昭和50(行ウ)4 法人税確定申告期限延長請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和52年7月11日 和歌山地方裁判所 租税
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【DRY-RUN】○ 主文 1 被告が、原告の昭和四七年四月一日から同四八年三月三一日まで、及び同年四 月一日から昭和四九年三月三一日までの各事業年度分法人税確定申告について、昭 和四九年五月三〇日付で原告に対してした

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○ 主文 1 被告が、原告の昭和四七年四月一日から同四八年三月三一日まで、及び同年四月一日から昭和四九年三月三一日までの各事業年度分法人税確定申告について、昭和四九年五月三〇日付で原告に対してした申告期限延長申請を却下する旨の各処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨主文と同旨の判決。 二請求の趣旨に対する答弁(本案前の申立) 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 との判決。 (本案に対する申立) 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 との判決。 第二当事者の主張一請求原因 1 本件各処分及びこれに至る経緯等(一) 原告は、原告の昭和四七年四月一日から同四八年三月三一日までの事業年度分(以下、昭和四七年度分といい、他年度分についても同様の表現をする。)法人税確定申告及び昭和四八年度分法人税確定申告につき、昭和四九年四月三〇日、被告に対し、申告期限延長申請(以下、本件各申請という。)をしたが、被告は、同年五月三〇日、原告の本件各申請を却下する旨の各処分(以下、本件各処分という。)をした。 そこで、原告は、被告に対し、昭和四九年六月七日、本件各処分に対する異議申立をしたが、被告は、同年九月六日、原告が既に確定申告をしたものであるから申立の対象を欠き申立の利益がないことを理由に右異議申立を却下した。原告は、同年一〇月七日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、右所長は、昭和五〇年二月二〇日、被告と同じ理由により右審査請求を却下した。 (二) 原告が本件各申請に及んだ前後の経緯は次のとおりである。 (1) 原告は、法人税法違反嫌疑により、大阪国税局から昭和四七年八月三日、和歌山地方検察庁によつて同四八年四月一二日及び同月二五日、以上 二) 原告が本件各申請に及んだ前後の経緯は次のとおりである。 (1) 原告は、法人税法違反嫌疑により、大阪国税局から昭和四七年八月三日、和歌山地方検察庁によつて同四八年四月一二日及び同月二五日、以上三回にわたつて決算上必要なほとんどの帳簿、書類を押収され、その後、その一部は仮還付を受けたが、なお大部分の書類は領置されたままで、閲覧、謄写もままならない状況となつた。ことに差押えられた無題ノート(国税局領置番号押証第六二四-一、検察庁領置番号昭和四八年領第四一五号符第五八七の一号-以下本件「無題ノート」という。)は、原告の本件法人税確定申告にあたり是非とも必要な書類であつたところ、右ノートは和歌山地方検察庁において保管されているはずであるのに、原告がその閲覧を求めているが、右検察庁は、右ノートの所在が不明で捜索中である旨の回答をしている。このため原告は、原告の昭和四七年度分決算の確定ができなくなり、ひいては原告の昭和四八年度分決算確定もできず、そのために右両年度分法人税の確定申告は不可能となつた。 (2) そこで、原告は、被告に対し、原告の昭和四七年度分法人税確定申告につき、昭和四八年三月二三日、その申告期限延長申請をしたところ、被告は、同年五月二九日これを承認して、申告期限を同年七月三一日と指定した。次に、原告は、同月二日、右の期限の延長申請をし、被告は、同月三〇日、これを承認して、申告期限を同年九月三〇日と指定した。