平成26(ワ)65 差止請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年2月27日 東京地方裁判所
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平成27年2月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ワ)第65号差止請求事件口頭弁論終結日平成26年12月22日判決東京都渋谷区<以下略>原告株式会社コアアプリ同補佐人弁理士古志達也東京都新宿区<以下略>被告 KDDI株式会社同訴訟代理人弁護士一同渡辺 光同高石秀樹同補佐人弁理士鈴木信彦 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は「REGZAPhoneIS04」を生産,譲渡,輸入,輸出し,又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,その占有に係る前記記載の製品,及び,前記記載の製品に搭載されたソフトウェアのソースコードとバイナリイメージを廃棄せよ。また被告は,前記記載の製品に搭載されたソフトウェアのソースコードとバイナリイメージの製造設備を除却せよ。 3 被告は,原告に対し,252万円及びこれに対する平成23年10月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,名称を「入力支援コンピュータプログラム,入力支援コンピュータシステム」とする発明についての特許権(特許第4611388号。以下「本件特許権」といい,同特許権に係る特許を「本件特許」という。)を有する原告が,被告に対し,被告の販売に係るスマートフォン「REGZAPhon る発明についての特許権(特許第4611388号。以下「本件特許権」といい,同特許権に係る特許を「本件特許」という。)を有する原告が,被告に対し,被告の販売に係るスマートフォン「REGZAPhoneIS04」(以下「被告製品」という。)にインストールされている「ホーム」と呼ばれるソフトウェア(以下「本件ホームアプリ」という。)は本件特許の特許請求の範囲の請求項1,3記載の各発明(以下,それぞれ「本件発明1」,「本件発明3」という。)の技術的範囲に属し,本件ホームアプリがインストールされた被告製品は本件特許の特許請求の範囲の請求項4,5記載の各発明(以下,それぞれ「本件発明4」,「本件発明5」といい,本件発明1,3,4,5を併せて「本件発明」という。)の技術的範囲に属すると主張して(ただし,原告は,本件発明4,5のうち,本件特許の特許請求の範囲の請求項1,3の記載を引用する各態様を専ら問題にしており,被告製品が本件発明4,5のうち,本件特許の特許請求の範囲の請求項2の記載を引用する態様の技術的範囲に属する旨の主張はしていない。),特許法100条1項に基づき,被告製品の生産,譲渡,輸入,輸出及び譲渡の申出の差止め,被告製品及び本件ホームアプリのソースコードとバイナリイメージの廃棄,本件ホームアプリのソースコードとバイナリイメージの製造設備の除却を求めるとともに,特許権侵害の不法行為による損害賠償金の一部である252万円(特許法102条3項に基づく損害額5億0400万円〔平成23年2月12日から平成26年1月2日〔訴状の日付〕までの被告製品の売上額126億円に相当実施料率4パーセントを乗じた額〕の一部)及びこれに対する平成23年10月12日(同月7日付け通知書〔甲4の1〕が被告に到達した日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合 売上額126億円に相当実施料率4パーセントを乗じた額〕の一部)及びこれに対する平成23年10月12日(同月7日付け通知書〔甲4の1〕が被告に到達した日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である(なお,原告が,同日より後の被告製品 の販売につき,同日からの遅延損害金の支払を求めることができるとする理由は明らかでない。)。 2 前提となる事実(末尾に証拠等を付した以外の事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,ソフトウェア開発を業とする法人である。 イ被告は,移動通信及び固定通信を業とする法人である。 (2) 本件特許権原告の保有に係る本件特許権の内容等は,以下のとおりであり,本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,本判決末尾添付の本件特許に係る特許公報の写し(甲2)の【特許請求の範囲】欄記載のとおりである。 ア発明の名称入力支援コンピュータプログラム,入力支援コンピュータシステムイ出願番号特願2007-547822ウ出願日平成17年11月30日エ登録日平成22年10月22日オ特許番号特許第4611388号(3) 本件発明1本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである。 [A1]情報を記憶する記憶手段と,情報を処理する処理手段と,利用者に情報を表示する出力手段と,利用者からの命令を受け付ける入力手段とを備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムであって,[A2]利用者が前記入力手段を使用してデータ入力を行う際に実行される入力支援コンピュータプログラムであり,[B]前記記憶手段は,ポインタの座標位置によって実行される命令結果を利用者が理解できる ように前記出力手段に表示 タ入力を行う際に実行される入力支援コンピュータプログラムであり,[B]前記記憶手段は,ポインタの座標位置によって実行される命令結果を利用者が理解できる