主文 本件各申立てを却下する。 申立費用は債権者らの負担とする。 事実及び理由 第一債権者の申立て一債権者ら八名が債務者に対して、いずれも雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。 二債務者は、昭和六一年四月以降本案判決確定に至るまで、毎月一五日に、債権者Aに対して五八万〇〇〇〇円、同Bに対して五八万七〇〇〇円、同Cに対して五九万二〇〇〇円、同Dに対して五六万八〇〇〇円、同Eに対して五〇万二〇〇〇円、同Fに対して五一万〇〇〇〇円、同Gに対して三六万六二〇〇円、同Hに対して五六万六〇〇〇円を、それぞれ仮に支払え。 第二事案の概要及び争点一本件は、債務者から懲戒解雇又は論旨解雇の懲戒処分を受けた債権者ら八名が、これらの懲戒処分が無効であるとして、債務者に対して雇用契約上の地位を有することを仮に定め、かつ、賃金の仮払いを命じる仮処分命令を求めた事案である。 二本件の争点ないし論点は、まず、被保全権利に関し、懲戒事由として主張される債権者らの非違行為の存否、また、その懲戒処分相当性、更には、懲戒権の濫用の有無、次に、被保全権利が肯定された場合における仮処分の必要性の存否である。 第三前提となる事実関係一債務者会社の成立の経緯 1 田中眼鏡店の成立I(以下「I」という。)は、昭和二二年五月、現在の広島市<以下略>に当たる地において田中眼鏡店(個人企業)を開業したが、昭和二九年一二月七日、これを法人化して有限会社田中眼鏡店(以下「田中眼鏡店」という。)を設立し、自らその代表取締役社長に就任し、引き続きその経営を主宰した。 田中眼鏡店は、昭和三四年に広島駅前店、昭和三八年に徳山駅ビル店、昭和三九年に己斐店、昭和四〇年に広島駅ビル店と、次々に支店を開設して、営業を拡大してきたものであるが、昭和四九年一 営を主宰した。 田中眼鏡店は、昭和三四年に広島駅前店、昭和三八年に徳山駅ビル店、昭和三九年に己斐店、昭和四〇年に広島駅ビル店と、次々に支店を開設して、営業を拡大してきたものであるが、昭和四九年一二月までに、Iは代表取締役社長を退任し、同人の娘(二女)であるJ(以下「J」という。)が代表取締役社長に就任して、現在に至っている。 2 田中商事の成立Iは、昭和四〇年一二月一日、「有限会社本通商事」を設立して、同社の代表取締役社長に就任した。本通商事は、昭和四四年六月、「有限会社田中商事」に商号を変更するとともに、Iに代わってJが代表取締役社長に就任し、現在に至っている(以下、商号変更の前後を通じて「田中商事」という。)。田中商事は、田中眼鏡店から分離された商品の仕入部門の業務を受け継ぐため設立されたもので、以後、田中眼鏡店は、すべて田中商事が仕入れた商品の販売の委託を受けてこれを販売し、田中商事は田中眼鏡店に対して受託商品売上高の一定割合の売捌き手数料(後に商品の売買代金に改められた。)を支払うこととなった。なお、両社の本店所在地は同一である。 3 債務者会社の成立(一) Iは、昭和四一年一一月一五日、呉市に新たな店舗を開設するに当たり、同店舗の所在地を本店とする「株式会社呉メガネの田中」(現在の債務者会社)を設立し、同人の三女のK(以下「K」という。)の夫であるL(以下「L」という。)を代表取締役社長とした。 Iは、新たに設立したこの債務者会社を従業員の経営参加を得て運営を図ることとし、そのため、IとJを始めとするIの親族八名及び田中商事(当時は前記本通商事〔代表者はI〕)が、設立当初の資本金七〇〇万円(一株五〇〇円で一万四〇〇〇株)のうち四〇〇万円(八〇〇〇株、約五七パーセント)を出資したほかに、幹部従業員二七名が合計三〇〇万円 当時は前記本通商事〔代表者はI〕)が、設立当初の資本金七〇〇万円(一株五〇〇円で一万四〇〇〇株)のうち四〇〇万円(八〇〇〇株、約五七パーセント)を出資したほかに、幹部従業員二七名が合計三〇〇万円(六〇〇〇株、約四三パーセント)を出資し、更に、従業員のうち債権者A(以下「A」という。)がその取締役に就任した。 Iは、昭和四三年、新たに開設することになった松山市内の店舗を、田中眼鏡店の支店としてではなく、この「株式会社呉メガネの田中」の支店として開設することとし、同年二月三日、債務者会社の商号を「株式会社呉メガネの田中」から現在の「メガネの田中チェーン株式会社」に変更するとともに、前記田中眼鏡店及び田中商事と同一の場所にその本店を移転し、同年三月、債務者会社の支店として松山イズミ店を開設した。 それ以後、債務者会社は、広島市内を除く広島県、山口県、東京都、大阪府、愛媛県、和歌山県、岡山県などの各地に支店を開設し、更に、昭和五四年三月、田中眼鏡店の有していた広島市内の一〇店舗の営業権の譲渡を受け、その後も次々と支店を開設して、昭和五七年末までに、支店数は六〇店舗を数えるに至った。 (二) その間、昭和四五年八月には、債務者会社の代表取締役として、新たにIとJの二名が就任し、従来から代表取締役であったLを含めて三名が債務者会社の代表取締役になるとともに、Lが社長の職を退き、代わってIが社長に就任した。 また、昭和四六年一一月、Jが債務者会社の副社長に昇格し、更に、昭和四九年一〇月、Iが社長を退任して会長となり、Jが社長に昇格し、Lは専務取締役となった。 債務者会社の資本金は、昭和五六年二月までの四回にわたる増資の結果、一億五〇〇〇万円(三〇万株)となり、従業員の株主も債権者八名全員を含む幹部従業員八三名(合計持株四万二三三〇株、約一四パーセ 。 債務者会社の資本金は、昭和五六年二月までの四回にわたる増資の結果、一億五〇〇〇万円(三〇万株)となり、従業員の株主も債権者八名全員を含む幹部従業員八三名(合計持株四万二三三〇株、約一四パーセント)を数えたが、他方で、J社長と田中眼鏡店(Jが社長であり、しかも、同女が出資持分の大半を所有していた。)とが、合わせて二二万五四五〇株(約七五パーセント)を所有することとなった。 4 昭和五七年末当時における債務者会社の組織等(一) 昭和五七年末当時における田中眼鏡店、田中商事及び債務者会社のいわゆるタナカグループ三社の関係は、債務者会社は、すべて田中商事の仕入れた商品を同社からの委託に基づいて販売し、その販売代金の一定割合を商品仕入代金として同社に対して支払い、田中眼鏡店は、その所有する店舗用不動産を債務者会社に賃貸して不動産の運用収入を得る、というものであった。 (二) タナカグループの従業員は三社合計で五〇〇名を超えていたが、田中眼鏡店の従業員は一名であり、債務者会社本部の管理部門の一部に田中商事の従業員約二五名が充てられていたほかは、すべて債務者会社の従業員とされていた。タナカグループ三社間における従業員の待遇は一律であり、人事異動に伴い雇用主である会社が変動しても、退職金の支給はなく、勤続年数は前後通算されていた。 (三) 当時の債務者会社の役員構成は、I会長、J社長、L専務の三名が代表取締役、Kが常務取締役であり、そのほかに、従業員のうち債権者A、同B(以下「B」という。)及びMの最高幹部三名が取締役(以下、取締役を兼務する三名の従業員を「社内役員」と総称する。)となっていた。監査役は、Iの長女N(以下「N」という。)であった。また、前記三名の社内役員に準ずる数名の幹部従業員を役員待遇と称していた。債務者会社の約六〇の店舗は、こ を「社内役員」と総称する。)となっていた。監査役は、Iの長女N(以下「N」という。)であった。また、前記三名の社内役員に準ずる数名の幹部従業員を役員待遇と称していた。債務者会社の約六〇の店舗は、これを広島第一ないし第三、山口、松山、福山、岡山、大阪、和歌山、東京の一〇グループに区分し、各グループにはグループに属する店舗を統括するグループ長を置いていた。また、各店舗のほか、債務者会社には前記のとおり本部と称する中央の管理部門が設けられていたが、その中に属する経理・採用教育等に関しては、田中商事から従業員の派遣を得て運営していた。 