平成21(行ウ)100 療養補償給付不支給処分取消請求事件(通称 米沢労基署長療養補償不支給処分取消)

裁判年月日・裁判所
平成22年10月4日 東京地方裁判所
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判決文本文11,341 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求米沢労働基準監督署長(以下「処分行政庁」という。)が,平成20年1月25日付けで原告に対してした労働者災害補償保険法に基づく療養給付を支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が平成19年7月2日,勤務先の従業員会が主催したバドミントン大会に参加し,その終了後に同大会会場から同僚の運転する自動車に同乗して帰宅途中,速度超過等により同自動車が横転する交通事故に遭って左膝下挫滅傷,頭部挫滅創等の傷害を負った災害(以下「本件災害」という。)に関し,原告が処分行政庁に対し,本件災害は労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)7条1項2号の通勤災害に該当するとして,療養給付の請求をしたところ,処分行政庁が,本件災害は通勤災害に当たらないとして,原告の上記請求につき支給しない旨の本件処分をした。原告の審査請求が棄却され,原告の再審査請求は,当該請求日から3か月を経過しても裁決がなかったことから,原告が,被告に対し,本件処分の取消を求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び括弧内挙示の証拠による認定事実)(1) 原告の経歴等原告(昭和▲年▲月▲日生)は,平成19年4月,A株式会社(以下「本件会社」という。)に入社し,同社での2か月間の研修を経た後,約3か月間の研修(以下「本件研修」という。)目的で,同年6月から本件会社の完全子会社である株式会社B(同年9月1日にC株式会社に社名変更。以下「本件関連会社」という。)の事業場(以下「本件事業場」という。)に休職派 遣の形式で就労し,本件災害当時は,本件関連 会社の完全子会社である株式会社B(同年9月1日にC株式会社に社名変更。以下「本件関連会社」という。)の事業場(以下「本件事業場」という。)に休職派 遣の形式で就労し,本件災害当時は,本件関連会社の第一製造・技術部・製造1課で製造工程における品質改善の業務を担当していた。(乙1・59頁,79頁)なお,本件研修期間中,原告の給与は本件会社が支給していたが,原告に対する業務指示,原告の勤務管理等は,本件関連会社が行っていた。 (2) 本件研修期間中の原告の住居及び通勤方法本件研修期間中,原告の住居は,本件事業場から約5.8㎞離れた本件関連会社の寮(以下「原告宅」という。)にあり,原告は,通常,同所から本件事業場まで原動機付自転車で通勤していた。(甲1の1,同3,乙1)(3) 本件災害に至る経緯原告は,平成19年7月2日,本件事業場での勤務終了後,本件関連会社の従業員会「D会」(以下「本件従業員会」という。)主催のバドミントン大会(以下「本件大会」という。)に参加するため,通常の通勤で使用している原動機付自転車を本件事業場に置いたまま,徒歩で本件大会の会場である米沢市営α体育館(以下「本件体育館」という。)に移動し,同日午後6時から開始された本件大会に参加した。 原告は,本件大会終了後の同日午後7時過ぎころ,原告宅に帰宅しようとしたが,小雨が降っていたことから,同じ寮に居住する同僚のEに頼んでE運転の自家用車(以下「本件車両」という。)に他の同僚1名とともに同乗し,本件体育館から原告宅への帰途についたが,その際,本件車両は,原告宅のある西方に向けて出発せず,いったん東方のβ団地内を迂回する経路を採った。 同日午後7時21分ころ,山形県米沢市<以下略>所在の道路上において,Eが時速100㎞以上の速度で走行した上,路面が 宅のある西方に向けて出発せず,いったん東方のβ団地内を迂回する経路を採った。 同日午後7時21分ころ,山形県米沢市<以下略>所在の道路上において,Eが時速100㎞以上の速度で走行した上,路面が湿潤していたことも重なり,本件車両が左カーブを曲がりきれずに横転する事故が発生し,その衝撃で原告が車外に投げ出され,原告は,左膝下挫滅傷,頭部挫滅創等の傷害を 負い,その後,左下肢を膝上から切断する手術を受けた。