平成16(ワ)17033 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成19年7月26日 東京地方裁判所 棄却
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判決文本文47,576 文字)

平成19年7月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年(ワ)第17033号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成19年5月17日判決原告A同訴訟代理人弁護士龍博末吉宜子元橋一郎被告医療法人財団仁医会同代表者理事長B同訴訟代理人弁護士南出行生北澤龍也上野園美主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,金1億1533万2142円及びこれに対する平成14年1月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告の子(患者)が,被告の開設する病院に入院して,総胆管結石の検査及び切石(摘出)のためにERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影法)及びEPBD(内視鏡的乳頭バルーン拡張術)による処置を受け,その処置後に急性膵炎を発症して死亡したことにつき,原告が,その死亡は,同病院の医 師において,患者に対し,①上記処置に先立ち急性膵炎発症の危険があることなどを説明すべき義務,②ERCPにおける手技上ないし実施上の義務,③急性膵炎の治療上の義務(<ア>蛋白質分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注療法を早期に実施すべき義務,<イ>CHDF(持続的血液濾過透析,SDD(選択的)消化管除菌)を実施すべき義務,<ウ>外科手術を実施すべき義務,<エ>絶飲食管理をすべき義務,<オ>患者を仰臥位にする前に胃液を吸引すべき義務及び<カ><ア>ないし<ウ>に関する説明義務)を負っていたにもかかわらず,これらの義務を怠ったことによるものであり,仮にその死亡は避けられなかったとしても,上記③<カ>の説明義務違反により患者の自己決定権が侵害されたと主張して,被告に対し,債務不履行ないし不法行為 ず,これらの義務を怠ったことによるものであり,仮にその死亡は避けられなかったとしても,上記③<カ>の説明義務違反により患者の自己決定権が侵害されたと主張して,被告に対し,債務不履行ないし不法行為(使用者責任)に基づいて,慰謝料等の損害金及びこれに対する患者の死亡日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 なお,以下,診療契約上の義務(債務)ないし診療上の注意義務(不法行為法上の過失の前提となる注意義務)を併せて「義務」という。 前提事実(証拠原因を掲記しない事実は当事者間に争いがない)。 (1)当事者等ア原告は,C(昭和23年1月5日生,平成14年1月9日死亡)の母。 であり,他にCの相続人はいない(弁論の全趣旨。 )イ被告は東京都大田区内において牧田総合病院という名称の病院以,「」(下「被告病院」という)を開設している。 。 平成13年11月ないし平成14年1月当時,医師であるD及び医師であるEは被告病院外科に,医師であるFは被告病院内科にそれぞれ勤務していた。 (2)Cの診療経過の概要アCは,被告病院の人間ドックで胆嚢結石及び総胆管結石を指摘されて,平成13年11月17日に被告病院外科を再受診し,同月22日に腹部C T検査,同年12月6日にERCP(以下「第1回ERCP」という)。 を受け,胆嚢結石及び総胆管結石があると診断された。そこで,総胆管結石を切石するため,同月12日に入院し(以下,平成14年1月9日に死「」,,亡退院するまでのこの入院を本件入院といい年の記載のない日付は11月及び12月は平成13年の,1月は平成14年のものである,。)12月13日午前9時50分ころから午前10時40分ころまで,ERCP及びEPBD(以下「第2回ERCP」といい 載のない日付は11月及び12月は平成13年の,1月は平成14年のものである,。)12月13日午前9時50分ころから午前10時40分ころまで,ERCP及びEPBD(以下「第2回ERCP」といい,第1回ERCPと併,せて「本件各ERCP」という)を受けた。 。 イ担当医師は,12月13日午後4時ころ,Cが急性膵炎を発症したと診断し,当初は,同月14日実施の造影CT検査(術後1回目)の結果などから中等症と判断していたが,同月20日には,同日実施の造影CT検査(術後2回目)の結果などから重症化したと判断した。そこで,Cは,内科に転科され,同日から同月26日まで蛋白質分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注療法(以下,単に「持続動注療法」という)を受けた。遅くとも。 同月28日以降において,Cの病状は悪化傾向にあった(上記の持続動注療法が奏功したか否かについては争いがある。 。)Cは,1月4日以降HDF(血液透析濾過)を受けたが,同月7日には肺炎を発症して意識状態も徐々に低下し,同月9日午前中の造影CT検査においては消化管穿孔が疑われた(被告は,消化管穿孔を診断した旨主張する。そして,その後,ストレッチャーで帰室する際,胃液を誤嚥し。)て約5分間心肺停止状態(以下「本件心肺停止」という)に陥り,蘇生。 措置等が施されたが血行動態は安定せず,多臓器不全となり,同日午後1(,「」。)。 0時40分に死亡が確認された以下この死亡を本件死亡というウ本件入院中の血液,尿等の検査結果は,別紙「検査結果一覧表」の「検査値」欄に記載のとおりである。 (3)解剖の結果(乙A15) ,,(「」。)Cの遺体は平成14年1月11日司法解剖以下本件解剖というに付され,以下の所見が認められた。 ア内部所見(ア)腹腔 ある。 (3)解剖の結果(乙A15) ,,(「」。)Cの遺体は平成14年1月11日司法解剖以下本件解剖というに付され,以下の所見が認められた。 ア内部所見(ア)腹腔開検十二指腸,膵臓周囲の後腹膜を主として,腹膜は著しく混濁し,脂肪壊死を伴っている。 (イ)肝臓胆嚢内には黄褐色のやや水様な胆汁少量及び小豆大の結石1個。その他の胆道系各部には肉眼的に結石は確認されない。 (ウ)膵臓硬度はやや軟で,著しく混濁している。 (エ)十二指腸十二指腸下行脚において,ファーター乳頭部(以下,単に「乳頭」という)の約2.0cm下方の前壁に約1.3cm×0.7cm大の楕。 円形の穿孔部1個。 イ組織学的検査成績腹膜は十二指腸の穿孔部を主体に高度の炎症がみられ,穿孔部周囲の十二指腸壁は壊死に陥っている。膵臓の炎症は線維化傾向が認められ,膵液のうっ滞像が観察される。胆管内には多数の細菌集落が認められるが,周囲の炎症所見は比較的軽い。 (4)本件で前提となる医学的知見は,以下のとおりである。 アERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(乙B6,10,43))(ア)ERCPとは,内視鏡を用い,直視下にて乳頭開口部から造影用チューブを挿入し,非観血的に胆管や膵管を逆行性に造影する検査法である。 (イ)ERCPの手技の概略は,下記①ないし⑦のとおりである。 ①内視鏡を十二指腸下行部へ挿入し,乳頭を見つける。 ②乳頭を正面視できるようにスコープの位置を調整する。乳頭をよく観察する。 ③乳頭の開口部を確認し,造影用カテーテル内の空気を追い出し,造影剤で満たしてから,開口部へ挿管する。 ④X線モニターによる透視下に造影剤の注入を行い,撮影部位を素早く確認する。 ⑤造影部位により,造影剤の量,体位などを決めてX線 テル内の空気を追い出し,造影剤で満たしてから,開口部へ挿管する。 ④X線モニターによる透視下に造影剤の注入を行い,撮影部位を素早く確認する。 ⑤造影部位により,造影剤の量,体位などを決めてX線写真の撮影を行う。 ⑥目的とする造影部位が得られていない場合は,挿管の角度や方向を変えてやり直す(その後の操作は,④,⑤と同じ。 。)⑦スコープを抜去し,体位変換などを行い,X線写真を撮影する。 イEST(内視鏡的乳頭括約筋切開術(乙B6))ESTとは,内視鏡下に特殊な電気メスを用いて,乳頭括約筋の切開を行い,大きく切開した開口より結石の除去や胆汁のドレナージを行う方法である。 ウEPBD(内視鏡的乳頭バルーン拡張術(甲B2,45の2・3・5)・6,乙B9,42)(ア)EPBDとは,乳頭拡張用バルーンカテーテルをワイヤーガイドにより乳頭に置き,拡張して総胆管にアプローチする方法である。 (イ)総胆管結石に対するEPBDの手技の概略は,下記①ないし⑥のとおりである。 ①ERCPと同様の手技により胆管を造影し,結石の有無,大きさ,数を確認する。 ②ディープカニュレーション後,ガイドワイヤーを挿入する。 ③ガイドワイヤーに沿って乳頭拡張用バルーンを挿入し,その後緩徐 に乳頭を拡張する。 ④排石用バスケットカテーテルや排石用バルーンを用いて切石する。 ⑤洗浄用バルーン等を用いて肛門部側より生食等で洗浄する。 ⑥造影等により遺残結石の有無を確認する。 エ急性膵炎(ア)用語の意義(甲B4,5)下記a,cないしfは「エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイ,ドライン[第1版(急性膵炎の診療ガイドライン作成委員会(日本]」腹部救急医学会,日本膵臓学会,厚生労働省特定疾患対策研究事業難治性膵疾患に関する調査研究班)編,平成 いた急性膵炎の診療ガイ,ドライン[第1版(急性膵炎の診療ガイドライン作成委員会(日本]」腹部救急医学会,日本膵臓学会,厚生労働省特定疾患対策研究事業難治性膵疾患に関する調査研究班)編,平成15年7月出版(以下「急性)膵炎ガイドライン」という)における定義である。下記bは「重症。 ,急性膵炎の治療方針(厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班(以下」「厚生省研究班」という)編,平成8年3月出版(以下「厚生省平。 )成8年治療方針」という)における定義である。 。 a急性膵炎膵臓の急性炎症で,他の隣接する臓器や遠隔臓器にも影響を及ぼし得るものである。臨床的特徴としては,多くの場合,突然発症し,上,(),腹部痛を伴い種々の腹部所見軽度の圧痛から反跳痛までを伴い,,,,。 嘔吐発熱頻脈白血球増加血中又は尿中の膵酵素の上昇を伴うb浮腫性膵炎膵の間質の浮腫を主体とする病変で,膵実質には出血壊死などの変化を認めない。 c壊死性膵炎びまん性又は限局性に膵実質が非可逆的壊死に陥ったもので,典型例では膵周囲脂肪組織の壊死を伴う。臨床的には,造影CT上,膵実質に明らかな造影不良域が認められるものである。 d感染性膵壊死壊死に陥った膵に細菌の感染を合併したものである。非感染性膵壊死と鑑別困難なことが少なくなく,感染性膵壊死と診断するためにはFNA(CTガイド下での穿刺吸引細菌培養)が必要である。 e膵仮性嚢胞肉芽組織あるいは線維性の壁構造を有し,膵液や壊死組織の融解物の貯留を伴うものである。膵管との交通の有無を問わない。急性膵炎の発症後4週以降に見られることが多い。臨床的特徴としては,急性膵炎の患者では,時に膵仮性嚢胞を触知するが,通常は画像診断で発見される。膵仮性嚢胞は,通常膵酵素を豊富に含有 有無を問わない。急性膵炎の発症後4週以降に見られることが多い。臨床的特徴としては,急性膵炎の患者では,時に膵仮性嚢胞を触知するが,通常は画像診断で発見される。膵仮性嚢胞は,通常膵酵素を豊富に含有し,多くの場合無菌である。 f膵膿瘍膵及び膵に隣接した限局性の膿の貯留であるが,内部に膵壊死組織はないか,あってもごくわずかである。膵仮性嚢胞内に明らかな膿の貯留を認める場合には膵膿瘍とする。臨床像は様々であるが,多くの場合感染像を呈する。重症急性膵炎発症後4週以降に生ずることが多い。 (イ)「急性膵炎臨床診断基準(厚生省研究班。以下「急性膵炎診断基」」。),「」準という厚生労働省急性膵炎の重症度判定基準と重症度スコア(以下,この重症度スコアを単に「重症度スコア」という「急性膵。),炎のステージ分類「急性膵炎のCTグレード分類(以下,単に「C」,」Tグレード分類」という)は,それぞれ別表①ないし④のとおりであ。 る(甲B5。 )(ウ)急性膵炎ガイドラインにおける推奨度分類急性膵炎ガイドラインにおいては,各文献で得られたエビデンスを踏まえ,現状の日本での医療状況に鑑み,検査や治療等について,下記の 分類法を参考に推奨度が決定されている。 Aその推奨の効果に対して強い根拠があり,その臨床上の有用性も明らかである。 Bその推奨の効果に関する根拠が中等度であるか,その効果に関して強い根拠があるが臨床上の有用性がわずかである。 Cその推奨の効果を支持する(あるいは否定する)根拠が不十分であ,(,)るかその効果が有害作用・不都合毒性や薬剤の相互作用コストを上回らない可能性がある。 ,。 Dその推奨の有効性を否定するか害作用を示す中等度の根拠があるEその推奨の有効性を否定するか,害作用を示す強い根 有害作用・不都合毒性や薬剤の相互作用コストを上回らない可能性がある。 ,。 Dその推奨の有効性を否定するか害作用を示す中等度の根拠があるEその推奨の有効性を否定するか,害作用を示す強い根拠がある。 オ検査値本件で用いられた各検査の基準値は,別紙「検査結果一覧表」の「基準値」欄に記載のとおりである。また,各検査における異常値の解釈は以下のとおりである(甲B6の2・4,13,15,乙A2,4,5)。 (ア)白血球数(WBC)・10000/μℓ~50000/μℓ(軽度~中等度増加)高頻度で感染症(細菌,ウイルス,重症の代謝異常(腎・肝不全な)ど)などが疑われる。 (イ)好中球(Neutro)・60%以上(増加)高頻度で,ないし可能性として,感染症(肺炎,敗血症など)などが疑われる。 (ウ)リンパ球(Lymph)・25%以下(減少)高頻度で,ないし可能性として,急性感染症の初期などが疑われる。 (エ)白血球像 ・中毒顆粒,,,。 高頻度でないし可能性として重症感染症敗血症などが疑われる(オ)CRP・10mg/dℓ以上(高度上昇)高頻度で,重症細菌感染症などが疑われる。 ・1mg/dℓ以上(中等度上昇)高頻度で,細菌感染症などが疑われる。 (カ)血中尿素窒素・21mg/dℓ~30mg/dℓ(軽度上昇)高頻度で,ないし可能性として,腎機能障害などが疑われる。 ・30mg/dℓ~60mg/dℓ(中等度上昇)高頻度で,ないし可能性として,腎機能障害などが疑われる。 (キ)Na(血清ナトリウム)・125mEq/ℓ~134mEq/ℓ(軽度低下)高頻度で,慢性腎不全,浮腫性疾患,Na欠乏などが疑われる。 本件入院中のCの診療経過についての当事者の主張被告の主張は別紙診療経過一覧表の「診療経過(入通院 q/ℓ~134mEq/ℓ(軽度低下)高頻度で,慢性腎不全,浮腫性疾患,Na欠乏などが疑われる。 本件入院中のCの診療経過についての当事者の主張被告の主張は別紙診療経過一覧表の「診療経過(入通院状況・主訴・所見・診断「検査・処置」欄に記載のとおりであり,これに対する原告らの反論)」は同一覧表の「原告の反論」欄に記載のとおりである。 原告の主張(1)死亡に至った客観的経緯ア本件の急性膵炎は,本件各ERCP後に発症し,事後的客観的に見て,12月17日ころまでには壊死性の重症急性膵炎に進展し,同月28日ころまでには感染性膵壊死を生じた。 なお,仮に,膵全体が一様に壊死していたとは認められないとしても,造影CT上黒くエアー状に抜けているところがあったこと,解剖の際に腹 膜に脂肪壊死が認められたことからすれば,少なくとも部分的には膵が壊死していた。 そして,Cは,12月28日には腎機能障害,肺水腫,肺炎,1月4日には膵の融解,同月8日には消化管穿孔,敗血症などを生じ,同月9日には胃液の誤嚥から呼吸停止,心停止,多臓器不全に陥り,死亡した。 イ膵仮性嚢包や膵膿瘍を診断できるCTはなく,膵仮性嚢胞は発症後4週間以降に見られることが多いから,本件入院中に膵仮性嚢包や膵膿瘍が生じたとはいえない。 Cは,経皮的ドレナージを受けることを拒否していない。仮に拒否していたとしても,担当医師の説得が不十分であったか,下記(2)ないし(8)のとおり担当医師の治療が不適切であったため,Cが納得できなかったことが原因であるから,Cが経皮的ドレナージを受けることを拒否したということで,担当医師の義務違反と本件死亡との間の因果関係が否定されることはない。 (2)本件各ERCP実施に際しての説明義務違反ア担当医師は,本件各ERCPを実施するに際し, ことを拒否したということで,担当医師の義務違反と本件死亡との間の因果関係が否定されることはない。 (2)本件各ERCP実施に際しての説明義務違反ア担当医師は,本件各ERCPを実施するに際し,Cに対し,合併症として急性膵炎発症の可能性があること,胆嚢結石及び総胆管結石に対しては(),他の代替的手段開腹手術や腹腔鏡手術等があること及びその利害得失施術時期の選択について説明すべき義務があった。とりわけ,膵管造影は急性膵炎発症の危険が高いから,その利害得失についても説明すべき義務があった。しかるに,担当医師は,この義務を怠った。 ,,,イ上記アの説明が尽くされていればCは他の治療法を選択していたか少なくとも12月6日,13日には本件各ERCPを受けなかったはずであり(正月明け等にしたと思われる,本件の急性膵炎を発症すること。)はなく,それに起因する本件死亡も避けられた。 (3)本件各ERCPにおける手技上ないし実施上の義務違反 ア担当医師は,本件各ERCPにおいて手技上ないし実施上の義務に違反した。具体的には下記のとおりである。 (ア)急性膵炎の発症を防止するため,本件では,胆管造影のみのERCPを1回だけ実施すべきであって,担当医師において,ERCPを複数回実施したり,急性膵炎を発症する危険の高い膵管造影を実施してはならない義務があった。しかるに,担当医師は,12月6日,13日の2度にわたってERCPを実施し,その際,以下のとおり膵管造影も実施した。 a第1回ERCPの際,主膵管を造影した。被告は,膵疾患のスクリーニングが目的であったと主張するが,そうであれば膵管分枝まで十分に造影されていてしかるべきである。しかるに,第1回ERCPにおいて主膵管しか造影されていないのは,担当医師の手技が稚拙であったため ーニングが目的であったと主張するが,そうであれば膵管分枝まで十分に造影されていてしかるべきである。しかるに,第1回ERCPにおいて主膵管しか造影されていないのは,担当医師の手技が稚拙であったため,胆管造影の際に膵管が偶然造影されたことの証左である。 b第2回ERCPの最初のカニュレーションの際,膵管を造影した。 被告は,誤挿管を防ぐことが目的であったと主張するが,担当医師において,第1回ERCPの際,既に膵管と胆管の合流部分の形状を確認しているから,第2回ERCP時に再度その確認をする必要はなかった。 c第2回ERCPの際,下記(イ)のとおり,見失った結石を探すために造影剤の注入を繰り返したところ,膵管も造影されてしまった。 (イ)急性膵炎の発症を防ぐため,乳頭や膵管開口部(以下「乳頭等」という)を傷害したり,膵管に過大な圧をかけることのないように注意。 。 ,,,する必要があるしたがって担当医師において本件各ERCPの際①マノメーター(圧力計)や自動注入器を使用し,②カニューレの挿入や造影剤の注入を必要以上に繰り返してはならず,③腸を蠕動させないよう鎮痙剤の効果を術中に切らしてはならない義務があった。 しかるに,担当医師は,①本件各ERCPの際,マノメーターや自動注入器を使用せず,②第2回ERCPの際,不注意にも胆管結石を1個見失い,その石を探すため,乳頭に頻回にわたってカニューレの挿入や造影剤の注入を繰り返し,③第2回ERCPは50分かかったにもかかわらず,ブスコパン(鎮痙剤)を1A(持続時間約30分)しか投与せず(ブスコパンの効果が切れたため,術中に腸が蠕動してしまった,。)上記各義務を怠った。第2回ERCPについて,担当医師は,内視鏡写真の存しない午前10時9分から31分までの間に上記②の操作を実施 ブスコパンの効果が切れたため,術中に腸が蠕動してしまった,。)上記各義務を怠った。第2回ERCPについて,担当医師は,内視鏡写真の存しない午前10時9分から31分までの間に上記②の操作を実施していたと思われ,そのため,通常30分程度で終わる手技が,本件では50分もかかった。 ,,イ上記アの義務が尽くされていればCが急性膵炎を発症することはなくそれに起因する本件死亡も避けられた。 (4)持続動注療法の早期実施義務違反等ア(ア)12月14日の造影CT上,膵実質に不均一の低吸収域があり,同月15日以降,CRP増加,白血球数増加,好中球増加,リンパ球減少が認められたから,同月17日ころには急性膵炎の重症化が疑われた。 また,壊死性膵炎は発症後96時間以内に完成するとされ,発症から48時間以降に壊死性膵炎の診断が確定する症例も約21%あるとされている。したがって,担当医師は,同月17日ころ,造影CT検査を実施すべきであった。しかるに,担当医師は,同月14日以降,同月20日まで造影CT検査を実施しなかった。 (イ)上記(ア)のとおり造影CT検査を実施すべきであったとはいえないとしても,担当医師において,12月17日ころ,Cに対し,造影CT検査を受けることの利害得失等について説明し,造影CT検査を受けるか否かを決める機会を与えるべき義務があった。上記説明が尽くされていれば,Cは造影CT検査を受けることを選択していた。 (ウ)担当医師が,12月17日ころ,造影CT検査を実施していれば,本件の急性膵炎の重症化ないし壊死性膵炎への進展を診断することができた。 イ(ア)担当医師は,上記ア(ウ)の診断を前提に,12月17日ころ持続動注療法を開始すべき義務があった。しかるに,担当医師は,同月20日まで持続動注療法を開始しなかった。 , することができた。 イ(ア)担当医師は,上記ア(ウ)の診断を前提に,12月17日ころ持続動注療法を開始すべき義務があった。しかるに,担当医師は,同月20日まで持続動注療法を開始しなかった。 ,,(イ)上記(ア)の義務があったとはいえないとしても担当医師において12月17日ころ,Cに対し,持続動注療法を受けることの利害得失等について説明し,持続動注療法を受けるか否かを決める機会を与えるべき義務があった。上記説明が尽くされていれば,Cは持続動注療法を受けるという選択をした。 ウ12月17日ころから持続動注療法が開始されていれば,急性膵炎が本件のように悪化することはなく,本件死亡は避けられた。同月20日からの持続動注療法では,遅きに失し,本件の急性膵炎に対しては奏功しなかった。 仮に本件死亡が避けられなかったとしても,上記ア(イ),イ(イ)の説明が尽くされていれば,Cの自己決定権が侵害されることはなかった。 (5)CHDF,SDDの実施義務違反等ア(ア)担当医師は,12月26日に持続動注療法を終了した後,これに引き続いてCHDF,SDDを実施すべき義務があった。しかるに,担当医師は,1月4日以降HDFを実施したのみで,CHDFやSDDを実施しなかった。 ,,(イ)上記(ア)の義務があったとはいえないとしても担当医師において12月26日ころ,Cに対し,CHDF,SDDを受けることの利害得失等について説明し,CHDF,SDDを受けるか否かを決める機会を。 ,,与えるべき義務があった上記説明が尽くされていればCはCHDF SDDを受けるという選択をした。 (ウ)Cが,CHDFを本件入院中一貫して拒否し,またHDFを1月3日まで拒否したという事実はない。 イ12月26日からCHDF,SDDが実施されていれば,Cの急性 DDを受けるという選択をした。 (ウ)Cが,CHDFを本件入院中一貫して拒否し,またHDFを1月3日まで拒否したという事実はない。 イ12月26日からCHDF,SDDが実施されていれば,Cの急性膵炎が本件のように悪化することはなく,本件死亡は避けられた。1月4日か,,。 らのHDFでは遅きに失し本件の急性膵炎に対しては奏功しなかった仮に本件死亡が避けられなかったとしても,上記アの説明が尽くされていれば,Cの自己決定権が侵害されることはなかった。 (6)外科手術の実施義務違反等ア(ア)12月28日ころには,白血球数,CRPの上昇,発熱等の感染症の症状が見られたから,感染性膵壊死が疑われた。したがって,担当医師において,同日ころFNAを実施すべきであった。しかるに,担当医師は,FNAを実施しなかった。 (イ)上記(ア)の義務があったとはいえないとしても,F医師は,FNAの経験がなかったのであるから,あらかじめ,Cに対し,FNAを受ける必要が生ずる可能性があるがF医師にはFNAの経験がないことを説明すべき義務があった。 上記説明が尽くされていれば,Cは,FNAの経験がある医師の診療を受け,その医師の適切な判断により12月28日ころにはFNAを受けていた。 (ウ)Cが,12月28日ころFNAを受けていれば,感染性膵壊死への進展を診断されていた。 イ担当医師は,上記ア(ウ)の診断を前提に,12月28日ころ外科手術を実施すべき義務があった。しかるに,担当医師は,外科手術を実施しなかった。 ウ上記イの義務が尽くされていれば,本件死亡は避けられた。 仮に本件死亡が避けられなかったとしても,上記アの説明が尽くされていれば,Cの自己決定権が侵害されることはなかった。 (7)絶飲食管理義務違反ア担当医師は,Cが経口摂取をしないよ られた。 仮に本件死亡が避けられなかったとしても,上記アの説明が尽くされていれば,Cの自己決定権が侵害されることはなかった。 (7)絶飲食管理義務違反ア担当医師は,Cが経口摂取をしないよう管理すべき義務があった。しかるに,担当医師は,Cに対し,12月25日に一般米食を与えた。 イCは,12月25日に一般米食を与えられたことで,消化不良・消化管出血を発症し,急性膵炎が悪化したのであり,上記アの義務が尽くされていれば,本件死亡は避けられた。 (8)胃液吸引義務違反ア担当医師は,1月9日,Cを仰臥位にする前に,胃液を誤嚥しないように吸引すべき義務があった。しかるに,担当医師は,この義務を怠った。 イCは,胃液誤嚥により5分間呼吸停止・心停止状態に陥り,そのまま回復することなく死亡したのであり,上記アの義務が尽くされていれば,本件死亡は避けられた。 (9)損害原告は,Cに生じた下記アの損害に関する賠償請求権を全て相続するとともに,下記イの損害を被った。 アCに生じた損害(ア)入院雑費4万2000円(イ)逸失利益7245万7015円(ウ)Cに生じた慰謝料2800万円イ原告に生じた損害(ア)Cの死亡による原告固有の慰謝料200万円(イ)葬祭料200万円(ウ)証拠保全費用34万8387円(エ)弁護士費用1048万4740円 被告の主張(1)上記3(1)(死亡に至った客観的経緯)についてア本件の急性膵炎は,第2回ERCP後に発症し,12月20日以降重症化したが,持続動注療法などにより一時軽快した。しかし,その後,膵膿瘍,腹腔内膿瘍などの合併症を併発したため再び重症化した。Cは,担当医師により,経皮的ドレナージの適応があると判断されたが,再三の説得を受けても同意せず,消化管穿孔 時軽快した。しかし,その後,膵膿瘍,腹腔内膿瘍などの合併症を併発したため再び重症化した。Cは,担当医師により,経皮的ドレナージの適応があると判断されたが,再三の説得を受けても同意せず,消化管穿孔を合併し多臓器不全となり死亡した。 イ本件の急性膵炎は,事後的客観的に見て,壊死性膵炎ないし感染性膵壊死に進展してはいない。その理由は以下のとおりである。 (ア)解剖記録上,壊死の存在を証明する根拠は存しない。 (イ)造影CT上,膵頭部に不均一の所見は見られたが,不均一と評価される部分が常に壊死に陥っているわけではなく,このような変化は膵仮性嚢胞からも生じ得る。そして,1月4日ないし9日の段階で膵体部及び膵尾部の浮腫が著明に改善したところ,壊死がある場合にはこのような改善は見られない。 (ウ)血液検査所見上,白血球数やCRP値は増悪している。しかしながら,感染性膵壊死であれば,臨床所見や検査所見のみならず画像所見も増悪するはずである。また,膵膿瘍でも白血球数は増加する。したがって,血液検査所見から,壊死性膵炎や感染性膵壊死があったとはいえない。 (2)上記3(2)(本件各ERCP実施に際しての説明義務違反)について否認し,又は争う。 担当医師は,ERCPの必要性,総胆管結石治療の必要性,施術の時期,総胆管結石に対する各治療法の利害得失,合併症について,繰り返し十分に説明した上で,Cから本件各ERCPの実施について同意を得た。 (3)上記3(3)(本件各ERCPにおける手技上ないし実施上の義務違反)に ついてア担当医師は,本件各ERCPにおいて手技上ないし実施上の義務に違反したとはいえない。その理由は以下のとおりである。 (ア)胆管結石の外来患者の場合,外来でまず検査目的のERCPをした上で,EPBDは合併症の説明等の問題がある おいて手技上ないし実施上の義務に違反したとはいえない。その理由は以下のとおりである。 (ア)胆管結石の外来患者の場合,外来でまず検査目的のERCPをした上で,EPBDは合併症の説明等の問題があるので改めて入院して行うのが一般的であるところ,本件も,第1回ERCPの際の胆管造影は,あらかじめ総胆管結石の有無,結石の大きさ,個数,位置を検査することが目的であり,第2回ERCPの際の胆管造影は,EPBDに先立ち結石の位置等や遺残結石の有無を確認をすることが目的であったのであり,2回に分けて実施したことが不適切であったとはいえない。 第1回ERCPの際の膵管造影は,膵疾患のスクリーニングをするとともに,膵管開口部が開口していることを確認するため,主膵管の造影を実施した。第2回ERCPの最初のカニュレーションの際は,胆管造影時にわずかに膵管が造影されたにすぎず,これにより膵管の位置を確認し,カニューレの膵管への誤挿入などを予防することができる。本件各ERCPの際の残結石確認時には膵管は造影されていない。なお,一,。 般に胆管の選択的造影を試みても膵管が造影されてしまうこともある(イ)aマノメーターや自動注入器の使用は一般的ではなく,これらを使用すべきであったとはいえない。 b止血剤が必要な出血もなく,乳頭等を不適切な手技により傷害したという事実はない。 カニューレの挿入回数は,結石の状態あるいは切石操作の難易等の具体的状況により自ずと幅があるのであり,特に本件のように複数個の結石や大きな結石がある場合は,複数回の挿入は避けられない。 第2回ERCPの際は,乳頭が拡張されているため,胆管内に造影,,剤が注入されても膵管はもちろん胆管内圧も上昇することはないし 膵管はわずかに造影されたにとどまることからしても,膵管に過大な圧はかけ CPの際は,乳頭が拡張されているため,胆管内に造影,,剤が注入されても膵管はもちろん胆管内圧も上昇することはないし 膵管はわずかに造影されたにとどまることからしても,膵管に過大な圧はかけられていない。 5mm前後の総胆管結石のERCP及びEPBDに要する時間は,平均40分程度であり,第2回ERCPに要した50分という時間が特別に長いものではない。 cブスコパンは2Aないし3A投与しており,その効果が切れて腸管の蠕動が激しくなったという事実は存しない。 イ第2回ERCPの前には,急性膵炎の症状は生じていなかったから,本件の急性膵炎が第1回ERCPの影響で生じたとはいえない。 ,,,ERCPEPBDの術後急性膵炎が不可避的に発症することがあり本件の急性膵炎が,本件各ERCPにおける手技上ないし実施上の義務違反によって生じたとはいえない。 (4)上記3(4)(持続動注療法の早期実施義務違反等)についてア造影CT検査の実施時期については確たる基準はないところ,12月17日ころまでに,白血球数及びCRPの増加,発熱はあったが,他方で,腹痛及び腹部理学所見が明らかに軽快傾向にあり,発熱も改善傾向にあったこと,また,造影剤には副作用があることからすれば,担当医師において,同日ころ造影CT検査を実施すべき義務があったとはいえない。 イ持続動注療法は,急性膵炎ガイドラインにおいてオプション扱いで推奨度Cとされていること,持続動注療法の本来の適応は壊死性膵炎であるところ本件の急性膵炎は壊死性膵炎ではなかったこと,12月17日ころの時点で,本件の急性膵炎の重症度スコアも1点で中等症の膵炎であったことからすると,担当医師において,同日ころに持続動注療法を実施すべき義務があったとはいえない。 ウ上記イ指摘の点,本件においても12月20日 件の急性膵炎の重症度スコアも1点で中等症の膵炎であったことからすると,担当医師において,同日ころに持続動注療法を実施すべき義務があったとはいえない。 ウ上記イ指摘の点,本件においても12月20日から持続動注療法が実施されたことからすると,同月17日から持続動注療法が実施されたとして も,本件死亡が避けられたとはいえない。 (5)上記3(5)(CHDF,SDDの実施義務違反等)についてア12月25日ころの段階では画像,症状,検査の各所見とも落ち着いてきていたこと,CHDF及びSDDは,急性膵炎ガイドラインにおいてオ,,プション扱いで推奨度Cとされていることからすれば担当医師において同日ころCHDF,SDDを実施すべきであったとはいえない。 イなお,担当医師は,12月28日にCHDFの適応と判断したが,Cから拒否され,実施することができなかった。また,Cは経鼻胃管に強い抵抗があったことからしても,CがSDDを受け入れたとはいえない。したがって,Cの同意が得られる見込みがなかったという点からしても,担当医師に上記アの義務があったとはいえない。 ウ上記ア指摘の点からすれば,12月25日ころからCHDF,SDDを実施したとしても,本件死亡が避けられたとはいえない。 (6)上記3(6)(外科手術の実施義務違反等)についてア12月28日までの造影CT上壊死性膵炎であるとはいえないこと,白血球数上昇も胆嚢炎や膵膿瘍が原因である可能性が考えられることなどからすると,感染性膵壊死が疑われるとはいえず,また,FNAには血管穿刺などの合併症があるから,担当医師において,同日ころFNAを実施すべきであったとはいえない。 イ担当医師において,12月28日ころ外科手術を実施すべき義務があったとはいえない。その理由は以下のとおりである。 (ア) から,担当医師において,同日ころFNAを実施すべきであったとはいえない。 イ担当医師において,12月28日ころ外科手術を実施すべき義務があったとはいえない。その理由は以下のとおりである。 (ア)本件の急性膵炎は,壊死性膵炎ないし感染性膵壊死ではなかった。 また,12月28日の時点で,限局化した膿瘍,嚢胞,出血などの外科的な手術のターゲットが明確になってはいなかった。本件は,膵膿瘍や,,膵仮性嚢胞に対しまず経皮的ドレナージを実施すべきケースであって手術適応はなかった。 (イ)外科手術の予後は悪いから,仮にそれが必要とされる場合でも,できるだけ保存的集中治療により全身状態の安定を図った上で慎重に実施すべきものとされている。 ウ上記イ(ア),(イ)の各点からして,外科手術を実施すれば本件死亡を避けられたとはいえない。 (7)上記3(7)(絶飲食管理義務違反)について否認し,又は争う。 Cに対しては,12月13日以降絶飲食で管理しており,同月25日も同様である。同日の食事箋は,CT検査があったため,習慣的に記載された可能性がある。 (8)上記3(8)(胃液吸引義務違反)について否認し,又は争う。 担当医師において,1月9日当時,胃液誤嚥を予見することはできなかった。また,Cはチューブ挿入を拒否していたため,事前の胃液吸引,胃管チューブ挿入はできなかった。胃液誤嚥に対する対策としては,誤嚥した際に迅速に対応できる体制を取っていれば十分であったところ,本件でも現に5分程度で迅速に対応した。なお,口腔内吸引は状況により適時行っていた。 (9)上記3(9)(損害)について否認し,又は争う。 第3当裁判所の判断(,,,,, 前記前提事実に証拠乙A2 10ないし13証人D証人Fのほか各項に掲記したもの)及び 9)上記3(9)(損害)について否認し,又は争う。 第3当裁判所の判断(,,,,, 前記前提事実に証拠乙A2 10ないし13証人D証人Fのほか各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を併せると,次の事実が認められる。 (1)第2回ERCP前の診療経過(乙A1)アCは,平成13年10月31日の被告病院の人間ドックにおいて,かねてから指摘されていた胆嚢結石に加え,総胆管結石も指摘されたため,11月17日,被告病院の外科を受診した。担当医師は,Cに対し,総胆管 ,,結石に対する治療の必要性その確定診断のためにERCPが必要であり胆管及び膵管の造影をすること,そのことにより急性膵炎発症のリスクがあることなどを説明し,Cの同意を得た上,造影CT検査とERCPを予約した。同月22日の造影CT上,胆嚢結石と小さな総胆管結石の所見が認められた。 イD医師は,12月6日,第1回ERCPを実施し,胆管を造影するとともに,主膵管をも造影したところ,5mm強の総胆管結石2個及び胆嚢結石1個を認め,主膵管には特段病変を認めなかった。 そこで,担当医師は,同月8日,Cに対し,①総胆管結石に対する治療の必要性,②総胆管結石及び胆嚢結石に対する治療方法としては,<ア>開腹手術によるもの,<イ>内視鏡的に総胆管結石を切石して,その後腹腔鏡下胆嚢摘出術を実施するもの,<ウ>全て腹腔鏡下に行うものの3通りある,,,,こと③<ア>の方法は確実性はあるが術後3週間の入院の必要があり回復にも時間がかかること,<ウ>の方法は,確実性に疑問があり,高度の技術を要し,標準的治療とはいえないこと,<イ>の方法は,2回手術をするという煩わしさはあるが,最も低侵襲で傷も小さく,回復も早いため,最も多く行われていること,したがって<イ>の 問があり,高度の技術を要し,標準的治療とはいえないこと,<イ>の方法は,2回手術をするという煩わしさはあるが,最も低侵襲で傷も小さく,回復も早いため,最も多く行われていること,したがって<イ>の方法が勧められることなどを説明し,Cは,<イ>の方法による処置を受けることに同意した。 ウCは,12月12日,被告病院外科を受診し,E医師から,咽頭麻酔下でEST又はEPBDを実施し,総胆管結石を切石する処置を実施すること,出血,急性膵炎などの合併症があることの説明を受けた。そして,できるだけ早く職場復帰したいという希望を伝えたところ,通常1週間程度で退院できることが多いという説明を受け,上記処置を受けることを最終的に承諾し,入院した。 (2)第2回ERCP(12月13日)の際の経過(甲A9,乙A7,8)D医師は,咽頭麻酔の後,ブスコパンを静脈注射し,午前9時50分,第 2回ERCPを開始した。 ア午前9時53分,内視鏡を乳頭の近傍まで挿入し,乳頭を観察した。午前9時57分,造影用カテーテル(カニューレ)を乳頭に挿入し,選択的に胆管造影を実施し,4mmないし5mmの総胆管結石を2つ確認した。 その際,わずかに主膵管も造影された。 その後,総胆管に選択的挿管を実施してガイドワイヤーを総胆管内に挿,,,,入した上午前10時3分胆管拡張バルーンを挿入し午前10時5分直径8mmまで拡張した。この時までに,最初の胆管造影の際に主膵管に入った造影剤のほとんどが流出した。 午前10時9分,拡張バルーンを除去した上,採石バルーンを用いて結石を徐々に引き出し,午前10時31分,バスケットカテーテルを用いて結石を1つ切石した。しかし,もう1つの結石の排出は確認されなかった,,,ので胆管造影を繰り返して遺残結石がないかを確認したが発見され に引き出し,午前10時31分,バスケットカテーテルを用いて結石を1つ切石した。しかし,もう1つの結石の排出は確認されなかった,,,ので胆管造影を繰り返して遺残結石がないかを確認したが発見されず既に総胆管から排出されたものと判断し,午前10時40分,第2回ER。 ,,CPを終了したなお以後に実施された腹部エコー等の検査においても総胆管の結石遺残や狭窄等の異常は認められなかった。 イ第2回ERCPにおいて,D医師は,ブスコパンを2A又は3A使用しており,少なくとも,カニューレ等の操作に支障を来すほど腸が蠕動するということはなく,術中に大量の出血はなかった。また,膵管は,最初の胆管造影の際以外は造影されていない(原告は,それ以外にも膵管造影が繰り返された旨主張するが,そのことを認めるに足りる内視鏡写真やレントゲン写真等の証拠は存しない。 。)なお,D医師は,本件各ERCPにおいて,造影剤を注入するに際し,マノメーターや自動注入器を使用することはなかった。 (3)第2回ERCP後の外科における診療経過ア第2回ERCP後,12月13日午後0時ころから,急性膵炎の発症を 予防するために担当医師があらかじめ指示していた抗菌薬と蛋白質分解酵素阻害薬の投与が開始された。しかし,その後,腹痛が生ずるとともに血中アミラーゼが上昇し,同日午後4時ころ,担当医師は,急性膵炎の発症を診断した。 イ本件の急性膵炎発症後,外科入院中のCの腹痛,腹部所見及び発熱の状況は概ね以下のとおりであった。 (ア)腹痛,,()本件の急性膵炎の発症以降腹痛が持続しボルタレン解熱鎮痛薬又はペンタジン(鎮痛薬)の投与を1日2回程度受けていたが,遅くとも12月17日には,痛みが落ち着いて調子がいいと話すなど軽快傾向を見せ始め,同月20日までに, 腹痛が持続しボルタレン解熱鎮痛薬又はペンタジン(鎮痛薬)の投与を1日2回程度受けていたが,遅くとも12月17日には,痛みが落ち着いて調子がいいと話すなど軽快傾向を見せ始め,同月20日までに,上記の投薬も不要となり,時間によっては腹痛を訴えなくなるなど,腹痛の状態は改善した。 (イ)腹部所見本件の急性膵炎の発症時には,心窩部付近に,圧痛があり,筋性防御ははっきりしなかったが,12月14日には,筋性防御もはっきりとあり,それらの所見の範囲も広がった。しかし,同月17日には,それらの所見の範囲が縮小し始め,同月20日までに圧痛も軽減した。 なお,同月18日には,同部位(膵の下方の横行結腸のあたり)に腫瘤が触知され,同月19日には小手拳大の大きさであったが,同月20日には,明らかに縮小し,硬さも軽減した。 (ウ)発熱12月13日は36℃台の体温であったが,同月14日には37℃台に上昇し,同月15日から同月20日までの間は,37℃台後半ないし38℃の熱が毎日出ていた。なお,同月13日から同月19日まで,1日1回ないし2回,ボルタレンの投与を受けていた。 ウ担当医師は,腹部造影CTを次のように読影した。 (ア)12月14日の腹部造影CT膵頭部から膵体部にやや腫大があり,周囲にわずかに浸出液がある。 胆管内ガス像がある。 (イ)12月20日の腹部造影CT膵体部の一部に低吸収域があり,膵頭部から膵体部にかけて前方の腸間膜を中心に大網にまで炎症が波及しており,浸出液の貯留もみられ,上記(ア)のCT所見より増悪している。 エ(ア)担当医師は,12月20日までは,上記ウ(ア)のCTの所見,上記イのCの症状,血液検査結果(別紙検査結果一覧表(以下の血液検査結果も同様とする)などから,本件の急性膵炎は,せいぜい中等症で。)あって重症 ,12月20日までは,上記ウ(ア)のCTの所見,上記イのCの症状,血液検査結果(別紙検査結果一覧表(以下の血液検査結果も同様とする)などから,本件の急性膵炎は,せいぜい中等症で。)あって重症ではなく,少なくとも同月17日ころからは軽快傾向にあると考えていた。そのため,担当医師は,保存的治療のみを実施した。具体的には,輸液,絶飲食管理(同月13日以降一貫して絶飲食管理がなされていたことについては,下記9(2)において認定するとおりである,抗菌薬及び蛋白質分解酵素阻害薬の投与,ボルタレンやペンタ。)ジンによる発熱や腹痛のコントロールなどを実施した。 担当医師は,上記イ(イ)の腫瘤について,発症時期からすると早すぎるが,所見からは膵仮性嚢胞も疑われると考え,また,急性膵炎の経過,。 を確認するため同月20日に腹部造影CT検査を実施することとした(イ)担当医師は,12月20日,上記ウ(イ)のCTの所見から,本件の急性膵炎は増悪傾向にあり,治療抵抗性があると判断した。そして,膵仮性嚢胞の形成等も危惧し,今後,保存的治療のみならず,持続動注療法等も含めた内科的な管理が必要であると考え,Cを内科に転科させることとした。 (4)内科転科後の診療経過ア内科入院中のCの腹痛,腹部所見,発熱及び排便の状況は概ね以下のと おりであった(ただし,各項のうち,括弧内に期間の記載のあるものについては,その期間のみの状況である。 。)(ア)腹痛12月20日及び21日には自制内の腹痛が時々あったが,同月22日から26日午後2時ころまでは,ほとんど腹痛はなかった。しかし,同日午後6時ころに腹痛を生じ,1月5日及び6日ころに軽減したものの,その後も腹痛が続き,再びボルタレンやペンタジンの投与も受けるようになった。 (イ)腹部所見(12月2 腹痛はなかった。しかし,同日午後6時ころに腹痛を生じ,1月5日及び6日ころに軽減したものの,その後も腹痛が続き,再びボルタレンやペンタジンの投与も受けるようになった。 (イ)腹部所見(12月21日から30日まで)心窩部の腫瘤は,12月21日には,軽い圧痛があったが,筋性防御はなく,同月22日には,鶏卵大まで縮小し,硬さもさらに軽減し,圧痛も軽減した。同月27日には,やや増大したが,同月28日には再び軽快傾向となった。腹部の他の部分は軟らかくかつ平坦であった。 (ウ)発熱,。 12月21日から29日まで37℃以上の発熱はほとんどなかった同月30日,31日には37℃台の発熱があり,その後は本件心肺停止まで,37℃以上の発熱はほとんどなかった。 (エ)排便(12月20日から29日まで)入院以来下痢が続いていたところ,12月23日には下痢便が多量にあり,同月24日には,泥状便が多量にあり,また茶色の水様便が中等量あり,同月25日には泥状便が2回(うち1回は中等量)あり,同月26日には粘液便が中等量あり,また粘液状のやや黒色から茶色の便が(),(),多量潜血±にあり同月27日にはタール便粘液が多量にあり泥状便が中等量あり,同月28日には泥状便(タール様)が中等量あった。しかし,同月29日ころには,わずかにタール便が続くという程度に落ち着いてきた。 ,,,,。 イ担当医師はエコーレントゲンCTについて次のように読影した(ア)12月20日の腹部造影CTCTグレードはⅢないしⅣで,壊死性膵炎が疑われる所見である。 (イ)12月21日のエコー膵尾部が不描出で,膵体部が26mmに腫大している。胆嚢壁に軽度の肥厚がある。 (ウ)12月25日の腹部造影CT膵臓が,12月20日よりも縮小し,辺縁 る所見である。 (イ)12月21日のエコー膵尾部が不描出で,膵体部が26mmに腫大している。胆嚢壁に軽度の肥厚がある。 (ウ)12月25日の腹部造影CT膵臓が,12月20日よりも縮小し,辺縁も明瞭化し,膿瘍と正常膵との境界もはっきりしてきており,腸間膜の浸出液も縮小し,脂肪濃度上昇も改善傾向にある。わずかに胸水がある。 (エ)12月26日のエコー膵体部及び膵尾部に壊死性膵炎が疑われる所見があり,その部分が3cm大に縮小している。胆嚢壁が13mmに肥厚している。 (オ)12月28日の胸部レントゲン胸水がある。 (カ)12月29日のエコー膵頭部付近に43mmの膵仮性嚢胞あり,被膜形成あり,膵体部及び膵尾部に38mm×33mm大の壊死性膵炎が疑われる所見があってエコー輝度が上昇している。胆嚢壁が8.2mmに肥厚している。腹水,胸水はない。 (キ)1月1日の腹部レントゲン小腸ガスがあり,亜イレウスの所見である。 (ク)1月1日のエコー膵頭部付近に40mmの膵仮性嚢胞があり,被膜形成している,膵尾部に45mm大の膿瘍がある。脾静脈塞栓がある。脾臓の所見として,腹水があり,脾上方の塞栓が疑われる。 (ケ)1月2日の胸腹部レントゲン(同月3日も同様の所見)肺のむくみがある。心胸郭比は正常である。大腸ガスがあり,小腸ガスが残る。 (コ)1月4日の胸腹部造影CT膵頭部の限局した液体貯留は軽度増大しているが,膵頭部の腫大は改善しており,膵炎は改善傾向にある。胸水及び腹水はやや増加し,無気肺の所見がある。腹膜炎,胸膜炎が出現している。 (サ)1月7日の胸腹部レントゲン肺浮腫,肺炎がある。大腸ガス,小腸ガスがある。フリーエアーはない。 (シ)1月9日の胸腹部造影CT。 。 左下腹部の膿瘍が増大しているフリーエアーがあるよう (サ)1月7日の胸腹部レントゲン肺浮腫,肺炎がある。大腸ガス,小腸ガスがある。フリーエアーはない。 (シ)1月9日の胸腹部造影CT。 。 左下腹部の膿瘍が増大しているフリーエアーがあるようにも見える胸水は変化がない。 ウ(ア)担当医師は,上記イ(ア)のCT所見や血液検査結果などから,重症度スコアは2点で重症急性膵炎(ステージ2)に当たると判断し,持続動注療法を開始した。担当医師は,12月22日ころには,上記アの症状(腹痛,腹部所見,発熱の改善)などから,本件の急性膵炎は,持続動注療法により軽快傾向にあると判断していた。 (イ)担当医師は,上記イ(イ),(エ)のエコー所見などから,12月26日,急性胆嚢炎と診断し,PTGBA(経皮経肝胆嚢穿刺吸引術)を実施した。 担当医師は,同月27日ころ,上記ア(イ)の腹部所見の悪化に加え,血液検査上,脱水,重度感染,腎障害が疑われたことから,Cの状態は悪化したと判断した。そして,CHDFないしエンドトキシン吸着療法を考慮し,Cに対してもその説明を簡単にした。 (ウ)担当医師は,12月29日,上記イ(カ)のエコー所見などから胆嚢 炎は改善していると判断したまた尿が十分出ていたためCHDFH。 ,(DF)を見送ることとし,血中エンドトキシンも基準値内であったためエンドトキシン吸着療法も見送ることとした。そして,上記イ(カ)のエコー上,膵膿瘍ないし膵仮性嚢胞と思われる部分は6cm以下であったため,経皮的ドレナージは実施せず,保存的治療で経過観察をすることとした。 担当医師は,同月30日ころには,血液検査結果から,感染コントロールは良好で,腎障害も軽快傾向にあると判断し,また,上記ア(イ)のとおり腹部所見も改善したことなどから,全体的にCの状態は改善傾向にあると考えた。 ,,, は,血液検査結果から,感染コントロールは良好で,腎障害も軽快傾向にあると判断し,また,上記ア(イ)のとおり腹部所見も改善したことなどから,全体的にCの状態は改善傾向にあると考えた。 ,,,(エ)12月31日左側腹部痛の訴えがあったため担当医師が診察し腹部に圧痛及び筋性防御を認め,イレウスと診断し,経鼻胃管を挿入した。担当医師は,1月1日,上記イ(キ)(腹部レントゲン,(ク)(エ)コー)の所見などから,腹水や亜イレウスが生じている原因は本件の急性膵炎自体の増悪ではなく脾梗塞によるものであると考えた。そして,白血球数が減少傾向にあること,絶飲食管理をしており嘔吐もないことからCが希望しなかったイレウス管と経鼻胃管は挿入せずHBO高,,(気圧酸素療法)を実施することとし,Cの承諾を得て開始した。同月3日までに排ガス,排便も見られたことなどから,担当医師は,亜イレウスは軽快したと判断し,HBOを終了した。 (オ)担当医師は,血糖コントロール不良に対しては,インスリンの投与にスライディング・スケールを導入して対応していたが,1月3日ころまでに,不良の状態が続き,低カリウム血症も進行してきた。そして,肺にむくみもあり,血中に化学遊離物質(chemicalmediator)がある,,,,ことを想定しHDFを実施することとし同月3日Cの了解を得て同月4日,5日,7日に実施した。 (カ)1月4日以降,意識状態に影響が出るほど呼吸状態が悪化してきたため,担当医師は,酸素吸入を開始した。 担当医師は,上記イ(コ)のとおり,胸水,腹水のCT所見があったことなどから,膿胸や左下腹部膿瘍を念頭に経皮的ドレナージを実施すべきであると考え,遅くとも同月5日以降,Cに対し,経皮的ドレナージを受けるよう強く勧めたが,痛みの伴う 胸水,腹水のCT所見があったことなどから,膿胸や左下腹部膿瘍を念頭に経皮的ドレナージを実施すべきであると考え,遅くとも同月5日以降,Cに対し,経皮的ドレナージを受けるよう強く勧めたが,痛みの伴う治療はどうしても嫌であるとして断られ続け,同月8日,Cの友人からも説得してもらった結果,よう,。 やく承諾が得られ同月9日以降経皮的ドレナージの実施が予定されたまた,同月5日以降下痢がひどくなったことなどから,担当医師は,偽膜性腸炎やMRSA腸炎を危惧し,同月8日に大腸内視鏡検査を実施したところ,一過性型の虚血性腸炎の治癒期の像を認めた。 担当医師は,同月9日,上記イ(シ)のフリーエアーは,消化管穿孔によるものか,あるいはガス産性のものかと考えた。 (キ)1月9日12時ころ,Cは,上記イ(シ)のCT検査を終え,仰臥位の状態でストレッチャーに乗せられて帰室する際,胃液を誤嚥し,チアノーゼ状態,心肺停止状態に陥り,その状態が約5分続いた。担当医師及び担当看護師は,あらかじめ胃液を吸引してはいなかった。Cは,心肺蘇生等により呼吸は回復したものの,ショック状態に陥っており,人工呼吸器管理,昇圧剤投与などの処置が実施されたが血行動態は安定せず,多臓器不全となり,午後10時40分,その死亡が確認された。なお,上記処置の際に採取された胸水を培養した結果,緑膿菌が検出された。 医学的知見証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の医学的知見が認められる。なお,本件当時以降の知見も含まれている。 (1)総胆管結石(乙B45,46) 総胆管結石は,一度胆石発作が起こると繰り返し,胆管炎や膵炎を合併するため,切石が必要である。 総胆管結石の治療は,従来は開腹手術が標準的であったが,現在はESTやEPBDなどの内視鏡的治療が標準的となって 石は,一度胆石発作が起こると繰り返し,胆管炎や膵炎を合併するため,切石が必要である。 総胆管結石の治療は,従来は開腹手術が標準的であったが,現在はESTやEPBDなどの内視鏡的治療が標準的となっている。 (2)ERCP,EST,EPBDア適応(甲B2,3,乙B5,6,7,8,9,46),。 ,(ア)ERCPは胆膵疾患の疑われる症例は全て適応となり得る他方急性膵炎などのように急性炎症を生じている病態は,ERCPにより炎症を増悪させる危険があるため,原則として禁忌とされている。 ERCPは,非観血的に膵管を造影する唯一の方法であり,精密検査法としての役割のみならず,膵癌等の膵疾患の早期診断を目的として,自覚症状,理学的所見,血液生化学検査などから膵疾患が疑われる症例に対しては,スクリーニング検査としても広く用いられている。 (イ)ESTは,全ての総胆管結石が適応となり得る。EPBDは,総胆管結石のうち,5mmないし10mm以下の小結石を対象とすべきという報告が多い。 イ前処置(甲B2,3,乙B6,9,10)ブスコパン(鎮痙剤,20mg/1mℓ/A)は,内視鏡操作の妨げとなる消化管運動を抑制するため,ERCPの前に1Aないし2Aを投与する。処置を継続する必要があれば,適宜追加する。 ウ造影成績(乙B6,10)膵管と胆管を完全に選択的に造影することは不可能で,目的部以外も造。 ,影されてしまうことが多い一般に膵管の方が胆管に比べて造影しやすく造影成績は,一般に膵管90~95%,胆管80~85%である。 エ合併症(甲B1ないし3,5,乙B5,6,8,10),ERCPの合併症としては,胆管炎,急性膵炎,穿孔などがある。