平成16年6月18日判決言渡平成13年(ワ)第15970号損害賠償請求事件平成15年(ワ)第4806号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成16年3月19日判決当事者の表示別紙1「当事者目録」記載のとおり 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,連帯して,原告らに対し,それぞれ別紙2「取引一覧表」請求債権欄記載の各金員及び上記各金員に対する平成13年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,パラジウムの商品先物取引を委託していた原告らが,パラジウムの商品先物取引市場を開設及び運営していた被告東京工業品取引所(以下「被告東工取」という。)がその市場管理義務を怠ってパラジウム相場を高騰させた上,高騰した価格のまま制限値幅を0円とする措置(売買値段の固定化)を採るとともに,当該措置を納会日まで継続させたことにより,売建玉を維持してきた原告らが高騰した価格での手仕舞いを強制させられて損害を被ったと主張して,被告東工取に対しては商品取引所法1条所定の委託者保護義務に違反する不法行為に基づき,被告東工取の理事であったその余の被告らに対しては同法60条の2第2項の理事の損害賠償責任に基づき,連帯して,総額2億7225万円の損害賠償を求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠等の記載がない事実は,争いがない。なお,以下書証番号には枝番を含む。)(1) 当事者ア被告東工取は,商品取引所法(以下「法」という。)に基づき,くん煙シート,貴金属(金,銀,白金及びパラジウム),石油(ガソリン,灯油及び原油)及びアルミニウムの先物取引を行うために必要な商品市場を開設し,その運営に当たることを主たる目的として,主務大臣の くん煙シート,貴金属(金,銀,白金及びパラジウム),石油(ガソリン,灯油及び原油)及びアルミニウムの先物取引を行うために必要な商品市場を開設し,その運営に当たることを主たる目的として,主務大臣の許可を得て昭和26年に設立された会員組織の非営利法人である。 イ被告東工取を除く被告ら(以下「被告理事ら」という。)は,平成12年3月15日当時,被告東工取の理事であった。 そのうち,被告Y1は,理事長であり,被告Y2,被告Y3,被告Y4は,被告東工取の常置委員会である市場管理委員会の構成員であった。 ウ原告らは,被告東工取の商品取引員であった会員を通じて,被告東工取が上場していたパラジウムの先物取引を委託していた者であり,同年2月24日当時,別紙2取引一覧表の建玉枚数欄記載の枚数の売建玉を有していた(弁論の全趣旨)。 (2) 被告東工取の定款,業務規程及び貴金属市場管理基本要綱の規定(平成12年2月当時)ア定款174条(解釈の疑義)(乙1)定款,業務規程,受託契約準則,紛争処理規程,市場取引監視委員会規程その他の規則の解釈に疑義があるとき,又はこれらの諸規則に明文のない事項について臨機の処置を必要とするときは,理事会の議決に従うものとする。 イ業務規程(乙2)21条(建玉又は取引の制限及び解け合い)(抄。なお,この規定は,ゴム等に関するものであるが,パラジウムにも準用されている。)1項本所は,必要があると認めるときは,理事会の議を経て,全部又は一部の限月につき,会員の取引数量の制限,売建玉と買建玉との差引き数量若しくは総建玉数の最高限度その他の建玉数量の制限,又は,受託会員に取引を委託する委託者並びに法126条1項の規定に基づき本所の商品市場における取引の委託の取次ぎを引き受けることについて許可を受けている者(以下「取次商品取 その他の建玉数量の制限,又は,受託会員に取引を委託する委託者並びに法126条1項の規定に基づき本所の商品市場における取引の委託の取次ぎを引き受けることについて許可を受けている者(以下「取次商品取引員」という。)及び商品市場に相当する外国の市場において先物取引に類似する取引を行うことの委託を受け若しくはその委託の取次ぎを引き受ける業務を営むことについて当該外国において法126条1項の規定による許可に相当する当該外国の法令の規定による同種の許可(当該許可に類する登録その他行政処分を含む。)を受けている者(以下「外国商品取引業者」という。)に委託の取次ぎを依頼した者(以下「委託者等」という。)の取引数量,総建玉数の最高限度その他の受託の制限を設けることができる。 8項本所は,天災地変,戦争,暴動,経済事情の激変その他止むを得ない事由により取引の決済を行うことができないと認められる場合には,理事会の定める条件によって売買建玉の一部又は全部を解け合わせることができる。 23条(売買仕法)取引の締結の方法は,本所が設置する電子計算機等を利用した売買システム(以下「システム売買」という。)による個別競争売買とする。 34条(売買値段の制限)(抄)1項先物取引における毎営業日の取引は,制限値段の範囲内で行うものとする。ただし,毎月(貴金属市場にあっては,納会日の属する月)最初の営業日以降の当限月の取引及び新甫(新たに生まれる限月をいう。)限月の最初の取引については,この限りでない。 2項前項の規定による制限値段は,上場商品構成物品及び限月ごとに,その直前営業日における最終約定値段を基準値段とし,同値段の100分の20の範囲内において理事会で定める金額を加減した値段とする。 87条(システム売買における臨機の措置)(抄)1項本所は,2 ,その直前営業日における最終約定値段を基準値段とし,同値段の100分の20の範囲内において理事会で定める金額を加減した値段とする。 87条(システム売買における臨機の措置)(抄)1項本所は,23条に規定する取引の締結に支障が生じたとき,又はその恐れがあると認めるときは,理事会の議を経て,システム売買実施細則に定める規制その他の必要な臨機の措置を講じることができる。 ウ貴金属市場管理基本要綱(以下「基本要綱」という。)の建玉の制限に関する定め(乙3)過当投機を防止するため,業務規程21条1項の規定により,建玉数量を,委託者の場合は限月ごとに20枚ないし200枚,会員の自己の計算による場合は20枚ないし600枚(純資産額及び限月により変動する。)に制限するが,ヘッジ玉(現物の取引における約定時と取引実行時の価格変動リスクを回避するために,現物の売り買いと反対の売り買いの玉を先物取引で建てて保険とした玉)については,ヘッジ玉であることを証する書面の提出が合った場合は,被告東工取がその目的に合致すると認めた場合に限り,当該証明数量の範囲内において,上記制限数量を超えて建玉することができる。 (3) パラジウム価格の高騰ア被告東工取におけるパラジウム先物商品は,契約履行の最終期限の月(限月)を2月,4月,6月,8月,10月及び12月とする6種類のものが上場されており,各限月の1年前から取引することができる。その取引単位である1枚は1500グラムであるが,その価格(1グラム当たり。以下同じ。)は,平成11年当時,1100円台ないし1400円台の幅で値動きしていた。なお,この価格は,限月が最も先のもの(先限)であるが,他の限月のものも値動きの傾向にはほとんど変化がなかった(特に断らない限り,以下同じ。)。 イパラジウム価格は,平成12年 幅で値動きしていた。なお,この価格は,限月が最も先のもの(先限)であるが,他の限月のものも値動きの傾向にはほとんど変化がなかった(特に断らない限り,以下同じ。)。 イパラジウム価格は,平成12年1月に1500円台に値上がりし,同年2月に入ると急激な高騰を続け,同月7日から9日にかけて,当月限である2月限以外の全ての限月について3日間連続終日ストップ高(取引価格が取引所で決められた値幅の上限となる状態をいう。なお,当月限には値幅の制限は設けられていなかった。)となり,同月14日から23日にかけても,当月限である2月限以外の全ての限月について8日間連続終日ストップ高(ただし,同月21日に短時間ストップ高が外れたことがあった。)となり,同月23日の価格は2363円であった(甲1。以下同月のパラジウム価格の高騰を「本件高騰」という。)。 (4) 被告東工取の対応ア特別売買被告東工取は,同月18日,その会員である株式会社A(以下「A」という。)及び同社の売建玉決済に応じることを承諾した会員5名との間で,売建玉を決済させた(以下「本件特別売買」という。)。 イ値段凍結措置被告東工取は,同月23日,臨時の貴金属市場管理委員会(以下「市場管理委員会」という。)及び理事会を開催し,パラジウム価格の本件高騰を受けて,同月24日以降当分の間,同月23日の最終約定値段(4月限が2428円,6月限が2410円,8月限が2383円,10月限が2359円及び12月限が2363円)を基準値として,制限値幅を0円とし,注文は全て上記価格の指値注文に限定して,現物の裏付けがありヘッジ申請に係る承認を受けたものを除き,売買は仕切りのみとするとの措置(以下「本件値段凍結措置」という。)を採ることを決定した(甲40)。 ウ値段凍結の永続化措置さらに,被告東工取は 付けがありヘッジ申請に係る承認を受けたものを除き,売買は仕切りのみとするとの措置(以下「本件値段凍結措置」という。)を採ることを決定した(甲40)。 ウ値段凍結の永続化措置さらに,被告東工取は,同年3月15日,理事会において,本件値段凍結措置を各限月の納会日まで継続するとの措置(以下「本件永続化措置」という。 また,本件値段凍結措置及び本件永続化措置とを併せて「本件各措置」という。)を採ることを決定した。 2 争点(1) 本件各措置の違法性の有無(2) 原告らの損害 3 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)(本件各措置の違法性の有無)について(原告らの主張)ア本件各措置は,根拠規定を欠くから,違法である。 (ア) 法1条に掲げられた目的及び委託者は被告東工取の定めた規定や措置に一方的に拘束される立場にあることから,被告東工取には,国民経済の適切な運営及び取引の委託者の保護のために,市場の健全な運営や取引の公正を図る義務がある。