主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する。 2 被控訴人の本件附帯控訴に基づき,原判決主文第1項及び第2項を次のとおり変更する。 ⑴ 控訴人は,被控訴人に対し,1318万9938円及びこれに対する平成26年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被控訴人のその余の請求を棄却する。 3 被控訴人のその余の本件附帯控訴を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを20分し,その17を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 5 この判決は,第2項⑴に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 当事者が求めた裁判 1 控訴人の控訴の趣旨⑴ 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 ⑵ 上記取消しに係る被控訴人の請求を棄却する。 2 被控訴人の附帯控訴の趣旨⑴ 原判決主文第1項及び第2項を次のとおり変更する。 ⑵ 被控訴人は,控訴人に対し,1534万1527円及びこれに対する平成26年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件の原審において,被控訴人は,控訴人とペアを組んでバドミントンのダブルス競技を行っていた際に控訴人のラケットが被控訴人の左眼に当たった事故について,控訴人に過失があると主張して,控訴人に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害1534万1527円及びこれに対する不法行 為の日である平成26年12月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 原審は,被控訴人の請求を789万3244円及びこれに対する平成26年12月 為の日である平成26年12月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 原審は,被控訴人の請求を789万3244円及びこれに対する平成26年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却したところ,控訴人がその敗訴部分につき本件控訴を提起し,被控訴人がその敗訴部分につき本件附帯控訴を提起した。 2 前提事実並びに争点及び争点に対する当事者の主張は,当審における当事者の補充主張を後記3及び4のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の2及び3に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における控訴人の補充主張⑴ 原審は,被控訴人が本件事故の直前にAの打ったシャトルを打ち返すために足や手等の身体を動かしていたものの,ラケットをシャトルに向けて振るといったシャトルを打ち返す直前の段階に至る前の段階にとどまっていたなどとして,本件事故の時点での控訴人と被控訴人の位置関係につき明確に認定することなく,被控訴人においてAが打ったシャトルを打ち返すことが可能な位置まで実際に移動できていたかのような認定をした。 しかし,Aがシャトルを打ってから控訴人がこれを打ち返すまでが2秒足らずであったこと,控訴人がAの打ったシャトルを打ち返した時点において,同シャトルは床面に近い位置まで落下していたこと,同時点において,被控訴人はシャトルの落下位置(控訴人によるシャトルの打点)から少なくとも1.6メール以上離れた場所にいたことに照らせば,同時点において,同シャトルを打ち返すことができる位置にいたのは,控訴人のみであったことは明らかである。また,被控訴人においてAが打ったシャトルへの対応が間に合うタイミングで動き出した後これを ば,同時点において,同シャトルを打ち返すことができる位置にいたのは,控訴人のみであったことは明らかである。また,被控訴人においてAが打ったシャトルへの対応が間に合うタイミングで動き出した後これを止めるという極めて特異な行動をとったとの主張及び立証もない。 以上によれば,控訴人が,Aの打ったシャトルを打ち返した時点において, 被控訴人は,Aがシャトルを打った時点にいた位置から移動せず,ネット側のセンターライン付近にいたか,仮に移動したとしても,わずかにシャトルの落下位置方向に振り返る程度の移動にとどまっていたことは明らかであるから,原審の認定は誤りである。 ⑵ 原審は,本件事故につき,控訴人には,予見可能性及び結果回避可能性があったにもかかわらず,これらを怠ったとして,過失があると認定した。 