更に、原告は、同月二五日、右の期限の延長申請をしたが、被告は、同月二七日これを却下するに及んだ。 (3) 原告は、右却下処分につき異議申立を準備したが、右指定期日たる昭和四八年九月三〇日までに原告の昭和四七年度分法人税確定申告をすることは到底間に合わないので、取りあえず被告職員の不利益な処分をすることがないとの教示により、昭 議申立を準備したが、右指定期日たる昭和四八年九月三〇日までに原告の昭和四七年度分法人税確定申告をすることは到底間に合わないので、取りあえず被告職員の不利益な処分をすることがないとの教示により、昭和四八年一〇月一日、被告に対し原告の昭和四七年度分法人税についての仮申告書を提出し、他方、昭和四八年一一月二七日、右却下処分に対する異議申立をしたところ、被告は、同四九年三月一日、右申立を理由ありと認め、右却下処分を取消し、あらためて右申告期限を同年五月三一日と指定した。 (4) 原告は、その後も前記押収により昭和四七年度分法人税について決算確定ができない事情は変わらず、そのため昭和四八年度分法人税についての決算確定も出来ないので、これを理由に、昭和四九年四月三〇日、右両年度分法人税確定申告の申告期限延長を求めて本件各申請に及んだが、被告は、同年五月三〇日右各申請を却下する旨の本件各処分をした。 (5) そこで、原告は、被告に対し、本件各却下処分に対する異議申立を準備したが、原告の昭和四八年度分法人税確定申告について、取りあえず昭和四七年度分の場合と同様の趣旨で、昭和四九年五月三一日、被告に対し、申告書を提出し、同年六月七日、右申告書が前年度分仮申告書と同趣旨のものである旨を明らかにした添付書を提出した。 2 本件各処分の違法性原告の本件各申請には、前記1(二)(1)のとおり原告の昭和四七・四八両年度分の確定申告をなしえないやむを得ない理由が存在していたものであり、被告においても原告の昭和四七年度分のそれについては前記1(二)(2)(3)のとおり原告の申告期限延長申請を再三にわたり承認していたのであるから、原告の右理由を無視し、かつ、原告が何ら申告をしなかつたとすると、原告に申告する意思もないものとの不利益な推定を受けるおそれがあつたので、将来 申告期限延長申請を再三にわたり承認していたのであるから、原告の右理由を無視し、かつ、原告が何ら申告をしなかつたとすると、原告に申告する意思もないものとの不利益な推定を受けるおそれがあつたので、将来決算上必要な書類が返還された時あらためて確定申告をするとの条件のもとに仮申告書を提出したのに、これを確定申告があつたものとしてした本件各処分は違法である。 3 よつて、原告は、被告がした原告に対する本件各処分の取消しを求める。 二本案前の被告の主張原告が、被告に対して、原告の昭和四七年度分法人税につき、昭和四八年一〇月一日、仮申告書と題する書面を、原告の昭和四八年度分法人税につき、昭和四九年五月三一日、確定申告書及び同年六月七日添付書と題する書面をそれぞれ提出したことにより、右両年度分法人税についていずれも有効な確定申告をしたものというべきであるので、既に確定申告をした原告には、その申告期限延長申請を却下した本件各処分の取消しを求める訴えの利益はなく、よつて原告の本件訴えは却下さるべきである。 すなわち、 1 申告納税制度における納税申告は、納税義務者が自ら課税標準等または税額等を確認したうえこれを税務官庁に通知する行為であり、税務官庁に提出された申告書が申告者の申告意思に基づくものであり、かつ、税法所定の記載事項を具備するものである以上は有効な納税申告と解すべきである。 2 ところで、本件各申告書は、法人税法施行規則別表に定める法人税確定申告書の書式に従い、法人税法七四条所定の記載要件事項が記載されており、適式な確定申告書の要件を充足していた。