軌跡パターンを正確に,かつ簡単な情報処理で検出することが可能となり,そのようにして算出された情報に基づいて,第2の手段が所定の情報処理を行い,そのときに,対象物が再帰反射体を含むので,対象物と他の画像とのコントラストがさらに強調されるため,安価な構成で検出精度を高めることが可能となる(段落【0008】)。 そして,本願発明によれば,ストロボスコープによって照射された対象物の撮像結果をディジタル的に解析し,対象物の位置,移動速度,加速度,運動軌跡といった情報をパーソナルコンピュータやビデオゲーム機といった情報処理装置への入力として扱うことが可能となり(段落【0037】),簡単な情報処理のみで,ノイズや外乱の影響を抑えた精度の高い検出が可能であるので,コスト,許容される消費電力等の条件によりプロセサのパフォーマンスが制限されるシステムの上でも容易に達成が可能となるという効果を奏するものである(段落【0038】)。 (2) 刊行物1記載の発明ア刊行物1(甲1)から前記第2の3(2)アの刊行物1記載の発明を認定できることは,当事者間に争いがない。 イ刊行物1記載の発明は,ゴルフゲーム模擬装置に関し,特に,室内で実際のゴルフコースでプレイしているのと同様の状態で手軽にプレイを楽しむことが可能なゴルフゲーム模擬装置に関する(段落【0001】)ものであり,実際のゴルフコースでゴルフゲームをしているような体感を覚えることができ,しかもメンテナンスが容易なゴルフゲーム模擬装置を提供することを目的とし(段落【0004】),プレイヤーがボールを打球したとき,その打球音を検知してストロボライト20を間欠発光させると同時に,ゴルフクラブ34及びゴルフボール13を,プレイヤーの上方及び正面前方に設置された2台のCCDカメラ プレイヤーがボールを打球したとき,その打球音を検知してストロボライト20を間欠発光させると同時に,ゴルフクラブ34及びゴルフボール13を,プレイヤーの上方及び正面前方に設置された2台のCCDカメラ14,15によって高速多重撮影し,撮影した画像データに応じてゴルフクラブ34及びゴルフボール13の運動を解析し,スクリーン上にボールの運動を表示させることによって,プレイヤーは室内にいながらゴルフコースであたかもプレイをしているごとく楽しむことができ,しかも,打球を検出するのに機械的な構成を用いていないため,メンテナンスが容易になるという効果を奏するものである(【請求項1】,段落【0018】,【0023】,【0025】,【0026】,【0032】,【図1】,【図2】。図面については別紙記載1参照)。 (3) 刊行物3記載の技術刊行物3(甲3)から前記第2の3(2)オの刊行物3記載の技術が本願の優先日において既に公知であったと認定できることは,当事者間に争いがない。 (4) 再帰反射体の反射特性についてア乙1の2枚目の「3.用語及び定義 (1) 一般的概念を表す用語」の欄には,「再帰反射」については「広い照射角にわたって,入射光の光路にほぼ沿う方向に,選択的に反射光が戻るような反射」,「再帰性反射体」については「その反射光のほとんどが再帰反射である面又は器具」と記載されており,同8頁の解説図1及び同 9頁の解説図2には,再帰性反射体による反射光が,入射光の光路にほぼ沿う方向に,選択的に戻る様子が図示されている(図面については別紙記載2参照)。 イまた,刊行物3(甲3)には,「……図2(a)に示すように,TVカメラ4は,斜め上から用紙1を撮像するため,TVカメラ4のレンズ43とイメージセンサ44は,中心位置をオフセットして 2参照)。 イまた,刊行物3(甲3)には,「……図2(a)に示すように,TVカメラ4は,斜め上から用紙1を撮像するため,TVカメラ4のレンズ43とイメージセンサ44は,中心位置をオフセットして設けられることが望ましいが,市販のTVカメラを用いる場合は,撮像された画像のうちの第四象限部分に用紙1の全体が収まるようにTVカメラを配置すればよい」(段落【0024】),「……再帰反射テープ6の部分はTVカメラ4に設けられたLED5の発する光を光源の方向へ返すために,TVカメラ4で撮像される全体像の中で,ひときわ明るく写る。……」(段落【0026】)と記載されており,【図2】(a)において,LED5の近傍にイメージセンサ44が配置されることが図示されている(別紙記載3参照)。 ウ以上の記載から,再帰反射体は,光源から入射した光を,この光源に完全に一致する方向だけではなく,光源の近傍周囲の方向にも反射させるものであると認められる。なお,本願の明細書の「この4つの赤外発光ダイオード42a-42dは,上で説明したように,対象物(ゴルフクラブ型入力装置14)を照らすように,イメージセンサ40の視点方向と同一方向に赤外光を照射するようにかつイメージセンサ40を囲むように配置される」(段落【0057】)との記載,及び,【図2】,【図3】に図示されている発光ダイオード42とイメージセンサ40との位置関係からも,再帰反射体は,光源から入射した光を,この光源に完全に一致する方向だけではなく,光源の近傍周囲の方向にも反射させるものである(図面については別紙記載4参照)。 (5) 検討ア上記(2)のとおり,刊行物1記載の発明は,ストロボライト20を間欠発光させると同時に,ゴルフクラブ34及びゴルフボール13を,プレイヤー1の正面前方及び上方の2台のCC )。 (5) 検討ア上記(2)のとおり,刊行物1記載の発明は,ストロボライト20を間欠発光させると同時に,ゴルフクラブ34及びゴルフボール13を,プレイヤー1の正面前方及び上方の2台のCCDカメラ14,15によって高速多重撮影するものであるところ,ゴルフクラブ34又はゴルフボール13に,刊行物3記載の再帰反射体を 取り付けた場合,ストロボライト20の間欠発光を再帰反射体によって反射させ,その反射光を2台のCCDカメラ14,15で高速多重撮影することになる。ここで,上記(4)ウのとおり,再帰反射体は,光源から入射した光を,この光源に完全に一致する方向,及び光源の近傍周囲の方向に反射させるものであるから,ストロボライト20の反射光を正面前方のCCDカメラ14に入射させようとすると,正面前方のCCDカメラ14の近傍にストロボライト20を配置することになるが,そのようにすると,上方のCCDカメラ15は,ストロボライト20の近傍周囲には配置されていないから,再帰反射体からの反射光を上方のCCDカメラ15に入射させることはできない。そこで,ストロボライト20の反射光を上方のCCDカメラ15に入射させようとして,このCCDカメラ15の近傍にストロボライト20を配置させると,今度は,正面前方のCCDカメラ14が,ストロボライト20の近傍周囲には配置されなくなるから,再帰反射体からの反射光を正面前方のCCDカメラ14に入射させることはできなくなる。そして,ストロボライト20を,正面前方のCCDカメラ14の近傍以外の位置や上方のCCDカメラ15の近傍以外の位置に配置すると,再帰反射体からの反射光は,2台のCCDカメラ14,15のいずれにも入射させることはできない。 そうすると,刊行物1記載の発明のゴルフボール13又はゴルフクラブ34に再 近傍以外の位置に配置すると,再帰反射体からの反射光は,2台のCCDカメラ14,15のいずれにも入射させることはできない。 そうすると,刊行物1記載の発明のゴルフボール13又はゴルフクラブ34に再帰反射体を取り付けた場合に,ストロボライト20をどのように配置しても,再帰反射体からの反射光を2台のCCDカメラ14,15の両方に入射させることはできないし,また,再帰反射体を採用したことによって,対象物と他の画像とのコントラストが更に強調されるため,安価な構成で検出精度を高めることが可能となるという本願発明の効果(段落【0008】)も得られない。なお,ストロボライトの配置する場所によっては,一方のCCDカメラに再帰反射体からの反射光が入射し,かつ,他方のCCDカメラに再帰反射体からの微弱な光が入射するようにできたり,また,両方のCCDカメラに再帰反射体からの微弱な光が入射するようにできるかもしれないが,再帰反射体からの微弱な光がCCDカメラに入射しても,対象物と 他の画像とのコントラストは強調されないから,再帰反射体を採用したことによる上記効果は得られない。 イしたがって,刊行物1記載の発明に刊行物3記載の技術を適用することには,阻害要因があるといえる。よって,相違点3について,「刊行物1記載の発明において,対象物の位置の検出を容易に行うために,刊行物3記載の技術の対象物が『再帰反射体を含む』事項を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである」(9頁18~21行)とした本件審決の判断は誤りである。 (6) 被告の主張についてア被告は,刊行物1の【図2】に図示されているストロボライト20とCCDカメラ14,15との位置関係が,ゴルフクラブ34に再帰反射部材を取り付けた場合に,当該再帰反射部材によって反射されたストロ ア被告は,刊行物1の【図2】に図示されているストロボライト20とCCDカメラ14,15との位置関係が,ゴルフクラブ34に再帰反射部材を取り付けた場合に,当該再帰反射部材によって反射されたストロボライト20からの光が,CCDカメラ14,15に入射しないような関係であるとしても,そのこと自体は,刊行物1記載の発明に刊行物3に記載の発明を適用することを妨げる事情とはならないと主張する。 しかし,刊行物1記載の発明において,ゴルフクラブに再帰反射部材を取り付けた場合に,ストロボライト20をどのように配置しても,ゴルフクラブと他の画像とのコントラストがさらに強調されるように,再帰反射部材からの反射光を2台のCCDカメラ14,15の両方に入射させることができないことは上記(4)アのとおりであるから,被告の主張は採用できない。 