平成16(わ)2 殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年9月16日 福井地方裁判所
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判決文本文8,853 文字)

主文 被告人を懲役14年に処する。 未決勾留日数中170日をその刑に算入する。 押収してある波刃万能ナイフ1丁,果物ナイフ1丁及びカッターナイフ2丁を没収する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,昭和52年12月にA子と結婚し,二子をもうけたが,その後,昭和58年12月にA子と離婚した。A子は,昭和61年6月にB男と再婚し,昭和62年2月にC子,昭和63年12月に男子をそれぞれもうけたが,平成2年5月にB男と離婚し,二人の子供を引き取って生活していた。その後,被告人は,平成9年ころ,A子から連絡があったことを機に転居し,A子と内縁関係を結び,C子らとも同居し,平成10年12月にはA子との間に女子をもうけた。 被告人は,A子と同居を始めた当初の数年間は,C子らを我が子のようにかわいがり,C子も,被告人のことを「お父さん」と呼ぶなどして一緒に風呂に入るなど被告人になついていたが,その後,C子が中学生になり,やがて思春期を迎えて年ごろの女性になるにつれ,距離をおかれるようになり,そのころから,被告人は,寂しさを感じるとともに,C子を一人の女性として見るようになり,やがて性的欲望を抱くようになった。 被告人は,平成15年8月ころ,C子に対し,裸を見せるよう迫ってその裸を観察したり,同年9月6日ころ,C子をホテルに誘ったりした。C子は,かかる被告人の行状に困惑して学校関係者に相談したことから,このことを知ることとなったA子は,同年9月12日,C子を被告人から引き離すため,C子の実父であるB男方にC子を預けた。 被告人は,C子と別居させられたことに衝撃を受け,その居場所を知るため,A子を問い詰めたり,C子の通学先の学校でC子を待ち伏せたり,尾行するよう き離すため,C子の実父であるB男方にC子を預けた。 被告人は,C子と別居させられたことに衝撃を受け,その居場所を知るため,A子を問い詰めたり,C子の通学先の学校でC子を待ち伏せたり,尾行するようになった。A子は,自らも被告人の行状に愛想を尽かし,同年10月ころ,被告人と別居することとなった。被告人は,そのころから,C子がアルバイト先の先輩である被害者と交際しているのではないかと疑うようになった。そこで,被告人は,A子を通じて,被害者を喫茶店に呼び出し,C子との肉体関係の有無等を問いただしたが,これを否定された。 被告人は,その後も,被害者とC子の関係が気になり,C子の行動を監視するなどしていたところ,同年11月6日に開かれたA子の誕生日会において,自分をのけ者にした上,被害者を誕生日会に参加させていたことを知り,これに憤慨し,被害者に対して憎悪の念を抱くようになり,同月9日,ホームセンターで,波刃万能ナイフを購入した。 被告人は,その後,被害者の自動車のタイヤをパンクさせたり,その車体に傷を付けたりするという嫌がらせを繰り返していたが,同年12月初めころ,A子から,被害者とC子が交際しているという事実を告げられて以降,仕事を休んで,そのころ知り合ったD男とともに,毎日のように,被害者とC子の行動を監視するようになった。 被告人は,同月16日,上記波刃万能ナイフ等4本のナイフを携帯した上,D男とともに,被害者とC子の行動を監視していたが,途中で見失い,その後,同日午後6時過ぎころから,被告人一人で,B男方付近において待ち伏せをしていたところ,約1時間が経過したころ,同方室内からC子のすすり泣くような声が聞こえてきた。被告人は,被害者及びC子が在宅しているものと確信し,裏口の無施錠の窓から同方屋内に立ち入り,上記波刃万能ナイフを抜き ,約1時間が経過したころ,同方室内からC子のすすり泣くような声が聞こえてきた。被告人は,被害者及びC子が在宅しているものと確信し,裏口の無施錠の窓から同方屋内に立ち入り,上記波刃万能ナイフを抜き身の状態で右手に持って,被害者及びC子が在室していた部屋に入ったところ,二人が裸で抱き合っている場面を目撃したため激高し,とっさに被害者を殺害することを決意し,以下の犯行に及んだ。 (犯罪事実)被告人は,第1 平成15年12月16日午後7時30分ころ,福井県内のB男方居宅において,殺意をもって,被害者(当時26歳)に対し,その腹部及び左腰部等を,所携の波刃万能ナイフ(刃体の長さ約17.8センチメートル)で数回突き刺し,よって,そのころ,同所において,同人を腹部刺切創に基づく腹部大動脈切断等による失血により死亡させて殺害した第2 業務その他正当な理由による場合でないのに,上記日時場所において,上記波刃万能ナイフ1丁,刃体の長さ約13.1センチメートルの果物ナイフ1丁,刃体の長さ約7.6センチメートルのカッターナイフ1丁及び刃体の長さ約7.7センチメートルのカッターナイフ1丁を携帯したものである。 (事実認定の補足説明)弁護人は,判示第1の犯行について,被告人が所携の波刃万能ナイフで被害者を刺したという外形的な事実は認めるものの,被告人には確定的殺意だけではなく未必的殺意もなかった旨の主張をし,また,犯行の動機につき,親心からC子を心配していたところ,被害者とC子の性交場面を目撃して頭が真っ白になって犯行に及んだ旨の主張をし,被告人も当公判廷においてこれらに沿う供述をする。 そこで,以下,当裁判所が,判示第1の事実のとおり,被告人に確定的殺意があると認定したこと,及び犯行の動機が上記認定のとおりであることについて補足的に説明する。 1 いてこれらに沿う供述をする。 そこで,以下,当裁判所が,判示第1の事実のとおり,被告人に確定的殺意があると認定したこと,及び犯行の動機が上記認定のとおりであることについて補足的に説明する。 1 殺意の点について(1) 凶器の種類について前掲各証拠によれば,本件犯行に使用された凶器は,刃体の長さ約17.8センチメートルで刃先が鋭利な波刃万能ナイフ(以下「本件ナイフ」と略称。)であり,殺傷能力は十分であることが認められる。 (2) 創傷の部位及び程度について前掲各証拠によれば,被害者の身体には(防御創と思われる創傷部分を除いて),ア腹部に,①肝臓,十二指腸,腹部大動脈等を切断し,腰椎左側の腰筋に刺切創を形成する全刺創管の長さ(深さ)約13.3センチメートルの刺切創,及び②右胸郭第十肋骨,右横隔膜及び肝臓右葉を貫通し,右腰部まで貫通している全刺創管の長さ(深さ)約11.5センチメートルの刺切創イ左腰部に,左腰筋,左胸郭第十二肋骨及び左横隔膜を切断又は貫通し,左肺下葉に至っている全刺創管の長さ(深さ)約7センチメートルの刺切創ウ両大腿部に貫通刺切創等の創傷が認められ,上記各創傷はいずれも身体の枢要部分に重大な損傷を与えている。 (3) 上記被害者の負傷状況及び被告人の身体の状況からすると,被害者は一方的に被告人から攻撃を受けたものであり,これに対して何らの反撃をするいとまもなく,上記(2)アの傷が致命傷となって受傷直後に現場で失血死したことが認められる。 (4) 被告人も,当公判廷において,自ら購入し,持ち歩いていた本件ナイフを抜き身のまま持って被害者らの在室していた部屋に押し入り,いきなり被害者の腰の辺りや腹を夢中で刺したこと,被害者から反撃も受けていないしもみ合いにもなっていないこと, し,持ち歩いていた本件ナイフを抜き身のまま持って被害者らの在室していた部屋に押し入り,いきなり被害者の腰の辺りや腹を夢中で刺したこと,被害者から反撃も受けていないしもみ合いにもなっていないこと,また,犯行後何らの救命措置を取らず,その場から立ち去ったことを認めている。 (5) 以上によれば,被告人は,殺傷能力の十分な本件ナイフを用いて,被害者の身体の枢要部である腹部及び左腰部等を狙って複数回突き刺して致命傷を含む重大な損傷を負わせているのであって,被告人の使用した凶器の性状,加えた攻撃の強さ及びその執拗性等に照らせば,殺意に関する被告人の捜査段階における自白を検討するまでもなく,被告人には,本件ナイフを使用して被害者を刺した際に殺意があったことは明らかであり,しかも,未必的殺意に留まらず,確定的な殺意があったものと十分推認することができる。 したがって,殺意がなかった旨述べる被告人の公判供述部分はこれを信用することができない。 