また、原告の申告意思については、原告が本件各申告書中に所得税額等の還付金額や中間納付額の還付を求めて右還付金を受け取る銀行名まで指定していることから、本件各申告書の提出により申告にかかる還付金を受け取 原告の申告意思については、原告が本件各申告書中に所得税額等の還付金額や中間納付額の還付を求めて右還付金を受け取る銀行名まで指定していることから、本件各申告書の提出により申告にかかる還付金を受け取る意思があつたと見られること、及び原告が本件各申告書と合わせて提出した添付書には、右申告は一部省略、あるいは概算の決算に基づく申告で、将来押収された書類が返還された場合、修正申告もしくは更正の請求の必要性が起こると予想される旨の記載があり、右によると、原告は、本件各申告書を確定申告書として申告意思に基づき提出したことは明らかである。 なお、原告の主張するような仮の申告や条件付申告という制度は、現行税法上存在しないものであるし、また、決算確定ができず、これを経ないで提出された申告書でも、それは納税申告の内容の問題で、後日、修正申告等により是正されることはあつても、右一事のみで申告行為自体の効力が左右されるものではない。 三本案前の主張に対する原告の反論本件各申告書及び添付書に被告主張のとおりの記載があることは認めるが、その余の主張は争う。 原告の昭和四七年度分法人税についての仮申告書につき、被告が確定申告としてとり扱つていないことは、請求原因1(二)(3)に述べたように、原告が被告に右仮申告書を提出した日より後の同四九年三月一日に被告がさきにした右年度分法人税確定申告期限延長申請却下処分に対する原告の異議申立を理由ありと認めてこれを取り消し、あらたに申告期限を指定したことからも明らかである。 なお、被告は、本件各申告書に還付金額やその受取銀行名の記載があることから、原告に申告意思があつたと主張するが、原告は、それぞれ所定の記載欄があるゆえに記入したにすぎず、右一事を以つて原告の申告意思を認めることはできないし、更に、被告は右添付書の記載内容を根拠 ことから、原告に申告意思があつたと主張するが、原告は、それぞれ所定の記載欄があるゆえに記入したにすぎず、右一事を以つて原告の申告意思を認めることはできないし、更に、被告は右添付書の記載内容を根拠に原告の申告意思を主張するが、右添付書の末尾に「従つて、申告期限の延長申請の却下処分に対する異議申立を準備中でありますが、時間的な余裕もない事等を考慮し、一応本件申告書提出に及んだ次第です。」と記載されているところからみても、原告に確定申告意思のなかつたことは明らかである。 四請求原因に対する被告の認否及び主張(認否) 1 請求原因1の事実について(一) 同1(一)の事実は認める。 (二) (1)同1(二)(1)の事実のうち、原告がその主張の嫌疑により大阪国税局及び和歌山地方検察庁から押収を受けたことは認めるが、その余は争う。 (2) 同1(二)(2)の事実は認める。 (3) 同1(二)(3)の事実のうち、原告がその主張のような申告書を提出し、異議申立をし、被告が原告主張のような処分をしたことは認めるが、その余は争う。 (4) 同1(二)(4)の事実のうち、原告が本件各申請をし、被告が本件各処分をしたことは認めるが、その余は否認する。 (5) 同1(二)(5)の事実は認める。 2 同2の主張は争う。 (主張) 1 被告のした昭和四七年度分法人税確定申告期限延長申請却下処分の適法性(一) 原告が、右法人税につき昭和四八年一〇月一日確定申告をしたことは前記二で述べたとおりである。そうすると既に確定申告がなされたのにその申告期限を延長する理由はないのであるから、原告の本件申請を却下した本件処分には何らの違法はない。 (二) 被告が昭和四八年九月二七日付確定申告期限延長申請却下処分を取り消し、申告期限を同四九年五月三一日と指定する処分をしたのは、原告の前 、原告の本件申請を却下した本件処分には何らの違法はない。 (二) 被告が昭和四八年九月二七日付確定申告期限延長申請却下処分を取り消し、申告期限を同四九年五月三一日と指定する処分をしたのは、原告の前記仮申告書中の添付書に、原告は右申告書及び添付書類の不足部分を後日補足したいとの趣旨の記載があつたので、原告の補足行為を待つ趣旨で、やや理論的整合を欠いた措置であつたが、原告の延長申請を認めることとして、申告書の補足に要する十分な期間として処分の日から三か月を見込み、右昭和四九年五月三一日を申告期限と指定したものである。