主文 被告人を懲役9年に処する。 理由 (犯罪事実)被告人は,神戸市内でテレホンクラブを営む分離前相被告人Aが依頼し,分離前相被告人Bがこれを引き受け指示し,C,D及びEがその指示を受けるなどして,上記Aら5名が順次共謀の上,上記Aの商売敵となる有限会社U(代表取締役F)が「t」の名称で営む同市内複数のテレホンクラブ店舗に営業妨害するため火炎びんを用いて放火することを企て,上記B,C,D及びEの4名においては同店舗内にいる店員及び客が死亡するに至るかもしれないことを認識しながら,上記Aにおいては同店舗内にいる店員及び客が負傷するに至るかもしれないことを認識しながら,あえて,上記C,D及びEが, 平成12年3月2日午前5時5分ころ,神戸市d区e通f番地g所在のテレホンクラブ「ta店」(管理者有限会社U)付近に赴いた上,同店において,上記Dが清酒一升びんにガソリンを入れ,その口にタオル様の布を取り付けて点火装置を施した火炎びん1本に,所持していたライターで点火した上,これを営業中の同店内に投げ付けて発火炎上させ,同店の床面,板壁,可燃性備品及び天井等に燃え移らせて放火し,よって,Gが所有し,同店店員H(当時37歳)及び同I(当時21歳)ほか同店客7名が現にいる木造2階建建物1階部分(床面積152.95平方メートル)のうち約15平方メートルを焼失させ,もって,現に人がいる建造物を焼損し,かつ,火炎びんを使用して人の生命,身体及び財産に危険を生じさせ,上記Iに対し加療約9日間を要する顔面・右手Ⅱ度熱傷の傷害を負わせたにとどまり,同人らを殺害するに至らず 同日午前5時15分ころ,神戸市d区h通i丁目k番m号nビル2階及び3階に所在するテレホンクラブ「tb店」(管理者有限会社U)付近に赴いた上,同店において,上記D及びCがそれぞれ 害するに至らず 同日午前5時15分ころ,神戸市d区h通i丁目k番m号nビル2階及び3階に所在するテレホンクラブ「tb店」(管理者有限会社U)付近に赴いた上,同店において,上記D及びCがそれぞれ清酒一升びんにガソリンを入れ,その口に タオル様の布を取り付けて点火装置を施した火炎びん各1本に,所持していたライターで点火した上,これを営業中の同店内及びその入り口付近に投げ付けて発火炎上させ,同店の床面,階段,板壁,可燃性備品及び天井等に燃え移らせて放火し,よって,有限会社V(代表取締役j)が所有し,同店店長K(当時27歳),同店店員L(当時31歳),同店客M(当時31歳),同N(当時30歳),同O(当時23歳),同p(当時29歳)及び同Q(当時22歳)が現にいる鉄骨造陸屋根地下1階付3階建建物(延床面積182.2平方メートル)の2階及び3階部分(面積合計約102平方メートル)を焼失させ,もって,現に人がいる建造物を焼損し,かつ,火炎びんを使用して人の生命,身体及び財産に危険を生じさせ,そのころ,上記M,N,O及びpを一酸化炭素中毒により死亡させて殺害し,上記Qに対し加療約40日間を要する顔,両上肢等熱傷(ⅡないしⅢ度)の傷害を,上記Lに対し加療約7日間を要する右手掌熱傷(Ⅱ度)の傷害を,上記Kに対し加療約3日間を要する右手指挫創等の傷害をそれぞれ負わせたにとどまり,同人らを殺害するに至らなかったが上記1及び2の各犯行の際,それらに先立ち,上記A及びBが同年2月26日上記各犯行について共謀した後,上記Bから報告された犯行の準備状況等を上記Aに伝えるなどし,もって,上記A及びBらの各犯行を容易にして,これを幇助したが,被告人は殺害の点については傷害幇助の犯意を有するにとどまっていた。 (証拠の標目)(括弧内の数字は,証拠等関係カードの検察 えるなどし,もって,上記A及びBらの各犯行を容易にして,これを幇助したが,被告人は殺害の点については傷害幇助の犯意を有するにとどまっていた。 (証拠の標目)(括弧内の数字は,証拠等関係カードの検察官請求証拠の番号を示す。)省略(事実認定の補足説明)第1争点等本件公訴事実の要旨は,被告人が判示の共同正犯者らと共謀の上,店内にいる店員及び客に対する殺意をもって,①平成12年3月2日午前5時5分ころ,上記ta店(以下「a店」という。)に火炎びんを投げ付けて放火して焼損さ せたが,店員1名に傷害を負わせたにとどまり,別の店員ら8名を殺害するに至らなかった,②同日午前5時15分ころ,上記tb店(以下「b店」という。)に火炎びんを投げ付けて放火して焼損させ,客4名を殺害したが,同店店長ら3名は傷害を負わせたにとどまり,殺害するに至らなかったというものである。 これに対し,弁護人は,被告人は,上記各犯行に関与したものの,共犯者と共謀した事実はないから,共謀共同正犯ではなく幇助犯にとどまる,また,殺人・殺人未遂の点については,各店内にいる店員及び客の死亡についての認識・認容はないから,せいぜい傷害致死・傷害の限度で責任を負うにとどまると主張し,被告人もこれに沿う供述をする。 当裁判所は,判示のとおり,被告人は,本件一連の火炎びんの投てきによる放火・殺人等の犯行について,共犯者と共謀したことはなく幇助犯にとどまる,殺害の点について傷害幇助の犯意にとどまると認定した。以下その認定の経過について補足説明する。 第2前提となる事実関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 被告人と共犯者らとの関係等(1)被告人は,かねてより競馬などのノミ行為,野球賭博などによって生計を立てていたものであり,Aは,昭和62年ころから神戸市内に数店舗を構え の事実が認められる。 