- 1 -平成18年11月30日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成18年(ワ)第8320号損害賠償等請求事件(口頭弁論終結の日平成18年10月16日)判決原告A被告株式会社タイホーコーザイ訴訟代理人弁護士村林隆一同井上裕史訴訟代理人弁理士福田賢三同福田伸一被告B訴訟代理人弁護士村林隆一同井上裕史被告ジョンソン株式会社訴訟代理人弁護士渡部喬一同小林好則同仲村晋一同近藤勝彦同守田大地同松井章義同松田一彦被告C- 2 -訴訟代理人弁護士岡田春夫同森博之主文本件訴えをいずれも却下する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告らは,原告に対し,それぞれ520万円を支払え。 最高裁判所第1小法廷平成15年2月5日の決定,主文に基づいて確定判決を求める。最高裁判所第1小法廷平成17年1月28日の決定主文に基づいて確定判決を求める。 第2当事者の主張 原告の主張(1)被告株式会社タイホーコーザイ(以下「被告タイホー」という。)に対する請求ア原告は,昭和52年6月21日,考案者を原告,考案の名称を「車両のエアワイパ」とする考案について実用新案登録出願(実願昭52-82155)をした。同出願は,昭和54年1月22日,出願公開(実開昭54-9438)され,昭和57年12月13日,出願公告(実公昭57-58027)された後,登録された(実用新案登録第1501677号。以下「本件実用新案権」という。)イ被告タイホーは,昭和54年12月24日,発明者をFら,発明の名称を「防曇剤」とする発明について特許出願(特願昭54-166 た(実用新案登録第1501677号。以下「本件実用新案権」という。)イ被告タイホーは,昭和54年12月24日,発明者をFら,発明の名称を「防曇剤」とする発明について特許出願(特願昭54-166942)した。 同出願は,昭和56年7月23日,出願公開(特開昭56-90876)され,昭和62年10月7日,出願公告(特公昭62-47227)された後,登録された(特許登録第1441167号。以下「本件特許権1」とい- 3 -う。)。 ウ被告タイホーは,本件実用新案権の考案を横取りした。本件実用新案権の実用新案公報には,機械式ワイパを用いた場合は「前面ウインドガラスに湯膜が付着しやすいという欠点」があるという指摘があるから,本件実用新案権の実用新案登録請求の範囲に,油膜で湯膜を防止する防曇剤の考案も含まれ,本件特許権1の特許請求の範囲も含まれている。後願である本件特許権1は無効とされるべきものである。 エ被告タイホーは,自動車用ガラスコーティング剤(商品番号20886。 商品名クリンビューガラスコート撥水剤)及び自動車用くもり止め剤(商品番号20970。商品名フロントガラス撥水剤)を販売している。上記各商品は,シリコンオイルを使用した油膜取りクリンビューであり,泡状にしてフロントガラス内側にコーティングして油膜で湯膜を防止するものであり,本件特許権1に係る発明の実施品である。 オ被告タイホーは,上記各商品を販売して何億円もの利益を得ているところ,その全額金は,本件実用新案権の権利者である原告が取得すべきものである。 したがって,原告は,被告タイホーに対し,内金400万円の支払を求める。 (2)被告B(以下「被告B」という。)に対する請求ア原告は,昭和52年3月20日ころ,弁理士である被告Bに対し,車両のエアワイパーと油の膜でコーティン ーに対し,内金400万円の支払を求める。 (2)被告B(以下「被告B」という。)に対する請求ア原告は,昭和52年3月20日ころ,弁理士である被告Bに対し,車両のエアワイパーと油の膜でコーティングして湯膜が車両のウインドガラス内側にできるので湯膜を防止する考案について実用新案登録出願を依頼し,更に車両のウインドガラス外側に油の膜をコーティングして雨を吹き飛ばしやすくする考案を開示したところ,被告Bは,上記依頼に基づいた出願をせず,依頼人である原告の秘密を保持するという職務上の義務に違反して,上記各考案の内容を漏洩した。 