ように前記出力手段に表示するための画像データである操作メニュー情報と,当該操作メニュー情報にポインタが指定された場合に実行される命令と,を関連付けた操作情報を1以上記憶し,当該操作情報は,前記記憶手段に記憶されているデータの状態を表す情報であるデータ状態情報に関連付けて前記記憶手段に記憶されており,[C1]前記処理手段に,[D](1)前記入力手段を介して,前記入力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことによる開始動作命令を受信した後から,利用者によって当該押されていた命令ボタンが離されたことによる終了動作命令を受信するまでにおいて,以下の(2)及び(3)を行うこと,[E](2)前記入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると,当該受信した際の前記記憶手段に記憶されているデータの状態を特定し,当該特定したデータ状態を表すデータ状態情報に関連付いている前記操作情報を特定し,当該特定した操作情報における操作メニュー情報を,前記記憶手段から読み出して前記出力手段に表示すること,[F](3)前記入力手段を介して,当該出力手段に表示した操作メニュー情報がポインタにより指定されると,当該ポインタにより指定された操作メニュー情報に関連付いている命令を,前記記憶手段から読み出して実行し,当該出力手段に表示した操作メニュー情報がポインタにより指定されなくなるまで当該実行を継続すること,当該命令の実行により変化した前記記憶手段に記憶されているデータの状態を特定し,当該特定したデータ状態を表すデータ状態情報に関連付いている前記操作情報を特 なくなるまで当該実行を継続すること,当該命令の実行により変化した前記記憶手段に記憶されているデータの状態を特定し,当該特定したデータ状態を表すデータ状態情報に関連付いている前記操作情報を特定し,当該特定した操作情報における前記操作メニュー情報を,前記記憶手段から読み出して前記出力手段に表示すること,[C2]を実行させることを特徴とする入力支援コンピュータプログラム。 (4) 本件発明3 本件発明3を構成要件に分説すると,本件発明の構成要件A1~F,C2に,次のGを加えたものとなる。 [G](4)前記入力手段を介して,前記開始動作命令の受信に対応する,前記命令ボタンが利用者によって離されたことによる終了動作命令を受信すると,前記出力手段へ表示している前記メニュー情報の表示を終了すること,(5) 本件発明4本件発明4を構成要件に分説すると,次のHとなる。 [H]情報を記憶する記憶手段と,情報を処理する処理手段と,利用者に情報を表示する出力手段と,利用者からの命令を受け付ける入力手段とを備えたコンピュータシステムであって,前記記憶手段が,請求項1乃至3のいずれか1記載の入力支援コンピュータプログラムを記憶し,前記処理手段が前記各処理を行うことを特徴とする入力支援システム。 (6) 本件発明5本件発明5を構成要件に分説すると,次のIとなる。 [I]前記命令ボタンを備えた入力手段は,1のポインティングデバイスであること,を特徴とする請求項4記載の入力支援システム。 (7) 被告は,平成23年2月10日から被告製品を販売している。 被告製品には,本件ホームアプリがインストールされている。 (8) 本件ホームアプリの構成本件ホームアプリは,以下の構成を有している(甲3,甲17の1・2,乙 被告製品を販売している。 被告製品には,本件ホームアプリがインストールされている。 (8) 本件ホームアプリの構成本件ホームアプリは,以下の構成を有している(甲3,甲17の1・2,乙3,弁論の全趣旨)。 [a1]情報を記憶するRAM等の記憶手段と,情報を処理するCPU等の処理手段と,利用者に情報を表示する液晶パネルと,利用者からの命令を受け付けるタッチパネルとを備えた携帯電話機におけるコンピュータプログラムであって, [a2]利用者がタッチパネルを使用してホーム画面のショートカットアイコンの並べ替えを行う際に実行される,ホーム画面をカスタマイズするコンピュータプログラムであり,[b]前記記憶手段は,ホーム画面の右端に表示される縦長の長方形の画像(以下「右スクロールメニュー表示」という。)と,当該「右スクロールメニュー表示」にタッチパネル上の指の座標位置が指定された場合に実行される,ページを右にスクロールする命令と,を関連付けた操作情報を1以上記憶し,当該操作情報は,前記記憶手段に記憶されているページ番号の情報に関連付けて(すなわち,右スクロールが不可能な右端ページが表示されている時には「右スクロールメニュー表示」は表示されず,右スクロールが可能な右端でないページが表示されている時には「右スクロールメニュー表示」が表示されるように)前記記憶手段に記憶されており,[c1]前記処理手段に,[d](1)タッチパネルを介して,タッチパネル上のショートカットアイコンを指で長押し(ロングタッチ)した後から,利用者によってタッチパネル上のショートカットアイコンから指が離されるまでにおいて,以下の(2)及び(3)を行うこと,[e](2)タッチパネルを介して,タッチパネル上のショートカットアイコン ,利用者によってタッチパネル上のショートカットアイコンから指が離されるまでにおいて,以下の(2)及び(3)を行うこと,[e](2)タッチパネルを介して,タッチパネル上のショートカットアイコンを指で長押し(ロングタッチ)すると,当該長押しした際の前記記憶手段に記憶されているページ番号を特定し,当該ページ番号に関連付いている「右スクロールメニュー表示」の要否を特定し,当該ページが右端ページでなかった場合,「右スクロールメニュー表示」を,前記記憶手段から読み出して液晶パネルに表示すること,[f](3)タッチパネルを介して,当該液晶パネルに表示した「右スク ロールメニュー表示」上にタッチパネル上の指の位置が指定されると,「右スクロールメニュー表示」に関連付いている,ページを右にスクロールする命令を,前記記憶手段から読み出して実行し,指の位置が「右スクロールメニュー表示」上になくなるまで当該実行を継続すること,当該命令の実行により変化したページ番号を特定し,当該ページ番号に関連付いている「右スクロールメニュー表示」の要否を特定し,当該ページが右端ページでなかった場合,「右スクロールメニュー表示」を,前記記憶手段から読み出して液晶パネルに表示すること,[g](4)タッチパネルを介して,タッチパネル上のショートカットアイコンから指が離されると,液晶パネルへ表示している「右スクロールメニュー表示」を終了すること,[c2]を実行させることを特徴とする,ホーム画面をカスタマイズするコンピュータプログラム。 (9) 被告製品の構成本件ホームアプリがインストールされた被告製品は,以下のような構成を有している(甲3,甲17の1・2,乙3,弁論の全趣旨)。 [h]情報を記憶するRAM等の記憶手段と,情報を処理するCPU等の 本件ホームアプリがインストールされた被告製品は,以下のような構成を有している(甲3,甲17の1・2,乙3,弁論の全趣旨)。 [h]情報を記憶するRAM等の記憶手段と,情報を処理するCPU等の処理手段と,利用者に情報を表示する液晶パネルと,利用者からの命令を受け付けるタッチパネルとを備えた携帯電話機であって,前記記憶手段が,a1~g,c2の構成を備えたコンピュータプログラム(本件ホームアプリ)を記憶し,前記処理手段が前記各処理を行うことを特徴とする携帯電話機。 [i]前記タッチパネルは,1のタッチパネルであること,を特徴とする携帯電話機。 3 争点(1) 本件ホームアプリは「データ入力を行う際に実行される入力支援コン ピュータプログラム」(構成要件A2,C2)であるか(争点1)(2) 本件ホームアプリは「ポインタ」(構成要件B,E,F)を用いるものであるか(争点2)(3) 本件ホームアプリは「操作メニュー情報」(構成要件B,F)を記憶する記憶手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか(争点3)(4) 本件ホームアプリは「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると……操作メニュー情報を……表示する」(構成要件E)出力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか(争点4)(5) 本件ホームアプリは「命令ボタン」(構成要件D)を有する入力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか(争点5)(6) 本件ホームアプリは本件発明1,3の争点1~5に係る構成以外の構成要件を充足するか,被告製品は構成要件H,Iを充足するか(争点6)(7) 本件発明は,乙13発明から新規性を有するか(争点7)(8) 差止め等の必要性(争点8) 点1~5に係る構成以外の構成要件を充足するか,被告製品は構成要件H,Iを充足するか(争点6)(7) 本件発明は,乙13発明から新規性を有するか(争点7)(8) 差止め等の必要性(争点8)(9) 損害額(争点9)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件ホームアプリは「データ入力を行う際に実行される入力支援コンピュータプログラム」(構成要件A2,C2)であるか)について(原告の主張)構成要件A2,C2にいう「データ」とは,「何かを文字や符号,数値などのまとまりとして表現したもの」であり(甲14),被告のいう「編集対象データ」に限定されるものではない。 本件ホームアプリは,ショートカットアイコンを移動させる機能を有し, 「座標の入力」という「データ入力」を行うプログラムである。 仮に「データ」を「編集対象データ」に限定したとしても,本件ホームアプリは「ショートカットアイコンを並び替える/削除する」機能を有しており,アイコンの配置は「編集対象データ」であるから,本件ホームアプリは「データ入力」を行うプログラムである。 (被告の主張)本件発明は,「利用者が……データ入力」を行う際に,当該データ入力を「支援」するコンピュータプログラムである。したがって,本件発明の「データ」は,利用者が入力するデータであり,その入力が「支援」される対象である。そうであるところ,本件発明において「入力支援コンピュータプログラム」により利用者がコンピュータに入力する対象は,利用者にとって意味のある文章等の編集対象情報であって,画面上の位置を示す「座標」ではない。そもそも,「座標」は,利用者が「データ入力」する対象ですらない。 また,本件ホームアプリは,ホーム画面(ホームスクリーン)をカスタマイズするプロ あって,画面上の位置を示す「座標」ではない。そもそも,「座標」は,利用者が「データ入力」する対象ですらない。 また,本件ホームアプリは,ホーム画面(ホームスクリーン)をカスタマイズするプログラムであって,画面上の指でタッチした位置である「座標」を入力するプログラムでなく,「座標」の入力を「支援」するプログラムでもない(これを支援しているプログラムは,本件ホームアプリでなく,タッチパネルの入力デバイスが有するプログラムである。)。 したがって,本件ホームアプリは「データ入力を行う際に実行される入力支援コンピュータプログラム」(構成要件A2,C2)ではない。 2 争点2(本件ホームアプリは「ポインタ」(構成要件B,E,F)を用いるものであるか)について(原告の主張)(1) 本件発明にいう「ポインタ」とは「画面上の位置情報を提供するもの」(甲18)であり,画面上に表示される必要はない。 本件ホームアプリにおいては,タッチパネル上の指の座標位置が「ポインタの座標位置」に当たる。 (2) 仮に画面上に表示される「カーソル」が必要であるとしても,本件ホームアプリにおいて指の動きに追従するアイコンは「カーソル」であるといえる。 (3) 仮に「ポインタ」の解釈が被告の主張するとおりだとしても,「ポインタ」が画面上表示されることは本件発明の本質的部分ではなく(第1要件),「マウスとカーソルの組合せ」と同一の作用効果を「タッチパネルと指の組合せ」が有しており(第2要件),その置換は容易に想到できた(第3要件)から,均等が成立する。 (被告の主張)(1) 本件特許に係る特許請求の範囲,明細書及び図面(以下,併せて「本件明細書」という。)