令和3年2月9日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年第11883号不当利得返還請求事件口頭弁論終結日令和2年12月18日判決主文 1 被告は,原告Aに対し,70万円及びこれに対する令和元年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,35万円及びこれに対する令和元年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,43万円及びこれに対する令和元年12月17日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Dに対し,66万円及びこれに対する令和元年11月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は,原告Eに対し,20万円及びこれに対する平成31年2月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告は,原告Fに対し,14万円及びこれに対する令和元年10月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告は,原告Gに対し,51万円及びこれに対する令和2年1月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 被告は,原告Hに対し,25万円及びこれに対する令和2年1月16日から 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 9 被告は,原告Iに対し,112万5000円及びこれに対する令和2年3月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 10 訴訟費用は被告の負担とする。 11 この判決は,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,いわゆる「給料ファクタリング」により,被告から, ることができる。 事実 及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,いわゆる「給料ファクタリング」により,被告から,原告らの給与 債権の譲渡代金と称する金員の交付を受けるとともに,被告から譲渡の対象となった給与債権の回収を委託され,同委託に基づき,上記譲渡代金に手数料を上乗せした額の金員を被告に対して支払うという取引を繰り返していた原告らが,当該取引に係る原告らと被告との間の契約は実質的には金銭消費貸借契約であり,貸金業法の規制に抵触し公序良俗に反して無効となるから,被告は 原告らから支払われた金員を法律上の原因なく利得していると評価できる一方,被告から原告らに対して交付された金員については不法原因給付として原告らには返還義務がないと主張して,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,原告らが被告に対して支払った金員全額及びこれに対する各原告の各最終支払日の翌日から支払済みまで年5分の割合による民法(平成29年法律第4 4号による改正前のもの。以下同じ。)704条前段所定の利息の支払を求める事案である。 2 請求の原因⑴ 当事者等原告らは,被告との間で,いわゆる「給料ファクタリング」に係る取引を 行った者である。 被告は,平成30年6月5日に設立され,ファクタリング事業等を目的とする株式会社である。被告は,「七福神」という名称で,給与債権の買取りを行うサービス,いわゆる「給料ファクタリング」(以下「本件サービス」という。)を運営しており,インターネット上に本件サービスのホームページを掲 載していた。上記ホームページには,「即日融資に代わる即日振込可能」,「他 の金融機関でお金を借りられないビジネ う。)を運営しており,インターネット上に本件サービスのホームページを掲 載していた。上記ホームページには,「即日融資に代わる即日振込可能」,「他 の金融機関でお金を借りられないビジネスパーソンの皆様方を支援」等の文句が謳われている。 ⑵ 本件サービスの概要ア本件サービスの利用を希望する者は,電話又は本件サービスのホームページ上の申込フォームに入力する方法により,申込みを行う。 イ申込みを受けた被告は,申込者に対し,給与額,給与支給日,消費者金融等からの借入状況,勤務先や親族等の連絡先等を確認した上で,本件サービスが金銭消費貸借ではなく債権譲渡契約であること,被告は申込者が次の給与支給日に約定の金額を被告の口座宛てに振り込んで支払うことを条件に申込者の口座宛てに送金すること等を説明する。 