(乙1・35頁,40頁,45頁,71~73頁,乙3の1)(4) 本件訴訟に至る経緯等原告は,本件災害は通勤(労災保険法7条1項2号)によるものであるとして,処分行政庁に対し,平成19年9月13日付けで療養給付の請求をしたが,処分行政庁は,平成20年1月24日付けで原告の負傷は通勤によるものは認められないとして,これを支給しない旨の本件処分をし,同月25日に原告に通知した。原告は,本件処分を不服として,同年2月18日付けで山形労働者災害補償保険審査官に審査請求をしたが,同年5月13日付けで棄却された。原告は,この決定を不服として,労働保険審査会に再審査請求をした(同年7月8日受付)が,同請求後3か月が経過しても裁決がなかったことから,平成21年3月8日,本訴を提起した。なお,労働保険審査会は,その後,同年6月17日付けで原告の再審査請求を棄却した。 2 本件の争点及び当事者の主張本件災害の通勤災害(労災保険法7条1項2号)該当性(1) 本件大会への参加が原告の業務と認められるか。 (原告の主張)ア本件大会を企画した本件従業員会は,本件関連会社の全社員で構成され,その運営費の5割が会社の資金により賄われているほか,総務部会,安全衛生部会,福利共済部会,社内報部会の4部会で構成され,各部会では本件関連会社の業務と密 業員会は,本件関連会社の全社員で構成され,その運営費の5割が会社の資金により賄われているほか,総務部会,安全衛生部会,福利共済部会,社内報部会の4部会で構成され,各部会では本件関連会社の業務と密接に関連する事柄を協議,決定しており,実質的に会社の業務の一部を行うという重要な役割を担い,本件従業員会の活動は,会社の業務と密接な関連を有していた。 本件大会の企画,運営は,本件従業員会と本件関連会社(総務課)が協力して行われ,本件大会からの帰宅の際には,本件会社から通勤用に支給されていたタクシーチケットを使用することが許されていた。 イ原告ら休職派遣の者を含む新入社員は,本件事業場において,研修開始当初から本件大会への参加を強く意識付けられており,本件大会が近付くにつれ,各職場での朝ミーティングの際に上司から本件大会参加に対する意識を喚起させられていた上,本件大会への参加が研修中の査定要素の一つである積極性及び協調性を測る要因の一つとなっていたことから,本件大会への参加は,事実上の強制であった。 ウ原告のように総合職で採用された新入社員としては,短い研修期間で他の従業員と親睦を深めるという意味でも,本件大会に参加することの重要性は極めて高かった。そして,原告のような立場の社員は,本件大会に参加することが,研修中の査定要素の積極性,協調性を測る要因であると考えていたのであるから,本件大会への参加は,事実上の強制されていた。 エ以上より,本件大会への参加は業務に該当する。 (被告の主張)ア本件従業員会の部会の中には,総務部会や安全衛生部会のように本件関連会社の業務そのもの又は業務と密接に関連する事項を担当していた部会もあるから,休職派遣者も含め本件関連会社の従業員全員が本件従業員会に強制加入とされていたことや同部会の役 全衛生部会のように本件関連会社の業務そのもの又は業務と密接に関連する事項を担当していた部会もあるから,休職派遣者も含め本件関連会社の従業員全員が本件従業員会に強制加入とされていたことや同部会の役職に職制の上の者が就任し,その会議が就業時間内に行われていたことも当然のことであり,それらは本件従業員会が企画実行する福利厚生行事の業務性を肯定する根拠にはならない。 本件関連会社が,本件大会の開催に協力していたことは窺われるが,その企画運営主体はあくまでも本件従業員会であったし,仮に本件体育館からの帰宅に本件会社から支給されたタクシーチケットの使用が許されていたとしても,本件事業場から本件体育館に直接赴き,同所から直接帰宅する参加者が多かったと考えられる状況の下で,ことさら当該タクシーチケットの使用を禁止する必要性に乏しいことからすれば,原告主張のこれ らの事情をもって本件大会の業務性を根拠付けるものとはいえない。 イ本件大会への参加の任意性について。職制者等による勧奨をもって,使用者側の業務命令があったと同視し得る程度の拘束が従業員に及んでいたものと客観的にみることはできず,不参加者に不利益が生じることもなかったから,本件大会への参加が強制されていたとは認められない。 