主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 控訴の趣旨(1)原判決を取り消す。 (2)処分行政庁(東京法務局長)が控訴人に対して平成19年4月19日付けでした戒告処分を取り消す。 (3)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 控訴の趣旨に対する答弁主文と同旨第2事案の概要 本件は,司法書士である控訴人が,東京法務局長により平成19年4月19日に司法書士法(ただし,平成14年法律第33号による改正前のもの)1条の2,10条,15条の6及び大阪司法書士会会則89条,108条に違反する行為(債務弁済合意書及び公正証書作成に関する法律相談)をしたことを理由に司法書士法47条1号に基づく戒告(以下「本件戒告」という)をされ。 た(以上につき,甲1,9)ことから,控訴人の上記行為は司法書士の行う業務の範囲に含まれる行為であって,本件戒告には司法書士法の解釈を誤った違法があるなどとして,その取消しを求める事案である。 原審は,本件戒告は行政事件訴訟法3条2項における処分の取消しの訴えの対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しないとして,本件戒告の処分性を否定し,本件訴えを却下した。 控訴人は,これに不服があるとして本件控訴を申し立てた。 第3争点に対する判断 当裁判所も,本件戒告は行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しないから,本件訴えは不適法であって却下すべきものと判断する。その理由は,次項以下の判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第3に記載のとおりであるから,これを引用する。 控訴人は,常識的に考えて,戒告の効果については,戒告によって自動的かつ確実 理由は,次項以下の判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第3に記載のとおりであるから,これを引用する。 控訴人は,常識的に考えて,戒告の効果については,戒告によって自動的かつ確実に行われる戒告の公告の効果も当然に含まれるものというべきであり,また,司法書士に対する戒告がされると,強力な情報媒体によって公告されることが法定されているので,戒告を受けたことを世間一般に広く言い回されてその社会的信用(名誉権)を大いに侵害されるから,戒告に処分性が肯定されることは当然である旨主張する。 しかしながら,司法書士に対する戒告がされると,被処分者の氏名や戒告の内容が公告され(司法書士法51条,さらには日本司法書士会連合会の定期)刊行物やホームページに公開される結果,被処分者の社会的信用が低下するおそれがあり,これをもって戒告の結果ということができるとしても,その効果は,あくまで事実上のものであって法律上のものとはいえず,戒告後も被処分者は司法書士の資格を持ちその業務を遂行できることに何ら変わりはないから,そのことから戒告に処分性を認めることはできず,控訴人の主張は採用することができない。 控訴人は,弁護士法が戒告についても抗告訴訟の対象とした趣旨は,戒告を含む懲戒処分が被処分者の身分にとって重大な影響を及ぼすがゆえに,被処分者が懲戒処分の当否を最終的に裁判所において争い得ることを認めたことにあるところ,この趣旨は,司法書士についてもそのまま妥当するものというべきであり,しかも,司法書士に対する懲戒処分は,行政庁である法務局長が行うものであるから,弁護士法のように特別な規定をまたずに,当然に抗告訴訟の対象になる旨主張する。 しかしながら,弁護士に対する戒告が取消訴訟で争うことができるのは,引用に係る原判決が判示するとおり,弁護 のであるから,弁護士法のように特別な規定をまたずに,当然に抗告訴訟の対象になる旨主張する。 しかしながら,弁護士に対する戒告が取消訴訟で争うことができるのは,引用に係る原判決が判示するとおり,弁護士法によって被処分者が戒告の取消を求めて訴えを提起することができること等が定められているからであり,弁護士と司法書士とで資格に基づき職務を遂行することや戒告及びその公告により社会的信用が低下するおそれがあること等において利害状況が類似している側面があるとしても,司法書士法においては,弁護士法と異なり,戒告について告知聴聞の手続は定められておらず,取消訴訟を提起し得る旨の定めもないこと等に照らすと,弁護士に対する戒告との対比において司法書士に対する戒告に処分性を認めることは困難である。また,司法書士に対する戒告が法務局長によってなされることから直ちに戒告に処分性を認めることはできないことはいうまでもない。 したがって,控訴人の主張は採用することができない。 控訴人は,司法書士法は,戒告について,聴聞等の手続を定めていないが,戒告は,前記のとおり被処分者の社会的信用(名誉権)を侵害するものとして「不利益処分(行政手続法2条4号)に当たることは明らかであり,行政手」続法13条1項2号に基づく弁明の機会の付与による意見陳述の手続が保障されていると解されるから,司法書士法が戒告につき弁明の機会の保障を明定していないことをもって,同法が戒告を抗告訴訟の対象としない趣旨をとっているものと解することはできない旨主張する。 しかしながら,司法書士に対する戒告は,被処分者に対し,その非行を確認させ,反省を求め,再び過ちのないように戒めるものであるから「義務を課,し,又はその権利を制限する処分(行政手続法2条4号)とはいえず,行政」手続法上の不利益処分に 処分者に対し,その非行を確認させ,反省を求め,再び過ちのないように戒めるものであるから「義務を課,し,又はその権利を制限する処分(行政手続法2条4号)とはいえず,行政」手続法上の不利益処分には該当しないものと解さざるを得ない。この点について,控訴人は,戒告に基づく公告により被処分者の社会的信用(名誉権)が侵害されるから,戒告は「権利を制限する処分」に当たる旨主張するけれども,仮に戒告に基づく公告によって被処分者が戒告を受けた事実が広く知れ渡ってその社会的信用が低下するおそれがあるとしても,それは,前記のとおり事実上の効果にすぎず,法律上,被処分者の司法書士としての資格,それに基づく業務の遂行には何らの影響もないから,戒告をもって「権利を制限する処分」ということはできない。 したがって,司法書士に対する戒告については,行政手続法の弁明の機会の付与に関する規定が適用されると解することは困難であり,司法書士法が上記の規定の適用があることを前提にして弁明の手続を規定しなかったものとは認められないから,控訴人の上記主張は採用することができない。 よって,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部裁判長裁判官宗宮英俊裁判官坂井満裁判官黒津英明
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