しかし,①原審は,後衛の控訴人は,前衛の被控訴人の動静を把握することができたと認定したが,控訴人が被控訴人においてシャトルを打つそぶりを示さないとして自らシャトルを打ち返すと判断してから実際に打ち返すまでの時間は1秒程度しかなく,その間,シャトルから視線を外すわけにはいかないし,また,控訴人がシャトルを打ち返した時点で被控訴人は控訴人の視野には入っていなかったから,控訴人としては被控訴人の動静を把握するためにとり得る手段は尽くしており,これを超えて,被控訴人の動静を把握することはできなかったこと,②原審は,前衛の被控訴人は,後衛の控訴人の動静を把握することができなかったと認定したが,被控訴人は,自らシャトルを打ち返さないと判断し,あるいはシャトルの落下位置まで移動して打ち返すのは間に合わないと判断される状況にあったから,控訴人がシャトルを打ち返すためにシャトルの落下位置方向に移動することは予見可能であり,被控訴人には控訴人の動 はシャトルの落下位置まで移動して打ち返すのは間に合わないと判断される状況にあったから,控訴人がシャトルを打ち返すためにシャトルの落下位置方向に移動することは予見可能であり,被控訴人には控訴人の動静を把握することができたこと,③原審は,本件事故が,被控訴人においてAが打ったシャトルへの対応が間に合わないことが明らかな状況にある段階に至ってから控訴人側に動き出したことにより生じたものではないと認定したが,上記⑴で主張したとおり,かかる認定は誤りであること,④被控訴人は,シャトルを打ち返さないと判断してこれを見送った以上,控訴人の操作するラケットが当たるなどの危険を回避すべき義務があったのにこれを怠ったが,仮に被控訴人がシャトルを見送っておらず,シャトルを打ち返すために動いた事実があったとしても,被控訴人が控訴人 に遅れてシャトルに向かって移動したことは否定できないから,被控訴人において危険を回避するために退避する義務を免れる理由はないこと,⑤原審は,バドミントンのダブルス競技では狭いコートの中でペアの競技者が常に近くにいることを前提に予見可能性を認めることは結果責任を負わせるに等しいとの控訴人の主張を排斥したが,原審はその判断の前提となるべき控訴人がシャトルを打ち返した時点における被控訴人の位置を明らかにしていないこと,原審はAがシャトルを打ってから控訴人がこれを打ち返すまでの間が2秒足らずの時間であったことを考慮していないこと,原審は被控訴人がシャトルを打ち返すことが可能な状態で動き出したとの誤った事実認定を前提にしていることに照らし,原審の判断は誤りであること,⑥原審は,控訴人が自らシャトルを打ち返すと判断してシャトルの落下位置まで移動を開始する直前に「はい」と声かけをしたとの控訴人の主張を排斥したが,声かけは習慣的な行為 ,原審の判断は誤りであること,⑥原審は,控訴人が自らシャトルを打ち返すと判断してシャトルの落下位置まで移動を開始する直前に「はい」と声かけをしたとの控訴人の主張を排斥したが,声かけは習慣的な行為であって意識して行うものではないから,控訴人の声かけに関する記憶が曖昧であったとしても何ら不合理ではなく,控訴人の供述は信用することができるから,同供述により,控訴人が声かけをしたと認定すべきであることといった諸点によれば,本件事故につき控訴人に過失があるとした原審の判断は誤りである。 ⑶ 原審は,本件事故に係る控訴人の行為につき違法性が阻却される旨の控訴人の主張は採用できないと判示した。 しかし,①原審の判断は,バドミントンのダブルス競技中にシャトルを打つ行為によって結果としてペアの相手方が負傷した事案に関しては常に違法性が阻却されないとするもののようであるが,バドミントン競技における打撲等の事故の発生頻度等に照らせば,同競技の競技者は,そのような事故の危険を引き受けて競技に参加していることが明らかであるから,ペアの一方がシャトルを打つ行為によってペアの相手方が負傷する等した場合に,当該行為に違法性阻却がされる余地がないとする理由はないこと,②控訴人は, 控訴人のみがシャトルを打ち返すことが客観的に可能な状況において,控訴人の視野に被控訴人が入っていない状態で,シャトルを打ち返したものであり,このようなバドミントン競技の最も中核的な行為をすることは,バドミントンのダブルス競技のルールの範囲内にあって許容される行為であり,その結果として被控訴人に傷害の結果が生じたとしても法的責任を負わせるべきではなく,このような場合にまで過失責任を問われるとすれば,国民が安心してスポーツに親しむことができなくなること,③バドミントンのダ 果として被控訴人に傷害の結果が生じたとしても法的責任を負わせるべきではなく,このような場合にまで過失責任を問われるとすれば,国民が安心してスポーツに親しむことができなくなること,③バドミントンのダブルス競技に参加する者に対しては,ペアの一方がシャトルを打ち返す動作をとった場合には,ペアの相手方は,その後,シャトルを打つ動作をとらず,上記の者がシャトルを打つ行為を妨害しないように適切な退避行為をとることによって,ダブルスのペア同士の衝突等を防止することを図らなければならないとのルールが与えられているところ,上記⑴で主張したとおり,本件事故の直前にAが打ったシャトルを打ち返すことが客観的に可能な位置に移動していたのは控訴人のみであり,控訴人は被控訴人が退避することを前提にシャトルを打つことができるというべきであるから,控訴人の行為はルールによって認められた行為であり,他方で,被控訴人が上記のルールに反して退避しなかったことにより傷害を被ったとしても,それはバドミントンのダブルス競技の競技者が同競技に参加するに当たって引き受けた危険の範囲内に含まれるものであること,以上によれば,本件事故の違法性は阻却されるというべきであり,原審の判断は誤りである。 ⑷ 原審は,被控訴人の症状固定日を平成27年3月4日と認定しながら,症状固定後の診療費用及び通院交通費についても,本件事故と相当因果関係のある損害と認めたが,被控訴人において,症状固定後にもなお保存的治療が必要であったとする合理的な根拠は示されていないから,原審の認定は不当である。 ⑸ 原審は,同愛会病院におけるカルテ謄写費用等,日本大学病院における診 断書料及び症状固定確認のための検査料,市川総合病院におけるカルテ謄写費用等並びに川上脳神経外科クリニックにおける診断書料を本 審は,同愛会病院におけるカルテ謄写費用等,日本大学病院における診 断書料及び症状固定確認のための検査料,市川総合病院におけるカルテ謄写費用等並びに川上脳神経外科クリニックにおける診断書料を本件事故と相当因果関係のある損害と認めたが,これらは損害立証資料の取得費用であるから,本件事故と相当因果関係のある損害ではなく,原審の判断は誤りである。 ⑹ 原審は,通院交通費については,被控訴人が支出した費用に関する明確な証拠を示していないから,原審の認定は,証拠に基づかない不当な認定である。 ⑺ 仮に本件事故につき控訴人に過失責任が認められるとしても,本件事故は,被控訴人がシャトルを打ち返すことが客観的に不可能な状況にあり,かつ,そのような状況でシャトルの落下位置方向に身体を向けるなどしたならば,控訴人が振るラケットの軌道範囲内に自らの身体が侵入することを十分に認識しながら,あえて被控訴人がそのような行動をとったことにより生じた事故であるから,被控訴人の過失割合が9割を下ることはなく,控訴人の過失割合を6割と認定した原審の判断は誤りである。 4 当審における被控訴人の補充主張⑴ 原審は,本件事故による通院慰謝料につき73万円と認めるのが相当であると判示した。 しかし,被控訴人の傷害は結果として平成27年3月4日に症状が固定したが,主治医の判断を踏まえてその後も引き続き通院を継続したこと,被控訴人は3人の子供を育てる専業主婦として家事全般を行っていたから,通院による精神的負担は非常に大きかったことを勘案すれば,通院慰謝料は150万円を下らないというべきである。 ⑵ 原審は,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用につき70万円と認めるのが相当であると判示した。 しかし,被控訴人は,控訴人が当初から自らの責任を認 円を下らないというべきである。 ⑵ 原審は,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用につき70万円と認めるのが相当であると判示した。 しかし,被控訴人は,控訴人が当初から自らの責任を認めず,損害賠償請求に応じなかったことから,弁護士に依頼して訴訟を提起せざるを得なくな り,更に,控訴人が本件控訴をしたことから,これに応訴せざるを得なくなったものであり,これらの事情を踏まえた上で,事件の難易や認容額,訴訟提起からの期間等を勘案すれば,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は150万円を下らないというべきである。 ⑶ 原審は,被控訴人がバドミントン競技において一定の頻度で事故が発生することを一定程度引き受けて同競技に参加していることや,本件事故は控訴人の故意によるものではなく同競技の流れの中で生じたものであることを理由に,本件事故により発生した損害の全部を加害者である控訴人に負わせるのは損害の公平な分担を図る損害賠償法の理念に反するとして,民法722条2項の規定を類推適用し,控訴人は被控訴人に生じた損害の6割を負担するのが相当であると判示した。 