そして,法は,この目的を達成するために,商品市場における取引ルールについての業務規程等を厳格に規制している。したがって,業務規程等は,取引所の内部規定にとどまらず,委託者が取引をするに当たって取引所及び委託者の双方を拘束するルールであり,取引所には,これを社会一般の通念に従って合理的に運用する義務がある。 以上から,商品取引所が行う措置は,根拠規定に基づくものでなければならず,その解釈も社会通念に従って行わなければならない。 (イ) 被告らは,本件値段凍結措置は業務規程34条2項に基づくものであると主張するが,この条文は値幅制限に関する規定であり,これを価格凍結の根拠とする解釈は社会通念に反するものであるから,本件値段凍結措置の根拠規定とはなり得ない。 (ウ) また,被告らは,本件永続化措置は業務規 が,この条文は値幅制限に関する規定であり,これを価格凍結の根拠とする解釈は社会通念に反するものであるから,本件値段凍結措置の根拠規定とはなり得ない。 (ウ) また,被告らは,本件永続化措置は業務規程87条1項又は定款174条に基づくものであると主張する。 しかし,業務規程87条1項は,いわゆる2000年問題(コンピュータが「2000年」という年号を正しく2000年と認識せず,1900年などと誤った認識する結果,2000年〔平成12年〕1月1日以降,社会中で大混乱が起きると予測された現象)に際して,コンピュータを使ったシステム売買においてコンピュータの故障等のトラブルが発生した場合に対処するために新設された技術的な雑則規定であるから,本件永続化措置の根拠規定とはなり得ない。 定款174条についても,業務規程等の公示されている諸規定に価格凍結及びその永続化措置を定める規定は全く存在しないにもかかわらず,理事会決議でこれを発動できるとすると,業務規程は有名無実化してしまうから,本件永続化措置の根拠規定とはなり得ない。 さらに,本件永続化措置は,納会日の属する月の取引については制限値幅を解除することとしている業務規程34条1項ただし書に違反するものでもあった。 イ被告東工取の裁量権について被告らは,商品取引所には高度の専門的知識に基づく広範な裁量権があると主張するが,法的根拠のない本件各措置を講ずることについての裁量権があるはずはなく,仮に裁量権が認められるとしても覊束裁量であるべきであるが,本件各措置は,必要性も合理性もなく,予見可能性もない上,他に採るべき措置があったから,裁量を逸脱した違法なものであることが明らかである。 ウ本件値段凍結措置は,実体的にも違法である。 (ア) 本件値段凍結措置は,必要性を欠くものであった。 a 被告東 他に採るべき措置があったから,裁量を逸脱した違法なものであることが明らかである。 ウ本件値段凍結措置は,実体的にも違法である。 (ア) 本件値段凍結措置は,必要性を欠くものであった。 a 被告東工取におけるパラジウム価格は,平成12年2月21日には一時ストップ高(2293円)が外れて2281円の値を付けたから,売建玉の処分を希望していた者はこのときに市場離脱しており,委託者や違約しそうな会員の救済はできていたはずであるから,あえて本件値段凍結措置を採る必要はなかった。 b さらに,本件値段凍結措置前,市場では,パラジウム価格は暴騰が継続するという予測一色だったわけではなく,実際に,価格上昇予想で建てる新規買い建ての数量よりも,下落予想で建てる新規売り建ての数量の方が多かったし,大半の商品取引員の玉尻(未決済の売建玉と買建玉との差引残高をいう。委託玉も含む。)も売り建てであった。実際の市場でも,同年3月ないし5月の間,暴騰は起きなかった。 このような状況で,被告東工取がパラジウム価格の暴騰が継続するという予測をしたのであれば,その判断に合理的根拠はない。 (イ) また,本件値段凍結措置は,合理性を欠くものであった。 a 本件高騰は過当投機が原因であった。 (a) 商品取引所には,価格が大幅に変動したときには,市場の健全な運営を図る義務がある(法1条)。 しかし,被告東工取は,パラジウムが市場規模が小さく生産地が偏在しているという投機を招きやすい性質を有していたにもかかわらず,基本要綱で,会員として主として上場商品の生産,流通など現物を取り扱う会員(以下「当業者」という。)については,ヘッジ玉であることを証明して被告東工取が認めれば建玉数量を無制限とし,その建玉が真実ヘッジ玉であることの調査も十分に行わず,建玉制限枠及び値幅制限を緩和して (以下「当業者」という。)については,ヘッジ玉であることを証明して被告東工取が認めれば建玉数量を無制限とし,その建玉が真実ヘッジ玉であることの調査も十分に行わず,建玉制限枠及び値幅制限を緩和して投機が行われやすい状況を設定するなど,本件高騰に至るまでの間に市場管理義務を怠っていた。 (b) 本件高騰の原因の1つは,ヘッジ玉の特権を有していた当業者であるB株式会社(以下「B」という。)の大量買い建てである。 Bは,日常的に被告東工取のパラジウム市場において日計りを大量に行っていたが,本件高騰の中でも,同様の手法を断続的に繰り返しながら,ヘッジ玉の特権を悪用して新規の買建玉を大幅に増やしてパラジウムの価格をつり上げ,平成12年2月14日以降は大量の買建玉を少しずつ転売して処分する方向に転換して,莫大な差益を得た。 パラジウム価格は,同月8日までに3日間連続ストップ高となるというまれな事態となり,以後上昇し続けていったが,Bは同日に先限新規買い2682枚という大口の買い建てをしたこと,同日を境に白金の価格との連動が崩壊したことから,その価格高騰の原因はBの大量の買い建てであるということができる。したがって,被告東工取がこれを規制していれば,本件高騰は沈静化していたはずであった。 同月のパラジウム市場は,上記のBの動きも含めて,当業者が中心となって買建玉を維持し,商品取引員に委託している委託者が売建玉を多く維持するという構図が明確になっていった。 (c) 本件値段凍結措置後,大口現物を含めた価格までが急落したが,真に需給に根ざした価格であれば人為的措置によって価格が急落することはあり得ないこと,パラジウムの同年2月のリースレート(貴金属の業者間において現物の貸し借りをする際に発生する金利をいう。)は暴騰していなかったし,国内への輸入実績も通 置によって価格が急落することはあり得ないこと,パラジウムの同年2月のリースレート(貴金属の業者間において現物の貸し借りをする際に発生する金利をいう。)は暴騰していなかったし,国内への輸入実績も通常と変わりがなかったこと,同月8日から同様の需給構造を持つ白金とパラジウムの価格の連動が崩れたことから,本件高騰は,ロシアの供給問題という現物の原因ではなく,大手商社や海外ファンドによる,大口現物取引,ニューヨーク商業取引所(以下「NYMEX」という。)及び被告東工取における国際的な投機買いによるものであったことは明らかである。 当時,実際に投機買いによる価格上昇を指摘する情報も流れていたから,被告東工取は,適切な市場管理をしていれば,本件高騰が過当投機によるものであることを,遅くとも同月2月中旬には知り得たはずである。 しかし,被告東工取は,本件値段凍結措置を採ってその投機買いの疑いを反映した価格で凍結して投機差益を追認したのであるが,これは公平性も合理性も欠く措置であった。 b 本件高騰に対しては他の措置によって対応するべきであった。 本件高騰のような異常な相場の場合には,被告東工取には,業務規程21条が建玉制限の後に強制解合いを規定していることからも,発動要件の程度からも,その措置の厳しさの程度からも,市場機能を維持して原告ら委託者の自由な取引機会を保持するためにも,本件値段凍結措置のような取引停止措置より先に,投機による価格の変動を解消して窮地にいた委託者を離脱しやすくさせる役割を果たす厳格な建玉制限措置(基本要綱の制限数量を例外なく遵守させること)を優先して発動する義務があった。 しかし,被告東工取は,上記義務を怠って,本件値段凍結措置を採ったのであるから,この措置は合理性を欠くものであった。 c 本件特別売買について本件特別売買 ること)を優先して発動する義務があった。 しかし,被告東工取は,上記義務を怠って,本件値段凍結措置を採ったのであるから,この措置は合理性を欠くものであった。 c 本件特別売買について本件特別売買は,特定の会員のみを秘密裏に救済する差別的措置であったし,被告東工取は,これを秘密裏に行って,委託者に対して,当時のパラジウム市場の異常さを公開しなかったが,これも公平性も合理性も欠く措置であった。 エ本件永続化措置も実体的に違法である。 (ア) 本件永続化措置は,必要性を欠くものであった。 a 本件値段凍結措置は,被告東工取自身が「当面」の措置と明言していたように,一時的なものとして行われたものであるし,そもそも違法かつ不合理な措置であるのだから,被告東工取には,当該措置をできるだけ速やかに解除するべき義務があった。 b さらに,平成12年2月28日の段階では,パラジウムの買い注文数よりも売り注文数の方が上回っており,これは,売り玉を持っている委託者の凍結価格による買戻し注文は全て成立しており,市場離脱を望んでいた一般委託者は既に市場離脱を果たしていたこと及び取引員の違約のおそれも解消されていたことを意味する。また,当時のNYMEXのパラジウム価格は,被告東工取が凍結した価格と近いものであったから,仮に被告東工取が凍結を解除しても,価格の乱高下は起こりにくい環境であった。 したがって,同日の段階では,被告東工取が価格凍結の理由としていた委託者保護との事情は全て解消されていたのであるから,被告東工取は,この時点で本件値段凍結措置を解除するべきであった。 (イ) また,本件永続化措置は,合理性を欠くものであった。 a 価格凍結は市場機能を一時停止するものであるが,その永続化は市場機能を完全に喪失させるものであり,健全な市場機能を維持するという被 。 (イ) また,本件永続化措置は,合理性を欠くものであった。 