ウ被告は,申込者に対し,「賃金等債権譲渡契約書」と題する契約書のPDFファイルを添付したメールを送信する。同契約書においては,①本契約は,被告が申込者の給与債権を割り引いて買い取るものであること,②申込者は,被告から給与債権の回収について無償で委託を受け,勤務先から回収した給与を約定の期限に被告の口座に振り込む方法により支払うこと, ③申込者は,上記②の支払を怠った場合には年14%の遅延損害金を支払うこと,④被告は,申込者が上記②の支払をしないおそれがあると判断した場合,申込者の勤務先へ債権譲渡通知を発送することができること等が定められている。また,上記契約書には,第三債務者の表示として申込者の勤務先名,被告が買い取る給与債権の一部の額面額,被告が交付する譲 渡代金額,給与支給日に合わせた支払期限が記載されている。 エ被告は,申込者に対し,上記ウのメールに,「説明を受け の勤務先名,被告が買い取る給与債権の一部の額面額,被告が交付する譲 渡代金額,給与支給日に合わせた支払期限が記載されている。 エ被告は,申込者に対し,上記ウのメールに,「説明を受けて金銭の貸し借りでないことを理解しました。この契約でお願いいたします。」という趣旨の文言及び譲渡代金受取用の口座情報を記載したメールをもって返信するように指示し,申込者から指示どおりのメールを受信したことを確認後, 申込者の上記口座宛てに上記ウの譲渡代金額を送金する。 オ申込者が支払期限までに上記ウの額面額を支払うことにより,取引は終了する。申込者は,取引終了後,被告との間で再契約をすることができる。 カ被告は,申込者が期限までに弁済しなかった場合,申込者に対し,申込者の勤務先への連絡又は債権譲渡通知書の送付を行う旨告げ,支払を督促する。 ⑶ 各原告の取引状況ア原告Aは,被告との間で,別紙1「原告番号1・A 契約内容・取引状況」記載のとおり,被告が賃金等債権譲渡契約と称する契約を締結し,同契約に基づいて被告から上記⑵ウの譲渡代金の交付を受け,被告に対し上記⑵ウの額面額を支払った。 イ原告Bは,被告との間で,別紙2「原告番号2・B 契約内容・取引状況」記載のとおり,被告が賃金等債権譲渡契約と称する契約を締結し,同契約に基づいて被告から上記⑵ウ譲渡代金の交付を受け,被告に対し上記⑵ウの額面額を支払った。 ウ原告Cは,被告との間で,別紙3「原告番号3・C 契約内容・取引状 況」記載のとおり,被告が賃金等債権譲渡契約と称する契約を締結し,同契約に基づいて被告から上記⑵ウの譲渡代金の交付を受け,被告に対し上記⑵ウの額面額を支払った。 エ原告Dは,被告との間で,別紙 記載のとおり,被告が賃金等債権譲渡契約と称する契約を締結し,同契約に基づいて被告から上記⑵ウの譲渡代金の交付を受け,被告に対し上記⑵ウの額面額を支払った。 エ原告Dは,被告との間で,別紙4「原告番号4・D 契約内容・取引状況」記載のとおり,被告が賃金等債権譲渡契約と称する契約を締結し,同 契約に基づいて被告から上記⑵ウの譲渡代金の交付を受け,被告に対し上記⑵ウの額面額を支払った。 オ原告Eは,被告との間で,別紙5「原告番号5・E 契約内容・取引状況」記載のとおり,被告が賃金等債権譲渡契約と称する契約を締結し,同契約に基づいて被告から上記⑵ウの譲渡代金の交付を受け,被告に対し上 記⑵ウの額面額を支払った。 カ原告Fは,被告との間で,別紙6「原告番号6・F 契約内容・取引状況」記載のとおり,被告が賃金等債権譲渡契約と称する契約を締結し,同契約に基づいて被告から上記⑵ウの譲渡代金の交付を受け,被告に対し上記⑵ウの額面額を支払った。 キ原告Gは,被告との間で,別紙7「原告番号7・G 契約内容・取引状 況」記載のとおり,被告が賃金等債権譲渡契約と称する契約を締結し,同契約に基づいて被告から上記⑵ウの譲渡代金の交付を受け,被告に対し上記⑵ウの額面額を支払った。 ク原告Hは,被告との間で,別紙8「原告番号8・H 契約内容・取引状況」記載のとおり,被告が賃金等債権譲渡契約と称する契約を締結し,同 契約に基づいて被告から上記⑵ウの譲渡代金の交付を受け,被告に対し上記⑵ウの額面額を支払った。 ケ原告Iは,被告との間で,別紙9「原告番号9・I 契約内容・取引状況」記載のとおり,被告が賃金等債権譲渡契約と称する契約を締結し,同契約に基づいて被告から上記⑵ウの譲渡代金の交 払った。 ケ原告Iは,被告との間で,別紙9「原告番号9・I 契約内容・取引状況」記載のとおり,被告が賃金等債権譲渡契約と称する契約を締結し,同契約に基づいて被告から上記⑵ウの譲渡代金の交付を受け,被告に対し上 記⑵ウの額面額を支払った。 ⑷ 被告が法律上の原因なく原告らから支払われた金員を利得したことア原告らと被告との間で締結された被告が賃金等債権譲渡契約と称する各契約(以下「本件各契約」という。)