しかし,バドミントン競技が一定の事故の危険をはらんだ競技であることは否定しないにしても,本件事故及びこれにより被控訴人が負った傷害は,バドミントン競技に内在する危険ではなく,被控訴人の認識及び認容していたものではないから,被控訴人が引き受けているとはいえない危険であり,また,本件事故が控訴人の故意によるものではなくバドミントン競技の流れの中で生じたものであることも争わないが,これは被控訴人側の事情ではないから,これらを過失相殺の判断において勘案することは合理性を欠いているというべきであり,その他,公平の観念に基づいて加害者の賠償額を減額することが妥当といえるよう が,これは被控訴人側の事情ではないから,これらを過失相殺の判断において勘案することは合理性を欠いているというべきであり,その他,公平の観念に基づいて加害者の賠償額を減額することが妥当といえるような被害者の「過失」あるいは非難可能性や不注意もないから,控訴人の賠償額の4割を減額した原審の判断は誤りであり,仮に減額を認めるとしても4割もの減額は多きに失するものであり失当である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,被控訴人の請求は,1319万0378円及びこれに対する平成26年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求 める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は,次のとおり補正し,当審における当事者の補充主張に対する判断を後記2のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)⑴ 原判決10頁16行目の「に打ち返したが,」を「の右奥に向けて打ち返したが,その際,控訴人がラケットを右方向に振ったことから,」に改め,同11頁1行目の「東京歯科大学市川総合病院」の次に「(以下「市川総合病院」という。)」を,3行目末尾に「なお,証拠(甲24)によれば,控訴人の同月4日の川上脳神経外科クリニックへの通院は,同愛会病院で受診した後,一旦帰宅し,その後に通院したものと認められる。」をそれぞれ加える。 ⑵ 原判決12頁23行目の「というべきである。」を「と認められる上,証拠(控訴人)及び弁論の全趣旨によれば,同飛来位置は,本来,前衛である被控訴人が打ち返すべき位置であったとも認められる。」に改め,26行目から同13頁1行目の「十分対応可能な位置」の次に「であり,かつ,前衛である被控 の全趣旨によれば,同飛来位置は,本来,前衛である被控訴人が打ち返すべき位置であったとも認められる。」に改め,26行目から同13頁1行目の「十分対応可能な位置」の次に「であり,かつ,前衛である被控訴人が打ち返すべき位置」を,7行目の「シャトル」の次に「が飛来した時点で,これ」をそれぞれ加え,8行目の「動かしていた」を「動かす動作を始めた」に,25行目の「動いていたものの」を「身体を動かす動作を始めてこれを打ち返すことが可能な位置にいたものの」にそれぞれ改め,同14頁25行目から26行目の「場合であっても」の次に「,控訴人において,被控訴人が打ち返そうと想定したシャトルの高さよりも高い位置でシャトルを打ち返した場合には」を加え,同15頁8行目の「被告の視野は」を「控訴人の視野の範囲内にあるものであっても,」に改め,同行目の「などによって」の次に「その認識の程度は」を加え,10行目から11行目の「見えなかったとしても」を「前方にいることを具体的に認識していな かったとしても」に改める。 ⑶ 原判決15頁19行目の「に飛来し,被告も原告が対応できると認識していたのであるから(被告)」を「であり,かつ,控訴人から見ても,前衛である被控訴人が打ち返すべき位置に飛来したのであるから」に,同16頁5行目の「前方にいる」から6行目の「行うことにより」までを「,控訴人は,前方にいる被控訴人の動きを把握した上で,シャトルを打ち返すことを止めるか,あるいは,少なくともラケットが被控訴人に接触しないようにラケットを相手コート側に向けて振ることにより,」にそれぞれ改め,24行目の「予見可能性」の次に「及び結果回避可能性」を加える。 ⑷ 原判決18頁14行目の「しかし,」の次に「バドミントン競技の場合,上記のボクシング等のように一方の競技者が他 それぞれ改め,24行目の「予見可能性」の次に「及び結果回避可能性」を加える。 ⑷ 原判決18頁14行目の「しかし,」の次に「バドミントン競技の場合,上記のボクシング等のように一方の競技者が他の競技者の身体に対して一定の有形力を行使することが競技の内容の一部を構成するものとは異なるから,バドミントン競技の競技者が,同競技に伴う他の競技者の故意又は過失により発生する一定の危険を当然に引き受けてこれに参加しているとまではいえない。また,」を加える。 ⑸ 原判決20頁9行目の「ア」の次に「」を加え,同行目の「前記1⑵イないしオのとおり,」を「証拠(甲8(枝番を含む。),15ないし17,21)によれば,」に,10行目の「平成27年12月10日」を「平成28年1月18日」にそれぞれ改め,12行目冒頭から13行目の「によれば」まで,15行目末尾の「,」から16行目の「支出したこと」まで,18行目冒頭から21行目末尾までをそれぞれ削り,同行目末尾に改行して次のとおり加える。 