平成13(わ)555 非現住建造物等放火,現住建造物等放火被告

裁判年月日・裁判所
平成14年5月23日 前橋地方裁判所
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判決文本文2,877 文字)

平成14年5月23日宣告平成13年(わ)第555号,第621号,平成14年(わ)第81号非現住建造物等放火,現住建造物等放火被告事件 主文 被告人を懲役8年に処する。 未決勾留日数中170日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,かねてより,母親から,定職に就くかもっとアルバイトをして稼ぐように口うるさく言われ,そのたびごとに苛々した気持ちになり,建物等に放火をしては,そうした気持ちを晴らしていたものであるが第1 平成13年5月21日の夜,母親から正社員として雇ってくれるところを探せなどとしつこく言われ,苛々した気持ちとなり,その気持ちを晴らすため,群馬県桐生市a町b所在のA所有の工場(木造瓦葺平家建等,床面積約635.94平方メートル)に放火して焼損しようと企て,同月22日午前2時20分ころ,同工場南側窓に垂れ下がっていた簾に所携のライターで点火して火を放ち,よって,その火を現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない同工場に燃え移らせ,そのうち床面積約382.98平方メートルの部分を焼失させて焼損した。 第2 同年7月14日の夜,母親から仕事を見つけろなどと言われたが,口答えできず苛々した気持ちになり,その気持ちを晴らすため,同市a町c所在のBほか2名が現に住居に使用している家屋(同人所有の木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建,床面積約131.81平方メートル)を,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない建造物であると思い,同家屋に放火すれば隣接する現に人が住居に使用している人家等に火が燃え移るおそれがあることを認識しながら,あえて上記家屋に放火しようと決意し,同月15日午前3時30分ころ,同家屋北西側前路地において,同家屋の戸袋 ば隣接する現に人が住居に使用している人家等に火が燃え移るおそれがあることを認識しながら,あえて上記家屋に放火しようと決意し,同月15日午前3時30分ころ,同家屋北西側前路地において,同家屋の戸袋の隙間から所携のわら半紙を差し込んだ上,その紙に所携のライターで点火し,よって,その火を同家屋に燃え移らせ,これを全焼させた上,隣接するCほか3名が現に住居に使用している家屋(D所有の木造瓦葺平家建,床面積約84.4平方メートル),B所有の物置(木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建,床面積約32.34平方メートル),E所有の倉庫2棟(木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建,総床面積約114.8平方メートル),Fほか1名が現に住居に使用している家屋(同人所有の木造瓦葺2階建,床面積約74.53平方メートル)及びG所有の物置(木造平家建,床面積約30.55平方メートル)に順次燃え移らせ,これらを全焼させたほか,Gほか1名が現に住居に使用している家屋(同人所有の木造瓦葺2階建)に燃え移らせてその2階部分のうち約12平方メートルを焼失させ,もってこれらの家屋等を焼損した。 第3 同年9月18日の夕刻,母親からアルバイト一つでは生活していけないので,アルバイトを増やすか,正社員で勤められるところがあれば見つけてほしい旨をしつこく言われたので,むしゃくしゃした気持ちとなり,その気持ちを晴らすため,同市a町d所在のH所有の倉庫(木造瓦葺平家建の建物の西側部分床面積49.3平方メートル)に放火して焼損しようと企て,同月19日午前1時ころ,所携の新聞紙大のわら半紙を三つ折りにし,これにライターで点火した上,同倉庫の割れたガラス窓から,同倉庫内に積み上げられていたダンボールとサッシ戸の隙間に,上記の火の点いたわら半紙を押し込んで,火を放ち,よって,その火を現に人が住居に使用せず,かつ ーで点火した上,同倉庫の割れたガラス窓から,同倉庫内に積み上げられていたダンボールとサッシ戸の隙間に,上記の火の点いたわら半紙を押し込んで,火を放ち,よって,その火を現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない同倉庫に燃え移らせ,これを全焼させて焼損した。 (法令の適用)該当罰条判示第1,3の各行為刑法109条1項判示第2の行為包括して刑法108条刑種の選択判示第2の罪につき,有期懲役刑併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第2の罪の刑に14条の制限内で法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,被告人が,平成13年5月から9月までの間に連続して,3件の建物に放火した事案である。 被告人は,母親から,定職を探すかもっとアルバイトをするようにと口うるさく言われたことなどにより,苛々した気持ちになり,その気持ちを晴らすために,本件各犯行に及んだものであって,その動機は自己中心的なものというほかなく,酌量の余地はない。また,本件各犯行は,いずれも,深夜,住宅等が密集する地域において,あらかじめ媒介物を用意して行われた放火であり,その態様は計画的であり,かつ極めて危険なものというべきであって,現に判示第2の犯行においては,現実に多数の建造物に延焼の結果を生じさせている。さらに,被告人は,本件各犯行によって,判示第1の事実においては,工場1棟を半焼し,判示第2の事実においては,現住建造物4棟を含む建物8棟を全焼又は一部焼損し,判示第3の事実においては,倉庫を全焼させたものであるが,これらの焼失床面積は合計900平方メートル以上に上り,被害金額についても合計約1億3500万円と高額に達し 含む建物8棟を全焼又は一部焼損し,判示第3の事実においては,倉庫を全焼させたものであるが,これらの焼失床面積は合計900平方メートル以上に上り,被害金額についても合計約1億3500万円と高額に達しているほか,本件各犯行が約4か月という短期間に同一町内という狭い地域で連続して敢行されたことから,周辺住民に対しても多大な不安を与えており,その結果も重大である。しかも,現在に至るまで,被告人によって,被害者らに対する被害弁償や慰謝の措置は何ら講じられておらず,将来においてなされる見込みも少ない。 以上のような本件建造物放火の罪質,動機,態様,結果等を考慮すると,被告人の本件各犯行による刑事責任は重い。 他方,被告人は捜査段階から素直に罪を認め反省し,捜査に協力していること,本件各犯行において,幸いにも人の死傷の結果が発生していないこと,本件被害の一部については損害保険の対象となっており,その限度で被害回復がなされ、又はなされる見込みがあること,被告人には交通罰金前科の他には前科前歴がないこと,被告人の母親が公判廷に出廷し被告人の今後の監督を誓っていることなど被告人のために酌むべき事情もある。 そこで,これらの事情一切を総合勘案し,被告人を主文掲記の刑に処するのが相当である。 (求刑懲役12年)(公判出席検察官関夕三郎国選弁護人茂木敦)平成14年5月23日前橋地方裁判所刑事部裁判長裁判官長谷川憲一裁判官吉井隆平裁判官丹下将克

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