【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人を罰金二〇、〇〇〇円に処する。 右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算 した期間、被告人を労役場に留置す
主文 原判決を破棄する。 被告人を罰金二〇、〇〇〇円に処する。 右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。 原審及び第一次控訴審における訴訟費用のうち、その二分の一を被告人の負担とする。 理由 本件控訴の趣意は、検察官提出の控訴趣意書に、これに対する答弁は、弁護人大野正男外九名連名提出の答弁書に、それぞれ記載されたとおりであるから、これらを引用する。 一、 控訴趣意第二(法令解釈適用の誤の主張)について所論は、要するに、原判決は、昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(以下「本件条例」という。)について、「本件条例がその指導者等を処罰することにより禁圧しようとする無許可集団示威運動とは、暴力的行動にまで発展する具体的危険性を帯有するものをいう」との見解に立ち、被告人らの本件集団行動は、証拠上、右のような集団示威運動と評価するに足りないから、被告人がこれを指揮誘導するような行動に出たとしても、その所為をもつて被告人に刑責を問うことはできず、結局犯罪の証明がないことに帰するとして、被告人に無罪を言い渡したが、右見解は失当であり、従つて原判決には、この点において、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令解釈適用の誤がある、というのである。 <要旨>そこで検討すると、まず、本件条例一条に違反し、同五条によつてその指導者等が処罰されることとなる</要旨>集団示威運動が、暴力的行動にまで発展する具体的危険性を帯有することを要件とするものであると解すべき文理上の根拠は存しない。 また、集団行動(集会、集団行進及び集団示威運動をいう。以下同じ。)に関して、本件条例のように、許可を原則とし 具体的危険性を帯有することを要件とするものであると解すべき文理上の根拠は存しない。 また、集団行動(集会、集団行進及び集団示威運動をいう。以下同じ。)に関して、本件条例のように、許可を原則とし、不許可の場合が厳格に限定された許可制を設けること、及びその実効性を確保するため、無許可集団行動の主催者、指導者又は煽動者に対し、本件条例の程度の罰則を設けることは、憲法二一条、三一条を含む憲法秩序に違反するものでなく、このような許可制に違反して行なわれる無許可集団行動は、それ自体実質的違法性を有するものというべきであり、換言すれば、その間に、公共の安全や秩序に対する実害ないし具体的危険の発生の有無を問う余地のないことか、最高裁判所屡次の判例及びその趣旨により明らかである(昭和三五年七月二〇日大法廷判決・刑集一四巻九号一二四三頁、昭和四一年三月三日第一小法廷判決・刑集二〇巻三号五七頁。なお、昭和五〇年一〇月二四日第二小法廷判決・刑集二九巻九号七七七頁参照。)から、原判決のいうような限定解釈を加えるべき実質的根拠もまた見出しえない。 それ故、本件に即していえば、本件条例一条に違反する無許可集団行動の指導者を処罰することとする同五条の罪の成立には、公安委員会の許可を受けない集団行動が行なわれた事実と、被告人においてこれを指揮誘導した事実があれは足り、それ以上に、右集団行動が暴力的行動にまで発展する具体的危険性を帯有していることを要しないと解するのが相当である。 論旨は理由がある。 二、 控訴趣意第一(事実誤認の主張)について所論は、要するに、原判決は、「被告人らが、公安委員会の許可を受けることなく、D空港国際線出発ロビー内外において行なつた本件集団行動は、そのあとに予定されていた別の場所での集団示威運動に突き進む手まえの予備的段階における勢 は、「被告人らが、公安委員会の許可を受けることなく、D空港国際線出発ロビー内外において行なつた本件集団行動は、そのあとに予定されていた別の場所での集団示威運動に突き進む手まえの予備的段階における勢ぞろい的な行動に過ぎず、集団示威運動として評価するに足りない」と認定し、被告人がこれを指揮誘導しても罪とならない、としているが、これは判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認である、というのである。 