- 1 - 令和7年2月21日宣告令和6年(わ)第111号、同第160号住居侵入、窃盗、強盗致傷、麻薬及び向精神薬取締法違反、住居侵入未遂、大麻取締法違反、傷害被告事件 主文 被告人を懲役7年に処する。 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。 佐賀地方検察庁で保管中の大麻1点(令和6年領第535号符号1-1)を没収する。 理由 理由中の秘匿事項(共犯者BないしFの氏名、第8の犯行場所)は、別紙(省略)の2項及び3項に記載のとおり。 (犯罪事実)第1 (令和6年11月6日付け起訴状記載の公訴事実第1)被告人は、特定少年であるが、Cと共謀の上、窃盗の目的で、令和6年1月18日午前0時22分頃から同日午前2時20分頃までの間に、佐賀県鳥栖市(住所省略)V1方に、同人方車庫の無施錠の引き戸から侵入し、その頃、同所において、V2管理の現金約2万円を窃取した。 第2 (令和6年11月6日付け起訴状記載の公訴事実第2)被告人は、特定少年であるが、法定の除外事由がないのに、令和6年1月18日頃、福岡市(住所省略)において、麻薬であるN・α-ジメチル-3・4-(メチレンジオキシ)フェネチルアミン(別名MDMA)又はその塩類若干量を自己の身体に摂取し、もって麻薬を施用した。 第3 (令和6年8月9日付け起訴状記載の公訴事実第1)被告人は、特定少年であるが、B、C及びDと共謀の上、窃盗の目的で、令和6年2月7日午後6時10分頃から同月8日午前2時頃までの間に、長崎- 2 - 県佐世保市(住所省略)V3方に無施錠の玄関ドアから侵入し、その頃、同所において、同人ほか2名管理の現金約5万円及び財布等8点(時価合計約9万2500円相当)を窃取した。 第4 (令和6年8月9日付け起訴状記載 所省略)V3方に無施錠の玄関ドアから侵入し、その頃、同所において、同人ほか2名管理の現金約5万円及び財布等8点(時価合計約9万2500円相当)を窃取した。 第4 (令和6年8月9日付け起訴状記載の公訴事実第2)被告人は、特定少年であるが、B、C及びDと住居侵入及び窃盗の限度で共謀の上、令和6年2月8日午前2時頃、長崎県佐世保市(住所省略)V4(当時30歳)方に無施錠の玄関ドアから侵入し、その頃、同所において、同人管理の現金3000円を窃取したが、同人に発見されたことから、逮捕を免れるため、その上半身を蹴り、さらに、その場にいたCと共謀の上、V4の顔を拳で殴るなどの暴行を加え、よって、同人に全治約1週間を要する口腔内裂創などの傷害を負わせた。 第5 (令和6年11月6日付け起訴状記載の公訴事実第3)被告人は、特定少年であるが、Bと共謀の上、窃盗の目的で、令和6年2月16日午前2時頃から同日午前4時30分頃までの間に、佐賀県鳥栖市(住所省略)V5方に、不正に入手した鍵を用いて玄関ドアを解錠して侵入し、その頃、同所において、V6管理の現金合計約115万円並びにマイナンバーカード等17点在中の財布2点及びポーチ1点(時価合計約2100円相当)を窃取した。 第6 (令和6年8月9日付け起訴状記載の公訴事実第3)被告人は、特定少年であるが、B、E及びFと住居侵入及び窃盗の限度で共謀の上、令和6年3月17日午前5時35分頃、佐賀県唐津市(住所省略)V7方に無施錠の1階東側高窓から侵入し、その頃、同所において、台所に置かれたバッグの中を確認するなどして物色したが、2階に立ち入った際、同階にいたV8(当時63歳)が階下の異変に気付いたことから、逮捕を免れるため、階段の途中にいた同人の背後からその背中を蹴る暴行を加えて、同人を転落させるな などして物色したが、2階に立ち入った際、同階にいたV8(当時63歳)が階下の異変に気付いたことから、逮捕を免れるため、階段の途中にいた同人の背後からその背中を蹴る暴行を加えて、同人を転落させるなどし、よって、同人に加療約2か月間を要する右前額部打撲及び頚椎- 3 - 捻挫の傷害を負わせた。 第7 (令和6年11月6日付け起訴状記載の公訴事実第4)被告人は、特定少年であるが、B及びCと共謀の上、窃盗の目的で、令和6年4月11日午前4時5分頃、第5記載のV5方に、南側掃き出し窓の施錠を解いて侵入しようとしたが、物音に気付いた同人から声をあげられて逃走し、その目的を遂げなかった。 