イ訴外E(以下「E」という。)は,昭和49年2月9日,発明者をE,発明の名称を「艶出し撥水剤」とする発明について特許出願(特願昭49-1- 4 -6487)した。同出願は,昭和50年12月19日,出願公開(特開昭50-157288)され,昭和53年2月13日,出願公告(特公昭53-3992)された後,登録された(特許登録第925546号。以下「本件特許権2」という。)。 ウ本件特許権2は,Eが真の発明者ではなく,上記の被告Bの漏洩の結果,冒認出願されるに至ったものである。被告タイホーは,横取りした本件特許権1の発明を実施する商品である油膜取りクリンビューを販売して利得した。 エ原告は,被告Bが原告の上記依頼内容に沿った出願をしていれば,あるいはその考案の内容を漏洩しなければ,得ることができたであろう400万円を得ることができなかった。したがって,原告は,被告Bに対し,400万円の支払を求める。 (3)被告ジョンソン株式会社(以下「被告ジョンソン」という。)に対する請求ア本件実用新案権の実用新案公報には,撥水剤の油の膜シリコンオイルの油についての指摘があり,本件特許権2の特許公報にはシリコンオイルと指摘が 式会社(以下「被告ジョンソン」という。)に対する請求ア本件実用新案権の実用新案公報には,撥水剤の油の膜シリコンオイルの油についての指摘があり,本件特許権2の特許公報にはシリコンオイルと指摘があるから,本件特許権2に係る発明は,本件実用新案権に係る考案の撥水剤の油シリコンオイルの油を引用したことが明らかである。Eは,漏洩された本件実用新案権の考案を横取りして冒認出願したので,本件特許権2は無効とされるべきものである。 イ被告ジョンソンは,Eとの間で,本件特許権2について実施許諾契約を締結し,レインダッシュスーパーロング撥水剤(商品番号15221)を販売している。同商品は,本件特許権2に係る発明の実施品である。 ウ被告ジョンソンは,上記商品を販売して何億円もの利益を得ているところ,本件実用新案権の権利者である原告は許諾料等を受けるべきである。したがって,原告は,被告ジョンソンに対し,内金400万円の支払を求める。 (4)被告C(以下「被告C」という。)に対する請求- 5 -原告は,訴外D(以下「D」という。)に対し,本件実用新案権の登録料の納付を依頼したところ,Dは,納付年金1年分を故意に支払わず,その結果,本件実用新案権は抹消された。原告はDの相続人である被告Cに対し,Dが依頼に沿った1年分の登録料を支払っていれば得ることができた400万円の支払を求める。 (5)被告らに対する請求原告は,被告らに対し,上記(1)ないし(4)の被告らの各行為により被った精神的苦痛に対する慰謝料として,各被告らに対し,それぞれ120万円の支払を求める。 被告らの主張(1)被告タイホーの主張ア原告の主張のうち,1(1)アは不知,同イは認め,同ウないしオは,被告タイホーが本件特許権1に係る発明の実施品である眼鏡用防曇剤を製造販売し,別 。 被告らの主張(1)被告タイホーの主張ア原告の主張のうち,1(1)アは不知,同イは認め,同ウないしオは,被告タイホーが本件特許権1に係る発明の実施品である眼鏡用防曇剤を製造販売し,別の特許権に係る発明の実施品である「自動車くもり止め剤」をクリンビューの商品名で製造販売し,利益を得た事実は認めるが,その余は否認ないし争う。 イ原告は,被告タイホーに対し,次の訴訟を提起した。 ①大阪地方裁判所平成16年(ワ)第3264号(以下「16年事件」という。)②東京地方裁判所平成18年(ワ)第1139号(以下「18年事件」という。)ウ16年事件における原告の主張は,本件訴訟における原告の主張と全く同一であるところ,16年事件の判決は原告の請求を棄却しており,本訴における被告タイホーに対する主張は,前訴と訴訟物を同じくするものであるから,前訴の確定判決の既判力により棄却されるべきものである。 エ18年事件の原告の訴状は,本件の訴状と全く同じであるところ,18年- 6 -事件の判決は,訴訟の提起が権利の濫用であるとして,被告タイホーに対する訴えを却下した。 