a 価格凍結は市場機能を一時停止するものであるが,その永続化は市場機能を完全に喪失させるものであり,健全な市場機能を維持するという被告東工取に課せられた本来の役割に真っ向から反するものであるし,委託者の期待を裏切るものであるから,被告東工取には,価格凍結の永続化を実施するに際しては,それが不可避なものであるか否かを実証的な観点から検討するべき義務があった。 b しかし,被告東工取は,本件値段凍結措置後から本件永続化措置を採るまでの間,時間は十分にあったにもかかわらず,本件高騰の背景事情についての調査を怠り,また,委託者からの意見聴取及び委託者が置かれていた状況の検証をも怠った上で,極めて安直に本件永続化措置を採ることを決定したのであるから,本件永続化措置が合理性を欠くものであったことは明らかである。 オまとめ(ア) 被告東工取の責任被告東工取は,パラジウム市場についての市場管理義務及びヘッジ玉管理義務に違反して,Bがヘッジ玉の特権を悪用して相場動向を左右して差益を得ることを放置し,特定の商品取引員に対して本件特別売買を認め,その上で価格を凍結して更にその凍結を永続した本件各措置を採ったものであるが,これは,委託者の立場をないがしろにして商社や一部の商品取引員を優遇して,原告ら委託者が適正かつ公正に運営された健全な市場で取引を続ける機会を喪失させた上で,根拠規定を欠く本件各措置まで採って,原告らの取引機会の喪失を確定させて一方的に損失が生じることを強制したものであり,一連の行為として委託者保護義務に違反したのであるから,これによって損害を受けた原告らに対して不法行為責任を負う。 (イ) 被告理事らの責任被告理事らのうち被告Y2,被告Y3,被告Y4は,被告東工取で市場 為として委託者保護義務に違反したのであるから,これによって損害を受けた原告らに対して不法行為責任を負う。 (イ) 被告理事らの責任被告理事らのうち被告Y2,被告Y3,被告Y4は,被告東工取で市場管理業務の中核を占める市場管理委員会の要職を占めていた理事であり,法令違反の本件各措置を率先して取り決め,実行した。また,被告Y1(当時の理事長),被告Y5,被告Y6は,運営全体の中核にいた立場にあり,被告Y7,被告Y8は,常勤の理事であって,いずれも市場管理委員会の違法な決定を追認して被告東工取の決定とした。 したがって,被告理事らも法60条の2第2項に基づいて,被告東工取と連帯して損害賠償責任を負う。 (被告らの主張)ア本件各措置の根拠規定(ア) 本件値段凍結措置について業務規程34条2項によれば,被告東工取の理事会は,法1条に定めた公益目的を達成するために,その時々の市場動向,市場環境の中で,最も妥当で合理的な制限値幅を決定する権限と責任を有するので,その必要があれば,制限値幅を0円とすることもできる。 被告東工取は,本件高騰という異常事態を受けて,業務規程34条2項に基づき,本件値段凍結措置を決定した。 (イ) 本件永続化措置についてa 業務規程87条1項業務規程87条1項は,いわゆる2000年問題に対処することを契機に制定されたものであるが,そのような技術的な問題に限らず,政治的,経済的,社会的状況,取引状況に起因する取引の締結上の支障に広く対処するために制定されたものである。 したがって,本件永続化措置は,業務規程87条1項に基づく措置である。 b 定款174条仮に,本件には業務規程87条1項が適用されないとしても,商品先物市場においては,想定外の異常な事態が生じることが多く,あらゆる事態を特定してこれに対する措置をあ く措置である。 b 定款174条仮に,本件には業務規程87条1項が適用されないとしても,商品先物市場においては,想定外の異常な事態が生じることが多く,あらゆる事態を特定してこれに対する措置をあらかじめ定めることは困難であるから,定款174条は「諸規則に明文のない事項について臨機の処置を必要とするときは,理事会の議決に従う」と規定している。本件永続化措置は,この規定に基づく理事会の決議による臨機の処置である。 c 業務規程34条1項ただし書について業務規程34条1項ただし書は,商品先物市場では,納会日に現物で受渡しをして取引を終了させることも可能であるが,その際に先物取引の価格と現物の価格が乖離することは望ましくないので,両者が同一価格に収束するように,またストップ高やストップ安が発生して建玉の処分に支障が生じないように,納会日の属する月には値幅制限を課さないこととしている。 しかし,本件は,本件高騰という異常事態に対処するために,全市場参加者に決済代金の調達ができ次第設定基準価格で売建玉を処分し,随時市場離脱をすることを求め,かつ現物の受渡し決済を認めないこととせざるを得なかった場合であり,また制限値幅を0円とすればストップ高やストップ安もあり得ないので,同項ただし書の前提とする事態とは異なる場合であった。 そこで,被告東工取は,臨機の措置として業務規程34条1項ただし書を適用しないこととしたのである。 イ被告東工取の裁量権について(ア) 商品取引所は,法1条に規定する目的,すなわち,商品価格の形成及び市場取引における売買取引の公正を確保することにより,国民経済の適切な運営及び商品市場における取引の委託者の保護を図るために,適切な市場管理を行う義務及び権限を有している。 商品取引所は,この市場管理を行うために,理事会の諮問機関 確保することにより,国民経済の適切な運営及び商品市場における取引の委託者の保護を図るために,適切な市場管理を行う義務及び権限を有している。 商品取引所は,この市場管理を行うために,理事会の諮問機関として市場管理委員会を設置し,常時又は臨機の市場管理体制を整えているのに加え,業務規程及び基本要綱で,建玉数量の制限,売買値段の制限(値幅制限),取引証拠金及び委託証拠金の管理,建玉の報告等を定めており,さらに,これらの規制措置では十分ではない場合の措置として,業務規程で,売買立会いの臨時停止(業務規程11条),売買建玉の解合い(業務規程35条,21条8項)等を定めている。 しかし,市場取引に影響を与える政治,経済,社会状況,需給関係その他の状況の変更と,これが市場取引に与える影響は千差万別であって,これらの定めによっても対応することができない事象が発生することが予測されるので,業務規程87条1項及び定款174条は,取引所がこれらの事象に迅速に対応できるようにするために臨機の措置を取ることができる旨規定している。 (イ) 商品市場において秩序維持及び公益保護を図る任務は,第1次的には商品取引所が負っており,監督官庁である主務大臣は,法に基づく監督権により取引所を通して間接的に秩序の維持等を図ることが通常であるものの,法90条は,取引所が市場管理の責任を果たせない場合は,主務大臣が直接に規制措置を採ることができると規定している。主務大臣が同条に基づいて行う措置は,政策的な公益判断に基づいて行う行政処分であるから,商品取引所が第1次的に行う規制措置もこれに準じるものであり,取引所行政であるということができる。したがって,緊急事態においてどのような措置を発動するべきかの選択は,商品取引所の裁量に委ねられており,商品取引所が高度の専門的知識に基づ れに準じるものであり,取引所行政であるということができる。したがって,緊急事態においてどのような措置を発動するべきかの選択は,商品取引所の裁量に委ねられており,商品取引所が高度の専門的知識に基づいて採った措置の当不当は,当該措置が社会通念上著しく妥当性を欠くと認められる場合を除いて司法判断の対象にはならないか,仮に司法判断の対象になるとしても,大幅な裁量権が認められるべきである。 ウ本件値段凍結措置は,実体的にも適法である。 (ア) 本件値段凍結措置の必要性a 被告東工取は,本件高騰に対応するために,通常は1か月に1回開催される市場管理委員会を,平成12年2月14日から23日までの8営業日中7回にわたり開催し,制限値段の調整,建玉数量の制限,特別売買の特例措置等,取り得る手段を可能な限り駆使してパラジウム市場の沈静化を図ったが,高騰は改善せず,同月14日からは全限月について終日ストップ高となり,同月23日には,終日ストップ高が8日間続くという,被告東工取が初めて経験する極めて異常な事態となった。 b このような状況の下では,売建玉を有している者の建玉の値洗い損が急激に拡大し,その建玉を処分しようと買戻し注文をしている者が殺到していたにもかかわらず,反対注文がないため,ほとんどの者が市場から離脱することができなくなった。 この場合,更に相場が上昇すると,委託追証拠金(相場が大きく動いて委託本証拠金だけでは不十分となったときに,商品取引員が委託者に預託させる証拠金をいう。)の支払義務が繰り返し発生してその額が増大する。 実際に,被告東工取は,委託者からの苦情や要望が殺到して通常業務にも重大な支障が生じていた程であり,同月23日には被告東工取に対して何らかの対応を求める訴えがパニック状態となっていた。 c さらに,ストップ高の継続によ ,委託者からの苦情や要望が殺到して通常業務にも重大な支障が生じていた程であり,同月23日には被告東工取に対して何らかの対応を求める訴えがパニック状態となっていた。 c さらに,ストップ高の継続により,商品取引員も自己の売建玉に対する値洗い損が発生するほか,委託者が委託追証拠金の預託をすることができないことによる立替払が増大し,同月23日の時点で価格を固定せずに更に価格が上昇した場合には,会員に違約が発生することが予想された。 会員に違約が発生した場合,違約会員の売建玉を他の会員の買建玉数量に応じて機械的に割り当てることによって違約会員の売建玉を決済させることとなるので,買建玉よりも売建玉を多く有していて,損をしていた会員にも更に売建玉が割り当てられて更に違約が増加するという懸念があった。このような違約の連鎖によって商品取引員の破綻が連続した場合,他の取引所でもその定款により違約者とみなされるので,他の取引所の機能までも停止させ,商品取引業界全体の混乱を招くことが必至であったし,違約したということは企業として破綻したことを意味するから,社会問題ともならざるを得なかった。 現実には,Aから財務悪化により違約が生じかねないとの報告があったため,本件特別売買を成立させて違約を回避させたが,他にも財務状況が悪化していた会員が存在し,その窮状は,同月23日の時点では,もはや放置することができる状況ではなくなっていた。 