ところが、原告は、同年四月三〇日、更に申告期限の延長を求めたので、被告は、これ以上原告の補足行為を待つても見通しが立たないものと判断し、本件処分において右申告書が原告の確定申告書であつたことを自ら再確認して原告の右申請を却下したものである。 ちなみに、被告が右申告書を確定申告として取り扱つていたことは、右申告書別表一(一)の「この申告による還付金額」欄に記載されている金額一四五万九九〇〇円は右申告により確定したものとして、右申告書が提出された昭和四八年一〇月一日付で原告の未納国税に充当しこれを原告にも通知したことから明らかである。 2 被告のした昭和四八年度分法人税確定申告期限延長申請却下処分の適法性被告は、原告の右申請につき、次の事情が判明したので、右申請を不相当と認め本件却下処分をしたものである。 (一) 原告に対する法人税法違反嫌疑事実は、昭和四四年度分から昭和四六年度分までの三事業年度分についてのもので、昭和四七年八月三日査察調査の着手がなされ、同四八年五月二八日検察官の捜査も一応終了したものゆえ、昭和四八年度分の決算に必要な会計帳簿等のほとんどが差押えられたものとは認められないこと。 (二) 大阪国税局及び和歌山地方検察 の着手がなされ、同四八年五月二八日検察官の捜査も一応終了したものゆえ、昭和四八年度分の決算に必要な会計帳簿等のほとんどが差押えられたものとは認められないこと。 (二) 大阪国税局及び和歌山地方検察庁においては、本件差押物件につき、原告から請求があれば、できる限り閲覧、謄写、保管あるいは還付の処理をすることとし、このことは原告にも通知されていて、原告は右手続をすれば少くとも昭和四八年度分の決算に必要な書類等は閲覧等ができたと解せられること。 (三) 原告が主張する本件「無題ノート」については、昭和四八年九月一〇日ころ、担当検察官がそのコピーを既に原告に手交していたこと。 (四) 昭和四七年度分法人税については、原告は既に確定申告をしていたこと。 なお、原告は本件処分を受けた直後の昭和四九年五月三一日に全く適式な昭和四八年度分法人税確定申告書を提出しており、これよりすれば、右年度分法人税の申告期限を延長する必要がなかつたことは明らかである。 第三証拠(省略)○ 理由一本案前の被告の主張について原告が、被告に対して、原告の昭和四七年度法人税につき昭和四八年一〇月一日仮申告書と題する書面を、原告の昭和四八年度法人税につき昭和四九年五月三一日確定申告書と題する書面を、同年六月七日右書面に付随する添付書を各提出したこと、請求原因1(二)(1)の事実のうち原告が大阪国税局及び和歌山地方検察庁によつて押収を受けた事実、同1(二)(2)の事実、同1(二)(3)の事実のうち原告がその主張のような申立書を提出し、異議申立をし、被告が原告主張のような処分をしたこと、同1(二)(4)の事実のうち原告が本件各申請をし、被告が本件各処分をしたこと及び同1(二)(5)の事実については当事者間に争いがなく、右争いのない事実並びに成立に争いのない乙第一、第二号証、原本 、同1(二)(4)の事実のうち原告が本件各申請をし、被告が本件各処分をしたこと及び同1(二)(5)の事実については当事者間に争いがなく、右争いのない事実並びに成立に争いのない乙第一、第二号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第五号証並びに証人Aの証言並びに弁論の全趣旨を総合すると、以下のような事実が認められ、これに反する証拠はない。 1 原告は、原告の昭和四四年ないし四七年度分にかかる法人税法違反嫌疑により、昭和四七年八月三日、大阪国税局によつて帳簿、書類等を押収された。 原告は、右押収により原告の昭和四七年度分の決算ができないことを理由に被告に対し、昭和四八年三月二三日、右年度分法人税確定申告の申告期限延長申請をし、被告は、昭和四八年五月二九日、原告の申請を承認して申告期限を同年七月三一日と指定した。原告は、右同様の理由により被告に対し、同月二日、右同様の申請をし、被告は、同月三〇日これを承認して申右期限を同年九月三〇日と指定した。