主文 被告人Aを懲役20年に,同Bを懲役14年に,同C,同D及び同Eをいずれも懲役12年に,同Fを懲役10年に,同Gを懲役3年に処する。 未決勾留日数中,被告人A,同B,同C,同D,同E及び同Fに対しては各540日を,同Gに対しては300日を,それぞれその刑に算入する。 被告人Gに対し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 被告人A,同B及び同Cから,押収してある自動装てん式けん銃1丁及びけん銃用実包11発を没収する。 理由 (犯罪事実)被告人Aは暴力団I組J組K組組長,同BはK組若頭,同FはK組本部長,同CはK組若頭補佐,同EはK組組長秘書,同DはK組幹部,同Gは同Aの愛人であるが,第1 平成14年3月4日午前3時10分ころ,神戸市a区b町cd番地のe所在の県営c団地f号棟前路上で,被告人Aが,L(当時31歳)運転車両の停車位置が気に入らないなどとして立腹し,同車から降車してきたL及びM(当時27歳)の顔面を殴打したところ,逆にLらに取り押さえられて劣勢となり,これを見た被告人Gが,同B,同C,同D,同E,同Fに電話で加勢を頼んだことから, 1 被告人A,同B,同C,同D,同E,同F及び同Gは,共謀の上,同日午前3時25分ころから同日午前3時35分ころまでの間,被告人A及び同Cらが,同所で,Mに対して,その顔面・頭部・腹部・背部等を多数回手拳で殴打するとともに多数回足蹴にし,引き続き,Mが死亡するに至るかもしれないことを認識しながら,あえて,同日午前4時35分ころから同日午前5時10分ころまでの間,同市同区b町gh番地のi所在の空き地において,被告人A,同B,同D及び同Fらが,こもごも,M 至るかもしれないことを認識しながら,あえて,同日午前4時35分ころから同日午前5時10分ころまでの間,同市同区b町gh番地のi所在の空き地において,被告人A,同B,同D及び同Fらが,こもごも,Mの顔面・頭部・腹部・背部等の上半身部分を中心に多数回足蹴にするなどし,同日午前5時15分ころから同日午前6時30分ころまでの間,同市同区b町jk番地所在の有限会社N建設の風呂場において,被告人Aが,Mの髪をつかみ,数回にわたって同人の顔を浴槽に張った湯の中に押し込み,同A及び同Bらが,Mの顔面,頭部等を多数回平手及びデッキブラシで殴打するとともに数回足蹴にし,よって,上記一連の暴行により,Mに全身打撲,皮下出血による失血,肋骨多発骨折,外傷性くも膜下出血等の重傷を負わせた上,同日午前7時ころ,被告人D,同E及び同Fが,Mを同市同区b町lm番地の株式会社O組北方約700メートル先まで車に乗せて運び,上記負傷のため自ら動くことができず,かつ,上半身裸のMを同所に放置し,よって,そのころ,同所において,Mを上記傷害等に基づく低体温症により死亡(凍死)させ,もって,人を殺害したが,被告人Gにおいては,傷害の故意しかなく, 2 被告人A,同C,同D,同E及び同Gは,共謀の上,同日午前3時25分ころから同日午前3時35分ころまでの間,上記県営c団地f号棟前路上において,上記Lの顔面・頭部・腹部・背部等を多数回手拳で殴打するとともに多数回足蹴にした上,倒れたLを引きずるなどの暴行を加え,よって,Lに約5週間の加療を要する顔面・胸腹部打撲,両側第11肋骨骨折等の傷害を負わせ,第2 被告人A,同B及び同Cは,共謀の上,法定の除外事由がないのに,同年4月10日午後10時10分ころ,上記有限会社N建設敷地内において,自動装てん式けん銃1丁を,その適合する実包 傷害を負わせ,第2 被告人A,同B及び同Cは,共謀の上,法定の除外事由がないのに,同年4月10日午後10時10分ころ,上記有限会社N建設敷地内において,自動装てん式けん銃1丁を,その適合する実包11発とともに保管して所持したが,被告人Cは,判示第1の1,2の殺人,傷害罪による起訴後の勾留中の同月9日,取調官に対し,上記けん銃等の隠匿場所を具体的に述べて自首し,その指示に基づく捜索によって同けん銃等が発見,差し押さえられたものであり,けん銃等を提出して自首したものである。 (証拠の標目)省略(判示第1の事実認定についての補足説明)第1 弁護人らの主張被告人A,同B,同C,同D,同E及び同Fの各弁護人は,判示第1の1の事実について,被告人らにはMに対する殺意及び殺人の共謀はなく,傷害(又は傷害致死)罪が成立するにすぎないと主張し,被告人Gの弁護人は,判示第1の1及び2の事実について,傷害の限度においても実行行為,故意及び共謀はいずれもなく,無罪であると主張し,各被告人も公判廷においてこれらに沿った供述をするので,以下,当裁判所が上記のように判断した理由を補足して説明する。 第2 前提となる事実関係関係証拠によれば,おおむね以下の事実関係が認められる。 なお,以下,c団地f号棟前路上を「第1現場」,同団地n号室被告人G宅を「n号室」,同市同区b町gh番地のi所在の空き地を「第2現場」,同市同区b町jk番地所在の有限会社N建設を「第3現場」,同市同区b町lm番地の株式会社O組北方約700メートルの地点を「第4現場」という。 1 被告人らの身上経歴等(1) 被告人A被告人Aは,昭和56年ころ,暴力団I組J組P会組員となったが,平成元年ころには,同組の解散をきっかけに,同じく 現場」という。 1 被告人らの身上経歴等(1) 被告人A被告人Aは,昭和56年ころ,暴力団I組J組P会組員となったが,平成元年ころには,同組の解散をきっかけに,同じく組員であった被告人Bや同Cを伴い,I組J組傘下のK組を立ち上げ,以降K組組長となった。 また,被告人Aは,中学卒業後,土木会社の従業員,型枠大工として稼働していたが,昭和56年ころには,独立して自ら土木建築業や型枠大工業を営むようになり,平成12年には土木建築業等を営業目的とする上記有限会社N建設を設立し,本件当時は,同社の経営を従兄弟に任せ,同社から仕事の仲介料を得るなどして生活していた。 被告人Aは,昭和62年ころ,被告人Gと知り合い,まもなく同女と愛人関係となり,平成2年には,同女との間に1女をもうけ,本件当時は,妻Qの住む住居地のほか,被告人G宅であるn号室にも寝泊まりしていた。 (2) 被告人B被告人Bは,昭和59年ころから,被告人CとともにP会組員となり,平成元年に被告人AがK組を立ち上げてからは,同組に所属し,本件当時は同組若頭の立場にあった。 (3) 被告人F被告人Fは,平成3年ころ,K組に加入し,本件当時は本部長の立場にあった。 なお,被告人Fの妻は,被告人Aの妹であり,被告人Aの愛人である被告人Gは,被告人Fの実姉である。 (4) 被告人C被告人Cは,昭和59年ころから,被告人BとともにP会組員となり,平成元年に被告人AがK組を立ち上げてからは,同組に所属し,本件当時は若頭補佐としての立場にあった。 (5) 被告人E被告人Eは,平成8年ころ,K組に加入し,本件当時は組長秘書の立場に 告人AがK組を立ち上げてからは,同組に所属し,本件当時は若頭補佐としての立場にあった。 (5) 被告人E被告人Eは,平成8年ころ,K組に加入し,本件当時は組長秘書の立場にあった。 (6) 被告人D被告人Dは,平成8年ころ,K組に加入し,本件当時は同組幹部の立場にあった。 (7) 被告人G被告人Gは,スナックホステスをしていた昭和62年ころ,客として来た被告人Aと知り合い,まもなく愛人関係となり,平成2年には,被告人Aとの間に1女をもうけた。 被告人Gは,本件当時,被告人Aから資金を出してもらったラウンジを経営しながら,娘とともにc団地のn号室で暮らしていた。 