の各記載を参照して解釈すれば,本件発明にいう「ポインタ」は,①出力手段である 立する。 (被告の主張)(1) 本件特許に係る特許請求の範囲,明細書及び図面(以下,併せて「本件明細書」という。)の各記載を参照して解釈すれば,本件発明にいう「ポインタ」は,①出力手段である画面上に表示され,②何かの位置を指し示すものであり,③その位置を「入力手段を介して……移動させる」ものを意味する。 本件ホームアプリは,そのような「ポインタ」を用いていない。 (2) 何秒か押し続けるまでは指の動きに追従しないアイコンは「ポインタ」(カーソル)とは解釈できない。 (3) 「簡易かつ便利な入力の手段を提供」するために,「画像データである操作メニュー情報をポインタで指定する」前提として「ポインタ」が視覚的に表示されていることは,本件発明の課題解決に不可欠であり,均等の第1要件を満たさない。 「入力手段」として「マウス」と「タッチパネル」とが対応するならば,仮に原告の均等論において主張する置換を何か観念するとしても,「ポインタ」(カーソル)を「指」に置換するという論理になるが,ユーザの「指」は被告製品の一部ではないので,均等論は成立しない。 3 争点3(本件ホームアプリは「操作メニュー情報」(構成要件B,F)を記憶する記憶手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか)について(原告の主張)本件発明にいう「操作メニュー情報」は,「ポインタの座標位置によって実行される命令結果を利用者が理解できるように前記出力手段に表示するための画像データ」であり(構成要件B),「利用者が……命令を理解できることを目的や目標として構成されている画像データ」を意味する。 本件ホームアプリを実行した際にホーム画面の左右の隙間に表示される画像は,隣のホーム画面を表すアイコンであり,実行される(スクロー ことを目的や目標として構成されている画像データ」を意味する。 本件ホームアプリを実行した際にホーム画面の左右の隙間に表示される画像は,隣のホーム画面を表すアイコンであり,実行される(スクロール)命令の内容や対象(隣のホーム画面)を小さな絵で表現した画像データである。これは,「隣のホーム画面にスクロールするという命令を利用者が理解できる」ように,「スクロール命令の実行後に表示される画面・対象を小さな絵で表現した画像データ」を,「ホーム画面の左右に表示している」ものであるから,「実行される命令結果を利用者が理解できるように前記出力手段に表示する画像データ」であり,「操作メニュー情報」である。 (被告の主張)本件ホームアプリを実行した際にホーム画面の左右両端部に表示される縦長の長方形である隙間は,「どのような命令が実行されるのかを表す文字を含んだ画像データ」や「実行される命令の内容や対象を小さな絵や記号で表現した画像データ」の表示が全くなく,隣のホーム画面にスクロールするという命令を利用者が理解できるように表示されていないから,本件発明の「操作メニュー情報」に相当しない。 4 争点4(本件ホームアプリは「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると……操作メニュー情報を……表示する」(構成要件E)出力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか)に ついて(原告の主張)(1) 「ポインタの位置を移動する」と,「ポインタの位置を移動させる」は,日本語としても別の意味を有している。 「ポインタの位置を移動する」であれば,「ドラッグ操作」が該当する。 これに対し,「ポインタの位置を移動させる」の「させる」とは,使役の意味の助動詞であり,「ある行為をするように仕向ける」と 「ポインタの位置を移動する」であれば,「ドラッグ操作」が該当する。 これに対し,「ポインタの位置を移動させる」の「させる」とは,使役の意味の助動詞であり,「ある行為をするように仕向ける」という意味である(甲27)。したがって,「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの位置を移動するように仕向ける命令」,「ポインタの位置を移動させる状態に切り替える命令」という意味である。 本件ホームアプリにおいては,画面上への指のタッチが「入力手段を介して,入力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことによる開始動作命令を受信した」(構成要件D)に該当し,そのまま指を動かさずにタッチし続けること(ロングタッチ)が,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」(構成要件E)に該当する。 (2) 被告の主張する「ポインタの位置が移動した(ことにより発せられる)命令」と解釈しても,ロングタッチしたアイコンは,指が動いていなくても,アイコンがやや下方に移動してからぶるぶる揺れるのであり,ロングタッチしたアイコンは「カーソル」であり,その移動は「ポインタの座標位置の移動」であるから,構成要件Eを満たす。 (3) 携帯式電話も含めて,現代のコンピュータ(ノイマン型コンピュータ)の出力手段は,記憶手段のデータを出力するものである(甲30)。被告製品の出力手段である液晶画面に表示されている以上,そのような画像を構成するための画像データが,記憶手段に保存されていることは疑いようがない。 (被告の主張) (1) 「ポインタの位置を移動させる命令」とは,これがコンピュータプログラムの命令である以上,その「命令」を実行することにより「ポインタの位置を移動させる」と理解する他なく,これを「ポインタの座標位置を移動 ポインタの位置を移動させる命令」とは,これがコンピュータプログラムの命令である以上,その「命令」を実行することにより「ポインタの位置を移動させる」と理解する他なく,これを「ポインタの座標位置を移動させる状態に切り替える命令」と解釈する理由は存在しない。 