主文 1 被告は、原告に対し、55万円及びこれに対する令和6年2月2日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 被告は、別紙投稿目録記載2の投稿を削除せよ。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は、これを10分し、その7を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 5 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は、原告に対し、550万円及びこれに対する令和6年2月2日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 主文第2項と同旨第2 事案の概要本件は、原告が、X(インターネットを利用してメッセージ等を投稿するこ とができる情報ネットワーク)において被告のした一連の投稿により、名誉を毀損され、プライバシー権及び肖像権を侵害されたなどと主張して、被告に対し、民法709条に基づき、慰謝料等550万円及びこれに対する令和6年2月2日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、人格権又は民法723条に基づき、上記投稿 のうち現在も公開されている部分の削除を求める事案である。 1 前提事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 ⑴ 原告は、いわゆる在日コリアンで、株式会社C(以下「訴外会社」という。) の取締役最高財務責任者であり、大阪朝鮮高級学校の生徒の保護者で構成す るオモニ会の元役員である(争いがない)。 被告は、泉南市議会の議員である(争いがない)。 ⑵ 被告は、令和6年2月2日から同月5日にかけて、Xに別紙投稿目録記載1~3の各投稿(以下、併せて「本件各投稿」といい 員である(争いがない)。 被告は、泉南市議会の議員である(争いがない)。 ⑵ 被告は、令和6年2月2日から同月5日にかけて、Xに別紙投稿目録記載1~3の各投稿(以下、併せて「本件各投稿」といい、同目録記載1の投稿を「本件投稿①」、同記載2の投稿を「本件投稿②」、同記載3の投稿を「本 件投稿③」という。)を行った(甲8~10)。 ⑶ 被告は、その後、本件投稿①及び本件投稿③を削除した(弁論の全趣旨)。 2 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は、①本件各投稿の違法性、②原告の損害及び③削除請求の当否であり、これらの点についての当事者の主張は以下のとおりである。 ⑴ 争点①(本件各投稿の違法性)について(原告の主張)被告が行った本件各投稿は、一連一体のものであるところ、以下のとおり、全体として不法行為法上違法である(仮に本件投稿①、本件投稿②及び本件投稿③を別個に評価すべきであるとしても、それらはいずれも違法である。)。 ア名誉毀損本件各投稿のうち本件投稿①の部分は、原告のいとこであるD(以下「本件親族」という。)がスパイ事件で死刑判決を受けた事実等を摘示するものであり、当該事実は、本件親族が重大な非行に及び、血縁者である原告も類似の非行性を有するかのような印象を与え、原告の社会的評価を低下さ せるから、本件各投稿は原告の名誉を毀損するものというべきである。 そして、訴外会社が泉南市から公金を受領しているとしても、その役員の一人にすぎない原告個人の活動や親族関係を公表する必要はないから、本件各投稿は、公共の利害に関するものであるとも、公益を図る目的でされたものであるともいえず、その内容が真実であっても、違法性が阻却さ れることはない。 イプライバシー権侵害 本件各投稿は、公共の利害に関するものであるとも、公益を図る目的でされたものであるともいえず、その内容が真実であっても、違法性が阻却さ れることはない。 イプライバシー権侵害本件各投稿のうち本件投稿①の部分は、前記アのとおり、原告のいとこである本件親族が死刑判決を受けた事実等を摘示するものであるところ、当該事実は、原告の私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事実であって、かつ一般人の感受性を基準にして公開を欲 しないものである。他方、前記アのとおり、原告は私企業の役員の一人にすぎず、上記事実を公表する必要はない。よって、本件各投稿は原告のプライバシー権を侵害するものというべきである。 ウ肖像権侵害本件各投稿には、原告の容ぼう等を撮影した画像が組み込まれていると ころ、被告は、訴外会社から提訴されたことを契機に、訴外会社及びその役員である原告に対する嫌がらせ等を目的として、原告に対して多数の第三者から誹謗中傷が行われることを予見しつつ、前記ア、イのような事実の摘示と共に上記画像を投稿したものである。