ER CP後急性膵炎の発症率・発症者の死亡率について,それぞれ,0.24. (),. . %・5 乙B5,6,8,10),ERCPの合併症としては,胆管炎,急性膵炎,穿孔などがある。ER CP後急性膵炎の発症率・発症者の死亡率について,それぞれ,0.24. (),. . %・52%という報告昭和48年の全国調査 0922%・47%という報告(昭和63年から平成4年までの全国調査)がある。 EPBDの合併症として,胆管炎,穿孔,急性膵炎,出血などが報告されている。EPBDやESTを含む内視鏡的乳頭処置を行う場合,診断のみのERCPに比べて急性膵炎の発症率は高い。膵管造影を行うと急性膵炎発症の頻度は増し,その造影回数に比例して頻度も増加するという報告がある。 オ急性膵炎発症の予防法(甲B1ないし3,45の5・6,乙B10,33)(ア)ERCP,EPBDの手技について,急性膵炎発症を防ぐために下記の各点に注意すべきであるとする見解がある。 ①乳頭への頻回の刺激や損傷による乳頭浮腫や括約筋の攣縮は急性膵炎の原因となり得るので,乳頭を良く確認した上で,確実にかつ愛護的に挿管を行う。 ②急性膵炎は,一般に過度の膵管造影後に発症することが多い。したがって,必要のない膵管造影,特に腺房造影は行わない。そして,胆,、,,管膵管への選択的挿管が困難な場合には頻回の挿管造影は避け他の検査によるか,後日再検査する。 ③造影剤の注入による膵管壁の刺激や逆行性感染が急性膵炎の原因となり得るので,膵管への造影剤の注入時には,無理に圧を加えず,かつ十二指腸液や胆汁を微量たりとも膵管内に注入しないよう注意する。 ④カニュレーションにかける時間はできるだけ短くする。総胆管結石に対するEPBDにおいては,浮腫などによる膵炎のリスクの上昇が考えられるため,長時間(約40分以上)の治療は行わない。 ⑤EPBDにおいては ョンにかける時間はできるだけ短くする。総胆管結石に対するEPBDにおいては,浮腫などによる膵炎のリスクの上昇が考えられるため,長時間(約40分以上)の治療は行わない。 ⑤EPBDにおいては,バルーンの過剰な加圧,拡張を避ける。 (イ)急性膵炎発症を防ぐため,ERCP後には,患者の安静を保ち,絶飲食とし,抗生物質や膵酵素阻害剤を投与する処置がよく取られる。 (3)急性膵炎(本項では,急性膵炎ガイドライン(甲B5)を基礎として知見を認定する(したがって,以下でいう「現在「今日」とは,同ガイド」,ラインが出版された平成15年ころをいう)こととし,他の証拠により認。 定した知見は〔〕を付する)。 ア急性膵炎の病態(ア)急性膵炎の発症及び進展機序の概要〔トリプシンをはじめとする膵臓の消化酵素は,通常は膵臓内で活性化しないよう種々の防御機構が設けられているが,何らかの理由により,()。 ,活性化すると膵臓自身を消化してしまう急性膵炎の発症そしてサイトカインが誘導されて高度の炎症が惹起され,それにより好中球が活性化されることなどにより,多臓器不全を来す(甲B4,7の1。〕1,55の1・2)(イ)急性膵炎における感染症〔急性膵炎ないし重症急性膵炎における感染症発症率とその内訳について,それぞれ別表⑤,⑥のような報告がある(乙B23,26)。〕〔,。〕膵感染症の鑑別点と治療法について別表⑦のような見解がある(甲B4,乙B20)(ウ)急性膵炎による死亡率等a急性膵炎患者の死亡率死亡率は,昭和63年の全国調査では,中等症2%,重症30%であり,平成11年の全国調査では,全体7.2%,重症21.4%であった。重症度スコア2点ないし7点の患者の死亡率が9.1%という全国集計例もある。死亡率は,加齢 国調査では,中等症2%,重症30%であり,平成11年の全国調査では,全体7.2%,重症21.4%であった。重症度スコア2点ないし7点の患者の死亡率が9.1%という全国集計例もある。死亡率は,加齢とともに高くなり,平成3年か ら平成7年にかけての日本におけるアンケート調査によれば,50歳以上の症例では20%を超えていた。 b死亡時期,死因死亡例のうち,30%ないし55%の患者が発症から1週間以内の早期に死亡している。 昭和63年の全国調査では,急性膵炎の死亡は,発症から2週間以内の早期の死亡例では,高度の脱水に伴う循環不全によるものが過半数を超え,2週間を超えてからの死亡例では,腎不全,呼吸不全,消化管出血,敗血症,循環不全が死因として挙げられている。一般に,後期死亡例では主に感染性合併症,特に感染性膵壊死に起因する場合が多い。 壊死性膵炎の全死亡率は30%ないし40%,無菌性壊死の場合は0%ないし11%,感染性膵壊死を来した場合は平均で40%,報告によっては70%を超えるとされている。 イ急性膵炎の診断今日まで,急性膵炎診断基準は,ゴールデン・スタンダードとして用いられている。 (ア)臨床症状・徴候全患者に対し,病歴聴取・身体診察を実施する(推奨度A。腹痛,)背部への放散痛,食欲不振,嘔気・嘔吐,腸雑音の減弱などが頻度の高い症状,徴候であるが,急性膵炎にのみ特異的なものではないため,他の急性腹症との鑑別を要する。 (イ)血液・尿検査通常は,血中アミラーゼを測定(推奨度A)し,その上昇を認めることにより急性膵炎の診断が可能である。他疾患との鑑別が問題となる場合,血中リパーゼの測定(推奨度A)が推奨される。 (ウ)画像検査a胸・腹部単純X線(推奨度A)腹部単純X線所見として,イレウス像,小腸拡張像,十二指 である。他疾患との鑑別が問題となる場合,血中リパーゼの測定(推奨度A)が推奨される。 (ウ)画像検査a胸・腹部単純X線(推奨度A)腹部単純X線所見として,イレウス像,小腸拡張像,十二指腸ループの拡張・ガス貯留像などがある。また,胸部単純X線所見として胸水貯留像,ARDS像,肺炎像などを認める。これらの所見は,いずれも急性膵炎に特異的な所見ではないが,臨床経過の把握や他疾患との鑑別のためには必須の検査である。 bエコー(推奨度A),,エコーは膵腫大や膵周囲の炎症性変化を捉えることが可能であり急性膵炎の診断に有用である。また,腹水,胆道結石,総胆管拡張などの急性膵炎の原因や病態に関連する異常所見を描出し得る。 cCT(推奨度B)急性膵炎の診断に有用なCT所見として,膵腫大,膵周囲の炎症性変化,液体貯留,膵実質density(密度)の不均一化などがある。 臨床所見や血液・尿検査,エコーによって急性膵炎の確定診断ができない場合や,膵炎の成因が明らかでない場合にはCTを施行すべきである。 ウ急性膵炎の重症度診断(ア)重症度判定の必要性(推奨度A)適切な初期治療導入のために重症度判定は重要である。また,初期には,軽症でも急速に重篤化する場合もあるため,特に発症48時間以内では継続的な評価も必要である。 (イ)臨床徴候による重症度判定(推奨度A)臨床徴候は多彩で,重症度判定に用いるにはその客観的評価が難しい,,,(,)場合が多いがショック精神・神経症状腹部膨隆イレウス腹水などの重要臓器機能不全徴候を示す症例は重症と判定される。 (ウ)血液検査血中アミラーゼ,リパーゼの測定(推奨度D)は,重症度を反映しない。 CRPの測定(推奨度A)は,重症度判定の参考になる。ただし,発症後48時間以内で 例は重症と判定される。 (ウ)血液検査血中アミラーゼ,リパーゼの測定(推奨度D)は,重症度を反映しない。 CRPの測定(推奨度A)は,重症度判定の参考になる。ただし,発症後48時間以内ではCRPは重症度を反映しないことがあるので注意が必要である。 (エ)CT(推奨度A),。 a膵壊死の有無やその範囲炎症性変化の広がりは重症度と相関する膵壊死の有無や壊死の正確な診断のためには,造影CT検査を行うことが必要である。ただし,造影に伴う腎機能の増悪やアレルギー反応等の可能性に留意する必要がある。 b造影CT検査が浮腫性膵炎と壊死性膵炎を鑑別する最も有用な方法。 ,である狭い範囲の非造影域は膵実質の浮腫性変化を表すのに対して広い範囲の非造影域は,膵壊死を表す。アトランタシンポジウム(急性膵炎に関する国際シンポジウム,1992年)では,膵の30%。 以上の領域あるいは直径3cm以上の造影不良域を膵壊死と定義したが,最近では,この定義よりも狭い範囲の造影不良域も膵壊死と判断することが多い。しかし,現在のところ,浮腫性変化と狭い範囲の膵壊死の鑑別になる明確な基準はない。 〔造影CT上,低吸収域(lowdensityarea)と判定される膵実質は,必ずしも壊死に陥っているのではなく,可逆的な変化であることが多い。その本態は,膵炎発症早期における動脈の狭細化による膵虚血が関与しており,壊死成立か回復かの転換点となっている。持続動注療法を早期に実施することにより,壊死性膵炎への移行を阻止できる可能性がある(甲B7の10,乙B11,31)。〕〔造影CT検査による壊死性膵炎か浮腫性膵炎かの診断における正 診率は80~90%である(乙B28)。〕c英国消化器病学会のガイドラインにおいては,発症初期の段階では壊死がまだ明 。〕〔造影CT検査による壊死性膵炎か浮腫性膵炎かの診断における正 診率は80~90%である(乙B28)。〕c英国消化器病学会のガイドラインにおいては,発症初期の段階では壊死がまだ明瞭化していない場合があること,初期治療を行ってから造影CT検査を実施した方が良いという観点から,重症急性膵炎では入院後3日ないし10日の間に造影CT検査を実施すべきであるとされている。しかし,欧米の報告の中にも,入院後36時間以内あるいは48時間以内に造影CT検査を実施することが急性膵炎の重症度診断に有用であることを示したものもある。日本では,動注療法の適応を見極めるために入院当日に撮影することが多い。初回検査後も,定期的に,また他の合併症が疑われる場合にも撮影する必要があるとされる。 (オ)エコー〔浮腫性膵炎では,膵腫大とともに,膵実質像は均一な低エコーを示。 ,,,すことが多い一方壊死性膵炎では膵内の壊死組織や出血を反映し膵実質像は高エコーと低エコーが規則的に混在した斑状を呈することが多い(甲B7の6)。〕(カ)重症度スコアによる判定(推奨度A)日本では,厚生労働省の重症度スコアによる判定が推奨される。 エ急性膵炎の治療(ア)基本的治療方針急性膵炎ガイドラインは,急性膵炎の診療について,別表⑧のフローチャートを提示している〔厚生省平成8年治療方針は,重症膵炎の治。 療について,別表⑨のフローチャートを提示している(甲B4)。〕急性膵炎に対する治療は,絶食をはじめとした膵の安静,呼吸・循環動態の維持若しくは改善,十分な除痛,膵局所合併症の予防などを徹底することが基本となる。また,急性膵炎は,膵酵素による膵の自己消化 を本態とするが,しばしばこの炎症は膵に止まらず,膵組織の損傷により過剰に産性されたh 十分な除痛,膵局所合併症の予防などを徹底することが基本となる。また,急性膵炎は,膵酵素による膵の自己消化 を本態とするが,しばしばこの炎症は膵に止まらず,膵組織の損傷により過剰に産性されたhumoralmediator(サイトカイン等)を介して全身に及ぶ。したがって,重症度判定を的確に行い,重症例ではこの全身性の炎症波及と臓器障害の合併を阻止し,さらには既に合併している臓器障害を適切に治療することも重要なポイントとなる。 軽症・中等症の膵炎では,体温,脈拍数,血圧,尿量などの基本的なモニタリングのみで十分であり,一般病棟での管理が可能である。末梢静脈路を確保し,通常の維持輸液に加え,炎症に伴う循環血漿量の低下を補うために十分な輸液を行い脱水を補正しなければならないが,中心静脈路の確保は必要ない。 しかし,重症例では,厳密な循環・呼吸器管理及び多臓器不全と感染性合併症(急性膵炎の2大死因)に対処する必要がある。末梢静脈路,中心静脈路を確保し,定期的に動脈血ガス分析を行い,酸塩基平衡・電。 ,,,解質バランスの補正に努める必要があるまた経時的に脈拍数血圧CVP(中心静脈圧,呼吸数,酸素飽和度,尿量,体温を評価し,水)分バランスを評価することが重要である。 (イ)絶食〔絶食は,食事による膵外分泌の刺激を回避し,膵の安静を図ることができるため,急性膵炎の治療に有効と考えられてきた。経口摂取の開始時期については,腹痛や圧痛など腹部症状の消失が1つの目安になる可能性があるが,重症例においては腹痛や急性膵炎の再燃に注意する必要がある(乙B29)。〕(ウ)輸液(初期の十分な輸液・推奨度A),,重症例だけではなく軽・中等症例においても通常の維持輸液に加え炎症に伴う循環血漿量の低下を補うために十分な初期輸液を行うべき る(乙B29)。〕(ウ)輸液(初期の十分な輸液・推奨度A),,重症例だけではなく軽・中等症例においても通常の維持輸液に加え炎症に伴う循環血漿量の低下を補うために十分な初期輸液を行うべきである。重症急性膵炎では,その病態が複雑であるため,輸液方法につい ての画一的な基準はなく,検査結果などを指標に決めるほかない。 〔1週間以上の絶食が必要となる場合には,循環動態が安定する時期,。 ,を待って高カロリー輸液を開始する急性膵炎の発症直後には高血糖尿糖が高頻度で認められる上,高カロリー輸液の影響もあって,血糖の管理が困難であることも多く,インスリンの持続投与を必要とすることもある。重症急性膵炎の際には血糖の上昇する頻度は50%ないし70%,尿糖の頻度30%程度と報告されているが,多くの場合は一過性である(甲B7の4,乙B13,14)。〕(エ)疼痛対策(推奨度A)疼痛は,患者を精神的に不安に陥れ,臨床経過に悪影響を及ぼす可能性があるため,発症初期より十分な除痛が必要となる。 (オ)抗菌薬の予防的投与(重症例・推奨度A,軽症例・推奨度D)重症例及び重症化が予測される症例では,致死的な合併症である膵及び膵周囲の感染症の発生頻度が高いため,膵移行性の高い広域スペクトラムをもつ抗菌薬の予防的投与が必要である。 (カ)蛋白質分解酵素阻害薬の大量持続点滴静注(重症例・推奨度B)蛋白質分解酵素阻害薬の大量持続点滴静注は,重症例における合併症発症率を低下させる可能性がある。今後,投与量や有効性などについての再検討が必要である。 