ウ本件大会は,一定の労務管理政策上の効果を期待して開催されたもので,本件関連会社の業務の運営にとって客観的に必要であったこと自体は否定し難いが,①本件大会に参加したのは本件関連会社の人員中2割に満たない100名程度であること,②参加者の人数確認も,職場対抗リーグ戦の出場選手の確認の必要性や傷害保険加入手続の関係で被保険者となる者を確認する必要から行われたものと認められ,これをもって出退勤や労働時間等の勤務管理と同視できないこと,③本件大会は就業時間外に行われ 場選手の確認の必要性や傷害保険加入手続の関係で被保険者となる者を確認する必要から行われたものと認められ,これをもって出退勤や労働時間等の勤務管理と同視できないこと,③本件大会は就業時間外に行われ,参加者に対して時間外賃金は支払われておらず,他に特別の手当や報償等が支給された事実は認められないことという各事情を総合的に考慮すれば,本件大会への参加が原告の業務であったということはできない。 (2) 本件体育館が「就業の場所」(労災保険法7条2項1号)に当たるか。 (原告の主張)ア本件体育館と本件事業場の地理的近接性本件体育館は,道路を一筋隔てて本件事業場の斜め向かいに位置し,本件体育館と本件事業場の距離は100m以内,徒歩1,2分の距離であり,広大な敷地面積の本件事業場から見れば,地理的に一体と評価し得る。 イ本件体育館と本件事業場の機能的一体性本件体育館は,本件関連会社を含むβ団地内の立地企業が,本件体育館の運営会社である株式会社F(以下「本件体育館等運営会社」という。)の株主となって,同企業らの共通利用施設として建設されたものであり,米沢市も,同工業団地に企業誘致する材料として,本件体育館を含む本件 体育館等運営会社の存在を強調していたという経緯がある。このように,本件体育館の存在自体が,本件関連会社の設立の前提とされており,その設立当初から,本件関連会社の様々な行事や研修が本件体育館等運営会社の施設で行われることが予定されていたものである上,平成15年12月21日~平成16年11月9日の間に本件関連会社の社長が本件体育館等運営会社の社長を兼任していたという事情もあって,本件関連会社は,本件体育館を同社の施設と同視して利用しており,実際にも,本件体育館及びこれに併設する研修室を,平成18年度に計20回,平成19年 等運営会社の社長を兼任していたという事情もあって,本件関連会社は,本件体育館を同社の施設と同視して利用しており,実際にも,本件体育館及びこれに併設する研修室を,平成18年度に計20回,平成19年度に計44回使用している。 ウ以上によれば,本件体育館と本件事業場は一体の事業場施設と一体と見るのが合理的であり,本件体育館は「就業の場所」と評価すべきである。 仮に,本件大会への参加自体が業務とはいえないとしても,原告が本件大会のために「就業の場所」である本件体育館で費やした時間は,午後6時ころ~午後7時のわずか1時間にとどまるから,本件大会終了後の帰宅は,就業と直接的関連性のある退勤すなわち「通勤」に該当する。 (被告の主張)①本件体育館は,本件事業場から徒歩で3分程度の場所にあるが,それと同様かそれ以上に本件体育館と場所的に近接している事業場が複数存在しており,本件関連会社が専用で使用していたわけではなく,β団地内の他の立地企業や地元住民等も利用していたこと,②本件体育館は米沢市が設置する公の施設であり,管理運営主体は米沢市の指定管理者である本件体育館等運営会社であって,本件関連会社に本件体育館の管理権限はないこと,③本件関連会社は本件体育館等運営会社の株主内の1社にすぎず,持株割合も僅かで,同社の経営,業務遂行に支配力を及ぼすような立場になかったこと,④一時期本件関連会社の代表者が米沢市長と共に本件体育館等運営会社の代表者を兼務したのは,米沢市との契約に当たり利益相反を回避するための 便宜的な措置であったこと,⑤本件体育館等運営会社から本件関連会社に対し,本件体育館の使用申込方法の簡略化や使用料の割引,物品の保管等の便宜は何ら供与されていないこと,⑥本件災害発生のころの本件関連会社による本件体育館の使用頻度は,本件体育 会社から本件関連会社に対し,本件体育館の使用申込方法の簡略化や使用料の割引,物品の保管等の便宜は何ら供与されていないこと,⑥本件災害発生のころの本件関連会社による本件体育館の使用頻度は,本件体育館等運営会社研修室の利用状況や本件体育館の年間会館日数等との対比においても,ごく僅かなものであったことから,本件体育館は,本件関連会社の施設又はこれに付属する施設であるとは認められず,本件大会への参加が原告の業務であったと認められない以上,原告にとって本件体育館が「就業の場所」であったとはいえない。 (3) 本件体育館から本件災害発生地点までの移動行為が「合理的な経路及び方法」(労災保険法7条2項柱書)により行われたか。 (被告の主張)原告は,本件大会終了後,本件体育館から,通常の通勤(退勤)経路に服することのなく,Eの運転する本件車両で迂回経路を進行して本件災害に至ったものであり,これは,「合理的な経路及び方法」(労災保険法7条2項柱書)による移動行為とはいえない。 (原告の主張)被告の主張は争う。原告は,合理的な経路及び方法で移動していた。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実及び証拠(各項ごとに記載。連続する書証の中に枝番を含むものは当該枝番も含む。)によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件従業員会の概要(甲13,乙8,証人G)ア本件従業員会は,本件関連会社が従業員会として組織したもので,従業員相互の親睦と意思疎通を図り,会社の正常な運営と発展に寄与することを目的とするものである。 イ本件従業員会は,本件関連会社の全従業員(原告のように研修目的で休職派遣の形式で就労した者も含む。)で構成され,会長は工場長が就任す ることとされている。 ウ本件従業員会の会費は,一人当たり月額300円とされており,一般の 業員(原告のように研修目的で休職派遣の形式で就労した者も含む。)で構成され,会長は工場長が就任す ることとされている。 ウ本件従業員会の会費は,一人当たり月額300円とされており,一般の社員は月給から控除され,原告ら休職派遣の者の一部については,本件関連会社が本件会社に請求していた。 本件従業員会の運営に資するため,毎月の会費総額と同額の会社拠出を本件関連会社から受けている。 エ本件従業員会内の組織として,総務部会,安全衛生部会,福利共済部会及び社内報部会の4部会があり,各部会では,本件関連会社の業務と密接に関連する事項が協議,決定されている。総務部会では,就業,規律,苦情,労働条件に関する事項を,安全衛生部会では,安全の維持・確保に関する事項を,福利共済部会では,福利,厚生,文化,体育等に関する事項を,社内報部会では,社内報の発行に関する事項を各担当していた。 また,これらの事項について協議,決定する各部会の会議は,就業時間内に定期的に行われていた。 (2) 本件大会の概要(甲13,乙1・78頁,85頁~88頁,乙9~13,証人G)ア本件大会は,本件従業員会福利共済部会が企画及び主催して毎年行われる行事の一つで,平成19年6月25日,同年7月2日,同月9日,同月20日,同月30日の5日間,本件事業場の各部署対抗の形で実施された。 なお,本件従業員会企画に係る年間行事は全部で4つあり,本件大会のほか,ボーリング大会,ソフトバレー大会及びバス旅行がある。 イ本件大会の参加者に対し,本件関連会社から時間外手当等の賃金は支払われなかった。 他方,過去の大会でけが人が出た経験から,本件大会の参加者は全員傷害保険に加入することとされ,当該加入手続のために参加者名簿が作成されたが,当該名簿は本件大会終了後約1か月で処 われなかった。 他方,過去の大会でけが人が出た経験から,本件大会の参加者は全員傷害保険に加入することとされ,当該加入手続のために参加者名簿が作成されたが,当該名簿は本件大会終了後約1か月で処分され,現存しない。 ウ本件大会の運営は,段取り,競技運営,写真撮影等は本件従業員会が行い,会場予約や傷害保険に関する手続は,本件関連会社総務課が事務局となって行っていた。これらの本件大会の準備は,会場設営等を除いて,就業時間内に行われていた。 エ本件大会は任意参加であり,開催に先立ち,本件従業員会福利共済部会は,参加を呼びかけるポスターを社内の数箇所に掲示した上,各従業員に対し,個別に「振るってご参加ください。」等と呼び掛ける電子メールや声掛け等の方法により,参加募集を行っていた。 各職場の朝礼,ミーティング等の際にも,本件大会について告知し,積極的に参加を呼び掛ける等され,開催日が近付くと管理職を通じた参加者の募集等もされた。 原告のような本件研修の研修生及び本件関連会社新入社員の計7名の者は,入社教育で,説明者から本件従業員会の組織について説明され,本件大会について,「6月,7月にわたって職場対抗のバドミントン大会があるので,参加してください。」等と要請されていた。 オ本件大会は,午後6時10分ころから午後7時ころまで開催され,本件関連会社の従業員五百数十名中,選手として約50名,応援として約50名が参加していた。 