このような目的及び態様に照らすと、上記画像がいずれもインターネット上で公開されていたもので あるとしても、本件各投稿によりこれを公表する行為は、社会生活上受忍すべき限度を超えており、原告の肖像権を侵害するものというべきである。 (被告の主張)本件各投稿は、一連一体のものであるところ、以下のとおり、全体として不法行為法上違法なものではない。 ア名誉毀損親族に犯罪者がいることと本人の非行性とは何ら関連がない上、一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、本件各投稿の内容自体から、本件親族が再審によって無罪となったことが分かるし、これらの事実は、原告 に犯罪者がいることと本人の非行性とは何ら関連がない上、一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、本件各投稿の内容自体から、本件親族が再審によって無罪となったことが分かるし、これらの事実は、原告と本件親族との関係も含めて既に公知であったから、本件各投稿は、原 告の社会的評価を低下させるものではない。 いずれにしても、訴外会社は、泉南市との間で業務委託契約を締結し、同市の公金を受領しているから、訴外会社の財務責任者である原告の活動や経歴は、公共の利害に関する事実であり、泉南市議会の議員として訴外会社に対する公金支出の問題を追及してきた被告は、市民への情報提供のために本件各投稿を行ったのであって、その目的には公益性があるところ、 本件投稿の内容は真実であるから、本件各投稿については違法性が阻却される。 イプライバシー権侵害本件親族が死刑判決を受けるなどしたことや、本件親族が原告のいとこであることは、前記アのとおり公知の事実であり、原告がこれを秘匿して いたともいえないから、これらの事実を公表されない利益が法的保護に値するということはできない。他方、本件各投稿は、前記アのとおり、公共性のある事項につき公益を図る目的でされたものであり、正当かつ相当なものである。そうすると、当該事実を公表されない原告の利益がこれを公表する理由に優越するとはいえないから、本件各投稿が原告のプライバシ ー権を侵害するものではない。 ウ肖像権侵害本件各投稿に組み込まれた画像は、いずれも原告が参加していた朝鮮学校授業料無償化活動の関係者や訴外会社がインターネット上で公開していたものである上、本件各投稿は、前記アのとおり、公共性のある事項につ き公益を図る目的でされたものである。そうすると、本件各投稿によりこ 償化活動の関係者や訴外会社がインターネット上で公開していたものである上、本件各投稿は、前記アのとおり、公共性のある事項につ き公益を図る目的でされたものである。そうすると、本件各投稿によりこれを公表する行為は、社会生活上受忍すべき限度を超えるとはいえず、肖像権を侵害するものではない。 ⑵ 争点②(原告の損害)について(原告の主張) 本件各投稿は、原告の名誉を毀損し、プライバシー権及び肖像権をも侵害 するものである上、被告が、訴外会社から提訴されるや、その役員の中から在日コリアンであると認定した原告をあえて選別して行った民族的・種族的出身に基づく攻撃であり、人種差別撤廃条約上の人種差別にも該当するから、その違法性は高度である。そして、本件各投稿は、多数の支持者を有する市議会議員である被告によってされ、その内容も、原告の容ぼうや勤務先を示 してその特定を容易にし、在日コリアンに対する差別的意識を有する者等からの更なる誹謗中傷を招くものであるから、原告は、本件各投稿により、平穏な生活を送ることが困難になり、甚大な精神的苦痛を負ったものといえる。 以上によれば、原告の精神的苦痛による損害額は500万円を下らず、また、弁護士費用は50万円が相当である。 (被告の主張)争う。 ⑶ 争点③(削除請求の当否)について(原告の主張)本件各投稿のうち本件投稿①及び本件投稿③の各部分は既に削除されてい るが、本件投稿②の部分のみによっても、原告の人格権(肖像権)が侵害されているものといえる。仮にそのようにいえないとしても、本件各投稿は、一連一体のものであり、全体として名誉毀損等の不法行為を構成するところ、その一部である本件投稿②の部分には原告の氏名及び容ぼうが示されており、これが残存する限り うにいえないとしても、本件各投稿は、一連一体のものであり、全体として名誉毀損等の不法行為を構成するところ、その一部である本件投稿②の部分には原告の氏名及び容ぼうが示されており、これが残存する限り、原告が不特定多数の第三者からの誹謗中傷の対象とさ れる危険や恐怖が残存するものといえるから、当該被害を回復するためには本件投稿②の削除を命ずる必要がある。 