〔急性膵炎に対する蛋白質分解酵素阻害薬の効果としては,膵前酵素の活性化阻止,活性化された膵酵素の阻害,有害生理活性物質(サイトカイン等)の生成防止,膜の安定化,微小循環の維持・改善が期待されている(甲 炎に対する蛋白質分解酵素阻害薬の効果としては,膵前酵素の活性化阻止,活性化された膵酵素の阻害,有害生理活性物質(サイトカイン等)の生成防止,膜の安定化,微小循環の維持・改善が期待されている(甲B30の2)。〕(キ)SDD(重症例・推奨度C)〔急性膵炎においては,腸管の透過性が変化するために,腸管内の細菌が,腸管壁を通じて腹水中へ,あるいは血行性・リンパ行性に全身に 移行する(bacterialtranslocation(BT))。BTは,急性膵炎の後期合併症である重症感染症や多臓器不全の引き金として注目されている(乙B14)。〕SDDは,非吸収性抗菌薬の投与により,グラム陰性菌等の腸内細菌群を選択的に根絶することによりBTを抑えることを目的としたものであり,重症例の感染性合併症及び死亡率を低下させる可能性がある。 〔SDDは,欧米におけるガイドラインにおいても(平成10年の時点で)未だ推奨されていない(甲B7の8)。〕(ク)血液浄化法(重症例・推奨度C)早期の血液浄化法,特にCHDFは,多臓器不全への進展を防止する可能性がある。重症急性膵炎における血液浄化法は従来,腎機能代行を目的として行われてきたが,今日ではhumoralmediatorの除去効果を期待して施行される機会も増加している。 〔CHDFは,過剰な体水分を緩徐に除去することにより,体液バランスの改善,肺水腫の予防,治療などの効果も期待できる(甲B4,。〕乙B25)〔厚生労働省の研究班の全国調査でも,CHDFなどの血液浄化法が死亡率を有意に低下させるというエビデンスは得られていない(乙。〕B29)(ケ)持続動注療法(壊死性膵炎・推奨度C)点滴静注に比し,持続動注療法は,蛋白質分解酵素阻害薬・抗菌薬の膵組織濃度を高めることができる せるというエビデンスは得られていない(乙。〕B29)(ケ)持続動注療法(壊死性膵炎・推奨度C)点滴静注に比し,持続動注療法は,蛋白質分解酵素阻害薬・抗菌薬の膵組織濃度を高めることができるため,膵組織の炎症進展と感染性膵壊死を抑制することが期待でき,壊死性膵炎の死亡率及び感染合併症を低下させる可能性がある。 持続動注療法は,壊死性膵炎に対して適応とされるが,その有効性を証明するためには,RCT(無作為化臨床試験)によるさらなる評価が 必要である〔壊死性膵炎のほか,重症急性膵炎であれば持続動注療法。 の適応であるとする見解,重症度スコア9点以上の場合は適応であるとする見解,CT上壊死がなくても結腸間膜や胃下極など後腹膜に広く炎症が及んでいる場合も適応であるとする見解もある(甲B4,乙B。〕19,27,鑑定の結果)〔持続動注療法の開始時期は,発症から3日以内がゴールデンタイム,。〕であり遅くとも発症から7日以内に実施するべきという見解がある(甲B4,7の10,乙B29)〔施行期間は,多くの場合3日間でも良いが,膵の低灌流域が広範な場合には,感染予防も極めて重要であることから,5~7日間くらいが適当であり,カテーテルの長期間の留置は,血栓形成の危険もあり,安易に行うべきではないという見解がある(乙B25)。〕(コ)感染性膵壊死の診断aFNAによる感染性膵壊死の診断方法〔CTにて膵壊死部を同定し,CTガイド下に針を進め,壊死組織を吸引する。壊死組織であっても1~2mℓ以上の褐色の浸出液が吸引される。これは壊死組織が融解したものと考えられる。これを細菌培養に提出し,感染の有無を調べる(乙B31)。〕b感染性膵壊死が疑われる場合,画像ガイド下のFNAを実施するべきである(推奨度A。正診率は89.4%な が融解したものと考えられる。これを細菌培養に提出し,感染の有無を調べる(乙B31)。〕b感染性膵壊死が疑われる場合,画像ガイド下のFNAを実施するべきである(推奨度A。正診率は89.4%ないし100%と高い。 )感染性膵壊死の存在を疑う所見として,①臨床状態の増悪(突然の高熱や腹痛の増強など,②血液検査所見の増悪(白血球数やCRP)の増加など,③生理学的状態の増悪,④血液細菌培養検査陽性,⑤)血中エンドトキシン陽性,⑥画像診断による膵及び膵周囲の後腹膜ガス像の同定などがある。ただし,これらの多くは感染症を示唆する間接的所見にすぎず,本症の直接的診断法として唯一確立しているのは FNAである。 〔感染性膵壊死の診断に当たっては,敗血症徴候のほかに,CRPや血中エンドトキシンなどの血液データを参考にすることが重要である。1週間以上敗血症徴候を認める壊死性膵炎では,全例にFNAによる細菌検査を行うことを推奨するという見解もある(乙B38)。〕(サ)外科的治療a壊死性膵炎に対する外科的手術の術式選択及び外科的管理法感染性膵壊死に対しては,膵壊死部摘除術(necrosectomy)を実施する(推奨度A。手術の実施時期については,広範な膵壊死を伴う)症例では早期手術の適応とする意見がある一方で,早期に手術を行っても生存率の向上は得られないとする文献もあり,現時点ではこの点についての結論を導くことは困難である〔早期手術に否定的な見解。 には,手術の時期について,壊死と非壊死部の境界が明確になってく。〕るとされる発症後3週目以降が理想的であるなどとする見解もある(乙B28)病態の改善が得られない,あるいは臓器障害が進行し,かつ感染の可能性を否定できない非感染性膵壊死に対する膵壊死部摘除術は推奨度Bとされている。 以降が理想的であるなどとする見解もある(乙B28)病態の改善が得られない,あるいは臓器障害が進行し,かつ感染の可能性を否定できない非感染性膵壊死に対する膵壊死部摘除術は推奨度Bとされている。 膵壊死部摘除術後の外科的管理法としては,持続的局所洗浄(cont)()inuousclosedlavage 又はオープンドレナージいずれも推奨度Bを選択するべきであり,いずれを選択するかは,現時点では術中所見や術者の経験に基づき判断してよい。 b膵膿瘍に対するドレナージ膵膿瘍に対する外科的又は経皮的ドレナージは推奨度Cとされている。 最近では,78%ないし86%の症例が経皮的ドレナージのみで治 癒可能であるとの報告もある。しかし,経皮的ドレナージにより臨床所見の改善が見込まれない,あるいは見られない場合には,速やかに外科的ドレナージ術を行うべきである(推奨度B。 )c膵仮性嚢胞に対するドレナージ①腹痛などの有症状例,②感染や出血などの合併症を生じた症例,③経過観察中に嚢胞経の増大を認める症例については,ドレナージ治療の適応がある(推奨度A。 )そして,経皮的(又は内視鏡的)ドレナージを行っても改善傾向を認めない膵仮性嚢胞に対しては,外科的治療が適応となる(推奨度A。 )(4)病理ア壊死等(甲B50ないし54の各1・2)壊死とは,細胞・組織が局所的に死滅した状態で,強度の傷害作用によって起こるものである。 アポトーシスとは,細胞群において,細胞が自ら備えている蛋白を用いて生ずる散発的なプログラム細胞死である。 変性とは,細胞・組織の物質代謝が障害され,その構造あるいは物質構成に異常を生ずる病態である。変性が高度になれば,細胞・組織は死滅に赴く。 混濁腫脹とは,蛋白質変性の一種であり,実質臓器の肉眼的所見に見られる 胞・組織の物質代謝が障害され,その構造あるいは物質構成に異常を生ずる病態である。変性が高度になれば,細胞・組織は死滅に赴く。 混濁腫脹とは,蛋白質変性の一種であり,実質臓器の肉眼的所見に見られる,臓器全体が腫脹し,その割面が盛り上がり,白濁して透明感のない状態である。一般に感染症,循環障害などの場合に起こる。 (,,,イ急性膵炎の病理甲B53の1・254の1ないし355の1・257の1・2)急性膵炎の初期には,リパーゼの作用により,付近の脂肪細胞が分解されて脂肪壊死(にぶい灰白ないし黄白色の半米粒大から米粒大の小斑点の 所見を認める)に陥る。進展すると,膵臓の実質まで溶け出し,膵小葉。 の壊死巣が散在し,出血や血栓形成も認められるようになる。また,脂肪壊死巣も拡大し,膵臓のみならず,後腹膜腔組織,大網,腸間膜などでも見られるようになる。 死亡に至った客観的経緯について(1)上記1の認定事実に証拠(乙A15,鑑定の結果)及び弁論の全趣旨を併せると,本件死亡の生じた機序の概要は以下のとおりと認められる。 本件の急性膵炎は,第2回ERCPに起因して発症し,遅くとも12月2。 ,,0日までに重症化したそして同月25日までに軽快傾向に転じたものの同月28日ころには再び増悪し,腎不全,胸腹水,腹膜炎,消化管穿孔などを合併して全身状態が悪化し,1月8日には不穏状態となるまでに至った。 十二指腸穿孔が生じた機序は判然とはしないが,急性膵炎の増悪に伴うものである。同月9日,汎発性腹膜炎の影響により胃液の嘔吐及び誤嚥を起こして心肺停止状態(急性呼吸循環不全)に陥り,そのことが一層全身状態を悪化させ,一旦は蘇生したものの多臓器不全により同日中に死亡した。本件死亡当時の汎発性腹膜炎も,それ自体極めて高度のものであり,それを放置す 止状態(急性呼吸循環不全)に陥り,そのことが一層全身状態を悪化させ,一旦は蘇生したものの多臓器不全により同日中に死亡した。本件死亡当時の汎発性腹膜炎も,それ自体極めて高度のものであり,それを放置すれば死因となりうるものであったが,上記の誤嚥がなければ,少なくとも同日に死亡した可能性は低い。 (2)原告は,本件の急性膵炎が,事後的客観的に見て,12月17日ころまでには壊死性の重症急性膵炎に進展し,同月28日ころまでには感染性膵壊死を生じたことを前提に,治療上の義務違反を主張するところ,被告は,本件の急性膵炎が,壊死性膵炎,感染性膵壊死に進展したことを否認する。 そこで,まず,本件の急性膵炎が壊死性膵炎や感染性膵壊死に進展したのか,進展したとすればそれはいつかについて検討する。 (3)本件の急性膵炎については,壊死性膵炎,感染性膵壊死に進展したと認めるに足りる証拠はなく,かえって,下記ア,イの点及び鑑定の結果によれ ば,膵体部及び膵尾部には壊死はなく,膵頭部に少し膵壊死がある可能性が否定できない部分はあるが,少なくとも,本態的には壊死性膵炎ではなく浮腫性膵炎であり,感染性膵壊死には進展していないと認められる(G鑑定人の意見は,結論において同旨である。H鑑定人及びI鑑定人の意見は,本件の急性膵炎は壊死性膵炎ではないというものである。 。)ア(ア)本件解剖の結果,膵臓の所見として「硬度はやや軟で,著しく混,濁している」という所見が認められたところ「著しく混濁」という。 ,,()。 所見の具体的意味内容は鑑定書乙A15上必ずしも判然としない(イ)しかしながら,以下の各鑑定人の意見に照らして,上記(ア)の所見が壊死性膵炎の所見であると認めることはできない。 aI鑑定人上記(ア)の所見は,膵臓自身は通常の膵臓がありほ も判然としない(イ)しかしながら,以下の各鑑定人の意見に照らして,上記(ア)の所見が壊死性膵炎の所見であると認めることはできない。 aI鑑定人上記(ア)の所見は,膵臓自身は通常の膵臓がありほとんど欠損していないという趣旨であると思われる。壊死性膵炎であれば,壊死が認められるとか,膵実質が欠落しているとか,脂肪に置き換わっている。 ,,という解剖所見が記載されるのが通常であるそして組織学的にも膵臓の炎症は線維化傾向が認められ,膵液のうっ滞像が観察されるという所見のみで壊死性膵炎を窺わせる検査成績は得られていないことからしても,壊死性膵炎ではなかったと考えられる「著しく混濁」。 ,,という所見が膵の凝固壊死を示している可能性も否定はできないが急性膵炎ではほとんどの場合膵臓が自己融解をしながら壊死していくから,その可能性は低い。なお,本件においてはかなり強い炎症があったところ,そのような場合に,膵臓の表面の所見を「混濁」と記載することがしばしばある。 bG鑑定人,「」,上記(ア)の膵臓の所見は混濁という言葉の一般的な意味から壊死あるいは感染を示唆するという可能性を完全に否定することはで きないが,膵臓に大きな障害があるという趣旨の所見ではない。 cH鑑定人上記(ア)の膵臓の所見は,膵臓自体は壊死に陥っていないという所見であると捉えるのが自然である。 (ウ)なお,原告は,本件の急性膵炎が壊死性膵炎であったことの根拠として,本件解剖の際に腹膜に脂肪壊死が認められたことを主張するが,腹膜の脂肪壊死は,膵実質の壊死とは異なるし,証拠(甲B55の1・2)によれば,脂肪壊死は壊死性膵炎でなければ見られないものではないと認められるから,この主張は採用できない。 イ壊死性膵炎とは,びまん性又は限局性に膵実質が壊死に陥 異なるし,証拠(甲B55の1・2)によれば,脂肪壊死は壊死性膵炎でなければ見られないものではないと認められるから,この主張は採用できない。 イ壊死性膵炎とは,びまん性又は限局性に膵実質が壊死に陥ったものをいい,造影CT検査は,浮腫性膵炎と壊死性膵炎を鑑別する最も有用な方法であるところ,本件の造影CTの所見についてみると,鑑定の結果(各鑑「」。),定人の意見は別紙CT所見一覧表に記載のとおりであるによれば膵体部及び膵尾部に膵壊死はないし,膵頭部の一部に低吸収域があって,その部分に膵壊死がある可能性を否定はできない所見はあるものの,これについても,少なくとも明らかに膵壊死があるとはいえないものであると認められる。 (4)なお,下記アの事実は,本件の急性膵炎が壊死性膵炎,感染性膵壊死に進展したことに沿うものであるとも考えられるが,上記(3)の認定は本件の急性膵炎の発症後に撮影されたCT全ての所見と本件解剖の所見を前提とし,。 ていること及び下記イの点に照らすと上記(3)の認定を覆すには足りないア(ア)臨床症状や血液検査所見の増悪は感染性膵壊死を疑う所見とされて,,,,いるところ本件においても12月27日までに腹部所見が増悪し,,,,血液検査上白血球数CRPが上昇し重度感染などが疑われるなど本件の急性膵炎の発症以後,臨床症状や血液検査所見の増悪している場面はあった。 (イ)担当医師は,12月26日の腹部エコーにおいて,膵体部及び膵尾部に壊死性膵炎が疑われる所見があると判断している。 イ(ア)感染症の所見は,感染症全般を示唆する間接的所見にすぎず,感染性膵仮性嚢胞や膵膿瘍でもそのような所見は見られる(I鑑定人も,白血球数が上昇することは,膵膿瘍でもよくある旨の意見を述べている。 感染症の所見は,感染症全般を示唆する間接的所見にすぎず,感染性膵仮性嚢胞や膵膿瘍でもそのような所見は見られる(I鑑定人も,白血球数が上昇することは,膵膿瘍でもよくある旨の意見を述べている。 。)(イ)急性膵炎ガイドラインにおいて,浮腫性膵炎と壊死性膵炎を鑑別するに当たって,造影CT検査は最も有用な方法であるとされているのに対し,エコーについてはその有用性が指摘されてはいない。 本件各ERCP実施に際しての説明義務違反について原告は,担当医師において,本件各ERCPを実施するに際し,Cに対し,合併症として急性膵炎発症の可能性があること,胆嚢結石及び総胆管結石に対しては他の代替的手段(開腹手術や腹腔鏡手術等)があること及びその利害得失,施術時期の選択について説明すべき義務があり,とりわけ,膵管造影は急性膵炎発症の危険が高いから,その利害得失についても説明すべき義務があったにもかかわらず,担当医師はこの義務を怠ったと主張する。 しかしながら,この主張は採用できない。その理由は以下のとおりである。 (1)第1回ERCPに関する説明について担当医師は,第1回ERCPに先立ち,Cに対し,胆管及び膵管の造影をすることと,そのことにより急性膵炎発症のリスクがあることを説明したところ,この説明により胆管造影及び膵管造影を含む第1回ERCP全体のリ,,,スクを一応説明したといえるのであるからそれ以上に担当医師においてCに対し,膵管造影を受けるか否かを選択させるべく,膵管造影の利害得失を別途説明すべき義務があったとまではいえない。 なお,本件の急性膵炎の発症は第2回ERCP実施後のことであり,第1回ERCPを実施したことで急性膵炎が発症したという関係にはないから, そもそも,仮に担当医師において第1回ERCPの実施に関して何らかの説 性膵炎の発症は第2回ERCP実施後のことであり,第1回ERCPを実施したことで急性膵炎が発症したという関係にはないから, そもそも,仮に担当医師において第1回ERCPの実施に関して何らかの説明義務違反があったとしても,そのことと本件の急性膵炎の発症や死亡結果との間に因果関係は認められない。 (2)第2回ERCPに関する説明について本件の急性膵炎は第2回ERCPに起因して発症したものであるところ,第2回ERCPの実施に関して説明義務違反があったといえないことは,以下のとおりである。 ア上記1(1)イ,ウのとおりであって,担当医師は,第2回ERCPを実,,施することにつき12月12日にCから最終的な承諾を得るに先立って急性膵炎を合併する危険があること,胆嚢結石や総胆管結石に対しては開腹手術や全て腹腔鏡下で処置する方法があること及びその利害得失についても必要な説明をしたものといえる。 イまた,以下のとおりであり,担当医師において,施術時期の選択や膵管造影の利害得失について説明すべき義務があったとはいえない。 (ア)総胆管結石は,一度胆石発作が起こると繰り返し,胆管炎や膵炎を合併するから,特に事情がない限り,早期に切石することが望ましいものと考えられる。そして,本件全証拠を検討してみても,Cが施術の時期を遅らせることを希望していたという事情はうかがわれないから,そのような場合に,担当医師において,施術時期の選択について何らかの説明をすべき義務があったとはいえない。 (イ)ERCPは膵管及び胆管を造影する検査法であること,急性膵炎の危険性についての説明はされていること,第2回ERCPにおいては,膵管を選択的造影したわけではなく,胆管を選択的造影した際に膵管が不可避的にわずかに造影されたにとどまることに照らすと,担当医師におい 険性についての説明はされていること,第2回ERCPにおいては,膵管を選択的造影したわけではなく,胆管を選択的造影した際に膵管が不可避的にわずかに造影されたにとどまることに照らすと,担当医師において,第2回ERCPに先立ち,実施予定のERCPに関する説明とは別に,膵管造影の利害得失についてまで説明すべき義務があったとは いえない。 本件各ERCPにおける手技上ないし実施上の義務違反について原告は,担当医師において,本件各ERCPの際,手技上ないし実施上の義務に違反した旨主張する(具体的には以下で検討するとおり。しかしなが。),。 (,らこの主張は採用できないその理由は以下のとおりである鑑定人3名も第2回ERCPについて,手技上ないし実施上の不適切な点は認められない旨の意見を述べている。 。)(1)原告は,担当医師において、胆管造影のみのERCPを1回だけ実施すべきであって,ERCPを複数回実施したり,急性膵炎を発症する危険の高い膵管造影を実施してはならない義務があったと主張する。 アERCPを複数回実施してはならない義務の違反について担当医師は,第1回ERCPにおいて,総胆管結石の有無,位置,大きさ等を正確に確認し,膵管や胆管について,造影した範囲において他に治療を要する疾患がないことを確認した。その結果として,Cの総胆管結石に対する治療方法としてEST又はEPBDが最も適切であるという確定的な判断ができ,また,Cに対し,そのような治療方針について検査結果を踏まえた具体的な説明をすることが可能となった。したがって,担当医師が検査のためのERCPを外来で先行して実施したことには,十分合理性があったというべきである。 そして,EPBD又はESTにより総胆管結石を内視鏡的に切石する場合,検査のためのERCPに ,担当医師が検査のためのERCPを外来で先行して実施したことには,十分合理性があったというべきである。 そして,EPBD又はESTにより総胆管結石を内視鏡的に切石する場合,検査のためのERCPに続いて同一機会にEPBD又はESTを実施しなければならないとする文献等の証拠は存しない。 したがって,担当医師において,検査のためのERCPと切石のためのEPBD又はESTを連続して(1回で)実施しなければならない義務があったとはいえない。 イ膵管造影を実施してはならない義務の違反について ,,,確かにERCPの際急性膵炎発症の危険を極力少なくする見地から必要のない膵管造影はなるべく行わないようにするべきである。しかしながら,下記のとおり,本件各ERCPにおいて実施された膵管造影について担当医師に義務違反があったとはいえない。 (ア)第1回ERCPにおいては,主膵管が1回造影されている。 しかして,ERCPの意義として膵管と胆管の造影が一度に実施できることが挙げられていること,ERCPは,非観血的に膵管を造影する唯一の方法であり,精密検査法としての役割のみならず,膵癌等の膵疾患の早期診断を目的として,スクリーニング検査としても広く用いられていることに照らすと,胆管造影のためにERCPを実施する必要がある場合に,膵疾患のスクリーニング検査としての膵管造影を実施してはならないとはいえない(乙B32も,胆道系の精査のためにERCPを実施する際,膵管のスクリーニングを実施することがあることを前提としている。 。)したがって,上記の主膵管の造影を実施してはならない義務があったとはいえない。 なお,原告は,膵疾患のスクリーニングが目的であれば膵管分枝まで十分に造影されていてしかるべきであると主張するが,主膵管のみ造影した場合であっても, を実施してはならない義務があったとはいえない。 なお,原告は,膵疾患のスクリーニングが目的であれば膵管分枝まで十分に造影されていてしかるべきであると主張するが,主膵管のみ造影した場合であっても,膵管分枝まで造影した場合に比べて情報量は少ないにせよ,膵疾患のスクリーニングとして必要な情報を得ることはできるのであるから,膵管分枝まで十分に造影されていないからといってスクリーニングが目的であったことが否定されるものではない。 (イ)第2回ERCPにおいては,最初のカニュレーションの際,選択的に胆管造影を実施した時にわずかに膵管も造影された。そして,他には膵管は造影されていない。 しかして,本件においては総胆管結石の有無,大きさ,個数,位置等 ,,を確認するため胆管造影を実施することは不可欠であったのであるし膵管と胆管を完全に選択的造影することは不可能であって,目的部以外も造影されてしまうことが多いとされていることからすれば,上記のようにわずかに膵管が造影されたとしてもやむを得なかったというべきである。 したがって,上記のとおり膵管が造影されたことについて,担当医師に義務違反があったとはいえない。 (2)原告は,担当医師において,乳頭等を傷害したり,膵管に過大な圧をかけることのないよう,①マノメーターや自動注入器を使用すべきであり,②カニューレの挿入や造影剤の注入を必要以上に繰り返してはならず,③腸を蠕動させないよう鎮痙剤の効果を術中に切らしてはならない義務があったにもかかわらず,本件各ERCPにおいて①の義務を,第2回ERCPにおいて②及び③の義務を怠った旨主張する。 アマノメーターや自動注入器を使用すべき義務の違反について証拠(甲B31の1・2)によれば,マノメーターは造影剤注入圧を一定にすることができ,自動注入器をマノメ ②及び③の義務を怠った旨主張する。 アマノメーターや自動注入器を使用すべき義務の違反について証拠(甲B31の1・2)によれば,マノメーターは造影剤注入圧を一定にすることができ,自動注入器をマノメーターに接続して使用することにより助手の被爆量を軽減することができることが認められる。しかしながら,前掲証拠及びI鑑定人の意見によれば,ERCP時の造影剤の注入方法は,用手注入が一般的であり,マノメーターや自動注入器を使用することは一般的ではないことが認められるから,担当医師において,本件各ERCPの際,マノメーターや自動注入器を使用すべき義務があったとはいえない。 イカニューレの挿入や造影剤の注入を必要以上に繰り返してはならない義務の違反について(ア)原告は,第2回ERCPの際,胆管結石を1個見失ったことについ,,。 て不注意であった旨主張しているのでまずこの点について検討する 第2回ERCPの際の胆管造影及びその後に実施された腹部エコー等の検査並びに本件解剖において,総胆管結石の遺残は認められないことからすると,第2回ERCPの際,見失った総胆管結石1個も排出されていたものと推認される。 ところで,EPBDにおいては,視界が限られることから,結石の排出を直接確認することが困難であることも容易に想定されるのであり,総胆管結石を見失ったとしても,これをもって直ちに手技に不適切な点があったと推認することはできない。このことは,遺残結石が疑われる場合,胆管造影を実施することによりその有無を確認することが予定されていることからもいえる。 そうすると,本件において,総胆管結石1個を見失ったことにつき,手技に不適切な点があったとはいえない。 (イ)カニューレの挿入及びEPBDの治療時間についての原告の主張に関連して,<ア>乳頭への頻回 うすると,本件において,総胆管結石1個を見失ったことにつき,手技に不適切な点があったとはいえない。 (イ)カニューレの挿入及びEPBDの治療時間についての原告の主張に関連して,<ア>乳頭への頻回の刺激や損傷による乳頭浮腫や括約筋の攣縮は急性膵炎の原因となり得るので,乳頭を良く確認した上で,確実にかつ愛護的に挿管を行うべきである,<イ>胆管,膵管への選択的挿管が困難な場合には頻回の挿管は避けるべきである,<ウ>カニュレーションにかける時間はできるだけ短くし,総胆管結石に対するEPBDにおいては浮腫などによる膵炎のリスクの上昇が考えられるため長時間約,,(40分以上)の治療は行うべきではないという見解がある(上記2(2)オ(ア) 。 )上記<ア>の点について,担当医師は,乳頭観察の約4分後には,カニューレを挿管した上で胆管造影を実施しており,術中に大量の出血もなかったことに照らすと,乳頭への挿管が不確実であったとか,挿管が愛護的にされなかったことは窺われず,他に,そのような事実を認めるに足りる証拠はない。 上記<イ>の点について,本件では結石1つを見失った後に胆管造影が繰り返されたところ,この胆管造影は遺残結石を確認する目的のために必要があったのであるし,証拠(I鑑定人)によれば,カニューレの挿入回数について通常あるべきと設定される回数の基準まではないことが認められるから,カニューレを挿入して胆管造影を繰り返したことが担当医師の義務違反に当たるということはできない。 上記<ウ>の点について,第2回ERCPには50分を要したところ,実施するべき処置の内容によってそれに要する時間が異なるのはやむを得ないところであり,本件においては,遺残結石を確認するために胆管造影を繰り返す必要があったことなどの事情を考慮すれば,50分とい 実施するべき処置の内容によってそれに要する時間が異なるのはやむを得ないところであり,本件においては,遺残結石を確認するために胆管造影を繰り返す必要があったことなどの事情を考慮すれば,50分という時間を要したことが医療水準に照らして特別に長いものとは考えられず,第2回ERCPに50分を要したことが担当医師の義務違反に当たるということはできない(G鑑定人及びH鑑定人の意見も結論において同旨である。 。)(ウ)造影剤の注入に関する原告の主張に関連して,造影剤の注入による膵管壁の刺激が急性膵炎の原因となり得るので,膵管への造影剤の注入時には無理に圧を加えないよう注意するべきであると指摘されている(上記2(2)オ(ア)③。 )しかしながら,第2回ERCPにおいては,最初のカニュレーションの際,選択的に胆管造影を実施した時にわずかに膵管も造影されたにとどまり,他に膵管は造影されていないのであるから,担当医師において膵管壁に無理に圧を加えたとは考え難い(G鑑定人及びH鑑定人も同旨の指摘をしている。 