令和1(ワ)3701 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月15日 横浜地方裁判所
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判決文本文49,481 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 被告らは、原告に対し、連帯して、4587万1004円及びこれに対する平成29年9月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、被告国が設置運営する防衛大学校(以下「防衛大」という。)の学生であった原告が、防衛大在校中、被告A(以下「被告A」という。)を含む 防衛大の学生から暴行やいじめを受け、精神的苦痛を受け損害を被ったとして、被告Aに対し不法行為に基づき、被告国に対し国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項又は安全配慮義務違反に基づき、慰謝料、逸失利益等4587万1004円及びこれに対する原告が防衛大を退校した日である平成29年9月20日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のも の。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。)当事者 ア原告は、平成▲年▲月▲日生まれの男性であり、平成25年3月に高等学校を卒業し、同年4月に防衛大本科に入学し(61期)、平成29年9月20日に退校した(乙4)。 イ被告国は、防衛省設置法に基づき、幹部自衛官となるべき者の教育訓練をつかさどるなどの目的のため、防衛大を設置し、運営している。 ウ被告Aは、防衛大本科の原告の上級生(60期)であったものであり、 平成28年3月に防衛大本科を卒業した後、陸上自衛隊に入隊した。 防衛大における学生の身分、学生間指導の在り方等ア防衛大の設置目的、学生の身分等防衛大は、幹 たものであり、 平成28年3月に防衛大本科を卒業した後、陸上自衛隊に入隊した。 防衛大における学生の身分、学生間指導の在り方等ア防衛大の設置目的、学生の身分等防衛大は、幹部自衛官となるべき者の教育訓練等をつかさどる機関であり、本科(4年制)においては、幹部自衛官として必要な識見及び能力を 与えかつ伸展性のある資質を育成することを目的として教育訓練が行われる。 防衛大の学生は、特別職の国家公務員であり、毎月、学生手当が支給されるほか、食事、被服等が貸与又は支給される。 イ学生隊の編成 防衛大では、学生自ら規律と服従を身につけ、リーダーシップ及びフォロアーシップを育成することを目的として、学生のみで学生隊を編成する(乙14)。学生隊は、4個大隊から成り、1個大隊は4個の中隊、1個中隊は3個の小隊から編成される。学生隊、各大隊、各中隊、各小隊にそれぞれ配置される学生隊学生長、大隊学生長、中隊学生長及び小隊学生長 が、それぞれ、総括首席指導教官、首席指導教官(大隊指導教官)、次席指導教官(中隊指導教官)及び指導教官(小隊指導教官)の指導監督の下、所属隊の指揮等の業務を行う(乙19)。 ウ学生舎生活学生は、敷地内にある学生舎内に起居する。1大隊ごとに学生舎1棟が 割り当てられ、4中隊がフロアごとに配置され、各学年2名ずつ計8名を基準として共同で自習室及び寝室を使用して生活し、各室の4学年が室長及び副室長を務める(乙14)。 エ学生間指導防衛大においては、幹部自衛官としてのリーダーシップ及びフォロア ーシップを涵養するため、主に中隊及び学生舎における室を基本単位と して、学生間で規律を遵守させるよう、学生間指導が行われている(乙31)。 学 のリーダーシップ及びフォロア ーシップを涵養するため、主に中隊及び学生舎における室を基本単位と して、学生間で規律を遵守させるよう、学生間指導が行われている(乙31)。 学生が行う作業指揮や規律の指導は、自主自律の精神の下、自己修練の一環として行うものであり、強い遵法精神に則り、法令、規則、確立した学生慣習に厳格に従うものであって、暴力的指導や下級生に対する 不当な強制をもってする指導は厳に慎まなければならないとされている。 学生間指導における各学年の役割について、4学年は、学生舎生活の最上級指導層であり、学年が一致して学生隊組織及び校友会活動を通じて積極的に下級生の指導を行わなければならず、その際は、各学年の特性に応じて2、3学年を通じた間接指導を主用し、各学年の指導力向上に 配慮するとともに、必要に応じ、直接指導を行うとされている。3学年は、学生隊や各室の運営に際し、4学年を補佐することを通じて次期最高学年として相応しい拡張性のある指導力の習得を探求しなければならないとされ、2学年を通じた間接指導を主用し2学年の指導要領を直接確認するとともに、必要に応じて是正の措置をとるとされている。2学 年は、対番(2学年の学生が1学年の学生をマンツーマンで指導し面倒を見る制度があり、両者の関係は対番と呼ばれる。)等として1学年に対する直接的な指導を行う立場であり、学生舎で行われる行為の意味と目的を理解し、1学年に垂範して見せることにより、上級学年における指導力発揮の基盤を確立するとされている。1学年は、最下級生として、 大半の場合指導を受ける立場となるが、単に受動的に強制されるのではなく、進んで防衛大における規律や作業の意味を理解するよう努めるべきであるとされている。(乙31、32)春季カ として、 大半の場合指導を受ける立場となるが、単に受動的に強制されるのではなく、進んで防衛大における規律や作業の意味を理解するよう努めるべきであるとされている。(乙31、32)春季カッター(かつて艦艇に装備されていた大型の手漕ぎボート)競技会は、新2学年が同競技会に向けた訓練を通じて最下級生から指導す る側へ昇華する通過儀礼として位置付けられる(乙31)。 学生間指導について、「学生間指導のガイドライン」、「学生間指導の留意事項」、「学生間指導の在り方」等が策定されている。 オ校友会活動は、防衛大規則第5条1項の「学生の自発的に行う各般の行動」に位置付けられるもので、運動部、文化部、同好会等が設置され、原則全ての学生が体育系の部活を行うものとされている(乙14)。 防衛大の指導教官、学生等防衛大では、指導教官が学生の訓練、補導及び生活指導に従事する。 本件において原告に関係した主な指導教官及び学生は、以下のとおりである。 ア指導教官 B二等海尉(以下「B二尉」という。)B二尉は、原告が1学年時(平成25年度)に所属していた第423小隊の指導教官であった(乙4)。 C一等陸尉(以下「C一尉」という。)C一尉は、原告が2学年及び3学年時(平成26年及び27年度)に 所属していた第113小隊の指導教官であった(乙4)。 D一等陸尉(以下「D一尉」という。)D一尉は、原告が3学年時(平成27年度)に剣道部の顧問を務めていた(乙55、証人D一尉〔1頁〕)。 イ学生 E学生(以下「E学生」という。)原告の2期上(59期)であり、原告が1学年時の中期(平成25年9月から同年12月まで)、学生舎において原告と居室を同じくしていた( 。 イ学生 E学生(以下「E学生」という。)原告の2期上(59期)であり、原告が1学年時の中期(平成25年9月から同年12月まで)、学生舎において原告と居室を同じくしていた(甲42)。 被告A 被告Aは、原告の1期上(60期)であり、原告が2学年及び3学年 時(平成26及び27年度)に原告と同じ第11中隊に所属していた(甲41)。 F学生(以下「F学生」という。)原告の1期上(60期)であり、平成26年から平成27年11月まで、剣道部の主将であった(乙53、証人F学生〔3、10頁〕)。 G学生(以下「G学生」という。)原告と同期(61期)であり、剣道部に所属し、F学生の後に主将であった(乙1〔2頁〕)。 H学生(以下「H学生」という。)原告の1期下(62期)であり、剣道部に所属していた。 ⑷ 主な事実経過ア 1学年時原告は、平成25年4月、防衛大に入学し、剣道部に入部した(乙4〔8頁〕)。 原告は、平成25年9月から同年12月まで、3学年であったE学生 と学生舎で同室となった(甲42)。 原告は、平成25年11月15日から同月21日にかけて複数回リストカットをした。これに同室の上級生が気付き、B二尉に報告し、原告は、B二尉に勧められて自衛隊横須賀病院(以下「横須賀病院」という。)精神科を受診し、適応障害と診断された。 原告は、平成25年11月25日から同年12月2日まで帰郷療養(一時的に自宅に帰ることをいう。)した。 原告は、平成26年1月以降、E学生とは学生舎の室が別になり、E学生から指導を受けることはなくなった(甲42)。 イ 2学年時 原告は、平成26年4月、2学年に進級し、対番学生である1学年生 、平成26年1月以降、E学生とは学生舎の室が別になり、E学生から指導を受けることはなくなった(甲42)。 イ 2学年時 原告は、平成26年4月、2学年に進級し、対番学生である1学年生 (以下「下対番」という。)の指導を行うことになった。 平成26年4月のカッター訓練期間中、3学年であった被告Aは、下対番が入室要領演練において服務規律違反を犯したとの理由で原告を呼び出し、原告による下対番の指導につき指導するようになった。 カッター訓練期間の終了後、原告は被告Aから呼び出されることはな かったが(甲42)、平成26年10月、被告Aは武器係となり、銃の扱いについて、原告を呼び出し指導するようになった。 原告は、平成26年11月に過呼吸を起こし、医務室に運ばれ、同月20日に横須賀病院精神科を受診した(甲3)。被告Aは、その頃、指導教官から原告に対する指導方法について注意を受け、原告はそれ以降 平成27年4月まで被告Aから呼び出されることはなかった。 ウ 3学年時原告は、平成27年4月、被告Aから銃の扱いについて呼出しを受けた。 原告は、平成27年4月14日、過呼吸を起こした。同日、C一尉が 原告と面談した。それ以降、被告Aが原告を呼び出すことはなくなった。 原告は、平成27年8月、剣道部の夏合宿に参加した。 原告は、平成28年2月、剣道部の寒稽古に参加した。 H学生は、平成28年2月1日、寒稽古中に原告の上半身を押して体育館の壁にぶつけた(以下「H暴行」という。)。 原告は、平成28年2月5日、寒稽古中にH学生の後頭部を後ろから木刀で殴打するなどし、H学生は傷害を負った(以下「本件傷害事件」という。)。 原告は、平成28年3月17日、本件傷害事件を理由に服務留年 、平成28年2月5日、寒稽古中にH学生の後頭部を後ろから木刀で殴打するなどし、H学生は傷害を負った(以下「本件傷害事件」という。)。 原告は、平成28年3月17日、本件傷害事件を理由に服務留年となった。 エ留年時 原告は、平成28年3月29日、宮原メンタルクリニックを受診し、抑うつ状態であり自宅療養が必要であるとの診断を受けたため、防衛大には戻らず、同年5月24日まで帰郷療養した(甲6)。原告は、同日に防衛大に戻り、服務室で起居し、講義のみ受ける状態となった(乙4〔26頁〕)。 防衛大において、平成28年5月23日から平成29年4月26日にかけて、学生による原告に対するいじめがされたか否かにつき、関係教官、関係学生など約50名から任意に供述を求めるなどして、調査が行われた(乙1。以下「本件調査」という。)。 原告が服務室で「完全自殺マニュアル」という書籍を所持していたこ となどから、平成28年6月22日、原告について病気休暇処置がとられ、原告は、同年9月19日まで帰郷療養した。原告は、同月20日付けで休学を命じられた。 H学生は、平成28年8月30日、H暴行を理由に、防衛大から処分を受けた(乙11)。 原告は、本件傷害事件を理由に、平成29年9月19日、停学15日の処分を受け(甲5)、同月20日、退校を命じられた(甲2)。 2 争点不法行為(以下、国賠法1条1項の違法行為を含めて不法行為という場合がある。)の成否 【E学生の行為】(1学年時)ア E学生による罵倒等(不法行為1)イ E学生による食いシバキの強要(不法行為2)ウ E学生による腹踏みの強要(不法行為3)【被告Aの行為】(2~3学年時) エ被告Aによる反省文提出の よる罵倒等(不法行為1)イ E学生による食いシバキの強要(不法行為2)ウ E学生による腹踏みの強要(不法行為3)【被告Aの行為】(2~3学年時) エ被告Aによる反省文提出の強要(不法行為4) オ被告Aによる平成26年10月頃の呼出し、罵倒等(不法行為5)カ被告Aによる平成27年4月頃の呼出し、罵倒等(不法行為6)【剣道部関連】(2~3学年時)キ廻しの強要(不法行為7)ク F学生による暴行等(不法行為8) ケ素振り100回の強要(不法行為9)コ G学生による暴行(不法行為10)サ H学生による暴行等(不法行為11)【その他】(留年時)シ窃盗被害(不法行為12) 安全配慮義務違反の有無ア B二尉の平成25年11月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反1)イ B二尉の平成26年2月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反2)ウ C一尉の平成26年11月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反 3)エ C一尉の平成27年4月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反4)オ D一尉の平成27年8月及び平成28年2月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反5)カ D一尉の本件傷害事件後の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反6) 因果関係の有無⑷ 損害消滅時効の完成の成否 3 争点に関する当事者の主張不法行為の成否 (原告の主張) 原告に対し、いじめを執拗に繰り返したのは、全員が防衛大の学生であり、全て防衛大の学生生活の中で行われた。原告に対するいじめは、国家公務員たる自衛隊員である防衛大の学生が、その職務を行うについて、原告に対し違法に損害を与えたものといえるから、被告国は、国賠法1条1 全て防衛大の学生生活の中で行われた。原告に対するいじめは、国家公務員たる自衛隊員である防衛大の学生が、その職務を行うについて、原告に対し違法に損害を与えたものといえるから、被告国は、国賠法1条1項に基づき損害賠償責任を負う。 