本件訴訟は,本人訴訟とはいえ,2度にわたり,大阪地裁,大阪高裁,最高裁において理由がないとされた事件について,更に東京地方裁判所において訴えを却下されたにもかかわらず,何ら調査研究することなく,専門家と相談することもなく,漫然と被告タイホーに精神的,経済的に著しく負担をかけることを目的としてなされたものであり,その主張は,裁判所が買収を受けたという司法に対する冒涜を理由とするもので,全く事実的,法律的根拠を欠くものである。したがって,裁判制度の目的に照らし,著しく相当性を欠くものであり,訴権を濫用するものであるから,本件の訴えの提起は不適法であって,却下されるべきものである。 く事実的,法律的根拠を欠くものである。したがって,裁判制度の目的に照らし,著しく相当性を欠くものであり,訴権を濫用するものであるから,本件の訴えの提起は不適法であって,却下されるべきものである。 (2)被告Bの主張ア原告は,被告Bに対し,大阪地方裁判所平成11年(ワ)第2664号損害賠償請求事件(以下「11年事件」という。)に係る訴訟を提起した。 11年事件の原告の主張と本訴の被告Bに対する主張は全く同一であり,11年事件と本件訴訟は訴訟物が同じである。また,原告は,被告Bに対し,16年事件に係る訴訟も提起したが,16年事件の判決も,11年事件の被告Bに対する請求と16年事件の被告Bに対する請求は実質的に同一であり,訴訟物を同じくするものであるから,前訴の確定判決の既判力により棄却を免れないと判断している。 イ原告は,被告Bに対し,18年事件に係る訴訟も提起したが,18年事件の訴状と本件の訴状は全く同一であるところ,18年事件の判決は,訴訟の提起が権利の濫用であるとして,被告Bに対する訴えを却下した。 本件訴訟は,本人訴訟とはいえ,3度にわたり,大阪地裁,大阪高裁,最高裁において理由がないとされた事件について,更に東京地方裁判所において訴えを却下されたにもかかわらず,何ら調査研究することなく,専門家と- 7 -相談することもなく,漫然と被告Bに精神的経済的に,著しく負担をかけることを目的としてなされたものであり,その主張は,裁判所が買収を受けたという司法に対する冒涜を理由とするもので,全く事実的,法律的根拠を欠くものである。したがって,裁判制度の目的に照らし,著しく相当性を欠くものであり,訴権を濫用するものであるから,本件の訴えの提起は不適法であって,却下されるべきものである。 (3)被告ジョンソンの主張ア原告の主張の1 ,裁判制度の目的に照らし,著しく相当性を欠くものであり,訴権を濫用するものであるから,本件の訴えの提起は不適法であって,却下されるべきものである。 (3)被告ジョンソンの主張ア原告の主張の1(3)イのうち,被告ジョンソンがレインダッシュスーパーロングの販売を行っていたことは認めるが,Eとの間で,本件特許権2について実施許諾契約をしたことは否認する。被告ジョンソンは,レインダッシュスーパーロングの販売において,いかなる意味においても,原告の技術を使用していない。 イ原告は,被告ジョンソンに対し,11年事件,16年事件,18年事件に係る訴訟を提起したところ,11年事件は,請求棄却の判決が控訴棄却により確定し,16年事件は,請求棄却の判決が控訴棄却,上告棄却により確定した。18年事件は,被告ジョンソンに対する請求を棄却する判決がされた。 ウこのように,原告は,本件請求と実質的に同一の請求を既に3回行って敗訴しており,本件請求は過去の訴訟の不当な蒸し返しであって,被告ジョンソンの地位を不当に長く不安定な状態におき,ことさらに応訴のための負担を強いるものであって,民事訴訟制度を濫用するものというべきである。したがって,本件訴えは,訴権の濫用にあたり,訴えの利益を欠くものとして,却下されるべきである。 エ仮に,却下されない場合でも,前記のとおり,本件請求は,紛争の蒸し返しにすぎないから,速やかに棄却されるべきである。 (4)被告Cの主張ア原告の1(4)の主張について,被告CがDの相続人であることは認めるが,- 8 -その余は争う。 