令和3年3月25日判決言渡令和2年(行ウ)第96号運転免許取消処分取消請求事件 主文 1 大阪府公安委員会が令和2年1月22日付けで原告に対してした,同日から 2年間を運転免許を受けることができない期間として指定する処分のうち,同日から1年間を超えて運転免許を受けることができない期間として指定する部分を取り消す。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを4分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担と する。 事実 及び理由第1 請求 1 大阪府公安委員会が令和2年1月22日付けで原告に対してした,運転免許取消処分を取り消す。 2 大阪府公安委員会が令和2年1月22日付けで原告に対してした,同日から2年間を運転免許を受けることができない期間として指定する処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,普通自動車の運転免許(以下「免許」という。)は受けているものの, 準中型自動車の免許は受けていない原告が,令和元年9月3日に準中型自動車を運転したことについて,大阪府公安委員会から,令和2年1月22日,無免許運転をしたとして,免許取消処分(以下「本件取消処分」という。)及び免許を受けることができない期間(以下「欠格期間」という。)を2年間とする処分(以下「本件欠格処分」といい,本件取消処分と併せて「本件各処分」という。)を 受けたところ,当該準中型自動車が普通自動車であると認識しており,準中型自 動車であるとの認識を有していなかったから,当該運転は無免許運転には該当せず,また,仮に無免許運転に該当するとしても,本件欠格処分は重きに失するなどと主張して,被告を相手に,本件各処分の取消しを求める事案である。 1 関係 いなかったから,当該運転は無免許運転には該当せず,また,仮に無免許運転に該当するとしても,本件欠格処分は重きに失するなどと主張して,被告を相手に,本件各処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め(1) 免許の種類等 ア道路交通法84条1項は,自動車及び原動機付自転車(以下「自動車等」という。)を運転しようとする者は,公安委員会の免許を受けなければならない旨規定し,同条2項は,免許は,第一種運転免許(以下「第一種免許」という。),第二種運転免許及び仮運転免許に区分する旨規定し,同条3項は,第一種免許を分けて,大型自動車免許(以下「大型免許」とい う。),中型自動車免許(以下「中型免許」という。),準中型自動車免許(以下「準中型免許」という。),普通自動車免許(以下「普通免許」という。),大型特殊自動車免許(以下「大型特殊免許」という。),大型自動二輪車免許(以下「大型二輪免許」という。),普通自動二輪車免許(以下「普通二輪免許」という。),小型特殊自動車免許(以下「小型特殊 免許」という。),原動機付自転車免許(以下「原付免許」という。)及び牽引免許の10種類とする旨規定する。 イ道路交通法85条1項は,次の表の左欄に掲げる自動車等を運転しようとする者は,当該自動車等の種類に応じ,それぞれ同表の右欄に掲げる第一種免許を受けなければならない旨規定する。 自動車等の種類第一種免許の種類大型自動車大型免許中型自動車中型免許準中型自動車準中型免許普通自動車普通免許 大型特殊自動車大型特殊免許大型自動二輪車大型二輪免許普通自動二輪車普通二輪免許小型特殊自動車小型特殊免許原動機付自転車原付免許ウ道路交通法施行規 大型特殊自動車大型特殊免許大型自動二輪車大型二輪免許普通自動二輪車普通二輪免許小型特殊自動車小型特殊免許原動機付自転車原付免許ウ道路交通法施行規則2条は,道路交通法3条に規定する自動車の区分の基準となる車体の大きさ及び構造並びに原動機の大きさ(以下「車体の大きさ等」という。)について規定しているが,このうち,準中型自動車とは,大型自動車,中型自動車,大型特殊自動車,大型自動二輪車,普通自動二輪車及び小型特殊自動車以外の自動車で,車両総重量が3500㎏以 上7500㎏未満のもの又は最大積載量が2000㎏以上4500㎏未満のものである旨規定し,普通自動車とは,車体の大きさ等が,大型自動車,中型自動車,準中型自動車,大型特殊自動車,大型自動二輪車,普通自動二輪車又は小型特殊自動車について定められた車体の大きさ等のいずれにも該当しない自動車である旨規定する。 (2) 無免許運転道路交通法64条1項は,何人も,同法84条1項の規定による公安委員会の免許を受けないで,自動車等を運転してはならない旨規定する。 