被告人と共犯者らとの関係等(1)被告人は,かねてより競馬などのノミ行為,野球賭博などによって生計を立てていたものであり,Aは,昭和62年ころから神戸市内に数店舗を構えてテレホンクラブ「W」(以下「W」という。)を経営する傍ら,日掛け金融なども行っていたものであるが,被告人は,昭和63年ころ,Aの下で日掛け金融を行っていた知人の紹介でAと知り合い,以後,この知人の仕事を引き継ぎ,Aが資金を出し,被告人が客と対応するという方法で日掛け金融を共同で行うようになったほか,Aから,野球賭博などの資金として多額の借入れをするようになった。被告人が本件当時までにAから借り入れた総額は約2億円に上り,そのうち約5000万円が未払であった。 Aは,暴力団組長の娘であり,暴力団関係者を使うなど借金の取立てにも厳しいものがあった。 被告人は,Aからこれまで多額の資金の融通を受けた借りがあり,今後も資金の融通を期待する一方,Aの機嫌を損ねて借金の返済を迫られることを恐れ,日ごろ,Aのことを「ねえさん」と呼び,Aの指示があれば,同人と行動を共にし,その指示に従うようにしていた。 なお,被告人は,Wの経営には関与していなかった。 (2)Bは,広島市を拠点として,表向きは金融会社などを経営しながら,一方で暴力団と関係を持ち,自らも配下の者を集めて暴力団同様の活動を行うグループを組織していたものであり,C及びEは,いずれも本件以前からBのところに出入りしていた同人の配下の者であった。 Dは,平成10年ころ,Cと知り合い,以後,同人の運転手をするなどしていた。 (3)Aは,平成11年12月,大阪国税局から強制査察を受けたため,その対策として,知人から「税金に詳しい人」としてBを紹介され会ったが,そのころ,被告人も,Aに同行してBと面識 などしていた。 (3)Aは,平成11年12月,大阪国税局から強制査察を受けたため,その対策として,知人から「税金に詳しい人」としてBを紹介され会ったが,そのころ,被告人も,Aに同行してBと面識を持つに至った。 tに対する汚物の散布等(1)平成10年7月,テレホンクラブ業界最大手の有限会社Uが経営するtが神戸市内に進出して,かつてWのあった店舗に次々と出店し,順調に売上げを伸ばしていた。 これに対し,Wは,その影響により売上げが減少し,店舗数も2店舗に縮小を余儀なくされ,Aは,tに対する腹立ちを募らせていた。 なお,兵庫県のテレホンクラブに関する規制条例により,平成13年末でW各店は廃業せざるを得ない状況にあった。 (2)平成11年12月,Aは,Bから,「国税局に顔が利く人」を紹介すると言われ,被告人を伴って上京したが,その帰りの新幹線車内で,Bに対し, 「tが神戸にできてから,tのせいで,うちの売上げが3分の1になった。 しかも,tは,うちが店を出たとこに入って売上げを伸ばしている。ほんま腹立つわ。」などと言い,tにふん尿やコールタール等を撒く方法により,その営業を一定期間休止させることを依頼し,Bは1000万円の報酬でこれを承諾した。その際,被告人は,新幹線車内の4人掛けボックス席にA及びBらと同席してその話を聞いていた。 (3)同月中旬ころ,Aが国税局の呼出しに応じて出頭した際,Bは,神戸に滞在し,Wb店の入っているビル・Xの事務所でAと2人だけで1時間ほど話合いをした後,被告人に対し,配下の者に下見をさせるとして,tに案内するよう求め,Aも,被告人に対し,自分に代わってBらを案内するよう求めたため,被告人は,自分の運転する自動車にBや途中で乗り込んできたその配下の若い男を乗せて,tのa店とc店(以下「c店」という。) るよう求め,Aも,被告人に対し,自分に代わってBらを案内するよう求めたため,被告人は,自分の運転する自動車にBや途中で乗り込んできたその配下の若い男を乗せて,tのa店とc店(以下「c店」という。)の近くまで行き,Bの配下の若い男を降ろした上,車内でBとともに,その若い男が各店内に入って戻ってくるのを待っていた。その若い男は,各店から戻ってくる度に手帳のようなものを広げて,Bに店内の様子を説明していた。 また,数日後,Bは,被告人に電話で,tの位置が分かる地図をファックスで送るよう依頼し,被告人は,そのことをAに伝え,Aの指示で以前Aとともにテレホンクラブを経営していたrが地図を作成し,Bに送った。 平成12年1月ころ,A及びBは,被告人も交えて神戸市内の料亭で食事をしたが,食事の後,2人だけで話をしていた。その翌日,被告人は,Aから,前日Bにtに対する営業妨害の報酬の一部として400万円を渡した旨聞いた。 その後,被告人は,BとAとの間で,tに対する営業妨害の実行日などに関する連絡を仲立ちしていた。 (4)同年2月10日未明,Bの指示を受けた者によって,a店とc店にペンキに汚物を混ぜたものが撒かれたり,消火器が噴射されたが,両店とも,それ によって営業を休むことはなかった。 本件犯行の謀議等(1)上記汚物混入ペンキの散布などがなされた後,Bは,被告人を通じてAに対し,報酬の残金を要求したが,Aは,tの営業を1日も止められなかったとして,報酬の前渡分400万円も返還してもらいたいとの意向を示した。 このようなAの態度を被告人から聞いたBは,被告人に対し,「そこまで言われたら,私の信用もあるし,私としても,もう後には引けませんわ。」