第8 (令和6年11月6日付け起訴状記載の公訴事実第5)被告人は、特定少年であるが、みだりに、令和6年4月11日、犯行場所において、大麻を含有する植物片約0.964グラム(令和6年領第535号符号1-1はその鑑定残量)を所持した。 第9 (令和6年11月6日付け起訴状記載の公訴事実第6)被告人は、特定少年であるが、令和6年4月13日午前4時9分頃、佐賀県伊万里市(住所省略)東側路上において、V9(当時71歳)に対し、その背後からその後頭部を特殊警棒様のもので殴打した上、防御する同人の右手等を複数回特殊警棒様のもので殴り、その身体を蹴るなどの暴行を加え、よって、同人に加療約7日間を要する後頭部打撲、右手挫傷、左上腕打撲等の傷害を負わせた。 第10 (令和6年8月9日付け起訴状記載の公訴事実第4)被告人は、特定少年であるが、Bと共謀の上、令和6年4月16日午前0時45分頃から同日午前4時50分頃までの間に、佐賀県杵島郡(住所省略)V10方敷地内において、同所に駐車中の自動車内から、同人管理の現金約6000円及び透明ポーチ等2点(時価合計約600 日午前0時45分頃から同日午前4時50分頃までの間に、佐賀県杵島郡(住所省略)V10方敷地内において、同所に駐車中の自動車内から、同人管理の現金約6000円及び透明ポーチ等2点(時価合計約600円相当)を窃取した。 (法令の適用)罰条第1、第3、第5住居侵入の点いずれも刑法60条、130条前段- 4 - 窃盗の点いずれも刑法60条、235条第2令和5年法律第84号附則8条により同法による改正前の麻薬及び向精神薬取締法66条の2第1項、27条1項第4、第6住居侵入の点いずれも刑法60条、130条前段強盗致傷の点いずれも刑法60条、240条前段第7刑法60条、132条、130条前段第8令和5年法律第84号附則8条により同法による改正前の大麻取締法24条の2第1項第9刑法204条第10刑法60条、235条科刑上一罪の処理第1、第3、第5いずれも刑法54条1項後段、10条(重い窃盗罪の刑で処断)第4、第6いずれも刑法54条1項後段、10条(重い強盗致傷罪の刑で処断)刑種の選択 第1、第3、第5、第7、第9、第10 いずれも懲役刑を選択第4、第6いずれも有期懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い第4の罪の刑に加重)未決勾留日数の算入刑法21条没収主文掲記の大麻1点令和5年法律第84号附則8条により同法に- 5 - よる改正前の大麻取締法24条の5第1項本文訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(処遇選択及び量刑の理由)第1 処遇選択の理由 1 弁護人は、少年法55条に基づき、本件を家庭裁判所に移送して、 24条の5第1項本文訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(処遇選択及び量刑の理由)第1 処遇選択の理由 1 弁護人は、少年法55条に基づき、本件を家庭裁判所に移送して、被告人を保護処分に付すべきと主張している。 2 そこで、まず保護処分の可能性につき検討すると、次の事情が指摘できる。 (1) 被告人は、幼少期から発達の遅れが見られ、衝動性の高さが見られたものの、そのような発達特性に合わせた適切な対応が取られることがなかったこともあって、学校での勉強はほとんどしたことがなく、中学3年時にそれまで打ち込んでいた野球が続けられなくなると、不登校となって生活を乱し、本件の共犯者の一人であるBの影響で大麻を繰り返し使用するようになった。その後、被告人は、両親の勧めもあって工務店等で働くようになり、真面目に稼働していた時期もあったが、夜間に、職場の寮を抜け出して不良仲間と遊ぶようになり、令和6年1月頃からは、大麻を買う金欲しさから、共犯者らと共に、侵入盗や車上荒らしといった犯行を繰り返すようになって、本件各犯行に及んだ。 (2) 確かに、被告人は、本件各犯行による身柄拘束を受けた後に、弁護人の勧めもあって、それまでほとんどしたことがなかった勉強に真剣に取り組むようになり、現在では、両親の支援にも感謝し、その愛情を感じられるようになっている。