そして,道路交通法施行令別表第2の1の表及び同別表の備考二の1は,道路交通法64条1項の規定に違反する行為(無免許運転)等に付する基礎 点数を25点とする旨規定する。 (3) 免許の取消しア道路交通法103条1項5号は,免許(仮免許を除く。)を受けた者が,自動車等の運転に関し道路交通法若しくは同法に基づく命令の規定又は道路交通法の規定に基づく処分に違反したとき(同条2項1号から4号まで のいずれかに該当する場合を除く。)は,その者がこれらに違反した時に おけるその者の住所地を管轄する公安委員会は,政令で定める基準に従い,その者の免許を取り消し 1号から4号まで のいずれかに該当する場合を除く。)は,その者がこれらに違反した時に おけるその者の住所地を管轄する公安委員会は,政令で定める基準に従い,その者の免許を取り消し,又は6月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる旨規定する。 イ道路交通法施行令38条5項は,免許を受けた者が道路交通法103条1項5号等のいずれかに該当することとなった場合についての同項の政令 で定める基準として,1号イにおいて,一般違反行為をした場合において,当該一般違反行為に係る累積点数が,道路交通法施行令別表第3の1の表の第一欄に掲げる区分に応じそれぞれ同表の第二欄,第三欄,第四欄,第五欄又は第六欄に掲げる点数に該当したときに該当するときは,免許を取り消すものとする旨規定する。 ウ道路交通法施行令別表第3の1の表は,第一欄の「前歴(累積点数に係る当該違反行為をした日を起算日とする過去3年以内において道路交通法施行令別表第3の備考一の1から4までのいずれかに該当したことをいう。以下同じ。)がない者」の区分の第五欄に掲げる点数を「25点から34点まで」である旨規定する。 (4) 本件改正前の免許の種類等ア道路交通法84条3項は,平成27年法律第40号により改正され,平成29年3月12日に施行されたものであるところ(以下,平成27年法律第40号による改正を「本件改正」という。),本件改正前の道路交通法84条3項は,第一種免許を分けて,大型免許,中型免許,普通免許, 大型特殊免許,大型二輪免許,普通二輪免許,小型特殊免許,原付免許及び牽引免許の9種類とする旨規定する。 イ道路交通法85条1項(本件改正前のもの)は,次の表の左欄に掲げる自動車等を運転しようとする者は,当該自動車 輪免許,普通二輪免許,小型特殊免許,原付免許及び牽引免許の9種類とする旨規定する。 イ道路交通法85条1項(本件改正前のもの)は,次の表の左欄に掲げる自動車等を運転しようとする者は,当該自動車等の種類に応じ,それぞれ同表の右欄に掲げる第一種免許を受けなければならない旨規定する。 自動車等の種類第一種免許の種類大型自動車大型免許中型自動車中型免許普通自動車普通免許大型特殊自動車大型特殊免許大型自動二輪車大型二輪免許普通自動二輪車普通二輪免許小型特殊自動車小型特殊免許原動機付自転車原付免許ウ道路交通法施行規則2条(平成28年内閣府令第49号による改正前のもの)は,道路交通法3条に規定する自動車の区分の基準となる車体の大きさ等について規定し,中型自動車とは,大型自動車,大型特殊自動車,大型自動二輪車,普通自動二輪車及び小型特殊自動車以外の自動車で,車両総重量が5000㎏以上1万1000㎏未満のもの,最大積載量が30 00㎏以上6500㎏未満のもの又は乗車定員が11人以上29人以下のものである旨規定し,普通自動車とは,車体の大きさ等が,大型自動車,中型自動車,大型特殊自動車,大型自動二輪車,普通自動二輪車又は小型特殊自動車について定められた車体の大きさ等のいずれにも該当しない自動車である旨規定する。 (5) 欠格期間の指定ア道路交通法103条7項は,公安委員会は,同条1項各号(4号を除く。)のいずれかに該当することを理由として同項等の規定により免許を取り消したときは,政令で定める基準に従い,1年以上5年を超えない範囲内で当該処分を受けた者の欠格期間を指定するものとする旨規定する。 イ道路交通法施行令38条6項は,道路交 により免許を取り消したときは,政令で定める基準に従い,1年以上5年を超えない範囲内で当該処分を受けた者の欠格期間を指定するものとする旨規定する。 イ道路交通法施行令38条6項は,道路交通法103条7項の政令で定める基準として,道路交通法施行令38条6項2号ニにおいて,一般違反行 為をしたことを理由として免許を取り消したとき(同項3号に該当する場合を除く。)