などと言っていた。 (2)その後,Aは,被告人立会いの下,Bとの間で,X2階のWb店のフロント奥の ,被告人に対し,「そこまで言われたら,私の信用もあるし,私としても,もう後には引けませんわ。」などと言っていた。 (2)その後,Aは,被告人立会いの下,Bとの間で,X2階のWb店のフロント奥の電話交換機が置かれている事務所の中で,話合いをした。その際,Aは,tにも,こういう電話交換の機械があり,その電話交換機を壊せばよいなどという話をしたが,その中で,tなら,一番古いb店に電話交換の機械があるのでないか,それを壊せば,tも,しばらくの間は店を開けられないようになるなどと言った。その後,平成12年2月25日,被告人は,BがS(以下「S」という。)を伴って神戸に来た際,Aの指示で自分の運転する自動車にBらを乗せてa店やb店を案内し,Bの依頼で,営業妨害の下見のためb店に入り,店内の様子を探って電子手帳に書き留めてきたSがBに店内の様子を報告するのを見聞きした。その後,被告人は,Bらを接待していたところ,Aから,電話で,翌日,Bを宿泊先からYl店(以下「Y」という。)に連れてくるように指示された。 (3)翌26日午後零時30分ころ,被告人は,BとSを宿泊先に迎えに行き,YでAと合流した。その際,被告人とA,Bが同じテーブル席に,被告人とAが並んで,Bがその向かい側に座り,Sは一人離れた席に座った。 BとAは,当初,Aの国税局対策に関する話をしていたが,BがAに対し,b店の下見をしたこと,店の中の様子などを確認させたことを告げた上で,Sを自分たちの座っているテーブルに呼び寄せた。Sは,Bの隣に座り,前 日,Bに説明する際使用した電子手帳に描かれた見取図のような図面をA及び被告人に見せた上で,b店の階段や入り口,カウンターの位置,部屋の配置状況や部屋の様子等を説明した。その際,Sは,電話交換機がどこにあるか分からなかったが,階段の上の辺 た見取図のような図面をA及び被告人に見せた上で,b店の階段や入り口,カウンターの位置,部屋の配置状況や部屋の様子等を説明した。その際,Sは,電話交換機がどこにあるか分からなかったが,階段の上の辺りに,配線のようなものがあったと言い,両手の指で直径10センチメートルくらいの輪を作って配線の太さを説明し,その配線のようなものを切ったらどうかと提案したが,確実に店が閉まるかどうか分からないとしてこの提案は採用されなかった。 Bの指示でSがテーブル席から離れると,Bは,Aに,営業妨害の方法として何かいい方法がないか尋ねたが,Aは明言を避け,被告人に対して意見を求めた。これに対し,被告人は,従前Aが電話交換機を壊す話をしていたことから,Aの意向を忖度して,A及びBに,「やっぱり,電話交換の機械を壊すしかないんと違いますかねえ。」と言い,Bは,Aに,「それでよろしいか。」などと聞いたが,Aは,「私の口からどうこうしてくれとか言うのも,なんやしなあ。まあ,考えとくわ。」と答えるにとどまった。 そこで,Bは,Aに対し,tの店を閉めさせる方法として,①看板をけん銃で撃つ方法,②ダンプカーで店に突っ込む方法,③フロント付近に火炎びんを投げ込んで電話交換機を壊す方法などを提案したが,Aは,「そんなん分からへんわ。Bさんに任してるんやから,そっちで決めてもらったらええから。」などと言った。これに対し,Bは,Aにきちんと考えるように言った上でこれらの方法について順次説明してAの考えを確認すると,Aは「そんなもん,私の口からは言われへん。」などと言ったものの,看板をけん銃で撃つ方法については,「看板壊したくらいでは,客は来んようにならんやろ。」などと言い,ダンプカーで店に突っ込むという方法については,「狙う店と店の間の距離が離れているから,時間が掛かる。1つ目 銃で撃つ方法については,「看板壊したくらいでは,客は来んようにならんやろ。」などと言い,ダンプカーで店に突っ込むという方法については,「狙う店と店の間の距離が離れているから,時間が掛かる。1つ目の店にダンプを突っ込んだら2つ目の店に行けない。」などと言って,結局,火炎びんを投げ込んで電話交換機を壊す方法が残った。そこで,Bが,「それでしたら, 火炎びんでいきましょか。火炎びんを店の中に投げ込めば,電話交換機つぶせるでしょう。そうすれば,かなりの間は店も営業できんようになりますから。下見では,電話交換機はよう見つけんかったけど,ふつう電話交換機はフロント辺りにあるでしょうから,その近くに火炎びんを落とせば大丈夫でしょ。」などと言ったが,なおもAが黙っていると,Bは,「そしたら,火炎びんで電話交換の機械をつぶすっていうことでいきますよ。」と言い,Aに回答を促し,最終的に,Aは,「それで任すわ。」と言って,tの店舗に火炎びんを投げ込んで電話交換機を壊すことで合意したが(以下,このYでの話合いを「本件謀議」という。),その具体的な方法については,Bが知り合いに火炎びんに詳しい者がいるという趣旨のことを発言した程度で,どのような大きさの火炎びんを何本投げ込むかなどについての話は出なかった(なお,被告人は,公判廷で,本件謀議の際,Aがtの看板にけん銃を撃ち込むという方法が採用されなかった理由の1つとして,流れ弾で死者が出るかもしれないという話をしていた可能性があったからなどと供述するが,当時の被告人の記憶通り供述されたとする捜査段階では,そのような周囲の者の生命身体の危険性に対する配慮をうかがわせる供述はなされていない上,上記のとおり,本件謀議では,専ら各行為が有する営業妨害の効果を重視した検討がなされていたことからすれば,被告人の上記公 周囲の者の生命身体の危険性に対する配慮をうかがわせる供述はなされていない上,上記のとおり,本件謀議では,専ら各行為が有する営業妨害の効果を重視した検討がなされていたことからすれば,被告人の上記公判供述は不自然で信用できない。)