したがって、原告は、被告に対し、人格権又は民法723条に基づき、本件投稿②の削除を請求することができる。 (被告の主張) 本件各投稿に違法性が認められない以上、原告の削除請求は認められない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 本件親族の経歴、原告との関係等 ア本件親族は、原告のいとこであるところ、1975年(昭和50年)、留学中の大韓民国において、北朝鮮のスパイであるとして連行され、その後、死刑判決を受けたが、2015年(平成27年)、再審により無罪判決を受けた(甲11、乙9)。 イ本件親族は、その後、書籍を出版するなどして上記アの経験に関する情 報発信を行っている(甲36、弁論の全趣旨)。 ウ原告は、令和2年頃、「私はチョソンサラムです」と題するドキュメンタリー映画に出演したところ、同映画には本件親族も出演していたが、同映画において原告と本件親族との関係は明らかにされていない(甲42、証人E)。 エ原告は、令和4年2月頃、上記ウの映画の上映会におけるトークショーへの登壇を依頼されてこれを引き受けたが、その後、同トークショーに本件親族が登壇することを知り、本件親族が原告のいとこであることを理由に登壇を断るに至った(証人E、原告本人)。 におけるトークショーへの登壇を依頼されてこれを引き受けたが、その後、同トークショーに本件親族が登壇することを知り、本件親族が原告のいとこであることを理由に登壇を断るに至った(証人E、原告本人)。 オ原告は、その後、依頼者から説得されて上記エのトークショーに登壇し たが、同トークショーにおいて原告と本件親族との関係に言及されることはなかった(甲3、乙10、証人E、原告本人)。 ⑵ 本件各投稿の経緯等ア被告は、泉南市議会の議員として、泉南市が訴外会社と業務委託契約を締結して訴外会社に多額の報酬を支払っていることを問題とし、動画投稿 サイト等を通じてこれに関する情報発信を行っていたところ、令和6年2 月2日、その発言が訴外会社の社会的評価を低下させるものであるなどとして、訴外会社から損害賠償等を求める訴訟(以下「別件訴訟」という。)を提起された(甲1、被告本人、弁論の全趣旨)。 イ被告は、同日、Xに別件訴訟の提起に関するインターネット上の報道記事を引用する投稿をした上、この投稿に連結して表示される形式(いわゆ るツリー形式)で、本件投稿②をした(前提事実⑵、甲50、乙16)。本件投稿②には、別紙投稿目録記載2⑷のとおり、訴外会社の役員である原告の活動として、原告が参加した朝鮮高級学校の無償化等を求める活動に関する関係者のブログの記載(原告の発言として記載されているものではない。)の一部が抜粋して引用されており、マイクを持って発言する原告の 容ぼう等を撮影した画像1枚(上記ブログに掲載されたもの)が組み込まれていた(甲9、50、乙3)。 ウ被告は、同月5日、本件投稿①及び本件投稿③をした(前提事実⑵、甲8、10、48、弁論の全趣旨)。本件投稿①には、別紙投稿目録記載1⑷のとおり、原告が訴外会社 れていた(甲9、50、乙3)。 ウ被告は、同月5日、本件投稿①及び本件投稿③をした(前提事実⑵、甲8、10、48、弁論の全趣旨)。本件投稿①には、別紙投稿目録記載1⑷のとおり、原告が訴外会社の役員であり、大阪朝鮮高級学校のオモニ会の 元役員である旨ととともに、原告のいとこが「在日留学生捏造スパイ事件」で死刑判決を受けた本件親族である旨が記載されており、訴外会社のウェブサイトや上記イのブログにおいて公開されていた原告の容ぼう等を撮影した画像4枚が組み込まれていた(甲8、48、乙3、13の1・2)。また、本件投稿③には、別紙投稿目録記載3⑷のとおり、「同一人物で間違い なさそうですね。」と記載されており、本件投稿①に添付された画像の原告の容ぼうの部分を拡大したもの4枚が組み込まれていた(甲10、弁論の全趣旨)。 エ被告は、同日、本件投稿②に連結して表示される形式で、本件親族の無罪判決との見出しの下に本件親族が再審で無罪となった旨や本件親族が原 告のいとこである旨が記載されたインターネット上の記事のURLを引用 し、その記事の一部が画像として組み込まれた投稿を行った(甲50、乙11、12、16)。 オ被告は、同月6日頃、原告の娘がインターネット上で本件投稿①及び本件投稿③を問題としていることを知り、これらを削除した(前提事実⑶、被告本人)。 2 争点①(本件各投稿の違法性)について⑴ 名誉毀損の成否ア原告の社会的評価の低下の有無前記認定事実によれば、一連一体である本件各投稿のうち本件投稿①の部分は、原告が大阪朝鮮高級学校のオモニ会の元役員であり、そのいとこ が「在日留学生捏造スパイ事件」で死刑判決を受けた本件親族であるとの事実を摘示するものであるといえる。