イ原告は,平成14年,Dを被告として訴訟を提起したが(大阪地裁平成14年(ワ)第1323号。以下「14年事件」という。),同訴訟は,第1回口頭弁論期日において取下げにより終了した。原告は,被告Cに対し 告は,平成14年,Dを被告として訴訟を提起したが(大阪地裁平成14年(ワ)第1323号。以下「14年事件」という。),同訴訟は,第1回口頭弁論期日において取下げにより終了した。原告は,被告Cに対し,18年事件に係る訴訟も提起した。 ウ14年事件,18年事件及び本件訴訟は,いずれも,原告がDに本件実用新案権の第10年分の登録料の支払を委託したが,Dが同登録料の納付を怠り,本件実用新案権が登録抹消されたため,その財産的損害の賠償及び慰謝料をD又はその相続人である被告Cに対して求める趣旨のものである。 原告は,18年事件で敗訴するや,控訴することなく,わずか1か月後に本件訴訟を提起し,新たな主張や証拠を提出するわけでもなく,裁判所を変えて,ただ漫然と前訴と実質的に同じ請求を繰り返し,蒸し返しているにすぎない。18年事件の訴状と本訴の訴状は実質的に一字一句同じである。 一方,被告Cは,前訴においてせっかく勝訴判決を得たにもかかわらず,実質的に同一の請求について,応訴の負担を強いられている。原告の請求内容に何らの根拠もないことを併せ考えれば,いかに本人訴訟とはいえ,原告の訴え提起は,正当な権利行使とは到底いえず,被告Cの地位を不当に長く不安定な状況におき,ことさら応訴の負担を強いるものであり,民事訴訟制度を濫用するものである(なお,14年事件は,被告Cを被告とするものではなく,取下げにより終了したが,被告Cは,Dを名宛人とする訴状を受領し,上申書を裁判所に提出し,Dの死亡及び相続の事実等について説明し,第1回口頭弁論を傍聴して取下げを確認したのであり,事実上応訴を余儀なくされている。)。したがって,本件訴えは訴権の濫用にあたり,訴えの利益を欠くものとして却下されるべきである。 エ本訴は,18年事件と実質的に同一訴訟であり,訴訟物を同じくするも 事実上応訴を余儀なくされている。)。したがって,本件訴えは訴権の濫用にあたり,訴えの利益を欠くものとして却下されるべきである。 エ本訴は,18年事件と実質的に同一訴訟であり,訴訟物を同じくするものであるから,仮に却下されないとしても,前訴の確定判決の既判力により棄- 9 -却を免れない。 オ原告は,本件実用新案権に関する第10年分の登録料の支払をDに委託したと主張しているが,その具体的事実関係を示す証拠を提出していない。 もっとも,本件実用新案権の登録料は第9年分まで納付されていること,Dの弁理士としての職業専門家としての誇りからも,Dが平成10年分の登録料について委託をうけていれば納付していたことは間違いない。第10年分の登録料の支払がされていないとすれば,そもそも委託の事実がなかったと考えざるをえない。 原告は14年事件において,Dの原告宛領収書を書証として提出したが,第9年分のものであり,登録原簿から明らかである納付日付より前の日付のものであったことから,Dは,原告に登録料及び手数料を前払してもらい特許庁に登録料を納付していたことが分かる。したがって,第10年分の納付も,委託されていたとすれば,原告からDへ前払いされた領収書があってしかるべきところ,第10年分の領収書は書証として提出されていない。仮に,平成3年12月に第10年分の登録料を納付しても,それから半年で権利の存続期間が満了するため,原告は第10年分の登録料の納付を希望しなかったと推測される。 カ原告の被告Cに対する損害賠償請求の法律構成としては,不法行為又は契約違反が考えられる。 不法行為の構成については,少なくとも原告は平成14年2月の14年事件の提起時に損害及び加害者を知ったので,それから3年経過後の平成17年2月に時効にかかる。契約違反の構成については, 考えられる。 不法行為の構成については,少なくとも原告は平成14年2月の14年事件の提起時に損害及び加害者を知ったので,それから3年経過後の平成17年2月に時効にかかる。