d パラジウム価格は,同月21日,一時的にストップ高が外れたことはあったが,それはほんの10分ないし15分というごく短時間であり,買い注文の殺到によりまたすぐにストップ高となってこれが同月23日まで継続しており,救済された者はごくわずかに過ぎなかったから,その委託者及び商品取引員の救済の必要性には変わりがなかった。 e 以上の 文の殺到によりまたすぐにストップ高となってこれが同月23日まで継続しており,救済された者はごくわずかに過ぎなかったから,その委託者及び商品取引員の救済の必要性には変わりがなかった。 e 以上の事情から,被告東工取は,同月23日の時点では,翌日に少なくとも価格の上昇が止まってストップ高が解消されることを確信することができない限り,この異様な状況を放置することはできない状態にあった。 しかし,それを確信するどころか期待させるような情報もなく,むしろ,同月23日のパラジウム価格の動向は,被告東工取がそれまでに制限値幅を縮小する等の措置を採っていたことがNYMEX価格に影響を与えていたはずであるにもかかわらず,NYMEX価格は,被告東工取に比べて500円以上も高い水準であり,更に被告東工取の当月限(値幅制限が適用されない。)はNYMEX価格に近いところまで上がっていたこと,及び市場動向は,圧倒的に買い注文の枚数が多い状態であったことから,このような状態で,仮に被告東工取が制限値幅を0円とする措置を取らずに放置していれば,更に価格が高騰することが必至であった。 f 以上のような価格高騰の中で,被告東工取は,市場環境が急速に改善すると期待することのできる材料がなく,かつこれまで採ってきた通常の価格沈静化の手段が効果を発揮しないという異常事態となったことから,通常採ることのできる手段のみでは市場管理者としての責任を果たせる状況ではないと判断して,更なる価格の上昇が市場全体へもたらす悪影響の防止と委託者保護の観点から,緊急避難的な措置として,パラジウム価格の制限値幅を0円として価格を固定して急騰を停止させ,その価格で委託者を市場から離脱させる本件値段凍結措置を取らざるを得なくなり,臨時市場管理委員会及び臨時理事会で業務規程34条2項に基づいて本 格の制限値幅を0円として価格を固定して急騰を停止させ,その価格で委託者を市場から離脱させる本件値段凍結措置を取らざるを得なくなり,臨時市場管理委員会及び臨時理事会で業務規程34条2項に基づいて本件値段凍結措置を決定した。 被告東工取が本件値段凍結措置を採ったのは,当時,売建玉を有する一般委託者の値洗い損の拡大が危機的状況に達しており,何よりも優先してその拡大を停止する必要があったからであった。 g パラジウム価格が同日23日以上に暴騰すれば,証拠金を支払うことができない者が激増して売建玉を維持することができた者は激減したはずであるから,本件値段凍結措置は,原告らのように売建玉を持っているが手仕舞いを控えていた者にとっても有利な措置であった。 (イ) 本件値段凍結措置の合理性a 本件高騰の原因(a) 本件高騰は,Bの建玉ポジションや取引状況により生じたものではなく,自動車の排ガス規制強化による世界的なパラジウムの需要拡大が見込まれる事情環境にあったにもかかわらず,世界の生産量の大半を占めるロシアの供給不安が強かったことを背景として,これにパニック買い(売建玉を有する者の損失の拡大を懸念しての買戻し注文,更なる価格の上昇を期待した新規買い注文)が加わったことが原因であった。 (b) 商品先物取引において,商社は多方面との大量取引を常に取り扱っており,リスクヘッジも複雑かつ多層的になるから,一日のうちで取引が重なることも珍しくはない。被告東工取における平成12年2月当時のBの一連のパラジウム取引も,商品先物市場の商社の取引手法としては通常見られるものであり,ことさら特異性は認められない。 被告東工取は,同月のBのヘッジ玉について,ヘッジ玉であることを証する書面を提出させ,申請内容等に不明な点があれば必要なヒヤリングを行うという所定の手続 るものであり,ことさら特異性は認められない。 被告東工取は,同月のBのヘッジ玉について,ヘッジ玉であることを証する書面を提出させ,申請内容等に不明な点があれば必要なヒヤリングを行うという所定の手続を経てヘッジ玉であることを確認したのであり,その書面には特に問題となるところはなかった。 (c) 当時,被告東工取のパラジウム市場においては,海外のファンド等による異常な取引動向も見いだすことはできなかった。 b 本件高騰に対しては本件各措置が最善の措置であった。 (a) 建玉制限措置は市場管理の一方法であるが,他の手段に優先して発動するべきものではなく,被告東工取には,その時々の状況を総合的に判断して,その時に最も適した市場管理をすべき義務がある。そして,市場が過熱していると判断した場合は,まず臨時増証拠金の徴収を決定し,又は値幅制限等最善の検討を行うべきである。 仮に,被告東工取が,同月23日の段階で,ヘッジ玉の建玉制限緩和措置を一切認めずに超過することとなる建玉について強制手仕舞いを指示したと仮定しても,買いと売りの建玉は同枚数が執行されるにすぎず,当時買い注文が圧倒的に多かったことから,ストップ高の解消とは到底ならなかったはずであるし,この措置は,市場参加者の財産権を強制的に処分し,また一種の取引所による価格介入にもなるものであるから,市場参加者のみならず海外市場にも大きな混乱を生じたはずであった。そもそも,ヘッジの建玉規制措置は,商品先物市場が現物取引のヘッジの場であるという本来の使命を放棄することに当たるので,本来行うべきではない措置であり,それにもかかわらず,被告東工取が同月18日にヘッジ玉の建玉制限を決定して同月21日から実行したこと自体,本件高騰という極めて異例な事態に対する措置として実行したものであったのにもかかわらず, り,それにもかかわらず,被告東工取が同月18日にヘッジ玉の建玉制限を決定して同月21日から実行したこと自体,本件高騰という極めて異例な事態に対する措置として実行したものであったのにもかかわらず,それでも本件高騰は沈静化しなかったのである。 (b) さらに,一時的に立会いを停止する立会停止措置も,いわゆる仕手戦のように投機的取引が行われたときに一時的な措置として行われ,多くは強制解合いと連動して行われるものであるが,本件高騰は,そのような投機筋による高騰ではなく,ロシアの供給不安を主因とする現物取引上の需給アンバランスから生じたものであり,現物取引を行わない仕手戦とは全く異なるものであるから,当該措置によって高騰が止まるということもできなかった。 (c) したがって,本件高騰に対して,本件値段凍結措置の外に効果的な手段があったとすれば,強制解合いしかなかったが,被告東工取は,後述するように,強制解合いに優る最良の措置として,本件各措置を採用した。 c 本件特別売買について(a) 被告東工取は,Aから,同月,約1000枚の売建玉が未決済であることによる損失が拡大して取引所に納入する差金に充てる資金繰りの手当ができなかったことから,違約が生じかねない状態にあるとの報告を受けた。 (b) 会員の違約処理をする場合は,定款の定めにより立会いを一事停止する必要があり,その処理には日時を要するため市場を閉鎖せざるを得ない。しかし,特に本件高騰のような異常な高騰下で被告東工取の市場機能が停止することは,被告東工取ひいては日本の商品先物市場の信用の喪失につながるし,他の市場での違約の発生にもつながりかねなかった。 (c) そこで,被告東工取は,市場全体への悪影響を回避して混乱を避けるために,Aの売建玉決済に応じることを承諾した会員5名と本件特 失につながるし,他の市場での違約の発生にもつながりかねなかった。 (c) そこで,被告東工取は,市場全体への悪影響を回避して混乱を避けるために,Aの売建玉決済に応じることを承諾した会員5名と本件特別売買を成立させて違約を回避した。これは,公正かつ適正な運営を確保するために是非とも必要な措置であった。 (d) また,本件特別売買によって本件高騰が生じたのではないし,その後の価格高騰の要因になったということもない。 エ本件永続化措置も実体的に適法である。 (ア) 本件永続化措置の必要性a 制限値幅を0円とする措置は暫定的な措置ではなく,この措置によって確定する設定基準価格によって,会員及び一般委託者全員に随時市場離脱をしてもらう恒久的な措置であり,後に解除することはあり得ないものであった。 b また,被告東工取が世界のパラジウム価格をリードしていたこと,ロシアの供給不安が払拭されてはいなかったこと,及び,同年3月15日には,パラジウム価格はNYMEX及び現物とも値上がり基調にあったことから,被告東工取が仮に本件値段凍結措置を解除すれば,パラジウム価格は再暴騰をして,本件値段凍結措置が無意味になることが予想された。 (イ) 本件永続化措置の合理性a 被告東工取は,本件値段凍結措置を採った後の委託者の市場離脱状況,NYMEX価格その他の状況を客観的に検討した結果,これを解除することは不可能であるとの結論に至り,本件永続化措置を採ることを決定した。 b 本件高騰のように,全限月で終日ストップ高が8日間も連続し,しかも被告東工取が通常採ることができる手段を可能な限り駆使しても事態が沈静化せず,市場離脱をしたくても離脱することができない多数の委託者が存在するという状況は,業務規程21条8項にいう「止むを得ない事由」に該当するから,被告東工取 る手段を可能な限り駆使しても事態が沈静化せず,市場離脱をしたくても離脱することができない多数の委託者が存在するという状況は,業務規程21条8項にいう「止むを得ない事由」に該当するから,被告東工取は,市場の混乱を防止し,市場離脱したくても離脱できない多数の委託者を救済するために,一定時期に一定価格で全ての市場参加者に一斉に手仕舞いをさせて一気に決済を図る強制解合いの適用も検討したが,決済代金の調達等によって一般委託者に多大な負担を強いること及びヘッジ玉が海外市場に急激に移転することによる海外市場の混乱が生じることが懸念された。