においては,原告らの勤務先から給与債権の支払を受けるのは原告らであって,被告が給与債権の回収を行うこ とは予定されておらず,原告らは,被告との間の委託に基づき弁済する義務を負い,期限までに支払わなければ,遅延損害金を課され,原告らの勤務先に債権譲渡通知を送付される等の不利益を課されることからすると,原告らと被告との間で,被告から原告らに交付された金員につき,返還約束の合意があったものと法的に評価することができる。 したがって,本件各契約の実質は,金銭消費貸借契約である。 イ本件各契約に基づく各取引について,被告による交付額を元金とし,原告らの支払額と元金の差額を利息として金利を計算すると,年利にして少なくとも260%を超えるから,上記利息は利息制限法1条所定の制限利率を超過して無効である。また,本件各契約は貸金業法42条1項により無効である。 したがって,原告らが本件各契約に基づいて債権回収の名目で支払った金員を被告が利得することについて,法律上の原因はない。 ⑸ 被告が返還義務を負うべき範囲ア本件各契約における被告の行為は,出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)5条3項に定める犯罪行為 に該当し,貸金業法及び 告が返還義務を負うべき範囲ア本件各契約における被告の行為は,出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)5条3項に定める犯罪行為 に該当し,貸金業法及び出資法等の法規制を免れて高金利を得ることを企図した脱法行為として公序良俗に反するから,被告による原告らに対する金員の交付は不法原因給付に当たり,原告らは被告から債権譲渡代金として交付を受けた金員につき,返還義務を負わない。 イしたがって,原告らは,被告に対し,本件各契約に基づき支払った金員 全額につき,返還を求めることができる。 ⑹ 悪意の受益者被告は,本件ホームページにおいて「ブラックでも即日融資に代わる資金調達が可能」,「給料債権の買い取りサービスを提供しているファクタリング会社」であることなどと広告し,本件サービスにつき勧誘していたことから すれば,本件各契約の当初から,貸金業法及び出資法等の法規制を免れる意図があったことがうかがわれ,原告らから本件各契約に基づいて支払を受けた金員が法律上の原因のないものであることを知っていたといえるから,悪意の受益者である。 ⑺ よって,原告らは,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,原告らが 債権譲渡の額面額として被告に支払った金員全額及びこれに対する各原告の 各最終支払日の翌日から支払済みまで年5分の割合による民法704条前段所定の利息の支払を求める。 第3 当裁判所の判断 1 被告は,公示送達による呼出しを受けたが,本件口頭弁論期日に出頭しない。 2 請求原因について ⑴ 証拠(甲共1ないし7の2)及び弁論の全趣旨によれば,請求原因⑴及び⑵の各事実が認められる。 証拠(甲A1の1ないし甲I4)及び弁論の全趣旨によれば,請求 い。 2 請求原因について ⑴ 証拠(甲共1ないし7の2)及び弁論の全趣旨によれば,請求原因⑴及び⑵の各事実が認められる。 証拠(甲A1の1ないし甲I4)及び弁論の全趣旨によれば,請求原因⑶の各事実が認められる。 ⑵ 法律上の原因の有無 ア貸金業法や出資法による利息規制が,いわゆる高金利を取り締まって健全な金融秩序の保持に資すること等を立法趣旨としていることからすれば,金銭消費貸借契約とは異なる種類の契約方法が用いられている場合であっても,主に資金の融通を目的として行われ,金銭の交付と返還約束を主たる内容とし,経済的に貸付けと同様の機能を有する契約に基づく金銭の交 付については,貸金業法42条1項,出資法7条にいう「手形の割引,売渡担保その他これらに類する方法」によってする金銭の交付に該当し,上記各条の規制を受けると解すべきである。 イ請求原因⑵イ,ウ,オによれば,本件サービスでは,原告らを通じて譲渡対象となる給与債権の回収を図ることが契約締結当初から原告らと被告 との間で想定されていたと認められる。また,給与債権が譲渡された場合には,使用者は労働基準法24条1項本文により,労働者に直接給与を支払わなければならず,労働者の給与債権の譲受人は自ら使用者に対してその支払を求めることは許されない(最高裁昭和43年3月12日第三小法廷判決・民集22巻3号562頁参照)。 そうすると,本件各契約においては,原告らからの資金の回収が,契約 の要素を構成するものと認められる。