2 犯行に至る経緯(1) 被告人Aは,C型肝炎の治療のため,平成14年3月4日から入院することになっていたのであるが,前日の同月3日,入院中の父母を見舞った後,被告人Gや実子らと焼鳥屋やカラオケ店などに行き飲酒し,n号室の被告人G宅に戻った。 (2) 被告人Aは,n号室において,本妻であるQと電話したところ,入院中の被告人Aの世話を愛人である被告人GがすることにQが不満を述べたことに激高し,Qのいる自宅に向かうため,n号室を飛び出した。被告人Gは,Qと被告人Aがけんかになると思い,被告人Aを止めようと,n号室を出て後を追った。 (3) 他方,Lと,友人のMは,同年3月3日午後9時ころから翌3月4日の午前1時過ぎころまで,沖縄料理店で飲食し,同店を出た後,Lの運転するカムリでLの自宅へ立ち寄り,その後,Lは,Mを同人の自宅があるc団地まで送るため,助手席にMを乗せ,カムリを運転して自宅を出発した。 (4) Lらは,同日午前3時過ぎころ,c団地に到着した。Lは,M Lの自宅へ立ち寄り,その後,Lは,Mを同人の自宅があるc団地まで送るため,助手席にMを乗せ,カムリを運転して自宅を出発した。 (4) Lらは,同日午前3時過ぎころ,c団地に到着した。Lは,Mの住む同団地f号棟の北側路上(第1現場)に,車の右側(運転席側)を路肩に寄せるようにして,西向きにカムリを停車させ,エンジンをかけ運転席に座ったままで,助手席から降りようとするMを見送っていた。 (5) Mは,カムリを降りた途端,丁度同団地f号棟から出てきた被告人Aと同Gに出くわした。被告人Aは,目の前に停まっていたカムリの停車位置が気に入らず,「どこ停めとんやこら。」などと怒鳴りながら,Mの顔面をいきなり一,二発手拳で殴り,さらに,騒ぎに気付いて運転席から降りてきたLに対しても,「われもやるんかい。」などと怒鳴りながら,Lの顔面を1発殴った。 (6) MやLは,いきなり被告人Aから殴られたことから,同被告人を押さえようとして,同被告人ともみ合いになった。 (7) それを見た被告人Gは,同Aを助けようと,K組の組員らを呼び寄せるため,いったんn号室に戻り,同日午前3時15分ころ,同所から被告人Eや同Fらに「パパがやられている,cへ早く来て。」などとそれぞれ電話連絡した後,携帯電話機を持って,再びn号室から第1現場に戻った。 3 第1現場での状況(1) 同日午前3時20分ころ,被告人Gが,同Aの元に戻ると,同被告人は,Lから両足を,Mから上半身を押さえ込まれて道路上に仰向けに倒れており,被告人Aの鼻や口の周りには血がついていた。被告人Aは,Mらに「どかんかい。」などと怒鳴り,被告人Gも「どかんかい。」と怒鳴った。 (2) 被告人Gは,同Aの指示により,携帯電話で,被告人C,同Dにそれぞれ「パパがcでもめて ていた。被告人Aは,Mらに「どかんかい。」などと怒鳴り,被告人Gも「どかんかい。」と怒鳴った。 (2) 被告人Gは,同Aの指示により,携帯電話で,被告人C,同Dにそれぞれ「パパがcでもめてやられている。急いで来て。」などと連絡を入れ,被告人Dは,さらに被告人Bらに連絡をとった。 (3) 被告人Gは,同Aから「ナンバー控えとけ。」と言われ,携帯電話機にLの車のナンバーの一部を入力するなどし,その車種等を記憶した。 (4) 次いで,被告人Gは,MとLに押さえ込まれている被告人Aの側に行き,携帯電話で警察に通報していたMらに対し,「あんたら,いい加減にしとけよ。ええ。しまいにほんまに殺されるよ。ほんまに殺されるよ。」,「うるさい,のけこら,おっさん。」などと,怒鳴った。さらに,被告人Gは,Mの手から携帯電話機を取り上げて同団地f号棟の方に向けて投げ,携帯電話機は花壇の植え込みの中に落ちた。 (5) そのころ,被告人Cがチェーサーでc団地に到着し,チェーサーをカムリの前に停めた後,被告人Aのところに駆け寄り,同被告人の足を押さえていたLの顔面を足蹴にし,さらに殴ったり蹴ったりした。被告人Cは引き続き,被告人Aを押さえ込んでいたMの顔面を右手拳で続けざまに2回殴り,さらにその衝撃で被告人Aから手を放し尻餅をついたMの服の後ろ襟首辺りをつかんで同人を引きずり,立ち上がろうとするMの顔面を膝蹴りし,四つんばい状態になったMの横腹や胸辺りを二,三回続けざまに蹴った。 (6) 被告人Cの加勢により,身体が自由になった被告人Aは,Lにつかみかかり,同人の顔面を殴ったり,腹を蹴ったりした。 (7) 被告人Cがc団地に到着して数分後,被告人Eが,セルシオでc団地に到着して同車を被告人Cのチェーサーの後方辺りに停め, は,Lにつかみかかり,同人の顔面を殴ったり,腹を蹴ったりした。 (7) 被告人Cがc団地に到着して数分後,被告人Eが,セルシオでc団地に到着して同車を被告人Cのチェーサーの後方辺りに停め,同被告人のところに行き,被告人Aと共にLの顔や腹付近を数回蹴り上げた。また,被告人Eは,Mのところに行き,「わしらをなめとったらあかんぞ。」などと怒鳴りながら,四つんばい状態のMの顔面,頭部,横腹などを数回蹴り上げ,再び被告人Aのところに戻ってLに暴行を続けた。 (8) 被告人Aは,「C,もっといわさんかえ。」と被告人Cに向かって怒鳴ったので,被告人Cは,再び駆け寄った被告人Eとともに,それぞれ二,三回Mの横腹を蹴りつけた。 (9) 同日午前3時35分ころ,被告人Aが,「車に乗せ。」「海に沈めたる。」「山に捨てたる。」などと言い,被告人Cと同Eが,Mをチェーサーの右後部座席に押し込んだ。そのとき,Mは,手足がだらんとし,ぐったりした状態であった。被告人Aが,車外に出ていたMの足をドアではさんで痛めつけたが,Mには反応がなく,そのまま車内に横たわっていた。そのころ,被告人Dがカリブでc団地に到着して同車を同団地駐車場に停め,被告人Aのところに駆け寄った。被告人Dは,同Aから「あいつ捕まえてこい。」と怒鳴られたため,四つんばいになって逃げようとしていたLの腕を捕まえ,被告人Aに引き渡し,同被告人は,カムリにLを押し込もうとした。 (10) その直後ころ,パトカー2台がc団地に到着し,被告人Aと同Gはn号室に戻った。被告人Cや同Dは,警察官に話を聞かれたが,被告人Dは,「今来たところで,何も分かるか。」などと言い,被告人Cも「何もない。」などと言っていたが,そのうち,すきをついてLがカムリからパトカーに向かって走り出した。 そ 警察官に話を聞かれたが,被告人Dは,「今来たところで,何も分かるか。」などと言い,被告人Cも「何もない。」などと言っていたが,そのうち,すきをついてLがカムリからパトカーに向かって走り出した。 それを見た被告人Cらは,Lを追いかけたが,Lはパトカーの後部座席に逃げ込み,被告人Cらは,パトカーの中のLに向かって「出てこい。」などと怒鳴った。 (11) 警察から事情を聞かれた被告人Cは,車の通行のことで口論になって,殴ってしまったなどと答え,Mをチェーサーに押し込んでいることは明かさなかった。被告人Cは警察官に自動車運転免許証を見せ,「後から交番に出頭する。」「パトカーを下げてくれ。」などと言った。 (12) 同日午前3時40分ころ,被告人Fが,アリストに乗ってc団地に到着し,被告人Cから事情を聞いた。同50分前ころには,被告人Bが,セドリックでc団地に到着したが,被告人Dが団地から出て行くように合図を送り,被告人Bは,助手席に乗り込んだDとともに,車でc団地のすぐ北方にあるR(注・コンビニエンスストア)の駐車場に行った。被告人Bは,同駐車場で,被告人Gとの電話で異変を感じて駆けつけたQと出会い,被告人Dから,同Aがけんかをしたいきさつなどの説明を受けた。 そのころ,現場に救急車が到着し,Lを収容した。 (13) 同日午前4時過ぎころ,被告人Cの要求に応じ,警察官らはパトカーをいったん現場から引き上げた。 4 n号室での状況(1) パトカーが引き上げたことから,被告人B,同C,同D,同E及び同Fがn号室に向かい,被告人Aの指示で様子をみるため階下に下りていた被告人Gも,そのころ,再びn号室に戻った。 被告人Aは,同Gから傷の手当てを受けたり,ビールを飲んだりしながら,「 がn号室に向かい,被告人Aの指示で様子をみるため階下に下りていた被告人Gも,そのころ,再びn号室に戻った。 被告人Aは,同Gから傷の手当てを受けたり,ビールを飲んだりしながら,「駐車で文句言うて先にどついたけど,相手も叩いてきた。」「長いことやくざしとるけど,こんなのはじめてや。」などと被告人Eらに話した。 (2) 被告人Cは,「警察には逃げ隠れせえへん言うて名前も言うてます。もう少ししたら行かなあきまへんねん。」などと,警察とのやりとりを被告人Aらに説明した後,n号室を出て,c交番に行き,供述調書の作成に応じた。 (3) その後,Lには逃げられたが,Mはどうなったのかという被告人Aの問いかけに,被告人Fが,「あと1人,車に積んでる。」と言い,それを聞いた被告人Aが「行くぞ。」と言って立ち上がった。それを聞いた被告人Eら組員も一斉に立ち上がり,玄関の方に向かった。被告人Gは,同Aに対し,「私もついて行く。」と言ったが,被告人Aから制止され,そのままn号室に残った。 (4) そして,被告人Dが,Mを後部座席に乗せたチェーサーを運転して,被告人Bが同乗し,被告人Eがセルシオを運転して被告人Aが同乗し,被告人Fがアリストを運転して出発し,被告人Aの指示により,第2現場に向かった。 5 第2現場での状況(1) 被告人Aらは,同日午前4時35分ころ,第2現場に到着し,被告人Aは,すぐ,同Fらとともに,Mの体を抱えるようにしてチェーサーの後部座席から引きずり出し,「ヤクザなめとったらあかんぞ。けじめとったろか。ぶっ殺したろか。」などと怒鳴りながら,Mの顔や頭,胸,腹等主に同人の腰から上を狙って,多数回蹴りつけた。被告人Fも,「うちの親父なめとんのか。ヤクザなめとったら殺してしまうぞ。 けじめとったろか。ぶっ殺したろか。」などと怒鳴りながら,Mの顔や頭,胸,腹等主に同人の腰から上を狙って,多数回蹴りつけた。被告人Fも,「うちの親父なめとんのか。ヤクザなめとったら殺してしまうぞ。」などと怒鳴りながら,被告人Aと一緒になって,多数回Mの顔面,頭部,肩付近を蹴り上げた。また被告人Bや同Dも,数回,Mの腰から上の部分や背中を蹴った。 (2) 被告人Aらは,Mに暴行を加えながら,Lの名前や住所等を聞いたが,Mからまともな答えは返ってこず,同人は「うう」「ああ」といった意味のない言葉しか発していなかった。 (3) 被告人Aは,同Dに対し,「ユンボ持ってこい。」と指示をし,同日午前4時40分ころ,被告人Dは,アリストに乗って,N建設(第3現場)にユンボを取りに向かった。 (4) 被告人Fや同Eは,同Aの指示により近くにあったバケツ3個に入っていた水を合計5回程度,Mにかけたところ,Mは,急に水をかけられたことで,体が少し反応し,「うー」とうめき声を上げていた。 (5) その後,被告人Aの指示で,同Fらがバケツの近くに落ちていたロープで,Mの右腕をフェンスにくくりつけ,被告人Aは,Mを一,二回殴るなどしながら,再びLの名前や住所等を聞いたが,Mはやはり答えなかった。 (6) そこで,同日午前5時10分ころ,被告人Aが,「山(注・被告人らの間で第3現場であるN建設を指す。)へ連れて行け。」と言ったことから,被告人B,同E及び同Fが,Mを再びチェーサーのトランクに押し込み,被告人Fがチェーサーを運転して被告人Bが同乗し,被告人Eがセルシオを運転して被告人Aが同乗し,N建設に向かって出発した。 (7) 被告人Aらは,途中,ユンボを取りに行っていた被告人Dとすれ違い,被告人Eは,同DにN建設に行く Bが同乗し,被告人Eがセルシオを運転して被告人Aが同乗し,N建設に向かって出発した。 (7) 被告人Aらは,途中,ユンボを取りに行っていた被告人Dとすれ違い,被告人Eは,同DにN建設に行くように伝えた。 6 第3現場での状況(1) 同日午前5時15分ころ,被告人Aらは,第3現場に到着し,同被告人の指示により,被告人B,同E及び同FがMを第3現場にある建設作業員用の風呂場に運び込み,Mを仰向けのまま足から浴槽内に入れた。このとき,浴槽には半分くらいの水が入っていたが,被告人Aが蛇口をひねって,Mの肩あたりまで,湯を入れた。 (2) このころ,やや遅れて被告人Dも第3現場に到着し,風呂場に向かったが,被告人Bの指示により,同日午前5時30分ころ,アリストに乗って,c団地に被告人Aの着替えを取りに行き,同日午前6時ころ,再び第3現場に戻ってきた。 また,午前6時少し前ころ,被告人Cも交番から戻って第3現場に到着し,被告人AらがMに暴行を加えている風呂場に入った。 (3) 被告人Aは,浴槽の外から,Mの髪を鷲づかみにし,「お前,名前なんていうねん。名前言わんかえ。お前の連れ,なんていうんや。」などと怒鳴りながら,右手拳でMの顔面を二,三回殴りつけ,髪をつかんだままMの頭を押さえつけ,5ないし10秒の間顔を湯につけ,Mが苦しがり手を少し動かしてもがく様子をみせると,顔を引っ張り上げることを何度も繰り返した。その間,Mはか細い声で「8号」「11号」などと言ったり,韓国人の名前のような言葉を言ったり,また,うめくような声で「ユーアーマイフレンド。」などと意味不明の言葉を口にしたことから,被告人Aは一層激高し,Mの顔を殴ったり,顔を湯につけて引き上げたりを繰り返し,さらに,シャワーをMの顔面にかけたり うめくような声で「ユーアーマイフレンド。」などと意味不明の言葉を口にしたことから,被告人Aは一層激高し,Mの顔を殴ったり,顔を湯につけて引き上げたりを繰り返し,さらに,シャワーをMの顔面にかけたり,浴槽内に入って前からMの頭を股で挟むなどした。また,被告人Bは,デッキブラシを両手で持って,ブラシの部分でMの頭を思いきり殴りつけ,続いてその柄で,もう1回,Mの頭から肩口にかけてを殴りつけた。その後も,被告人Dが,同Bから受け取ったデッキブラシの柄の部分でMの肩口から背中の辺りを二,三回殴りつけ,被告人Fが,Mの肩辺りを蹴りつけ,被告人Aが,湯船に入ってMの体をまたぎ,Mの顔に向かって尿をかけるなどの暴行を続けた。 (4) 被告人Bは,一時風呂場の外に出た際,先に外に出ていた被告人Cから「親分もやりすぎやけど,おっさんもごっついことするのう。」と言われ,「おっさん,傷害で済むけどおれはもう殺人か傷害致死になるわ。」などと言った。 (5) 同日午前6時30分ころ,被告人Aが,「もう引き上げ。そこに寝かせとけ。」と言ったので,被告人A,同D及び同Fの3人でMを浴槽から引きずり出し,洗い場に仰向けに寝かせ,被告人Aと同Bは風呂場を出て事務所へ行った。 (6) このとき,Mは,後頭部から出血し,顔はぼこぼこに腫れ上がっていて,片目が開けられず,もう一方の片目は無意識にかすかに開き,口は半開きの状態で,上半身はあざだらけであった。被告人Aらが風呂場から出て行った後,Mは,1度だけ,少し上半身を起こして,被告人Fの足下に手を伸ばしてきたので,被告人Fはこれを払いのけるため,Mの手や体を1,2回蹴りつけた。また,Mは,被告人Dの足にも手を伸ばしてきたので,被告人Dはこれを足で蹴って払いのけたところ,Mは,うつぶせに反転して倒れ,動 で,被告人Fはこれを払いのけるため,Mの手や体を1,2回蹴りつけた。また,Mは,被告人Dの足にも手を伸ばしてきたので,被告人Dはこれを足で蹴って払いのけたところ,Mは,うつぶせに反転して倒れ,動かなくなった。 (7) 被告人Fは,被告人B及び同Cと事務所にいた被告人AにMをどうするか聞いたところ,被告人Aは「ほかしてこい。c付近はあかんぞ。人目に付くところにほかせ,人に見られんなよ。」と言った。他方,被告人Dは,同Fが事務所に行った後,Mが立ち上がったので,ジーパンの腰の部分をつかんで,Mを引っ張り転倒させ,さらに背中部分を踏みつけたところ,Mの背中は柔らかく,Mの肋骨が折れているのではないかと思った。 (8) 被告人Fは,風呂場に戻って,被告人Dに同Aの上記指示を伝え,Mに白いタオルで目隠しをした上,被告人Dらとともに,Mをチェイサーのトランクに押し込んだ。このころ,Mは,顔は腫れ上がり,頭からも出血しており,上半身はあざだらけで,か細い声で何かを言ってはいたがほとんど気を失っていた。 (9) 同日午前6時50分ころ,被告人D,同E及び同Fは,Mをトランクに押し込んだチェーサーで第3現場を出発した。被告人Dは,同Fに「どこに行くねん。」と行き先を尋ねたところ,同被告人は,「人目につかんとこで,車が通りそうなとこやったら,どこでもええと言うとる。」と答えた。この移動中,トランクの中から「うー」といううめき声や「ドンドンドン」というトランクを叩くような音が聞こえていた。 7 第4現場での状況(1) 被告人Fらは,しばらく車で放置場所を探し回ったが,同日午前7時ころ,第4現場にさしかかり,そこにMを放置することにし,Mをトランクから引き上げ,道路の中央付近に仰向けに寝かせて放置した。 (2 ,しばらく車で放置場所を探し回ったが,同日午前7時ころ,第4現場にさしかかり,そこにMを放置することにし,Mをトランクから引き上げ,道路の中央付近に仰向けに寝かせて放置した。 (2) その後,被告人Fらが第3現場に帰ってきて,「終わりました。放ってきました。」などと被告人Aに報告した。被告人Bがどこに置いてきたのかと聞くと,被告人Fは「S寺の山の方へ行く道で,道路際や。」と答えた。このころ,被告人Dは,Mの背中が柔らかかったので骨が折れているのではないかということを,被告人A,同B,同C,同E及び同Fのいる事務所で報告した。被告人Aは,「ようけけったからな。」などと言っていた。 (3) なお,当時,第4現場の気温は約3度程度と推認される。 8 Mの発見状況同月5日午後4時35分ころ,第4現場の道路脇にある,T川内において,Mの死体が通行人により発見された。 9 Mの受傷状況及び死因Mには,①頭部挫(裂)創,②頭部表皮剥脱,③頭皮下出血,④顔面打撲擦過傷,⑤頚部打撲擦過傷,⑥胸部打撲擦過傷,⑦腹部打撲擦過傷,⑧左上肢打撲擦過傷,⑨右上肢打撲擦過傷,⑩左下肢打撲擦過傷,⑪右下肢打撲擦過傷,⑫胸腰背部打撲擦過傷,⑬胸腹部皮下筋肉内出血,⑭胸郭多発骨折,⑮腸間膜出血及び後腹膜出血,⑯急性硬膜下血腫,⑰脳蜘蛛膜下出血の各創傷があり,その分布は下半身に比して上半身特に頭部顔面から胸部及び左右上肢に多数かつ高度であること,これらの損傷は,鈍体による打撲又は圧迫あるいは擦過によって生じたものであること,そのうち,頭部顔面では,剥皮創を伴う広汎高度の頭皮下出血や顔面皮下出血・口腔粘膜出血及び裂傷等が生じていることから,多数回の打撃が繰り返し頭部顔面に加えられたと考えられる。また,⑭胸郭多発骨折は そのうち,頭部顔面では,剥皮創を伴う広汎高度の頭皮下出血や顔面皮下出血・口腔粘膜出血及び裂傷等が生じていることから,多数回の打撃が繰り返し頭部顔面に加えられたと考えられる。また,⑭胸郭多発骨折は,折れていない肋骨は,ほんの数本であり,ほとんどの肋骨が,ひびが入ったり,完全に二つに折れていたりしていたことが認められる。 Mの死因については,同人には,単独で直接死因と成りうる外傷は認められず,直接の死因は凍死の可能性が高いと考えられるが,多発外傷による外傷性ショック死の可能性は完全には否定できず,仮に,気温の高い状況に置かれていれば,外傷性ショック死していた可能性のあったことが認められる。 第3 被告人A,同B,同C,同D,同E及び同Fの罪責について 1 共謀の有無について上記第2で認定した被告人らの関係,本件犯行に至る経緯,犯行状況等を総合すると,その共謀が傷害の範囲にとどまるか,殺人までをも共謀したかはともかく,被告人らが,共謀の上,Mに対し本件一連の暴行を加えたことは優に認められる。 2 殺意の有無及びその発生時期(1) そして,上記第2で認定したとおり,(a)被告人らは,第1現場においては,被告人A,同C,同Eらが中心となって,Mを多数回足蹴にするなどの暴行を加え,(b)第2現場においても,被告人Aや同Fが中心となって,地面に横たわっていたMの頭部,顔,胸,腹などを多数回蹴り上げ,またバケツの水を数回にわたってかけるなどの暴行を加えた上,(c)第3現場においては,Mを風呂の浴槽内に入れ,同人の肩付近まで湯を入れた上,被告人Aが,同人の顔面を多数回殴りつけ,また,同人の髪をつかんで,5ないし10秒間ほど同人の顔を湯につけるなどし,また,被告人Bが,デッキブラシやその柄でMの頭を2回殴り,被告人Dも 湯を入れた上,被告人Aが,同人の顔面を多数回殴りつけ,また,同人の髪をつかんで,5ないし10秒間ほど同人の顔を湯につけるなどし,また,被告人Bが,デッキブラシやその柄でMの頭を2回殴り,被告人Dもデッキブラシの柄で二,三回Mの肩口から背中付近を殴るなどの暴行を加え,(d)さらに,被告人Aの指示により,Mを,第4現場である気温約3度の路上に放置する暴行を加えたことが認められる。第1現場ないし第3現場においてMに加えられた暴行は,上記のMの受傷状況からも明らかなように,極めて多数回に及びかつ強度なものであり,しかも,身体の重要部分であるMの上半身特に頭部顔面から胸部及び左右上肢を中心に加えられたものである。そして,Mの受けたこれらの傷害は,全体として多発外傷による外傷性ショックで死亡する可能性を否定できない程度に至っているのであるから,第4現場におけるMの放置を待つまでもなく,第1現場ないし第3現場においてMに加えられた上記(a)ないし(c)の一連の暴行自体が,Mの死の結果を生じさせる危険性の高いものというべきであり,これを殺人の実行行為と認めることができる。 (2) そして,被告人Aは,上記暴行を自ら積極的に行い,組員である他の被告人らにも指示してこれを行わせ,組員である他の被告人もこの指示に従って自らMに暴行を加えており,その間,Mの衰弱する様子をも目の当たりに見ているのであるから,自分たちが行っている一連の暴行がどのようなものであるかを理解していたことは明らかであり,被告人らにはMに対する殺意があったものと認定することができる。 (3) ところで,本件のように,被告人らによる暴行が,長時間にわたり,場所を変えながら続けられた場合,その殺意の発生時期を特定の時期であると確定したり,その時期を被告人ごとに個別に確定するこ (3) ところで,本件のように,被告人らによる暴行が,長時間にわたり,場所を変えながら続けられた場合,その殺意の発生時期を特定の時期であると確定したり,その時期を被告人ごとに個別に確定することは困難であるところ,本件では,被告人Aらが,第2現場で,地面に横たわったMを複数人で立て続けに蹴るなど最も激しい暴行を加えている反面,それ以前の第1現場における暴行だけでは,Mが死亡する危険性があったとまではいえないことからすると,第1現場において被告人らの殺意を認定することは困難である。