「次に,通院交通費につき検討するに,証拠(甲8(枝番を含む。),15ないし17,21)によれば,被控訴人は,平成26年12月4日から平成28年1月18日までの間,①同愛会病院に24回通院し(ただし,そのうち平成26年12月4日は,前記1⑵アのとおり,被控訴 人は通院交通費を負担しておらず,また,同月24日には市川総合病院にも併せて通院したので別途計算することから,以下,22回分として計算することとする。),②川上脳神経外科クリニックに2回通院し,③日本大学病院に4回通院し,④市川総合病院に2回通院した(ただし,上記のとおり,平成26年12月24日の分は別途計算することから,以下,1回分として計算することとする。)ことが認められる。 そして,当 大学病院に4回通院し,④市川総合病院に2回通院した(ただし,上記のとおり,平成26年12月24日の分は別途計算することから,以下,1回分として計算することとする。)ことが認められる。 そして,当裁判所に顕著な事実(電車及びバスの料金)及び弁論の全趣旨によれば,①被控訴人の自宅から同愛会病院への通院経路は,徒歩のほか,京成バスによるa駅からbまでの往復であるが,その1往復の料金は440円であり,②被控訴人の自宅から川上脳神経外科クリニックへの通院経路は,徒歩のほか,都営新宿線によるa駅からc駅までの往復であるが,その1往復の料金は440円であり,③被控訴人の自宅から日本大学病院への通院経路は,徒歩のほか,都営新宿線によるa駅からd駅までの往復であるが,その1往復の料金は540円であり,④被控訴人の自宅から市川総合病院への通院経路(片道料金)は,徒歩のほか,都営新宿線によるa駅からe駅まで(片道180円)及び京成バスによるe駅から市川総合病院まで(片道220円)の往復であるが,その1往復の料金は800円であり,⑤平成26年12月24日の被控訴人の自宅から市川総合病院及び同愛会病院への通院経路(片道料金)は,徒歩のほか,都営新宿線によりa駅からe駅まで(180円),京成バスによりe駅から市川総合病院まで(220円),京成バスにより市川総合病院からf駅まで(170円),JR総武線によりf駅からg駅まで(160円),都営バスによりg駅からbまで(210円),京成バスによりbからa駅まで(220円),順次行くことであり,その料金の合計は1160円であると認められる。 以上によれば,①同愛会病院への通院交通費は9680円(22回× 440円),②川上脳神経外科クリニックへの通院交通費は880円(2回×440円),③日本大 あると認められる。 以上によれば,①同愛会病院への通院交通費は9680円(22回× 440円),②川上脳神経外科クリニックへの通院交通費は880円(2回×440円),③日本大学病院への通院交通費は2160円(4回×540円),④市川総合病院への通院交通費は800円(1回×800円),⑤平成26年12月24日の通院交通費は1160円であるとそれぞれ認められ,これらの合計は1万4680円となる。」⑹ 原判決21頁1行目の「要したもの」の次に「及び症状固定確認のための検査料」を加える。 ⑺ 原判決22頁17行目の「759万4574円」の次に「(ただし,円未満切り捨て。)」を加える。 ⑻ 原判決23頁6行目の「もっとも」を「また」に改め,12行目の「ため,以下,この点についても検討する」を削り,13行目冒頭から26行目末尾までを次のとおりに改める。 「 しかし,前記3⑴で認定したとおり,バドミントン競技は一定の頻度で事故発生の危険を伴うものであり,また,特に,バドミントンのダブルス競技の場合,ダブルスのペアは,自陣の狭いコート内を各自が動く場所を制限されずに互いに前後左右に動きながらラケット及びシャトルを用いて競技するものであるから,ダブルスのペア同士での身体の接触,ペアの一方が振ったラケットのペアの相手方への接触,ペアの一方が打ったシャトルのペアの相手方への接触といった事故が不可避的に発生する可能性があることも否定できないが,前記3⑴で認定したとおり,バドミントン競技の場合,ボクシング等の競技とは異なり,バドミントン競技の競技者が,同競技に伴う他の競技者の故意又は過失により発生する一定の危険を当然に引き受けてこれに参加しているとまではいえず,また,上記で認定したとおり,本件事故につき,被控訴 り,バドミントン競技の競技者が,同競技に伴う他の競技者の故意又は過失により発生する一定の危険を当然に引き受けてこれに参加しているとまではいえず,また,上記で認定したとおり,本件事故につき,被控訴人に過失があるとは認められず,さらに,本件記録を精査しても,その他,損害の公平な分担の見地から,本件事故により生じた被控訴人の損害の一部を同人に負担させるべき事情が同人側 に存在すると認めるに足りる証拠も見当たらないから,過失相殺ないし過失相殺類似の法理により本件事故により生じた被控訴人の損害の一部を同人に負担させる理由はないというべきであり,控訴人の主張は採用することができない。」⑼ 原判決24頁3行目の「前記⑺」から4行目の「なるところ,」までを削り,6行目の「719万3244円」を「1198万9938円」に改め,7行目の「70万円」を「120万円」に,10行目の「789万3244円」を「1318万9938円」にそれぞれ改める。 