このことは,原告らが支払期限までに本件各契約に定められた金員を支払わないおそれがあると被告が判断した場合には,被告によって原告らの勤務先に債権譲渡が通知されるとの合意の下,勤務先に迷惑がかかるか,自身 とは,原告らが支払期限までに本件各契約に定められた金員を支払わないおそれがあると被告が判断した場合には,被告によって原告らの勤務先に債権譲渡が通知されるとの合意の下,勤務先に迷惑がかかるか,自身の信用が損なわれることを懸念する原告らに対し上記支払を事実上強制していることからも裏付けられる。 以上によれば,本件各契約は,被告の原告らに対する債権譲渡代金としての金員の交付と原告らの被告に対する債権の額面額としての金員の支払とを要素とするもので,経済的には貸付けによる金銭の交付及び返還の約束と同様の機能を有するものと認められるから,これらに基づいて行われた被告による債権譲渡代金としての金員の交付は,「手形の割引,売渡担保 その他これらに類する方法」によってする金銭の交付に該当し,貸金業法及び出資法にいう「貸付け」に当たると認められる。しかるに,本件サービスを業として行う者は,貸金業法にいう貸金業を営む者に当たるところ,被告は同法3条1項所定の登録を受けていない(弁論の全趣旨)。 ウ本件各契約に基づく各取引について,貸金業法及び出資法所定の計算方 法により年利率を計算すると,被告は,少なくとも年250%を超える割合による利息の契約をしたこととなる。これは,貸金業法42条1項所定の年109.5%を大幅に超過するから,本件各契約は同項により無効であるとともに,出資法5条3項に違反し,刑事罰の対象となるものである。 エしたがって,本件各契約に基づき,原告らが被告に支払った金員につき, 被告が利得するべき法律上の原因は認められない。 よって,請求原因⑷の事実は認められる。 ⑶ 被告が返還義務を負う範囲反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るととも 法律上の原因は認められない。 よって,請求原因⑷の事実は認められる。 ⑶ 被告が返還義務を負う範囲反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益 については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害 者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも,反倫理的行為については,同条ただし書に定める場合を除き,法律上保護されないことを明らかにした民法708条の趣旨に反するものとして許されないものというべきである(最高裁平成20年6月10日第三小法廷判決・民集62巻6号14 88頁参照)。そして,被告による反倫理的行為(本件サービスの提供)の相手方である原告らからの本件不当利得返還請求において,これと別異に解すべき事情は見当たらない。 これを本件についてみると,上記事実関係によれば,債権譲渡契約に名を借りた著しく高利の貸付けにより,原告らから違法に金員を取得し,多大な 利益を得るという反倫理的行為を目的として,被告から原告らに対して貸付けとしての金員が交付されたというのであるから,上記の金員の交付によって被告が得た利益は,不法原因給付によって生じたものというべきであり,同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として原告らの請求額から控除することは許されない。 したがって,被告は,原告らに対し,原告らが被告に支払った金員全額について返還義務を負う。 よって,請求原因⑸の事実は認められる。 ⑷ 悪意の受益者証拠(甲共2の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件 が被告に支払った金員全額について返還義務を負う。 よって,請求原因⑸の事実は認められる。 ⑷ 悪意の受益者証拠(甲共2の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件サ ービスにつき,本件ホームページにおいて「即日融資に代わる即日振込」,「他の金融機関でお金を借りられないビジネスパーソンの皆様方を支援」,「ブラックでも即日融資に代わる資金調達が可能」などと広告・勧誘し,本件各契約の当初において貸金業法及び出資法等の法規制を免れる意図を有していたものと認められ,本件サービスにより原告らから支払を受ける金員が法律上 の原因のないものであることを知っていたと認められる。 よって,被告は悪意の受益者に当たり,請求原因⑹の事実は認められる。 第4 結論以上によれば,原告らの請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第44部 裁判長裁判官藤澤裕介 裁判官津田裕 裁判官川畑百代
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