のうち当該一般違反行為に係る累積点数が同法施行令別表第3の1の表の第一欄に掲げる区分に応じそれぞれ同表の第五欄に掲げる点数に該当した場合につき,欠格期間を2年間とする旨規定する。 (6) 本件処分基準(乙10) 大阪府公安委員会が欠格期間の指定について定めた処分基準(令和元年12月1日大阪府公安委員会作成)の別紙の第2の1(1)(以下「本件処分基準」という。)は,一般違反行為をしたことを理由として処分を行おうとする場合に累積点数が道路交通法施行令別表第3の1の表の第1欄に掲げる区分に応じ同表の第2欄から第6欄までに掲げる点数に達したことにより,免許 の取消しの処分基準に該当することとなった者において,その者の「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」があるときは,道路交通法施行令38条6項に規定する欠格期間(2年以上に該当するもの)は,当該期間から1年間を減じた期間に軽減することができる旨規定する。 2 前提事実 以下の事実は,当事者間に争いがないか,又は,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 (1) 原告ア原告(平成8年▲月▲日生まれ。本件各処分を受けた当時23歳)は,平成30年3月13日,京都府公安委員会から,第一種普通免許を受け, 本件各処分を受けた当時,道路交通法施行令別表第3 告ア原告(平成8年▲月▲日生まれ。本件各処分を受けた当時23歳)は,平成30年3月13日,京都府公安委員会から,第一種普通免許を受け, 本件各処分を受けた当時,道路交通法施行令別表第3の1の表の第一欄の「前歴がない者」に該当していた(甲1,乙12)。 イ原告は,令和元年5月20日,A(以下「A」という。)に就職し,AのB支所(以下,単に「B支所」という。)において,Aに加入する個人の自宅等に食料品等を配送する業務に従事するようになった。B支所の副 支所長は,C(以下「C」という。)である。(甲2,乙2,7,原告本 人)(2) 本件運転原告は,令和元年9月3日の朝,Aが所有する準中型自動車(最大積載量1100㎏,車両総重量3505㎏の貨物自動車で,日産製・アトラス。以下「本件車両」という。)を運転してB支所を出発し,配送業務に従事中, 午前10時50分頃,大阪府B市(住所省略)先路上において,西方向から東進して丁字路交差点で北方向に左折進行するに当たり,本件車両を民家のブロック塀に衝突させる物損事故を起こし,自ら110番通報をしたことで,準中型免許を受けずに準中型自動車を運転していたことが発覚した(以下,同日の事故を起こすまでの運転を「本件運転」という。)(甲3,乙1~ 6)。 (3) 本件不起訴処分原告は,本件運転について,道路交通法違反(無免許運転)被疑事件の被疑者として取調べを受けるなどしたが,令和元年11月29日,同被疑事件につき,「嫌疑不十分」を理由として公訴を提起しない処分(以下「本件不 起訴処分」という。)を受けた(甲5)。 (4) 本件各処分 大阪府公安委員会は,原告が無免許運転により,前歴がない者の累積点数が25点となり,免許の取消基準に該当するとし 下「本件不 起訴処分」という。)を受けた(甲5)。 (4) 本件各処分 大阪府公安委員会は,原告が無免許運転により,前歴がない者の累積点数が25点となり,免許の取消基準に該当するとして,令和2年1月22日,意見の聴取を行った上で,原告の免許を取り消し,欠格期間を同日から2年 間と指定する旨の処分(本件各処分)をした(甲1)。 (5) 本件訴訟の提起原告は,令和2年7月21日,本件訴訟を提起した。 3 争点本件の争点は,本件各処分の適法性であり,具体的には,次の2点が争われ ている。 (1) 本件運転について,原告が無免許運転をしたとして道路交通法64条1項に該当するか否か(争点1)。 (2) 本件欠格処分のうち,欠格期間を1年間を超えて指定した部分が違法であるか否か(争点2)。 4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(本件運転について,原告が無免許運転をしたとして道路交通法64条1項に該当するか否か)について(被告の主張)原告は,本件車両を運転することが無免許運転になることについて故意がなかったから,無免許運転の違反行為がない旨主張する。 しかし,道路交通法103条1項5号は,自動車等の運転に関し同法又は同法に基づく命令に違反したことを免許の取消しの要件とし,また,同法64条1項は,公安委員会の免許を受けないで自動車を運転することを禁止していることからして,いずれも故意を要件としていないから,所定の免許を受けずに自動車を運転すれば,同項に違反したものとして,免許取消処分の 要件を充足するものである。