そこで、記録及び原審取調にかかる証拠を調査し、第一次及び第二次の控訴審における審理を含む当審における事実取調の結果をもあわせて検討すると、関係証拠、なかでも後記自判部分挙示の諸証拠により、本件起訴状記載の日時場所において、被告人が無許可集団示威運動を指揮誘導した事実を認めるに十分である。 詳言すれば、証拠により、原判決が右判断の基礎として二の(一)ないし(四)において摘示する諸事実、すなわち、(一) 被告人は、A(正統)中央本部の常任理事、教宣委員長をしていた者で、右団体は、昭和四二年一一月一二日B首相が米国首脳と会談するため訪米することとなつたことについて、C協会とともに、右は日本と中国との友好関係を損なうものであるとして反対の態度をとることとし、これを阻止するため、当日D空港に参集するよう、両団体関係者に対し、機関紙などを通じて広く呼びかけていたこと、(二) 同日午後二時四〇分ころ、被告人は、東京都大田区ab丁目c番d号E空港ターミナル・ビルデイング(以下「空港ビル」という。)二階にある国際線出発ロビー(以下単に「ロビー」ということ、がある。)において、両団体関係者多数が参集したと見てとり、ロビー北西寄りに備え付けてある高さ約一メートルの人造大理石製たばこ吸いがら入れの上に立ち上がり、「B訪米阻止の目的で来た人は集まつて下さい」と呼 )において、両団体関係者多数が参集したと見てとり、ロビー北西寄りに備え付けてある高さ約一メートルの人造大理石製たばこ吸いがら入れの上に立ち上がり、「B訪米阻止の目的で来た人は集まつて下さい」と呼びかけると、約三〇〇名の者がこれに応じてその周囲に集合したので、被告人は、これらの者に対し、みずから「首相の訪米を断固阻止しよう」との趣旨の演説をしたのち、司会者役となつて、右集合した人たちに対し、まずAの会長としてFを、ついで関西の代表としてC関西本部友好商社部会副委員長Gを、最後に青年代表としてHを順次紹介し、これらの者において、次々と右吸いがら入れの上に立ち上がつて「首相訪米阻止」「I来日反対」などの趣旨の演説を行なつたか、被告人は各演説終了の都度、右吸いがら入れの上に立ち、こぶしを高く突きあげながら、「B訪米反対」「I来日反対」「J思想万歳」などのシユプレツヒ・コールの音頭をとり、参集者一同に唱和させたこと、(三) Hの演説に引き続き、最後のシユプレツヒ・コールを終えた被告人は、同日午後三時四分ころ、右吸いがら入れの上から、参集者一同に向かつて「行動を開始します」と宣言し、これに応じて参集者中一部の者が、ロビー北側中央案内所前付近で、西方を向き、横に五、六列、縦に一〇数列に並び、先頭部分の者はスクラムを組んで直ちに走り出し、すぐ左に向きを変えてロビーを半周する形でロビー南東隅から東に通じる職員通路に向かい、残余の者も大部分がこれに続き、その際「ワツシヨイ、ワツシヨイ」とか「訪米阻止」などとかけ声をかける者もあり、たちまち右集団は、右職員通路を駆け抜け、階段を降りて一階階段わきのレストラン「K」前付近にいたつたところ、おりから同所で待機中であつた警官隊に阻止され、これと小ぜりあいを繰り返すなどしたが結局規制され、それ以上の集団行動に を駆け抜け、階段を降りて一階階段わきのレストラン「K」前付近にいたつたところ、おりから同所で待機中であつた警官隊に阻止され、これと小ぜりあいを繰り返すなどしたが結局規制され、それ以上の集団行動に出ることはなかつたこと、(四) 右のようなロビー内外における集団行動については、東京都公安委員会に許可申請はなされておらず、従つてまた同委員会の許可もなかつたこと、が認められるほか、さらに、次のような諸事実も認められる。