。 (4)数日後,Bは被告人に電話し,「客がおらん時間を狙って行きますわ。」,「行けそうな時まで待機してます。」,「また決まったら連絡します。」などと,状況を報告し,被告人は,Aに,そのことを伝えた。 また,同年3月1日未明,Bから被告人に電話があり,「店の前にバット持った人間が立ってました。人も多かったんで,今日はできませんでした。」,「予定はしてますから,また様子見て行きますわ。」などと報告してきたので,被告人は,そのことをAに伝えた。 本件犯行の実行状況(1)平成12年2月29日,Cは,本件犯行についてDに,二,三日営業停止させたい店があるので手伝ってほしいと依頼し,Dが承諾した。C及びDは,350ミリリットル入りジュースのびん2本を使って火炎びんを作り,空き地で火炎びんの実験を行ったが,1本のびんは割れ,横約1メートル高さ約60センチメートルの炎が燃え上がったものの,もう1本はびんが割れなかったことから,大きなびんの方が割れやすいと考え,一升びんで火炎びんを作ることにした。 なお,Cは,平成2年12月20日,甲百貨店社長宅に火炎びんを投げ付けたという火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反で服役経験があるが,この事件の際には,実行行為は担当していなかった。 (2)平成12年3月1日午前2時ころ,C及びDは,a店,c店,b店を外から下見した。その際,b店については,外から内部の様子がうかがえないことから,Cの指示で,Dが店内に入って内部の様子を確認した。その後,即日tを襲撃することを決定して, Dは,a店,c店,b店を外から下見した。その際,b店については,外から内部の様子がうかがえないことから,Cの指示で,Dが店内に入って内部の様子を確認した。その後,即日tを襲撃することを決定して,一升びんなどで7本の火炎びんを作ったが,t店舗周辺に人がいたことなどから実行するには至らず,用意した火炎びんを海中に投棄した。 (3)翌2日午前零時ころ,C及びDは,再度神戸に向かい,Bから本件犯行の指示を受けたEと合流した後,一升びんで火炎びんを6本作った上で,a店,c店,b店の襲撃担当者や具体的な手順について話し合った。話合いの場で,a店の襲撃については,Dが火炎びんを最初に投げ,その後,Cが更に火炎びんを投げることが決まり,Eが車を運転することとなったが,Cが自分は自信がないと言いだし,結局,D一人でa店に火炎びんを投げることとなった。 (4)a店は,JR東海道本線(JR神戸線)高架下2階建建物の1階部分にあり,店舗出入口は,店舗南西付近に1か所のみであり,これ以外に外部に通じ る非常口はなかった。店内は,出入口付近にあるカウンターから見て「E字型」に幅65センチメートルないし幅83センチメートルの通路があり,合計25の客室があった。同店舗には2か所に2枚引きガラス窓(一方の大きさは,縦92センチメートル,横85センチメートル,もう一方は,縦60センチメートル,横85センチメートル)が設置されていたが,いずれの窓にも店外に格子状のアルミ枠が19本縦に設けられていた。 当時,店内には,入り口付近の受付カウンターに店員H及び同Iの2名,客室内に7名の客がいた。店内の客室には,ソファーベッドが設置されている部屋があり,シャワー設備もあったことから,夜間簡易宿泊施設として利用する客もおり,当時仮眠中の客もいた。 (5)Dは,一升びんで 内に7名の客がいた。店内の客室には,ソファーベッドが設置されている部屋があり,シャワー設備もあったことから,夜間簡易宿泊施設として利用する客もおり,当時仮眠中の客もいた。 (5)Dは,一升びんでできた火炎びんを1本持ちだして火を付け,a店の入り口から一歩中に足を踏み入れ,びんを右肩くらいの高さに上げて,びんの口を先に向けるように寝かせ,左手でびんの腹の下側を支え持ち,右手の平を底の部分にあてがい,右手を前に突き出すようにして押しだし,勢いよく放り込んだところ,カウンター付近で火炎びんが破裂,炎上し,店内には黒煙が充満した。カウンター内にいた店員H及び同Iは,一旦は火の中を走って店外へと脱出したが,Hは,店内にいる客を救出するため再び店内へと入り,客らを誘導するなどして救出するとともに,バケツに洗面所で水を汲み撒くなどして消火活動を行ったことから,a店では死者は出なかったものの,Iが脱出する際,加療約9日間を要する顔面・右手熱傷の傷害を負った。 (6)続いて,Cら3名は,c店に向かったが,c店の前に車が止まっていたことから火炎びんを投てきするのをあきらめ,b店に向かった。 (7)b店は,鉄骨造陸屋根地下1階付3階建建物の2階及び3階部分にあり,店舗出入口のある2階へは,ビル西側に設けられた階段(一段目から北向きに上がり,途中の6段目と7段目で東方に90度曲がる)を上る必要があり,階段の幅は80センチメートル,傾斜角度は40.7から45.8度であっ て,出入口ドアが唯一の外部への出入口であった。