なお,本件災害当日(平成19年7月2日)での原告(常昼勤務)の所定終業時刻は,午後5時であった。 (3) 本件体育館の概要及び本件関連会社による本件体育館の利用状況(甲13,乙1・54頁~55頁,58頁,80頁~85頁)ア本件大会の会場となった本件体育館は,米沢市の市営体育館で,山形県,米沢市,独 件体育館の概要及び本件関連会社による本件体育館の利用状況(甲13,乙1・54頁~55頁,58頁,80頁~85頁)ア本件大会の会場となった本件体育館は,米沢市の市営体育館で,山形県,米沢市,独立行政法人H機構,I商工会議所,民間金融機関(J銀行)のほか,本件関連会社を含むβ団地内の立地企業約60社が,指定管理者指定を受けた本件体育館等運営会社の株主となって,併設された研修施設 (研修会場,会議場所として使用)と共に,同企業及び地元地区住民の共通利用施設として,平成元年に設置された。 平成19年12月12日現在の本件体育館等運営会社の持ち株数は,発行済み株式総数9000株中,山形県が2000株,米沢市が1000株,独立行政法人H機構が3000株,I商工会議所が100株,J銀行が360株であるほか,本件関連会社を含むβ団地内の立地企業が各10株~200株の間で株式を有しており,本件関連会社の持ち株数は30株であった。 イ本件体育館は,本件事業場から公道を隔てて北西に約100m離れた位置にある。 ウ本件関連会社は,本件体育館を本件従業員会のレクリエーション行事の会場として利用するとともに,併設された研修施設を各種研修会の会場及び会議室として使用していた。平成18年度及び平成19年度における本件関連会社によるこれらの施設の利用状況(回数)は,本件体育館は,平成18年度に14回,平成19年度に7回,同研修施設は,平成18年度に6回,平成19年度に37回であったが,原告は,本件関連会社に休職派遣されてから本件大会に参加するまで,業務上外にかかわらず本件体育館及び同研修施設を利用したことはなかった。 エ本件関連会社社長は,平成15年12月21日~平成16年11月9日の間,本件体育館等運営会社社長を兼任していた。 (4) 原 外にかかわらず本件体育館及び同研修施設を利用したことはなかった。 エ本件関連会社社長は,平成15年12月21日~平成16年11月9日の間,本件体育館等運営会社社長を兼任していた。 (4) 原告の本件大会の参加に至る経緯,参加状況(甲14,原告本人)ア原告は,本件関連会社赴任直後の平成19年6月8日~同月15日の新人教育研修での説明や同社内の掲示により,本件大会の存在を知っていたが,同月18日(月)~同月29日(金)の間,通常の昼勤業務とは異なる4組三交代勤務による実習を行っており,本件大会について事務所で上司や先輩と話をする機会がなかった。原告は,通常の昼勤業務となった同 年7月2日(本件大会当日)に,朝礼で参加を呼び掛けられたことや,その後に先輩の本件大会への参加意思を確認したことを経て,同日朝に,本件大会への参加を決めた。 イ原告は,平成19年7月2日,午後5時過ぎに終業後,午後6時前に本件体育館に到着し,出欠を確認する用紙に部署と名前を記入した後,本件大会に選手として参加した。 2 争点(1)(本件大会への参加が原告の業務として認められるか)について原告は,本件大会への参加の業務遂行性を根拠付ける事情として,本件大会を主催した本件従業員会の組織及び役割が業務と密接な関連を有していたこと,運営費の5割が会社の資金で賄われている等,会社が本件大会に便宜を供与していたことを掲げ,上記認定事実のとおり,これらの事実を認定することはできる。しかしながら,一方で,上記認定事実によれば,本件大会の内容が,本件事業場の各部署対抗のバドミントン大会であり,従業員相互の親睦と円滑な意思疎通を図る意義は一定程度認められるものの,客観的にみて本件事業場における事業運営に直接かかわるものではないこと,本件大会が,任意参加の形態 抗のバドミントン大会であり,従業員相互の親睦と円滑な意思疎通を図る意義は一定程度認められるものの,客観的にみて本件事業場における事業運営に直接かかわるものではないこと,本件大会が,任意参加の形態であり,本件従業員会福利共済部会による参加募集及び入社教育,本件事業場内での朝礼,ミーティング等における管理職を通じた参加募集があったほかは,参加を強制されたり,参加を命じられるものでなく,不参加者に不利益が課せられるものでもなく,実際の参加者も本件関連会社の全従業員の約2割程度であったこと,本件大会が本件事業場の就業時間外に開催されたが,参加者に時間外手当等の賃金は支払われず,傷害保険加入手続のために一時的に参加者名簿が作成されたほか,本件関連会社が従業員の参加の有無を管理,把握するための手段を講じていなかったこと,原告も,本件災害当日の朝に本件大会への参加を初めて決意したもので,それ以前に本件関連会社の従業員等から本件大会への参加を命じられたり,参加を積極的に働き掛けられたことはないこと等の各事情が存することからすれば,原告の主張する上記各事情があるとは