令和5(行コ)57 公文書一部不開示決定取消等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月9日 大阪高等裁判所 破棄自判 大津地方裁判所 令和2(行ウ)16
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判決文本文7,260 文字)

令和5年(行コ)第57号公文書一部不開示決定取消等請求控訴事件令和6年5月9日大阪高等裁判所第11民事部判決 主文 1 1審原告の控訴に基づき、原判決主文第1項、第3項から第5項までに係る別紙3の判断欄の記載のうち番号176を「公開」と変更する。 2 1審被告の控訴に基づき、原判決主文第1項、第3項から第5項までに係る別紙3の判断欄の記載のうち番号55及び番号80を「田畑の面積は非公開。その他は公開」と、同番号190を「就労歴、婚姻の経緯、田畑の面積は非公開。その他は公開」と、原判決主文第2項から第5項までに係る別紙4の判断欄の記載のうち番号101を「家族の精神病り患状況、家族の職業、田畑の面積は非公開。その他は公開」と各変更する。 3 1審原告及び1審被告のその余の各控訴をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、第1審及び当審を通じてこれを5分し、その1を1審原告の、その余は1審被告の各負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 1審原告原判決を次のとおり変更する。 滋賀県知事が平成30年1月11日付けで1審原告に対してした公文書一部公開決定のうち、原判決別紙1記載の各「非公開部分」欄記載の部分を非公開とした処分を取り消す。 滋賀県知事が平成30年4月25日付けで1審原告に対してした公文書一部公開決定のうち、原判決別紙2記載の各「非公開部分」欄記載の部分を非公開とした処分を取り消す。 滋賀県知事は、1審原告に対し、上記及びの各取消部分に係る情報を 公開する旨の決定をせよ。 2 1審被告 原判決を次のとおり変更する。 本件訴えのうち、原判決別紙1記載の各「非公 1審原告に対し、上記及びの各取消部分に係る情報を 公開する旨の決定をせよ。 2 1審被告 原判決を次のとおり変更する。 本件訴えのうち、原判決別紙1記載の各「非公開部分」の情報の公開の義務付けを求める部分を却下する。 本件訴えのうち、原判決別紙2記載の各「非公開部分」の情報の公開の義務付けを求める部分を却下する。 1審原告のその余の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要(以下、略語は原判決の例による。) 1 事案の要旨新聞記者である1審原告は、滋賀県知事に対し、滋賀県情報公開条例(本件条例)に基づき、旧優生保護法に係る本件公文書一式を対象とする情報公開請求をしたところ、その一部に限り公開するとの決定を受けた。1審原告は審査請求を行い、諮問を受けた審議会が公開すべき部分について答申したが、同知事は一部追加して情報を公開するにとどまった。 本件は、1審原告が、上記知事の判断及び手続に違法があると主張して、一部公開決定の一部の取消し及びその取消部分に係る公開の義務付け並びに同知事がした裁決のうち審査請求を棄却した部分の取消しを求める事案である。 原審は、原判決主文第1項及び第2項の限度で、滋賀県知事の決定のうち情報を公開しないとした部分を取り消し、同部分について公開を義務付け、本件訴えのうち上記取消部分以外の情報の公開の義務付けを求める部分を却下し、1審原告のその余の請求を棄却した。 これに対し、当事者双方が第1記載のとおりの判決を求めて控訴をした。なお、1審原告は、原判決のうち裁決の取消請求を棄却した部分については控訴をしなかった。 したがって、当審における審理の対象は、1審原告の訴えのうち、本件原処 分につき情報を公開しないとした部分 告は、原判決のうち裁決の取消請求を棄却した部分については控訴をしなかった。 したがって、当審における審理の対象は、1審原告の訴えのうち、本件原処 分につき情報を公開しないとした部分を取り消し、同部分の公開の義務付けを求める部分である。 