したがって,被告人らのそれぞれの殺意の発生時期については第2現場ないし第3現場における一連の暴行中のいずれかの時点とするのが相当であり,傷害の実行行為としての暴行と殺人の実行行為としての暴行は,同一の被害者に対して連続的に行われた一連の暴行であり,一体として評価することができることから,殺意発生前の傷害は,殺意発生後の殺人に吸収されるものとして判示することにした。 もっとも,上記認定のとおり被告人F,同D及び同Bは,第1現場でのMに対する暴行には関与しておらず,被告人Eについては,訴因上,第1現場での暴行は起訴されていないが,いずれも第2現場ないし第3現場において,Mの状況を十分知りながら,それぞれ暴行に関与しているのであるから,第1現場から関与が認められる被告人A,同Cらと,その認識において何ら変わるところはない。 (4) また,殺意の程度については,被告人らの暴行が上記のとおり極めて多数回に及びかつ強度なものとはいえ,被告人らの暴行の中にそれ自体で致命傷を与えるようなものはなく,Mの受傷にも特定の致命傷がないこと,被告人らにおいて,Mを殺害しなければならないほどの動機まではなく,殺害を確定的に認識・認容するような言動もないこと,第4 自体で致命傷を与えるようなものはなく,Mの受傷にも特定の致命傷がないこと,被告人らにおいて,Mを殺害しなければならないほどの動機まではなく,殺害を確定的に認識・認容するような言動もないこと,第4現場にMを放置するに際し,Mが死亡前に発見されることを期待していた節もみられることなどに照らすと,被告人らにおいていわゆる確定的殺意があったとまでは認められず,その殺意の程度は未必的なものにとどまるものと解するのが相当である。 (5) 被告人Cについて被告人Cについては,他の被告人と異なり,第2現場の暴行の際には,交番に行っており,同所におけるMに対する暴行を現認していないことから,若干説明を補足する。 たしかに被告人Cについては,本件でもっとも激しい暴行が加えられた第2現場にはおらず,その暴行の詳細を知らないことが認められる。しかし,他方,被告人Cと他の被告人との間の共謀は,傷害の限度ではあるが,第1現場において既に成立していたものと認められる上,被告人Cは,Mが解放されていないことを知りながら,そのことを警察に秘匿し,警察の事情聴取が終わるや,直ちに他の被告人がいる第3現場に赴いているのであって,そこに共犯関係からの離脱を認めるような事情は何ら存しない。のみならず,その後の合流した第3現場において,被告人Cは,Mの状態を見て,第2現場における暴行の詳細を知ることはなくても,自らが交番に行っていた1時間30分程度の間,被告人AらがMに相当ひどい暴行を加え,これによりMが全身に重傷を負い,意識朦朧として力が尽きた状態にあることを認識し,さらに,こうして重傷を負ったMが,浴槽で被告人Aから顔を湯につけられ,Bにデッキブラシで殴られるなどの暴行を受け,訳の分からない言葉を口走るのを目の当たりにしていること,にもか あることを認識し,さらに,こうして重傷を負ったMが,浴槽で被告人Aから顔を湯につけられ,Bにデッキブラシで殴られるなどの暴行を受け,訳の分からない言葉を口走るのを目の当たりにしていること,にもかかわらず,その後,被告人Aの指示により,被告人DらがMを放置しにいくのを制止するなどしていないことからすると,被告人Cについても,第3現場において,Mの死を容認していたものといわざるを得ず,未必的殺意が生じたものと認めることができ,他の被告人らとの共謀もこれを認めることができる。 3 小括以上のとおり,被告人A,同B,同C,同D,同E及び同Fには,Mに対する未必的殺意と他の被告人との間の共謀が認められる(なお,被告人Gとの関係については,後記第4のとおり。)。 4 弁護人らの主張について弁護人らは,・各犯行現場における暴行は,死の結果を発生させるようなものではないし,各被告人らの暴行もそのようなものではないから,被告人らに殺意はない,・被告人らが,Mに暴行を加えたのは,Lの氏名や住所を聞き出すことが主たる目的であり,Mを殺害したり,死の結果を容認した事実は全くないから,被告人らに殺意はない,・第4現場でMを放置するに際し,被告人Aが,「人目につくとこにほかせ。」と指示していることからしても,被告人らに殺意はない,などと主張する。 しかしながら,・については,本件は,被告人らが共謀の上で行った一連の暴行によるものであるから,各被告人ごとに暴行を分断し,あるいは,各犯行現場ごとに暴行を分断して,殺意について判断することが相当でないことは明らかであって,こうした主張は当を得たものとはいい難く,・については,たしかに被告人Aにおいて,Lの氏名や住所を聞き出そうとしていたことが認められるものの,被告人らの暴行やそれに対す でないことは明らかであって,こうした主張は当を得たものとはいい難く,・については,たしかに被告人Aにおいて,Lの氏名や住所を聞き出そうとしていたことが認められるものの,被告人らの暴行やそれに対する認識が上記のとおりである以上,弁護人が指摘する点は,未必的殺意と矛盾するようなものではなく,・についても,同様であり,しかもMの放置自体が死の結果を発生させるもので,被告人らにおいてMの生命に配慮した形跡はないから,これらの主張を検討しても,未必的殺意の認定は左右されない。 5 検察官の主張について(1) 検察官は,公訴事実に対する釈明及び冒頭陳述等において,被告人Aが,第1現場からn号室に戻った後,Mがチェーサーに乗せられていることを聞き,他の被告人らに対し,「行くぞ。」と言った時点で,被告人らに未必的殺意による共謀が生じ,さらに,第2現場において,Mに対する確定的殺意による共謀が成立したと主張し,被告人らの捜査段階における各供述調書もこれに沿うものといえる。 (2) しかしながら,n号室において,被告人Aが,他の被告人に「行くぞ。」と言ったとしても,被告人Aは,Mに対し,具体的にどのような暴行を加えるかについては,何ら口にしていないのであって,この時点で,被告人AがMに対し暴行に及ぶことが他の被告人にも分かったことまでは認められるとしても,それ以上に,未必的にせよMに対する殺意の発生と共謀を認めることは,いかに被告人Aと他の被告人らとが同じ暴力団組員であることなどを強調しても飛躍に過ぎるものといわざるを得ない。 また,第2現場における確定的殺意による共謀が認められないことは,上記2のとおりである。 検察官の主張に沿う被告人らの捜査段階における各供述調書中,n号室での共謀を認めている点や, また,第2現場における確定的殺意による共謀が認められないことは,上記2のとおりである。 検察官の主張に沿う被告人らの捜査段階における各供述調書中,n号室での共謀を認めている点や,第2現場における確定的殺意を認めている点は,上記のとおりn号室では暴行に関する具体的会話がないことや第2現場における暴行の内容等がそれだけで直ちにMが死に至ることを確定的に認識,認容させるほどのものではないことに照らすと,不自然であって,これらの供述調書中,上記の認定に反する部分は信用することができない。 (3) なお,当裁判所の認定は,共謀の発生時期について,検察官の事前共謀の主張を認めないものであるが,その時期を後ろにずらした上,被告人らもおおむね認めている暴行を前提に現場共謀を認定するものであるから,これがいわゆる不意打ち認定に当たらないことはいうまでもない。 第4 被告人Gの罪責について 1 第1現場でのL及びMに対する暴行又は傷害について関係証拠によれば,上記第2で認定したとおり,被告人Gが,第1現場において,LやMに対し,殴る蹴るなどの暴行を加えた事実は認められない。 しかしながら,他方で,被告人Gは,第1現場において,①被告人Aを押さえつけていたMらに対し,「あんたら,いい加減にしとけよ。