被告Aの原告に対するいじめは、指導に名を借りたものであるが、実態は、職務とは無関係な私的制裁である。公務員の加害行為であっても、職務行為に付随して行われるとともに職務とは無関係に行われたものがある場合や、故意又は重過失が認められる場合には、加害者は個人としても民法709条に基づく不法行為責任を負うから、被告Aの行為について、被告国が国賠法 1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合であっても、被告Aは民法709条に基づく損害賠償責任を免れない。 原告に対するいじめの具体的な内容は、以下のとおりである。なお、被告Aに係る部分は、不法行為4~6である。 ア E学生による罵倒等(不法行為1) 平成25年4月頃、原告は、E学生から、原告が支給された官品を所定位置に置いていなかった等の些細なミス等を理由に、「死ね」、「馬鹿じゃねえの」、「向いてない」、「やめてしまえ」などの暴言で叱責、罵倒された。E学生の行為は、「相手の人格を否定し、あるいは個人的な欠陥を指摘する等、指導を受ける側の気持ちを無視した指導を行ってはならな い。」、「相手の言い分を聞かず、一方的に相手を非難する等、精神的に追い込む行為を行ってはならない。」と定める「学生間指導の在り方」に反しており、指導として許容される限度を超えて原告の人格権を侵害するものであるから、違法である。 E学生の行為は、職務の一環としての学生間指導として行われ、職務と 密接な関連性を有するから、「職務を行うについて」に該当する。 格権を侵害するものであるから、違法である。 E学生の行為は、職務の一環としての学生間指導として行われ、職務と 密接な関連性を有するから、「職務を行うについて」に該当する。 イ E学生による食いシバキの強要(不法行為2)平成25年10月頃、原告は、E学生から、食いシバキを強要された。 「食いシバキ」とは、通常では食べきれない量の食事の完食を強要することであり、防衛大で蔓延していた典型的ないじめの一つである。原告は、E学生からうどん屋で2kgの大盛うどんを食べるよう強要されたが、注 文した料理を半分程度しか食べることができなかった上、注文の際に写真を撮っていなかったことから、E学生から、原告が食いシバキを行ったかどうか信じられないと言われた。E学生が、身体的にも精神的にも大きな負担及び苦痛を伴う食いシバキを原告に強要したことは、原告の人格権を侵害するものであるから、違法である。 E学生の行為は、防衛大における絶対的な上下関係を背景として行われたものであり、学生舎生活における学生間指導と密接な関連性を有するから、「職務を行うについて」に該当する。 ウ E学生による腹踏みの強要(不法行為3)平成25年10月頃、トレーニングの時間でもなく、原告が頼んだわけ でもないにもかかわらず、原告は、E学生から、腹筋を鍛えるトレーニングである「腹踏み」をするから仰向けになるように命じられ、腹部を力任せに繰り返し踏みつけられた。腹踏みは、暴行以外の何ものでもないから、違法である。 E学生の行為は、不法行為2と同じ理由により「職務を行うについて」 に該当する。 原告は、E学生からのいじめ(不法行為1~3)により、強い精神的ストレスを受け、平成25年11月にリストカットに及び、帰郷療養を経て同年12月 由により「職務を行うについて」 に該当する。 原告は、E学生からのいじめ(不法行為1~3)により、強い精神的ストレスを受け、平成25年11月にリストカットに及び、帰郷療養を経て同年12月に防衛大に戻ったが、これにより周囲の学生が原告のことをからかう傾向が強くなった。 エ被告Aによる反省文提出の強要(不法行為4) 平成26年4月頃、被告Aは、下対番が入室要領を守っていないなどとして、原告の下対番に対する指導不足を理由に、原告を呼び出し、「お前に指導される1年生がかわいそうだ」などと言って皆に迷惑をかけたことについて反省文を書くように求め、原告が反省文を提出すると、原告の目の前で破り、再度反省文を提出するよう命じた。被告Aは、原告の下対番 に対する指導方法や内容について原告を指導する立場にはなかった。また、原告を指導するのであれば問題点を指摘したり改善点をアドバイスしたりすべきであって反省の弁を述べさせる必要はなかったし、反省文を破る必要もなかった。被告Aの行為は、原告の指導要領を確認したりその問題点を指摘したりするものではなく、形だけで中身のない指導であり、「学生 間指導の在り方」、「学生間指導のガイドライン」、「学生間指導の留意事項」に反しており、原告に義務のない行為を強要し、その人格権を侵害するものであるから、違法である。 被告Aの行為は、原告に対する指導の名目で学生間指導として行われたものであり、「職務を行うについて」に該当する。 オ被告Aによる平成26年10月頃の呼出し、罵倒等(不法行為5)平成26年10月頃、原告は、開校祭のためのパレード訓練中に、武器係の4学年から銃の結合部に部品がうまくはまっていないことを指摘された。これを目撃した被告Aは、同月から同年11月に (不法行為5)平成26年10月頃、原告は、開校祭のためのパレード訓練中に、武器係の4学年から銃の結合部に部品がうまくはまっていないことを指摘された。これを目撃した被告Aは、同月から同年11月にかけて、訓練中に原告を指導するのではなく、15回以上自室に呼び出し、「お前、声小さく ねぇ?」、「明日来る時は、1年生の名札をつけろ。」、「服が汚いから帰れ。」などと銃の扱いとは関係のないことで罵倒し、原告の人格を否定するような発言をし、言いがかりをつけて原告を追い返す等の嫌がらせを繰り返した。原告には銃の整備不良があったが、それはこの頃ではなかった(同年8月に銃の錆、同年9月に規整子の固着、平成27年4月に安全 装置の解除忘れがあった)から、被告Aは平成26年10月頃に銃の整備 を理由に原告を複数回呼び出す必要はなかった。被告Aの指導方法は、機会指導に努め、呼出しによる指導は極力避けるように定める「学生間指導の在り方」及び「学生間指導の留意事項」並びに権威主義的な指導を行わないよう定める「学生間指導のガイドライン」に反しており、原告の人格権を侵害するものであるから、違法である。 被告Aの行為は、防衛大の学生の職務である訓練教科を原因とする指導であり、職務を契機として、それと密接な関連性を有するから、「職務を行うについて」に該当する。 原告は、被告Aからの呼出し及び催促により精神的に追い詰められ、平成26年11月に過呼吸を起こし、医務室に運ばれ、3時間近く意識が混 濁する状態になった。 カ被告Aによる平成27年4月頃の呼出し、罵倒等(不法行為6)平成27年4月頃、被告Aは、原告の銃の格納に不備があるとの理由で、訓練中に原告を指導するのではなく、7、8回以上自室に呼び出し、「声が小さい」、「服の 27年4月頃の呼出し、罵倒等(不法行為6)平成27年4月頃、被告Aは、原告の銃の格納に不備があるとの理由で、訓練中に原告を指導するのではなく、7、8回以上自室に呼び出し、「声が小さい」、「服の着こなしが悪い」などの理由で難癖をつけ、銃の扱い とは関係のないことで原告を罵倒し、追い返したり、呼び出しておきながら不在を装って原告を嘲笑したりするなどの嫌がらせを繰り返した。この頃に被告Aから指摘された銃の格納の不備は、安全装置ダイヤルの位置間違い、弾倉装着部分のキャップ戻し忘れ、格納時の台座へのはめ込み不足の3点であった。原告は、被告Aの面前で過呼吸を起こしたが、被告Aは 何ら対処しようとせず、「お前が過呼吸を起こしても、俺は指導をやめる気はないからな。」と言い放ち、その翌日にも原告を呼び出して罵倒し、原告は再び過呼吸を起こした。被告Aの行為は、呼出しによる指導は極力避けるように定める「学生間指導の在り方」及び「学生間指導の留意事項」並びに権威主義的な指導を行わないよう定める「学生間指導のガイドライ ン」に反し、指導に名を借りた嫌がらせ又はいじめにほかならず、原告の人格権を侵害するものであるから、違法である。 被告Aの行為は、不法行為5と同じ理由により「職務を行うについて」に該当する。 原告は、何を言っても被告Aから否定され続けたため、言葉が出てこな くなり、不安感が続き、平成27年の夏休みに自宅で大量の解熱剤等を服用して自殺を図った。 キ廻しの強要(不法行為7)平成27年8月の夏合宿及び平成28年2月の寒稽古の際、剣道部内で原告は集中的に廻しを強要されていた。「廻し」とは、4学年を相手に行 う切り返しや掛かり稽古であり、4学年のみ交代し下級生は休みなく打ち込みを続けるものである。 年2月の寒稽古の際、剣道部内で原告は集中的に廻しを強要されていた。「廻し」とは、4学年を相手に行 う切り返しや掛かり稽古であり、4学年のみ交代し下級生は休みなく打ち込みを続けるものである。廻しは、稽古を受ける側であった原告を肉体的に追い詰める理不尽なしごきであるから、違法である。 校友会活動の一環として行われたものであり、特に上級生によって行われたものであるから、職務行為の一環の行為として、「職務を行うについ て」に該当する。 ク F学生による暴行等(不法行為8)原告は、服毒自殺を図った後、体調不良であることを周りに伝えずに無理をして平成27年8月の夏合宿に参加していたところ、剣道部主将のF学生の目には原告の動きが怠けているように見えたのか、F学生は、準備 運動の素振りの最中、原告に対して「さぼってんじゃねーよ。」と怒鳴りつけ、原告の背中を竹刀で激しく打ちつけた。これは、「学生間指導の在り方」に反し、明らかに不適切な指導であるから、違法である。 F学生の行為は、主将としての地位に基づき剣道部活動中に行ったものであって、校友会の活動を契機として、これと密接な関連性を有するから、 「職務を行うについて」に該当する。 ケ素振り100回の強要(不法行為9)平成27年8月、F学生は、原告がさぼっていたとして、夏合宿に参加していた部員全員に連帯責任として素振り100回を命じた。このような指導は、「学生間指導の在り方」において実施すべきではないとされている連帯責任を伴う指導であり、他の部員からの怒りを原告に集中させ、原 告の立場を更に悪くさせ、原告に対するいじめを加速させるものであったから、違法である。 不法行為8と同じ理由により、「職務を行うについて」に該当する。 コ G学生による暴行 告に集中させ、原 告の立場を更に悪くさせ、原告に対するいじめを加速させるものであったから、違法である。 不法行為8と同じ理由により、「職務を行うについて」に該当する。 コ G学生による暴行(不法行為10)平成26年9月23日、剣道部の練習が終わった後、原告がシャワーを 浴びていると、後から来たG学生が原告に対して退くように言ってきたことから、押し合いとなり、その際、G学生が原告の顔面左側を右手握り拳で殴打し、原告はその衝撃で後頭部を壁に打ちつけた。G学生の行為は明らかに暴行に当たり、違法である。 G学生の行為は、剣道部の練習後に行われたものであり、時間的にも場 所的にも剣道部の活動と密接に関連し、剣道部内の人間関係を背景として行われたものであるから、「職務を行うについて」に該当する。 サ H学生による暴行等(不法行為11)平成28年2月1日、剣道部の寒稽古において、H学生が原告に向かって、「3年生、もっと打て、声を出せ!」と強い口調で挑発するように繰 り返した上、原告に近付き、原告が着けていた面の上から、右頭部側面を押して、原告の身体を体育館の壁にぶつけた。同月5日、部員全員で素振りをしている際、H学生が、原告の耳元にわざわざ顔を近付け、「声が出てないじゃないですか。」と揶揄するように発言した。次の稽古に移った際、原告は、H学生に対する怒りを抑えられず、H学生を後ろから木刀で 叩いたところ、取っ組み合いになり、H学生は、原告の頭部を木刀で殴り、 首を絞めるなど過剰な反撃を加えた。同月1日にH学生が原告を押してその身体を体育館の壁にぶつけたことは明らかに暴行に当たるし、同月5日のH学生の行為も、原告を挑発して自己に対する暴行を誘引した上それに乗じて過剰な反撃を行ったのであるから、違 H学生が原告を押してその身体を体育館の壁にぶつけたことは明らかに暴行に当たるし、同月5日のH学生の行為も、原告を挑発して自己に対する暴行を誘引した上それに乗じて過剰な反撃を行ったのであるから、違法である。 H学生の行為は、剣道部の活動を利用して行われており、職務行為を契 機として、それと密接な関連性を有するから、「職務を行うについて」に該当する。 シ窃盗被害(不法行為12)平成28年3月29日から同年5月24日までの間、原告のパソコンのハードディスク2点、USB2点、マウス、マウスパッド、ヘッドホン等 が盗まれた。また、同期間、剣道で使用する木刀等を盗まれた。 学生舎での窃盗については室長であったI 学生が管理責任を怠ったことが、剣道部内での窃盗については部長であったG学生が管理責任を怠ったことが、それぞれ不法行為を構成し、「職務を行うについて」に該当する。 (被告国の主張) 国賠法1条1項は、損害賠償義務発生の要件として、公権力の行使に当たる公務員が「違法」に他人に損害を加えたことが必要であると規定しているが、これは、権利侵害があることを前提に、さらに、その公権力の行使に当たって、公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背することを要する。そして、国賠法上の違法性の有無は、被侵害利益の種類、性 質、侵害行為の態様及びその原因、被害者側の関与の有無、程度並びに損害の程度等の諸般の事情を総合的に判断して決すべきものであり、公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず、漫然と当該行為をしたと認め得るような事情がある場合に限り、違法の評価を受けるに過ぎない。原告の主張する各不法行為については、以下のとおり、いずれも成立しない。 ア不法行為1について E学生は め得るような事情がある場合に限り、違法の評価を受けるに過ぎない。原告の主張する各不法行為については、以下のとおり、いずれも成立しない。 ア不法行為1について E学生は、原告の主張するような発言をしていない。横須賀病院の診療録(甲3)には、上級生から向いていない等と言われた旨の記載があるが、同記載によりE学生がそのような発言をした事実を裏付けることはできないし、仮にE学生がそのような発言をしたとしても、原告自身、指導教官による事情聴取や医官との面談の際に上級生からの指導について自らに非 がある、ミスを繰り返したなどと述べていたことなどからすれば、指導の範囲を逸脱するものではなく、違法と評価されない。