そして,免許取消処分は,将来における道路交通の危険を防止するという行政目的のために行われる処分であることからすると,免許取消処分における無免許運転におい 消処分の 要件を充足するものである。そして,免許取消処分は,将来における道路交通の危険を防止するという行政目的のために行われる処分であることからすると,免許取消処分における無免許運転において,故意は不要であって,客観的に同法に違反する事実があれば,免許取消処分をすることができると解すべきである。 (原告の主張)原告は,Aに就職する際の面接時,免許証を提示して確認を受け,就職後も自らの免許が本件改正後(平成29年3月12日以後のことをいう。以下同じ。)に受けたものであることを告げた上,適法に運転することができる配送車両があることを確認し,原告の免許でも適法に運転することができる として本件車両を運転するよう指示されていたから,本件運転が無免許運転 であるとの故意がなかった。 原告は,無免許運転であるとの故意がなかったのであるから,本件運転について無免許運転の違反行為がなく,本件各処分は取り消されなければならない。 (2) 争点2(本件欠格処分のうち,欠格期間を1年間を超えて指定した部分が 違法であるか否か)について(原告の主張)本件欠格処分は,次のア~オの事情を踏まえれば,不当に重く,比例原則にも反し,本件不起訴処分との整合性を欠くのであって,裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある。本件運転が無免許運転であるとした場合,欠格期間は2 年間とされるのが原則であるが,事情によっては裁量によりその期間を短縮すべきであり,本件欠格処分は,欠格期間を1年間を超えて指定した部分について裁量権の範囲の逸脱又は濫用があり,取り消されるべきである。 ア本件車両は,車両総重量が3505㎏であり,本件改正前の道路交通法では普通自動車とされ,普通免許を受けていれば適法に運転することがで きた。 又は濫用があり,取り消されるべきである。 ア本件車両は,車両総重量が3505㎏であり,本件改正前の道路交通法では普通自動車とされ,普通免許を受けていれば適法に運転することがで きた。 イ原告は,本件改正後に普通免許を受けたところ,本件車両は普通自動車とされる車両総重量(3500㎏未満)を僅か5㎏超える準中型自動車(超過率は0.1%)であったから,本件運転の違法の程度は極めて小さい。 何らの免許を受けていない者や,かつて免許を受けていたが失効したまま 運転を続けていた者による無免許運転とは危険性の程度が異なる。 ウ原告は,自らの免許が本件改正後に受けた普通免許であることを理解し,就職するための面接時にそのことを告げ,Aの指示に従って本件車両を運転した。Aの責任は重大である一方で,原告には無免許運転の故意はなく,過失にとどまるものであり,悪質であると評価すべきではない。 エ原告は,これまで免許の取消処分や停止処分を受けたことはない。本件 運転の発覚の経緯も物損事故にすぎない。また,原告は,当該物損事故を起こすまで,何らの事故を起こすこともなかった。その他,原告が危険な運転をするような事情は認められない。 オ原告は,いわゆる母子家庭で育ち,原告の母は左右股関節の機能全廃により身体障害者手帳の交付を受けている。原告は,毎週,京都府宇治市(住 所省略)に居住する母を普通自動車に乗せてD市内の病院に連れていっていたが,本件各処分を受けてからはそれができなくなり,母の通院に支障が生じている。原告の本件各処分による不利益は甚大である。 (被告の主張)原告は,本件欠格処分は裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると主張する が,次のとおり,原告が主張する事情はいずれも理由がない。本件欠格処分に何ら 分による不利益は甚大である。 (被告の主張)原告は,本件欠格処分は裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると主張する が,次のとおり,原告が主張する事情はいずれも理由がない。本件欠格処分に何ら違法性がないことは明らかである。 ア原告は,本件車両が本件改正前の道路交通法では普通自動車とされ,普通免許を受けていれば適法に運転することができ,本件車両は普通自動車とされる車両総重量を僅か5㎏超えるにすぎない旨主張するが,それらの 事情により,違法の程度が減少するものではない。 