契約違反の構成については,第10年分の納付期限は平成3年12月13日であり,原告からの委託は同日又は追納期限である平成4年6月13日までにあったことになり,同日までに納付しなければ債務不履行となるから,どんなに遅くとも時効は同日から進行し10年の消滅時効期間が経過した。 - 10 -被告Cは,18年事件において消滅時効を援用した。 第3当裁判所の判断 過去の訴訟原告が過去に被告らに対して提起した訴訟は,次のとおりである。 (1)大阪地方裁判所平成11年(ワ)第2664号損害賠償請求事件(11年事件。丁1,2,己1)ア訴訟物(ア)被告B関係被告Bは,守秘義務があるにもかかわらず,昭和52年3月ころ,原告が被告Bに対して特許又は実用新案の出願のために開示した,ウインドウガラスに油等の物質を塗布することにより水滴を粒状にして吹き飛ばすアイデアを漏らし盗んだことが不法行為に該当するとして,原告が,被告Bに対し,損害賠償及び慰謝料合計620万円の支払を求めたもの。 (イ)被告ジョンソン関係被告ジョンソンは,上記の盗まれたアイデアを実施した商品である「レインダッシュスーパーロング」を発売して不当に利益を得ているとして,原告が,被告ジョンソンに対し,1)上記商品の販売の差止め,2)損害賠償及び慰謝料合計620万円の支払を求めたもの。 イ経過平成11年7月13日,請求棄却の判決がされた。控訴審では,同年12月21日,控訴が棄却され,同判決は確定した(丙9,丁6,戊5)。 (2)大阪地方裁判所平成14年(ワ)第1323号損害賠償請求事件(14年事件。戊1)ア 却の判決がされた。控訴審では,同年12月21日,控訴が棄却され,同判決は確定した(丙9,丁6,戊5)。 (2)大阪地方裁判所平成14年(ワ)第1323号損害賠償請求事件(14年事件。戊1)ア訴訟物(ア)被告タイホー関係被告タイホーが商品「クリンビュー」を製造販売する行為は,本件実用- 11 -新案権及び原告が権利者である特許第2566512号の特許権を侵害するとして,原告が,被告タイホーに対し,上記侵害行為により被った財産的損害の賠償及び慰謝料合計520万円の支払を求めたもの。 (イ)被告B関係被告Bは,昭和52年3月ころ,原告から実用新案登録の出願手続のため開示された,1)車両のエアワイパーについてのアイデア,2)ウインドウガラスに油状,ワックス状,油紙又は他の液状,固体状,グリス状のものを塗布することにより,ウインドウガラスに付着する雨・水等の水滴を粒状にして吹き飛ばし,ウインドウガラスに残らないようにしたアイデア,3)加熱装置を設置して,熱風をウインドウガラスに吹き出して凍結を防止したり油膜を除去するアイデア,4)防曇剤のアイデアのうち2)ないし4)は実用新案登録の出願手続をすることなく第三者に漏らし,被告タイホーが特許出願したことにより(後に本件特許権1として登録),原告は損害を被ったとして,原告が,被告Bに対し,財産的損害の賠償及び慰謝料合計520万円の支払を求めたもの。 (ウ)被告C関係本件実用新案権について,Dが登録料を故意に9年分しか支払わなかったため本件実用新案権は登録抹消されてしまったとして,原告が,Dに対し,財産的損害の賠償及び慰謝料合計520万円の支払を求めたもの(丙2)。 イ経過平成14年3月28日,請求棄却の判決がされた。なお,Dに対する訴えは,1審の第1回口頭弁論期日(平成14年3 対し,財産的損害の賠償及び慰謝料合計520万円の支払を求めたもの(丙2)。 イ経過平成14年3月28日,請求棄却の判決がされた。なお,Dに対する訴えは,1審の第1回口頭弁論期日(平成14年3月28日)において取り下げられた(丙3)。 (3)大阪地方裁判所平成16年(ワ)第3264号損害賠償請求事件(16年事件。丁3ないし5,戊3)- 12 -ア訴訟物(ア)被告タイホー関係被告タイホーを権利者とする本件特許権1は,本件実用新案権の実用新案登録請求の範囲に含まれる油膜を防止する防曇剤の考案を含み,本件実用新案権の後願であって無効であるところ,被告タイホーは,本件特許権1の実施品である油膜取りクリンビューを製造販売して利益を得たが,これは本来原告が得るべきものであったとして,原告が,被告タイホーに対し,原告が得たであろう利益相当額400万円の支払を求めたもの。 (イ)被告B関係被告Bは,昭和52年3月ころ,原告から車両のエアーワイパの考案について実用新案登録出願の手続を依頼されたが,その際に原告から開示された油膜を車両のウインドガラスの内側にコーティングする撥水剤及び防曇剤の考案について,出願の手続をせず,守秘義務に違反してその内容を第三者に漏洩した結果,上記考案を発明の内容とする本件特許権1及び2が出願登録され,被告タイホー及び被告ジョンソンは,それぞれ本件特許権1及び2の実施品である油膜取りクリンビュー及びレインダッシュスーパーロングをそれぞれ販売して利益を得たが,被告Bの漏洩行為がなければ原告はこれらの利益の一部ないし実施許諾料等を得ることができたとして,原告が,被告Bに対し,原告が得たであろう利益相当額400万円の支払を求めたもの。 (ウ)被告ジョンソン関係被告Bが原告の考案である撥水剤について漏洩したため 施許諾料等を得ることができたとして,原告が,被告Bに対し,原告が得たであろう利益相当額400万円の支払を求めたもの。 (ウ)被告ジョンソン関係被告Bが原告の考案である撥水剤について漏洩したため冒認出願された本件特許権2について,被告ジョンソンはその実施品であるレインダッシュスーパーロングを製造販売して利益を得たが,冒認出願されなければ原告は被告ジョンソンから実施許諾料等を受けることができたとして,原告が,被告ジョンソンに対し,原告が得たであろう利益相当額400万円の- 13 -支払を求めたもの。 イ経過平成16年7月29日,請求棄却の判決がされた。控訴審では,同年12月24日,控訴が棄却され,平成17年6月30日,決定により上告が棄却されて,同判決は確定した。 (4)東京地方裁判所平成18年(ワ)第1139号不当利得返還等請求事件(18年事件。丙9,丁6,戊5)ア訴訟物(ア)被告タイホー関係被告タイホーは,本件特許権1の実施品である「自動車用ガラスコーティング剤」(クリンビューガラスコート撥水剤)及び「自動車用くもり止め剤」(フロントガラス撥水剤)を販売して利益を得ているが,本件特許権1の特許請求の範囲は,その先願である本件実用新案権の実用新案登録請求の範囲に含まれ,本件特許権1は,本件実用新案権を盗用したもので無効となるべきものであるから,前記利益は本来原告が取得すべきものであるとして,原告が,被告タイホーに対し,不当利得返還金の内金及び慰謝料の合計520万円の支払を求めたもの。 (イ)被告B関係被告Bは,昭和52年3月20日ころ,原告から「油の膜で撥水剤と湯膜を防止する防曇剤の考案」の実用新案登録出願手続を依頼されたが,原告から開示された考案の出願手続をせず,守秘義務に違反して考案内容を漏洩した結果,本件 3月20日ころ,原告から「油の膜で撥水剤と湯膜を防止する防曇剤の考案」の実用新案登録出願手続を依頼されたが,原告から開示された考案の出願手続をせず,守秘義務に違反して考案内容を漏洩した結果,本件特許権2が冒認出願され,被告タイホーは本件特許権1の発明を実施する商品(油膜取りクリンビュー)を販売して利得したとして,原告が,被告Bに対し,得べかりし利益相当額400万円の支払を求めたもの。 (ウ)被告ジョンソン関係- 14 -被告ジョンソンは,本件特許権2の技術的範囲に含まれる「レインダッシュスーパーロング」を販売して不当な利益を得ているが,本件特許権2は,本件実用新案権を盗用して取得された冒認出願であるから,原告は被告ジョンソンから実施料等を受けるべきであるとして,原告が,被告ジョンソンに対し,不当利得返還金の内金及び慰謝料合計520万円の支払を求めたもの。 (エ)被告C関係Dは,本件実用新案権について故意に第10年分の登録料を支払わず本件実用新案権を失効させたとして,原告が,Dの相続人である被告Cに対し,10年分の登録料が支払われていれば得たであろう利益相当額及び慰謝料合計520万円の支払を求めたもの。 