なお、「学生間指導の在り方」において行うべきではないとされる指導が直ちに違法と評価されるわけでもない。 発言の経緯や具体的状況等も明らかでないから、「公権力の行使」該当 性を判断することもできない。 イ不法行為2及び3について原告は、これまで、指導官等に対して「食いシバキ」及び「腹踏み」について全く申告しておらず、受診した医療機関でも言及していないし、訴状においても言及していなかったことからすれば、不法行為2及び3の事 実を認めることはできない。 防衛大で行われた行為であるという以上に具体的な主張がなく、「公権力の行使」、「職務を行うについて」に該当するのか明らかにされておらず、主張として失当である。 ウ不法行為4について 被告Aは、原告及び下対番を指導する立場にあったから、原告を指導する立場になかったとはいえない。原告は、下対番に対する指導を十分に行えていないと評価されていたのであり、原告の下対番に対する指導に何ら問題がなかったともいえない。また、本件調査において、被告A 導する立場になかったとはいえない。原告は、下対番に対する指導を十分に行えていないと評価されていたのであり、原告の下対番に対する指導に何ら問題がなかったともいえない。また、本件調査において、被告Aが、原告に対し、反省文の提出を強要したとの事実は確認されていない。 エ不法行為5及び6について 被告Aが、原告に対して侮辱的な発言をした事実は認められない。また、原告は、銃の整備、入室要領及び服装について不備が多く、指導されるべき事情が多く見られた。原告が被告Aの呼出しに応じなかったことは多数あったこと、複数回呼び出されたり何度もやり直しをさせられたりするのは原告に限られなかったことからしても、被告Aの原告に対する指導が、 指導を名目としたいじめであったと評価することはできない。 オ不法行為7について原告に対する理不尽な稽古が行われたことを示す証拠はなく、原告の主張する事実を認めることはできない。原告の主張によっても、他の学生も「廻し」をさせられていたことなどからすれば、原告が集中的に廻しをさ せられていたとはいえない。切り返しや打ち込みなどを相手を変えながらある程度の時間連続して行うことは、剣道の稽古として考えられないものではなく、稽古に名を借りたいじめとはいえない。 校友会活動は、任意かつ私的な性格を有していること、防衛大規則第5条1項の「学生の自発的に行う各般の行動」に位置付けられ、学生の自主 自律に委ねられており、その運営も防衛大の活動とは峻別されていることから、学生の職務には当たらず、私的活動と捉えるべきであって、職務又は職務に準ずるべきものではなく、「公権力の行使」にも「職務を行うについて」にも該当しない。 カ不法行為8について 原告がF学生から怒鳴られたり竹刀で殴 活動と捉えるべきであって、職務又は職務に準ずるべきものではなく、「公権力の行使」にも「職務を行うについて」にも該当しない。 カ不法行為8について 原告がF学生から怒鳴られたり竹刀で殴打されたりしたことについて客観的な証拠がなく、原告以外にそのような事実があったと述べている者がいないことからすれば、原告の主張する事実を認めることはできない。 不法行為7と同じ理由により、校友会活動である剣道部における学生の行為は、「公権力の行使」にも「職務を行うについて」にも該当しない。 キ不法行為9について F学生は、原告が声を出していないことを名指しして素振り100回を指示したのではなく、士気高揚を図るためにこれを指示したのであり、連帯責任を課したわけではなかった。また、「学生間指導の在り方」おいて連帯責任を伴う指導が原則として禁止されている趣旨は、指導としての効果が上がらないことにあり、効果があると考えられる場合には全員が一丸 となって取り込むための方策として自発的に行うことも許容される上、「学生間指導の在り方」に反する指導が直ちに国賠法上違法と評価されるわけでもない。結果的に連帯責任を負わされたと感じる者がおり、期待どおりの効果が得られなかったとしても、F学生が、部員全員に素振り100回を指示したことについて、違法と評価されることはない。 不法行為7と同じ理由により、校友会活動である剣道部における学生の行為は、「公権力の行使」にも「職務を行うについて」にも該当しない。 ク不法行為10について原告の主張する事実関係は認められない。原告は、平成26年9月に医官に対してふざけたところを他者に殴られたと申告しており、原告の主張 はこのような申告内容と整合しない。他方、G学生は、原告が格闘 告の主張する事実関係は認められない。原告は、平成26年9月に医官に対してふざけたところを他者に殴られたと申告しており、原告の主張 はこのような申告内容と整合しない。他方、G学生は、原告が格闘ゲームを仕掛けてG学生を殴る、蹴るなどしてきたため、警告の上殴り返した旨供述しており、J 学生(以下「J 学生」という。)も、先に手を出したのは原告であったと述べている。 不法行為7と同じ理由により、校友会活動である剣道部の練習後の学生 の行為は、「公権力の行使」にも「職務を行うについて」にも該当しない。 ケ不法行為11についてH学生は、平成28年2月当時、剣道部主将のG学生から他の部員の技術面の指導等をするよう指示されていたところ、同月1日、原告がやる気のある姿勢を見せていなかったことなどから、声を出してくださいと2、 3回注意したが、改善が認められなかったことから、さぼってんじゃねえ と言い、原告の体を自分の方に向かせるために肩を押した。H学生は、当該行為により処分を受けたが、それによって直ちに違法と評価されるわけではないし、原告とH学生の間には訴訟外の和解が成立している。 H学生が平成28年2月5日に原告に声を出すよう言った事実はない。 また、同日、原告が突然背後から木刀でH学生の後頭部を殴打してきたた め、H学生は原告ともみ合いになったが、原告の頭部を木刀で殴り首を絞めるなどの過剰な反撃を加えたという事実はなく、H学生の行為は、原告を制圧するための防衛行為として正当であった。 不法行為7と同じ理由により、校友会活動である剣道部の練習後の学生の行為は、「公権力の行使」にも「職務を行うについて」にも該当しない。 コ不法行為12について学生舎で発生した窃盗について、室長は、学生服務等通達2 校友会活動である剣道部の練習後の学生の行為は、「公権力の行使」にも「職務を行うについて」にも該当しない。 コ不法行為12について学生舎で発生した窃盗について、室長は、学生服務等通達21条4項に基づき、学生舎各室の備付物品の管理責任を負っているのであって、私物についての管理責任はないから、「職務を行うについて」に該当しているか不明である。 剣道部内での窃盗について、不法行為7と同じ理由により、校友会活動である剣道部における部室の管理は、「公権力の行使」にも「職務を行うについて」にも該当しない。 (被告Aの主張)ア被告Aが原告に対していじめ(不法行為4~6)を行ったことは否認す る。以下のとおり、いずれも指導の範囲内である。 不法行為4について被告Aは、原告を介して下対番を指導する立場にあったため、規律に従って原告を呼び出し、原告の下対番に対する指導ミスを指摘した。原告に複数回指摘せざるを得ない指導ミスがあったために複数回呼び出し たにすぎない。被告Aは、原告の指導ミスを指摘したにとどまり、問題 点の確認のために文書にしてみるよう提案したことはあり得るが、反省文の提出を求めたりこれを破ったりしていない。 不法行為5について被告Aは、中隊内の武器係として整備を間違えた者を指導する立場にあり、訓練中ではなく、全員分の武器をチェックして格納する際に、原 告の銃に安全装置の解除忘れ、規整子の固着及び錆など安全に関わる整備不良があることに気付いたため、原告を数回呼び出したにすぎない。 平成25年11月の開校祭パレードの訓練に伴い、銃の整備訓練が繰り返された中で、毎回整備を間違う者が4、5人生じたことから、これらの者に対して指導したもので、原告もその一人であり、訓練中 すぎない。 平成25年11月の開校祭パレードの訓練に伴い、銃の整備訓練が繰り返された中で、毎回整備を間違う者が4、5人生じたことから、これらの者に対して指導したもので、原告もその一人であり、訓練中には時間 的に指導することが困難であったことから、別の機会に呼び出した。被告Aが原告を罵倒したり嘲笑したりしたことはなく、原告は呼び出しても来訪しないことがあり、理由なく原告を無視したり追い返したりしていない。 不法行為6について 被告Aは、上述のとおり武器係としての立場から、原告に対し、銃の格納の不備ではなく、銃の整備不良について指導した。原告が過呼吸を起こした際は、介抱の上、上司に連絡し医務室に連れて行ってもらった。 なお、被告Aは原告が平成26年11月に過呼吸になったことを知らなかった。 イ国賠法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員個人は民事上の損害賠償責任を負わない。被告Aは、あくまで職務として原告を指導したものであるから、免責される。 安全配慮義務違反の有無(原告の主張) 被告国は、原告が防衛大の学生として学生生活を送るに際し、原告の生命や健康に対する危険から、原告の安全を確保する安全配慮義務を負っていた。 原告が防衛大に入学した平成25年当時、防衛大におけるいじめの蔓延が深刻な状況になっていたこと鑑みて、被告国は、防衛大でのいじめを認識した場合には、直ちにこれをやめさせるべき法的義務を負っていたが、これを怠 った。具体的には、以下のとおりである。 ア B二尉の平成25年11月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反1)原告は、平成25年11月にリストカットに及んだ後、B二尉から事情を聞かれ、上級生からの指導がつらいことを話した。また、横須賀病 二尉の平成25年11月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反1)原告は、平成25年11月にリストカットに及んだ後、B二尉から事情を聞かれ、上級生からの指導がつらいことを話した。また、横須賀病院精 神科での診察の際、行き過ぎた学生間指導がリストカットの原因であったことを述べていた。 これらのことからすれば、B二尉は、平成25年11月の時点で、原告が上級生からの指導によって強い心理的負荷を受けていることを認識することが可能であり、実際に認識していたのであるから、原告及び周囲の学 生に対する事情聴取等を行うことで、原告に対して行われていた上級生からの指導の具体的内容を確認するとともに、不適切な指導が行われている実態があれば、それをやめさせる義務があった。 しかし、B二尉は、原告及び周囲の学生に対する事情聴取等を行わず、原告に対して行われていた上級生からの不適切な指導を把握することを怠 った。 イ B二尉の平成26年2月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反2)上記アと同様に、B二尉は、原告が最初に過呼吸を起こした平成26年2月の時点で、原告及び周囲の学生に対する事情聴取等を行うことで、原告に対して行われていた上級生からの指導の具体的内容を確認するととも に、不適切な指導が行われている実態があれば、それをやめさせる義務があった。 しかし、B二尉は、原告及び周囲の学生に対する事情聴取等を行わず、原告に対して行われていた上級生からの不適切な指導を把握することを怠った。かえって、B二尉は、原告について、ため込んで我慢をする性格で ありストレス発散の方法を見つけるよう指導することが必要などと誤った評価をし、2学年時における対応が引き続き不十分なものとなる原因を作った。 ウ C一尉の平成 て、ため込んで我慢をする性格で ありストレス発散の方法を見つけるよう指導することが必要などと誤った評価をし、2学年時における対応が引き続き不十分なものとなる原因を作った。 ウ C一尉の平成26年11月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反3) 原告は、平成26年11月12日、被告Aからの不適切な指導(不法行為5)を原因として、深刻な過呼吸を発症した。原告は、その翌日、C一尉との面談の中で、被告Aから受けた指導の内容を伝えており、原告の指導記録(乙4〔14頁〕)には、被告Aの不適切な指導が「原因で過呼吸となった」などと記載され、防衛大衛生課長から横須賀病院宛ての同月1 4日付診療依頼書には、上級生から強い指導があり、過呼吸となった旨が記載されていた。なお、原告は2学年時のメンタルヘルスアンケートで「死にたくなる」の欄にチェックを付けていたが、被告国は、これを改ざんしたと考えられる。 これらのことからすれば、C一尉は、平成26年11月の時点で、原告 が被告Aからの不適切な指導によって強い心理的負荷を受けていることを認識することが可能であり、実際に認識していたのであるから、被告Aに対し、厳重な注意を行い、不適切な指導は絶対に行ってはならないことを理解させ、不適切な指導を繰り返すことがないよう必要かつ十分な指導を行う義務があった。 しかし、C一尉は、被告Aに対し、上述の指導を行わなかった。そのため、被告Aは、自らの指導が不適切であることを認識せず、平成27年4月に原告に対して不適切な指導を繰り返した。 エ C一尉の平成27年4月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反4)原告は、平成27年4月に被告Aから不適切な指導(不法行為6)を受 け、過呼吸を起こし、その際、C一尉もその り返した。 エ C一尉の平成27年4月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反4)原告は、平成27年4月に被告Aから不適切な指導(不法行為6)を受 け、過呼吸を起こし、その際、C一尉もその場に居合わせていた。原告の指導記録(乙4〔19頁〕)には、「A学生の度重なる呼出しにより過呼吸を発症」などと記載されていた。 これらのことからすれば、C一尉は、平成27年4月の時点で、原告が被告Aからの不適切な指導によって強い心理的負荷を受けていることを確 実に認識していたのであるから、被告Aに対し、厳重な注意を行い、不適切な指導は絶対に行ってはならないことを理解させ、不適切な指導を繰り返すことがないよう必要かつ十分な指導を行う義務があった。また、原告が何度も過呼吸を起こしていることから、原告を軽んじ、馬鹿にする雰囲気が生まれていたから、C一尉は、原告の過呼吸が被告Aによる不適切な 指導を原因とするものであることを他の教官や学生らに認識させ、原告を馬鹿にする雰囲気を払拭させる義務があった。 