令和5年2月9日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年(ワ)第532号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年10月26日判決 主文 1 被告は、原告Aに対し、7177万4877円及びこれに対する平成27年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、220万円及びこれに対する平成27年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。 5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告Aに対し、1億6841万5864円及びこれに対する平成27年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、545万円及びこれに対する平成27年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要平成27年4月に京都府立高校に入学し、自転車競技部に入部した原告Aは、同年5月10日、自転車競技部の活動として、滋賀県内の国道の下り坂を走行中、右曲がりのカーブを曲がりきることができずにガードレールに衝突し、側溝に転落して、両下肢全廃等の後遺障害を負った。 原告らは、顧問の教諭の指導に注意義務違反があり、これにより上記事故が 発生したと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、原告Aにおいては1億6841万5864円及びこれに対する違法行為の日である同日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割 して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、原告Aにおいては1億6841万5864円及びこれに対する違法行為の日である同日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、同人の父である原告Bにおいては545万円及びこれに対する同日から支払済みまで上記割合による遅延損害金の支払を求め ている。 1 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア原告Aは、平成11年5月生まれの男性であり、平成27年4月、京都 府立C高等学校に入学し、自転車競技部に入部した。なお、原告Aは、入部まで自転車競技を経験したことがなかった。(甲33、弁論の全趣旨)原告Bは、原告Aの父であり、下記(3)の本件事故当時、親権者として原告Aを監護していた。なお、原告Bは原告Aの母とは本件事故までに離婚していた。(甲34、弁論の全趣旨) イ被告は、C高校の設置者である。 Dは、本件事故当時、C高校の教諭で、自転車競技部の顧問であった。 同教諭は、学生時代は自転車競技部に所属し、昭和60年に京都府の教員に採用されてからは一貫して自転車競技部の顧問として指導に当たり、前々任校、前任校のいずれにおいても、自転車競技部を全国高校総 体に出場させた。(乙34)⑵ 原告Aの自転車競技部への入部及び事故発生までの練習状況ア C高校の自転車競技部は、平成26年にD教諭がC高校に赴任したのを契機として発足し、平成27年4月当時、1年生が5人、2年生と3年生がそれぞれ3人ずつ在籍していた(甲5、9、33、乙34、36、 弁論の全趣旨)。 イ原告Aを含む1年生は、体験入部期間中は校内で 7年4月当時、1年生が5人、2年生と3年生がそれぞれ3人ずつ在籍していた(甲5、9、33、乙34、36、 弁論の全趣旨)。 イ原告Aを含む1年生は、体験入部期間中は校内で競技用自転車に慣れる練習をし、正式入部後からは公道での練習を行うようになり、下記⑶の本件事故が発生するまで、徐々に目的地までの距離を伸ばしていった。 (甲6、9、乙9、34)⑶ 本件事故の発生(甲6、8~10、17、20、33、乙9、34) ア平成27年5月10日、1年生5人、2年生2人、3年生3人の合計10人で公道での練習が行われた。 部員らは、京都市の市街地の北端に位置するC高校を出発し、甲付近で京都府と滋賀県の境の山間を走る片道1車線の国道乙号線に入り、北上し、丙峠を経て、更に北上して、1年生は丁まで、上級生は戊(丁の更 に北側)まで走行した。 