イ経過平成18年5月30日,被告タイホー及び被告Bに対する訴えを却下し,被告ジョンソン及び被告Cに対する請求を棄却する旨の判決がされた。被告タイホー及び被告Bに対する訴えが却下されたのは,原告が過去に実質的に同一の訴訟を複数回行って敗訴しており,過去の訴訟の蒸し返しであるから,訴権の濫用にあたり訴えの利益を欠くと判断されたためであった。同判決は同年6月28日の経過により確定した(丙10)。 判断 (1)被告タイホーに対する訴えについて原告は,過去に,被告タイホーに対し,14年事件,16年事件,18年事件の3つの訴訟 った。同判決は同年6月28日の経過により確定した(丙10)。 判断 (1)被告タイホーに対する訴えについて原告は,過去に,被告タイホーに対し,14年事件,16年事件,18年事件の3つの訴訟を提起したが,その請求は,いずれも,本件特許権1が先願である本件実用新案権の実用新案登録請求の範囲に含まれ無効である,本件実用新案権を盗用したものであるとの前提に立って,被告タイホーが本件特許権1の実施品であるクリンビューを販売することにより得た利益は,本来原告が得るべきものであったとして,本訴と同じく不当利得ないし不法行為により,不- 15 -当利得の返還ないし損害賠償(慰謝料も含む)を求めるものであって,その請求の基礎とする事実関係も,本訴の被告タイホーに対する請求とほぼ同一である。 そして,14年事件及び16年事件の被告タイホーに対する請求はいずれも棄却され,18年事件の被告タイホーに対する訴えは,前訴の不当な蒸し返しであって訴権の濫用であるとして却下されたにもかかわらず,原告は,18年事件の判決確定から約1か月後に本訴を提起した。しかも,18年事件の訴状(丙7,戊4)は,本件の訴状と数か所の文言の相違はあるものの,その内容・文言をほぼ同じくするものである。 以上に照らせば,本件の被告タイホーに対する訴えの提起は,正当な権利行使であるとはいえず,被告タイホーの地位を不当に長く不安定な状態においてことさらに応訴の負担を強いるものであり,被告タイホーに対する本件訴えは,訴権を濫用する不適法な訴えとして却下を免れない。 (2)被告Bに対する訴えについて原告は,過去に,被告Bに対し,11年事件,14年事件,16年事件,18年事件の4つの訴訟を提起したが,その請求は,いずれも,被告Bが昭和52年3月ころ原告から特許又は実用新案の出願のために開 いて原告は,過去に,被告Bに対し,11年事件,14年事件,16年事件,18年事件の4つの訴訟を提起したが,その請求は,いずれも,被告Bが昭和52年3月ころ原告から特許又は実用新案の出願のために開示された,ウインドウガラスに油等の物質を塗布することにより水滴を粒状にして吹き飛ばすアイデアについて,依頼どおりに出願手続をせず守秘義務に違反して漏洩したことにより,後願である本件特許権1及び冒認出願である本件特許権2が登録され,被告タイホー及び被告ジョンソンはその実施品であるクリンビュー及びレインダッシュスーパーロングを製造販売して利益を得たが,被告Bの漏洩行為がなければ原告はこれらの利益の一部ないし実施許諾料等を得ることができたとして,本訴と同じく不当利得ないし不法行為により,不当利得の返還ないし損害賠償(慰謝料も含む)を求めるものであって,その請求の基礎とする事実関係も,本訴の被告Bに対する請求とほぼ同一である。 - 16 -そして,11年事件,14年事件,16年事件の被告Bに対する請求はいずれも棄却され,18年事件の被告Bに対する訴えは,前訴の不当な蒸し返しであって訴権の濫用であるとして却下されたにもかかわらず,原告は,18年事件の判決確定から約1か月後に本訴を提起した。しかも,18年事件の訴状(丙7,戊4)は,本件の訴状と数か所の文言の相違はあるものの,その内容・文言をほぼ同じくするものである。 以上に照らせば,本件の被告Bに対する訴えの提起は,正当な権利行使であるとはいえず,被告Bの地位を不当に長く不安定な状態においてことさらに応訴の負担を強いるものであり,被告Bに対する本件訴えは,訴権を濫用する不適法な訴えとして却下を免れない。 (3)被告ジョンソンに対する訴えについて原告は,過去に,被告ジョンソンに対し,11年事件,16年 担を強いるものであり,被告Bに対する本件訴えは,訴権を濫用する不適法な訴えとして却下を免れない。 (3)被告ジョンソンに対する訴えについて原告は,過去に,被告ジョンソンに対し,11年事件,16年事件,18年事件の3つの訴訟を提起したが,その請求は,いずれも,本件特許権2は原告が昭和52年3月に被告Bに開示したアイデアを横取りした冒認出願であって無効であるとの前提に立って,被告ジョンソンが本件特許権2の実施品であるレインダッシュスーパーロングを販売したことによる利得につき原告が実施許諾料等を受けるべきであるとして,本訴と同じく不当利得ないし不法行為により,不当利得の返還ないし損害賠償(慰謝料も含む)を求めるものであって,その請求の基礎とする事実関係も,本訴の被告ジョンソンに対する請求とほぼ同一である。 そして,11年事件,16年事件,18年事件の被告ジョンソンに対する請求はいずれも棄却されたにもかかわらず,原告は,18年事件の判決確定から約1か月後に本訴を提起した。しかも,18年事件の訴状(丙7,戊4)は,本件の訴状と数か所の文言の相違はあるものの,その内容・文言をほぼ同じくするものである。 以上に照らせば,本件の被告ジョンソンに対する訴えの提起は,正当な権利- 17 -行使であるとはいえず,被告ジョンソンの地位を不当に長く不安定な状態においてことさらに応訴の負担を強いるものであり,被告ジョンソンに対する本件訴えは,訴権を濫用する不適法な訴えとして却下を免れない。 (4)被告Cに対する訴えについて原告は,過去に,Dに対して14年事件,被告Cに対して18年事件に係る訴訟をそれぞれ提起したが,その請求は,いずれも,Dが本件実用新案権について故意に第10年分の登録料を支払わず本件実用新案権を失効させたとして,D又はDの相続人である被告 Cに対して18年事件に係る訴訟をそれぞれ提起したが,その請求は,いずれも,Dが本件実用新案権について故意に第10年分の登録料を支払わず本件実用新案権を失効させたとして,D又はDの相続人である被告Cに対し,本訴と同じく債務不履行又は不法行為に基づき,10年分の登録料が支払われていれば得たであろう利益相当額及び慰謝料の支払を求めるものであって,その請求の基礎とする事実関係も,本訴の被告Cに対する請求とほぼ同一である。 そして,14年事件は取下げにより終了したものの,18年事件の被告Cに対する請求は棄却されたにもかかわらず,原告は,18年事件の判決確定から約1か月後に本訴を提起した。しかも,18年事件の訴状(丙7,戊4)は,本件の訴状と数か所の文言の相違はあるものの,その内容・文言をほぼ同じくするものである。 以上に照らせば,本件の被告Cに対する訴えの提起は,正当な権利行使であるとはいえず,被告Cの地位を不当に長く不安定な状態においてことさらに応訴の負担を強いるものであり,被告Cに対する本件訴えは,訴権を濫用する不適法な訴えとして却下を免れない。 (5)「最高裁判所第1小法廷平成15年2月5日の決定,主文に基づいて確定判決を求める。最高裁判所第1小法廷平成17年1月28日の決定主文に基づいて確定判決を求める。」との訴えについて上記は,別件の最高裁判所の決定主文に基く確定判決を求めるという訴えと解されるが,法的根拠を欠くことは明白であり,不適法であって却下を免れない。 - 18 - 結論 よって,本件訴えは,いずれも不適法な訴えであるから却下することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部裁判長裁判官山田知司裁判官高松宏之裁判官村上誠子 主文 ることとし、主文のとおり判決する。 理由 大阪地方裁判所第26民事部裁判長裁判官山田知司裁判官高松宏之裁判官村上誠子
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