2 動機の点について被告人は,捜査段階においては,C子に対して性的欲望を募らせていた上,C子と交際していた被害者に対する嫉妬及び憎悪から本件犯行に及んだという旨の供述をしていたが,当公判廷において,C子に対して性的欲望は持っておらず,親心からC子を心配していたところ,被害者とC子との性交場面を目撃して頭が真っ白になって犯行に及んだ旨供述を変遷させているので,この点について以下検討する。 (1) 被告人の言動等ア関係証拠によれば,被告人は,C子が平成15年に高校に入学後,同女の交際相手と会って交際内容を聞き出したり,C子に対して帰宅時間が遅いなどと文句を言うようになり,同年8月ころ,被告人方において,C子に対して裸を見せるよう迫って,C子の裸を観察したり,同年9月6日ころ,C子と映画を一緒 容を聞き出したり,C子に対して帰宅時間が遅いなどと文句を言うようになり,同年8月ころ,被告人方において,C子に対して裸を見せるよう迫って,C子の裸を観察したり,同年9月6日ころ,C子と映画を一緒に見に行った帰りに,車の中でC子に対してホテルに行かないかと誘ったが,断られたこと,このことが原因でC子は被告人に内緒で実父の元に転居したこと,被告人は,C子の居所を知るため,A子を問い詰めたり,C子の通学先の学校でC子を待ち伏せたり,尾行するようになったことが認められる。 被告人のこのような言動は,被告人が,C子に対して強い性的関心を持っていたことを強く推認させるものである。 イ加えて,関係証拠によれば,被告人は,その後C子やその交際相手である被害者の勤務先に対して執拗に電話をかけ又はメールを送信したり,被害者の車のタイヤをパンクさせたり,車体に傷を付ける行為を繰り返し,さらに,仕事を休んでまでD男とともに,しかも本件ナイフ等を携帯した上でC子と被害者の行動を監視するなどしていたことが認められる。 かかる被告人の行動自体,被告人のC子に対する執着心及び被害者に対する嫉妬心を強く推認させるものである。 (2) C子の供述調書の証拠能力・信用性についてC子は,上記各調書において,被告人が同女を一人の女として見るようになり,裸を見せろと言われて実際に見せたことや,ホテルに行こうと誘われたこともあること,犯されるのではないかという身の危険を感じて母親らに相談して被告人から離れ実父宅に引っ越したこと,その後も,C子や被害者につきまとって嫌がらせをしてきたこと,本件犯行後,被告人に連れ回されるなどされた際,被告人から胸を触られたり,最後だからセックスさせろと言われてわいせつなことをされた旨の供述をしている。 弁護人は,上 て嫌がらせをしてきたこと,本件犯行後,被告人に連れ回されるなどされた際,被告人から胸を触られたり,最後だからセックスさせろと言われてわいせつなことをされた旨の供述をしている。 弁護人は,上記各調書は,刑事訴訟法321条1項3号のうち,供述不能の要件については特に争わないものの,不可欠性の要件及び(絶対的)特信性の要件を充たさず,証拠能力を欠くから証拠排除されるべきである旨の主張をするので,以下検討する。 ア不可欠性について本件において,犯行の動機を判断するに当たっては,犯行前後のC子及びC子の交際相手である被害者に対する被告人の態度が重要となるのであって,これを判断する上ではC子の供述が最も重要であることは明らかであり,他に実母であるA子の公判供述が存在するが,同女の供述は伝聞証言であることからすれば,その証拠価値はおのずと異なり,その存在が,直ちにC子の上記各調書の不可欠性の評価を損なわせるものではない。 イ特信性について本件においては,上記各調書が作成されたのは,本件事件の翌日及び5日後であり,比較的記憶が鮮明な状態で供述されたものと認められること,その供述内容は,供述者であるC子にとってもおよそ他人に知られたくないものであることに加え,被告人の犯行後に関するC子の供述が,A子の公判供述と良く符合していること,その他の関係者の供述とも矛盾がないこと等に照らすと,その供述は高度に信用することができる情況の下になされたものといえる。 ウそして,関係証拠によれば供述不能の要件を充たすことは明らかであるので,以上より,C子の上記各調書は,いずれも刑事訴訟法321条1項3号の要件を満たすので,証拠能力が認められる。 そして,その供述内容は,上記で検討したように信用性が高いものというべきであ で,以上より,C子の上記各調書は,いずれも刑事訴訟法321条1項3号の要件を満たすので,証拠能力が認められる。 