しかし、C一尉は、被告Aに対し、上述の指導を行わず、原告の過呼吸の原因が被告Aによる不適切な指導を原因とするものであることを他の教官や学生らに認識させることも行わなかった。そのため、過呼吸を理由と して原告を軽んじ、馬鹿にする風潮が蔓延することにつながった。 オ D一尉の平成27年8月及び平成28年2月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反5)廻しの強要、F学生による暴行等、素振り100回の強要(不法行為7~9)のような原告に対する理不尽な指導や他の部員にも連帯責任を課す 指導は、日常的に行われており、H学生は、日頃から原告を馬鹿にし、嘲 けるなどしていた。また、剣道部の顧問であったD一尉は、平成27年8月 尽な指導や他の部員にも連帯責任を課す 指導は、日常的に行われており、H学生は、日頃から原告を馬鹿にし、嘲 けるなどしていた。また、剣道部の顧問であったD一尉は、平成27年8月の夏合宿及び平成28年2月の寒稽古のいずれにも参加した。 これらのことからすれば、D一尉は、平成27年8月の夏合宿において不法行為7~9が行われた時点で、剣道部内で行われていた原告に対する理不尽な指導や他の部員にも連帯責任を課す指導及びH学生が原告を馬鹿 にしていることについて認識することが可能であり、実際に認識していたのであるから、上述の指導をやめさせる義務及びH学生に対して厳重な注意を行い原告に対する陰湿な嫌がらせをやめさせる義務があった。 しかし、D一尉は、このような対応を怠り、そのため、剣道部内では、原告を軽んじ、馬鹿にする風潮が広く蔓延し、平成28年2月1日の寒稽 古中にH学生による暴行等(不法行為11)が生じるに至った。 D一尉は、不法行為11が行われた平成28年2月1日の時点でも、H学生に対して厳重な注意を行い、原告に対する陰湿な嫌がらせをやめさせる義務があったが、これを怠った。 カ D一尉の本件傷害事件後の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反6) 本件傷害事件について、事実関係を正確に把握していれば原告を加害者として扱うことが誤りであることは容易に認識できることであったから、D一尉は、平成28年2月5日の本件傷害事件の時点で、原告及びH学生並びに剣道部の学生から丁寧に聞きとりを行い、H学生が加害者であって、原告が被害者であるという実態を把握し、それを踏まえた対応をする義務 及び原告に精神科への受診を勧め、原告が早期に精神科を受診できるように環境を整える義務があった。 しかし、D一尉は、これらを怠り、 害者であるという実態を把握し、それを踏まえた対応をする義務 及び原告に精神科への受診を勧め、原告が早期に精神科を受診できるように環境を整える義務があった。 しかし、D一尉は、これらを怠り、原告を加害者として扱い、防衛大は、平成28年3月に原告のみ留年処分とした。原告は、警務隊から本件傷害事件について事情聴取を受けたが、D一尉ら教官らに対して事情を説明す る機会や弁明の機会を与えられることなく、上記処分を通知されたことに強い精神的打撃を受けた。 (被告国の主張)防衛大の学生は、防衛大から教育訓練の場を指定され、その供給する設備、器具等を用い、配置された職員の指導、監督のもとに教育訓練を受け るから、防衛大の設置者である被告国は、信義則上、学生に対し、教育訓練義務遂行のために設置すべき場所、施設、器具の設置及び管理または防衛大職員の指導監督の下に遂行する教育訓練の管理に当たって、さらに、学生舎生活についても教育的立場からこれを規律し、管理する権限を有していることから、その管理、教育権限に対応する範囲内で、いずれも学生 の生命、身体、健康等を危険から保護するように配慮すべき安全配慮義務を負う。しかし、原告に対するいじめは認められないし、仮にそのような事実があったとしても、被告国は、原告に対し、社会通念に照らし相当と評価される措置を講じており、安全配慮義務に違反していない。具体的には以下のとおりである。 ア安全配慮義務違反1及び2についてそもそも、E学生による不法行為1~3の事実は認められない。 B二尉は、原告のリストカットが判明した平成25年11月22日、同月25日、平成26年1月5日及び同月7日に原告と面談をしたが、原告は、その際、「指導に関しては自分に非があることである。」 ない。 B二尉は、原告のリストカットが判明した平成25年11月22日、同月25日、平成26年1月5日及び同月7日に原告と面談をしたが、原告は、その際、「指導に関しては自分に非があることである。」などと述べ、 不法行為1~3について話をしていなかったから、B二尉は、これらに係る事実を認識していないし、認識し得たともいえない。また、原告が平成26年2月に過呼吸を起こしたことを裏付ける証拠はなく、B二尉もかかる事実を認識していない。また、E学生は、原告がリストカットをしているのが判明してから指導を極力控えたと述べ、原告自身もE学生からの指 導はなくなったと主張しているから、B二尉が、E学生の指導をやめさせる義務を怠ったとはいえない。 イ安全配慮義務違反3についてC一尉は、平成26年11月に原告が過呼吸を起こした際、原告及び被告Aから事情を聴いた上、被告Aに対し、指導を行う際には相手方の状況 をよく把握して指導の方法を選択する必要があること等の指導を行った。 原告が被告Aから呼び出されることはそれ以降平成27年4月までなかったのであるから、C一尉が被告Aに対する注意や必要な指導を怠ったとはいえない。 ウ安全配慮義務違反4について C一尉は、平成27年4月に原告が過呼吸を起こした際、原告及び被告Aから事情を聴いた上、被告Aに対し、指導の重点が入室要領に移っていったことについて、不適切な指導を改めるように厳しく指導した。被告Aの指導が不適切とされたのは、指導の重点が銃の指導から入室要領等の指導に移っていったことが理由であって、いじめと評価されたからではない。 原告が被告Aから呼び出されることはそれ以降なかったのであるから、C一尉が被告Aに対する注意や必要な指導を怠ったとはいえない。また、 いったことが理由であって、いじめと評価されたからではない。 原告が被告Aから呼び出されることはそれ以降なかったのであるから、C一尉が被告Aに対する注意や必要な指導を怠ったとはいえない。また、C一尉が被告Aの指導に問題があったと周知をしなければならないという原告の主張の根拠も不明である。 エ安全配慮義務違反5について そもそも、原告が不法行為7~9及び11に係るいじめを受けていたという事実は認められない。D一尉は、不法行為9について、F学生が、声を出していない部員がいたとして部員全員に素振り100回を指示していたことを認識していなかったし、不法行為11について、平成28年2月1日のH暴行を目撃していなかったから、原告の主張するような義務を負 っていたとはいえない。 オ安全配慮義務違反6についてD一尉は、本件傷害事件について、原告及びH学生から事情聴取し、剣道部において学年ごとのミーティングを行うなど再発防止の措置を講じた。 H学生が原告に対して嫌がらせ行為を行った事実は認められない上、仮に本件傷害事件に至る経緯が原告の主張するようなものであったとしても、 原告は、竹刀よりも危険性の高い木刀を用いて、H学生を後方から不意打ち的に殴打したもので、場合によっては命に関わる危険な行為であり、結果としてH学生に傷害を負わせたのであるから、それを原因として処分を行ったことが安全配慮義務違反となる余地もない。 因果関係の有無 (原告の主張)原告は、不法行為及び安全配慮義務違反により、心理的負荷の累積を受け、適応障害から平成28年4月にうつ病を発症するに至り、同年10月頃から言葉を発することが困難な状態となり、この状態は現在まで続いている。 心理的負荷の累積が精神疾患を発症する可能 荷の累積を受け、適応障害から平成28年4月にうつ病を発症するに至り、同年10月頃から言葉を発することが困難な状態となり、この状態は現在まで続いている。 心理的負荷の累積が精神疾患を発症する可能性を高めるとともに、精神疾 患からの回復をより困難にすることからすれば、各不法行為又は各安全配慮義務違反と原告の損害との因果関係の有無を個別的に検討することは相当ではなく、不法行為及び安全配慮義務違反全体と原告の損害との間で因果関係の有無を判断すべきである。 (被告国の主張) 原告は、不法行為1~12及び安全配慮義務違反1~6をそれぞれ別個の不法行為及び安全配慮義務違反として主張しているのであるから、これらと損害との間の因果関係は個別に判断されるべきである。しかし、原告は、各不法行為及び各安全配慮義務違反と損害との間との具体的な因果関係を主張立証していない。原告は、不法行為及び安全配慮義務違反全体と損害との間 で因果関係の有無を判断すべきと主張するが、その法的根拠は明らかでない。 原告が、分限退校となるまで防衛大に復学しなかったのは、原告自らの意思によるし、仮に原告に対するいじめ(不法行為1~12)があったとしても、そのことと原告の退校との間に因果関係があるとはいえない。また、原告は、平成28年6月22日に帰郷療養した時点では、問題なく会話できていたのであり、仮にその後言葉を発することが困難になっているとしても、 その主な原因は、原告の家庭環境、留年及びH学生に対する処分と原告に対する処分の差に関する不満にあるというべきであり、不法行為や安全配慮義務違反との間に因果関係があるとはいえない。 (被告Aの主張)争う。 ⑷ 損害(原告の主張)ア医療費 8万0110円 あるというべきであり、不法行為や安全配慮義務違反との間に因果関係があるとはいえない。 (被告Aの主張)争う。 ⑷ 損害(原告の主張)ア医療費 8万0110円原告は、防衛大で受けたいじめを原因として、心身に変調を生じ、病院に通院した。 イ通院交通費 23万3760円ウ休業損害 180万5940円休学や退校がなければ支給されたはずの学生手当及び期末手当相当額である。 エ逸失利益 3036万2794円 原告には、後遺障害等級第9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの」に該当する後遺障害が生じており、原告の逸失利益は、3036万2794円(平成29年の全労働者・全年齢平均の賃金額491万1500円×労働能力喪失率0.35×労働能力喪失期間44年に対応するライプニッツ係数1 7.6628=3036万2794円)となる。 オ慰謝料 906万円通院慰謝料216万円、後遺障害慰謝料690万円の合計額である。 カ物的損害 15万8400円盗難被害にあった物品の価額合計額である。 キ弁護士費用 417万円 ク合計 4587万1004円(被告国の主張)争う。 (被告Aの主張)争う。 消滅時効の完成の成否(被告国の主張)原告は、平成28年6月22日に帰郷療養し、その後復学していないから、遅くともその時点で加害者及び損害の内容を認識したといえ、既に3年が経過し、消滅時効が完成している。 また、上記⑶のとおり、原告が主張する現在の症状は、原告の不満といったものが原因というべきであり その時点で加害者及び損害の内容を認識したといえ、既に3年が経過し、消滅時効が完成している。 また、上記⑶のとおり、原告が主張する現在の症状は、原告の不満といったものが原因というべきであり、E学生、被告A、剣道部の部員及び指導教官らの行為に起因するものではないから、仮にこれらの者の行為について被告国の国賠法上の責任が認められるとしても、平成28年6月22日より前の時点から消滅時効期間が進行し、既に完成している。 さらに、仮にE学生及びB二尉の行為について被告国の国賠法上の責任が認められるとしても、その結果発生した適応障害は、遅くとも平成26年春頃には治癒しているから、その時点から消滅時効期間が進行し、既に完成している。 被告国は、各消滅時効を援用する。 (被告Aの主張) 被告Aによる行為及びその結果の発生は、遅くとも平成26年11月で終了しており、その時点から時効期間が進行し、既に完成している。 また、原告は、遅くともうつ病にり患した平成28年4月の時点で損害の発生を知っていたというべきであり、その時点から消滅時効期間が進行し、既に完成している。 被告Aは、各消滅時効を援用する。 (原告の主張)不法行為によって被害者が精神疾患を発症した場合、その症状は流動的で治療が継続している間は損害を確定させることが困難であるから、精神疾患が完治した時点あるいは治療を継続しても完治せず後遺障害となった時点で 損害が確定し、消滅時効期間が進行し始める。原告のうつ病は、退校を命じられた平成29年9月20日まで治癒することなく継続していたから、同時点から消滅時効期間が進行する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実に加え、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認め 月20日まで治癒することなく継続していたから、同時点から消滅時効期間が進行する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実に加え、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 1学年時ア原告は、平成25年4月26日、剣道部に入部した(乙4〔8頁〕)。 イ平成25年の夏季休暇後、学生舎の部屋替えが行われ、同年度中期(同 年9月から12月まで)、原告とE学生が同室になった(甲42)。 ウ E学生は、平成30年3月26日、防衛大からの問い合わせに対し、次のように答申した(乙3)。 中央観閲式訓練参加の日朝点呼に、同室の1学年であった原告ともう1名の学生が遅れたことがあり、廊下から早く出るよう催促したところ、 原告が同期を置いたまま部屋から出てきたことから、迅速に行動しなけ れば指導される場面であっても同期と一緒に行動し、置いてくることがないよう指導したことがある。 居室で名札を作成した際、原告に名札の土台になるプレートを渡したが、原告が提出した完成品が1枚分足りなかった。原告に確認すると他に受領していないという認識であったため、部屋を捜索したところ、原 告の持物の中からプレートが発見されたため、任された仕事は責任をもって行うこと、自分のミスを人のせいにせず自分の非を認めることを指導したことがある。 