イ原告は,自らの免許が本件改正後に受けた普通免許であることをAに告げ,その指示に従って本件車両を運転したなどとして,原告が無免許運転に及んだことは過失にとどまるものであり,悪質であると評価すべきではない旨主張する。 しかし,原告は,自らの免許では準中型自動車を運転することができないことを理解しており,本件車両の自動車検査証の確認等により,容易に本件車両が準中型自動車であることを確認することができたのにもかかわらず,それを怠った。また,原告は,令和元年6月から同年9月3日までの間,週5日,少なくとも60回にわたり,反復継続して無免許運転を 行っていたことを踏まえれば,本件運転は悪質であると評価されるべきで ある。 ウ原告は,これまで免許の取消処分や停止処分を受けたことはないなどとして,危険な運転をするような事情は認められない旨主張する。 しかし,運転者の過去の処分歴や違反歴については,道路交通法施行令の定める処分基準の中に取り込まれており,これらが全くない者について も累積点数の多寡に応じて処分の種類及び欠格期間の長さが定められているのであるから,過去に免許の取消処分や停止処分を受けたことがないことは,本件欠格処分が れており,これらが全くない者について も累積点数の多寡に応じて処分の種類及び欠格期間の長さが定められているのであるから,過去に免許の取消処分や停止処分を受けたことがないことは,本件欠格処分が重いことの理由にはならない。 また,原告が本件運転において起こした物損事故は,免許を受けていないのに準中型自動車を運転したがゆえに起こしたとも評価できるし,無免 許運転という本来的に高度の危険性を有し,免許制度の根幹に関わる違反によるものであることからして,原告の本件運転は危険な運転であるといわざるを得ない。 エ原告は,母の通院に支障が生じているため,本件各処分による不利益は甚大である旨主張するが,そのような事情は,原告の道路交通上の危険性 とは直接関係のない事柄であるから,運転者の危険性を評価する上で考慮すべきものではない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認 められる。 (1) 原告が受けた免許等ア原告は,平成30年3月13日,京都府公安委員会から,第一種普通免許を受けた(前記前提事実(1)ア)。 イ原告は,上記アの免許を受けた当時,それ以前に自動車教習所で本件改 正について学んでいたこと等から,本件改正により,本件改正前の道路交 通法においては普通自動車とされた車両のうち,総重量が3500㎏以上であるなどの一定の車両が準中型自動車と区分され,準中型免許を受けないと運転することができないことを認識していた(甲2,乙1,2,4,原告本人)。 (2) B支所の車両等 ア Aは,加入している個人の自宅等に食料品等を配送する業務を行っている(乙7,8)。 B支所が令和元年10月に捜査機関に提出した車両区別表によ 4,原告本人)。 (2) B支所の車両等 ア Aは,加入している個人の自宅等に食料品等を配送する業務を行っている(乙7,8)。 B支所が令和元年10月に捜査機関に提出した車両区別表によれば,B支所には,配送業務のための車両が28台あり,そのうちトヨタ製の車両(8台)は,いずれも準中型自動車(車両総重量が4895㎏~4945 ㎏)であるから,本件改正後に受けた普通免許では運転することができない車両であり,また,日産製の車両(12台)は,形状はほぼ同じであるが装備品の違い等により,普通自動車(車両総重量が3495㎏)が6台と準中型自動車(車両総重量が3505㎏~3625㎏)が6台あり,本件改正後に受けた普通免許で運転することができる車両とできない車両 があった(乙9,証人C)。 イ B支所では,配送業務に従事する各従業員に特定の車両を割り当てて貸与するものとしており,各従業員は,基本的に,割り当てられた車両を運転して配送業務に従事することになっている(乙7,9)。 (3) 原告のAへの就職 ア原告は,Aが配送業務に従事するための求人をしており,普通免許しか受けていない者でも就業可能であるとされていたことから,その求人に応募し,令和元年5月9日,Aに就職するための面接を受けた。原告は,その際,原告の運転免許証を提示した上で,配送業務に従事することができることの確認を受けた。(甲2,原告本人) イ原告は,令和元年5月10日,B支所において,配送業務の体験をする ことになり,Aの従業員が運転する車両(トヨタ製の準中型自動車)に同乗した。原告は,その際,同乗した車両の運転者であった従業員から,B支所には,普通免許を受けた時期により,運転することができる車両とそうでない車両があるので 転する車両(トヨタ製の準中型自動車)に同乗した。