2 前提事実原判決「事実及び理由」欄の第2の1に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 争点及び争点に関する当事者の主張当審における争点は非公開情報該当性であり、争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記第3の3で当審における主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の第2の3に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決12頁21行目の「個人識別情報や」を削る。 原判決別紙3の番号21の「非公開情報該当性に関する被告の主張」欄の記載を次のとおり改める。 「番号6と同様。加えて、個人病院であるため名称が公開されれば必然的に医師が特定される。」 原判決別紙3の番号176に係る各欄の記載を次のとおり改める。 ア 「当該箇所に記載されている内容」欄家族の年齢及び健康状態イ 「非公開情報該当性に関する被告の主張」欄家族の年齢について番号154(同欄)と同様家族の健康状態について番号23(同欄)と同様ウ 「非公開情報該当性に関する原告の主張の概要」欄家族の年齢について番号154(同欄)と同様家族の健康状態について 番号9(同欄)と同様第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、1審原告の請求は、主文第1項及び第2項のとおり一部変更するほか、原判決主 家族の健康状態について 番号9(同欄)と同様第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、1審原告の請求は、主文第1項及び第2項のとおり一部変更するほか、原判決主文第1項から第3項までの限度で理由があると判断する。 その理由は、後記2のとおり原判決を補正し、同3のとおり説明を付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の第3の1及び4に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 原判決の補正原判決17頁14行目の末尾に、改行の上次のとおり加える。 「エ 1審被告は、家族構成に手術対象者及び家族の年齢が加われば当該対象者の識別は極めて容易になるから、手術対象者のみならずその家族の年齢も個人識別情報に該当する旨主張する。そこで判断すると、上記のとおり検討してきたところによれば、個人を特定する住所や氏名が不明である場合、公開されている親族の続柄や家系図の線に手術対象者及び家族の年齢が加わったとしても、対象者の範囲が大きく限定されているという事情がない限り、やはり個人を特定することは通常不可能であると解される。そして本件公文書に係る手術対象者の住所が全て経由保健所の管内であること(乙C24)や1審被告が主張する昭和45年10月に実施された国勢調査時の彦根保健所管内の世帯人員別の世帯数(乙C1の284頁)を踏まえ検討しても、対象者の範囲が大きく限定されているということはできず、したがって、手術対象者の家族の年齢情報が個人識別情報に当たるとする1審被告の主張を採用することはできない。」原判決18頁7行目の「いうべきである。」の次に「なお、上記したところは、手術対象者自身だけでなく、その家族の職業についても妥当すると解される。」を加える。 原判決21頁21行目 頁7行目の「いうべきである。」の次に「なお、上記したところは、手術対象者自身だけでなく、その家族の職業についても妥当すると解される。」を加える。 原判決21頁21行目の「個人識別情報や」を削る。 原判決26頁1行目の「本件遺伝情報」の次に「(別紙3・番号111の「・親族の死因、生前の行動、・親族の死亡に関連する事項」はこれに含まれる。)」を加える。 原判決26頁2行目の「本件意向聴取情報」の次に「(別紙4・番号164の「申請に至るまでの経緯」はこれに含まれる。)」を加える。 原判決別紙3の番号55及び番号80の「判断」欄の記載を「田畑の面積は非公開。その他は公開」と、番号176の「判断」欄の記載を「公開」と、番号190の「判断」欄の記載を「就労歴、婚姻の経緯、田畑の面積は非公開。その他は公開」と各改める。 原判決別紙4の番号101の「判断」欄の記載を「家族の精神病り患状況、家族の職業、田畑の面積は非公開。その他は公開」と改める。 3 付加説明 1審原告は、①1審原告は審議会の答申と同じ範囲での情報の公開を請求しているところ、審議会が実際に文書の内容を見分した上で判断した結果をないがしろにすべきではない、②職業や就労の状況は個人識別情報に当たるとはいえない、③出生及び異性関係情報、本件遺伝情報並びに本件意向聴取情報は利益侵害情報に当たるとはいえない、④指定医師個人の氏名は公開慣行情報に当たる旨主張する。 