本件ホームアプリにおいて,利用者が「ロングタッチ」を行っても,ポインタの座標位置は全く移動しないし,「ドラッグ操作」も開始されない。利用者が「ロングタッチ」を行った後,指をタッチパネルに接触したままの状態で上下左右にスライドしたときに初めて,「ポインタの座標位置を移動」する操作である「ドラッグ操作」が開始されるのである。 (2) 原告は,アイコンの一つにロングタッチすると,アイコンがぶるぶる揺れるので,指を動かさなくてもアイコンが移動していると主張する。しかしながら,原告の主張は,タッチパネルにおける接触位置検出の際に不可避的に生じる検出誤差を「移動」と称するものにすぎず,全く理由がない。 (3) 本件ホームアプリを実行した際にホーム画面の左右両端部に表示される縦長の長方形である隙間の画像は,「『隣のホーム画面』のアイコンの配列を縮小し,上下方向にグラデーション処理を施した薄紫色の長方形を合成した画像」である。そのような合成画像は,被告製品の記憶手段に保存されていない。 したがって,本件ホームアプリは,ホーム画面の左右両端部に表示される縦長の長方形である隙間を「記憶手段から読み出して表示する」という構成を充足しない。 5 争点5(本件ホームアプリは「命令ボタン」(構成要件D)を有する入力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか)について(原告の主張)被告製品において,構成要件Dの「命令ボタン」として押されるのは,「タッチパネル(入力手段 る入力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか)について(原告の主張)被告製品において,構成要件Dの「命令ボタン」として押されるのは,「タッチパネル(入力手段)」である。この「タッチパネル」を押した時に 発せられる電気信号が,構成要件Dの「命令ボタンが利用者によって押されたことによる動作開始命令」である。 したがって,本件ホームアプリは,構成要件Dの「命令ボタン」を有する入力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムである。 (被告の主張)構成要件Dには,「前記入力手段における命令ボタン…」と規定されているところ,構成要件A1は,「利用者からの命令を受け付ける入力手段とを備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラム」と規定しているから,本件発明において,「入力手段」は構成要件であり,「命令ボタン」も構成要件である。 本件発明において,「命令ボタン」は「ポインタ」と別個の構成要素であり,それが画面上に表示されるボタンであるとしても,少なくとも「ポインタ」と別個に用意されたものである。 本件ホームアプリは,そのような「命令ボタン」を有しないコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムである。 原告は,「タッチパネルを押した時に発せられる電気信号が,『命令ボタンが利用者によって押されたことによる動作開始命令』である」と主張するが,そうすると「タッチパネル」が本件発明の「命令ボタン」となるが,「入力手段を介したポインタの位置を移動させる命令」も「タッチパネル」をタッチすることで命令するものであり,さらに根本的には「入力手段」も「タッチパネル」であるから,原告のあてはめは破綻している。 6 争点6(本件ホームアプリは本件発明1, 命令」も「タッチパネル」をタッチすることで命令するものであり,さらに根本的には「入力手段」も「タッチパネル」であるから,原告のあてはめは破綻している。 6 争点6(本件ホームアプリは本件発明1,3の争点1~5に係る構成以外の構成要件を充足するか,被告製品は構成要件H,Iを充足するか)について(原告の主張)(1) 本件ホームアプリは,本件発明1,3の他の構成要件を充足し,本件発 明1,3の技術的範囲に属する。 (2) 本件ホームアプリをインストールした被告製品は,本件発明4,5の構成要件H,Iを充足し,本件発明4,5の技術的範囲に属する。 (被告の主張)(1) 本件ホームアプリは,前記のとおり,少なくとも,構成要件A2,B,C1,C2,D,E,Fを充足しない。 (2) 上記(1)のとおりである(前記第2の1のとおり,原告は,本件発明4,5のうち,本件特許の特許請求の範囲の請求項1,3の記載を引用する各態様を専ら問題としており,被告製品が本件発明4,5のうち,本件特許の特許請求の範囲の請求項2の記載を引用する態様の技術的範囲に属する旨の主張はしていない。)から,本件ホームアプリをインストールした被告製品は,構成要件H,Iを充足しない。 7 争点7(本件発明は,乙13発明から新規性を有するか)について(被告の主張)本件発明は,いずれも本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平9-152856号公報(乙13)に記載された発明(以下「乙13発明」という。)と同一であり,新規性を有しないから,これらの発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものであって,特許法104条の3第1項に基づき,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することはできない。 (原告の主張)乙13には,その段落【00 許は特許無効審判により無効とされるべきものであって,特許法104条の3第1項に基づき,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することはできない。 (原告の主張)乙13には,その段落【0014】~【0030】の「第1の実施の形態」で説明される発明(以下「第1類型の発明」という。)と,段落【0031】~【0048】の「第2の実施の形態」で説明される発明(以下「第2類型の発明」という。)という2つの異なる発明が記載されており,被告の主張は両者を組み合わせたものであるから,新規性を争う主張ではなく,進 歩性の主張である。 