すなわち、(五) 被告人らが右(二)(三)摘示のような本件集団行動をしているころ、B首相出発に際しての混雑防止のため、ロビーから歓送迎者用フインガーに通じるコインパツサーやロビーに接する有料待合室の業務は停止されていたものの、国際線航空機の発着業務自体は平常通り行なわれることとなつており、本件集団以外に一〇〇名以上の一般乗客及びその見送り人等がロビー内に居合わせ、ロビーの周囲の店舗等も平常通りに店を開いて営業をしていたが、本件集団の動きに伴い、空港会社職員らが、警戒のため、前記コインパツサーや有料待合室の前に人垣を作り、また、ロビー周辺の花屋やギフトシヨシプ等の売店の中には、店頭の商品を片づけ、シヤツターをおろすものもあり、空港としての搭乗案内も本件行動による騒音のため時には聴取できないような事態が生じ、また、本件集団がロビーから走り出たあとには、被告人がその上に立つて演説をし、シユプレツヒ・コールの音頭をとつていた人造大理石製、高さ約一メートルで相当な重量があると認められる前記たばこ吸がら入れがその場に押し倒されていたのであつて、以上のような事態は、従前、ロビーにおいて見られたことがないこと、(六) その間、空港ビル管理者は、場内放送設備により、業務放送の合間を縫い、特に音量を大にして、同ビル内での集会やデモ等は禁 て、以上のような事態は、従前、ロビーにおいて見られたことがないこと、(六) その間、空港ビル管理者は、場内放送設備により、業務放送の合間を縫い、特に音量を大にして、同ビル内での集会やデモ等は禁止されているから直ちに中止されたい旨、制止の呼びかけを再三繰返していたこと、(七) 当時、ロビーに臨場していた制服、私服の警察官一〇名余は、被告人らの本件行動に対して警告、制止の措置をとらなかつたが、それは、これら警察官の主たる任務が警備情報収集ないし状況視察にあり、三〇〇人もの人数による予想を超える集団行動に対して即時実力規制をもつで対応できるような態勢にはなかつたため、不用意に警告、制止等の措置をとるときは、かえつて摩擦と混乱を招き、重大な結果を生ずることを危惧し、かつは国会議員も参加していることであるから、被告人らが節度を保ち、空港側の制止に従つて直ちに行動を中止することをも期待していたことによるものであつて、本件行動は平隠で整然としており、容認されるべきものであると判断したのではないこと、(八) 被告人は、前記放送による制止の呼びかけを聴取理解したけれども、あえてこれを無視して司会を続け、さらに前記警察官らの臨場を認めて、その動向を注視していたが、特段の動きがないことを見きわめると、前示Hの演説に引き続き、「警察官の面前で、首相訪米反対の意思を堂々と表示することができたのは、われわれの偉大な力である」旨述べて本件集団の士気を鼓舞したうえ、「これから抗議行動に移ることとするが、青年が先頭になり、他の人々はその後についてくれ」などとの指示を与えたのち、右手を挙げて、右(三)摘示のとおり「行動を開始します」と宣言し、集団行進の発進を促したこと、(九) D空港ビル内外の要所要所には、同ビル内での集会やデモ等を禁止する旨の注意書が平素 与えたのち、右手を挙げて、右(三)摘示のとおり「行動を開始します」と宣言し、集団行進の発進を促したこと、(九) D空港ビル内外の要所要所には、同ビル内での集会やデモ等を禁止する旨の注意書が平素から掲出されているばかりでなく、本件当日は、午前中から、ロビー中央付近の生花台の前をはじめ空港ビル各所に「空港ビル内での集会やデモ行為はお断り致します」との趣旨を記載した立看板多数が、見易いように設置されていたこと、(一〇) 本件行動の事実上の主催者ともいうべき前示A及びCの各機関紙(A発行の「日本と中国」一九六七年一一月二〇日号、C発行の「国際貿易」同月一四日号、C関西本部友好商社部会発行の「友好と貿易」同月一五日号、当庁昭和四五年押第六八号の九、一〇、一八)は、いずれも本件行動をD空港ロビーにおける「抗議集会」「デモ行進」「デモ」「デモ隊」などとして報道していること、が明らかである。 以上の事実に徴すれば、昭和四二年一一月一二日午後二時四〇分ころ、前示D空港ビル二階国際線出発ロビーにおいて、被告人の呼びかけに応じ、約三〇〇名の者がその周囲に集合して以後、同日午後三時五分ころ、同空港ビル一階レストラン「K」付近で、警察官の規制により集団行進を阻止されるまでの被告人ら本件集団の一連の行動は、単なる勢ぞろい的な行動に過ぎなかつたものとはとうてい言うことができず、全体として本件条例一条にいう集団示威運動に該当するものであり、かつ、被告人は、これを指揮誘導したものであることが明らかである。