エ原告と平成25年度前期に同室であった同期(61期)のK学生は、平成30年3月27日付陳述書において、原告は、同期の輪に入ってくるこ とが少なく、基本動作や服装について不備が多く、特に同年度中期以降は、原告の成長が遅く、できないことが目につくようになり、上級生等からよく不備を指摘され、指導される回数が多くなってきたように思う旨を陳述している(乙2) 服装について不備が多く、特に同年度中期以降は、原告の成長が遅く、できないことが目につくようになり、上級生等からよく不備を指摘され、指導される回数が多くなってきたように思う旨を陳述している(乙2)。 オ原告の指導記録には、1学年前期について、真面目であるが内気な学生 である旨、同後期について、前期と比較して改善されつつあるが、内にため込みやすい傾向があるため注意が必要な学生であるとの所見が記載されている(乙4〔7頁〕)。 カ平成25年11月21日夜、同室の4学年生が原告の左手首に自傷行為(リストカット)の跡(長さ4cm、深さ1mm以下、間隔7mm程度× 7本)を発見し、翌22日早朝に原告の小隊指導教官であったB二尉に報告した(乙4〔9頁〕)。 同日に行われたB二尉の聞き取りに対し、原告は、「官品放置等同じ事を何回か繰り返してしまい指導を受け、心のもやもやがピークを越えた時に衝動的にカッターで手首を切ってしまった。手首を切ったのは15日 (金)と21日(木)、中休み等に指導を受けた後、自習時間で無人の寝 室内で切った。前期にも指導を受けて心のもやもやがピークを越えた時に枕等の物に当たってしまっていたことがある。指導に関しては自分に非があることである。今は心のピークは過ぎているので問題ない。防大も続けたい。」と答えた。原告は、同日、メンタルヘルス係及び衛生課長とも面談し、同月25日に横須賀病院精神科を受診するよう指示された。衛生課 長の判断は、一時的なストレスによる発作的行動で、希死観念は薄いというものであり、B二尉も同意見であった。B二尉は、原告の父に連絡をとり、同月23日に原告の父が来校した際に原告から自傷行為について説明することになったが、原告は父に対して自傷行為のことは告げなかった。 のであり、B二尉も同意見であった。B二尉は、原告の父に連絡をとり、同月23日に原告の父が来校した際に原告から自傷行為について説明することになったが、原告は父に対して自傷行為のことは告げなかった。 (乙4〔9頁〕、原告反対尋問〔10頁〕) キ原告は、平成25年11月25日、防衛大医務室の医官の紹介により横須賀病院精神科を受診し、適応障害と診断された(甲3〔2、13頁〕)。 原告は、診察の際、上級生から向いていない、やめろなどと指導を受けたのに、また同じミスを繰り返してしまい指導されることがストレスであった、以前から物忘れが多い性格であり、帽子掛けに帽子を掛けずに床に置 く、名札を失くすミスを繰り返したなどと話した(甲3〔2、5頁〕)。 原告は、同日、帰郷療養が必要と判断され、B二尉等からしっかりリフレッシュするように指導を受け、同日から自宅に戻り療養した(乙4〔10頁〕)。同年12月2日の帰校時、原告は防衛大を続ける意思に変化はない旨述べ、B二尉は、原告に対してストレスがたまってきたら周囲の者に しっかりと伝えるよう指導し、原告の父に対しても連絡の上、原告の意思を尊重するとの確認を得た(乙4〔10頁〕)。 ク原告は、平成25年12月9日及び平成26年1月16日に横須賀病院精神科を受診し、だいぶ落ち着いた、調子は良いなどと述べ、同日の受診後、医官からも精神的に安定しており問題ないとの判断がされた(甲3 〔7、8頁〕、乙4〔10頁〕)。原告は、同月5日の休暇終了後面接の 際も、健康状態及び心情の変化につき、変化なし、良好と答えた(乙4〔10頁〕)。 ケ原告は、平成26年1月以降E学生とは居室が別になり、E学生から指導を受けることはなくなった(甲42)。 2学年時 ア原告は、平成26 変化なし、良好と答えた(乙4〔10頁〕)。 ケ原告は、平成26年1月以降E学生とは居室が別になり、E学生から指導を受けることはなくなった(甲42)。 2学年時 ア原告は、平成26年4月、2学年に進級し、下対番を指導する役割を担うことになった。被告Aは、カッター訓練期間中の同月中旬頃、下対番が入室要領演練において服務規律違反を犯したとの理由で原告を呼び出し、原告による下対番の指導につき指導した。 イ平成26年4月24日、春季カッター競技会が開催された(乙4〔13 頁〕)。カッター訓練期間の終了後、原告は同年10月まで被告Aから呼び出されることはなかった(甲42)。 ウ原告は、平成26年5月26日、横須賀病院精神科を受診し、心情も安定しており、今後通院の必要はないと診断された(甲3〔1、9頁〕、乙4〔13頁〕)。 エ原告は、平成26年9月24日、防衛大医務室の医官に対し、前日にシャワー室でふざけて他者に右側頭部を殴られ、拍子で左側頭部を壁にぶつけた旨話し、その紹介により横須賀病院脳神経科を受診し、明らかな異常は認められず脳震盪が疑われる旨診断された(甲3〔30頁〕)。 オ被告Aは、平成26年10月頃、中隊内で武器の整備を担当する武器係 (副)の職務に就いており、同年11月の開校祭パレードの訓練に使用される銃について、午後7時頃の整備訓練後に返却された際に問題があった場合、その銃の利用者が誰かを調べて呼び出し、指導をする立場にあった。 銃に問題があったとして被告Aに呼び出された者の中には原告もいた。時期は明確ではないものの、原告は、少なくとも安全装置の間違いがあった 問題及び規整子を異常に錆びさせて長期間にわたり整備しなかった結果銃 を錆びだらけにする問題を起こし、被告A 期は明確ではないものの、原告は、少なくとも安全装置の間違いがあった 問題及び規整子を異常に錆びさせて長期間にわたり整備しなかった結果銃 を錆びだらけにする問題を起こし、被告Aに呼び出され指導を受けた。 (乙40、丙3、被告A〔31、32頁〕)。 カ平成26年11月12日、原告は、過呼吸を発症した。C一尉は、原告から事情を聞き取り、被告Aによる指導が過呼吸の原因である旨、指導の内容が不適切だったということもあるが、原告のストレスに対する耐性が 他の学生に比して弱くそれが改善されていない旨判断し、原告に対し、ストレスを感じた際に、それをどうやって乗り越えるかということに関してまだ十分ではないため、それを自分で考えるよう、周囲の上級生に相談したり頼ったりすることについてより積極的に行うよう指導した(乙4〔14頁〕)。また、C一尉は、この件について、中隊指導教官及び大隊指導 教官に報告し、被告Aの指導教官にも情報共有した(証人C一尉〔5頁〕)。 キ原告は、衛生課長に対して上級生から強い指導を受けて過呼吸を起こした旨話し、その紹介により横須賀病院精神科を受診し、診断の必要はなくストレスに対する反応と判断された(甲3〔14頁〕)。C一尉は、被告 Aからも事情を聞き取り、原告に対する指導方法について注意した(証人C一尉〔3頁〕)。原告は、その頃以降平成27年4月まで、被告Aから呼び出されることはなかった。 ク原告は、平成27年1月26日の冬期休暇明け面接において、下級生指導についてある程度自分の考え方を相手に伝えることができるようになっ た、学業や校友会に対して熱心に取り組めなかったと話した(乙4〔15頁〕)。原告の指導記録には、2学年前期について、おとなしく、自分から余り考えを言わない旨、同 伝えることができるようになっ た、学業や校友会に対して熱心に取り組めなかったと話した(乙4〔15頁〕)。原告の指導記録には、2学年前期について、おとなしく、自分から余り考えを言わない旨、同後期について、あらゆることに消極的であり、辛いことから逃げようとする傾向がある旨の所見が記載されている(乙4〔12頁〕)。 3学年時 ア被告Aは、平成27年4月頃、中隊内で武器係(正)となった。その頃、被告Aは、銃に問題があったとして原告を呼び出した(丙3)。 イ原告は、平成27年4月14日、被告Aの面前で過呼吸を発症し、C一尉による聞き取りに対し、被告Aによる指導が原因である旨話した(乙4〔19頁〕)。C一尉は、被告Aからも事情を聴取し、被告Aが原告を呼 び出しながら不在であったり武器の件以外での指導を繰り返していたりしたとして、被告Aに対して不適切な指導を改めるよう指導するとともに、原告に対して自分で対処できないようなストレスについては必ず相談するよう指導した(乙4〔19頁〕、証人C一尉〔5頁〕)。それ以降、被告Aが原告を呼び出すことはなくなった。C一尉は、この件について、中隊 指導教官に報告し、被告Aの指導教官にも情報共有した(証人C一尉〔7頁〕)。 ウ原告は、夏季休暇により帰省中の平成27年8月11日午前7時頃、解熱剤などを大量に服薬したとして、羽生総合病院を受診した(甲50)。 診療録(甲50〔2頁〕)には、「意識清明歩行可ふらつきなし」 「昨夜23時市販薬バファリン10錠ハピコム20錠内服した」「ストレス? アルコール(梅酒400ml)位も同時摂取」などの記載がある。原告は、看護師にも家族にも自殺を図った旨の説明はしておらず(原告反対尋問〔16頁〕)、防衛大に対して大量 20錠内服した」「ストレス? アルコール(梅酒400ml)位も同時摂取」などの記載がある。原告は、看護師にも家族にも自殺を図った旨の説明はしておらず(原告反対尋問〔16頁〕)、防衛大に対して大量服薬したことを伝えなかった(原告主尋問〔26頁〕)。 エ平成27年8月、剣道部の夏合宿が行われ、原告を含む防衛大の学生約60名、他大学の学生約15名、防衛大の職員及び部外顧問の約10名が参加した(証人D一尉〔5頁〕)。当時剣道部主将であったF学生は、夏合宿中、原告やその他の部員がさぼっていたことを理由に部員全員に素振り100回を命じたことがあった(証人F学生〔7、23頁〕)。 オ平成28年2月1日から約1週間にわたり、午前6時から7時までの約 1時間、剣道部の寒稽古が行われ、原告を含む防衛大の学生約60名、防衛大の職員及び部外顧問の約10名が参加した(証人D一尉〔7頁〕、原告補充尋問〔37頁〕)。レギュラーであったH学生は、寒稽古中、左手に怪我(左尺骨突き上げ症候群)があったためジャージ姿でコーチの役割をしていた。原告は、H学生から「もっと打て、声を出せ」などと強い口 調で言われた。その後、H学生が、「サボってんじゃねえよ」と言って原告の上半身(面の上から右頭部側面又は右肩付近)を押し、体育館の端にいた原告は壁にぶつかった。原告が、持っていた竹刀で床を叩いたところ、H学生は「何逆ギレしてんだよ」などと言った。稽古終了後、原告は、H学生に「ごめん」と声をかけたが、何の反応も示さなかったことから、H 学生に対して不満を感じるようになった。(乙6、9)カ平成28年2月5日、原告は、体育館1階で竹刀を用いた素振り中にH学生から「声が出てないじゃないですか」などと言われた。原告は、面と小手を着け次の 対して不満を感じるようになった。(乙6、9)カ平成28年2月5日、原告は、体育館1階で竹刀を用いた素振り中にH学生から「声が出てないじゃないですか」などと言われた。原告は、面と小手を着け次の稽古に入った際、たまたま持参していた木刀を竹刀袋から取り出し、体育館2階に上がり、同所でジャージ姿でランニングをしてい たH学生に対し、後ろから木刀を振り下ろし、その後頭部を殴打した。H学生は木刀を取り上げようと原告を押さえたが、原告はさらに面を着けた状態でH学生の顔面に頭突きをした。その後、H学生は、原告を投げ飛ばし、最終的に馬乗りになって原告を押さえつけ、これに教官らが気付き、原告及びH学生を離した。(乙4〔21頁〕、乙8、9、証人H学生〔6 ~9頁〕、原告反対尋問〔27頁〕)D一尉は、原告及びH学生から事情を聞き取り、同日夜、H学生の中隊指導教官に本件傷害事件について情報共有した(乙5、証人D一尉)。H学生は、D一尉からの聞き取りの際、H暴行については話をしなかったが、同月15日までに自らの指導教官に報告した(証人H学生〔9、33 頁〕)。 キ C一尉は、中隊指導教官から本件傷害事件について連絡を受け、平成28年2月8日、同月29日及び同年3月7日に原告と面談した(乙4〔22頁〕、証人C一尉〔10頁〕)。D一尉が本件傷害事件について警務隊に相談したところ、警務隊が今後原告に対する捜査を行うこと及び事件性の判断によっては当事者間の和解の成否にかかわらず刑事処分の可能性が あるという方針が示された(乙4〔22頁〕)。D一尉は、同年2月15日、原告の両親及びH学生の両親に対して電話で状況説明を行った(乙4〔22頁〕)。また、D一尉は、剣道部の学年ごとのミーティングを行った(証人D一尉11頁)。 22頁〕)。D一尉は、同年2月15日、原告の両親及びH学生の両親に対して電話で状況説明を行った(乙4〔22頁〕)。また、D一尉は、剣道部の学年ごとのミーティングを行った(証人D一尉11頁)。 ク平成28年2月16日、D一尉立会の下、原告とH学生との間で、同月 5日に行われたH学生の原告に対する暴行及び原告のH学生に対する傷害行為に関し、和解が成立した(甲51の1・2)ケ H学生は、平成28年2月26日、鼻骨骨折及び頭部打撲の診断を受けた(乙8、証人H学生〔9頁〕)。 コ平成28年3月頃から同年6月頃まで、H暴行及び本件傷害事件につい て、第13中隊次席指導教官による原告、H学生、D一尉に対する調査が行われ、供述調書(乙5、6、8、9)が作成された。なお、原告は、平成28年6月21日付供述調書(乙9)の内容を、平成29年9月12日付供述調書(乙7)で一部修正した。 サ平成28年3月上旬頃、警務隊は、検事からの指導により本件傷害事件 を立件し検察に送致することとした(乙4〔22頁〕)。 シ原告は、平成28年3月17日、本件傷害事件が「重大な場合に該当する暴力事件」であることを理由に、服務留年となった。 ⑷ 留年後ア原告は、平成28年3月29日、宮原メンタルクリニックを受診し、抑 うつ状態であり自宅療養が必要であるとの診断を受けたため、同年5月2 4日まで帰郷療養し、同年6月4日まで宮原メンタルクリニックに通院した(甲3〔17頁〕、甲6、乙4〔26頁〕)。 イ防衛大は、原告及びその家族との間で上記アに伴う病気休暇申請に関して連絡をとるとともに、原告の父からの問い合わせに対し、同年4月22日、H暴行及び本件傷害事件に関して同時点までの調査で確認された内容 を報告した(甲48 との間で上記アに伴う病気休暇申請に関して連絡をとるとともに、原告の父からの問い合わせに対し、同年4月22日、H暴行及び本件傷害事件に関して同時点までの調査で確認された内容 を報告した(甲48)。原告の父は、同月24日付の手紙において、原告がいじめにあっていたと申告し、同年5月16日にH学生の懲戒調査が進展しないことなどについて不満を述べた(甲49、乙4〔25、26頁〕)。 