原告は,その際,同乗した車両の運転者であった従業員から,B支所には,普通免許を受けた時期により,運転することができる車両とそうでない車両があるので気を付けるよう言われた。原告は,それを聞いて不安になり,その体験を終えた後,C(B支所副支所長)に対し,B支所 に,本件改正後に受けた普通免許でも運転することができる車両があるかを尋ねたところ,Cは,B支所には,原告の免許で運転することができる車両とそうでない車両があるが,日産製の車両は運転することができるから大丈夫である旨答えた。そこで,原告は,安心し,Aに就職することにし,同月20日から,B支所において配送業務に従事することになった(前 記前提事実(1)イ,甲2,証人C,原告本人)。 (4) 原告が本件車両で配送業務をするに至った経緯ア原告は,Aに就職した後,研修として,他の従業員が運転する車両に同乗していたところ,同乗した際の運転者であった2名の従業員から,原告の免許では,日産製の車両であれば運転することができる旨聞いたことが あり,B支所にある日産製の車両は,原告の免許で運転することができると考えていた(甲2,乙8,原告本人)。 イ原告は,令和元年6月下旬,研修を終え,Cから日産製の準中型自動車である本件車両を割り当てられ,本件車両を運転して配送業務に従事するよう指示された。原告は,それまでの従業員とのやり取りや上記のCの指 示により,日産製の車両である本件車両は原告の免許で運転することができる普通自動車であると思い込み,本件車両の自動車検査証の備え付け場所を教えられた際,同検査証を手に取ったものの,車両総重量の数値を詳細に確認するなどして,本件車両が普通自動車であるか否かを確認することはしなかった。 と思い込み,本件車両の自動車検査証の備え付け場所を教えられた際,同検査証を手に取ったものの,車両総重量の数値を詳細に確認するなどして,本件車両が普通自動車であるか否かを確認することはしなかった。(甲2,4,乙2,3,原告本人) (5) 本件車両 本件車両は,Aが所有する日産製の準中型自動車(貨物自動車)であり,最大積載量は1100㎏,車両総重量は3505㎏である(前記前提事実(2))。 (6) 原告の本件運転等ア原告は,令和元年6月下旬頃から,週に5日程度,本件車両を運転して 配送業務に従事していた(甲4,乙2,9,原告本人)。 イ原告は,令和元年9月3日の朝,本件車両を運転してB支所を出発し,配送業務に従事中,午前10時50分頃,大阪府B市(住所省略)先路上において,西方向から東進して丁字路交差点で北方向に左折進行するに当たり,本件車両を民家のブロック塀に衝突させる物損事故を起こし,自ら 110番通報をしたことで,準中型免許を受けずに準中型自動車を運転していたことが発覚した(前記前提事実(2))。 2 争点1(本件運転について,原告が無免許運転をしたとして道路交通法64条1項に該当するか否か)について(1) 道路交通法64条1項に該当するために無免許運転の故意が必要である か否か免許の取消処分は,道路交通上危険のある運転者を道路交通の場から排除して,道路における危険を防止し,交通の安全と円滑を図ること(道路交通法1条参照)を目的として行われるものである。そして,道路交通法施行令の採用するいわゆる点数制度は,このような免許の取消し等の処分が相当で あると認められる程度に道路交通上の危険性が高いと評価できる運転者を類型的に規定し,その危険性の度合いに応じて自動車等を運転 採用するいわゆる点数制度は,このような免許の取消し等の処分が相当で あると認められる程度に道路交通上の危険性が高いと評価できる運転者を類型的に規定し,その危険性の度合いに応じて自動車等を運転することができる地位をはく奪等することにより,道路における危険を防止し,交通の安全と円滑を図るために定められたものであると解される。このように免許の取消等の処分を設けた行政目的からすると,客観的な違反行為が認められれば, 故意の有無にかかわらず,免許の取消し等の処分をすることができるものと 解される。 そして,道路交通法103条1項5号は,自動車等の運転に関し,同法又は同法に基づく命令に違反したことを免許の取消しの要件とし,同法64条1項は,何人も,同法84条1項の規定による公安委員会の免許を受けないで,自動車等を運転してはならない旨規定するところ,上記の各規定は,そ の文言上,故意があることを要件とはしてはいない。また,道路交通法,道路交通法施行令等の関係法令をみても,道路交通法64条1項に該当することを理由に免許の取消し等の処分を行うための要件として,運転者の故意があることを明文で規定しているものは見当たらない。 