「第1類型の発明」及び「第2類型の発明」は,いずれも,本件発明1,3の構成要件A1,A2,B,C2,E,Fに相当する構成を有しておらず,両発明を組み合わせても同様である。さらに,「第2類型の発明」は,構成要件Dも有さない。 乙13発明は,本件発明と技術分野の関連性がないこと等から,引用発明としての適格性がない。 8 争点8(差止め等の必要性)について(原告の主張)争点1ないし7で主張したところによれば,被告製品の生産等は本件特許権の侵害を構成するから,原告は,被告に対し,特許法100条1項に基づき,被告製品の生産,譲渡,輸入,輸出及び譲渡の申出の差止めを求めることができ,また,同条2項に基づき,被告製品及び被告製品に搭載されたソフトウェア(本件ホームアプリ)のソースコード(人間が理解できるように記述されているプログラム)とバイナリイメージ(CPUが理解できるように変換したコンピュータプログラム)の廃棄,並びに,同ソフトウェアのソースコードとバイナリイメージの製造設備の除却を求めることができる。 (被告の主張)争う。 9 争点9(損害額)について(原告の主張)被告製品の販売 )の廃棄,並びに,同ソフトウェアのソースコードとバイナリイメージの製造設備の除却を求めることができる。 (被告の主張)争う。 9 争点9(損害額)について(原告の主張)被告製品の販売価格は6万3000円であるところ,平成23年2月12日から平成26年1月2日〔訴状の日付〕までの被告製品の販売台数は20万台を超えるから,売上金額は126億円を超える。この金額に相当実施料率4パーセントを乗じた5億0400万円が,原告が被告から本件発明の実施に対して受けるべき金銭の額(特許法102条3項)である。 したがって,原告は,被告に対し,民法709条,特許法102条3項に基づき,上記損害額の一部である252万円及びこれに対する平成23年10月12日(同月7日付け通知書〔甲4の1〕が被告に到達した日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (被告の主張)争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点4(本件ホームアプリは「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると……操作メニュー情報を……表示する」(構成要件E)出力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか)について(1) 事案の内容に鑑み,争点4について先に判断する。 構成要件Eは,以下のとおりである。 [E]前記入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると,当該受信した際の前記記憶手段に記憶されているデータの状態を特定し,当該特定したデータ状態を表すデータ状態情報に関連付いている前記操作情報を特定し,当該特定した操作情報における操作メニュー情報を,前記記憶手段から読み出して前記出力手段に表示すること,(2) 甲32の1・2によれば,本件ホームアプリにおいて 連付いている前記操作情報を特定し,当該特定した操作情報における操作メニュー情報を,前記記憶手段から読み出して前記出力手段に表示すること,(2) 甲32の1・2によれば,本件ホームアプリにおいて,タッチパネル上のショートカットアイコンを指で長押し(ロングタッチ)すると,ショートカットアイコンは長押し前の状態からやや下に移動し,ぶるぶる振動する状態(以下「振動状態」という。)に遷移し,振動状態になれば,ショートカットアイコンのドラッグ操作を行わなくても,画面右端に右スクロールメニューが表示されることが認められる。 そこで,ショートカットアイコンのドラッグ操作ではなく,ショート カットアイコンのロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるかが問題となる。 (3) 「ポインタの位置」を「タッチパネル上の指の座標位置」とした場合本件ホームアプリが「ポインタ」(構成要件B,E,F)を用いるものであるかについては争いがあるが(争点2),仮に,原告の主張するとおり,本件ホームアプリを実行した際における「タッチパネル上の指の座標位置」が「ポインタの位置」に当たるとした場合には,ショートカットアイコンのロングタッチは,「タッチパネル上の指の座標位置」を移動させなくても可能な操作であるから(甲17の2),ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるということはできない。 この場合,原告の主張するとおり,「移動させる」を「移動可能な状態に切り替える」という意味に解釈したとしても,「タッチパネル上の指の座標位置」は,ショートカットアイコンが振動状態であると否とにかかわらず常にタッチパネル上で移動可能であるから(振動状態でなければショートカットアイコンが追従しないだけである。),ロングタッチが「ポインタの 」は,ショートカットアイコンが振動状態であると否とにかかわらず常にタッチパネル上で移動可能であるから(振動状態でなければショートカットアイコンが追従しないだけである。),ロングタッチが「ポインタの位置(=タッチパネル上の指の位置)を移動可能な状態に切り替える命令」であるとはいえない。 また,振動状態においてショートカットアイコンが振動し,また元々の位置よりもやや下の位置に移動するとしても,ショートカットアイコンは「ポインタ」に当たらず,「ポインタ」である指の位置は変化しないのであるから,ショートカットアイコンの移動は「ポインタの位置」の移動とは関係がない。 したがって,「ポインタの位置」を「タッチパネル上の指の座標位置」と解する限り,「移動させる」の意義をどのように解釈するかにかかわらず,ロングタッチが「ポインタの位置(=タッチパネル上の指の座標位置)を移動させる命令」に当たるということはできない。 (4) 「ポインタの位置」を「指の動きに追従するショートカットアイコン画像の座標位置」とした場合「ポインタ」は画面上に表示されることを要すると解釈した場合,原告は,「指の動きに追従するショートカットアイコン画像」が「ポインタ」(カーソル)に相当すると主張している(原告準備書面(1)12頁,原告準備書面(2)39頁,原告準備書面(4)15頁)。 このように解釈した場合には,上記のとおり,右スクロールメニューはショートカットアイコンがロングタッチにより振動状態になれば表示されるのであり,この段階ではショートカットアイコンはいまだ「指の動きに追従」していないのであるから,画面上に「ポインタ(=指の動きに追従するショートカットアイコン画像)」は存在せず,ロングタッチが「ポインタ(=指の動きに追従するショート アイコンはいまだ「指の動きに追従」していないのであるから,画面上に「ポインタ(=指の動きに追従するショートカットアイコン画像)」は存在せず,ロングタッチが「ポインタ(=指の動きに追従するショートカットアイコン画像)の位置を移動させる命令」に当たるということはできない。 (5) 「ポインタの位置」を「振動状態のショートカットアイコンの座標位置」とした場合「ポインタ」の解釈に関する原告のいずれの主張とも異なり,「ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン」をもって「ポインタ」(カーソル)とした場合についても,念のため検討する。 なお,単なるショートカットアイコン,振動状態のショートカットアイコンをもって「ポインタ」とすることは,ショートカットアイコン及び振動状態のショートカットアイコンは画面中に複数存在するから,「ポインタ」が複数存在することになり,このような解釈を採り得ないことは明らかである。 「ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン」は,ロングタッチ操作によって①「移動(ドラッグ操作)可能な状態」になり,また②元々の位置よりもやや下に移動し,③アイコン画像が小刻みに振動している ので,それぞれこの点をとらえてロングタッチが「移動させる命令」といえるか,順次検討する。 ア振動状態のショートカットアイコンが移動可能な状態になることについて甲3,甲17の1,甲32の1・2及び弁論の全趣旨によれば,本件ホームアプリにおいて,振動状態でないショートカットアイコンにドラッグ操作を行っても指の動きに追従して移動することはないが,振動状態のショートカットアイコンにドラッグ操作を行うと,指の動きに追従して移動することが認められる。 そうすると,ロングタッチは,「ポインタ(=ロングタッチ中 に追従して移動することはないが,振動状態のショートカットアイコンにドラッグ操作を行うと,指の動きに追従して移動することが認められる。 そうすると,ロングタッチは,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命令」とみることができる。 原告は,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味であるから,「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの座標位置を移動させる状態に切り替える命令」という意味であると主張する。 しかし,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味であるから(甲27),「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの位置を移動するよう仕向ける命令」すなわち「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」を意味することは一義的に明確であって,これを「ポインタの位置を移動可能な状態に切り替える命令」であると解釈する余地はない。「ある行為をするように仕向ける」ことと,「ある行為が可能な状態に切り替える」こととが異なることは明らかであるから,「させる」に前者の意味があるとしても,後者の意味があることにはならない。原告の主張は失当である。 本件明細書の段落【0052】~【0101】の実施例の説明を見ても,構成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命令」に対応するものと しては,「例えば,マウスにおける左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動させること(ドラッグ操作)や,キーボードにおける特定のキーを押しつつマウスを移動させる行為,等が該当する。」(段落【0079】)とされ,「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」をもって「ポインタの位置を移動させる命令」としているのであって,「ポインタの位置を移動可能な 動させる行為,等が該当する。」(段落【0079】)とされ,「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」をもって「ポインタの位置を移動させる命令」としているのであって,「ポインタの位置を移動可能な状態に切り替える命令」をもって「ポインタの位置を移動させる命令」とすることについては何らの記載も示唆もない。このような本件明細書の記載を参酌すれば,「ポインタの位置を移動させる命令」が「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」を意味し,「ポインタの位置を移動可能な状態に切り替える命令」を意味しないことは一層明らかである。 したがって,ロングタッチが「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命令」であったとしても,構成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるということはできない。 