ええ。しまいにほんまに殺されるよ。ほんまに殺されるよ。」,「うるさい,のけこら,おっさん。」などと怒号したこと(なお,被告人Gは,公判廷でこれを否定する供述をするが,この言葉はMの110番通報等を録音したテープにあることから明らかである。),②警察に通報しようとしていたMの携帯電話機を取り上げて,同携帯電話機をc団地f号棟の植え込みに投げ入れたこと,③また,1度目は自ら,2度目は被告人Aの指示によって,組員らに呼出しの電話を る。),②警察に通報しようとしていたMの携帯電話機を取り上げて,同携帯電話機をc団地f号棟の植え込みに投げ入れたこと,③また,1度目は自ら,2度目は被告人Aの指示によって,組員らに呼出しの電話をかけたこと,④実際に,被告人Cら組員が駆けつけ,被告人AとともにMらに暴行を加えていた時点においても,被告人Aらを止めることもせずその場にいたことが認められ,これらの事実によれば,被告人Gに,同A,同C,同D及び同Eとの間で,LやMへの傷害の共謀が成立していたことが優に認められる。 すなわち,被告人Aは暴力団組長であり,かつ,本件は被告人AがMらを殴ったことに端を発している以上,警察が駆けつけた場合には,被告人Aがある程度の期間,身柄を拘束されることは避けられないことが予想されたところ,被告人Gはこのような事態を避けるため,警察より先に組員らを現場に到着させようと,Mの携帯電話機を取り上げ,他方,被告人Aの子分である組員らを呼び出したのであるが,警察より先に組員らが現場に来た場合には,同人らが被告人Aを加勢するためにLやMに何らかの暴行を加える蓋然性は相当程度高かったのであり,そのことは,被告人Gも十分に認識していたと認められる。 2 第2現場以降のMに対する暴行と死の結果について被告人Gは,同Aらがn号室を出発する際,同行せず,それ以降,Mに対する暴行の現場には立ち会っていないものの,被告人Aが「行くぞ。」と言った際,「私もついていく。」と言い,被告人Aから「お前はおれ。」と言われてn号室にとどまったものに過ぎない。被告人Gは,自らは,Mにそれ以上の暴行が加えられることを望まず,同行を求めたのも,何とか暴行をやめさせたいという気持ちからであったことはうかがえるが,同被告人において,被告人Aらの暴行をやめるよう実際に行動した は,Mにそれ以上の暴行が加えられることを望まず,同行を求めたのも,何とか暴行をやめさせたいという気持ちからであったことはうかがえるが,同被告人において,被告人Aらの暴行をやめるよう実際に行動したり,警察に通報するなど,Mに対するさらなる暴行を阻止する行為は何ら行っていないのであるから,被告人Gが共犯関係から離脱したとは認められない。 そうすると,被告人Gは,第2現場以降の被告人Aらの暴行によってMが死亡したことについて,他の被告人らとの間で傷害致死の範囲で共同正犯として責任を負うと解される。 3 なお,被告人Gの弁護人は,仮に同被告人が本件暴行に関与した事実があるとしても,それは,絶対服従を強いる被告人Aにより,強く命じられた結果であり,被告人Gは,これに抗う余地はなかったのであるから,期待可能性がなかったという趣旨と解される主張をするが,上記の認定事実に照らすと,弁護人の上記主張は採用することができない。 4 小括以上のとおり,被告人Gには,被告人A,同C,同D及び同Eとの間で,Lに対する傷害罪の共同正犯と,他の被告人ら全員との間で,Mに対する傷害致死罪の範囲での共同正犯が成立する。 5 検察官の主張についてところで,検察官は,被告人Gについても,他の被告人らに対する主張と同様に,被告人Aが,第1現場からn号室に戻った後,Mがチェーサーに乗せられていることが分かり,他の被告人らに対し,「行くぞ。」と言った時点で,被告人らに未必的殺意による共謀が生じ,さらに,第2現場において,Mに対する確定的殺意による共謀が成立したと主張するが,この主張が採用できないことは,他の被告人らについて述べたところと同様である。 そして,被告人Gについては,被告人Aらがn号室を出た後,同被告人らがMに加えた暴行につい が成立したと主張するが,この主張が採用できないことは,他の被告人らについて述べたところと同様である。 そして,被告人Gについては,被告人Aらがn号室を出た後,同被告人らがMに加えた暴行については,具体的な認識を全く欠いていることからすると,被告人GにMに対する殺意を認めることはできない。 第5 結論よって,判示第1の1の殺人(被告人Gについては傷害致死),判示第1の2の傷害の各事実は,優に認めることができる。 (法令の適用)被告人A,同B,同C,同D,同E,同Fの判示第1の1の行為は,刑法60条(ただし,被告人Gとの関係では,傷害致死の範囲で),199条に,被告人Gの判示第1の1の行為は,同法60条,205条に,被告人A,同C,同D,同E及び同Gの判示第1の2の行為は同法60条,204条に,被告人A,同B及び同Cの判示第2の行為のうち適合実包と共にけん銃を保管して所持した点は同法60条,平成14年法律第88号(鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律)附則26条による改正前の銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,3条1項に,けん銃実包を所持した点は刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の8,3条の3第1項にそれぞれ該当するところ,判示第2は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により重いけん銃加重所持罪の刑で処断し,各所定刑中判示第1の1の殺人罪については有期懲役刑を,判示第1の2の罪については懲役刑をそれぞれ選択し,被告人Cはその所持するけん銃等を提出して自首したものであるから,銃砲刀剣類所持等取締法31条の5,刑法68条3号により法律上の減軽をし,被告人A,同B,同C,同D,同E及び同Gの以上の各罪は,同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,被告人 刀剣類所持等取締法31条の5,刑法68条3号により法律上の減軽をし,被告人A,同B,同C,同D,同E及び同Gの以上の各罪は,同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,被告人Aについては,刑及び犯情の最も重い判示第1の1の罪の刑に,被告人B,同D,同E及び同Gについては,重い判示第1の1の罪の刑に,被告人Cについては,最も重い判示第1の1の罪の刑に,それぞれ同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で,被告人Fについては,その所定刑期の範囲内で,被告人Aを懲役20年に,同Bを懲役14年に,同C,同D及び同Eを懲役12年に,同Fを懲役10年に,同Gを懲役3年にそれぞれ処し,同法21条を適用して未決勾留日数中,被告人A,同B,同C,同D,同E及び同Fに対しては各540日を,被告人Gについては300日をそれぞれその刑に算入し,情状により同法25条1項を適用して,被告人Gに対し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,押収してある自動装てん式けん銃1丁及びけん銃用実包11発は,いずれも判示第2のけん銃加重所持の犯罪行為を組成した物で被告人A,同B,同C以外の者に属しないから,同法19条1項1号,2項本文を適用して,これらをいずれも被告人A,同B及び同Cから没収し,被告人A,同B,同F及び同Gについて,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用していずれも負担させないこととする。 (量刑の理由)第1 事案の概要本件は,被告人A,同B,同C,同D,同E,同F及び同Gが,共謀の上,団地前の路上(第1現場)及び人気のない空き地(第2現場),建設会社(第3現場)の風呂場において,Mに多数回殴る蹴るなどの暴行を加え,さらに,同人を人通りのほとんどない郊外の路上(第4現場)に放置して死亡させた殺人 1現場)及び人気のない空き地(第2現場),建設会社(第3現場)の風呂場において,Mに多数回殴る蹴るなどの暴行を加え,さらに,同人を人通りのほとんどない郊外の路上(第4現場)に放置して死亡させた殺人(被告人Gについては傷害致死)の事実(判示第1の1),被告人A,同C,同D,同E及び同Gが,共謀の上,上記団地前の路上(第1現場)において,Lに多数回殴る蹴る等の暴行を加えて傷害を負わせた事実(判示第1の2)並びに被告人A,同B及び同Cが,共謀の上,法定の除外事由がないのに,けん銃1丁をそれに適合する実包11発とともに保管して所持した銃砲刀剣類所持等取締法違反の事実(判示第2)からなる事案である。 第2 被告人らに共通する情状について 1 判示第1の1,2について(1) 犯行に至る経緯について本件は,暴力団組長であった被告人Aが,その愛人である被告人G宅がある団地を出ようとした際,同団地前の路上において,Lの車の停車位置に腹を立て,同車から降りてきたLやMの顔面をいきなり殴るなどの暴行を加えたが,逆に,LやMから押さえ込まれたため,さらにLやMに立腹したことを発端として,被告人Aが,被告人Gの電話等でかけつけた組員らとともに,暴行を加えたものである。 しかしながら,Lの車は,Mを降ろすため,エンジンをかけたまま一時的に停車していたに過ぎず,被告人Aから注意される理由は何ら見当たらない。被告人Aは,本件直前,本妻のQと電話でもめて腹を立て,Qのいる自宅に向かうため,n号室を飛び出したものであって,このような経緯からすれば,被告人Aは,自己のQに対するいらだちをぶつけるため,Lの車の停車位置に因縁をつけ,八つ当たりしたものであることは明らかである。 そして,見知らぬ男にいきなり殴りつけ 経緯からすれば,被告人Aは,自己のQに対するいらだちをぶつけるため,Lの車の停車位置に因縁をつけ,八つ当たりしたものであることは明らかである。 そして,見知らぬ男にいきなり殴りつけられたLやMが自分たちの身を守るため,被告人Aを何とか地面に押さえ込んだ行為は,その際,被告人Aの顔面にLがけがを負わせていたとしても,正当な行為であり,被告人Aが,自らの行ったことを棚に上げ,Mらの反撃に腹を立てることは全く筋違いである。 被告人Aは,本件犯行の動機について,LやMに仕返しをしてやろうと思ったなどと供述するが,このような経緯からすれば,このような動機は極めて自己中心的かつ短絡的で酌量の余地は微塵もなく,被告人Gや組員らである他の被告人も,被告人Aの身勝手な行動を止めるどころか,その指示に従い,その手足となって行動したのであって,社会規範よりも暴力団内部での規範を優先した行動には,全く酌量の余地がない。また,被告人A1人では,本件犯行は困難であったことを考えると,他の被告人らが果たした役割も極めて大きい。 (2) 判示第1の1について被害者Mは,事件当時,c団地f号棟で母親と2人暮らしをしていたものであるが,自宅の目の前で,突然被告人Aからいわれのない因縁を付けられ,その後複数の被告人から断続的に殴る蹴るなどの容赦ない暴行を受けながら,数時間に渡って連れ回され,最後は,3月初旬の早朝の寒空の下に放置され,誰にも看取られず,死亡したのであって,同人の味わった恐怖,苦痛は想像を絶するものがある。そして,Mは,事件当時27歳とまだ若く,U大学の博士課程において海上輸送システム工学を専攻し,博士号取得に向け,毎日論文作成の準備等に励み,夢に向かって邁進していたのであって,その夢を被告人らの理不尽な ,Mは,事件当時27歳とまだ若く,U大学の博士課程において海上輸送システム工学を専攻し,博士号取得に向け,毎日論文作成の準備等に励み,夢に向かって邁進していたのであって,その夢を被告人らの理不尽な凶行によって突然断たれた無念さは計り知れない。 また,Mの母親は,1人息子であるMの将来を楽しみに,同人を温かく見守ってきたのであるが,その息子が自分が寝ていた自宅のすぐ側から連れ去られ,無惨な姿になって戻ってきた精神的ショックもまた計り知れない。Mの母親が,被告人らを全員死刑にしてやって欲しい,そうでないと息子が報われない,と思うのも至極当然のことである。 加えて,本件は,何の落ち度もない市民が暴力団組長や組員らによって,連れ回され殺害されるという衝撃的な事件であって,付近住民及び社会に与えた恐怖感,不安感も無視し得ない。 (3) 判示第1の2についてまた,被害者Lは,被告人Aらの暴行によって加療約5週間を要する顔面・胸腹部打撲,両側第11肋骨骨折等の傷害を負ったもので,その肉体的苦痛はもとより,いきなり因縁を付けられ暴行をふるわれた精神的ショックも大きいものがあり,結果は重大である。加えて,Lは,第1現場において,M同様車に連れ込まれていたのであり,Lが被告人Aらのすきをついて必死でパトカーに逃げ込まなければ,さらに被告人Aらから暴行を加えられた可能性もあったことは否定できない。 (4) なお,被告人Aの弁護人らは,本件を悲惨な結末に追い込んだ原因の一つに,警察の捜査の不手際等があると主張する。 たしかに,関係証拠によれば,Lは,第1現場で,パトカーに保護された後,事情聴取した警察官らに対し,友達がもう1人いて,車に乗せられたかもしれないと訴えていたにもかかわら 主張する。 たしかに,関係証拠によれば,Lは,第1現場で,パトカーに保護された後,事情聴取した警察官らに対し,友達がもう1人いて,車に乗せられたかもしれないと訴えていたにもかかわらず,警察官らは,f号棟前のL車を含めた4台の車両のナンバーをチェックし,被告人Cに出頭を約束させただけで,同被告人の求めに応じ,1時間程度で第1現場から引き上げていることが認められ,その対応には,ずさんな面があったことは否めない。 しかし,被告人Aらは,警察が到着する前から,Mらを車に乗せ,どこかに連れて行って暴行しようとしていたことが認められること,警察が来て以降も,被告人C1人を出頭させ,同被告人のみに罪を着せようとするなど,積極的に警察の目をごまかそうとしている事情が認められるだけでなく,何よりも,被告人らは,自らの意思と責任で本件を敢行したのであるから,警察の上記不手際は,被告人らの責任の軽重に特段影響を及ぼすものとはいえない。 2 判示第2について被告人Aは,平成6年秋ころ,知人を通じてけん銃を手に入れることができるようになり,被告人Bや同被告人に頼まれた被告人Cを通じて,けん銃及び実包13発(うち1発は本件までに試射,1発は紛失)を受け取り,被告人Bや同Cに命じて,平成11年9月ころから,N建設の敷地内の土の中にけん銃等を保管していたものである。 被告人Aは,単なる趣味でけん銃を手に入れた旨供述するが,同けん銃は,適合する実包と共に,手入れをされた状態で見つかっており,暴力団組員である被告人Aらが,このようにいつでも使用できる状態で約7年間もけん銃等を保管していた行為は,極めて危険かつ悪質である。 