2 当審における当事者の補充主張に対する判断⑴ 控訴人の補充主張⑴について控訴人は,同人がAの打ったシャトルを打ち返した時点において,被控訴人は,Aがシャトルを打った時点にいた位置から移動せず,ネット側のセンターライン付近にいたか,仮に移動したとしても,わずかにシャトルの落下位置方向に振り返る程度の移動にとどまっていたと主張する。 しかし,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」の第3の2⑴で説示したとおり,Aが打ったシャトルは,控訴人よりも被控訴人に近く,被控訴人において十分対応可能な位置であり,かつ,前衛である被控訴人が打ち返すべき位置に飛来したものであり,しかも,控訴人が声かけをした事実は認められず,その他,被控訴人が上記の位置に飛来したシャトルを打つため て十分対応可能な位置であり,かつ,前衛である被控訴人が打ち返すべき位置に飛来したものであり,しかも,控訴人が声かけをした事実は認められず,その他,被控訴人が上記の位置に飛来したシャトルを打つための動作を開始せず,あるいは途中でこれを止めたと認めるべき事情が見当たらない以上,被控訴人の供述により,被控訴人は,控訴人がシャトルを打ち返した時点で,身体を動かす動作を始めて同シャトルを打ち返すことが可能な位置にいたと認めるのが相当であるから,原審の判断に誤りはない。 これに対し,控訴人は,Aがシャトルを打ってから控訴人がこれを打ち返すまでの時間が2秒足らずであったと主張するが,仮にそうであったとしても,このことは上記の認定の妨げとなる事情ではない。また,控訴人は,控 訴人がAの打ったシャトルを打ち返した時点において,同シャトルは床面に近い位置まで落下していたと主張し,原審での本人尋問でも同旨の供述をするが,他方で,被控訴人は,原審での本人尋問において,バックハンドですくい上げようとして一歩踏み出したところで,控訴人のラケットが左眼に当たったなどと,控訴人が床面に近い位置よりも高い位置でシャトルを打ち返したと理解できる内容の供述をしている上,シャトルが床に近い位置まで落下していたとの控訴人の上記の供述を裏付ける的確な証拠もないから,控訴人の上記主張は採用することができない。さらに,控訴人は,控訴人がAの打ったシャトルを打ち返した時点において,被控訴人はシャトルの落下位置(控訴人のシャトルの打点)から少なくとも1.6メール以上離れた場所にいたと主張し,その証拠として乙17の調査報告書を提出するが,同調査報告書は,控訴人の主張に基づいて再現及び検証をした結果にすぎないから,同証拠から直ちに控訴人の上記の主張を認めることはできず, にいたと主張し,その証拠として乙17の調査報告書を提出するが,同調査報告書は,控訴人の主張に基づいて再現及び検証をした結果にすぎないから,同証拠から直ちに控訴人の上記の主張を認めることはできず,他に,同主張を認めるに足りる的確な証拠はない。 以上によれば,控訴人の主張は採用することができない。 ⑵ 控訴人の補充主張⑵について控訴人は,本件事故につき控訴人に過失があるとした原審の判断は誤りであると主張する。 しかし,控訴人は,同人には被控訴人の動静を把握することができなかったと主張するが,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」の第3の2⑵アで説示したとおり,控訴人は,後衛において被控訴人とほぼ前後に並ぶ位置にいたのであるから,前衛の位置にいた被控訴人の動静を把握することができたことは明らかであり,しかも,控訴人は,自らが動き出す時点で,被控訴人がシャトルを打つために動く可能性があることを予見できたというべきであるから,控訴人が主張する諸点はいずれも控訴人の過失を否定する理由とはならず,控訴人の主張は採用することができない。 控訴人は,前衛の被控訴人が後衛の控訴人の動静を把握することができたと主張するが,同主張は,被控訴人が,自らシャトルを打ち返さないと判断し,あるいはシャトルの落下位置まで移動して打ち返すのは間に合わないと判断される状況にあったとの事実を前提とするものであるところ,上記⑴で説示したとおり,その前提とした事実自体が認められないから,控訴人の主張は採用することができない。 控訴人は,原審が,本件事故は,被控訴人においてAが打ったシャトルへの対応が間に合わないことが明らかな状況にある段階に至ってから控訴人側に動き出したことにより生じたものではないと認定したのは誤りであると主張す 審が,本件事故は,被控訴人においてAが打ったシャトルへの対応が間に合わないことが明らかな状況にある段階に至ってから控訴人側に動き出したことにより生じたものではないと認定したのは誤りであると主張するが,上記⑴で説示したところに照らせば,原審の上記の認定に誤りはなく,控訴人の主張は採用することができない。 