被告人は、これまでに少年院での教育を受けたことはないし、衝動性は訓練によりコントロールが可能な部分もあるはずであるから、薬物や悪い友人との付き合いを断ち切ることができれば、両親の支援を受けつつ、更生することも不可能ではないようにも思われる。 しかし、他方で、被告人は、後記のとおり簡単に金が手に入るという考え- 6 - から窃盗を始め、本件各犯行を繰り返す中で、暴力を伴う 受けつつ、更生することも不可能ではないようにも思われる。 しかし、他方で、被告人は、後記のとおり簡単に金が手に入るという考え- 6 - から窃盗を始め、本件各犯行を繰り返す中で、暴力を伴う形に犯行をエスカレートさせるなど、徐々に自制が効かなくなって短期間にその犯罪性向を深化させたといえるし、薬物に関しても、相当長期間にわたって常習的に大麻を使用する生活を送っていたから、これを断ち切ることは容易ではないと考えられる。また、本件各犯行の悪質さや件数の多さを考えると、被告人が更生するためには、まずは時間を掛けて自分の罪の重さを十分自覚させる必要もあると考えられる。 そうすると、最長3年間という限られた少年院の入院期間の中で、被告人の問題性を十分に改善して更生させることができるかは疑問がある。確かに、被告人が勉強を続けたいという気持ちは、これからの被告人の更生のために役立つものではあるが、刑務所でも若年の受刑者に対する指導は行われており、本人の気持ち次第で勉強は続けられるはずであるから、少年院でなければ被告人が更生できないなどともいえない。 (3) 以上によれば、被告人を保護処分に付する方が更生のために適しているとはいえない。 3 次に、保護処分の許容性につき検討すると、次の事情が指摘できる。 (1) まず、強盗致傷や侵入窃盗といった一連の事件(第1、第3ないし第7、第10)について見ると、被告人は、共犯者らと共に、僅か3か月のうちに佐賀県内だけでなく、長崎県佐世保市内に足を伸ばすなど広域にわたって、7件もの事件を起こした。被告人は、大麻を買う金欲しさから、盗みをすれば仕事をするより簡単に金が手に入るなどと考え、共犯者らと共に、目出し帽や手袋、黒ずくめの衣服などの犯行道具を準備した上で、無施錠の住居や自動車を狙い、住宅街を手分 麻を買う金欲しさから、盗みをすれば仕事をするより簡単に金が手に入るなどと考え、共犯者らと共に、目出し帽や手袋、黒ずくめの衣服などの犯行道具を準備した上で、無施錠の住居や自動車を狙い、住宅街を手分けして物色するなどして犯行に及んでおり、計画性の高い犯行といえる。また、被告人は、一連の犯行の途中からは、家人から発見されても暴力を加えて逃げればよいなどと考え、催涙スプレーや特殊警棒をも準備し、実際に2度にわたって強盗致傷事件に及ぶなど、犯行内- 7 - 容をエスカレートさせており、特に、第6の犯行では、高齢の被害者の背中を強く蹴って階段から突き落とすなど、一歩間違えば被害者の生命を奪う危険性の高い凶悪な犯行にまで及んだ。 犯行結果を見ても、強盗致傷や侵入窃盗といった一連の事件による被害額は合計約122万円と多額である上、被害者らやその家族らに与えた恐怖感、不安感といった精神的な被害も大変大きかったといえる。特に加療約2か月間を要する傷害を負った被害者がいることも考えても、一連の犯行による被害結果は重大といえる。 被告人は、他の共犯者らがしり込みする中で、自ら率先して住宅へ侵入して金品を窃取するなど積極的に各犯行に関与し、共犯者らの中でも中心的な役割を果たした。被告人は、同じく中心的な役割を果たしていたBからうまく利用されていた面もあるとは思われるが、一連の犯行の途中で警察の捜査を受けていたにもかかわらず、その後も犯行を思いとどまることなく、むしろ、上記のとおり暴力を伴う形に犯行をエスカレートさせたことからすれば、厳しい非難を免れないといえる。 さらに、深夜の住宅街で住民の寝込みを襲うといった凶悪な犯行が繰り返されたことにより、地域の住民に対し与えた不安感等の社会的な影響も軽く見ることはできない。 (2) そのほか、傷害(第9 える。 さらに、深夜の住宅街で住民の寝込みを襲うといった凶悪な犯行が繰り返されたことにより、地域の住民に対し与えた不安感等の社会的な影響も軽く見ることはできない。 (2) そのほか、傷害(第9)の犯行を見ても、被告人は、特殊警棒の威力を試したいなどと考え、通行中の被害者を狙って、いきなり後頭部を目掛けて特殊警棒で殴りつけるといった強度の暴行を加えたものであるし、麻薬の施用(第2)や大麻の所持(第8)の犯行も、前記のとおり、被告人が中学3年生頃から長期間にわたって大麻の使用を繰り返す中で敢行されており、被告人には違法薬物に対する常習性は顕著といえる。 (3) 確かに、被告人の両親の尽力により、第1、第3、第4、第6、第9、第10の事件の被害者らに対して被害弁償が行われており、このうち、第6の- 8 - 強盗致傷を含む3件の被害者らが被告人に対する寛大な処分を希望していることは、事後的にせよ犯行の悪質性を相当程度減少させる事情といえる(ただし、115万円余りの財産的被害を受けた第5、第7の被害者に対する被害弁償は未了となっている。また、第4の強盗致傷事件の被害者も、被害に遭ったことで日常生活に影響を与えるような強い恐怖感を抱いたものであり、同被害者は、被害弁償金を受領し、被告人の謝罪の気持ちを理解するような意向を示しているとはいえ、現在でも、被告人を許すというはっきりとした意向を示しているわけではない。)が、このように事後的な被害回復が相当程度なされていることを十分に踏まえても、上記(1)(2)の事情に照らせば、原則検察官送致対象事件である強盗致傷2件を含む本件各犯行につき、凶悪性、悪質性を大きく減じて保護処分を許容できる特段の事情があるとは認め難い。 4 以上によれば、本件について保護処分相当性があるとは認められない。弁護 である強盗致傷2件を含む本件各犯行につき、凶悪性、悪質性を大きく減じて保護処分を許容できる特段の事情があるとは認め難い。 4 以上によれば、本件について保護処分相当性があるとは認められない。弁護人の主張は採用できない。 第2 量刑の理由 1 本件の犯情に関しては、第1の3において詳しく述べたとおりであって、強盗致傷事件や侵入窃盗といった一連の事件(第1、第3ないし第7、第10)については、被告人は、薬物を買う金を得るために、共犯者らと共に、夜間に無施錠の住居や自動車等を狙って、広域にわたり短期間に7件もの事件を繰り返したものである。特に強盗致傷事件は一歩間違えば被害者の生命を奪いかねない危険な犯行であり、被告人は、共犯者間でも中心的な役割を果たしたといえるし、そのほかの傷害事件(第9)や、麻薬の施用(第2)、大麻の所持(第8)の犯行の犯情も芳しくないといえる。 そして、このような犯罪事実に直接関係する事情を中心に据えた上で、刑の公平性の観点から、同種事案の量刑傾向(事後強盗の類型により、財物奪取の点が既遂となった強盗致傷事件ないし同種事件2件から4件を中心とす- 9 - る事案であり、被告人に量刑上考慮すべき前科のないもの)に照らして検討すると、本件は、同種事案の中では重い部類に属する事案といえるから、被告人に対しては、相当期間の実刑をもって臨むしかないといえる。 2 その上で、被告人に対する具体的な刑期を定めるに当たって、以上の事情に加え、犯情以外の点を見ると、第1の3(3)において述べたとおり、被告人の両親の尽力により、第5、第7の事件を除く被害者らに対し被害弁償が行われており、このうち3件の被害者らが被告人に対する寛大な処分を希望していることは、被告人に有利な事情として十分に考慮すべきである。このほか、被告人は、 、第7の事件を除く被害者らに対し被害弁償が行われており、このうち3件の被害者らが被告人に対する寛大な処分を希望していることは、被告人に有利な事情として十分に考慮すべきである。このほか、被告人は、特定少年であり前科がないこと、被告人の両親が出廷し、被告人に対する今後の指導、監督を約束するとともに、被告人自身も、事実をいずれも素直に認めた上で、被害者らに強い恐怖や不安を与えたことにつき謝罪の言葉を述べ、また、両親の法廷での様子を目にして、反省の気持ちを強めている様子であることなど、犯情以外の点で、被告人にとって有利に考慮すべき事情が認められる。 そこで、それらの事情をも考慮し、被告人に対しては、主文の刑に処するのが相当と判断した。 (求刑・懲役10年及び大麻の没収)令和7年2月25日佐賀地方裁判所刑事部 裁判長裁判官岡 﨑 忠之 裁判官松村一成 - 10 - 裁判官秋山慎悟
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