ウ防衛大において、平成28年5月23日から平成29年4月26日まで、 防衛大の学生による原告に対するいじめがされたか否かにつき、本件調査が行われた(乙1)。 エ原告は、平成28年5月24日、帰校した。原告は、同月25日、衛生課長及びメンタルヘルス係長と面談し、サポート体制確立のため横須賀病院に通院するよう指示され、その頃、中隊指導教官及び小隊指導教官に付 き添われて横須賀病院精神科を受診した。原告は、受診の際、春休み中に大量服薬などの自傷行為があって親に連れられて宮原メンタルクリニックを受診したこと、その前(平成27年8月頃)から気分が落ち込んで大量服薬をしていたことなどを話した。医師は、人間関係が築けず対処しようのない衝動からOD(オーバードーズ)に走っていたという評価をし、復 学は慎重であるべきとした。原告は、防衛大の服務室において起居し、点呼、課業整列は参加せず、講義のみを受ける状態となり、1週間ごとにメンタルヘルス係によるカウンセリングを受けた。(甲3〔10頁〕、乙4〔26、27頁〕)オ平成28年5月30日、原告から防衛大に対し、パソコン関係の私物 (外付けハードディスク2台、USB、マウス、マウスパッド)が失くな っているとの申告があり、原告が自己の自習室、寝室を捜索したが、見つからなかった(乙4 、パソコン関係の私物 (外付けハードディスク2台、USB、マウス、マウスパッド)が失くな っているとの申告があり、原告が自己の自習室、寝室を捜索したが、見つからなかった(乙4〔27、28頁〕)。 カ原告は、平成28年6月10日の定期カウンセリングにおいて、卒業まで頑張りたいという前向きな感情と死んでしまいたいという感情が入り混じっている、H学生が上級生になることだけは耐えられない、親もH家か ら慰謝料の請求がきた以降原告を責めるようになり不信感を抱くようになったなどと述べた(乙4〔27、28頁〕)。 キ原告は、平成28年6月13日、宮原メンタルクリニックからの紹介状を持参して横須賀病院精神科を受診し、4学年から下級生のいる前で強い指導を受けることがあったなどと話した(甲3〔11頁〕、乙4〔29 頁〕)。 原告は、同月16日、防衛大のメンタルヘルスアンケートに「死にたくなる」と回答した(乙13。なお、原告が2学年時のメンタルヘルスアンケートで「死にたくなる」の欄にチェックを付けていたとは本件証拠上認められない。)。 ク平成28年6月22日、原告が起居している服務室から市販の酔い止め薬4箱及び「完全自殺マニュアル」という書籍が見つかり、同書籍には、上記酔い止め薬を200錠飲めば死ぬことができる旨の記載があった。防衛大は、原告が自殺の準備をしていると考え、原告の父に自殺の恐れがある旨連絡した。原告について病気休暇処置がとられ、原告は同日から同年 9月19日まで帰郷療養した。(乙4〔30~32頁〕)。 ケ防衛大は、平成28年6月24日、原告の状況確認及び自衛隊中央病院の紹介のため原告の父に電話をかけた(乙4〔31頁〕)。原告は、同年7月5日、同病院神経精神科を受診し、カウンセリ 32頁〕)。 ケ防衛大は、平成28年6月24日、原告の状況確認及び自衛隊中央病院の紹介のため原告の父に電話をかけた(乙4〔31頁〕)。原告は、同年7月5日、同病院神経精神科を受診し、カウンセリングにおいて、「家族と過ごすのもちょっと嫌。(特に母から休学のことなどで愚痴を言われた りするため、家にいたくなくなる。)兄ともあまり会話せず。家族で頼り になる人はいないが、強いて言うなら父。」などと述べた(甲7〔3頁〕)。 コ H学生は、平成28年8月30日、H暴行により、私行上の非行(暴言・暴行)を理由として、処分を受けた(乙11)。 サ原告は、平成28年9月20日付で休学を命じられた。 シ原告の父は、平成28年10月9日、防衛大に対し、原告の留年及びH学生の戒告は不当な判断でありやり直しを求める旨、原告は剣道部全体からのいじめによって追い詰められたため調査を求める旨述べ、防衛大は、同月18日以降、2学年時のシャワールームの脳震盪などの件につき、関係学生等に聞き取り調査を行った(乙4〔33頁〕、乙1)。 ス平成29年3月21日、原告及び原告の父と防衛大との間で、原告の復学について話し合いが行われ、防衛大から原告の留年は撤回できないとの話がされた。 セ原告は、平成29年9月19日、本件傷害事件により、私行上の非行(傷害)を理由として、停学15日の懲戒処分を受け(乙10)、同月2 0日、自衛隊法48条1項に基づき、退校を命じられた(甲2)。 2 争点(不法行為の成否)についてE学生による罵倒等(不法行為1)原告は、平成25年4月頃、E学生から、些細なミス等を理由に、「死ね」、「馬鹿じゃねえの」、「向いてない」、「やめてしまえ」などの暴言 で叱責、罵倒されたと主張し、こ 罵倒等(不法行為1)原告は、平成25年4月頃、E学生から、些細なミス等を理由に、「死ね」、「馬鹿じゃねえの」、「向いてない」、「やめてしまえ」などの暴言 で叱責、罵倒されたと主張し、これに沿う原告の供述及び陳述(甲42、52。以下、供述及び陳述を併せて「供述等」という。)がある。 しかし、原告とE学生が学生舎で同室であったのは平成25年9月から12月の間であり(認定事実⑴イ)、原告は、不法行為期間をその頃からと改めるような趣旨の主張もしており、原告の主張する不法行為の期間自体が判 然としない。 また、E学生が、平成25年9月から12月までの間に、原告に対して指導を行ったことがあったことは認められるが、以下のとおり、E学生が違法な指導を行ったとは認められない。 すなわち、原告の供述等以外にE学生が「死ね」、「馬鹿じゃねえの」と発言したことを裏付ける証拠はない上、原告は、自傷行為(リストカット) 発覚後のB二尉による聞き取りや横須賀病院精神科受診の際に、上級生から防衛大に向いていない、やめろなどと指導を受けたのに同じミスを繰り返した旨や、指導に関しては自分に非がある旨を述べた一方で(認定事実⑴カ及びキ)、E学生に言及したり、上級生から強い侮辱的発言を受けるなどのいじめにあった旨は述べていなかったこと(原告反対尋問〔9頁〕等)、それ らの発言に至った経緯、時期、口調、態度などについての原告の供述等が具体性を欠くこと等からすれば、E学生がこれらの発言をしたという事実を認めるに足りない。 E学生は、原告に対する指導として記憶にあるものとして、①原告が早朝の点呼に遅れてきた際に同期を置き去りにしたことから、同期と一緒に行動 するよう指導したこと、②原告が名札の作成に必要な物品の E学生は、原告に対する指導として記憶にあるものとして、①原告が早朝の点呼に遅れてきた際に同期を置き去りにしたことから、同期と一緒に行動 するよう指導したこと、②原告が名札の作成に必要な物品の一部を紛失したことから、任された仕事は責任をもって行い、ミスを人のせいにせず自らの非を認めるよう指導したことを陳述している(認定事実ウ)。これらの指導内容は、それ自体何ら不合理なものとはいえない。また、原告の供述等によっても、原告は同じミスを繰り返すことがあり(原告反対尋問〔34 頁〕)、1学年(平成25年度)前期に原告と同室であったK学生も、原告は基本動作や服装において不備が多く、中期になってからは成長も遅かったので、上級生から不備を指摘されることが多くなったと答申していること(認定事実⑴エ)などからすれば、E学生が原告に対して過剰な指導を行っていたともいえないし、仮に、E学生において、同じミスを繰り返す原告が 防衛大での生活に向かないものと感じ、そうした趣旨の発言をしたとしても、人格権を侵害するような違法性があるとまではいえない。 なお、「学生間指導の在り方」等は、防衛大における望ましい指導の在り方を示したものではあるが、仮にこれらに文言上抵触し得る行為があったとして、直ちに違法との評価を受けるものでもない(不法行為4〜6、8及び 9についても同じ。)。 E学生による食いシバキの強要(不法行為2)原告は、平成25年10月頃、E学生から、「食いシバキ」を強要されたと主張し、これに沿う原告の供述等がある。 しかし、原告の供述等以外にこれを裏付ける証拠は存在しない。また、原 告は、防衛大在学中から本件訴訟に至るまでの間に、防衛大や医療機関に対してE学生による食いシバキや腹踏みに言及していたと しかし、原告の供述等以外にこれを裏付ける証拠は存在しない。また、原 告は、防衛大在学中から本件訴訟に至るまでの間に、防衛大や医療機関に対してE学生による食いシバキや腹踏みに言及していたとは認められない上(原告反対尋問〔11頁〕等)、本件訴訟における訴状においてすらそのような趣旨の主張をしていなかったことなどからすれば、原告の主張等の一貫性には疑問を抱かざるを得ない。 これらのことからすれば、仮に防衛大において食いシバキといういじめの形態が存在していたとしても、E学生による原告に対する食いシバキの強要があったとは認められない。 E学生による腹踏みの強要(不法行為3)原告は、E学生から、「腹踏み」を強要されたと主張し、これに沿う原告 の供述等がある。 しかし、原告の供述等以外にこれを裏付ける証拠は存在しない。また、原告の主張等の一貫性には疑問を抱かざるを得ないことは上記のとおりであって、原告の供述等する事実は認めるに足りない。 また、「腹踏み」に係る原告の供述等は、腹踏みは腹筋を鍛えるトレーニ ングの一種であり、E学生が他の学生に腹踏みしているのを目撃した際に、 そんなに痛くないから試すよう言われ、断ればどうなるかを想像して一時的に我慢することを選択し、仰向けになったところを腹踏みされ(踏まれた回数は6回ほど)、1回目はうまく腹部に力を入れることができなかったため衝撃を受けて強い痛みを感じたというものであるところ(甲42)、仮に、そのような事実があり、上級生と下級生という関係から、原告が断ることを 躊躇したという面があったとしても、原告が拒否するような発言をせず自ら仰向けになったことなどからすれば、違法性があるとまでいえない。 いずれにしろ、E学生が原告に対して違法な暴行を加 ることを 躊躇したという面があったとしても、原告が拒否するような発言をせず自ら仰向けになったことなどからすれば、違法性があるとまでいえない。 いずれにしろ、E学生が原告に対して違法な暴行を加えたとは認められない。 ⑷ 被告Aによる反省文提出の強要(不法行為4) 原告は、被告Aが、原告を指導する立場になかったにもかかわらず、平成26年4月頃、原告の下対番に対する指導不足を理由に原告を呼び出し、「お前に指導される1年生がかわいそうだ」などと言って皆に迷惑をかけたことについて反省文を書くよう強要した上、反省文を目の前で破ったなどと主張し、これに沿う原告の供述等がある。 被告Aは、カッター訓練期間中の平成26年4月中旬頃、原告の下対番が入室要領演練において服務規律違反を犯したとの理由で原告を呼び出し、原告による下対番の指導につき指導したことが認められる(認定事実⑵ア)。 3学年において、2学年が対番学生である1学年に対する指導を適切に行っているかを確認し、必要に応じて是正の措置をとることは、学生間指導とし て予定されているものであるから(前提事実⑵エ)、3学年であった被告Aは、原告を指導する立場になかったとはいえず、原告の下対番に対する指導が不足している場合に被告Aが原告に対して指導することは不相当ではない。原告の供述等によっても、新2学年の通過儀礼として位置付けられるカッター訓練期間中は、上級生による2学年に対する指導がよく行われていた ことが認められる(甲42)。そして、原告の指導教官が、原告の下級生に 対する指導について、「態度や声に自信が無く、強制力を発揮するのが苦手だという印象を受けた。」(同年9月18日)、「ほとんど指導を実施していない。根本的に人と関わるのが苦手である。」(平 対する指導について、「態度や声に自信が無く、強制力を発揮するのが苦手だという印象を受けた。」(同年9月18日)、「ほとんど指導を実施していない。根本的に人と関わるのが苦手である。」(平成27年4月1日)などと評価していたこと(乙4〔14・19頁〕)や、原告自身も下対番に対する指導が足りていなかったと供述していること(原告反対尋問〔11頁〕) からすれば、実際に原告の下対番に対する指導には不十分な部分があったと認められるから、原告が被告Aからそのことについて相応の指導を受けることはやむを得なかったといえる。 指導の態様に関し、被告Aが、原告に反省文を書かせ、これを原告の目の前で破ったことを認めるに足りる証拠はない。被告Aは、問題点の確認のた めに文書にしてみるよう原告に提案したことはあり得る旨供述しているが(被告A〔28頁〕、丙3)、仮に被告Aが、原告に指導される下対番がかわいそうなどと言って指導の不十分な点を文書にまとめるよう告げたことがあり、原告においてそれが改善点のアドバイス等に当たらない不必要な指導であると感じたことがあったとしても、人格権を侵害するような違法性があ るとまではいえない。 被告Aによる平成26年10月頃の呼出し、罵倒等(不法行為5)原告は、被告Aが、平成26年10月から同年11月にかけて、原告を自室に15回以上呼び出し、銃の扱いとは関係のないことで罵倒し、原告の人格を否定するような発言をし、言いがかりをつけて原告を追い返す等の嫌が らせを繰り返したと主張し、これに沿う原告の供述等がある。 被告Aは、その頃及び平成27年4月頃、中隊内で武器係の職務に就いており、整備訓練後に返却された銃を確認し、武器の適切な整備につき原告を含めた学生に対して指導を行う立場にあったところ、銃 がある。 被告Aは、その頃及び平成27年4月頃、中隊内で武器係の職務に就いており、整備訓練後に返却された銃を確認し、武器の適切な整備につき原告を含めた学生に対して指導を行う立場にあったところ、銃に問題があったとして原告を呼び出したことが認められる(認定事実⑵オ、同⑶ア)。本件調査 において、指導教官や他の学生から、原告について、銃の錆が酷かったが隠 そうとしており同期に咎められてしぶしぶ武器係に報告した旨、月例観閲式の度に銃の不備があった旨、パレードの訓練期間中に武器の扱いの不良及び格納時の安全装置間違いが頻発した旨が指摘されていることや(乙1〔14~16頁〕)、原告自身も、平成26年8月及び9月並びに平成27年4月に銃の錆、規整子の固着、安全装置の解除忘れがそれぞれあったと主張して いることなどからすれば、原告は、銃の整備上の問題を繰り返していたと認められるのであって、平成26年10月頃も同様の問題を起こしていたとして不自然でなく、その点に関する指導の必要性が高かったことが推認される。 