本件値段凍結措置を解除することは,このような世界的な混乱を生ぜさせる結果につながるので,その意味でも決して適切な措置ではなかった。 したがって,被告東工取は,制限値幅を0円とする措置を納会日まで継続するという方法が,強制解合いと同じ効果を達成することができ,資金が用意でき次第随時建玉を処分して市場離脱を図ることを可能とする点で緩やかであり,強制解合いの弊害を避けることができるから,商品先物市場の運営上必要な最善の措置であるとして,理事会において本件永続化措置を採用したものである。 c 被告東工取が,制限値幅を0円とする措置を後に解除することは,それまでに設定基準価格で市場から離脱した者との関係で不公平が生じて大きな混乱が生じることが予想されるから,不可能なことであった。 (2) 争点(2)(原告らの損害)について(原告らの主張)ア主位的主張(ア) 上記被告らの不法行為により,原告らは,適正かつ公正な市場でパラジウムの売建玉を決済する機会を喪失させられた。したがって,原告らの損害は,抽象的には,健全な市場であれば決済することができたであろう価格と凍結させられた価格との差額となるが,実際には健全な市場はなくなっ の売建玉を決済する機会を喪失させられた。したがって,原告らの損害は,抽象的には,健全な市場であれば決済することができたであろう価格と凍結させられた価格との差額となるが,実際には健全な市場はなくなった。 被告東工取は,平成12年2月28日,新しく平成13年2月限を新甫発会させた。これは,平成12年4月3日,1900円で売買が成立して取引が始まった。その価格は,同年4月から6月にかけては凍結価格から大幅に下落して2000円を割り,同年4月4日,同月24日,同月25日,同年5月30日,同月31日には,それぞれ終値が1852円以下となった。 そこで,原告は,その損害の算定について,平成13年2月限の価格を基準とする。 (イ) 平成13年2月限のパラジウムは,度々1852円以下の価格となっているのに対して,原告らの建玉は,いずれの限月でも凍結された価格が2359円以上であり,500円以上も高くなっているから,健全な市場が運営されていれば,原告らの建玉は1グラム500円以上低い価格で決済することができた可能性が相当程度あったということができる。 (ウ) 以上から,原告らは,少なくとも建玉1グラム当たり500円,1枚当たり75万円の損害を被ったものであり,その金額は,別紙2取引一覧表の建玉損害額欄記載のとおりとなる。原告らは,そのうち同表の建玉損害請求額欄記載の金額を請求する(一部の原告については,一部請求)。 (エ) また,原告らは,上記損害の回復のために被告らに対して賠償請求を行ったが,被告らはこれに応じないため,原告ら代理人弁護士に委任して本件訴訟を提起せざるを得なかった。したがって,別紙2取引一覧表の弁護士費用欄記載のとおりの弁護士費用相当額(別紙2取引一覧表の建玉損害請求額欄記載の請求額の1割相当)も損害となる。 (オ) なお,被告らは,原 起せざるを得なかった。したがって,別紙2取引一覧表の弁護士費用欄記載のとおりの弁護士費用相当額(別紙2取引一覧表の建玉損害請求額欄記載の請求額の1割相当)も損害となる。 (オ) なお,被告らは,原告らの一部は両建であったから損害はないと主張するが,両建の場合でも,売建玉と買建玉は,もともと同時に手仕舞うことが前提の建玉ではないから,価格下落分が相殺されると言うことはできず,買建玉を考慮する必要はない。 (カ) よって,原告らは,被告らに対し,民法709条及び法60条の2第2項に基づき,損害賠償として,原告らが被った損害のうち,別紙2取引一覧表の建玉損害請求額欄記載の金額及び弁護士費用欄記載の金額を合計した請求債権欄記載の各金員及び上記各金員に対する原告らの建玉の最終受渡期限である平成12年12月を経て原告らの損害が全て確定した後の平成13年1月1日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 イ予備的主張1本件高騰は,被告東工取が市場管理を怠り続けた結果起きたものであるから,被告東工取が早期に建玉制限等のヘッジ玉に対する規制を行っていれば,売り委託者であった原告らに損害が生じることはなかった。 上記規制は,遅くともBが大量建玉を行って,被告東工取での過当投機の疑いが顕著になった日である平成12年2月8日までに行われるべきであった。 そこで,その翌日の同月9日の終値で見ると,2月限を除く各限月の中でその価格が最も高いのは,4月限の1941円であるから,凍結価格のなかで最も低い価格である10月限の2359円と,上記1941円とのである差額418円が,原告らの建玉1グラム当たりの損失となり,したがって,原告らは,その建玉1枚当たり62万7000円の損害を被った。 ウ予備的主張2被告東工取は,同月18日に本件特別 1円とのである差額418円が,原告らの建玉1グラム当たりの損失となり,したがって,原告らは,その建玉1枚当たり62万7000円の損害を被った。 ウ予備的主張2被告東工取は,同月18日に本件特別売買を実施しており,その価格は同日の始値である2243円であり,その建玉のほとんどは,一般委託者の委託玉ではなく,Aの自己玉であったから,被告東工取は,少なくとも一般委託者である原告らについても,Aとの闇解け合い価格との差額までは,その損失を補填すべきであった。 本件値段凍結措置における最も低い凍結価格は2359円であるから,上記特別売買価格との差額は,最低でも116円となる。したがって,原告らは,建玉1グラム当たり116円の損害を被った。 エ予備的主張3仮に原告らの財産的損害の認定が困難であるとしても,原告らが取引機会を剥奪されて損失を被ったことは間違いないのであるから,慰謝料として原告らの損失を補填するべきである。その金額は,上記アにおける請求金額と同額である。 オ仮に上記アないしウの損害を認定することができない場合でも,原告らが被告らの不法行為によって損害を被ったことは明らかであから,裁判所は,原告らが被った損害(建玉の枚数に比例して増大する)を基礎として,民事訴訟法248条に基づき,相当な額の損害額を認定すべきである。 (被告らの主張)ア原告らは,平成13年2月限のパラジウムの価格1852円を基礎に損害額を計算しているが,この1852円という価格は,あくまでも被告東工取の本件各措置によって平成13年2月限以外のパラジウムの価格が凍結されているということを背景として形成された価格である。しかも,平成13年2月限のパラジウムは,平成12年6月末には2146円,7月末には2595円と値上がりしている。したがって,仮に本件各措置がなか ているということを背景として形成された価格である。しかも,平成13年2月限のパラジウムは,平成12年6月末には2146円,7月末には2595円と値上がりしている。したがって,仮に本件各措置がなかったとしても,原告らが1852円で売建玉を決済できたという根拠は全くない。 原告らの主張している損害額は,全く合理的根拠のない計算によるものである。 イ原告らは,市場管理義務違反による価格の高騰と相当因果関係がある損害の合理的な算定根拠を示していない。 ウ原告らのうち,原告X1,原告X2及び原告X3の建玉は両建であったから,仮に本件各措置がなければパラジウムの価格が下落していたはずであるとしても,売建玉で得られる利益は買建玉で相殺されるから,損害は生じていない。 第3 当裁判所の判断 1 前記争いのない事実等及び証拠(甲1ないし71,乙1ないし16〔以上証拠番号につき枝番を含む。〕,原告X4,原告X5,被告Y8,被告Y7)によれば,以下の事実を認めることができる。 (1) パラジウム市場アパラジウムは,主として電気・電気部品,歯科材料,自動車触媒及び宝飾品等の需要が多い貴金属であり,供給地がロシアと南アフリカに偏在しており価格変動幅が大きいとされている。日本は,パラジウムの世界最大の需要国であり,そのほとんど全てを輸入に依存している。 イ被告東工取は,平成4年8月,主務大臣(当時の通商産業大臣)の認可を得て,期限を3年と定めてパラジウムを試験上場し,平成6年8月に本上場した。 その売買仕法は,国際標準であるザラバ仕法(最も安い売り希望と最も高い買い希望とに優先権を与え,順次相対で売買を成立させていく方式をいう。)が採用された。平成12年当時,パラジウムの商品先物取引市場は,被告東工取及びNYMEXの2か所のみであったが,被告東工取の取引規模 希望とに優先権を与え,順次相対で売買を成立させていく方式をいう。)が採用された。平成12年当時,パラジウムの商品先物取引市場は,被告東工取及びNYMEXの2か所のみであったが,被告東工取の取引規模は,NYMEXの約30倍であった。 (2) 本件本件値段凍結措置に至るまでの経過ア被告東工取は,価格の急激な変動を抑えること等を目的として,パラジウム取引の約定値段を一定の制限値段の範囲内に制限しており,業務規程34条2項は,その制限値段を,「直前営業日における最終約定値段を基準値段とし,同値段の100分の20の範囲内において理事会で定める金額を加減した値段とする。」と規定している。平成12年初頭当時の制限値幅は,40円であった。なお,その月に決済される当月限の取引については,現物価格との整合性を保つため,値幅制限は設けられていない。 イ被告東工取は,業務規程の取引数量等の制限に関する定めに基づき,過当投機を防止するため,基本要綱において,委託者及び会員の自己玉の建玉数量を一定枚数に制限し,これを超えたときは,超過部分を処分すべきことを定めている。しかし,当業者のヘッジ玉については,当業者の現物取引によるリスクのヘッジが商品取引所における先物取引の主要目的の一つであることにかんがみ,ヘッジ玉であることを証する書面の提出があり,被告東工取がヘッジ目的に合致すると認めた場合に限り,証明のあった数量の範囲内で制限を超える建玉が認められている。 被告東工取は,ヘッジ玉であることを証する書面として,商品の在庫証明書,固定価格での購入証明書や売却契約書,先渡市場での売買契約書などを提出させて確認していた。