。)なお,第1回ERCPの際の膵管造影においても,主膵管が1回造影されたのみであるから,担当医師において膵管壁に無理に圧を加えたとはいえない。 ウ腸を蠕動させないよう鎮痙剤の効果を術中に切らしてはならない義務の違反についてブスコパンは,内視鏡操作の妨げとなる消化管運動を抑制するために投与されるものであるところ,本件においては,ブスコパンは2Aないし3A投与されており,内視鏡操作の妨げになるような消化管運動が生じたことを認めるに足りる内視鏡写真等の証拠はなく,結局,鎮痙剤の効果が術中に切れたとはいえない。 したがって,担当医師に原告主張のような義務違反があったとはいえない。 (3)なお,ERCPやEPBDの後に不可避的に急性膵炎 鏡写真等の証拠はなく,結局,鎮痙剤の効果が術中に切れたとはいえない。 したがって,担当医師に原告主張のような義務違反があったとはいえない。 (3)なお,ERCPやEPBDの後に不可避的に急性膵炎が生ずることは稀ではないのであり,急性膵炎が生じたこと自体をもって第2回ERCPに手技上ないし実施上の義務違反があったものと推認することはできない(G鑑定人も同旨の指摘をしている。 。) 持続動注療法の早期実施義務違反について(1)原告は,12月17日ころには,本件の急性膵炎の重症化が疑われたのであるから,担当医師において,そのころ,造影CT検査を実施して,壊死性の重症急性膵炎を診断した上で,持続動注療法を実施すべき義務があったと主張する。 (2)しかしながら,下記アないしウの点に照らすと,担当医師において,12月17日ころ造影CT検査を実施すべきであったとはいえない(G鑑定人及びH鑑定人の意見は,結論において同旨である。I鑑定人の意見は,同日ころ造影CTを実施した方がよかったというものである。 。)アCT検査の実施時期,とりわけ初回検査後のフォローアップCT検査の実施時期については,統一した基準等は存しない(G鑑定人も同旨の指摘をしている。 。),,イ12月14日の造影CT上膵壊死が否定はできない所見はあるものの そのCTグレードはⅡ又はⅢにとどまっていた。 ウ12月17日の時点では,発熱が継続し,CRPも上昇はしていたものの,他方,腹痛,腹部所見は軽快傾向を示しており(CTグレードを除,く)重症度スコアの増悪もなかったのであるから,急性膵炎の重症化を予見すべきであったとまではいえない(G鑑定人及びH鑑定人も同旨の指摘をしている。 。)(3)そして,上記(2)の点は措くとしても,下記ア,イの点に照らせば ったのであるから,急性膵炎の重症化を予見すべきであったとまではいえない(G鑑定人及びH鑑定人も同旨の指摘をしている。 。)(3)そして,上記(2)の点は措くとしても,下記ア,イの点に照らせば,担当医師において,12月17日ころ持続動注療法を実施すべき義務があったとはいえない(鑑定人3名の意見も結論において同旨である。 。)ア持続動注療法は,その有効性を指摘する文献も少なからずあるものの,,,,急性膵炎ガイドラインにおいてはなおオプション治療と位置づけられ推奨度もC(その推奨の効果を支持する(あるいは否定する)根拠が不十分であるか,その効果が有害作用・不都合(毒性や薬剤の相互作用,コスト)を上回らない可能性がある)とされているにとどまる(G鑑定人及。 びI鑑定人も同旨の指摘をしている。 。)イ持続動注療法の本来的な適応は壊死性膵炎であるところ,上記3のとおり,本件の急性膵炎は,事後的客観的に見て,壊死性膵炎であったとは認められないのであるから,12月17日の時点で造影CT検査が実施されたとしても,担当医師において,壊死性膵炎であると診断することができた,あるいはするべきであったとはいえない(I鑑定人も同旨の指摘をしている。 。)そして,壊死性膵炎以外の急性膵炎に関し,どのような場合に持続動注療法の適応を認めるかについては,統一した基準等は存しない。 CHDF,SDDの実施義務違反について(1)原告は,12月26日に持続動注療法を終了した後,これに引き続いてCHDF,SDDを実施すべき義務があったと主張する。 (2)しかしながら,下記ア,イの点に照らして,上記(1)の原告の主張は採用できない(鑑定人3名の意見も結論において同旨である。なお,G鑑定。)人及びI鑑定人は,12月28日ころ以降,胸腹水 (2)しかしながら,下記ア,イの点に照らして,上記(1)の原告の主張は採用できない(鑑定人3名の意見も結論において同旨である。なお,G鑑定。)人及びI鑑定人は,12月28日ころ以降,胸腹水や炎症所見の増悪が見られたことなどから,CHDFやSDDを考慮してもよかったなどと指摘するものの,必ず実施すべきであったとはいえないとの意見を述べている。 アCHDF,SDD,これらの併用,あるいはこれらと持続動注療法との併用について,その有効性を指摘する文献も少なからずあるものの,急性膵炎ガイドラインにおいては,なお,オプション治療と位置づけられ,推奨度もC(その推奨の効果を支持する(あるいは否定する)根拠が不十分,(,)であるかその効果が有害作用・不都合毒性や薬剤の相互作用コストを上回らない可能性がある)とされているにとどまる(鑑定人3名とも。 同旨の指摘をしている。 。)イCHDFは腎機能の代行,humoralmediatorの除去,体の水分の除去といった効果を期待することができ,SDDは感染症対策としての効果を期待することができるとされている。 ところで,本件においては,12月26日の持続動注療法を終了した時点において,臨床症状(腹痛,腹部所見,発熱など)や血液検査所見(白血球数,CRPなど)は改善し,胸水もわずかにあるというに止まる(I鑑定人も同旨の指摘をしている。 。)そうすると,同日時点では,上記のCHDF及びSDDの効果を期待する必要性が高かったとはいえない。 外科手術の実施義務違反について,,,(1)原告は12月28日ころには感染性膵壊死が疑われたのであるからFNAを実施し,感染性膵壊死を診断した上,そのころ,外科手術を実施すべき義務があったと主張する。 (2)しかしながら,下記ア 1)原告は12月28日ころには感染性膵壊死が疑われたのであるからFNAを実施し,感染性膵壊死を診断した上,そのころ,外科手術を実施すべき義務があったと主張する。 (2)しかしながら,下記ア,イの点に照らして,12月28日ころにFNA を実施すべきであったとはいえない(鑑定人3名の意見も結論において同旨である。 。)アFNAとは,感染性膵壊死か否かを確定診断するための検査であり,感染性膵壊死とは,壊死に陥った膵に細菌の感染を合併したものをいう。 しかしながら,上記3のとおり,本件の急性膵炎は,事後的客観的に見て,壊死性膵炎であったとは認められないのであるから,担当医師において,感染性膵壊死を疑うことができた,あるいは疑うべきであったとはいえない。 イ鑑定の結果によれば,FNAには血管穿刺の合併症があることから,その適応については慎重に判断すべきことが認められる。 (3)上記(2)の点は措くとしても,下記アないしウの点に照らすと,担当医師において,12月28日ころ外科手術を実施すべき義務があったとはいえない(鑑定人3名の意見も結論において同旨である。 。)ア原告は,感染性膵壊死に対する外科手術を実施すべき義務を主張するものと解されるところ,上記3のとおり,本件の急性膵炎は,事後的客観的に見て,感染性膵壊死に進展したとは認められない。そうすると,担当医師において,仮に12月28日ころFNAを実施したとしても,感染性膵壊死を診断することができたとはいえない。 イ鑑定の結果によれば,限局化した嚢胞,膿瘍,出血等があり,手術の対,,象が明確になった場合には外科手術の適応が生じてくる可能性があるが本件ではそのような状況になく,感染性膵壊死以外の仮性嚢胞等に対するものも含め,手術の適応はなかったものと認められる。 ウ手 ,,象が明確になった場合には外科手術の適応が生じてくる可能性があるが本件ではそのような状況になく,感染性膵壊死以外の仮性嚢胞等に対するものも含め,手術の適応はなかったものと認められる。 ウ手術を実施する場合であっても,その実施時期についての確立した基準はなく,早期に手術を行っても生存率の向上は得られないとする見解もある(上記2(3)エ(サ)a。 ) 絶飲食管理義務違反について (1)原告は,担当医師において,Cが経口摂取をしないよう管理すべき義務があったにもかかわらず,Cに対し12月25日に一般米食を与えたと主張する。 (2)確かに,証拠(乙A2)によれば、12月25日の朝食のみ遅食とする旨の食事箋が発行されたという事実は認められるが,下記アないしウの点によれば,同月13日の朝食以降,Cの食事については,一貫して絶食の指示がなされていたものと認められ,上記食事箋によって同月25日の朝食(遅食)が出されたと認めることはできない。 ア上記食事箋は,12月21日にあらかじめ発行されていること,同月25日朝食のみの指示であること,同日にCTが実施されていることからす,。 れば同日にCT検査を実施するために出されたものであると推認できるイ証拠(乙A2)によれば,同月13日の朝食から第2回ERCPのために検査止めとしたことと,その後急性膵炎が発症したことから,指示があるまで絶食としたことがいずれも認められるところ,同月20日の看護記録にも,当分絶食である旨の指示がされていることを前提とする記載があり,その後も,絶食を解除する旨の指示をしたことを窺わせるカルテ記載等はなく,絶食の解除を前提とする輸液の変更等がなされたということも特段窺われない。 ウ12月25日ころの排便状況からしても,Cが同日の朝食を食べたことが窺えると 示をしたことを窺わせるカルテ記載等はなく,絶食の解除を前提とする輸液の変更等がなされたということも特段窺われない。 ウ12月25日ころの排便状況からしても,Cが同日の朝食を食べたことが窺えるとはいえない。 (3)そうすると、この点に関する原告の義務違反の主張は,その前提を欠くことになり,採用できない。 胃液吸引義務違反について原告は,担当医師において,1月9日,Cに仰臥の姿勢を取らせた際,胃液を誤嚥しないよう,事前に胃液を吸引すべき義務があったと主張する。 ここで,証拠(証人F)によれば,誤嚥を防ぐための方法として,イレウス 管や十二指腸ゾンデを留置しておく方法があることは認められる。しかしながら,仰臥位というのは臥床している患者が通常取る姿勢であるから,その姿勢を取るからといって,あるいは,その姿勢のまま検査のために病院内をストレッチャー移動するからといって,直ちに誤嚥の危険が高まるとは考えられない,,ことどの程度の誤嚥の危険があれば事前に胃液を吸引しなければならないかまた,本件において胃液を誤嚥する危険が高いことを基礎づける事情としてどのような事情があるかについての特段の主張立証はないことに照らすと,上記原告の主張は採用できない。 急性膵炎の治療に関する説明義務違反について(1)原告は,急性膵炎の治療に関し,担当医師に以下のような説明義務があった旨主張する。 ア12月17日ころ,Cに対し,造影CT検査を受けることの利害得失等について説明し,造影CT検査を受けるか否かを決める機会を与える義務があった。 イ12月17日ころ,Cに対し,持続動注療法を受けることの利害得失等について説明し,持続動注療法を受けるか否かを決める機会を与えるべき義務があった。 ウ12月26日ころ,CHDF,SDDを受けることの利害 17日ころ,Cに対し,持続動注療法を受けることの利害得失等について説明し,持続動注療法を受けるか否かを決める機会を与えるべき義務があった。 ウ12月26日ころ,CHDF,SDDを受けることの利害得失等について説明し,CHDF,SDDを受けるか否かを決める機会を与えるべき義務があった。 ,,,エF医師はFNAの経験がなかったのであるからあらかじめCに対しFNAを受ける必要が生ずる可能性があるが,F医師にはFNAの経験がないことを説明すべき義務があった。 (2)しかして,医師において,ある治療行為等を実施することが医療水準に照らして要求されているとはいえない場合において,現にその治療行為等を実施しないときは,原則として,その治療行為等を実施するという選択肢に ついて説明すべき義務を負うものではない。このことは,そのような治療行為等について,医師の研鑽義務の対象とはならない(最判平成7年6月9日・民集49巻6号1499頁参照)ことからも明らかというべきである。もっとも,例えば,患者がその治療行為等を受けることについて特段の関心を有していることを医師が知っており,そのような選択をすることが医学的知見に照らし相応の理由があったということができる場合など特段の事情が認められる場合には,その治療行為等を実施するという選択肢について説明すべき義務が生ずる場合も想定し得る(最判平成17年9月8日・裁判所時報1395号1頁参照。 )本件においては,上記6(2),(3),7(2),8(2),(3)のとおり,担当医,,,,,師において原告主張の時点においてCに対し持続動注療法CHDFSDD,FNAを実施すべきことが,医療水準に照らして要求されているとはいえず上記のような特段の事情も認められないから担当医師に上記(1) 告主張の時点においてCに対し持続動注療法CHDFSDD,FNAを実施すべきことが,医療水準に照らして要求されているとはいえず上記のような特段の事情も認められないから担当医師に上記(1),,アないしエの説明義務があったとはいえない。 以上の次第で,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないというべきであるから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部関根規夫裁判官井出正弘裁判官 裁判長裁判官貝阿彌誠は,転官のため署名押印することができない。 関根規夫裁判官

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