そして,その供述内容は,上記で検討したように信用性が高いものというべきであり,これに上記(1)の事情等を併せ考慮すれば,被告人はC子に対して強い性的欲望を有しており,同女と交際していた被害者に強い嫉妬,憎しみを有していたことが認められる。 (3) 被告人の捜査段階の供述調書の任意性・信用性についてア任意性について弁護人は,被告人を取り調べた警察官が,被告人に対し,嫉妬が動機であると認めた方が自然であり,裁判官の印象もよくなると述べたこと等を理由として,被告人の捜査段階の供述は,追及的又は理詰めの取調べ若しくは利益誘導の結果,被告人が絶望,自暴自棄といった状態に追い込まれた結果の産物であり,任意性を欠く旨の主張をする。 しかしながら,その供述内容は,C子に対する赤裸々な感情を述べたものであり,捜査官が勝手に誘導するような内容のものとは考えられないものである。 また,被告人自身,前科があり,取調べを受けた経験があることからも供述調書の役割は当然に分かっていたはずであり,当公判廷においても,自発的に取調官に対して供述をしたことも認めている。 他に,被告人の取調べに当たって,任意性を疑わせるような事情も認められない。 したがって,被告人の捜査段階における供述は,任意性について欠けるところはない。 イ信用性について被告人がC子に対して性的欲望を抱き,被害者に対して嫉妬及び憎悪を募らせていたという点については,上記のとおり,その供述内容からすれば,捜査官の作文や誘導とはおよそ考えられないような内容となっている上,A子その他関係者の供述内容と矛盾するところもなく,信用性は高いと せていたという点については,上記のとおり,その供述内容からすれば,捜査官の作文や誘導とはおよそ考えられないような内容となっている上,A子その他関係者の供述内容と矛盾するところもなく,信用性は高いと認められる(ただし,C子が中学生のころから寝ている間に姦淫行為をしたという被告人の供述部分については,C子も否定しているところであって,にわかに信用することは困難である。)。 (4) 被告人の公判供述の信用性について上記(1)ア,イについての被告人の公判廷における弁解は,その内容自体不自然極まりないもので到底信用できない。被告人は親としてC子のことを心配するが故に,C子と被害者との交際を危惧していたと縷々述べるが,上記(1)ア,イのストーカー行為は,到底,娘を心配する父親の行動とは評価できない。被告人の公判供述は,被告人が実際にとった行動と全く相容れないものであり,到底信用できない。 (5) 以上を総合すると,被告人は,C子に対して性的欲望を抱いており,その結果,C子の交際相手である被害者に対して異常なまでの嫉妬及び憎悪の念を募らせていたところ,C子と被害者の性交場面を目撃したため,嫉妬及び憎悪の念が一気に爆発して激高して,本件犯行に及んだものと認められる。 3 以上の次第であり,殺意及び動機について,判示第1の事実の認定と異なる弁護人の前記各主張は採用することができない。 (法令の適用) 1 罰条判示第1の行為刑法199条判示第2の行為包括して銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条 2 刑種の選択判示第1の罪有期懲役刑を選択判示第2の罪懲役刑を選択 3 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条 22条 2 刑種の選択判示第1の罪有期懲役刑を選択判示第2の罪懲役刑を選択 3 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重) 4 未決勾留日数の算入刑法21条 5 没収いずれも刑法19条1項1号,2項本文 6 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の事情) 1 本件は,被告人が,内妻の娘の交際相手である被害者を波刃万能ナイフで突き刺して殺害した事案(判示第1の犯行)及び業務その他正当な理由による場合でないのに,上記ナイフを含むナイフ4丁を携帯していた銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案(同第2の犯行)である。 