また,被告東工取は,平成11年10月ないし11月にかけて,その会員であったB等5社に対してヘッジ申請の内容について立入監査を行って,売契約であれ 渡市場での売買契約書などを提出させて確認していた。また,被告東工取は,平成11年10月ないし11月にかけて,その会員であったB等5社に対してヘッジ申請の内容について立入監査を行って,売契約であれば荷送り伝票,買契約であれば送金伝票等の帳票を確認したところ,ヘッジ取引の裏付けとなる現物取引が実際に行われていたことを確認した。 ウ被告東工取におけるパラジウムの価格は,平成11年末は1367円であったが,平成12年1月末には1579円に上昇し,同年2月に入ると,買い注文が急増して,同月7日に1739円,同月10日に1883円,同月14日に1943円,同月23日に2363円と急騰した。この間の同月7日から同月9日にかけては,制限値段のない当月限を除く全限月で3日間連続終日ストップ高となり,同月14日から同月23日にかけては,同様に8日間連続終日ストップ高となった(ただし,同月21日は,短時間ストップ高が外れたことがあった。)。 このような事態は,被告東工取にとって初めてのことであった。 エパラジウムの価格は,もう一つの先物市場であるNYMEX及び現物取引においても,平成12年1月から2月にかけて同様に急騰した。 被告東工取は,このようなパラジウムの急騰につき,排ガス規制強化に伴い自動車触媒としてのパラジウム需要が増加したことと,最大の供給国であるロシアのエリツィン大統領が平成11年12月に辞任したため,供給量の減少が懸念されたことが主要な原因となって買い注文が急増したことによるものと分析し,当業者の多くも需給関係による高騰との見方をしていた。 オ被告東工取は,パラジウム価格の本件高騰を受けて,平成12年2月,同月22日までの間に6回にわたり臨時市場管理委員会を開催し,価格高騰により値洗い損が拡大していた売建玉を有する委託者の市場離脱促進等を 告東工取は,パラジウム価格の本件高騰を受けて,平成12年2月,同月22日までの間に6回にわたり臨時市場管理委員会を開催し,価格高騰により値洗い損が拡大していた売建玉を有する委託者の市場離脱促進等を目的として,以下の措置を講じた。 (ア) 同月1日,当月限である2月限及び4月限の取組高が増加していたため,基本要綱に基づき臨時増証拠金の徴収を決定した。 これは,一般的に取引のリスクが高くなる期近限月について,取引参加者の担保力を強化することなどを目的とした措置であった。 (イ) 同月7日,同月4日から2営業日連続して2月限を除く全限月の終値がストップ高となったため,同月8日から,基本要綱に基づき,制限値幅を40円から60円に拡大するとともに,臨時増証拠金の徴収(1枚当たり,取引臨時増証拠金は自己玉につき2万2500円,委託玉につき6750円,委託臨時増証拠金は4万5000円。)を決定した。 これは,ストップ高が続いたことを受けて,制限値段のないNYMEX及び現物市場における価格との乖離をできるだけ回避することが目的の一つであった。また,価格の高騰が続いたため,売建玉を有する委託者は,値洗い損の拡大により委託証拠金の負担が増大していたが,買い決済による市場離脱を希望しても,ストップ高の連続でその機会が減少していたので,制限値幅の拡大によりストップ高となる可能性を減らすことがもう一つの目的であった。なお,臨時増証拠金の徴収は,制限値幅拡大から生ずる価格上昇に伴う担保力の強化及び資金力が十分ではない委託者の市場離脱の促進を目的とする措置であった。 (ウ) 同月8日,前日の決定に基づき,制限値幅を60円に拡大した。また,大口の取引を抑制することにより多数の委託者の注文が成約となることを目的として,1件当たりの発注枚数を通常時の500枚から100枚 ) 同月8日,前日の決定に基づき,制限値幅を60円に拡大した。また,大口の取引を抑制することにより多数の委託者の注文が成約となることを目的として,1件当たりの発注枚数を通常時の500枚から100枚に制限し,一限月当たりの注文累計枚数を2000枚に制限する旨を決定した。 (エ) 同月9日,ストップ高が続いたため,同月10日から,制限値幅を再度拡大して80円にすること,及び再度臨時増証拠金を徴収することを決定した。 (オ) 同月10日,全限月についてストップ高が外れたため,翌営業日である同月14日から,制限値幅を60円に戻す旨決定した。しかし,同日,再度ストップ高となり,翌15日もストップ高となったため,制限値幅を再び80円に拡大して同月16日から適用することを決定した。 (カ) 同月16日,ストップ高が継続したので,新規の買い注文抑制とこのことによって売建玉を有している委託者の離脱の可能性を増加させるため,同月17日以降は新規取引でも臨時増証拠金を徴収することを決定した。 (キ) 同月17日,同月14日から3営業日連続して全限月終日ストップ高となったため,業務規程に基づく特別売買の特例措置及び,自己玉の受付開始時間を前場20分,後場15分遅らせて,委託注文を優先して受け付けることを決定した。 この特別売買の特例措置は,ストップ高が継続する中では通常の特別売買(市場で約定できなかった場合でも,最終立会終了後,受託会員の自己玉により約定させて市場離脱できるようにするもの)では需要に追いつかないため,特例として,自己玉ではなく委託玉でも特別売買ができるようにして売建玉を有している委託者の市場離脱の促進を図ることを目的とする措置である。委託注文の優先受付は,取引所で受け付けた順番で取引が成立することから,委託注文が必ず先に受け付けられるようにして うにして売建玉を有している委託者の市場離脱の促進を図ることを目的とする措置である。委託注文の優先受付は,取引所で受け付けた順番で取引が成立することから,委託注文が必ず先に受け付けられるようにして市場離脱を求める一般委託者の約定の機会を増加させることを目的とする措置であった。 (ク) 同月18日,当月限(2月限)価格は上昇を続け,その他の限月も終日ストップ高が続き,現物価格及びNYMEX価格も上昇していたので,同月21日から,制限値幅を50円に縮小すること,ヘッジ玉を除く4月限の新規取引を認めないことを決定し,また,ヘッジ玉も含む建玉数量の制限(会員は基本要綱に規定する数量の2倍,委託者は3倍を限度とする。)を可及的速やかに実施することを決定した。 制限値幅の縮小は,売建玉を有する市場参加者の値洗い損の拡大防止及び市場の沈静化を目的とする措置であり,新規取引の制限は,新規の買い注文を抑制して市場を沈静化させるとともに売建玉の買い決済の促進を図ることを目的とする措置であり,建玉数量の制限は,新たな買建玉の増加を制限すること及び制限数量を超える買建玉を持つ者に売り決済させることによって市場に売り注文を呼び込むことを目的とする措置であった。ただし,建玉数量の制限については,ヘッジ玉を有する者に代替ヘッジ等の対応策を講ずる機会を与えるため,直ちには実施しなかった。 (ケ) 同月17日,Aから被告東工取に対して,約1000枚のパラジウムの売建玉を保有しているが,価格が高騰し続けているため,値洗い損金の資金繰りの手当ができず,違約を生じかねないとの報告があった。業務規程は,違約者の売建玉の処理方法として,他の会員が買建玉を発注する方法,他の会員に違約に係る売建玉を引き受けさせる方法及び他の会員に違約に係る売建玉を割り当てる方法を規定しているが, あった。業務規程は,違約者の売建玉の処理方法として,他の会員が買建玉を発注する方法,他の会員に違約に係る売建玉を引き受けさせる方法及び他の会員に違約に係る売建玉を割り当てる方法を規定しているが,パラジウム価格高騰のため,これらの方法を応諾する会員が出現することは考え難く,また,これらの方法により他の協力会員の財務内容を悪化させて,更に違約を起こす可能性があった。 また,このような違約処理をする場合は,立会いを一時停止して市場を閉鎖する必要があり,当該違約者は他の商品取引所においても違約者として扱われるので,他の商品取引所においても立会いの一時停止という事態が発生する。さらに,被告東工取が調査したところ,このままストップ高が続けば,近日中にさらに3社で違約が発生する危険性があった。 したがって,被告東工取は,市場全体の混乱拡大を抑えるためには,通常の違約処理方法では対応することはできないと判断し,Aが違約者となることを回避するために,臨機の処置として特別売買を行うことを決定し,買建玉を有していた会員7社に対して協力を打診した。 その結果,B,C,D,E及びFの5会員の協力を得られたので,同月18日,この5社との間でAの953枚の売建玉が2243円で決済された(本件特別売買)。 なお,被告東工取は,その後,Aを取引停止処分とした。 (コ) 同月21日,市場離脱の機会を広げるため,特別売買の特例措置(前記(キ))を前場の立会終了時にも適用することを決定した。 なお,同日,板付き直後に15分程度の間ストップ高が外れ,その間,約1万枚の取引が成立したが,その後またストップ高となった。 (サ) 同月22日,ストップ高が続く中,現物価格も上昇し続けていたことから,翌23日以降,制限値幅を20円に縮小すること及び全限月についてヘッジ取引を除く新規取引を その後またストップ高となった。 (サ) 同月22日,ストップ高が続く中,現物価格も上昇し続けていたことから,翌23日以降,制限値幅を20円に縮小すること及び全限月についてヘッジ取引を除く新規取引を制限することを決定した。 (シ) 被告東工取は,本件高騰等に関し,同年2月中に約180件という多数の苦情を受けた。その内容は,売建玉を有している委託者から,追証拠金を支払うことができないから売建玉を仕切ることができるようにして欲しい,被告東工取が対応策を採ってパラジウム価格の高騰を止めてほしい,というものが中心であった。また,一時的にストップ高が外れた同月21日以降も,その苦情内容に変化はなく,売委託者が窮状を訴える内容の苦情が相次いでいた。 (3) 商社の取引状況B,D及びEは,被告東工取でパラジウムの取引をしていた商社であり,平成12年1月初めから同年2月23日までの間におけるこれら3社の買い取引合計は,多いときでも全体の11.5パーセント(同月2日),11.1パーセント(同年1月19日),10.6パーセント(同月14日及び同年2月8日)であり,総じて10パーセント未満であった。 