第3 被告人ら7名の個別的事情について 1 被告人Aについて本件判示第1の各 ,このようにいつでも使用できる状態で約7年間もけん銃等を保管していた行為は,極めて危険かつ悪質である。 第3 被告人ら7名の個別的事情について 1 被告人Aについて本件判示第1の各犯行は,前記のとおり被告人Aの全く八つ当たりの腹立ちに端を発し,同被告人らの執拗な暴行によって,このような悲惨な結果を生じたものであるところ,被告人Aは,そのきっかけを作り,Mらに対して,最も激しい暴行を加えたほか,暴力団組長としての立場を利用して組員らに指示してMらに暴行を加えさせたものであり,また,判示第2のけん銃加重所持においても,被告人Cや同Bに指示してけん銃を保管させるなど,本件のいずれの事件についても首謀者としての役割を果たしていることから,共犯者中,最も重い責任を負うことは免れない。 そして,特にMの殺害については,意識が混濁しながらも,時折必死に「助けて」「しんどい」などと訴える同人に対し,被告人Aは,何ら心を動かすことなく,かえって,怒りを増幅させ,さらに暴行を加え続けていたのであって,犯行態様は極めて残忍で悪質というほかなく,その態度からは,他人の生命,身体を尊重する気持ちは全く感じられない。 加えて,被告人Aには,平成8年に配下組員に傷害を負わせた暴力行為等処罰に関する法律違反による懲役前科1犯があるだけでなく,配下組員らに対し,さしたる理由もなく度々暴力行為に及んでいたことがうかがわれることなどにかんがみれば,その粗暴性は極めて顕著である。 また,被告人Aは,本件犯行後も,組員らに指示して,特定の組員に罪をかぶせて出頭させ,Mの所持品や犯行に使用した車等を処分させ,また,逮捕直後には,自分は水をかけただけであるなどと供述するなど,自己の刑責を免れようと算段しており,犯行後の情状も甚だ悪質であ に罪をかぶせて出頭させ,Mの所持品や犯行に使用した車等を処分させ,また,逮捕直後には,自分は水をかけただけであるなどと供述するなど,自己の刑責を免れようと算段しており,犯行後の情状も甚だ悪質である。 これらの事情に照らすと,被告人Aの刑事責任は極めて重大である。 そうすると,被告人Aには無期懲役刑を選択することも考えられなくはないが,他方,上述のとおり,本件の発端自体には偶発的な面が認められること,同被告人のMに対する殺意は,確定的なものとまでは認められないことなどを考慮すると,最も長期の有期懲役刑を選択することが相当であると考える。 2 被告人Bについて被告人Bは,組長である被告人Aの理不尽な行動に,何ら異議を唱えることもなく,被告人Aの指示のままに,Mに暴行を加えたのであって,組内部の論理を優先させた行動に何ら酌量の余地はない。また,被告人Bは,第1現場での暴行にこそ加わっていないものの,第2現場においては,地面に転がったMを数回にわたって蹴りつけ,さらに,第3現場において,Mをデッキブラシで思い切り殴り,頭部に傷害を負わせるなど,その犯行態様は悪質である。また,同人には,平成9年及び平成13年に傷害,暴力行為等処罰に関する法律違反による粗暴犯前科2犯があることからしても,粗暴性は否定できず,被告人Bの刑事責任は,重大である。 他方,被告人Bには,同Aに比べて,本件犯行への関与が従属的であること,けん銃の加重所持についても,被告人Aの指示によって行ったものであることなどの事情も認められる。 3 被告人Cについて被告人Cは,真っ先に第1現場に駆けつけ,Mらと被告人Aの間にどんな事情があったのかもよく分からないまま,被告人Aの指示に従ってMやLに暴行を加え,さらに第1現 3 被告人Cについて被告人Cは,真っ先に第1現場に駆けつけ,Mらと被告人Aの間にどんな事情があったのかもよく分からないまま,被告人Aの指示に従ってMやLに暴行を加え,さらに第1現場から立ち退くよう警察を説得し,1人で警察に出頭したものであって,組内部の論理を優先させた行動に何ら酌量の余地はない。被告人Cが警察に出頭し,被告人Aらをかばったことにより,結果的には本件発覚及びMの発見が遅れたのであり,警察に出頭しながら,あえて真実を語らなかった被告人Cの責任は重大であるといわざるを得ない。 他方,被告人Cは,同B同様,同Aの指示によって,けん銃の加重所持を含めたすべての犯行を行ったのであって,被告人Aに比べれば本件犯行への関与は従属的であること,被告人Cの暴行は,第1現場におけるものに限られ,特に強度の暴行が加えられた第2現場以降の犯行については,他の共犯者らに比べ,関与の度合いが格段に低いことに加え,判示第2の犯行につき,けん銃等を提出して自首していること,前科がないことなどの事情も認められる。 4 被告人D,同E及び同Fについて被告人D,同E及び同Fは,いずれも被告人Aの指示に従ってMらに暴行を加えた上,さらに,同被告人の指示に従ってMを車に乗せ第4現場に放置しており,Mの直接の死因が,同人らが放置したことによる低体温症であることからするとその責任は重い。 また,被告人Fは,第1現場での暴行には加わっていないものの,第2現場においては,Mに対し,被告人Aに次ぐ激しい暴行を加えていたのであって,その責任は第1現場から暴行に加わっていたものと比較して決して軽いものではなく,加えて,被告人Fには,平成9年,被告人Bらと共謀の上犯した傷害の前科1犯がある。 これらの事情に照らすと, その責任は第1現場から暴行に加わっていたものと比較して決して軽いものではなく,加えて,被告人Fには,平成9年,被告人Bらと共謀の上犯した傷害の前科1犯がある。 これらの事情に照らすと,被告人D,同E及び同Fの責任も重い。 他方,被告人D,同E及び同Fは,被告人Aの指示に従って,本件犯行を行っており,被告人Aに比べその関与が従属的であること,被告人D及び同Eには前科がないことなどの事情も認められる。 5 被告人Gについて被告人Gは,第1現場において,組員らを電話で呼び出し,また,警察に通報しているMを怒鳴りつけたり,携帯電話機を取り上げたりして,同人の警察への通報を妨害していたのであるが,第1現場に組員らが駆けつけなければ,本件犯行は困難であったことを考えると,被告人Gの果たした役割も軽視し得ない。 しかしながら,被告人Gは,第1現場において,Mらに対し,直接暴行を加えたと認めるに足りる証拠はなく,また,Mに対する傷害致死罪の成立は免れないとはいえ,第2現場以降においては,他の被告人らに同行すらしておらず,他の被告人らと対比すると,その関与の度合いは著しく低いこと,被告人Gが,他の組員らを呼び出したのには,入院を控えた被告人Aを何とか早くn号室に戻したいと考えていた面があることも否定し得ないこと,前科がないことなどを考慮すると,被告人Gについては,直ちに実刑を科すまでの必要はなく,今回は刑の執行を猶予するのが相当であると考える。 第4 結論そこで,以上のような諸事情を総合考慮して,被告人7名に対し,それぞれ主文の刑を量定した。 (求刑・被告人Fについて懲役15年,同Dについて懲役14年,同Eについて懲役15年,同Aについて無期懲役,同Gについて懲役10年,同Bについて懲役20年,同 に対し,それぞれ主文の刑を量定した。 (求刑・被告人Fについて懲役15年,同Dについて懲役14年,同Eについて懲役15年,同Aについて無期懲役,同Gについて懲役10年,同Bについて懲役20年,同Cについて懲役18年,同A,同B,同Cについてけん銃及び実包の没収)平成16年8月5日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官浦島高広裁判官小山裕子
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