銃の扱いについては危険が伴うことから、適切な整備を行うことは必須といえ、これが十分でない者に対して指導することは相当である。武器係が、整 備訓練後に返却された銃を確認していたことからすると、指導のために呼出しという態様をとったこともやむを得ないといえる。 本件調査において、C一尉は、被告Aの指導が銃のことから呼出しに応じないなどの入室要領が悪いことに重点が移っていった旨指摘しており(乙1〔16頁〕)、このことからすると、被告Aが銃の扱いとは直接関係のない 入室要領等に関しても原告に指導したことがあったとうかがえる。しかし、他の学生から、原告について、入室要領や服装容儀もその他のことも色々な面ができていない学生と が銃の扱いとは直接関係のない 入室要領等に関しても原告に指導したことがあったとうかがえる。しかし、他の学生から、原告について、入室要領や服装容儀もその他のことも色々な面ができていない学生という印象であった旨、2学年時のパレード訓練の際に申合せをしたにもかかわらず靴を磨いてこなかった旨、被告Aからの呼出しに隠れるなどして応じなかった旨が指摘されていること(乙1〔14~1 6頁〕)からして、原告には、1学年のうちに身に付けておかねばならないとされる入室要領や服装(弁論の全趣旨)のほか、呼出しに対する対応についても、指導の必要性があったと考えられる。そうすると、被告Aが、原告を呼び出した際に、入室要領や服装に不備があることを指摘したり、出直しを求めたりしたことがあったとしても、不相当とまではいえない。 被告Aは、他の学生から、口が悪い、普段は下級生をからかうことがあった、銃に関する指導の際や何度もミスを繰り返したり反省の色がなかったりする下級生に対する指導の際には、本気で怒ったり興奮して声が大きくなったりする傾向があったなどと指摘されているが、同室の複数の学生から下級生指導について暴力や暴言、威圧はなかったとも述べられており(乙1〔1 3~16頁〕)、被告Aが、原告に対し、侮辱的発言をしたり嫌がらせをしたりしたこと認めるに足りる証拠はない。被告Aは、原告に対し、大声で厳しい指導をした可能性はあるものの、直ちに指導の範囲を逸脱するものとまではいえず、いじめであり、人格権を侵害するような違法性があるとまではいえない。 原告が平成26年11月及び平成27年4月に過呼吸を発症したことを受けて、C一尉が、被告Aの原告に対する指導について不適切であるとの評価をした点についても(認定事実⑵カ、同⑶イ) えない。 原告が平成26年11月及び平成27年4月に過呼吸を発症したことを受けて、C一尉が、被告Aの原告に対する指導について不適切であるとの評価をした点についても(認定事実⑵カ、同⑶イ)、本件調査において、C一尉が、上述のとおり指導の重点が移っていったこと及び気が弱い原告が普通の指導には耐えられないことを理由に被告Aに指導をやめさせた旨を述べてい ること(乙1〔16頁〕)からすると、被告Aの指導がいじめと評価されるようなものであったことを基礎づける事情とはいえない。 被告Aによる平成27年4月頃の呼出し、罵倒等(不法行為6)原告は、被告Aが、平成27年4月頃にも、原告を自室に7、8回以上呼び出し、銃の扱いとは関係のないことで原告を罵倒し、追い返したり、呼び 出しておきながら不在を装って原告を嘲笑したりするなどの嫌がらせを繰り返したと主張し、これに沿う原告の供述等がある。 被告Aが、その頃、原告の銃に問題があったとして原告を呼び出したことは認められるものの(認定事実同⑶ア)、その理由や態様は上記と同様のものと推認され、原告が主張するように、「お前が過呼吸を起こしても、俺 は指導をやめる気はないからな。」と言い放ったなどという事実を認めるに 足りる証拠はない。そうすると、被告Aが、平成26年11月頃にC一尉から注意を受けて原告に対する指導をやめていた期間があったこと(認定事実⑵キ)や、原告を呼び出しながら不在であったことがあり得ること(認定事実イ)などを踏まえても、被告Aの原告に対する指導は、直ちに指導の範囲を逸脱するものとまではいえず、いじめであり、人格権を侵害するような 違法性があるとまではいえない。 廻しの強要(不法行為7)原告は、平成27年8月の夏合宿及び平成28年2 ちに指導の範囲を逸脱するものとまではいえず、いじめであり、人格権を侵害するような 違法性があるとまではいえない。 廻しの強要(不法行為7)原告は、平成27年8月の夏合宿及び平成28年2月の寒稽古の際、剣道部内で集中的に「廻し」を強要されていたと主張する。 しかし、原告自身、夏合宿や普段の練習では廻しは強要されておらず、寒 稽古の際のことであると供述していること(原告補充尋問〔37頁〕)からして、原告が、夏合宿で廻しの対象とされていたとは認められない。 本件調査において、L学生は、寒稽古の掛かり稽古の際に人員配分役をしていたH学生が4学年の方へ原告を回すようにしていた印象がある、F学生は原告をしごいて(鍛えて)いた印象がある旨述べており(乙1〔4頁〕)、 原告への稽古が厳しめであったことはうかがえる。しかし、寒稽古は、早朝の1時間程度の稽古にすぎなかった(認定事実⑶オ)のであるから、かかる短い練習時間中に、原告のみが終始打ち込みを続けるような不効率な練習がされていたとはやや考えにくい。また、本件調査において、L学生を含めて複数の学生が、原告は声が小さくやる気がないように見えた、だるそうにや っていたなどと述べており、原告が共に標的にされていたとしていたM学生も、原告と一緒によくしごかれたが、レギュラーのG学生らの方がもっと激しい掛かり稽古をしていて泣いていた、あれに比べれば楽な方だった、確かに楽をしようとしていたので、しごかれたのも当然だと思うなどと述べていること(乙1〔2頁〕)などからすれば、原告のみに不当なしごきが行われ たとまでは認められない。 これらのことからすれば、原告に対して寒稽古の際に厳しい練習が課せられたとしても、集中的に不当なしごきが行われたとは認められず、いじめ ごきが行われ たとまでは認められない。 これらのことからすれば、原告に対して寒稽古の際に厳しい練習が課せられたとしても、集中的に不当なしごきが行われたとは認められず、いじめであり、違法性があるとまではいえない。 F学生による暴行等(不法行為8)原告は、F学生が、平成27年8月の剣道部の夏合宿において、準備運動 の素振りの最中、原告に対して「さぼってんじゃねーよ。」と怒鳴りつけ、原告の背中を竹刀で激しく打ちつけたと主張し、これに沿う原告の供述等がある。 F学生は、声をかけているのに自分の方を見ないときは、気付かせるために竹で叩いて振り向かせることがあったと証言するものの(証人F学生23 頁)、原告に対する暴行は否認しており、原告の供述等以外に暴行があったことを裏付ける証拠は存在しない。 また、原告の主張によれば、原告は、夏合宿の直前に服毒自殺を図り、体調不良であることを周りに伝えずに無理をして夏合宿に参加していたというのであるから、それを知らない主将のF学生において、原告がさぼっている と認識し、気合を入れるために怒鳴りつけることは十分あり得ることであるし、体調がすぐれず注意力が散漫になっていれば、原告がF学生の声かけに気付かず、F学生が気付かせるために竹刀で叩いた可能性もあり、これは剣道部の活動における指導の範囲内のものと評価すべきものである。 いずれにしろF学生の行為に違法性があるとはいえない。 素振り100回の強要(不法行為9)平成27年8月の剣道部の夏合宿において、F学生が、原告やその他の部員がさぼっていたことを理由に部員全員に素振り100回を命じたことがあったことは認められる(認定事実⑶エ。なお、下級生の1名が、「夏合宿の時、全く原告が声を出していなくて100本 、原告やその他の部員がさぼっていたことを理由に部員全員に素振り100回を命じたことがあったことは認められる(認定事実⑶エ。なお、下級生の1名が、「夏合宿の時、全く原告が声を出していなくて100本素振りが加算され、みんなから 反感を買っていた。」旨述べていることがうかがわれるものの(乙1〔4 頁〕)、これによっても、F学生が、原告のみの態度を理由に素振り100回を命じたとは認めるに足りない。)。 しかし、素振り100回自体は、練習量としては過度なものとはいい難い。 一部部員の怠慢を原因に連帯責任として更なる練習を課すことは、剣道部の活動における指導としては適切ではなかった可能性があるものの、違法性が あるとまではいえない。 G学生による殴打(不法行為10)原告は、平成26年9月23日、剣道部の練習後、シャワーを浴びていた際に、G学生から顔面左側を右手握り拳で殴られたと主張する。 本件調査において、G学生は、4学年から指示された原告が格闘ゲームを 仕掛けてきて、4学年が指示をやめた後もしつこく殴るなどしてきたため、「次やったらぶん殴る」と警告したが、原告が殴ってきたので殴り返したと述べており(乙1〔10頁〕)、J 学生も先に手を出したのは原告であると述べている(乙1〔11頁〕)。そして、原告も、その頃、防衛大医務室の医官に対し、シャワー室でふざけて他者に右側頭部を殴られ、拍子で左側頭 部を壁にぶつけた旨話していたことが認められる(認定事実⑵エ)。これらのことからすれば、G学生は、原告からの暴行に対抗するために原告を殴ったにすぎず、その態様も過剰ではなかったというべきであるから、G学生が原告に対して違法な暴行を加えたとは認められない。 H学生による暴行等(不法行為11) ア原告は、 ために原告を殴ったにすぎず、その態様も過剰ではなかったというべきであるから、G学生が原告に対して違法な暴行を加えたとは認められない。 H学生による暴行等(不法行為11) ア原告は、①平成28年2月1日、剣道部の寒稽古(掛かり稽古)において、H学生が、原告を挑発する言動をし、原告が着けていた面の上から、原告の右頭部側面を押して、原告の身体を体育館の壁にぶつけた、②同月5日にもH学生が原告を揶揄するなどのいじめがあり、原告がH学生を後ろから木刀で叩いたところ、H学生は、原告の頭部を木刀で殴り、首を絞 めるなど過剰な反撃を加えたと主張し、これに沿う原告の供述等がある。 上記①に関し、H学生が、平成28年2月1日、「声を出せ」などと強い口調で言った後、「サボってんじゃねえよ」などと言って原告の上半身(面の上から右頭部側面又は右肩付近)を押したことは認められる(認定事実⑶オ)。上記⑺のとおり、他の学生から、原告は、剣道部の練習に関し、声が小さくやる気がないように見えたなどと指摘されていること、原 告は、同年6月21日付供述調書書(乙9)において、同年2月1日までH学生から「声を出せ」などと言われたことはなかった旨供述していることなどを踏まえると、H学生の上記発言は、直ちにいじめと評価されるようなものではない。また、原告は、法廷では壁にたたきつけるように押されたと供述しているが(原告主尋問〔33頁〕)、上記供述調書では押さ れた際に一番端にいたこともあり体育館の壁にぶつかった旨述べていたこと(乙9)からすると、相当強い力で押されたとまでは認められない。寒稽古においてコーチの役割をしていたH学生が、原告に声を出すよう言ったにもかかわらず改善が見られないため上記発言をし、原告の体を自分の側に向けよう ると、相当強い力で押されたとまでは認められない。寒稽古においてコーチの役割をしていたH学生が、原告に声を出すよう言ったにもかかわらず改善が見られないため上記発言をし、原告の体を自分の側に向けようとして肩を押したと証言していること(証人H学生5頁)や、 原告の面の上から竹刀等も使わずに押したという態様などを考慮すると、下級生による言動としては礼を失するものであり、挑発的ともとれるものであるものの、それが違法な暴行とまではいえない。 イ上記②に関しては、平成28年2月5日、H学生から「声が出てないじゃないですか」などと言われた原告が、次の稽古に入った際に、H学生の 後ろから木刀を振り下ろしてその後頭部を殴打し、顔面に頭突きをしたのに対し、H学生が、原告を投げ飛ばし、最終的に馬乗りになって原告を押さえつけたこと(認定事実⑶カ)は認められる。 他方、原告は同年6月21日付供述調書(乙9)ではH学生が原告の首を押さえたと述べていたこと、H学生が当時左手を怪我していたことから などからして、H学生が原告の首を絞めたとまでは認め難い。また、H学 生は、原告に足を掛けて倒す際に取り上げた木刀が原告に当たった可能性はあると述べており(乙8)、原告としても、どのあたりにどのような痛みを感じたか覚えておらず、たんこぶ等もできていなかった旨述べていたこと(乙9)からすれば、H学生が原告を制圧するに際して何らかの攻撃を加えていたとしても、それは、原告による更なる攻撃を防ぎ、原告を制 圧するためであったとみられ、その限度を超えた攻撃を加えたとは認められない。 原告が、上記のとおり背後から木刀で後頭部を殴打するという極めて危険な暴行を加え、更に顔面に頭突きをするなど暴行を継続していたことからするとH学生が原告に対して行 攻撃を加えたとは認められない。 原告が、上記のとおり背後から木刀で後頭部を殴打するという極めて危険な暴行を加え、更に顔面に頭突きをするなど暴行を継続していたことからするとH学生が原告に対して行った有形力の行使は、原告のかかる暴行 に対し、更なる攻撃を防ぎ、原告を制圧する限度内のものであったといえ、それを超えた過剰な反撃を加えたことを認めるに足りない(なお、H学生による礼を失し挑発的ともとれる言動があったとしても、上記のような危険な暴行が正当化されないことはいうまでもなく、それによりH学生による上記の有形力の行使が違法になるということもない。また、原告は、剣 道部におけるいじめによる精神的負荷の蓄積が原因であるかのような主張もするが、いじめの事実は認められないし、仮に何らかのいじめがあったとしても、原告による上記暴行が正当化されるものではない。)。 ウこれらのことからすれば、H学生が原告に対して違法な暴行を加えたとは認められない。 窃盗被害(不法行為12)原告は、平成28年3月29日から同年5月24日までの間、パソコンのハードディスク2点、USB2点、マウス、マウスパッド、ヘッドホン等のほか、剣道で使用する木刀等を盗まれたと主張しており、同年10月に防衛大に対してその旨の盗難届(甲11)を出したことが認められる。 しかし、原告の私物に窃盗被害があったことを認めるに足りる証拠はない。 また、仮に、窃盗被害があったとしても、室長であったI 学生が管理責任を怠ったこと、剣道部内での窃盗については部長であったG学生が管理責任を怠ったことについてそれぞれ具体的に主張立証がされていない。 