2階店内は,北端で幅95センチメートル,南端で幅53センチメートルの南北通路があり,合計9の客室があり,通路及び客室等の床面はPタイル張り,側面はクロス張りの構造であった。3階店内は,北側で幅58センチメートル,南側で幅54センチメートル で幅53センチメートルの南北通路があり,合計9の客室があり,通路及び客室等の床面はPタイル張り,側面はクロス張りの構造であった。3階店内は,北側で幅58センチメートル,南側で幅54センチメートルの南北通路と幅56センチメートルの東西通路がT字型に交差しており,合計10の客室があった。なお,2階店内には窓が全くなく,3階店内には,西側面に1か所だけ上下幅72センチメートル,横幅76センチメートルの窓があった。なお,店内2階入り口付近に本来設置されていた消火器は,上記tの店舗に対する汚物散布による襲撃事件の際に消火器が使われたことから,再度の襲撃に利用されることを恐れ北側の隅の方に移動されていた。 当時,店内には,2階の出入口受付カウンターに店長K及び店員Lの2名,3階客室にはQ,O,N,p,Mの客5名がいた。店内の客室には,ソファーベッドが設置されている部屋があり,シャワー設備もあったことから,夜間簡易宿泊施設として利用する客もおり,当時仮眠中の客もいた。 (8)b店に向かう途中の車内で,Cは,Dに対し,自分も火炎びんの投てきを手伝うと述べ,b店前に到着後,まずDが,b店の階段を駆け上がって店の入り口まで行き,a店と同様の方法で,火を付けた火炎びんを店内に投げ込んだが,火炎びんは割れず,店内に火の付いた火炎びんが転がった。これを見た店員Lが,とっさに火炎びんを右手でつかんで,階段の踊り場まで行ったところ,階段の下の方でCが用いたもう1本の火炎びんが爆発し,炎と黒煙が上がってきた。そこで,同店員は,このままでは自分が持っている火炎びんが炎上してしまうと思い,持っていた火炎びんを階下に向けて落としたところ,その火炎びんも破裂,炎上し,店内には黒煙が充満した。店員L及び店長Kは,客を避難させるため3階へと向かったが,熱を帯びた煙の充満が てしまうと思い,持っていた火炎びんを階下に向けて落としたところ,その火炎びんも破裂,炎上し,店内には黒煙が充満した。店員L及び店長Kは,客を避難させるため3階へと向かったが,熱を帯びた煙の充満が早く,息をすることさえ困難な状況になったため,宿泊に利用していた客 のQの手を取るなどして誘導して共に,3階シャワー室の唯一の窓から脱出したが,残された客4名は逃げ遅れ一酸化炭素中毒により死亡した。また,生還した3名も,それぞれ加療約3日ないし40日間を要する熱傷の傷害を負った。 燃焼実験の結果についてガソリン1800ミリリットル入り火炎びん(一升びん)及びガソリン245ミリリットル入り火炎びん(清涼飲料水用びん)各1本を使用して行われた燃焼実験の結果によれば,一升びんの場合,着火後約6秒で約2.5メートルを超える炎が上がったのに対し,清涼飲料水用びんの場合,着火後約9秒で約1.5メートルの炎が上がり,いずれの場合も大量の黒煙が発生した。 本件犯行後の状況(1)Cは,b店を襲撃した際,下半身にやけどを負ったことから,広島市内にある病院に入院した。その際,Bは,Cに付き添っていた。 (2)本件犯行当日の平成12年3月2日,被告人は,知人から電話で,b店が燃えているので見に行こうと誘われ,b店を見に行った。自宅に戻った後,Bから被告人に電話が入り,Bは「最悪の事態になりましたわ。テレビ,見ましたか。三,四人,死んだんと違うかな。まあ,木造やから,燃えてしまうと思ってました。」などと言った。なお,b店は,鉄骨造りで外壁はブロックを積み重ねたものにモルタルを吹き付けたものであり,木造ではなかった。 被告人は,その後,XでAと会った。その際,Aは,血の気の引いたような顔をしており,「えらいことになってしもた。人も死んで。足がぶるったわ ものにモルタルを吹き付けたものであり,木造ではなかった。 被告人は,その後,XでAと会った。その際,Aは,血の気の引いたような顔をしており,「えらいことになってしもた。人も死んで。足がぶるったわ。」などとうろたえていた。 その後,被告人は,Aに指示され,JR岡山駅まで行って,Bに営業妨害の報酬としてAから渡された600万円を渡した。 同年3月5日,Bの誘いで,AがBらと,Zホテルに赴いた際に,被告人 は,Aに同行したが,BがAに国税局対策やCに関する入院費用等という名目で3億円を要求した。これに対し,Aは,当初金がないとして拒否したものの,その後土下座した上で,1億5000万円を支払うこと,そのうち即金で7000万円を支払うことを約束した。被告人は,Aから指示され,Aから渡された7000万円を神戸駅付近でBに渡した。その際,被告人は,Bから,7000万円のうち,1000万円を受け取るよう持ち掛けられたが,被告人は,これを断った。 同年5月か6月,Bの要求により,AからBに,更に2回に分けて800万円の現金が支払われた。その後も,BはAに残金の支払を要求したが,Aはその要求を拒否し,Bに対して,被告人に金を貸しているから,被告人から金をもらうようになどと言った。 そこで,Bは,被告人に,金銭の支払を要求し,被告人は,Aに対する借金の返済として,平成12年の7月から10月ころにかけて,4回に分けて,合計1300万円をBに支払った。 