そこで判断すると、①の点について、審議会の答申は1審被告や裁判所を法的に拘束するものではない上、審議会が公開すべきものとした情報の一部が非公開情報に当たることは原判決を補正の上引用して説示したとおりである。 ②の点について、職業等が抽象性の高い表現で 裁判所を法的に拘束するものではない上、審議会が公開すべきものとした情報の一部が非公開情報に当たることは原判決を補正の上引用して説示したとおりである。 ②の点について、職業等が抽象性の高い表現で記載されていた場合には個人識別情報に当たらないとする余地があるが、1審被告の当審における求釈明の結果によれば、本件原処分において非公開とされた手術対象者又はその 家族に係る就労状況等の情報(原判決別紙3の番号17ほか)は、そのほとんどにおいて特定の販売物、農作物や製造物の種類、職場での立場や就労期間、転職などの具体的事実が記載されているというのである。そうすると、職業等が抽象性の高い表現で記載されているとはいい難く、これらについては個人識別情報に当たると解するのが相当である。 ③の点について、1審被告の当審における求釈明の結果によれば、本件原処分において非公開とされた手術対象者に係る出生及び異性関係情報、本件遺伝情報並びに本件意向聴取情報(原判決別紙3の番号22ほか)は、母親の妊娠時の年齢、妊娠中の症状、具体的な病名、出産に至るまでの服薬の状況、手術対象者の性的行動傾向、異性との交際、出産、出産後の入院、出産した場所、出産した子の現状等、当該個人固有の状況、行動、エピソードなどや(同番号271~273など)、親族に精神病り患者がいたこと、当該親族の続柄、生活状況、当該親族以外にも精神病り患者がいたとうかがわれる事情、情報源(同番号61、136など)、手術対象者の性的行動傾向など家族が手術対象者の生活、将来について心配している内容(原判決別紙4の番号112など)などがそれぞれ個別具体的に記載されているというのであり、その記載内容に照らせば、これら出生及び異性関係情報、本件遺伝情報並びに本件意向聴取情報は、手術対象者の人格に密接に関連 の番号112など)などがそれぞれ個別具体的に記載されているというのであり、その記載内容に照らせば、これら出生及び異性関係情報、本件遺伝情報並びに本件意向聴取情報は、手術対象者の人格に密接に関連し、かつ秘匿性が高いものとして、利益侵害情報に該当すると解するのが相当である。 ④の点について、優生手術の手続に携わった医師の氏名を明らかにするよう定めた法令等や、その氏名を明らかにする慣行があったと認めるに足りないことは原判決を引用したとおりである。 したがって、1審原告の主張は採用することができない。 他方、1審被告は、①公開されている家族構成(家系図の線・家族の人数・続柄)に年齢が加われば、当該対象者の近親者(後生の親族を含む。)や関係者は既に公開されている情報やそれらの者が知っている対象者に関す る情報と照合し対象者を容易に識別できるから、年齢は個人識別情報に当たる、②職業及び就労に関する情報(個人識別情報)や出生及び異性関係に関する情報(利益侵害情報)以外の本件生活歴情報も個人識別情報又は利益侵害行為に該当するものとして非公開とすべきである、具体的には、ア手術対象者の幼少時の学校在学時の生活状況、犯罪歴・非行歴等に関する情報は、近親者や学校関係者、警察関係者等が既に知っている情報と照合することにより手術対象者を識別することが可能になるので、個人識別情報に当たる、イ家族の収入源や財産は、所有する田畑や住宅の面積といった具体性、個別性の高い情報から個人が識別されるとともに、個人にとって他に知られたくない秘匿性の高い情報である、ウ手術対象者の健康状態、病歴、具体的言動、手術の術式等、家族の健康状態、病歴等といった情報はプライバシー情報の最たるものであり、利益侵害情報に当たる、③昭和40年代の外科医及び産婦人科医の数 る、ウ手術対象者の健康状態、病歴、具体的言動、手術の術式等、家族の健康状態、病歴等といった情報はプライバシー情報の最たるものであり、利益侵害情報に当たる、③昭和40年代の外科医及び産婦人科医の数からすれば、指定医師が所属する医療機関が特定されれば、地域によっては指定医師であった可能性のある者を1名から数名に絞り込むことが可能であり、さらに、医療機関には院長の姓を冠した名称のものもあり、そうした医療機関であればより一層個人の特定が可能であるから、優生手術の手続に関与した医療機関の名称や所在地等の情報は指定医師にとっても手術対象者にとっても個人識別情報に当たる、④旧優生保護法に基づく優生手術は、当時は合法であったが、現在は人権侵害行為であったと評価されているから、優生手術の手続に関与した医療機関に関する情報が公開されると、当該医療機関は社会的評価や業務上の信用が低下したり無用の対応を迫られ事業運営が損なわれる蓋然性がある、したがって、優生手術に関与した医療機関の名称、所在地等といった情報は法人利益侵害情報に該当するというべきであるなどと主張する。 