イ被告は,刊行物1記載のゴルフクラブ34のクラブヘッドやゴルフボール13に刊行物3記載の再帰反射部材を設ける場合には,クラブヘッドとゴルフボールとが相互に衝突し合う部位に再帰性反射体を設けるわけではないことを前提とすると,原告主張のような阻害要因があるとはいえないと主張する。 確かに,刊行物1に記載のゴルフクラブ34のクラブヘッドやゴルフボール13に,刊行物3に記載の再帰反射部材を設ける場合に,わざわざクラブヘッドとゴルフボールとが相互に衝突し合う部位に設けるようなことはしないのが普通であると いえる。しかしながら,刊行物1記載の発明に刊行物3に記載の技術を適用することには上記(5)アの阻害要因があるから,被告の上記主張は上記(5)イの判断を左右しない。 ウ被告は,本願発明には,ストロボスコープの設置数や,対象物が備える再帰反射材の数について特定できる記載はなく,本願の発明の詳細な説明にも,これらの数 記主張は上記(5)イの判断を左右しない。 ウ被告は,本願発明には,ストロボスコープの設置数や,対象物が備える再帰反射材の数について特定できる記載はなく,本願の発明の詳細な説明にも,これらの数が特定のものに限定される旨の記載はなく,一方,プロセサやコンピュータの数が増えることも容認している(段落【0147】)が,刊行物1には,ストロボライトの配置が【図2】に示されたようなものに限定されることを示す記載はないから,刊行物1記載の発明において刊行物3記載の再帰反射材に係る技術を適用することにより,複数あるCCDカメラ14,15の一方で対象物検出が難しくなるのであれば,各カメラに対応したストロボライトを設け,これらを同期させて発光させるようにすることは,当業者であれば適宜なし得ることであると主張する。 確かに,本願発明には,ストロボスコープの設置数や,対象物が備える再帰反射材の数を特定する記載はない。しかし,本願発明は,上記(1)のとおり,簡単な情報処理のみで,ノイズや外乱の影響を抑えた精度の高い検出が可能であるので,コスト,許容される消費電力等の条件によりプロセサのパフォーマンスが制限されるシステムの上でも容易に達成が可能となるものであるから,各カメラに対応したストロボライトを設け,これらを同期させて発光させることは,情報処理を複雑にし,コストや消費電力を上げることになり,本願発明の技術思想に反することになる。 したがって,被告主張は採用できない。 エ被告は,刊行物2記載の技術は,1つの「反射光抽出手段102」によりジェスチャーやポインティングなどの情報を得ることができるものでもあるところ(【図2】),刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術を適用することにより,刊行物1記載の発明のゴルフボール13やゴルフクラブ34の動きは,「CC ングなどの情報を得ることができるものでもあるところ(【図2】),刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術を適用することにより,刊行物1記載の発明のゴルフボール13やゴルフクラブ34の動きは,「CCDカメラ14」から置き換えられた「反射光抽出手段102」より認識できるので,仮にCCDカメラの台数が1台になったとしても,刊行物1記載の発明の目的が達成できな くなるようなことはないと主張する。 しかし,上記(2)のとおり,刊行物1記載の発明は,ゴルフクラブ34及びゴルフボール13を,プレイヤーの上方及び正面前方に設置された2台のCCDカメラ14,15によって高速多重撮影し,撮影した画像データに応じてゴルフクラブ34及びゴルフボール13の運動を解析し,スクリーン上にボールの運動を表示させることによって,プレイヤーは室内にいながらゴルフコースであたかもプレイをしているごとく楽しむことができ,しかも,打球を検出するのに機械的な構成を用いていないため,メンテナンスが容易になるという効果を奏するものである。そうすると,刊行物1記載の発明は,プレイヤーの上方及び正面前方に設置された2台のCCDカメラを用いることを前提としている発明であって,CCDカメラを1台とすることを想定しているとはいえないから,被告の主張は,失当である。 (7) 以上のとおり,原告主張の取消事由1-2は理由がある。 2 取消事由4(刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術,刊行物3記載の技術との組合せ阻害要因の看過)について(1) 刊行物2記載の技術ア刊行物2(甲2)から前記第2の3(2)エの刊行物2記載の技術が本願の優先日において既に公知であったと認定できることは,当事者間に争いがない。 イ刊行物2には,以下の記載がある。 「ところで,手の仕草を認識 )から前記第2の3(2)エの刊行物2記載の技術が本願の優先日において既に公知であったと認定できることは,当事者間に争いがない。 