なお,被告人は,本件に関し,Aから報酬等は一切受け取っておらず,報酬の約束もなかった。また,被告人は,本件犯行後,1度だけAに新たに借金の申入れをしたものの,Aに断られた。 第3殺意についての検討この点について,検察官は,本件犯行態様及び被告人の認識内容から,被告人にはt店内に現在した店員及び客に対する未 1度だけAに新たに借金の申入れをしたものの,Aに断られた。 第3殺意についての検討この点について,検察官は,本件犯行態様及び被告人の認識内容から,被告人にはt店内に現在した店員及び客に対する未必の殺意が認められると主張する。 確かに,本件犯行の実行犯であるC及びDについては,自らの手で,火炎びんについて燃焼実験を行った上,1.8リットルのガソリンが充てんされた火炎びんを,あらかじめ店内の状況を下見した,上記認定のような構造を有するa店及びb店の出入口付近に投てきしていることからすれば,C及びDが,その実際に行った行為によって,両店舗内に現在する店員らの生命,身体に重大 な危険を及ぼすことを認識していたことは明らかであり,したがって,両名については,未必の殺意が優に認められる。 また,Eについては,Cらと同じく実行部隊の一員であり,火炎びんの準備状況や本件犯行の概要について認識していたものと推認され,Bについても,CやEを配下として従え実行部隊への指示者であることから,Cらからの報告等により本件犯行計画の概要を把握する立場にあり,本件後被告人に対する電話での報告の中で店舗の焼失や死者の発生について最悪の事態と言いながらも概ね想定内の出来事として受け止めているような様子がうかがえることに照らすと,C及びDと同様に未必の殺意を認めることができる。 そして,上記認定事実によれば,被告人も本件謀議に同席したことにより,実行犯がtの電話交換機を破壊するため火炎びんをその店舗のフロント付近に落とすことを認識していたことになるところ,Aの営むテレホンクラブ・Wの店内の状況を見たことがある上,tの店舗にふん尿を撒く計画が持ち上がった際,更には,本件謀議に先立ちSを各店に案内した際には,Bの配下の者やSが店内の様子を説明するのを聞いていたことから ラブ・Wの店内の状況を見たことがある上,tの店舗にふん尿を撒く計画が持ち上がった際,更には,本件謀議に先立ちSを各店に案内した際には,Bの配下の者やSが店内の様子を説明するのを聞いていたことから,被告人が捜査段階で供述するように,t各店には24時間営業で本件当時店員や客がおり,多数の個室があって,通路が狭いことを認識していたことは明らかである。そして,そのような店舗の営業時間内において,通常出入口近くにあるフロント付近に火炎びんを落とした場合,その火力が大きいと予想される場合には,出入口付近がたちまち火の海になり,中にいる店員や客が容易に外に脱出できない事態になり,逃げ遅れて炎に焼かれたり,煙にまかれる者が出ることは,被告人にも想像できないわけではない。 しかし他方,被告人において,被害各店の出入口が1つで非常口がなく,窓等の存否・消火器の位置関係等防災設備に不備があることや,当時店内に仮眠中の客が存したことなどについて具体的な認識があったとの証拠はない。また,本件謀議の際,使用される火炎びんの大きさや数については話がなく,その後, 被告人が,この点に関する情報を得ていたという証拠もないことからすると,被告人において,火炎びんとして火力が大きいことの明らかなガソリンを入れた清酒一升びんが犯行に使用されることを事前に認識できたとはいえない。この点について,電話交換機がある程度の大きさを有する機械であれば,それを破壊するだけの火力を要するということになるが,そのことから直ちに,出入口付近をたちまち火の海にするほどの火炎びんが使用されることが明らかとまではいえない。むしろ,本件謀議における犯行の目的が電話交換機の破壊による営業妨害であったことからすると,店舗全体を使用不能にするとか,人的な損害を発生させることを直接目論んだ犯行ではな 明らかとまではいえない。むしろ,本件謀議における犯行の目的が電話交換機の破壊による営業妨害であったことからすると,店舗全体を使用不能にするとか,人的な損害を発生させることを直接目論んだ犯行ではないということになり,被告人において,負傷者は別として,死者が出ることにまで思いが至らなかったとしても不自然ではない。さらに,営業中の店舗とはいえ,時間帯によっては客の数も少ないこともあるし,営業時間内であれば,従業員によって気付かれて,早期の消火活動が行われることも予想できないわけではない。そして,そもそも本件謀議の際犯行の手口・方法については,Bから,tの電話交換機を破壊するため火炎びんをその店舗のフロント付近に落とす,知り合いに火炎びんに詳しい者がいるという話が出たにとどまり,火炎びんの数や大きさはもとよりその具体的な内容にまで触れられておらず,実行犯に指示するB更には実行に関与すると思しきBの知り合いの「火炎びんに詳しい者」に任せられていたものと考えられ,その後のBからの被告人・Aに対する本件犯行の進捗状況に関する報告にも実行や中止に関する話題はあるものの,犯行の具体的な手口・方法については触れられていないこと,また,火炎びんを投てきするという本件犯行を決めるに当たっては,tの営業妨害を図るための効果的な方法という観点から検討されたのであって,それによって生ずる犠牲者等生命身体に対する危険性の観点から検討された形跡がないことからすると,被告人としては,具体的に犯行計画を練り準備をした上で実際に犯行に直面している実行犯等と異なり,主に上記のような謀議の際のBから出た程度の話により本件犯行の持つ 危険性をイメージするしかなく,実行犯等と同程度に本件犯行の持つ危険性を認識できる立場ではなかったことも考慮されるべきである。 