以上によれば,道路交通法64条1項に該当するために無免許運転の故意 は必要でないと解される。 (2) 本件運転について上記認定事実(1),(6)のとおり,原告が準中型自動車免許を受けていないのに,準中型自動車の運転をしたこと(本件運転をしたこと)が認められるから,本件運転は,道路交通法64条1項が定める無免許運転に該当し,原 告は無免許運転をしたとして,道路交通法64条1項に該当する。 そして,前記前提事実(1)のとおり,原告は,本件取消処分を受けた当時,道路交通法施行令別表第3の1 める無免許運転に該当し,原 告は無免許運転をしたとして,道路交通法64条1項に該当する。 そして,前記前提事実(1)のとおり,原告は,本件取消処分を受けた当時,道路交通法施行令別表第3の1の表の第一欄の「前歴がない者」に該当していたから,原告の本件運転について,道路交通法103条1項5号,道路交通法施行令38条5項1号イ,別表第3の1の表の第五欄に該当することに なり,道路交通法及び道路交通法施行令が定める免許の取消処分の要件を満たすから,本件取消処分は適法である。 (3) 小括以上のとおり,本件運転について,原告が無免許運転をしたとして道路交通法64条1項に該当し,本件取消処分は適法である。 3 争点2(本件欠格処分のうち,欠格期間を1年間を超えて指定した部分が違 法であるか否か)について(1) 大阪府公安委員会の裁量の範囲道路交通法103条7項は,公安委員会は,同条1項各号(4号を除く。)のいずれかに該当することを理由として同項等の規定により免許を取り消したときは,政令で定める基準に従い,1年以上5年を超えない範囲内で当該 処分を受けた者の欠格期間を指定するものとする旨規定し,道路交通法施行令38条6項は,道路交通法103条7項の政令で定める基準として,2号ニにおいて,一般違反行為をしたことを理由として免許を取り消したとき(同項3号に該当する場合を除く。)のうち当該一般違反行為に係る累積点数が道路交通法施行令別表第3の1の表の第一欄に掲げる区分に応じそれぞれ同 表の第五欄に掲げる点数に該当した場合につき,欠格期間を2年間とする旨規定する。そして,上記2(2)のとおり,原告は,本件運転により,道路交通法103条1項5号,道路交通法施行令38条5項1号イ,別表第3の1の表の第 数に該当した場合につき,欠格期間を2年間とする旨規定する。そして,上記2(2)のとおり,原告は,本件運転により,道路交通法103条1項5号,道路交通法施行令38条5項1号イ,別表第3の1の表の第五欄に該当することになるから,道路交通法及び道路交通法施行令の規定に従えば,欠格期間を指定する処分の期間は2年間とされることになる。 もっとも,上記のような道路交通法施行令の点数制度は,自動車等の運転者の交通違反や交通事故にあらかじめ一定の点数を付し,その累積点数の多寡によって推認される行為者の危険性の度合いに応じて,免許の取消しや欠格期間の指定等の処分を行うものであるところ,行為者の危険性の度合いを定型的,画一的に評価し,推認することとされているため,違反行為の態様, 違反行為をするに至った経緯・動機その他個別具体的な事情によっては,道路交通法施行令の基準に従った処分をすることが処分を受ける者の運転者としての危険性の度合いに照らして重きに失すると認められる場合もあり得る。そこで,本件処分基準は,免許の取消しの処分基準に該当することとなった者において,その者の運転者としての危険性がより低いと評価すべき特 段の事情があるときは,道路交通法施行令38条6項に規定する欠格期間(2 年以上に該当するもの)は,当該期間から1年間を減じた期間に軽減することができる旨規定していると解されるのであって,このような欠格期間の軽減に係る基準を規定することは,点数制度に係る上記弊害を緩和するものとして合理的であり,公安委員会の裁量の範囲内というべきである。そして,行政手続法12条1項が,「行政庁は,処分基準を定め,かつ,これを公に しておくよう努めなければならない」と規定し,行政庁の判断過程の透明性を確保し,国民の予測可能性 というべきである。そして,行政手続法12条1項が,「行政庁は,処分基準を定め,かつ,これを公に しておくよう努めなければならない」と規定し,行政庁の判断過程の透明性を確保し,国民の予測可能性を高め,不公正な取扱いの防止を図っていることに照らすと,大阪府公安委員会が本件処分基準を恣意的に運用することは許されないというべきである。