そして、一般の読者 の部分は、原告が大阪朝鮮高級学校のオモニ会の元役員であり、そのいとこ が「在日留学生捏造スパイ事件」で死刑判決を受けた本件親族であるとの事実を摘示するものであるといえる。そして、一般の読者の普通の注意と読み方を基準にすると、上記事実は、本件親族が、北朝鮮のスパイとして非合法活動を行って死刑判決を受けた者であり、その親族であって朝鮮学校とも関係している原告も、北朝鮮による何らかの非合法活動に関与して いるのではないかとの印象を抱かせるといえるから、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。なお、上記の「在日留学生捏造スパイ事件」との文言は、客観的には当該スパイ事件の不存在(捏造)を含意するものと解されるが、「捏造」の対象が必ずしも明らかでないこと等に照らすと、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とした場合に、当該文言自体から、 本件親族が死刑判決を受けたものの実際には非合法活動を行っていないなどと認識するとはいい難く、上記の認定評価を左右しない。 この点に関し、被告は、本件投稿②に連結して表示される投稿(認定事実⑵エ)等によれば、本件親族が再審によって無罪判決を受けたことは明らかであるから、本件各投稿の読者が、本件親族がスパイ活動を行った人 物であると誤認することはなく、その結果、本件各投稿が原告の社会的評 価を低下させることもないと主張する。しかしながら、仮に本件各投稿の読者が上記投稿を目にしたとしても、直ちに表示されたURLに係る記事を参照するとはいえない上、当該投稿に組み込まれた上記記事の画像においては、本件親族のいとこでオモニ会の役員をしていた原告が朝鮮学校に通っており、親族から「おまえが朝鮮総連とかかわりのあるところに行っ ているからだ」と言われたという部分が下線を付されて強調され いては、本件親族のいとこでオモニ会の役員をしていた原告が朝鮮学校に通っており、親族から「おまえが朝鮮総連とかかわりのあるところに行っ ているからだ」と言われたという部分が下線を付されて強調されている一方、無罪判決等に係る部分は何ら強調されていないこと(甲50、乙11、12)等に照らすと、上記投稿があるからといって、本件各投稿により原告の社会的評価が低下することがないということはできない。また、被告は、原告のいとこが再審無罪となったことが分かるインターネット上の記 事(乙9)のURLを本件投稿①に記載したなどと供述するが(被告本人)、仮にそのような事実があるとしても、本件各投稿の読者が直ちに表示されたURLに係る記事を参照するとはいえないから、上記の認定評価を左右するものではない。よって、被告の上記主張は採用することができない。 イ違法性阻却の有無 民事上の不法行為たる名誉毀損については、その行為が公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁参照)。 被告は、泉南市の公金を受領している訴外会社の財務責任者である原告の活動や経歴は公共の利害に関する事実であるところ、泉南市議会の議員として訴外会社に対する公金支出を問題としてきた被告は、市民への情報提供の目的で本件各投稿を行ったのであって、その目的には公益性があるなどと主張し、これに沿う証拠(被告本人)もある。しかしながら、原告 のいとこである本件親族が死刑判決を受けたといった事実が、泉南市によ る訴外会社に対する公金の支出の当否と実 あるなどと主張し、これに沿う証拠(被告本人)もある。しかしながら、原告 のいとこである本件親族が死刑判決を受けたといった事実が、泉南市によ る訴外会社に対する公金の支出の当否と実質的な関連性を有するものとは認められない。この点について、被告は、訴外会社の財務責任者である原告が北朝鮮による非合法活動と関係していれば、訴外会社に支出された公金が北朝鮮に流出する可能性があるため、これに関する情報を市民に提供する必要があるとするようであるが(被告本人)、本件親族が北朝鮮のスパ イであるとして死刑判決を受けた事実があるとしても、原告自身の行状とは直接関係がない上、本件親族もその後に再審により無罪判決を受けていることに照らすと、当該事実が原告と北朝鮮による非合法活動との関係を合理的に疑わせるものということはできない。そして、本件各投稿が、訴外会社の被告に対する別件訴訟の提起を受けてされていること(認定事実 ⑵イ)をも考慮すれば、泉南市による訴外会社に対する公金の支出の当否と関連性の乏しい上記事実を殊更摘示した本件投稿①は、別件訴訟の提起に対する反感等に基づくものである可能性を否定することができず、これが専ら公益を図る目的に出たものであるとは認められない。 