Bは,この期間中,売り買い両方の取引をしたが,同月7日までは売り買いの各枚数に大きな差はなく,同月8日に買い2896枚(売りは0),同月10日に買い2477枚(売り2007枚)の取引をした後,買いの枚数は減少し,売りを増やしていった。 (4) 本件値段凍結措置(同月23日)ア同月14日から連日ストップ高が続き,前日22日の価格は2343円であった。他方,制限値段のない当月限は2890円,NYMEX価格は2912円,現物価格は2966円であり,両者間に500円を超える開きがあった。また,注文数は,前日22日が買い7万2349枚に対し売り942枚,23日が買い5万 当月限は2890円,NYMEX価格は2912円,現物価格は2966円であり,両者間に500円を超える開きがあった。また,注文数は,前日22日が買い7万2349枚に対し売り942枚,23日が買い5万8914枚に対し売り1200枚であった。 イ被告東工取は,これまで市場沈静化,売建玉を有する委託者の損失拡大防止等を目的とする各種措置を講じてきたが,価格はなお上昇を続ける傾向にあると判断し,臨時の市場管理委員会及び理事会を開催して,同月24日から当分の間,制限値幅を0円とする本件値段凍結措置を決定するとともに,ヘッジ玉に係る建玉制限緩和措置の適用を停止して制限を越える建玉の速やかな処分を求めることを決定した。 ウこれは,値洗い損が拡大し続けている売建玉を有する委託者(損失額は総額360億円を超えると試算された。)の損失拡大を防止するため,価格のこれ以上の上昇を抑えることを目的としたものであった。そして,委託者が買い決済をして市場から離脱することを可能にするため,ヘッジ玉に係る建玉制限緩和措置の適用を停止することにより,買建玉の市場放出を促すことにしたものである。 エなお,一定の価格での決済を強制する手段として,業務規程21条8項は,いわゆる強制解け合い(理事会の定めた価格により直ちに決済させること)を定めている。被告東工取は,この手段では,委託者は直ちに多額の決済資金が必要となり,また,ヘッジ玉を有する者が代替策を講ずる時間的余裕もないことを考慮して,一定の価格での決済という面では同一の効果を有するが,資金等の手当てができた者から順次決済するとの面で委託者等に対する負担や混乱が少ない方法として,制限値幅を0円とする措置を選択した。 オ本件値段凍結措置が採られた同月23日以降,被告東工取に対する苦情は,それまでの窮状を訴える内容から, との面で委託者等に対する負担や混乱が少ない方法として,制限値幅を0円とする措置を選択した。 オ本件値段凍結措置が採られた同月23日以降,被告東工取に対する苦情は,それまでの窮状を訴える内容から,本件値段凍結措置を解除して立会いを再開してほしいとの内容のものや,逆に本件値段凍結措置によって助かったという感謝を伝える内容のものに変化した。 カ本件値段凍結措置の前後にかけて,マスコミや業界紙等においては,海外ファンドや商社の大量の投機買いが本件高騰の原因である,被告東工取のヘッジ玉審査に問題があり,ヘッジ玉との名の下に大量の投機が行われた,建玉制限をすべきであったのに行われなかったなどという内容の被告東工取に批判的な報道が少なくなかったが,売建玉を有する一般投資家の救済を優先させた措置であり,一般投資家の手仕舞いが進んだが,買建玉を有する者には不満がある旨の論調も見受けられた。 また,同月中旬ころ,被告東工取の会員の間で,某商社筋の話として,本件高騰はファンドが商社の協力を得た上で価格をつり上げたことによって生じたもので,被告東工取はこれを規制はしないであろうが,2900円ないし2950円という価格で市場を閉鎖すると予想される旨記載された,出所不明の文書が流通した。 (5) 本件永続化措置(同年3月15日)ア本件値段凍結措置を講じた同年2月24日,当月限の価格は前日の2890円から2600円に下落した。また,現物価格は2966円から2790円,NYMEX価格は2912円から2576円にそれぞれ下落した。その後,これらの価格は下落を続け,同年3月7日には,現物価格が2328円,NYMEX価格が2271円となった。しかし,翌8日には,現物価格が2488円,NYMEX価格が2430円と反転し,同月15日には,現物価格が2409円,NYMEX 月7日には,現物価格が2328円,NYMEX価格が2271円となった。しかし,翌8日には,現物価格が2488円,NYMEX価格が2430円と反転し,同月15日には,現物価格が2409円,NYMEX価格が2399円となった。 イ本件値段凍結措置を講じた同年2月24日の時点における全建玉数は約8万3000枚であったが,同年3月15日までの間にそのうち約4万3000枚が市場離脱をしたにすぎず,同日の時点で,市場から離脱していない建玉が約4万枚残っていた。この間の注文枚数は,同月1日以降,売り注文は連日1万枚を超えていたが,買い注文は最高で同月13日の1020枚と激減した。 ウ被告東工取は,同月15日,理事会を開催し,制限値幅を0円とする措置を各限月の納会日まで継続する旨決定した(本件永続化措置)。 これは,本件値段凍結措置の解除による次のような問題点を考慮したものであった。 価格の今後の推移を正確に予測することはできないが,同日の時点ではやや上昇傾向にあり,今後さらに上昇が続けば,売建玉を有する委託者の損失がさらに拡大し,本件値段凍結措置の目的を達成することができない。他方,価格が下落すれば,本件値段凍結措置により利益拡大の機会を失い利益が固定化していた買建玉を有する者にいったん固定化した利益の減少という不利益を与える。したがって,いずれの場合でも,売方と買方のいずれか一方に不利益を与えることになり,公平を保てない。 また,本件値段凍結措置と同時に,既存のヘッジ玉についても建玉数量制限を課し,制限を越えるヘッジ玉の決済を強制したため,ヘッジ玉を有する者は,代替ヘッジ策を講ずる等して,被告東工取におけるヘッジ玉のヘッジ機能は失われ,通常の建玉となっていた。したがって,本件値段凍結措置を解除すると,当初ヘッジ玉としてリスクが比較的小さかったも る者は,代替ヘッジ策を講ずる等して,被告東工取におけるヘッジ玉のヘッジ機能は失われ,通常の建玉となっていた。したがって,本件値段凍結措置を解除すると,当初ヘッジ玉としてリスクが比較的小さかったものが価格変動によるリスクをそのまま受けることになる。 (6) その後の価格の推移被告東工取におけるパラジウム価格は,平成12年4月3日に1900円を付け,その後1800円台から1900円台で推移したが,同年6月9日に2006円となり,同月20日には2268円,同年8月3日には2801円と上昇し,同年9月29日にいったん安値2234円を付けた後,再度高騰を続けて,平成13年1月29日には高値3710円の最高値を付けた。その後は急激に下落し,同年10月に1200円台を記録した。 2 本件各措置の違法性の有無(争点(1))について(1) 本件各措置の根拠規定の有無についてア本件値段凍結措置について業務規程34条は,取引の値段を一定の制限値段の範囲内に限定し,この制限値段を直前営業日における最終約定値段にその100分の20の範囲内において理事会で定める金額を加減した値段とすると定めている。これは,理事会が直前営業日における最終約定値段の最大100分の20の範囲内で制限値幅を定めることを認めたものであり,その下限は定められていない。このことと,制限値段が定められている趣旨が取引値段の急激な変動を抑えることにあることを考えると,業務規程34条は制限値幅を0円とすることを否定してはいないものと解されるから,理事会は,同条に基づき,制限値幅を0円とすることもできる。 イ本件永続化措置について(ア) 業務規程87条は,23条に規定する電子計算機等を利用したシステム売買による取引の締結に支障が生じた場合についての規定であり,いわゆる2000年問題に適切 きる。 イ本件永続化措置について(ア) 業務規程87条は,23条に規定する電子計算機等を利用したシステム売買による取引の締結に支障が生じた場合についての規定であり,いわゆる2000年問題に適切に対処するため,平成11年末に新設された規定であるから(甲7,乙2),システム売買に関係のない本件永続化措置の根拠規定となるものではない。 (イ) しかし,業務規程34条は,決済月における当月限の取引につき制限値段の制約を課さないことを定めているほかは,理事会がいったん定めた制限値幅をいつまで継続するかについては特段の定めを設けていない。他方,業務規程21条8項は,やむを得ない事由により取引の決済を行うことができないと認められる場合には,理事会が値段等の条件を定めて売建玉と買建玉とを決済させることができる旨定めている(強制解け合い)。本件永続化措置のように決済月にも特定の値段以外の値段での取引を認めず,特定の値段での決済を強制することは,業務規程が定める強制解け合いと同一の効果をもたらすものである。 そして,定款174条は,業務規定の解釈に疑義があるとき又は明文のない事項について臨機の処置を必要とするときは,理事会の議決に従うものとすると定めている。 これらのことと,定款が業務規程より上位の規範であることも考えると,やむを得ない事項により取引の決済を行うことができないと認められる場合には,理事会は,定款174条に基づき,臨機の処置として,制限値幅を0円とすることを納会日まで継続し,当月限についても取引値段を制限することも許されていると解するのが相当である。 ウしたがって,本件各措置は,いずれも業務規程又は定款に根拠を有するものである。 そして,これらの規定に基づく制限値幅の決定,その継続期間及び当月限についても臨機の処置として取引値段を制限 ある。 ウしたがって,本件各措置は,いずれも業務規程又は定款に根拠を有するものである。 