更に、原告は、告と同様の理由で被告に対し、同月二五日、右同様の申請をしたところ、被告は、同月二七日、右申請を却下した。 2 そこで、原告は、右却下処分に対する異議申立を準備したが、右指定期限までに異議申立をすることも確定申告することも到底不可能なので、原告の経理担当者Aが被告署員にこれを相談したところ、被告署員Bは、決して不利益な取扱いはしないので概算でもよいから申告せよ、と教示したので、原告は、右教示に従い、確定申告をする意思はないが、取りあえず、昭和四八年一〇月一日、被告に対し原告の昭和四七年度分法人税について仮申告書と題する書面を提出した。右仮申告書は、法人税法施行規則別表に定める確定申告書の書式により、同法七四条所定の事項が記載されていたが、そのうち還付金額やその受取銀行名は、その欄があつたのでたま 申告書と題する書面を提出した。右仮申告書は、法人税法施行規則別表に定める確定申告書の書式により、同法七四条所定の事項が記載されていたが、そのうち還付金額やその受取銀行名は、その欄があつたのでたまたま記入したにすぎないものであり、右仮申告書中には「添付書」と題する書面が添付されており、右書面には、概ね、本申告書は一部省略、あるいは概算の決算に基づくものであり、原告は、被告のなした申告期限延長却下処分に対する異議申立を準備中であるが、指定された申告期限までには時間的余裕がないので、将来決算に必要な書類が返還された後、修正申告もしくは更正の請求の必要性が起るべきものと予想されるが、これらについても提出期限が定められており当社が不利益を受けるのではないかと危惧しており、一応本申告書を提出する旨記載されている。 3 原告は、昭和四八年一一月二七日、被告に対し、前記確定申告期限延長申請却下処分に対する異議申立をしたところ、被告は同四九年三月一日右却下処分を取り消し、原告の昭和四七年度分法人税確定申告期限を昭和四九年五月三一日と指定した。 4 原告は、昭和四九年四月三〇日、原告の昭和四七・四八年度分法人税確定申告について被告に対し前記押収を理由に申告期限の延長申請をしたところ、被告は、昭和四九年五月三〇日、右各申請をいずれも却下する旨の本件各処分をした。そこで原告は、急きよ税理士に依頼し、原告の昭和四八年度分法人税について、昭和四七年度分のそれと同様の趣旨で昭和四九年五月三一日、確定申告書と題する書面を被告に提出した。もつとも、その際原告の意思が担当税理士に通じていなかつたので、「確定」申告という文字を使用しているが、その趣旨は昭和四七年度分の前記仮申告書と同様であることを被告に表明するため、原告は、被告に対し、昭和四九年六月七日、右仮申告書中の に通じていなかつたので、「確定」申告という文字を使用しているが、その趣旨は昭和四七年度分の前記仮申告書と同様であることを被告に表明するため、原告は、被告に対し、昭和四九年六月七日、右仮申告書中の添付書と同様の記載ある添付書と題する書面を提出し、同日、被告に対し本件各処分に対する異議申立をもした。 以上の認定事実によると、原告が被告に提出した右各申告書は、法人税法所定の法人税確定申告書としての要件を形式的には充足する書面であるが、原告が右各申告書を提出した際確定申告をする意思がなかつたことは右認定のとおりであるところ、原告の右意思は、右各添付書中に記載するところにより被告に充分表明されているものと認められ、よつて、被告は、原告の右意思を充分に知つていたものであり、仮に知らなかつたとすれば、それは被告の過失によるものであるものというべきである。けだし、確定申告ができないため、その申告期限延長申請却下処分に不服があつてこれに異議申立を準備している者が、特段の理由もないのに確定申告をするようなことは通常では考えられないことであるのみならず、原告の昭和四七年度分法人税については、右仮申告書を原告が提出するに至つたのは、原告が原告の右年度分決算確定及び右却下処分の異議申立が被告指定期日までにできないことを被告署員に相談し、その際の被告署員の教示によるものであること、及び被告は原告の右申告書提出後約五か月経過したころ、右却下処分を取り消し原告の異議申立を理由ありと認めてその期限を昭和四九年五月三一日と指定する処分をしていることに鑑みると、被告は原告の右年度分法人税について既に提出されていた前記仮申告書を確定申告書とはとり扱つていなかつたことは明らかである。