以上によれば, な謀議の際のBから出た程度の話により本件犯行の持つ 危険性をイメージするしかなく,実行犯等と同程度に本件犯行の持つ危険性を認識できる立場ではなかったことも考慮されるべきである。 以上によれば,被告人については,t各店内に現在した店員及び客が死亡するに至るかもしれないことを認識・認容していたと認めるにはなお合理的な疑いが残るといわざるを得ない。 他方,営業中の店舗の出入口付近で火災を発生させた場合,店員や客が逃げるに当たって多少やけどをしたり,有毒ガスを吸い込んだりする程度のことは予想できることからすれば,被告人においても,本件謀議に同席したことにより,t各店にいる店員や客が傷害を負うかもしれないことの限度では認識・認容していたものと認めることができる。 なお,以上の点は,Aに関しても基本的には同様といわざるを得ない。 第4共謀共同正犯の成否について 検察官は,被告人は本件犯行の遂行に向けて必要不可欠,かつ,極めて重要な役割を果たしたこと,被告人が自己の利害関係,利欲的動機に基づき,自ら主体的かつ積極的に行動して本件犯行に加担していることから,被告人が共謀共同正犯としての罪責を負うことは明らかであると主張するので,以下検討する。 2(1)被告人とAとの関係,被告人の犯行動機について上記認定事実及び被告人の捜査・公判供述によれば,被告人は,Aと日掛け金融を共同で行っていたほか,Aから,野球賭博などの資金として多額の借入れを受けた恩義があり,今後も資金の融通を期待する一方,Aの機嫌を損ねて借金の返済を迫られることを恐れ,日ごろからAの指示に従うようにしていたことから,本件犯行に加担したことが認められる。また,被告人は,Aと異なり,Wの経営に関与しておらず,Wの商売敵ということでtの営業妨害に利害を有する立場になく,もとよりAから資 従うようにしていたことから,本件犯行に加担したことが認められる。また,被告人は,Aと異なり,Wの経営に関与しておらず,Wの商売敵ということでtの営業妨害に利害を有する立場になく,もとよりAから資金の融通も含め本件犯行による報酬等の約束を受けたこともない。 そうすると,被告人については,本件犯罪の結果に対する利害関係は希薄であり,本件犯行に正犯として関与する積極的な動機も認められず,Aとの関係で組織的に本件犯行に関与したともいえない。 (2)謀議への関与について検察官は,上記新幹線車内においてAがBにtに対する営業妨害を依頼した際の話合い,上記Yにおける本件謀議などの極めて重要な場・機会に,常にAに伴って同席し,犯行目的や具体的な実行方法等について一緒に謀議に加わっていたなどと主張する。 確かに,被告人が,上記新幹線車内や上記YでAやBらがtに対する営業妨害について話をした際に同席し,特に,Yでは,Sがb店の店内の様子を説明するのを聞いていた上,営業妨害の方法として「やっぱり,電話交換機の機械を壊すしかないんと違いますかねえ。」などと発言していた事実はある。 しかし,被告人がこれらの話合いに同席したのは,いずれもAの指示に基づくものであるし,電話交換機に関する上記発言も,暗にAに促されて,以前にAがXで話した内容をそのまま述べたもので,被告人自身の積極的な提案というより,Aの意向を確認ないし代弁したものとも考えられる上,これ以外に被告人がtに対する営業妨害の方法について積極的に発言した形跡はない。 そうすると,被告人がこれらの話合いの場に同席したり,tの店内の様子について説明を聞いたり,上記のような発言をしたとしても,それらの行為は,あくまでAに追随した非主体的なものといわざるを得ない。そして,前記(1)のとおり被告人につき 場に同席したり,tの店内の様子について説明を聞いたり,上記のような発言をしたとしても,それらの行為は,あくまでAに追随した非主体的なものといわざるを得ない。そして,前記(1)のとおり被告人につき犯罪結果に対する利害関係が薄く,積極的な動機も認められないこと,後記(3)のとおり被告人の犯行における役割が重要といえないことも併せ考慮すると,被告人は,本件謀議に参加してAら共犯者との間で,犯行計画について単に認識していたにとどまらず,了承していたこ とは否定できないが,共謀の要件となる相互に利用し補充し合う旨の意思の連絡まで認めることはできない。 (3)被告人の役割について検察官は,被告人がBやその配下の者をt各店に案内したり,犯行の前後を通じて,AとBとの間の連絡役を務めたりなどしており,その役割は,単なる手助け程度のものにとどまらず,また,AやBも被告人を頼みにしていたのであって,被告人の存在は,本件犯行において極めて重要かつ不可欠であったと主張する。 しかし,本件犯行の前後を通じて,検察官の上記指摘のほか,犯行後の報酬の受渡しに至るまで被告人が行ったことは,すべてAの指示に基づくものであるし,tの店舗への案内も,被告人でなければできないものではない。 