そこで判断すると、①の点については、上記説示(原判決を補正の上引用)のとおりであり、当該対象者の親族等が公開された情報に接したとき、家族 の人数や続柄、年齢を他の情報と照合し、自らの知る家庭の家族構成と同じであると認識する可能性はあるが、同一保健所管内に他に同じ条件の家庭がないかは定かでないから、当該情報が正に自らの知る家庭を指していると認識することは困難であり、公開されている情報に年齢情報(年齢又は生年月日のうちの生年)が加わることにより当該対象者が識別されるとはいい難い。 また、滋賀県内の一部集落では都市部と比べ親類や近隣住民が長年当該地域に住み続けているとの事実があると 年齢情報(年齢又は生年月日のうちの生年)が加わることにより当該対象者が識別されるとはいい難い。 また、滋賀県内の一部集落では都市部と比べ親類や近隣住民が長年当該地域に住み続けているとの事実があるとしても、この点は同判断を左右するものでない。 ②アの点について、1審被告の主張する類型の情報は、それが詳細かつ具体的で個別性の強いものであれば、既知の情報と併せて個人を識別し得る情報に当たるとみる余地があるが、本件において原審が公開すべきものとした中にそのような情報が含まれていると認めるに足りる証拠はない。②イの点について、家族の所有する財産について田畑の面積が具体的に記載されている場合(原判決別紙3の番号55、番号80、番号190及び同別紙4の番号101)については個人識別情報に当たるとみることができるが、それ以外については、本件のように個人を特定する住所や氏名が公開されない状況の下では、上記情報により個人が容易に識別されるとはいい難い。また、家族の収入等が多くの個人にとって外部に知られたくない情報であるとしても、本件遺伝情報のように厳にその秘匿性が守られるべき情報とは異なり、個人を識別できないにもかかわらず公開を否定すべき情報に当たるとみることは相当でない。②ウの点もこれと同様であり、本件遺伝情報や出生及び異性関係情報に係る情報と同等に秘匿性が高いとはいえず、利益侵害情報に該当すると解することはできない。 ③の点について、医療機関名が公開されることにより明らかになるのは約50年以上前に当該医療機関で稼働していた医師が優生手術に関与していたということにとどまるから、その名称に当時の院長の姓が冠されているなど していたとしても、医療機関名の公開をもって医師個人の氏名が直ちに識別されるということはできないし、当該医療機関名が手術対 いうことにとどまるから、その名称に当時の院長の姓が冠されているなど していたとしても、医療機関名の公開をもって医師個人の氏名が直ちに識別されるということはできないし、当該医療機関名が手術対象者の個人識別情報に当たるということもできない。 ④の点については、原判決を引用して説示したとおりであり、優生手術が当時は適法な医療行為とされていたことに照らすと、優生手術の手続に関与した医療機関の情報が明らかになることにより当該医療機関の社会的評価や業務上の信用が低下するとは考え難い。無用の対応を迫られ事業運営が損なわれるとの点も、抽象的な可能性についての懸念をいうものにとどまり、これにより当該医療機関の正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。 したがって、1審被告の主張は前記②イの一部を除き採用することができない。 4 以上によれば、原判決のうち本判決の主文第1項及び第2項記載の部分は相当でないから本件各控訴に基づき変更すべきものであるが、原判決のその余の部分は相当であり、同部分に係る本件各控訴は理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官長谷川浩二 裁判官大河三奈子 裁判官原司は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官長谷川浩二 (別紙当事者目録は掲載省略) 当事者目録は掲載省略。

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