なお、被告は、右仮申告書に基づく還付金を右仮申告書提出日である昭和四八年一〇月一日付で原告の 分法人税について既に提出されていた前記仮申告書を確定申告書とはとり扱つていなかつたことは明らかである。なお、被告は、右仮申告書に基づく還付金を右仮申告書提出日である昭和四八年一〇月一日付で原告の未納国税に充当し、その旨を原告に通知したので、当初から右仮申告書を確定申告としてとり扱つてきた旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はないばかりか、仮に被告主張の右事実があつたとしても、被告が原告の右意思を知らなかつたことにつき過失があることにはなりうるが、前記結論を左右するに足りるものとはいえない。 そうだとすると、右各申告書は適式な法人税確定申告書としての要件を形式的には充足してはいるにもかかわらず、原告が被告にこれを提出した際、原告には確定申告する意思がなく、被告もこれを知つていたか、過失によりこれを知らなかつたものであり、このような場合、仮申告ないし条件付申告の制度がないからという理由で、直ちにこれを確定申告であると断定するのは正当ではなく、むしろ、民法九三条但書の趣旨から、右各申告書に基づく原告の申告は、確定申告としては無効なものであると解すべきである。従つて、被告の本案前の主張は理由がない。 二原告の本件請求の当否について 1 請求原因1(一)の事実については当事者間に争いはない。 2 そこで、本件各処分の違法性の有無について検討する。 国税通則法一一条は、税務署長が災害その他やむをえない理由があると認めるときは、国税に関する法律に基づく申告の申告期限を延長することができる旨規定しているので、右規定からすると、右申告期限の延長の可否を決定することは、税務署長の裁量による処分であるというべきであるところ、行政庁の裁量による処分であつても、その裁量の範囲を逸脱するような重大な違法がある場合には、裁量権の濫用として、その処分は取消されなけれ とは、税務署長の裁量による処分であるというべきであるところ、行政庁の裁量による処分であつても、その裁量の範囲を逸脱するような重大な違法がある場合には、裁量権の濫用として、その処分は取消されなければならないものと解するのが相当である。 これをもつて本件を見るに、前記争いのない事実と、成立に争いのない甲第四号証、証人C、同A、同Dの各証言により真正に成立したと認められる甲第八号証、右D、同Cの各証言により真正に成立したと認められる甲第九号証、右Cの証言により真正に成立したと認められる甲第一〇号証の一・二、同第一一号証の一ないし四、同第一三・第一四号証、右Dの証言により真正に成立したと認められる甲第一八号証、右各証人の証言を総合すると、以下の事実が認められ、これに反する証拠はない。 (一) 大阪国税局は、原告の昭和四四年度分ないし昭和四六年度分法人税にかかる法人税法違反嫌疑により、昭和四七年八月三日、原告の帳簿、書類等一二六一点を押収したが、その中に次に述べる本件「無題ノート」等も含まれていた。 (二) 原告は、食糧加工機(製米機、選穀機、混米機、自動包装機等)を製造販売し、訴外D及び同訴外人が理事長を勤める訴外社団法人D技術研究所(以下、訴外法人という。)は、原告のために食糧加工機の技術開発を行ない、右Dまたは訴外法人が開発した試作品、改良品は、これを実地試験の目的で原告において販売し、未だ技術的に不安定ゆえ返品も多く危険を右Dにおいて負担しているので、その販売代金は右Dまたは訴外法人に帰属することにし、右Dまたは訴外法人は原告に販売協力金名義で右代金の一部を支払う、そして右代金は一応原告総務部長Cが保管し、後日、右試作品、改良品が技術的に安定し、右Dがこれを承認すれば、右代金及び協力金を清算し、原告と右Dまたは訴外法人との間で特許権専用実 