控訴人は,本件事故は,被控訴人において危険を回避するために退避する義務を怠ったことにより発生したものである旨の主張をするが,上記⑴で説示したところによれば,控訴人が上記の主張の前提とした被控訴人がシャトルを打たないと判断してこれを見送ったとの事実は認められず,また,控訴人は,上記の主張の前提として,被控訴人が控訴人に遅れてシャトルに向かって移動したとも主張するが,仮にそうであったとしても,上記⑴で説示したとおり,Aの打ったシャトルは被控訴人が打ち返すべき位置,すなわち被控訴人の守備範囲に飛来したものであるから,被控訴人に接触等の危険を回避する行動をとるべき義務があったとは認められず,いずれにしても,控訴人の主張は採用することができない。 控訴人は,バドミントンのダブルス競技では狭いコートの中でペアの競技者が常に近くにいることを前提に予見可能性を認めることは結果責任を負わせるに等しいとの控訴人の主張を排斥した原審の判断は誤りであると主張するが,控訴人がその主張の前提として主張するもののうち,①原審がその判断の前提となる控訴人がシャトルを打ち返した時点における被控訴人の位置 を明らかにしていないとの点については,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」の第3の2⑴アで認定したとおり,被控訴人は,控訴人がシャトルを打ち返した時点で,同シャトルを打ち返すことが可能な位置にいたと認められるところ,原審の判断の前提としてはこれで十分 の「事実及び理由」の第3の2⑴アで認定したとおり,被控訴人は,控訴人がシャトルを打ち返した時点で,同シャトルを打ち返すことが可能な位置にいたと認められるところ,原審の判断の前提としてはこれで十分であり,これ以上の具体的な位置を明らかにする必要性があるとは認められず,②原審がAがシャトルを打ってから控訴人がこれを打ち返すまでの時間が2秒足らずであったことを考慮していないとの点については,このことが直ちに控訴人の過失を否定する理由とならないというべきであるし,③原審が被控訴人がシャトルを打ち返すことが可能な状態で動き出したとの誤った事実認定を前提にしているとの点については,上記⑴で説示したとおり,原審の上記の事実認定に誤りはないから,控訴人の主張を採用することができない。 控訴人は,控訴人が自らシャトルを打ち返すと判断してシャトルの落下位置まで移動を開始する直前に「はい」と声かけをしたとの主張を認めなかった原審の判断は誤りであると主張するが,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」の第3の2⑴イで説示したとおり,控訴人が声かけをしたとは認められないから,控訴人の主張を採用することができない。 以上によれば,本件事故につき控訴人に過失があるとした原審の判断は誤りであるとの控訴人の主張は採用することができない。 ⑶ 控訴人の補充主張⑶について控訴人は,本件事故につき違法性の阻却を認めなかった原審の判断は誤りであると主張する。 しかし,控訴人は,原審が,バドミントンのダブルス競技中にシャトルを打つ行為によって結果としてペアの相手方が負傷した事案に関しては,常に違法性が阻却されないと判断したと理解した上で,バドミントン競技の競技者は,競技中の事故により負傷する危険を引き受けて競技に参加していることを理由に,上記の アの相手方が負傷した事案に関しては,常に違法性が阻却されないと判断したと理解した上で,バドミントン競技の競技者は,競技中の事故により負傷する危険を引き受けて競技に参加していることを理由に,上記の原審の判断を非難するが,補正の上で引用した原判決の 「事実及び理由」の第3の3⑴で説示したとおり,バドミントン競技の競技者が,同競技に伴う他の競技者の故意又は過失により発生する一定の危険を当然に引き受けてこれに参加しているとまではいえないというべきであるから,控訴人の主張は,その前提を欠き,採用することができない。 また,控訴人は,控訴人がAの打ったシャトルを打ち返した時点で,控訴人のみが同シャトルを打ち返せる客観的な位置ないし状況にあったことを前提とする主張をするが,上記⑴で説示したところによれば,そのような事実は認められないから,控訴人の主張は,その前提を欠き,採用することができない。 以上によれば,本件事故につき違法性の阻却を認めなかった原審の判断は誤りであるとの控訴人の主張は採用することができない。 ⑷ 控訴人の補充主張⑷について控訴人は,原審が,症状固定後の診療費用及び通院交通費につき,症状固定後にもなお保存的治療が必要であったとする合理的な根拠を示さずに,本件事故と相当因果関係のある損害と認めたと主張する。 しかし,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」の第3の4⑵イで説示したとおり,症状固定後の時期においても,同愛会病院のB医師の判断で治療を継続していたことに照らせば,なお保存的治療が必要であったと推認することができるから,控訴人の主張は採用することができない。 ⑸ 控訴人の補充主張⑸について控訴人は,カルテ謄写費用等,診断書料及び症状固定確認のための検査料は損害立証資料の取得費用であるか ることができるから,控訴人の主張は採用することができない。 ⑸ 控訴人の補充主張⑸について控訴人は,カルテ謄写費用等,診断書料及び症状固定確認のための検査料は損害立証資料の取得費用であるから,これらは本件事故と相当因果関係のある損害ではないと主張する。 しかし,弁論の全趣旨によれば,上記の文書料及び検査料は,本件事故による被控訴人の損害を立証するのに必要かつ相当な範囲のものと認められるから,これらは本件事故と相当因果関係のある損害であると認めるのが相当 であり,控訴人の主張は採用することができない。 ⑹ 控訴人の補充主張⑹について控訴人は,原審が,通院交通費につき,証拠に基づかない不当な認定をしたと主張する。 しかし,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」の第3の4⑵アで説示したとおり,被控訴人の通院経路は弁論の全趣旨により認定でき,通院に利用した公共交通機関の料金は当裁判所に顕著であるから,控訴人の主張は採用できない。 ⑺ 控訴人の補充主張⑺について控訴人は,本件事故につき控訴人に過失責任が認められるとしても,被控訴人の過失割合が9割を下ることはなく,控訴人の過失割合を6割と認定した原審の判断は誤りであると主張する。 しかし,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」の第3の4⑺で説示したとおり,本件事故の発生について被控訴人に過失はなく,損害の公平な分担の見地から,本件事故により生じた被控訴人の損害の一部を同人に負担させるべき事情が同人側に存在するとも認められないから,過失相殺ないし過失相殺類似の法理により本件事故により生じた被控訴人の損害の一部を同人に負担させる理由はないというべきであり,控訴人の主張は採用することができない。 ⑻ 被控訴人の補充主張 ,過失相殺ないし過失相殺類似の法理により本件事故により生じた被控訴人の損害の一部を同人に負担させる理由はないというべきであり,控訴人の主張は採用することができない。 ⑻ 被控訴人の補充主張⑴について被控訴人は,本件事故による通院慰謝料は150万円を下らないと主張するが,控訴人が主張する諸点を踏まえて考えても,原審が,本件事故による被控訴人の傷害の程度や症状固定までの通院期間等を考慮して,通院慰謝料を73万円と判断したのは相当であり,被控訴人の主張は採用することができない。 ⑼ 被控訴人の補充主張⑵について 被控訴人は,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は150万円を下らないと主張するが,本件事案の内容,訴訟の経過及び認容額等を勘案すれば,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」の第3の4⑻で説示したとおり,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は120万円と認めるのが相当であるから,被控訴人の主張は採用することができない。 ⑽ 被控訴人の補充主張⑶について被控訴人は,原審が,民法722条2項の規定を類推適用し,控訴人は被控訴人に生じた損害の6割を負担するのが相当であると判断したのは,誤りであるなどと主張するところ,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」の第3の4⑺で説示したとおり,本件において,過失相殺ないし過失相殺類似の法理により本件事故により生じた被控訴人の損害の一部を同人に負担させる理由はないというべきであるから,原判決の上記の判断部分を,上記⑺のとおりに変更するのが相当である。 第4 結論以上によれば,被控訴人の請求は,1318万9938円及びこれに対する平成26年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,そ 第4 結論以上によれば,被控訴人の請求は,1318万9938円及びこれに対する平成26年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないから棄却すべきであり,これと一部異なる原判決は一部相当ではない。 よって,控訴人の本件控訴を棄却し,被控訴人の本件附帯控訴に基づき原判決主文第1項及び第2項を本判決主文第2項のとおりに変更し,被控訴人のその余の本件附帯控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部 裁判長裁判官八木一洋 裁判官片山憲一 裁判官杉山順一
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