以上のとおりであり、原告の主張する不法行為1〜12はいずれも認めら れない。 3 争点(安全配 部長であったG学生が管理責任を怠ったことについてそれぞれ具体的に主張立証がされていない。 以上のとおりであり、原告の主張する不法行為1〜12はいずれも認めら れない。 3 争点(安全配慮義務違反の有無)についてB二尉の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反1及び2)ア原告は、B二尉は、原告がリストカットに及んだ平成25年11月の時点及び原告が最初に過呼吸を起こした平成26年2月の時点で、原告に対 して行われていた上級生からの指導の具体的内容を確認するとともに、不適切な指導が行われている実態があれば、それをやめさせる義務があったが、これを怠ったと主張する。 イ平成25年11月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反1)E学生の原告に対する不法行為(不法行為1~3)が認められないこと は上記2~のとおりであるが、原告は、平成25年11月の時点で自傷行為(リストカット)に及ぶような精神的に不安定な状態にあったのであるから、B二尉において、その頃、E学生の言動が原告に対する過剰な心理的負荷となっていることを認識し又は認識し得たのであれば、このような心理的負荷を低減させるように対応する義務は生じ得る。 この点につき、B二尉は、原告のリストカットが判明した平成25年11月22日、原告に対して聞き取りを行い、それ以降も複数回原告と面談したことが認められる(認定事実⑴カ及びキ)。原告は、その際、官品放置等について指導を受けていたと述べたものの、指導に関しては自分に非があると認めていたのであり、原告の供述等によっても、E学生の名前を 挙げずに、毎日がつらいなどと話したにすぎず、リストカットの理由につ いて具体的に明らかにしなかったのであって(原告反対尋問〔9頁〕等)、E学生の指導 よっても、E学生の名前を 挙げずに、毎日がつらいなどと話したにすぎず、リストカットの理由につ いて具体的に明らかにしなかったのであって(原告反対尋問〔9頁〕等)、E学生の指導によって心理的負荷を受けたなどという趣旨の話を全くしていない。 これらのことからすれば、B二尉は、平成25年11月の時点で、E学生の原告に対する指導が不適切であったとか、それが原告のストレスにな っていたなどと認識していたと認められないし、そのような事実を認識し得たともいえない。そうすると、B二尉において、この頃、原告の心理的負荷を低減させるよう、E学生の原告に対する指導をやめさせる義務を負っていたとはいえない。 ウ平成26年2月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反2) 原告が平成26年2月頃に過呼吸を起こしたことを認めるに足りる証拠はない。かえって、原告は、平成25年12月9日及び平成26年1月16日に横須賀病院精神科を受診した際に、だいぶ落ち着いた、調子は良いなどと述べ、医官からも精神的に安定しており問題ないとの判断がされていたこと、同月5日の休暇終了後面接の際も、健康状態及び心情の変化に つき、変化なし、良好と答えていたことが認められる(認定事実⑴ク)。 また、E学生は、原告がリストカットしたことが判明してから指導を極力控えたと述べており(乙3)、原告は、同月以降、E学生とは居室が別になり、E学生から指導を受けることはなくなっていたと認められる(認定事実⑴ケ)。 これらのことからすれば、B二尉において、平成26年2月の時点で、原告から事情を聴取するなどして上級生からの指導の具体的内容を確認する義務や、E学生の原告に対する指導をやめさせる義務を負っていたとはいえない。 C一尉の安全配慮義務違反 成26年2月の時点で、原告から事情を聴取するなどして上級生からの指導の具体的内容を確認する義務や、E学生の原告に対する指導をやめさせる義務を負っていたとはいえない。 C一尉の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反3及び4) ア平成26年11月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反3) 原告は、C一尉は、平成26年11月の時点で、原告が被告Aからの不適切な指導を原因として強い心理的負荷を受けていることを認識することが可能であり、実際に認識していたのであるから、被告Aに対して厳重な注意を行い、不適切な指導を繰り返すことがないよう指導を行う義務があったが、これを怠ったと主張する。 被告Aによる反省文提出の強要等及び平成26年10月頃の呼出し、罵倒等の不法行為(不法行為4及び5)が認められないことは上記2⑷及び⑸のとおりであるが、原告が同年11月12日に過呼吸を発症したのを受けて、C一尉は、原告から聞き取りを行い、被告Aによる指導が過呼吸の原因であったと判断していた(認定事実⑵カ)のであるから、被告Aに対 して注意するなどして原告の心理的負荷を低減させるように対応する義務はあったものといえる。 この点につき、C一尉は、原告に対して周囲の上級生に相談したり、頼ったりすることについてより積極的に行うよう指導するとともに、被告Aの指導教官を含む関係教官に情報共有し、被告Aに対して原告に対する指 導方法について注意したこと、それ以降平成27年4月まで原告が被告Aから呼び出されることはなくなったことが認められる(認定事実⑵カ及びキ)。 これらのことからすると、C一尉は、原告の心理的負荷を低減させるよう適切に対応したものといえ、上記義務違反は認められない。 イ平成27年4月時点の安全配慮義 る(認定事実⑵カ及びキ)。 これらのことからすると、C一尉は、原告の心理的負荷を低減させるよう適切に対応したものといえ、上記義務違反は認められない。 イ平成27年4月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反4)原告は、C一尉は、平成27年4月の時点でも、被告Aに対して注意、指導を行う義務があったし、原告の過呼吸が被告Aによる不適切な指導を原因とするものであることを他の教官や学生らに認識させ、原告を馬鹿にする雰囲気を払拭させる義務があったが、これを怠ったと主張する。 原告が平成27年4月14日に再び過呼吸を起こし、被告Aによる指導が原因である旨C一尉に話したこと(認定事実⑶イ)などからして、C一尉には、被告Aに対して改めて注意するなどして原告の心理的負荷を低減させるように対応する義務はあったものといえる。他方、上記2⑹のとおり被告Aの指導はいじめとは認められないことなどからすると、C一尉は、 原告の過呼吸が被告Aによる指導を原因とすることを他の学生らに認識させ、原告を馬鹿にする雰囲気を払拭させる義務を負っていたとはいえない。 C一尉は、原告に対して自分で対処できないような心理的負荷については必ず相談するように指導するとともに、被告Aの指導教官を含む関係指導教官に情報共有し、被告Aに対して不適切な指導を改めるよう指導した こと、それ以降、被告Aが原告を呼び出すことはなくなったことが認められる(認定事実⑶イ)。 これらのことからすると、C一尉は、原告の心理的負荷を低減させるよう適切に対応したものといえ、上記義務違反は認められない。 D一尉の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反5及び6) ア平成27年8月及び平成28年2月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反5)原告は、 といえ、上記義務違反は認められない。 D一尉の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反5及び6) ア平成27年8月及び平成28年2月時点の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反5)原告は、剣道部の顧問であったD一尉は、平成27年8月の夏合宿及び平成28年2月の寒稽古において不法行為7~9が行われた時点で、剣道部内で行われていた原告に対する理不尽なしごきや他の部員にも連帯責任 を課す指導及びH学生が原告を馬鹿にするなどしていることについて認識することが可能であり、実際に認識していたのであるから、上述の指導をやめさせる義務及びH学生に対して厳重な注意を行い原告に対する陰湿な嫌がらせをやめさせる義務があったし、また、不法行為11が行われた平成28年2月1日の時点でも、H学生に対して注意を行い、嫌がらせをや めさせる義務があったが、これらを怠ったと主張する。 不法行為7~9及び11が認められないことは、上記2⑺~⑼及び⑾のとおりである。もっとも、F学生が、平成27年8月の夏合宿の際に原告やその他の部員がさぼっていたことを理由に部員全員に素振り100回を命じたことがあったことが認められ、これは剣道部の活動における指導としては適切ではなかった可能性もある。また、H学生が平成28年2月1 日に原告に対し、礼を失し、挑発的ともとれる言動をとったことは認められ(上記2⑼及び⑾)、これは、やる気を引き出すためのものであったとしても適切であったとはいい難い。しかし、D一尉は、素振り100回が連帯責任として課されたことを認識していなかった、平成28年2月1日のH学生の原告に対する行為は同月5日の稽古後に知ったと証言しており (証人D一尉6、10頁)、多数が集う合宿という状況(認定事実エ及びオ)からすればこれ していなかった、平成28年2月1日のH学生の原告に対する行為は同月5日の稽古後に知ったと証言しており (証人D一尉6、10頁)、多数が集う合宿という状況(認定事実エ及びオ)からすればこれらを認識できなかったとしても不合理ではないから、D一尉が、F学生による素振り100回の指導をやめさせたり、H学生に対して注意を行ったりする義務を負っていたとはいえない。 なお、平成27年6月頃の剣道部3学年のグループラインにおいて、原 告のことを「過呼吸」などとからかう趣旨の発言があったこと(甲4)や、本件調査において、他の学生が、原告について、下級生からなめられている、剣道部は実力主義なので力のない先輩は軽んじられるなどと述べている(乙1〔5、6頁〕)ことからして、剣道部内で原告を軽んじる風潮があったことは推認される。そのこと自体は不適切ではあるものの、原告自 身、その頃、剣道部内でいじめにあっていないと述べていたのであるから(乙9)、D一尉その他の防衛大の職員において、原告の周囲の環境(剣道部内の状況)を改善するなどの義務があったともいえない。 イ本件傷害事件後の安全配慮義務違反(安全配慮義務違反6)原告は、D一尉は、平成28年2月5日の本件傷害事件の時点で、原告 及びH学生並びに剣道部の学生から丁寧に聞きとりを行い、H学生が加害 者であって、原告が被害者であるという実態を把握し、それを踏まえた対応をする義務及び原告に精神科への受診を勧め、原告が早期に精神科を受診できるように環境を整える義務があったが、これらを怠り、原告を加害者として扱い、防衛大は、同年3月に原告のみ留年処分としたと主張する。 しかし、D一尉は、平成28年2月5日に原告及びH学生から事情を聞 き取り、H学生を担当する中隊指導教官 を怠り、原告を加害者として扱い、防衛大は、同年3月に原告のみ留年処分としたと主張する。 しかし、D一尉は、平成28年2月5日に原告及びH学生から事情を聞 き取り、H学生を担当する中隊指導教官に情報共有したこと、その後、D一尉による剣道部の学年ごとのミーティング、C一尉による原告との面談並びに第13中隊次席指導教官による原告、H学生及びD一尉に対するH暴行及び本件傷害事件に関する調査が実施されるとともに、並行して警務隊による捜査も進められていったことが認められるのであって(認定事実 ⑶カ、キ、コ及びサ)、防衛大が本件傷害事件以降に行った聞き取りに不備があったとは認められない。 また、防衛大は、従前より、原告を横須賀病院精神科に紹介するなどして原告の精神状態に配慮してきたこと(認定事実⑴カ、キ及び同⑵キ)からして、本件傷害事件に至って原告に精神科への受診を勧めるなどの義務 を負うという原告の主張も採用できない。 本件傷害事件(認定事実⑶カ)において、原告がH学生に行った暴行は、竹刀よりも危険性の高い木刀をわざわざ取り出し、体育館2階に移動した上、防具を付けていないH学生に対し、後ろから不意打ち的に木刀を振り下ろしてその後頭部を殴打し、さらに面を着けた状態でH学生の顔面に頭 突きをしたもので、命の危険にかかわり得る危険な行為であり、実際にH学生はこれにより鼻骨骨折及び頭部打撲の傷害を負っている(認定事実⑶ケ)。本件傷害事件に至る経緯には、平成28年2月1日にH学生が礼を失し、挑発的ともとれる言動をしたことや、同月5日に「声が出てないじゃないですか」などと発言したことについて、原告が不満を感じたという ことがあり、H学生の適切性を欠く言動に誘発された面があったとしても、 原告がH学生に対して不 声が出てないじゃないですか」などと発言したことについて、原告が不満を感じたという ことがあり、H学生の適切性を欠く言動に誘発された面があったとしても、 原告がH学生に対して不意打ち的に上記のような危険な暴行を加えることが正当化されるわけではない。これらのことからすれば、防衛大が本件傷害事件を理由として原告に対し留年処分を行ったことはやむを得ない。 ⑷ 原告は、令和5年12月12日付最終準備書面において、報告書の作成や原告の心身状態回復への配慮、生活環境改善、不利益防止を怠ったことをも 安全配慮義務違反と主張しているようであるが、これらは、認定事実のとおりの経緯及び上記⑶に述べたことからして、いずれも前提を欠き、または同義務違反があったとは評価できない。その他の原告の主張等を考慮に入れても、上記の認定判断は覆らない。 以上より、原告の主張する安全配慮義務違反はいずれも認められない。 4 小括以上のとおり、原告の請求原因はいずれも認められないから、その余について検討するまでもなく、原告の請求は理由がない。 第4 結論以上の次第で、原告の請求はいずれも棄却することとし、主文のとおり判決 する。 横浜地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官藤岡淳 裁判官田郷岡正哲 裁判官番條雅代は、差支えのため、署名押印することができない。 裁判長裁判官藤岡淳

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