なお、田中眼鏡店と田中商事については、いずれもJが代表取締役社長として、経営の実権を掌握していた。 〔疎甲一四、一〇六~一一二、疎乙二、三、一〇、一二〇、一二二、一二六~一二八、一三三、一五三、一五六、一五七、債権者B・債務者代表者〕二債権者らの経歴等 1 債権者A債権者Aは、昭和三三年三月、田中眼鏡店の従業員として入社し、広島駅ビル店長を経て、昭和四一年一一月の債務者会社成立と同時に債務者の社内役員となり、設立当初の本店である呉店の店長に就任した。その後、岡山、福山などの店長を経て、昭和五三年九月、本店長兼広島第一グループ長に就任し、従業員約三〇名を有する債務者の最大の店舗の最高責任者、かつ、広島第一グループに属する約一〇店舗を統括する責任者となった。昭和五八年九月には、更に本部の統括本部長となり、従業員中の最高幹部として、I会長、J社長、L専務、K常務に次ぐ高い地位を占め、経営全般にわたる実務の最高責任者となった。 しかし、昭和六〇年五月の株主総会において、それまで重任されてきた取締役に再任されなかったため、取締役の任期が終了し、一般従業員となった後、同年九月、統括本部長及び本店長兼広島第一グループ った。 しかし、昭和六〇年五月の株主総会において、それまで重任されてきた取締役に再任されなかったため、取締役の任期が終了し、一般従業員となった後、同年九月、統括本部長及び本店長兼広島第一グループ長の地位を更送され、東京グループ三店舗を統括する東京グループ長兼赤羽店長に異動し、更に後記の本件懲戒解雇に至った。 2 債権者B債権者Bは、昭和四一年二月、田中眼鏡店の従業員として入社し、昭和四五年二月、田中商事の従業員になって、本部の採用教育課長、次いで、昭和五三年九月、同採用教育部長と、債務者会社を含むタナカグループ全体の従業員の採用教育担当の最高責任者となった。更に、昭和五五年四月には、タナカ眼鏡学校事務長を兼務し、昭和五六年五月には、債務者会社の取締役にも就任した。 しかし、昭和六〇年五月、株主総会において取締役に再任されることなくその任期が終了し、同年八月、債務者会社所属の一般従業員となって、フォーティ店長兼田中眼鏡学校事務長に異動し、後記の懲戒解雇に至った。 3 債権者D債権者D(以下「D」という。)は、昭和三七年三月、田中眼鏡店の従業員として入社し、昭和五〇年一〇月、本店コンタクト室長となった。昭和五四年三月、前記の田中眼鏡店から債務者会社への営業譲渡に伴い、債務者会社の従業員となった後、昭和五六年六月、役員待遇、本部のコンタクト部長兼務となり、本店におけるコンタクトレンズ販売業務を統括するとともに、コンタクトレンズ販売部門全体をも統括する責任者となった。昭和五七年一〇月、本店からコンタクト室が独立したのに伴い、立町コンタクト室長となったが、業務内容には変わりはなかった。昭和六〇年八月、フォーティ店マネージャーに異動し、その後、本件懲戒解雇に至った。 4 債権者C債権者C(以下「C」という。)は、昭和四三年二月、田中眼 となったが、業務内容には変わりはなかった。昭和六〇年八月、フォーティ店マネージャーに異動し、その後、本件懲戒解雇に至った。 4 債権者C債権者C(以下「C」という。)は、昭和四三年二月、田中眼鏡店の従業員として入社したが、昭和四五年一二月、債務者会社の従業員となり、なんばシティ店長兼大阪グループ長などを経て、昭和五五年七月、本部社長室長、昭和五六年六月、役員待遇となった。昭和五八年九月、本店副店長となり、同時期に本店長に就任した取締役Mに次いで本店の営業全般を統括する責任者の地位に就き、同年一二月には、広島第一グループ長代行を兼務し、以後、本件懲戒解雇に至るまで、同グループにおいてもグループ長を補佐してこれを統括する地位に就いていた。 5 債権者H債権者H(以下「H」という。)は、昭和四三年八月、田中眼鏡店の従業員として入社したが、昭和四五年二月、債務者会社の従業員となり、今治店長などを経て、昭和五〇年四月、岡山駅前店長となった。更に、岡山地区の支店増加に伴い岡山グループ副グループ長を兼務するようになったが、岡山グループ長はL専務が兼務していた関係から、実質的には岡山グループ八店舗を統括する責任者であった。 昭和五六年六月、役員待遇となり、昭和五九年五月、岡山表町店長兼岡山グループ長、昭和六〇年四月、徳島駅前店長兼徳島グループ長に異動して、後記の本件諭旨解雇に至つた。 6 債権者F債権者F(以下「F」という。)は、昭和三五年三月、田中眼鏡店の従業員として入社し、昭和五三年九月、債務者会社の従業員となって、松山フジ店長兼松山グループ長となり、松山グループ四店舗を統括する責任者の地位に就いた。昭和五九年一一月、本部コントローラー、昭和六〇年八月、フォーティ店マネージャーにそれぞれ異動となり、その後、本件諭旨解雇に至った。 7 債権 なり、松山グループ四店舗を統括する責任者の地位に就いた。昭和五九年一一月、本部コントローラー、昭和六〇年八月、フォーティ店マネージャーにそれぞれ異動となり、その後、本件諭旨解雇に至った。 7 債権者E債権者E(以下「債権者E」という。)は、昭和四一年六月、田中眼鏡店の従業員として入社し、昭和五〇年五月、債務者会社の従業員となり、昭和五四年五月、福山店長兼福山グループ副グループ長、昭和五七年六月、同グループ長となり、以後、本件諭旨解雇に至るまで、福山グループ三店舗を統括する責任者の地位にあった。 8 債権者G債権者G(以下「G」という。)は、昭和四五年三月、田中眼鏡店の従業員として入社し、昭和五四年三月、債務者会社の従業員となり、昭和五五年一〇月から本店次長として、店長、副店長に次ぐ立場で、本店の営業を統括していた。昭和六〇年八月、宇品店店長に異動となり、本件諭旨解雇に至った。 〔争いのない事実及び疎甲一四、三〇~三五、七〇、疎乙一三四〕三本件懲戒処分とその理由 1 本件懲戒処分の発令債務者会社は、昭和六一年三月一〇日付をもって、債権者A、同B、同C、同Dの四名に対し懲戒解雇、同H、同E、同F、同Gの四名に対し諭旨解雇の、各懲戒処分の意思表示をした(以下、それぞれ「本件懲戒解雇」、「本件諭旨解雇」または一括して「本件懲戒処分」という。)。 本件懲戒処分の理由とされた行為及びこれに適用されるとされた就業規則の条項は、別紙(一)懲戒処分理由目録1ないし29の「処分の対象となった行為」欄記載のとおり(以下、各行為を「処分理由1」等という。)であり、それぞれの処分理由は、同目録「処分対象者」欄記載の各債権者に対応するものである。 〔当事者間に争いがない。〕 2 就業規則の懲戒規定タナカグループ三社の就業規則(「メガネのタナカチェーン であり、それぞれの処分理由は、同目録「処分対象者」欄記載の各債権者に対応するものである。 〔当事者間に争いがない。〕 2 就業規則の懲戒規定タナカグループ三社の就業規則(「メガネのタナカチェーン就業規定」と称する。)の内容は、各社共通であり、そのうち懲戒処分に関する規定は、別紙(二)のとおりである。〔疎甲三七号証、疎乙一号証の一〕第四争点に関する当事者の基本的主張一債権者ら 1 債権者らは、債務者が本件懲戒処分の理由として主張する行為を行っていないから、本件懲戒処分は、正当な理由が存しないものとして無効である。 2 本件懲戒処分は、I一族の経営権をめぐる争いに端を発し、Jが債務者会社の実権を握るや、債権者らを懲罰し、報復するために実施したものであって、就業規則に規定されていない降格処分、減給等の処分に加えてされたものであったり、同様の行為を行った他の従業員と比較してあまりにも厳しい処分であって、懲戒権の濫用に該当し、無効である。 3 債権者らは、メガネのタナカグループに長年雇用され、そこから支給される賃金で家計を維持してきた給与生活者であるから、申立てのとおりの仮処分を求める保全の必要性がある。 二債務者 1 債権者らが、処分理由1ないし29の行為を行ったことは明らかであり、これが前記就業規則の懲戒規定に該当することは明白である。 