もとより、本件行動は、旅行者歓送迎に際しての単なる儀礼的日常的行動とはその性質を異にし、同条但書二号の「慣例による行事」にあたるものではない(なお、前示のような本件の経過、態様、その間における被告人の言動のほか、本件の証拠上あらわれている被告人の経歴、地位 行動とはその性質を異にし、同条但書二号の「慣例による行事」にあたるものではない(なお、前示のような本件の経過、態様、その間における被告人の言動のほか、本件の証拠上あらわれている被告人の経歴、地位、知識、経験に照らせば、本件行動にあたり、被告人の違法性の意識に欠けるところがなかつたことも認めるに足りる。)。 それ故、本件行動を本件条例一条の集団示威運動と評価するに足りる証拠がないとし、被告人に対して無罪を言い渡した原判決は、重要な状況事実を看過し、あるいはその評価を誤つた結果、判決に影響するこの明らかな事実誤認をしたものとしなければならない。 論旨は理由がある。 三、 そこで、刑訴法三九七条一項、三八〇条、三八二条により、原判決を破棄し、同法四〇〇条但書に従い、被告事件について更に判決する。 (罪となるべき事実)被告人は、昭和四二年一一月一二日午後二時四〇分ころから同三時五分ころまでの間、東京都大田区ab丁目c番d号E空港ターミナル・ビルデイング内国際線出発ロビーにおいて、A(正統)関係者ら約三〇〇名が集合し、同都公安委員会の許可を受けないで、一団となり、「B首相の訪米阻止」、「Iの来日阻止」等のシユプレツヒ・コールや同趣旨の演説を行なつて気勢をあげたうえ、約五列の隊列を作つてスクラムを組み、「ワツシヨイ、ワツシヨイ」とかけ声をかけながら、かけ足行進をするなどの集団示威運動を行なつた際、同日午後二時四〇分ころ、右ロビー北西寄りに備え付けてあるたばこ吸いがら入れ(人造大理石製、高さ約一メートル)の上に立ち上がり、「B訪米阻止の目的で来た人は集まつて下さい」と呼びかけて、その周囲に右の者らを集合させ、「B首相訪米を阻止しよう」との趣旨の煽動演説をし、引き続き司会者役となつて関係者三名にも同様の演説をさせ、その間、繰り返し前記シユプ は集まつて下さい」と呼びかけて、その周囲に右の者らを集合させ、「B首相訪米を阻止しよう」との趣旨の煽動演説をし、引き続き司会者役となつて関係者三名にも同様の演説をさせ、その間、繰り返し前記シユプレツヒ・コールの音頭をとるなどしたのち、同日午後三時四分ころ、右吸いがら入れの上から参集者の集団に向かい、さらに集団の士気を鼓舞する発言をしたうえ、「これから抗議行動に移ることとするか、青年が先頭になり、他の人々はその後についてくれ」と指示し、最後に、右手をあげ、「行動を開始します」と宣言して、右参集者らにスクラム行進を開始させ、もつて無許可の集団示威運動を指導したものである。 (なお、付言するに、被告人に対する本件起訴状記載の公訴事実は、被告人が、ほか数名と共謀のうえ本件犯行に及んだというのであり、原審における検察官の釈明によれば、右の共謀とは、原審相被告人Gのほか、H及び氏名不詳者二、三名との現場共謀を意味するものであるところ、本件証拠上は、右のような共謀の事実を必ずしも認定しえないものではないけれども、さきに被告人及び右Gについてなされた本件第二次控訴審判決(東京高等裁判所昭和五〇年(う)第二二九三号同五一年六月一日第四刑事部判決)は、被告人が単独で本件所為に及んだものとし、右Gについては、被告人その他の者との共謀が認められず、同人が単独で本件集団行動を指導したとも考えられないとして無罪を言い渡し、右判決中Gに関する部分に対しては検察官の上告がなく、その確定を見ている状況にあり、かつ、被告人の本件所為は、それだけで無許可集団示威行動の指導の実行行為と評価するに十分であつて、他の者との共謀の有無は、構成要件該当性に消長を来たすことがないのはもちろん、犯情においても特段の差異を生ずるものでもないから、右のとおり、単独犯行を認定するにとどめ 行為と評価するに十分であつて、他の者との共謀の有無は、構成要件該当性に消長を来たすことがないのはもちろん、犯情においても特段の差異を生ずるものでもないから、右のとおり、単独犯行を認定するにとどめる。