いえ,本件大会への参加は,原告が事業主である本件関連会社の支配,管理下にある中で行ったものと評価することは困難であり,原告の業務とは認めることはできないというべきである。 次に,原告は,原告のような.休職派遣の者を含む新入社員が,研修開始当初から本件大会への参加を強く意識付けられ,当該参加が研修中の査定要素である積極性・協調性を測る要因の一つとなっていたことを理由として,本件大会への参加が事実上の強制であった旨主張する。しかし,本件証拠中には,本件大会への参加が原告らの研修中の査定の一要因となっていた根拠は認められないし,仮に,原告らが,本件大会への参加の有無により研修中の積極 加が事実上の強制であった旨主張する。しかし,本件証拠中には,本件大会への参加が原告らの研修中の査定の一要因となっていた根拠は認められないし,仮に,原告らが,本件大会への参加の有無により研修中の積極性や協調性を評価されると考えたとしても,一般に,参加が強制された行事に参加しても積極性や協調性が評価されるわけでなく,強制参加ではない行事に参加して初めてその積極性や協調性が評価されると考えるのが道理なのであるから,原告が上記のように考えたとすれば,逆に,本件大会が事実上の強制参加ではなかったことを裏付けることになるのであり,原告が主張する上記事情は,本件大会が強制参加であったことを根拠付ける主張としては失当である。 以上のように,本件大会への参加が業務に該当することを根拠付ける原告の主張にはいずれも理由がない。 3 争点(2)(本件体育館が「就業の場所」に当たるか否か)について原告は,本件体育館が「就業の場所」(労災保険法7条2項1号)にあたる根拠として,本件関連会社が,本件体育館とこれに併設された研修施設を多数回利用していること,本件関連会社が本件体育館等運営会社の株主になり,過去の一定期間,本件関連会社の社長が,本件体育館等運営会社の社長を兼任する等していた旨主張し,上記認定事実のとおり,これらの事実を認定することはできる。しかしながら,一方で,上記認定事実によれば,本件体育館が市営体育館で,本件関連会社を含む約60社の企業及び地元地区住民の共通利用施設であり,本件関連会社の本件体育館等運営会社の持ち株数は,発行済み株式 総数の0.3%強にすぎないこと,本件体育館が本件事業場から公道を隔てて約100m離れた位置にあることという各事情によれば,本件体育館が,その利用目的にかかわらず常に本件関連会社の従業員の就業の場所になっ 0.3%強にすぎないこと,本件体育館が本件事業場から公道を隔てて約100m離れた位置にあることという各事情によれば,本件体育館が,その利用目的にかかわらず常に本件関連会社の従業員の就業の場所になっていたとまで評価することはできず,本件体育館は,当該利用目的が業務性を有する場合に限って本件関連会社従業員の就業の場所となり得るにとどまるものというべきである。そして,上記判断のとおり,本件大会への参加が原告の業務であるとは認められないのであるから,本件災害当時,本件体育館が原告の「就業の場所」であったとは認めることはできない。この点に関する原告の主張もまた,理由がない。 4 結論以上により,本件災害は,「就業の場所」から原告の住居(原告宅)への移動(退勤)中に発生したものではなく,通勤の中断後に生じたものであり,また,本件大会への参加は,労災保険法7条3項,同法施行規則9条各号に定める行為に該当しないことが明らかであるから,その余の点について判断するまでもなく,本件災害については,その発生時に同法7条1項2号に定める「通勤」を行っていたものということができず,通勤災害には該当しない。 そうすると,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第36部 裁判長裁判官渡邉弘 裁判官藤井聖悟 裁判官光岡弘志

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