イ振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動することについてロングタッチにより振動状態となったショートカットアイコンは,元々の位置よりやや下に移動して振動するものと認められる。 しかし,甲32の1・2によれば,Facebookアイコンをロングタッチすると,ロングタッチ中のFacebookアイコンのみならず,ロングタッチしていないEvernoteアイコンやTwitterアイコンも元々の位置よりやや下に移動して振動状態となっていることが認められる。 そうすると,ロングタッチが,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置」を「元々の位置よりもやや下に移動させる」ことを指示する命令ということはできない。ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動するのは,他のショー トカットアイコン(非「ポインタ」)の移動と同様,振動状 させる」ことを指示する命令ということはできない。ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動するのは,他のショー トカットアイコン(非「ポインタ」)の移動と同様,振動状態になったことを示す付随的な動作にすぎず,このような付随的な動作が生じることをもって,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令(=移動を指示する命令)」であるということはできない。 ウ振動状態のショートカットアイコンが小刻みに振動することについて甲32の1によれば,ロングタッチにより振動状態となったロングタッチ中のショートカットアイコン(=「ポインタ」)は小刻みに振動することが認められるが,これも,他のショートカットアイコン(非「ポインタ」)の振動と同様,振動状態になったことを示す付随的な動作にすぎず,このような付随的な動作が生じることをもって,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令(=移動を指示する命令)」であるということはできない。 (6) 「ポインタの位置」を「『MultiTouch』ソフトウェアがカーソルや数値で表示する座標位置」とした場合原告は,甲32の1・2において「MultiTouch」と題するソフトウェアが赤いカーソルの位置や画面左上の数値で表示する座標位置の変化をもって,「ポインタの位置の移動」であるかのような主張をする(原告準備書面(2)42頁)。 しかし,原告は,「MultiTouch」と題するソフトウェア(及びこれにデータを提供していると主張する「MotionEvent」と題するソフトウェア)がどのようなデータを検出しており,それが本件発明にいう「ポインタ」の定義を満たすのかについて主張立証をしないから(指を離した状態でも,また「ショートカットアイコンが指に追従する」状態で トウェア)がどのようなデータを検出しており,それが本件発明にいう「ポインタ」の定義を満たすのかについて主張立証をしないから(指を離した状態でも,また「ショートカットアイコンが指に追従する」状態でなくてもカーソルが表示されているのであるから,「タッチパネル上の指の座標位置」でも,「指の動きに追従するショートカットアイコンの座標位置」でもないことは明らかである。),当該ソフトウェアが何を検出しているにせよ,それが本件発 明にいう「ポインタ」に当たると認めることはできず,仮にロングタッチにおいて上記ソフトウェア上のカーソルや数値で表示される座標位置が変動するとしても,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるとはいえない。 (7) 本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるものでない場合被告の主張するとおり,本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるものでないと解釈した場合には,当然ながら,「ポインタの位置を移動させる命令」も存在しない。 (8) 以上のとおり,本件ホームアプリにおける「ポインタ」をどのように解釈するにせよ,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」であるとはいえないから,その余の点につき判断するまでもなく,本件ホームアプリは,本件発明の構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると……操作メニュー情報を……表示する」出力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムであるとは認められない。 2 結論以上によれば,本件ホームアプリは,少なくとも構成要件Eを充足せず,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1,3の技術的範囲に属しない。 本件ホームアプリが構成要件Eを充足しない以上,これをインストールした被告製品は,構成要件H,Iの 要件Eを充足せず,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1,3の技術的範囲に属しない。 本件ホームアプリが構成要件Eを充足しない以上,これをインストールした被告製品は,構成要件H,Iのうち,原告が問題としている本件特許の特許請求の範囲の請求項1,3を引用する態様を充足しているとはいえず,本件発明4,5のうちの上記態様の技術的範囲に属しない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 鈴木千帆 裁判官 西村康夫

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