また、右審理経過にかんがみれば、このような認定をしても当事者に対し攻撃防御上の不利益を与えるものではないと考えられるので、当審において特に訴因変更等の措置はとらない。)(証拠の標目)(省略)(法令の適用)被告人の判示所為は、昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例一条本文後段、五条に該当するところ、所定刑中罰金刑を選択し、所定金額の範囲内で被告人を罰金二〇、〇〇〇円に処し、刑法一八条により、右罰金を完納することができないときは金二、〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置することとし、刑訴法一八一条一項本文を適用して、原審及び第一次控訴審における訴訟費用のうち、その二分の一を被告人に負担させることとする。 (量刑について)本件は、被告人も加わつて立案した計画に従い、前示のとおりあらかじめ発せられていたA及びC関係の機関紙等による要請に応じて、当日、「首相訪米阻止行動」のためD空港ロビーに参集した関係者三〇〇名以上に対し、被告人が呼びかけて一か所に集合させ、これを指導して本件一連の無許可集団示威運動をさせ、その結果、多数公衆の出入する公共的性格の強い本件ロビーにおいて、一時的とはいえ、騒音や激しい行動により、空港、売店の業務に支障を来たし、一般公衆にも迷惑を及ぼし、従来見られなかつた程度の不穏な事態を招来するにいたつた事案である。しかも、被告人らは、空港管理者のあらかじめ設置した、右のような行動の禁止されていることを明示する立看板や、行動開始後、空港管理者が場内放送設備により繰返し放送 事態を招来するにいたつた事案である。しかも、被告人らは、空港管理者のあらかじめ設置した、右のような行動の禁止されていることを明示する立看板や、行動開始後、空港管理者が場内放送設備により繰返し放送した警告、制止を認識したうえ、臨場警察官の動向を注視しながら、あえて本件行動を遂行しているのであつて、右のような規模、態様の行動が容認されないものであることは熟知していたとしなければならない。 のみならず、本件集団示威運動は、公安委員会の許可を受けることなく実施され、被告人もそのことを知悉していた。この点に関し、被告人は、本件のような行動に右許可を要するとは考えなかつた旨弁解する一方、被告人らとしては、本来、そのあとで、訪米出発のため空港に入るB首相とその一行に近づき、直接、訪米反対の気勢をあげる集団示威運動をするようなことを漠然と企てており、むしろこのことに主眼があつたかのようにも言うのであるが、もしそのような計画があつたとすれば、これについては当然公安委員会の許可が必要であることは明らかで、そのための時間的余裕も十分にあつたにもかかわらず、被告人らにおいて、なんらそのような手続を履践していないのであるから、結局、被告人らとしては、当初から、当日の「首相訪米阻止行動」は、一切無許可のまま敢行する意図であつたと見るほかはない。 そして、関係証拠によれば、D空港における集団行動は、一般に、許可申請をしても許可される見込みがなく、ことに本件当日においては、許可のえられるはずもなかつたことが明らかであり、被告人の経歴、地位、知識、経験等からみて、当然、被告人もそのことは認識していたと解すべきであるから、被告人が本件行動につき許可申請をしなかつたことは、許可される見込みが全くなかつたからであるとともに、なまじ申請することによつて被告人らの意図すると 告人もそのことは認識していたと解すべきであるから、被告人が本件行動につき許可申請をしなかつたことは、許可される見込みが全くなかつたからであるとともに、なまじ申請することによつて被告人らの意図するところが当局側に明らかとなり、空港ロビーを中心として厳重な警備がなされ、不許可のまま行動を強行しようとしても、本件程度のことすらできなくなることを慮つたためであるとも考えられ、警備の虚をついて行動する利益を失うことをおそれたものと推測できるとの検察官の主張も、一理あるものということができる。 