2 殺人事案(判示第1の犯行)について被告人は,内妻の娘であり,当時16歳であった少女に対して性的感情を抱き,その交際相手であった被害者に対し,同女を奪われたことから,嫉妬及び憎悪の念を募らせて,同女及び被害者に対してその行動を監視したり尾行するというストーカー行為を繰り返していたところ,その過程の中で,同女と被害者との性交場面を目撃したことから,嫉妬及び憎悪が一気に爆発して激高した上,本件犯行に及んだものである。偶発的な激情犯とはいえ,内妻の娘に対する被告人の一方的な性的欲望並びに交際相手に対する嫉妬及び憎悪に端を発する身勝手極まりない本件犯行は,犯行の動機にもそれに至る経緯にも,酌量の余地はないというべきである。 そして,その犯行態様たるや,裸で全くの無防備であった被害者に対し,殺傷能力の高い大型で鋭利な波刃万能ナイフ(刃体の長さが約17.8センチメートル)を選択した上,被害者の身体の枢要部である腹部及び左腰部等を腹部から背部に るや,裸で全くの無防備であった被害者に対し,殺傷能力の高い大型で鋭利な波刃万能ナイフ(刃体の長さが約17.8センチメートル)を選択した上,被害者の身体の枢要部である腹部及び左腰部等を腹部から背部にかけて貫通する創傷ができる程度の強さで,かつ,当該部分を狙って複数回突き刺したものであり,しかも,大腿部にも身体を貫通する創傷ができるほどの強さで突き刺すなどしており,極めて執拗,凶悪かつ残忍な態様であるといわざるを得ない。 被害者はいまだ26歳の若さであったにもかかわらず,何物にも代え難い尊い生命を奪われたもので,その結果は重大である。もとより被害者には被告人から殺されなければならないような落ち度はなく,アルバイト先において正社員として採用された矢先,これから前途洋々たる未来があったにもかかわらず,突如として本件凶行に遭い,この世を去らざるを得なかったもので,その無念さは察するに余りある。最愛の息子を失った被害者の母親の処罰感情が極めて強いのも当然である。 さらに,本件犯行の現場に居合わせ犯行を目撃した当時16歳の少女がその衝撃により,PTSD及び解離性障害等の深刻な精神障害を発病しているのであって,被害者以外の者に与えた影響も大きい。 また,犯行後の事情も芳しくない。 被告人は,当公判廷において,殺意及び動機について,不合理な弁解に終始していることからすれば,本件犯行について真摯に反省しているとも認め難い。 被告人は,被害者の母親に対して手紙を書いた以外には,慰謝の措置を講じていない上,被害弁償は困難である。 3 銃砲刀剣類所持等取締法違反事案(判示第2の犯行)について被告人は,本件犯行当時,殺人に用いた殺傷能力の高い大型の波刃万能ナイフ以外にも,刃体の長さが約13.1センチメートルと相当長い果物ナイフ1丁,並びに刃体の 法違反事案(判示第2の犯行)について被告人は,本件犯行当時,殺人に用いた殺傷能力の高い大型の波刃万能ナイフ以外にも,刃体の長さが約13.1センチメートルと相当長い果物ナイフ1丁,並びに刃体の長さが約7.6センチメートル及び約7.7センチメートルの長さのカッターナイフ2丁を,いつでも手に取れる状態で携帯していたものであり,その犯行態様は危険かつ悪質である。上記4丁のナイフを携帯していた動機についても,上記のとおり,被害者に対する嫉妬及び憎悪によるものであり,酌量の余地は全くない。 4 以上の諸事情からすれば,被告人の刑事責任は重大であるといわざるを得ない。したがって,被告人が,殺意や動機の点を除いて判示第1の犯行の外形的事実及び判示第2の犯行については認めており,反省の言葉を述べていること,被害者の遺族に対して手紙を書くなど被告人なりに慰謝の態度を示していること,前刑の服役を終えた後約15年間は罪を犯していなかったこと,職場における被告人の仕事の評価は高いことなど,被告人に斟酌すべき事情を最大限に考慮しても,被告人を主文記載の刑に処するのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・懲役15年,ナイフ4丁の没収)平成16年9月16日福井地方裁判所刑事部裁判長裁判官久保豊裁判官中山大行裁判官谷田好史

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