そして、債務者会社における債権者らの占める地位の重要性、自らの行為に全く反省を示すことのない態度からみて、本件懲戒処分は何ら懲戒権の濫用に当たるものではない。 2 また、債権者らは、本件懲戒処分の後、各自他所で就業し、それぞれの生活を維持するに足りるだけの収入を得ているものであるから、本件仮処分申立事件における保全の必要性は存在しないものというべきである。 第五本件懲戒処分の理由とされた事実関係等に で就業し、それぞれの生活を維持するに足りるだけの収入を得ているものであるから、本件仮処分申立事件における保全の必要性は存在しないものというべきである。 第五本件懲戒処分の理由とされた事実関係等にかかる疎明事実証拠(疎甲一九、二五~三一、三一、三六、五二~七八、八七、八八、九五、一〇二~一〇四、一一三、一一六、一一八、一二一、一二九、一三〇、疎乙六、七、九~二二、二八~四三、五四~一二二、一二八、一五〇、一五二、一五三、一五五、一五六、証人O・同P・同Q、同R、債権者B・債務者代表者)と弁論の全趣旨によって、以下の事実が疎明される。 一会社二分割案をゆぐる紛争 1 会社二分割案の発案と発覚(一) J社長とL専務とは、以前から債務者会社の経営方針等をめぐって何かと対立することが多かったが、昭和五七年一二月頃、本店改築の業者選定等を契機として、両者の間の確執が表面化するようになった。その頃、既に高齢に達していたI会長は、将来の債務者会社の事業の永続的、かつ、安定的な発展のためには、経営をめぐって対立することの多いJ社長とL専務とが同一企業内で経営の実質に参画することは得策でないと判断し、債務者会社の営業を二分割して、J社長の営む事業とL専務の営む事業を分離することを計画した。 (二) I会長は、分割の方法として、J社長、L専務、K常務、N監査役などの親族関係者と個別的に協議する中で、当事債務者会社の保有していた営業店舗のうち、岡山グループ及び和歌山グループに属する各店舗を債務者会社から分離して別会社とし、L専務にその経営を委ね、残部の店舗を保有する債務者会社をJに委ねることを発案し、徐々にその方向で分割案が具体化するようになってきた。 (三) Lは、会社二分割案の内容等について親族経営陣の間では、未だ外部に公表するほど具体的に煮詰ってい する債務者会社をJに委ねることを発案し、徐々にその方向で分割案が具体化するようになってきた。 (三) Lは、会社二分割案の内容等について親族経営陣の間では、未だ外部に公表するほど具体的に煮詰っていない昭和五八年二月中旬頃、債権者A、S本部電算室長ら、Lが頼みとする腹心の部下に対して右分割案を打ち明け、会社分割後もLと行動を共にするように要請したことから、Aらを通じてこの会社分割案が債権者B、同Cら会社の幹部従業員に知れ渡ることになった。 2 愛する会及び労働組合の発足(一) これを受けて、同年二月二六日、債権者A、同Bら社内役員を含む広島市内の従業員が、タナカ眼鏡学校(以下「眼鏡学校」という。)に集合して開催した対策会議の席で、来る同年三月三日の経営会議において親族経営陣から発表される予定の会社二分割案を撤回させるため、幹部を含む全従業員を構成員とする「タナカを愛する親睦会」(以下「愛する会」という。)を結成することを決定し、翌二月二七日から、本部及び広島市内の店舗で愛する会の入会勧誘が始められた。この愛する会の発足に当たり、債権者Aは会長に、同Bは副会長に、同D及び同Cは常任委員に、それぞれ就任した。 (二) 他方、一般の従業員らの間では、愛する会というような方法では、会社二分割阻止を実現することは困難であるとの意見もあったことなどから、同年二月二八日には、法的保護の厚い労働組合を結成することが合意され、同年三月一日、メガネの田中労働組合(以下「組合」という。)が発足した。組合発足に当たり、債権者Gは、組合執行委員に就任した。 (三) 同年三月二日、定例の仕入会会場において、愛する会と組合とが、従業員に加入を勧誘したが、組合側から、組合員を愛する会に勧誘することに対して反発が出たため、以後愛する会は組合員以外の従業員を構成員とすること 月二日、定例の仕入会会場において、愛する会と組合とが、従業員に加入を勧誘したが、組合側から、組合員を愛する会に勧誘することに対して反発が出たため、以後愛する会は組合員以外の従業員を構成員とすることになった。 3 会社二分割案の公表と従業員の反発(一) 昭和五八年三月三日午前、定例の経営会議が行われた。当時においては、債務者会社の経営上の重要事項の討議及び決定は、毎月開かれる経営会議において行われていた。会議の構成員は、原則として、I会長、J社長、L専務、K常務らの親族経営陣のほか、社内役員、役員待遇、グループ長以上の幹部従業員であり、会議の案件に応じて一部の店長が招集されることもあった。 当日の経営会議において、会社二分割案が会社内に流れていることを察知した親族経営陣は、緊急に岡山、和歌山各グループの店舗の店長を特別に招集し、Iから、前記の会社二分割案の内容が公表された。 (二) しかし、経営会議に参加した親族経営陣以外の幹部従業員らは、当日の会議で会社の二分割案が公表されることを事前に察知して予め意思を統一しており、一致してこれに反対したため、親族経営陣も、この案の強行は困難と判断して、会社二分割案を撤回することを了承した。 そして、経営会議の終了後、親族経営陣と社内役員及び役員待遇以上の従業員が協議し、今後の方針として債務者会社を分割しないまま、J社長とL専務との確執を乗り越えて円滑な会社運営を実現するために、債権者Bが両者の調整役として社長室に入り、協調を図ることに合意した。 4 J社長排斥の諸活動(一) この会社二分割案の発覚をきっかけとして、従業員らの間では、J社長に対する不満が強まることとなった。その理由としては、L専務に比較して、J社長が債権者ら幹部従業員の意見を容れることに厳しく、また、一般の従業員に対しても、より厳 けとして、従業員らの間では、J社長に対する不満が強まることとなった。その理由としては、L専務に比較して、J社長が債権者ら幹部従業員の意見を容れることに厳しく、また、一般の従業員に対しても、より厳格な経営態度で臨んだことにあり、例えば、このことは、スカラーシップ返済義務制度、弁償義務制度の維持、残業時間の月一五時間以内の制限などにおけるJ社長の態度に現れていた。 そこで、従業員、とりわけ社内役員及び役員待遇の幹部従業員らは、J社長から債務者会社の経営の実権を失わせることを相談するようになった。このような幹部従業員の動きは、J社長の下で経営の実権を握ることのできないことに対する不満を募らせていたLの願望とも一致するところとなり、債権者AらL専務と親しい幹部従業員とLとの間において、J社長からL専務に対して債務者会社の経営の実権を移行させる方向で活動することで、意見の一致をみることになった。 (二) 債権者A、同B及びMの社内役員と債権者D、同C、同Hら役員待遇など幹部従業員合計一二名は、同年三月一〇日、眼鏡学校に集合して協議の結果、Jが田中商事の社長を退いて副社長となり、Lを田中商事の社長とすること、また、債務者会社については、J社長の下でLを専務から副社長とすることを、親族経営陣に要望することを決議し、この決議内容を記載した議事録(疎乙五四号証)に各自が署名した上、同夜、JとLとを眼鏡学校に呼び出して、これを手渡し、従業員の強い決意であるから決議内容をぜひ実現するとともに、今後の会社運営は、親族経営陣と社内役員及び役員待遇との合議制によって行うようにすることを強く要望した(処分理由1に相当する事実)。 (三) これを受けて、Jは、前記幹部従業員らに対し、決議内容の検討をした上で同月一七日に回答をする旨約束してこれを持ち帰り、I会長、L専 ようにすることを強く要望した(処分理由1に相当する事実)。 (三) これを受けて、Jは、前記幹部従業員らに対し、決議内容の検討をした上で同月一七日に回答をする旨約束してこれを持ち帰り、I会長、L専務らと協議したが、その結果、右の要求内容をそのまま受け入れることはせず、Jが債務者会社及び田中商事の社長にとどまったまま、Lを両社の副社長に昇格させる限度において要求を受け入れる、との結論をまとめ、同月一七日、L同席の上で、前記議事録に署名した前記債権者らを含む幹部従業員一二名に対し、この旨を回答した。 これに対して、右幹部従業員らは、強い不満を表明し、前記決議内容が実現されない限り、J社長に対しては協力できない旨の意思を表明したため、Jは、再度決議内容の検討を行う含みを持たせて、一応その場を収めた。 (四) しかし、Jからこの経過の説明を受けたI会長は、翌三月一八日、最も信頼していた社内役員である債権者Aを自宅に呼び、J同席の下で、同人に対し、今回の行動は、会社生え抜きの社内役員としてはふさわしくない旨を説諭し、今後も取締役の地位を降りる気がないのであれば、会長及び社長の意向を踏まえて幹部従業員らの動きを鎮静化させる方向で行動するよう説得した。 債権者Aは、I会長の面前では、これを一応了承したような態度を示したが、実際には、これに応じた行動に出ることなく、むしろ反対に、「会長からいつでも取締役を降ろし、首にすることができる。」旨の発言があったなどとI会長との会談の結果を誇張して他の幹部従業員に報告した(処分理由2に相当する事実)。このため、これを聞いた幹部従業員ら及び一般の従業員らは、「会長の首切り発言」として反発し、このような形でI会長の権威を借りようとしたJ社長に対する反発を一層強めた。 (五) その結果、幹部従業員らは、Jを債務者会社 いた幹部従業員ら及び一般の従業員らは、「会長の首切り発言」として反発し、このような形でI会長の権威を借りようとしたJ社長に対する反発を一層強めた。 (五) その結果、幹部従業員らは、Jを債務者会社の社長としたまま、Lを田中商事の社長にしても、従業員の意向は会社運営に十分反映されないので、田中商事の社長はJのままであっても、債務者会社の社長は、Jが退任してLを昇格させることを要求すべきであるということで意見が一致した。 ところで、前記の議事録の取扱いに関しては、同年三月二〇日に、I、J、L、Kら親族経営陣での協議が行われることが予定されていたため、Lは、幹部従業員の強い意向を背景にして、この親族間の協議の結果を自己に有利に導こうと考え、事前に幹部従業員に対して右協議の予定を告げて、いつでも彼らの意向を親族経営陣に直訴できるように待機するよう求めていた。 そして、Lの要請を受けた幹部従業員ら(前記議事録に署名した一二名のうち、待機はしていたものの他の用事のため実際は参加できなかった債権者Bほか一名を除く一〇名。債権者A、同D、同C、同Hが含まれている。)は、同日夜、三回にわたって、I会長の自宅を訪れ、自宅付設の会社の厚生会館において、親族経営陣に対して、債務者会社の社長をLに交替させるように強く要求した。しかし、三度目の訪問の際にも、I会長から、親族間の協議の結果として、Lを債務者会社の社長にすることはできないが副社長に昇格させるとの従来どおりの案が示されたにとどまったため、訪れた幹部従業員は、事前の打合せどおり、直ちに、Jに対し、強い口調で抗議し、机を手でたたいたり、倒したり、灰皿を投げるなどした上、席を蹴って退席した(処分理由4に相当する事実)。 (六) このような幹部従業員らの強い姿勢に動揺した親族経営陣は、同日深夜に至るまで更に 議し、机を手でたたいたり、倒したり、灰皿を投げるなどした上、席を蹴って退席した(処分理由4に相当する事実)。 (六) このような幹部従業員らの強い姿勢に動揺した親族経営陣は、同日深夜に至るまで更に協議を続けた結果、翌三月二一日未明に至って、Jが債務者会社の代表取締役社長を辞任して平取締役に退き、Lを社長に昇格させることを決定した。 Lは、この決定直後の同日午前三時頃、待機中の幹部従業員らを自宅に呼び寄せ、一緒に社長就任の祝杯を挙げた。 (七) 右のとおり、J社長更迭の要求を実現した社内役員及び役員待遇の幹部従業員らは、同年三月二一日午前に改めてI会長宅に赴き、同人に対し、これまでの行為につきその非礼を詫びるとともに、彼らの希望どおりLを債務者会社の社長に昇格させたことにつき謝意を述べた。これに対し、I会長は、幹部従業員らの行為を親族経営陣に対する直言行為として評価する旨述べ、彼らが敢えてそのような行為に出たことにつき、感謝の意を表示した。 二超過勤務手当請求をめぐる紛争 1 残業手当等に関する労働基準監督署の勧告昭和五八年二月一四日、天王寺労働基準監督署労働基準監督官から債務者会社に対し、同社なんばシティ店における労基法三七条にいう割増賃金(残業手当、休日出勤手当)の計算の基礎となる賃金に業務手当、食事手当、支店手当、調整手当が含まれていないことが指摘され、これを一か月以内に是正すべき旨の勧告がされた。 2 組合の要求組合は、右の勧告を背景として、昭和五八年三月一七日の団体交渉の席で債務者会社に対し、残業手当及び休日出勤手当の正規の計算方法による既払分との差額及び時間外賃金の不当カット分を過去二年分に遡って請求するとして、合計五億二〇〇〇万円の支払いを求めた(組合の計算方法によると、本来の請求額は七億円強になるが、会社の資力等を考 による既払分との差額及び時間外賃金の不当カット分を過去二年分に遡って請求するとして、合計五億二〇〇〇万円の支払いを求めた(組合の計算方法によると、本来の請求額は七億円強になるが、会社の資力等を考慮して、右金額が妥当であろうと判断したという。しかし、この請求金額は、組合員全員が一率に毎月一〇時間分の時間外賃金をカットされてきたという事実に基づかない仮定を前提とするものである等客観的な根拠に乏しいものであった。)。そして、この要求に対する債務者会社側の回答は、同月一九日の団体交渉で行われることが予定された。 3 団体交渉における債権者らの行動債権者Aは、同月一九日の団体交渉に先立ち、会社として、この問題にいかに回答すべきかについて、J社長に対し、同人ら社内役員らで適切に処理する旨説明していたので、J社長は、自らは十分な事前準備をすることなく、社内役員らから適切な対応がされることを予定して団体交渉の席に臨んだ。 ところが、債権者A、同D、同Cらは、当日の団体交渉の債務者会社側出席者であったにもかかわらず、交渉の席にJ社長が出席する直前、組合側の五億二〇〇〇万円の要求金額が前記のとおり十分な根拠に乏しいものであることを知りながら、J社長を困惑させる目的で組合側出席者に対して会社への要求をあおるを発言をし、更に、団体交渉が始まるや、J社長から会社側出席者として説明の補助をするよう求められたのを拒否したばかりでなく、むしろ、組合側の要求が正当であるとの発言をしたり、あるいは、他の会社側出席従業員と共にこれに同調し、回答の準備もなく、孤立したJ社長を嘲笑する行動をとった(処分理由3に相当する事実)。 なお、当日の交渉は、その後、J社長が、正当な未払残業手当の支払には応じるが、現段階では金額が算定できない旨、とりあえず回答して、同月二二日に継続 笑する行動をとった(処分理由3に相当する事実)。 なお、当日の交渉は、その後、J社長が、正当な未払残業手当の支払には応じるが、現段階では金額が算定できない旨、とりあえず回答して、同月二二日に継続となった。 4 団体交渉の妥結前記のとおり、同月二一日、Jは債務者会社の代表取締役社長を退き、代わってLが昇格したため、同月二二日の未払残業手当の要求についての継続交渉は、組合とL新社長との間で行われた。 この席で、L新社長は、債権者らを含む幹部従業員の支持を受けて社長に就任したことから、社長就任後の会社運営において従業員との融和を図るため、組合側の要求の当否を十分に吟味することなく、要求額が従前の五億二〇〇〇万円から四億円に減額されたことを受けて、これを直ちに応諾した。 