そこで,処分を受ける者に「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」があるにもかかわらず,同公安 委員会がこれを考慮せず,処分を軽減しなかった場合には,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用により当該処分は違法と評価されることとなると解される。 (2) 本件運転についてア本件車両は,最大積載量が1100㎏,車両総重量が3505㎏である から,本件改正前の道路交通法によれば,普通自動車に区分され,普通免許を受けていれば運転することができたものである。 また,本件車両は,普通自動車に区分される車両総重量(3500㎏未満)を5㎏超えるものであるところ,その超過分は,車両総重量に占める割合からすると,僅かなものということができる。道路交通法が普通自動 車と準中型自動車とを区分する基準の一つとして車両総重量を用いているのは,車両総重量が大きくなるにつれてより高い運転技能が要求されることを考慮したものと解されることからすると,普通免許を受けた者が本件車両を運転することの危険性の度合いは,無免許運転の類型の中では,比較的小さいものであったと評価することができる。 イ上記認定事実のとおり,原告は,①Aに就職するための面接時,原告の 運転免許証を提示した上で,配送業務に従事することができることの確認を受け(上記認定事実(3)ア),②配送業務の体験を終えた後,B支所副支 原告は,①Aに就職するための面接時,原告の 運転免許証を提示した上で,配送業務に従事することができることの確認を受け(上記認定事実(3)ア),②配送業務の体験を終えた後,B支所副支所長のCから,B支所にある日産製の車両は原告の免許で運転することができるから大丈夫である旨言われ(上記認定事実(3)イ),③研修中に同乗した2名の従業員から,原告の免許では日産製の車両であれば運転するこ とができる旨聞いたことがあり(上記認定事実(4)ア),④Cから本件車両を運転して配送業務に従事するよう指示され(上記認定事実(4)イ),⑤これらの①~④の従業員とのやり取り等から,日産製の車両である本件車両は原告の免許で運転することができる普通自動車であると思い込んでいた(上記認定事実(4)イ)というのである。 このように,原告は,就職前から,B支所の実情に詳しいはずの先輩の従業員や上司から,一貫して,原告の免許でも運転することができる車両があり,B支所にある日産製の車両であれば原告の免許で運転することができる旨聞かされており,最終的には副支所長であるCから本件車両を運転するよう指示されたのであって,このような原告の状況等に照らせば, 原告が自らの免許でも本件車両を運転することができると思い込んだことにやむを得ない面があるといわざるを得ない。 したがって,原告には,自ら本件車両が普通自動車であるか否かを客観的な資料等で確認しなかったことにつき一定の落ち度があることを否定することはできないものの,無免許運転をしたことについて,強く非難する ことはできないというべきであり,このことは,原告の運転者としての危険性の度合いが比較的小さいものであることを示すものといえる。 ウ以上の諸事情を総合勘案すれば,原告が本件 ,強く非難する ことはできないというべきであり,このことは,原告の運転者としての危険性の度合いが比較的小さいものであることを示すものといえる。 ウ以上の諸事情を総合勘案すれば,原告が本件車両の割当てを受け,配送業務に従事するようになってから約2か月間,週に5日程度運転を継続する中で本件運転に及んだという事情を考慮しても,無免許運転を一般違反 行為の理由とする処分の事案としては,原告には「運転者としての危険性 がより低いと評価すべき特段の事情」があるというべきである。したがって,大阪府公安委員会が,本件処分基準に基づき処分を当該期間から1年間を減じた期間に軽減することなく,2年間を欠格期間として指定した本件欠格処分は,裁量権の範囲の逸脱又は濫用により,違法である。 (3) 小括 以上のとおり,本件欠格処分のうち,欠格期間を1年間を超えて指定した部分は,違法である。 第4 結論以上の次第で,原告の本件請求は,本件欠格処分のうち欠格期間を1年間を超えて指定する部分の取消しを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余 はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地 修 裁判官宮端謙一 裁判官山田慎悟
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