さらに、被告人らの本件行動は、前示のとおり、ロビーに臨場していた警察官らの手にあまる規模、態様のものであつて、同所での実力規制などもないまま、レストラン「K」付近で、ようやく一般的警備のため待機していた警察部隊(本件ロビーでの行動を予知してこれに備えていたものとは認められない。)に阻止されるにいたつたが、しかもなお、一部の者は滑走路突入を図り、前示機関紙中には、後日、これを日中関係者の英雄的行動として報じているものもあるほか、本件前日のL公園における集会が、訪米「反対」集会であつたのに対し、D空港における行動は訪米「阻止」行動と呼ばれていたことが、無意味ないし単なる修辞とは考え難いことをも考えあわせると、被告人らとしては、あわよくば全員が滑走路への通路ないし滑走路自体に突入し、実力をもつて首相の自動車の進行を妨げ、あるいは乗機の発進を阻止したい意図をも有していたと見て差支えないと思われるのである。成功の見込みが少なく、規制の結果、現に未発に終つていることは、意図の悪質さを軽減するものではない。 また、本件行動参加者がおおむね平服を着用しており、旗、プラカート、腕章、たすき等を所持していなかつた点も、当日、あらかじめなされていた規制の結果、このような状態 悪質さを軽減するものではない。 また、本件行動参加者がおおむね平服を着用しており、旗、プラカート、腕章、たすき等を所持していなかつた点も、当日、あらかじめなされていた規制の結果、このような状態でなければ空港ロビーへの立ち入りは不可能であつたことが明らかであるから、これをもつて、本件集団行動が特に平穏を旨とし、示威的要素を有しないものであつた証左とすることはできない。 このようにみてくると、本件集団示威運動が平穏で軽微なものであつたなどとは、たやすく言うことができず、このことは、被告人の犯情を考えるうえで軽視できないところである。 もちろん、集団行動の情状と、その指導者、煽動者等の犯情とは、たたちに一致するものでなく、悪質と評価すべき指導、煽動があつても、集団行動自体には特段の問題がない場合もあり、その逆の場合もありうるけれども、本件に関する限り、本件集団の行動が、被告人の予期した程度に達しなかつたとか、反対に、被告人の意図に反する逸脱行動に走つたものであるとかは認められず、被告人は、本件集団行動につき、相応の責を負うべきものといわなければならない。 そのほか、被告人には、以上指摘するような点についての、自覚、反省のあとが見受けられない。 このような見地からすれば、被告人が本件につき公訴を提起されたことは、まことにやむをえないところであることはもちろん、原審において、検察官が、被告人に対し、懲役六月の求刑をしたことも理解できないではない。 しかし、その反面、本件の動機は、B首相の訪米が日本と中国の友好を阻害すると信じた被告人が、これに反対する意思を何とかして表明しようとしたことにあるのであつて、本件は、日中友好を念願する被告人の真蟄な政治的信念に基づく行為であり、私利私欲に出で、あるいは徒に社会秩序を乱すことを目的とするようなも 対する意思を何とかして表明しようとしたことにあるのであつて、本件は、日中友好を念願する被告人の真蟄な政治的信念に基づく行為であり、私利私欲に出で、あるいは徒に社会秩序を乱すことを目的とするようなものでなく、その態様においても、ことさらに過激異常な破壊的行動をとつたとは言い難い。そのほか、本件審理は一一年有余の長きに及ぶ結果となつているところ、それは、従前三度の無罪判決に対し検察官が上訴したことによるものであり、被告人としては、その間、訴訟終結のためとることのできる手だてもないまま、有形無形の社会的不利益を受けているとしなければならない(もちろん、本件事案の特質に照らし、このことはやむをえない事情によるものであつて、憲法の要請する迅速裁判の理念に反するとして免訴を言い渡すべき場合にはあたらない。)。 以上の諸点をあわせ考えて、当裁判所は、被告人に対する処遇としては、罰金刑をもつて臨むことが相当であると認めたものである。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官西村法裁判官高山政一裁判官田尾勇)
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