しかし、この妥結額に対しては、組合員資格のない他の幹部従業員が、組合に対して、妥結した後になって、不当な金額であるとして強く反発し、その減額を要求したため、組合は、結局、約一億九三〇〇万円を臨時賞与として債務者会社から受領するにとどめることとし、残額の請求を断念して、この問題を決着させた。 三 Jに対する株式放出要求と持株会をめぐる紛争 1 Jに対する株式放出の要求(一) 前記のとおり、Jは、昭和五八年三月二一日、債務者会社の代表取締役社長を退いたが、その後間もなく、I会長が相談役に退くのと同時に、新たに会長に就任し、また、株式支配の面では、依然として、前記のとおり、Jと田中眼鏡店とが昭和五五年一二月以降数回に亘り債務者会社の増資新株の大半を引き受けたことによって、田中眼鏡店所有の株式も含めて債務者会社の株式の七五パーセントを支配する立場にあった。 (二) そこで、新たに債務者会社の社長に就いたL及びLを支持する幹部従業員は、持株比率の面からもJの優位を失わせるため、こ 有の株式も含めて債務者会社の株式の七五パーセントを支配する立場にあった。 (二) そこで、新たに債務者会社の社長に就いたL及びLを支持する幹部従業員は、持株比率の面からもJの優位を失わせるため、これらの増資の手続は不当であるとして、Jに対し、従業員の持株割合を、幹部の分を合わせて半数近い株式を保有していた増資以前の状態に復元するように要求することを申し合わせた。これを受けて、債権者Bは、昭和五八年四月一八日、この要求の趣旨を記載した覚書案(疎乙一五五号証)を作成して、Jの自宅を訪れ、この覚書への捺印を要求した。 しかし、Jは、債権者Bの要求の背景には、従業員と一体となって、Jから会社運営の実権を奪おうとするLの意向が反映していることを察知して、結局、この要求を拒否した。 (三) 同月二一日午後八時半頃、このJの拒否回答を知った債権者A、同B、同Dらの幹部従業員約一〇名は、Jの自宅を訪れて、再度従業員に対する株の放出を強い調子で要求した(処分理由5に相当する事実)が、結局、これにもJは応じなかった。 2 社外取締役の就任とJの代表取締役復帰(一) J会長は、I相談役と協議の上、同年五月に予定されていた定時株主総会において、社外から取締役を招聘する一方、債権者A、同Bら社内役員を取締役に再任しない方向で検討を進め、Iは、同月一〇日頃、Aに再任しない可能性を示唆した。この情報を得た債権者Cら幹部従業員は、会社運営の主導権をL及び従業員の側からJの側に奪還されることをおそれて、Lとも連絡を取り合った上で、社内役員の取締役再任を要求するため、同月一〇日午後八時頃、I相談役宅を訪れて面談を要求し、更には、一〇名を超える多数の組合幹部にも連絡をとって、I相談役に面談を求めてI宅に集結させた(処分理由6に相当する事実)。 (二) 結局、同月二六日に行 午後八時頃、I相談役宅を訪れて面談を要求し、更には、一〇名を超える多数の組合幹部にも連絡をとって、I相談役に面談を求めてI宅に集結させた(処分理由6に相当する事実)。 (二) 結局、同月二六日に行われた株主総会では、債権者A、同Bら社内役員を含む従来からの取締役は、そのまま再任されたが、そのほかに監査役のNと社外からT、Uの二名の合計三名が新たに取締役に選任され、新監査役にはV(以下「V」という。)が選任された。 そして、新たに選任された取締役も含めて取締役会の多数派の支持を得たJは、株主総会直後の取締役会で、再び債務者の代表取締役に選任され、以後、債務者会社は、L(社長)、J(会長)、I(相談役)の三名が代表取締役となったが、同年七月一日、Iが死亡したため、L、Jの二名代表取締役制をとることになった。 3 持株会の結成(一) 他方で、幹部従業員らは、従業員株主が結集してJ及び田中眼鏡店に対する新株の割当によって会社に生じた損害の賠償等をJらに対して請求する株主代表訴訟を提起することを交渉材料として、Jが従業員に対して持株を放出するように仕向けて、株式支配の面でのJの優位を失わせ、会社経営における従業員の優位を確立しようと考え、昭和五八年五月末頃、従業員株主を構成員とする債務者社員持株会(以下「持株会」という。)を結成し、グループ長以上である債権者C、同D、同F、同E、同Hらが、その理事又は監事に就任した。もっとも、Lの要請により、社内役員は、結成後間もなく持株会を脱会した。 (二) 持株会は、同年六月頃、債務者会社に対し、右のような株主代表訴訟提起の動きを背景として、Jに対する株式放出の要求を行い、持株会と債務者会社との間で交渉が続けられたが、これが不調に終ったため、持株会は、同年一〇月、前記の訴提起を決定したが、債務者会社の信用保 訟提起の動きを背景として、Jに対する株式放出の要求を行い、持株会と債務者会社との間で交渉が続けられたが、これが不調に終ったため、持株会は、同年一〇月、前記の訴提起を決定したが、債務者会社の信用保持を心配するL社長の説得により、とりあえずこれを延期することとした。 (三) 債権者A、同Bら社内役員は、同年一一月二七日午後八時半頃、持株会幹部とともに、本店に広島市内及びその周辺の支店の約一〇〇名の男子従業員全員を集合させ、従業員のJ会長に対する不信をあおる発言をした上で、将来のJ会長の株式放出ないし新株発行の際には持株会が株式を取得して従業員の会社経営への発言権を増大させることなど持株会の目的及び訴訟に向けての活動方針を説明し、現在株式を所有しない従業員に対しても、持株会に参加して将来の株式購入資金を積み立てるように要請した(処分理由8に相当する事実)。 4 持株会アンケート事件持株会は、昭和五九年五月初旬、J会長及び田中眼鏡店に対して、株主代表訴訟を提起することを決定し、同月九日、二六名の原告をもって右訴を提起したが、一方で、持株会幹部は、同会の情報がすべてJ会長に漏れていることを察知して、訴提起の判断のためのアンケートと称して、貼付した切手の裏に隠し番号を付した往復はがきにより、会長に対する情報提供者を割り出そうとした。しかし、これは直ちに会員に判明するところとなり、債権者Bが、持株会会長名の会員に対する謝罪文を起案するなどして、事態収拾に協力した。 5 不当残業等の指示債権者B、同C及びS本部電算室長らは、本部、本店の幹部従業員の地位にありながら、昭和五九年五月下旬頃、店長交流のために本社に集まっていた所沢、今治ほか三店舗の合計五名の店長に対して、持株会の資金を集めるため、従業員に対し従来より緩やかに残業及び休日出勤をさせるよ ありながら、昭和五九年五月下旬頃、店長交流のために本社に集まっていた所沢、今治ほか三店舗の合計五名の店長に対して、持株会の資金を集めるため、従業員に対し従来より緩やかに残業及び休日出勤をさせるようにし、これによって従業員が取得する賃金を持株会に拠出させるように従業員を指導するよう指示命令した(処分理由16に相当する事実)。 四その他Jに対する反対行動等 1 代表取締役復帰後のJ会長に対する行動(一) 昭和五八年五月のJの代表取締役復帰後、ほとんどの従業員は、Jに対する不信感から反抗的な態度をとるようになった。 J会長は、同年一〇月二八日に、債権者Aに対し、本店新築披露パーティーの式次第の説明を求めたが、同人は、既にL社長に説明ずみであるとしてこれを拒否した(処分理由7に相当する事実)。 (二) 債権者Gは、昭和五九年一月三一日、広島国際ホテルにおいて行われた債務者会社主催の新年会(広島市内の各グループに所属する従業員ら一〇〇名以上出席)において、本店次長として会の運営を司る責任を有していたにもかかわらず、J会長を出席させないようにしようと企て、Jに対して、「会長が出席を辞退しなければ従業員が新年会をボイコットする。」と事前に出席辞退を促した上、J会長が出席を強行するに至るや、予め司会進行役の従業員らにボイコットの手順を指示し、開会と同時に従業員らに退席を要求し、その結果、取締役及び眼科医師数名を除く全従業員が退席してしまい、新年会の続行は不可能となった(処分理由9に相当する事実)。 (三) 債権者Aは、同年四月三日、田中商事の会議室に、翌日の経営会議に出席するために集まった債権者らを含む幹部従業員約二〇名を集合させ、債権者C、同D、同E、同F、同Hらとともに経営会議の進行を妨害する方法を打ち合わせた上、翌四日には、右打合せに従って の経営会議に出席するために集まった債権者らを含む幹部従業員約二〇名を集合させ、債権者C、同D、同E、同F、同Hらとともに経営会議の進行を妨害する方法を打ち合わせた上、翌四日には、右打合せに従って経営会議の議事の進行を混乱させた(処分理由10前段に相当する事実)。 更に、同日の経営会議の席上、J会長が組合員二名の自宅に電話をしたことを不当労働行為であると主張する組合が、大衆団交の申し入れを行い、これを受けて、L社長は、その場でこれを受けることを了解したが、その席上、J会長が電話をかけた事実を否定したため、大衆団交は翌日に続行された。翌五日の大衆団交においても、J会長は電話をかけた事実を認めないまま退席しようとしたところ、これを阻止しようとした組合員らに押し倒され、会場出口付近に置かれていた机椅子等に体を打撲して傷害を被った。なお、その大衆団交に係る事実関係については、L社長が電話の事実を認めて組合に陳謝することで収束をみた(処分理由10後段に相当する事実)。 (四) 組合は、同日の大衆団交終了後、翌六日の入社式へのJ会長出席を阻止することを協議した上、同日、入社式会場にJ会長出席を阻止するために多数の組合員を動員した。その際、債権者A、同B、同C、同D、同E、同Gらは、現場において組合の行動を支援する言動をとった(処分理由11の前段及び中段に相当する事実)。なお、当日は、J会長の出席辞退が判明して、組合員らの動員は解かれた。 (五) その後も連日、債権者らを含ら幹部従業員は、その職場を離れたまま、本社二階の一室に三々五々集合しては協議を行い、同月一五日には、債権者ら幹部の間で、J会長の退陣を求めて行動することで意見が一致し、会長の代表取締役即時退陣、債務者の持株比率を昭和五五年増資以前の状態に戻すこと、P会長秘書の即時解雇、田中商事 同月一五日には、債権者ら幹部の間で、J会長の退陣を求めて行動することで意見が一致し、会長の代表取締役即時退陣、債務者の持株比率を昭和五五年増資以前の状態に戻すこと、P会長秘書の即時解雇、田中商事との取引の即時中止、田中眼鏡店の業務経営状態を昭和五九年一月以前の状態に戻すことなどを会社に要求する、社内取締役を除いた債権者六名を含む幹部従業員一六名の連名による文書(疎乙四二号証)を作成するなど、J会長排斥するための行動計画を練り、これを実行していた。 なお、その間、L社長もしばしば債権者ら幹部従業員の協議の場を訪れて連絡を取り合っていた。 (六) 債権者Aら幹部従業員は、同年四月八日、組合が、本社ビル前でJ会長出社拒否のための座込みをした際にも、組合員らを激励支援する言動をとった(処分理由12に相当する事実)。 更に、同月六日には、債権者D、同C、同E、同Hら約一〇名の幹部従業員が、執務中のP会長秘書を多数の集団で取り囲んで業務の執行を妨害したり(処分理由11の後段に相当する事実)、同月一〇日には、前記の債権者らを含む約一〇名の幹部従業員が、執務中のV監査役を取り囲んで業務を妨害した上、暴行を加えたり(処分理由13に相当する事実)、同月一九日午後二時半頃から、債権者A、同C、同E、同Hら約一〇名の幹部従業員が、社長室にいたK常務に対して集団で面談を要求し、同五時頃になってKからの電話で事態を知ったL社長から解放を求められるまで、長時間にわたって社長室前に集団でたむろして、Kが社長室から出られないようにしたり(処分理由14に相当する事実)など、J会長に近い立場にあった会社役員らに対して、次々と執拗ないやがらせ行為を行った。 また、債権者Aは、月刊誌「政治経済セミナー」の同年七月号から一一月号までに、「苦悩するメガネのタナカ」と題するJ会 会長に近い立場にあった会社役員らに対して、次々と執拗ないやがらせ行為を行った。 また、債権者Aは、月刊誌「政治経済セミナー」の同年七月号から一一月号までに、「苦悩するメガネのタナカ」と題するJ会長の会社経営を一方的に批判する記事を連続掲載させた(処分理由17に相当する事実)。 (七) 昭和五九年五月二六日の債務者会社の定時株主総会において、いずれもJ会長の信任の厚い前記P及び社外のWが新たに取締役に選任され、同年六月一二日の取締役会においては、P取締役を総務担当取締役とし、総務課を新設して課員として三名の従業員を新規に採用することが決議され、直ちに代表取締役であるJ会長が三名の総務課員を採用し、翌六月一三日の定休日に総務課執務室の整備が行われた。 しかし、L社長及び債権者A、同Bら社内役員三名は、事前に当該決議の行われることを知悉して、取締役会を中途退席しておきながら、ことさらに、前記決議に基づく総務課の新設等がL社長のあずかり知らないことであると主張して、総務課の執務開始を妨害しようと企て、L社長は、幹部従業員らとともに、同年六月一四日午前九時半頃、総務課の執務開始直後、新採用の総務課員の退去を求めた上で、警察官を社内に導入し、不退去罪で総務課員を逮捕させた。 逮捕された総務課員は、間もなく釈放されたが、その後も、債権者Aら幹部従業員は、六月一五日から同月二二日までの間、連日本社ビル前にピケを張って総務課員の出社を妨害して、その執務を不能にした(処分理由17に相当する事実)。 更に、同月二二日には、L社長の申立てに基づいて、総務課員三名の社内立ち入りを禁止する広島地方裁判所の仮処分決定が行われ、後記のとおり、その後J会長が社長に復帰し、前記立入禁止仮処分の申立てを取り下げて総務課の執務を開始させるまでの間、総務課の執務が行えない 社内立ち入りを禁止する広島地方裁判所の仮処分決定が行われ、後記のとおり、その後J会長が社長に復帰し、前記立入禁止仮処分の申立てを取り下げて総務課の執務を開始させるまでの間、総務課の執務が行えない状態が続いた。 2 Jの社長復帰とこれに対する抵抗活動等(一) 昭和五九年七月一九日、Lは、前記の総務課設置に伴う混乱の責任をとって債務者会社の社長の職を辞任して、非常勤の平取締役に退くことになり、これに代わって、翌七月二〇日、Jが代表取締役社長に復帰し、以後単独代表権者として債務者会社の全権を掌握することになった。 (二) 前記のとおり、Jが社長に復帰したことから、債権者らは、会社の利益を減少させることによってJの会社経営に打撃を与え、できればJを退陣に追い込むことを企て、自らが本部や本店の幹部従業員であったり、あるいはグループ長として地域の多数の店舗を統括する立場にありながら、前記の企てに基づいて、同年七月二〇日以降数回にわたって、店長等多数の部下の従業員に対し、次のとおり、パック商品等利益率の低い商品の販売促進を指示する方法で売上を減少させることを指示し(パック商品とは、一定のレンズとメガネ枠を組み合わせたものを一単位の商品とし、個々の単価の合計額より廉価な価格を設定して販売し、顧客数の増加を図ることを目的とするものである。したがって、その粗利は低く、かつ、顧客一人当たりの売上単価も低いため、販売商品全体においてパック商品の占める割合は、一定率以下に押さえることが必要であり、その率を超えてパック商品に主力をおいた販売方法がとられることになると、必然的に総売上高の減少を来すことになる。)、その結果として、同月二一日以降においては、それ以前に比べて顕著に顧客一人当たりの売上単価が減少し、売上全体から見ても、他の要因では説明の困難なほどに顕著 然的に総売上高の減少を来すことになる。)、その結果として、同月二一日以降においては、それ以前に比べて顕著に顧客一人当たりの売上単価が減少し、売上全体から見ても、他の要因では説明の困難なほどに顕著な減少が見られた。 