そして,これらの規定に基づく制限値幅の決定,その継続期間及び当月限についても臨機の処置として取引値段を制限するかどうかは,いずれも,事柄の性質上,その当時の価格の動向,建玉や注文の状況,各委託者や会員の状況,市場全体に与える影響等の諸般の事情を総合考慮した上での,商品市場の健全な運営につき責任と権限を有する被告東工取の合理的な裁量に委ねられているものと解される。 したがって,本件各措置は,被告東工取がその裁量権を逸脱し,又は裁量権の濫用があったと認められる場合に限り,違法となる。 (2) 本件値段凍結措置についてア上記1の認定事実によれば,本件値段凍結措置に至る経過は,次のとおりであった。 パラジウムの価格は,平成12年2月に急激に高騰し,同月7日から9日にかけて3日間連続ストップ高となり,同月14日から23日にかけて再度8日間連続ストップ高となった。このような価格の高騰により,売建玉を有する者の値洗い損が日々拡大し続けており,その一部の者から被告東工取に苦情や善処を求める声が寄せられていた。このような中で,被告東工取は,売建玉を有する委託者が早期に買い決済をして損失の拡大を回避すること等を目的として,これらの目的に資することが期待できる制限値幅の拡大,臨時増証拠金の徴収,発注枚数の制限,委託注文の優先受付,制限値幅の縮小,建玉数量の制限等様々な措置を講じた。しかし,これらの措置にもかかわらず,市場は一向に沈静化せず,同月23日の時点で,現物価格や制限値段のないNYMEX価格は500円以上高い値を付けていた。また,買い注文数が売り注文数を大幅に上回っていた。そこで,被告東工取は,同日,売建玉を有する委託者の損失拡大を回避するため,理事会におい 値段のないNYMEX価格は500円以上高い値を付けていた。また,買い注文数が売り注文数を大幅に上回っていた。そこで,被告東工取は,同日,売建玉を有する委託者の損失拡大を回避するため,理事会において,当分の間制限値幅を0円とする本件値段凍結措置を決定した。 イ以上からすると,本件値段凍結措置は,売建玉を有する委託者の損失拡大回避という合理的な目的によるものであったと認められる。同月21日には短時間ストップ高が外れたので,その間買い決済の注文を出した者については全員取引が成約したと認められるが,その後も売建玉を有する委託者から被告東工取に苦情が続いたこと,同月23日の時点でもなお多数の買い注文があり,これらの取引が成約していなかったこと,現物価格等が500円以上高い値段を付けていたことからみて,被告東工取が,同日の時点で,なお売建玉を有する委託者が多数存在しており,今後も価格上昇が続いて,このような委託者の損失が拡大するおそれが高いと判断したことが合理性を欠くものであったとは認められない。 ウまた,本件のような異例の緊急事態に対していかなる措置を講ずるかは,被告東工取の合理的な選択に委ねられている。被告東工取は,本件値段凍結措置を講ずる前に,当時の状況下において考えられる他の各種措置を講じたところであり,これらの措置がいずれも効果を生じなかったので,本件値段凍結措置を選択したものであって,これがその裁量権を逸脱したものであったとは認められない。 なお,ヘッジ玉を含む建玉制限は,既存のヘッジ玉等を一定範囲で決済することを強制するものであるが,これが本件において売建玉を有していた委託者全員の損失拡大回避に効果があったことの証拠はなく,また,商品取引所はリスクヘッジが重要な機能の一つであるから,委託者,当業者双方の取引目的を考慮しなけれ これが本件において売建玉を有していた委託者全員の損失拡大回避に効果があったことの証拠はなく,また,商品取引所はリスクヘッジが重要な機能の一つであるから,委託者,当業者双方の取引目的を考慮しなければならない被告東工取が建玉制限を早期に実施しなかったことがその裁量権を逸脱し又は濫用したものとは認められない(ヘッジ玉審査については,後記(4))。 エしたがって,本件値段凍結措置に被告東工取の裁量権の逸脱又は濫用の違法があったとは認められない。 なお,上記1の認定事実によれば,Aに対する本件特別売買は,Aの救済のための措置ではなく,市場全体の混乱拡大防止のためのやむを得ない措置であったと認められるから,本件値段凍結措置の違法性を基礎付けるものではない。 (3) 本件永続化措置についてア上記1の認定事実によれば,本件永続化措置に至る経過は次のとおりであった。 被告東工取は,価格の異例な高騰を受けて,売建玉を有する委託者の損失拡大回避のため買い決済を促すことを目的として,本件値段凍結措置を講じたが,その後平成12年3月15日になっても,なお,約4万枚の建玉が残っていた。そして,現物価格及びNYMEX価格は,本件値段凍結措置後いったん下落傾向をみせたが,同日の時点では再度上向き傾向を示していた。被告東工取は,本件値段凍結措置を解除した場合,価格が再度高騰すれば,売建玉を有する委託者の損失がいっそう拡大し,本件値段凍結措置の所期の目的を達成することができず,他方,価格が下落すれば,本件値段凍結措置により利益拡大の機会喪失との不利益を受けた買建玉を有する者にさらに不利益を与えることになり,また,本件値段凍結措置と同時にヘッジ玉の一部につきヘッジ機能を喪失させる措置を講じたが,これが本来は予定されていなかった価格変動のリスクを受けるとの不利益を受 者にさらに不利益を与えることになり,また,本件値段凍結措置と同時にヘッジ玉の一部につきヘッジ機能を喪失させる措置を講じたが,これが本来は予定されていなかった価格変動のリスクを受けるとの不利益を受けることになると判断して,本件永続化措置を講ずることにした。 イ以上からすると,本件永続化措置は,売建玉を有する者,買建玉を有する者及びヘッジ玉を有する者という価格の動向により利害の相反する各市場参加者の状況を総合考慮した結果によるものであったと認められる。すなわち,被告東工取は,本件値段凍結措置を解除すれば,その後価格が上昇しても下落しても,これらの各市場参加者の一部に利益をもたらし他方に損失を与えることになるので,そのような対応をすることはできないと判断したものである。 このような被告東工取の判断は,各市場参加者から中立の立場にある市場管理者として,その裁量権を逸脱したり濫用したものであったとは認められない。 なお,価格動向を正確に予測することは不可能であり,当時のそれまでの価格動向からみて,被告東工取が再度価格が上昇する可能性もあると判断したことに合理性がないとは認められない。そして,本件値段凍結措置後,買い注文は激減したが,本件永続化措置当時,なお相当数の売建玉が未決済のまま存在しており,その中には原告らのように本件値段凍結措置が解除され,その後価格が下落すると予測し期待して,買い決済をする意思を有していなかった者もいたが,本件の事実経過と未決済玉が相当数に上っていたことから考えて,損失額が多額であったため,決済資金の準備ができなかった者も少なくなかったと推認することができるから,被告東工取がこのような者の損失拡大回避を考慮したことに合理性がなかったとは認められない。 被告東工取が,利害の相反する各市場参加者のうち,売建玉を有してい も少なくなかったと推認することができるから,被告東工取がこのような者の損失拡大回避を考慮したことに合理性がなかったとは認められない。 被告東工取が,利害の相反する各市場参加者のうち,売建玉を有しているが,早期市場離脱を希望せず,本件値段凍結措置の解除とその後の価格下落を予測・期待していた委託者の利益を他の市場参加者より優先させるとの判断をしなかったことに裁量権の行使を誤った違法があると認めることができないことは,上記のとおりである。 (4) ヘッジ玉審査等について上記1の認定事実によれば,被告東工取は,ヘッジ玉については,契約書等の書面の提出を求めて裏付けとなる現物取引の存在を確認しており,平成11年にはヘッジ玉を有していた商社の立入監査を実施したが,問題はなかったのであるから,被告東工取のヘッジ玉審査に問題があったとは認められない。 また,平成12年1月から同年2月にかけてのB等の商社3社の買い取引量は,総じて全体の10パーセント未満であり,最大でも11.5パーセントであったこと,Bは,同月8日に2896枚の買い建てを行い,その翌日(現地時間では同月8日)にNYMEX価格が前日より約150円上昇と大幅に値上がりしたが,同日以前においてもNYMEX価格を含めたパラジウム価格は全体として上昇傾向にあったものであり,その買建数も同日の総買建数の約9パーセントに過ぎなかったこと(乙12の2),Bは,同月10日の後は買い枚数を減らし売り枚数を増加させたが,その後も,価格は,高騰を続け,同月14日から8日間連続ストップ高を付けたこと,本件値段凍結措置後に現物価格を含めて価格が下落したことも本件値段凍結措置という異例の措置の影響によるものであるとの可能性を否定することはできないことから考えて,同月におけるパラジウム価格の本件高騰が商社の過当な投機 現物価格を含めて価格が下落したことも本件値段凍結措置という異例の措置の影響によるものであるとの可能性を否定することはできないことから考えて,同月におけるパラジウム価格の本件高騰が商社の過当な投機によるものであったとは認め難い。 前記1(4)カ認定のマスコミの報道等により,本件高騰が上記商社やその他の者による過当投機によって発生したとの事実を認めるに足りず,他にこの事実を認めるに足りる客観的な証拠はない。 (5) 以上のとおりであるから,本件各措置は,市場参加者全員に特定の値段での決済を強制するという異例なものであるが,パラジウム価格の本件高騰という異例の事態に対し,被告東工取が市場管理者として各市場参加者の利害を総合考慮した上で緊急やむを得ない措置として選択したものであって,これが同被告に与えられている裁量権を逸脱し又は濫用した違法なものであったとは認められない。 3 結論以上によれば,本件各措置が違法であるとは認められないので,原告らの請求は,その余の点につき判断するまでもなく,理由がないから,これをいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第10部裁判長裁判官菊池洋一裁判官棚橋哲夫裁判官佐藤裕子別紙1当事者目録略別紙2取引一覧表略
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