イ刊行物2には,以下の記載がある。 「ところで,手の仕草を認識するに利用可能な別の技術として,レンジファインダと呼ばれる,距離画像を入力する装置の応用が考えられる。このレジンジファインダ(判決注・原文ママ)の代表的な原理は,スポット光あるいはスリット光を対象物体に照射し,その反射光の受光位置から三角測量の原理で求めるといったものである。」(段落【0020】)「そして,2次元的な距離情報を求めるために,スポット光あるいはスリット光を機械的に走査している。この装置は非常に高精度な距離画像を生成することができるが,その反面,装置の構成が大掛かりになり,高コストになる。……また,手 や身体の一部に色マーカーや発光部を取り付け,画像によりそれらを検出し,手・身体の形,動きなどを捉える装置もあり,一部実用化されている。しかし使用者の利便性を考えると,操作の度に装置を装着しなくてはならないというのは大きなデメリットであり,応用範囲を非常に制約する。また,データグローブの例に見られるように,装置を手などの可動部に装着して使用する装置は耐久性が問題になりやすい。」(段落【0021】)「【発明が解決しようとする課題】このように従来では,特殊な装置を装着することなく,簡易にジェスチャや動きを入力できる直接指示型の入カデバイスが存在しなかった。特に,3次元空間でのポインティングや視点の変更を容易に行える簡易なデバイスは存在しなかった。また,ユーザのジェスチャや動きをそのまま使って,アニメーションのキャラクタなどに自然な動きをつけたりすることができなかった。 ……」(段落【0024】)ウ以上の記載から,刊行物 存在しなかった。また,ユーザのジェスチャや動きをそのまま使って,アニメーションのキャラクタなどに自然な動きをつけたりすることができなかった。 ……」(段落【0024】)ウ以上の記載から,刊行物2記載の技術は,対象物体となる手や身体の一部に色マーカーや発光部を取り付けることなく,簡易にジェスチャや動きを,入力できる直接指示型の入カデバイスが存在しなかったことを課題とするものであるから,色マーカーや発光部を取り付けることを想定していない。 (2) 刊行物3記載の技術刊行物3記載の技術は,前記第2の3(2)エのとおりであり,入力手段(筆記用具)に再帰反射部材を取り付けるものである。 (3) 検討上記のとおり,刊行物2記載の技術は対象物体に色マーカーや発光部を取り付けることを想定していないものであり,他方,刊行物3記載の技術は入力手段(筆記用具)に再帰反射部材を取り付けるものであって,両者は,マーカー(再帰反射部材)の取付けについて相反する構成を有するものである。したがって,刊行物1記載の発明に,刊行物2記載発明と刊行物3記載発明を同時に組み合わせることについては,阻害要因があるというべきである。よって,「本願発明は,刊行物1記載の 発明,並びに,刊行物2及び刊行物3に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである」(9頁28~30行)とした本件審決の判断は,誤りである。 (4) 被告の主張について被告は,刊行物2の段落【0021】は,使用者の「手や身体の一部に色マーカーや発光部を取り付け,画像によりそれらを検出し,手・身体の形,動き」を認識する場合においては,「操作の度に装置を装着しなくてはならない」こと等が問題であることを説明するもので,手や身体の一部にマーカー等を装着する場合における問題 れらを検出し,手・身体の形,動き」を認識する場合においては,「操作の度に装置を装着しなくてはならない」こと等が問題であることを説明するもので,手や身体の一部にマーカー等を装着する場合における問題を説明するものにすぎず,手や身体以外の物品等にマーカー等を装着する場合について述べたものではないから,本件審決が,刊行物2記載の技術を適用するとしている刊行物1記載の発明は,「ゴルフボール13とゴルフクラブ34の外形形状」を認識対象とするものであって,上記問題は無関係であり,原告が主張するような組合せ阻害要因はないと主張する。 しかし,上記(1)のとおり,刊行物2記載の技術は,色マーカーや発光部を取り付けることを想定していないから,被告の主張は採用できない。 3 以上のとおり,原告主張の取消事由1-2及び取消事由4には理由があるから,審決は違法として取り消されるべきである。 第5 結論よって,審決を取り消すこととして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官芝田俊文 裁判官岡本 岳 裁判官武宮英子 別紙 1 刊行物1の図面 2 乙1の図面解説図1 解説図2 3 刊行物3の図面【図2】 4 本願の図面【図2】 【図3】 3 刊行物3の図面【図2】 4 本願の図面【図2】【図3】
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