イ債権者Cは、昭和五九年七月二〇日、二二日及び二三日の三回にわたり、債務者会社本通店において、従業員多数に対して、債務者会社の売上を減少させるため、これからはパック商品を主力に販売するよう指示し、従業員らをしてこれに協力させた(処分理由20前段に相当する事実)。 ロ債権者Gは、同月二〇日から同年一〇月二九日までの間、前記数回にわたり、債務者会社本店ビル内の喫茶店に従業員を呼び出し、債務者会社の売上を減少させるため、パック商品を主力に販売するよう指示し、従業員らをしてこれに協力させた(処分理由20中段に相当する事実)。 ハ債権者A、同D、同Fは、同年七月二一日、債務者会社立町ビルにおいて、集合した従業員に対し、債務者会社の売上を減少させるため、パック商品を主力に販売するよう指示し、あるいはこれに同調し、従業員らをしてこれに協力させた(処分理由20後段に相当する事実)。 ニ債権者Hは、同月二八日、債務者会社岡山表町店において、同社岡山グループの店長らに対し、債務者会社の売上を減少させるため、パック商品を主力に販売するよう指示し、右店長らをしてこれに協力させた(処分理由21前段に相当する事実)。 ホ債権者Cは、同年八月八日、債務者技術開発センターにおいて、同社松山グループの店長ほか従業員約二〇名に対し、債務者会社の売上を減少させるため、パック商品を主力に販売するよう指示し、右店長らをしてこれに協力させた(処分理由21後段に相当する事実)。 ヘ債権者Eは、同年七月下旬頃及び同月五日の二回にわたり債務者会社福山船町店において め、パック商品を主力に販売するよう指示し、右店長らをしてこれに協力させた(処分理由21後段に相当する事実)。 ヘ債権者Eは、同年七月下旬頃及び同月五日の二回にわたり債務者会社福山船町店において、同社福山グループの従業員に対し、債務者会社の売上を減少させるため、パック商品を主力に販売するよう指示し、右従業員らをしてこれに協力させた(処分理由29に相当する事実)。 (三) 債権者Hは、岡山グループ長の地位にありながら、前記二の目的を達成するため、債務者会社の経費を不当に増大させることを企て、同年一〇月頃、部下の店長らに対して、商品の過剰仕入れをするように指示したほか、同年一二月頃、同じく部下の店長らに対して、各店舗の従業員に不必要な残業休日出勤をさせてその手当を持株会に積み立てさせるように指示したりした(処分理由24・25に相当する事実)。 (四) 債権者A、同B、同D、同C、同E、同F、同Hら幹部従業員は、同年九月一七日及び一八日の両日、Jが社長に復帰して債務者会社の従来の混乱した状況を打開するための経営管理の根本的改善のための基本計画として打ち出した「ニュータナカ・ビジョン」の説明会に業務として出席を命じられながら、説明会の進行を妨害し、従来どおりのJに対する批判的発言に終始した(処分理由23に相当する事実)。 (五) 債権者D、同C、同Gらは、同年一二月頃、債務者会社の資金繰りを悪化させてJ社長に打撃を与えるため、従業員に対して一斉に社内預金を引き下ろすように指示命令し、その結果、同年末のボーナス時期に社内預金総額約一億九〇〇〇万円の七割以上に当たる約一億四〇〇〇万円の解約が集中したため、債務者会社の資金繰りは、一時的に困難となり、金融機関から一億六〇〇〇万円の緊急融資を受けて、この解約預金の支払に当てなければならなかった(処分理 以上に当たる約一億四〇〇〇万円の解約が集中したため、債務者会社の資金繰りは、一時的に困難となり、金融機関から一億六〇〇〇万円の緊急融資を受けて、この解約預金の支払に当てなければならなかった(処分理由25に相当する事実)。 (六) 債権者Cは、昭和六〇年一月二七日に開催された債務者会社の祇園店ほか二店舗の合同新年会において、事前に出席予定の従業員に対して、病み上がりのP取締役に対して、過度の飲酒を強要するように指示し、従業員からの飲酒の強要を免れるために退席しようとしたPに対して、逃がさないように従業員に指示して、暴行を加えさせ、Pの首付近に軽い傷害を負わせた(処分理由27に相当する事実)。なお、債権者Cは、この暴行の責任を問われて、同年二月一六日から一〇日間の出勤停止の懲戒処分を受けているが、後日、このように事前に従業員に対して指示をしていたことが判明したため、本件懲戒処分の一事由とされたものである。 第六懲戒処分の当否についての当裁判所の判断一メガネのタナカチェーン就業規定二条は、その適用対象者として、「この規則で従業員とは、取締役及び顧問等を除き、第三章に定める手続きにより採用され継続して会社に勤務する者をいい、……」と規定しているが、この規定は、債権者A及び同Bのように、従業員としての地位を保有したまま取締役に就任していた者については、その取締役在任中にした行為であっても、従業員としての行為の性質をも併有するものというべきであるから、懲戒処分の対象とすることを妨げるものではないものと解される。 なお、債権者Bは、本件懲戒処分を受けた当時においては、債務者会社の従業員であったけれども、本件懲戒処分の対象とされた行為の当時は、田中商事の従業員の身分を保有したまま債務者会社の取締役の地位にあったものである。しかし、タナカグループ 当時においては、債務者会社の従業員であったけれども、本件懲戒処分の対象とされた行為の当時は、田中商事の従業員の身分を保有したまま債務者会社の取締役の地位にあったものである。しかし、タナカグループ三社の前記のような相互に関連する企業形態、従業員としての地位の相互通算性、就業規則の共通性に加え、同債権者が、当時、債務者会社の従業員の採用教育担当の責任者であったことを総合すると、懲戒事由の有無の判断に関しては、同債権者は、当該行為当時においても、債務者会社の従業員と同視されることを拒みえないものというべきである。 二そこで、前記の疎明事実に基づき、本件懲戒処分の有効性について検討する。 1 まず、昭和五八年二月の会社二分割問題の発覚以後、同年三月二一日にJが代表取締役社長を辞任するまでの間の債権者らの行為(前記第五の一に摘示した各行為)については、確かに、各時点における個々の行為をみれば、その態様において行き過ぎと評価されてもやむを得ないものもないわけではないが、これを全体としてみれば、債権者らが、従業員全体にとって極めて深刻な影響を及ぼすべき会社二分割問題が唐突に提起されたことを契機として顕在化したJ社長を中心とする会社経営に対する不信・不満を、殆んどの従業員の意を体して、I会長を始めとする親族経営陣に対して上申した行為と評価することが可能であり、また、そうであるからこそ、I会長ら親族経営陣も、最終的には債権者ら幹部従業員の要求を受け入れて、会社二分割案を撤回したものといえる。そして、J社長の退陣の直後の時点で、債権者ら幹部従業員がそれまでの行為につきその非礼に謝罪したのに対し、I会長は、債権者らの行為を親族経営陣に対する直言行為として評価し、これについて感謝の意を表したことは前記のとおりである。このI会長の見解及び行動について、Lが同 につきその非礼に謝罪したのに対し、I会長は、債権者らの行為を親族経営陣に対する直言行為として評価し、これについて感謝の意を表したことは前記のとおりである。このI会長の見解及び行動について、Lが同意していたことは明らかであるし、Jも、その内心においては不満であったとしても、客観的・外部的にはこれを受け入れていたものと評価せざるを得ないのである。 これらの事実関係によると、債権者らの前記各行為については、当時の債務者会社の実質的な経営の最高責任者(Jを含む。)が宥恕しているものというべきであり、しかも、当時の状況からみれば、これは、それなりの合理性を有する経営判断ということができる。 そうすると、当時、債権者らの要求に応じ、心ならずも退陣を余儀なくされたJが、その後に至って社長の職に復帰したからといって、一旦、相当な根拠に基づき宥恕された債権者らの行為につき、これを蒸し返し、改めて懲戒処分の対象とすることは許されないものというべきである。 