よって、本件投稿①を含む本件各投稿については、その余の点について 判断するまでもなく、違法性が阻却されない。 ウ小括以上によれば、本件各投稿は、原告の名誉を毀損する違法なものであるといえる。 ⑵ プライバシー権侵害の成否 個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となるというべきところ(最高裁平成29年1月31日第三小法廷決定・民集71巻1号63頁参照)、前記⑴アのとおり、本件投稿①を含む本件各投稿は、原 る事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となるというべきところ(最高裁平成29年1月31日第三小法廷決定・民集71巻1号63頁参照)、前記⑴アのとおり、本件投稿①を含む本件各投稿は、原告のいとこである本件親族がスパイ事件により死刑判決を受けた事実等を摘示するものであり、当該事実は、その後に再審により無罪判 決がされているとしても、みだりに知られたくない原告のプライバシーに属 する事実ということができる。この点について、被告は、本件親族が死刑判決を受けた事実や本件親族が原告のいとこである事実は既に公に知られており、原告も秘匿していなかったから、これを公表されない利益は法的保護に値しない旨を主張する。しかしながら、前記認定事実のとおり、原告は、本件親族がいとこであることを理由に本件親族と共にトークショーに登壇する ことを一度は断っていること(認定事実⑴エ)等に照らすと、積極的に秘匿の措置を講じていなかったとしても、本件親族との関係が広く知られることを欲していなかったものと認められ、また、少なくとも原告と本件親族との関係が公知であったと認めるに足りる証拠はない(一部の第三者が当該関係を知っており、インターネット上で検索・閲覧が可能な記事にこれが記載さ れていたとしても、そのことをもって直ちに当該事実が公に知られていたとまではいうことができない。)。よって、被告の上記主張は採用することができない。 そして、被告が泉南市による訴外会社に対する公金支出の問題を追及していたとしても、上記摘示に係る事実が当該支出の当否と実質的な関連性を有 するものとは認められないことは前記⑴イのとおりであるから、これを公表する必要性があったということはできない。被告は、本件各投稿は公共性のある事項につき公益を図る目的 否と実質的な関連性を有 するものとは認められないことは前記⑴イのとおりであるから、これを公表する必要性があったということはできない。被告は、本件各投稿は公共性のある事項につき公益を図る目的でされたものであり、正当かつ相当なものであるなどと主張するが、そのようにいえないことは上記のとおりであり、被告の上記主張は採用することができない。 以上によれば、当該事実を公表されない原告の利益がこれを公表する理由に優越すると認められるから、本件投稿①を含む本件各投稿は、原告の上記利益を侵害するものといえる。 ⑶ 肖像権侵害の有無人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利 益を有すると解するのが相当であり(最高裁平成17年11月10日第一小 法廷判決・民集59巻9号2428頁参照)、これを被撮影者の承諾なく公表する行為が不法行為法上違法となるかどうかは、諸般の事情を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。 これを本件についてみると、本件各投稿には、前記認定事実のとおり、原 告の容ぼう等が撮影された画像が合計9 枚組み込まれているところ(認定事実⑵イ、ウ)、原告はこれらの画像の公表を承諾していないものと認められる(弁論の全趣旨)。そして、これらの画像は、いずれもインターネット上で既に公開されていたものであり、その内容等に照らしても秘匿性の高いものとはいえないものの(認定事実⑵イ、ウ)、本件各投稿は、前記⑴及び⑵のとお り、原告の名誉を毀損し、原告のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益を侵害する事実を摘示するものであり、これに原告の容ぼう等を撮影した画像を組み込むことは、上記侵害を助長 とお り、原告の名誉を毀損し、原告のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益を侵害する事実を摘示するものであり、これに原告の容ぼう等を撮影した画像を組み込むことは、上記侵害を助長するものといえるのであって、その必要性も認め難い。