代金の一部を支払う、そして右代金は一応原告総務部長Cが保管し、後日、右試作品、改良品が技術的に安定し、右Dがこれを承認すれば、右代金及び協力金を清算し、原告と右Dまたは訴外法人との間で特許権専用実施契約を締結して、原告が右Dまたは訴外法人に特許料を支払つて、完成品としてこれを大量に生産のうえ販売するような関係であつたところ、ことに右Dが試作したオートパツカー(自動包装機)は、昭和四五年三月当時未だ技術的に不安定な試作品ではあつたが、他社において既に販売体制にはいつていたところもあつたことから、その市場を確保するため、同年三月六日、原告と右Dとの間で、大量生産のうえ販売すること及び右オートパツカーに付属する「おりたたみ機」は原告が製作のうえ販売後の維持管理をする、ただし未だ試作品ゆえ従来どおり販売代金は右Dに帰属し、右Dは原告に協力金と「おりたたみ機」の代金、維持管理費を支払う旨のとり決めをなし、従前どおりその販売代金を右Cが保管していた。 しかして、原告と右Dは、右のような取引関係を明確にするため、昭和四七年七月下旬ころから原告総務部長Cと右Dとの間で一週間位にわたつて協議し、同年八月二日、次のとおりの三点にわたつて協議がととのつた。すなわち、(イ)原告が右Dまたは訴外法人に支払うべき約一〇〇件にのぼる特許料を改訂すること、(ロ)試作品、改良品(特にDが試作したオートパツカーは、当時既に単価二〇〇万円ないし二五〇万円で約二〇〇台販売されていた。)について、原告が右Dまたは訴外法人に支払うべき代金額と、そのうち原告が受け取るべき協力金額の確定及びその方法及び(ハ)原告がDから受け取るべきオートパツカー付属品の「おりたたみ機」の代金、維持管理費の金額の確定及びその方法・そして、右Cは、右了解事項を本件「無題ノート」に六・七ページにわたり記 その方法及び(ハ)原告がDから受け取るべきオートパツカー付属品の「おりたたみ機」の代金、維持管理費の金額の確定及びその方法・そして、右Cは、右了解事項を本件「無題ノート」に六・七ページにわたり記載し、右Dはこれに署名し、後日これに基づき正式の契約書を作成することとなつた。右Cは、右協議に用いられた特許一覧表、オートパツカーの販売先別売上金額、販売費用を記載した一覧表及び右Dの領収書控、メモ等の資料を本件「無題ノート」にはさんでおいた。 このように右ノート、資料は、前記のとおり、原告と右D及び訴外法人との間の取引関係、特に前記試作品、改良品に関する販売代金額と協力金額及びその確定方法の了解事項を記載したもので、また右取引関係は原告の他の帳簿類には記載がなく、その基礎資料としては右ノートにはさまれた右資料のみであつた。また、右資料に基づいて協議がなされたため、右資料がなければ右協議事項を復元することは困難な状況にあつた。 大阪国税局は、昭和四七年八月三日前記押収により本件「無題ノート」とともにこれにはさみ込まれた右資料を差押えた。 (三) 原告は、右押収により帳簿類等が差押えられ、そのために原告の昭和四七年度分決算ができなくなつた。そこで、原告は、これを理由に、昭和四八年三月二三日及び同年七月二日、原告の昭和四七年度分法人税確定申告の申告期限延長申請を被告にし、被告は、いずれもこれを承認し、その期限を結局同年九月三〇日までと指定した。 ところで、和歌山地方検察庁は、昭和四八年四月九日ころ、右違反事件の捜査に着手し、そのころ本件「無題ノート」等の移管を受け、同年五月三一日、大阪国税局から、原告からの全押収品を引き継いだ。そこで、原告は、和歌山地方検察庁に右ノート等の返還を請求し、同年九月一〇日ころ担当検察官から右ノートのコピーを交付された 管を受け、同年五月三一日、大阪国税局から、原告からの全押収品を引き継いだ。そこで、原告は、和歌山地方検察庁に右ノート等の返還を請求し、同年九月一〇日ころ担当検察官から右ノートのコピーを交付されたが(右コピーの交付年月日につき、前掲証人Aの証言によると昭和四八年七月一九日か二〇日ころと供述しているが、右供述部分は、前掲甲第四号証に照らし、右証人の記憶違いと認める。)、右コピーには、前記Dと原告との間の前記協議了解事項及びはさみ込まれていた前記資料の部分が脱漏しており、右コピーでは原告と右D及び訴外法人との取引関係を確定することはできないものであつた。 