また,AとBとの間の連絡役も,両者の間を事務的に仲立ちしていたいわばメッセンジャー的存在にすぎず,重要な決定は,AとBが直接話をして行われている。AやBが被告人を頼みにしていた面はあるものの,それは,なるべく表立つのを嫌ったAの個人的な思惑・利害によるものである。このように被告人が担った役割は,A・Bの犯行を側面から支え円滑に行くようにした面はあるものの,非主体的かつ非裁量的な面を有する機械的補助的なものにとどまるのであって,本件犯行を実行する上では重要かつ不可欠なものとは到底 役割は,A・Bの犯行を側面から支え円滑に行くようにした面はあるものの,非主体的かつ非裁量的な面を有する機械的補助的なものにとどまるのであって,本件犯行を実行する上では重要かつ不可欠なものとは到底いえない。 小括以上のような被告人とAの関係,被告人の犯行動機や犯罪結果に対する利害関係の程度,被告人の謀議への関与状況及び被告人が実際に行った役割を総合すると,被告人と他の共犯者らとの間に相互利用・相互依存関係は認められず,犯罪の共同遂行に関する合意すなわち共謀も認められないから,本件犯行につき,被告人に対し,共謀共同正犯の罪責を問うことはできず,幇助犯の限度にとどまるものというべきである。 第5 結論 以上のとおりであるから,被告人は,a店の犯行については,負傷者に対する傷害,現住物建造物等放火及び火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の各幇助罪が,また,b店の犯行については,負傷者に対する傷害,死亡者に対する傷害致死,現住建造物等放火及び火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の各幇助罪がそれぞれ成立するにとどまる。 (確定裁判)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)本件は,共同正犯者Aらが共謀の上,営業中のテレホンクラブ2店舗にそれぞれ火炎びんを投げ込んで放火し,一方の店舗内にいた店員1名に傷害を負わせ,他方の店舗内にいた客4名を死亡させるとともに店員2名及び客1名に傷害を負わせた際,被告人がその犯行に先立ち,共同正犯者間の連絡役を務めて共同正犯者らの行為を容易にしたという傷害,傷害致死,現住建造物等放火,火炎びんの使用等に関する法律違反各幇助の事案である。 本件犯行は,Aが商売敵のテレホンクラブの営業を執ように妨害するため,報酬目当てのBらに依頼して行われたものであり,利欲的かつ自己中心的な動機に基づく陰湿な犯行で,酌 る法律違反各幇助の事案である。 本件犯行は,Aが商売敵のテレホンクラブの営業を執ように妨害するため,報酬目当てのBらに依頼して行われたものであり,利欲的かつ自己中心的な動機に基づく陰湿な犯行で,酌量の余地はない。 犯行態様も,実行犯において,火炎びんの実験を試み,入念に襲撃の対象となる店舗を下見するなど計画性が認められ,未明に,狭隘な構造を有する営業中のテレホンクラブ2軒の出入口付近にそれぞれ一升びんを使って作った火炎びんを投げ込むというたぐいまれに見る凶悪なものである。 その結果,判示のとおり2店舗を焼損してうち1店舗をほぼ全焼させるにとどまらず,死者4名,負傷者4名を出す大惨事を招いている。 特に,死亡した被害者らは,何らの落ち度もない20歳代から30歳代前半の前途ある若者であり,たまたま客としてb店を利用し仮眠中の者もいたと推察されるところ,突然暗闇の中で黒煙に襲われ,全く状況が分からないまま,必死に脱出を試みたものの,2人の被害者は通路で折り重なるように,残りの被害者はそれぞれ通路及びドアの開いた客室内でいずれも力尽き,家族等に最後の言葉を掛ける機会も与えられないまま,その生命を奪われたのであって,その際感じたであろう恐怖感,絶望感,喪失感などは察するに余りあり,本件犯行から約6年が経過した現時点においても,遺族の処罰感情が峻烈なのも当然である。 そして,被告人は,Aとの経済的な関係を維持するため,安易に本件犯行に加担したものであって,酌量の余地はない。また,被告人は,本件犯行が実行されるまでの経過の中で,Bらを下見に案内したり,謀議の席にも同席して発言したり,謀議成立後もAとBの間の連絡役を引き受け,さらに実行後も,本件犯行の報酬をBに手渡すなど,本件犯行の前段階から犯行後の報酬の受渡しの段階まで終始関与するなどして本件重 の席にも同席して発言したり,謀議成立後もAとBの間の連絡役を引き受け,さらに実行後も,本件犯行の報酬をBに手渡すなど,本件犯行の前段階から犯行後の報酬の受渡しの段階まで終始関与するなどして本件重大犯罪に少なからず寄与したものである。 これらの事情に照らすと,被告人の刑事責任は極めて重い。 他方,被告人が事実を素直に認め反省の態度を示し,共犯者について言及して事案の解明に寄与していること,本件は併合罪関係にある上記確定裁判前の犯行であること,被告人の社会復帰を待つ母親がいることなど被告人のために酌むべき事情も考慮して,主文の刑が相当であると判断した。 (求刑懲役15年)(検察官仁田裕也,大口康郎,山下順平出席)平成18年12月20日神戸地方裁判所第4刑事部 裁判長裁判官岡田信裁判官佐茂剛裁判官姥迫浩司
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