2 次に、債権者A、同D、同Cが、組合との団体交渉の席上で、債務者会社側の出席者でありながら、J社長の指示に従わず、社長を補佐することを拒み、更には、根拠に乏しい組合側の未払残業手当等の請求を積極的に支持する発言をした等の行為(前記第五の二の3に摘示した行為)は、前記の宥恕の対象となった行為とは全く性質を異にする、企業体としての会社の財産状態を明らかに危うくする行為というべきである。団体交渉の席上においては、J社長に対する主観的な感情とは別の会社の正当な利益を擁護するという客観的見地に立って、社長の指示に従い、これを補佐し、組合の不当な請求に対しては適切に反論することが、会社側出席従業員として当然あるべき態度といわなければならない。この意味において、前記債権者らの行為は、就業規則四七条3号及び4号に 、これを補佐し、組合の不当な請求に対しては適切に反論することが、会社側出席従業員として当然あるべき態度といわなければならない。この意味において、前記債権者らの行為は、就業規則四七条3号及び4号に該当するものというべきである。 3 更に、債権者B及び同Cが、持株会の資金を集めるためと称して、所沢等の店長に対し、部下の従業員に必要以上の残業休日出勤をさせるよう指示して、これによって得た賃金の持株会への積立てを要求した行為(前記第五の三の5に摘示した行為)、債権者C、同G、同A、同D、同F、同H、同Eらが、債務者会社の利益を減少させることによってJ社長の会社経営に打撃を与え、同女を退陣に追い込むことを企図して、Jの社長復帰直後から、パック商品等利益率の低い商品の販売促進を指示し、現に債務者会社の売上を減少させた行為(前記第五の四の2の(二)イないしヘに摘示した各行為)、債権者Hが、会社の経費を増大させるために過剰仕入れを指示したり、不必要な残業休日出勤をさせたりした行為(前記第五の四の2の(三)に摘示した行為)及び債権者D、同C、同Gらが、従業員に対し、社内預金の一斉引き下ろしを指示し、債務者会社の資金繰りを一時的に困難にした行為(前記第五の四の2の(五)に摘示した行為)は、いずれも債務者会社の経営を客観的な意味で危うくする積極的な行為であるという点において、債務者会社に籍をおく従業員としての基本的な責務に違反する背任行為というほかなく、それぞれの行為が、就業規則四七条3号に該当するものといわざるを得ない。 4 また、そのほかの債権者らの前記行為のうち、少なくとも、Jの代表取締役復帰後における、本店新築披露パーティの式次第の説明拒否(前記第五の四の1の(一)、この行為は、就業規則四七条4号に該当する。以下、該当号数のみ摘示する。)に始まり、 ち、少なくとも、Jの代表取締役復帰後における、本店新築披露パーティの式次第の説明拒否(前記第五の四の1の(一)、この行為は、就業規則四七条4号に該当する。以下、該当号数のみ摘示する。)に始まり、新年会のボイコット(同(二)、4号該当)、経営会議における譲事の混乱(同(三)の前段、10、16号該当)、入社式への出席妨害(同(四)、4、5、16号該当)、本社ビル前の座り込み支援(同(六)、4、5号該当)、P会長秘書(後に取締役)、K常務、V監査役らに対する排斥活動(同(七)、同2の(六)、4、5、16号該当)、総務課員の出社妨害(同1の(七)、4号該当)、「ニュータナカ・ビジョン」説明会の進行妨害(同2の(四)、4、10号該当)などの諸行為については、前記の事実関係からみて、L社長の事前又は事後における明示的又は黙示的な承認ないし了解を得ていたことが推認されるものも含まれているが、このような事情を考慮に容れてもなお、会社の他の代表取締役ないしその他のしかるべき地位にある役員らに対する行動としては、常軌を逸しているものと評価されてもやむを得ない行為である。したがって、これらについても、就業規則四七条(該当号は前記のとおり)に該当するものというべきである。 5 債権者らは、以上の該当行為について、行為自体ないしその趣旨を否認しているが、これらの事実は、さきに摘示したとおり、前掲各証拠に含まれる他の複数の従業員の一致した、しかも具体的な内容の供述に照らして、優に疎明されているものと判断される。 そして、このような各該当行為、とりわけ、会社の経営自体を危うくする行為として指摘した前記2、3の各行為は、前記の前後の事実関係に照らして、債権者らが、事前に十分に意を通じた上で実行に及んだ計画的なものと判断されること、債権者らが前記のとおり、それぞれ 危うくする行為として指摘した前記2、3の各行為は、前記の前後の事実関係に照らして、債権者らが、事前に十分に意を通じた上で実行に及んだ計画的なものと判断されること、債権者らが前記のとおり、それぞれ、多数の部下を擁する本部、本店の幹部あるいは地域の多数の店舗を統括するグループ長等といった、いずれも極めて重要な職責を有する幹部従業員であり、しかも、これらの行為がその重要な職責を濫用して行われたということを考慮に入れると、これらは、極めて悪質なものといわなければならない。そして、前記4の各行為も、対外的に会社の信用を害すること甚だしく、あるいは、会社の秩序を著しく害する行為として、厳しい批判を受けて当然の行為である。 しかも、債権者らは、このような悪質な非違行為を行っているにもかかわらず、該当の各行為をしたこと自体あるいはその趣旨を否認し、債権者らの行為は債務者会社のためにしたものであってなんら責められるべき点はないなどと反論して、現在に至るまで、これらにつき一切反省の意を表することすらしてないことは、本件訴訟における債権者らの主張等から明らかである。 以上によると、その他の非違行為に関する事実関係の有無について判断するまでもなく、債権者らの債務者会社における地位の重要性の程度、前記各非違行為における関与の度合等を総合して、債権者A、同B、同D、同Cをそれぞれ懲戒解雇、同H、同F、同E、同Gをそれぞれ諭旨解雇とした本件懲戒処分は、前記就業規則の規定に照らし有効なものというべきである。 そして、前記の事実関係によれば、本件懲戒処分が単なる懲罰ないし報復のために行われたものということはできないし、また、債権者らが従前のポストを外され、これに伴い給与額が減少したとしても、それによって、本件懲戒処分の有効性が左右されるものともいえない。他の従業 報復のために行われたものということはできないし、また、債権者らが従前のポストを外され、これに伴い給与額が減少したとしても、それによって、本件懲戒処分の有効性が左右されるものともいえない。他の従業員の中には債権者らに同調し、類似の非違行為に及んだ者が相当数存在したことは疎明されるが、これらの者は、債権者らと異なり、自己の行為を真剣に反省し、遺憾の意を表明した上、職務に従事しているものと評価されたため、債権者らのような懲戒処分に至らなかったものであることが疎明されるから、同人らが債権者らと同様の懲戒処分を受けていないがゆえに、本件懲戒処分が、処分の均衡を欠いた不当なものとなるということはできない。 その他、本件懲戒処分をもって懲戒権の濫用とするだけの疎明はない。 第七結論そうすると、その余の点について判断するまでもなく、本件懲戒処分が無効であることを前提とする債権者らの本件仮処分申立ては、保全すべき権利の疎明がないことに帰するから、理由がないものというべきである。 よって、債権者らの申立てをいずれも却下することとして、主文のとおり判決する。 (裁判官田中壯太稻葉重子小林久起)別紙(二)省略別紙(一)懲戒処分理由目録<09758-001><09758-002><09758-003><09758-004><09758-005><09758-006><09758-007><09758-008><09758-009><09758-010>
▼ クリックして全文を表示