被告は、上記各画像を本件各投稿に組み込んで公表した行為は公共性のある事項につき公益を図る目的でされたものであ り、正当かつ相当なものであるなどと主張するが、本件各投稿が原告の名誉を毀損するなどするものであり、これに原告の容ぼう等を撮影した画像を組み込むことに正当性が認められないことは上記のとおりである。被告の上記主張は採用することができない。 以上によれば、上記各画像を本件各投稿に組み込んで公表した行為は、社 会生活上受忍すべき限度を超えて、原告の上記利益を侵害するものといえる。 ⑷ まとめ以上のとおり、一連一体である本件各投稿は、原告の名誉を毀損し、原告のプライバシーに属する事実や自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない利益を侵害するものであり、全体として不法行為法上違法と評 価すべきである。 3 争点②(原告の損害)について本件各投稿は、前記2⑷のとおり、原告の名誉を毀損し、原告のプライバシーに属する事実や自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない利益をも侵害するものである。被告は、泉南市議会の議員であり、本件各投稿がされたⅩのアカウントは数万人の継続的な閲覧者(いわゆるフォロワー)を 有していること(甲18)等からすれば、本件各投稿も不特定多数の者に閲覧されたものと推認することができる。そして、本件各投稿は、前記のとおり、北朝鮮による非合法活動に関係を有する者であることを示唆しつつ原告を特定する内容であり、一定の政治的思 稿も不特定多数の者に閲覧されたものと推認することができる。そして、本件各投稿は、前記のとおり、北朝鮮による非合法活動に関係を有する者であることを示唆しつつ原告を特定する内容であり、一定の政治的思想等を有する者による原告個人に対する攻撃を誘発する危険を含むものといえることをも考慮すれば、これにより原告が 被った精神的苦痛は小さくないものと認められる(なお、原告は、本件各投稿は、民族的・種族的な出身に基づく攻撃であり、人種差別撤廃条約上の人種差別に該当するなどと主張するが、本件各投稿は、前記認定事実のとおり、原告個人の親族関係や活動に言及するものの、在日コリアンといった属性一般に着目したものとは認められないから(認定事実⑵イ、ウ)、本件各投稿が民族的・ 種族的な出身に基づく攻撃であるとまではいうことができず、原告の上記主張は前提を欠く。)。他方、前記認定事実のとおり、本件各投稿のうち本件投稿①及び本件投稿③については、被告自身が投稿の翌日頃に削除しており(認定事実⑵オ)、公開されていた期間は短いこと、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は50万円をもって相当と 認める。また、被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は5万円と認められる。 よって、原告に生じた損害は、合計55万円と認めるのが相当である。 4 争点③(削除請求の当否)について本件各投稿は、前記2⑷のとおり、原告の名誉を毀損するなどするものであ り、全体として不法行為法上違法と評価されるところ、本件投稿②は、その一 部であり、現在もインターネット上で閲覧可能な状態にある。そして、本件投稿②からは、原告の氏名や勤務先、容ぼう等を認識し得るのであり、これが残存する限り、原告が特定される状態が継 その一 部であり、現在もインターネット上で閲覧可能な状態にある。そして、本件投稿②からは、原告の氏名や勤務先、容ぼう等を認識し得るのであり、これが残存する限り、原告が特定される状態が継続するものといえるから、上記の名誉毀損による被害を完全に除去、回復するためには、本件投稿②の削除を命ずることが有効かつ必要であるといえる。他方、本件投稿②を削除することにより 被告の表現の自由が過度に制約されることになるというべき事情は認められない。そうすると、民法723条に基づき、被告に対し、本件投稿②の削除を命ずるのが相当である。 よって、原告の本件投稿②の削除を求める請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がある。 5 結論以上のとおりであって、原告の請求は、主文第1項及び第2項の限度で理由があるからこれらを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法64条本文を適用し、主文第2項についての仮執行宣言は相当でないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第16民事部 裁判長裁判官山本拓 裁判官坂本雅史 裁判官山下栞菜 (別紙)省略
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