そして、本件無題ノート及び右資料は、所在不明であり、担当検察官がその発見に努めている状況にある。 (四) 原告は、押収品の一部及び前記コピーの交付を受け、昭和五一年六月三日、未だ仮還付されない押収品については閲覧、謄写も和歌山地方検察庁から許可され、その後、一〇回くらいにわたりその半分ほど閲覧したものの、本件「無題ノート」及びこれにはさみ込まれていた前記資料が所在不明のため、原告と前記D及び訴外法人との間の取引関係が確定できず、また、その復元も右ノート等がないため不可能であつたため、原告の昭和四七年度分決算を確定することは不可能である状況は変らなかつた。 そこで、既に認定したように、原告は、前記押収により原告の昭和四七年度分決算確定不可能を理由に、昭和四八年九月二五日、被告に対し右年度分の法人税確定申告の申告期限延長申請をし、被告は同月二七日これを却下したが、原告が昭和四八年一一月二七日、被告に右却下処分に対する異議申立をしたところ、被告は、同四九年三月一日、右却下処分を取り消し、原告の申請を承認して申告期限を同年五月三一日と指定し、更に、原告は、右と同様の理由で被告に対し、同年四月三〇日、 下処分に対する異議申立をしたところ、被告は、同四九年三月一日、右却下処分を取り消し、原告の申請を承認して申告期限を同年五月三一日と指定し、更に、原告は、右と同様の理由で被告に対し、同年四月三〇日、原告の昭和四七年度分法人税確定申告の申告期限延長を求め、これと同時に、原告の昭和四八年度分のそれについても申告期限延長を求めて、本件各申請に及んだものである。 以上認定の本件各申請に至る経緯により、まず、原告の昭和四七年度分法人税確定申告に関する本件処分について考察すると、前記押収にかかる本件「無題ノート」及びこれにはさみ込まれた前記資料の所在不明のため、原告において原告の右年度分の決算ができず、そのためにその法人税確定申告も不可能であることは、国税通則法一一条所定の「やむをえない理由」に該当するものと解せられる。そして、被告は、昭和四九年三月一日付原告の異議申立に対して原告の確定申告期限延長申請を承認していたのに、原告にとつて、右ノート等の所在不明という事情が全く変つていない同年五月三〇日原告の本件申請を却下する旨の本件処分をしたものであり、結局、本件処分は、被告の裁量の範囲を逸脱した取り消されるべき違法な処分といわざるをえない(なお、被告は、原告の右年度分法人税につき既に確定申告があつたので本件処分は適法である旨主張するが、右確定申告があつたとは認められないことは既に判断したところであるから、被告の右主張はその前提を欠き失当というべきである。)。 次に、原告の昭和四八年度分法人税確定申告に関する本件処分について考察するに、前掲証人C、同Aの各証言によると、原告の右年度分においても、原告の昭和四七年度分決算確定ができないため、原告の昭和四八年度分決算についても確定不可能であることが認められ、これに反する証拠はなく、原告の右年度分の決算確定 によると、原告の右年度分においても、原告の昭和四七年度分決算確定ができないため、原告の昭和四八年度分決算についても確定不可能であることが認められ、これに反する証拠はなく、原告の右年度分の決算確定不可能の原因も、また、前記押収にかかる本件「無題ノート」及びそこにはさみ込まれた前記資料が所在不明であるということにあり、昭和五一年になつてようやく押収物の一部閲覧が許されている前記事実関係のもとにおいては、原告の昭和四七年度分の場合と、昭和四八年度分のそれとは、別異に取り扱う理由がないから結局、原告の昭和四八年度分に関する本件処分もまた裁量権の範囲を逸脱した取り消されるべき違法な処分といわざるをえない。 三以上の次第で、原告の本件請求はいずれも理由があるのでこれを認容し、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を各適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官新月寛川波利明礒尾正)

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