イ原告Aは、往路において、他の1年生よりも速く走行できていたことから、丁の道の駅からの復路においては、D教諭の指示に基づき、原告Aを除く1年生が先に出発し、原告Aは後から上級生らとともに出発することとなった。 ウ部員らは、丙トンネル北側の飲食店駐車場(以下「本件駐車場」という。)で休憩をし、軽食を摂るなどした後、再び、D教諭の指示に基づき、原告Aを除く1年生が先に出発し、原告Aは後から上級生らとともに出発した。原告Aらが出発した地点からは、トンネル内を含めて下り坂が続いていた。原告Aは、前から5番目(後ろから2番目)を走行し ていたところ、同日午後0時20分頃、丙トンネルを抜けた先にある、下り坂車線から見て右曲がりのヘアピンカーブ(以下「本件カーブ」という。)を曲がりきることができずにガードレールに衝突し、その先の側溝に転落した 、同日午後0時20分頃、丙トンネルを抜けた先にある、下り坂車線から見て右曲がりのヘアピンカーブ(以下「本件カーブ」という。)を曲がりきることができずにガードレールに衝突し、その先の側溝に転落した(以下「本件事故」といい、本件駐車場から本件事故の現場までを「本件道路」という。)。 ⑷ 本件事故後の治療経過 原告Aは、本件事故により、胸椎破裂骨折及び胸髄損傷の傷害を負い、E病院に救急搬送され、平成27年5月13日、胸椎固定術を受けた。原告Aは、同年7月7日、リハビリ目的でF病院に転院し、同年9月25日に両下肢全廃及び神経因性膀胱障害を後遺障害とする症状固定の診断を受け、同年12月2日に退院した(入院日数合計207日)。(甲1、2、4、26の 2) 2 争点及び争点に関する当事者の主張⑴ D教諭の注意義務違反の有無(原告らの主張)ア D教諭は、本件道路において原告Aを上級生らとともに走行させれば、 原告Aが上級生らに合わせて実力以上の速度で走行し、本件カーブに差し掛かる危険があることを予見することができた。そして、原告Aは、本件事故当時、自転車競技を始めたばかりの初心者であり、本件道路のようなヘアピンカーブが連続する下り坂を一定以上の速度で安全に走行する技術、知識、感覚が十分に身に付いていなかったのであるから、D 教諭は、上記のような状態で本件カーブに差し掛かった原告Aが、本件カーブを曲がりきることができずに転倒等してしまう可能性があることも予見することができた。 イそして、本件事故以前に原告Aが他の1年生とともに本件道路を走行した際には特段の危険は生じていなかったのであるから、D教諭は、本件 道路において原告Aを上級生らとともに走行させてはならない注意義 して、本件事故以前に原告Aが他の1年生とともに本件道路を走行した際には特段の危険は生じていなかったのであるから、D教諭は、本件 道路において原告Aを上級生らとともに走行させてはならない注意義務を負っていた。 しかるに、D教諭は、原告Aを上級生らとともに走行させたのであるから、D教諭には上記義務の違反がある。 ウ仮に、本件道路において原告Aを上級生らとともに走行させたこと自体 に注意義務違反がなかったとしても、D教諭は、①原告Aに対し、上級 生らに合わせて走行する必要はなく、以前に本件道路を走行したときと同程度の速度で走行するよう指導する、②上級生らに対し、原告Aが安全に本件道路を走行できる程度の速度で走行するよう指導する、③原告Aと上級生らの走行順序を指導するなど、原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う特別な指導を行うべき注意義務を負っていた。 しかるに、D教諭は、上記の指導を行うことなく、せいぜい本件道路の走行が練習ではないと伝える程度の指導しかしなかったのであるから、D教諭には上記義務の違反がある。 (被告の主張)ア D教諭は、本件事故以前から、部員らに対し、本件道路はC高校に戻る ための移動であり練習ではなく、それぞれのペースでゆっくり走行するよう指導していたのであるから、それぞれの実力を考慮してグループを分ける必要はなかった。したがって、D教諭は原告Aを上級生らとともに走行させてはならない注意義務を負っていなかった。 D教諭は、1年生5人を一つのグループにすると、全体として列が長く なりすぎ、自動車が追い越しをする際に危険が生じるおそれがあったことから、丁の道の駅からの復路において上級生らとともに走行していた原告Aを、本件道路においても引き続きあ 、全体として列が長く なりすぎ、自動車が追い越しをする際に危険が生じるおそれがあったことから、丁の道の駅からの復路において上級生らとともに走行していた原告Aを、本件道路においても引き続きある程度密集して走行することができる上級生らとともに走行させ、列の長さを調整したものであり、このような考えが不合理であったとはいえない。 イ D教諭は、本件駐車場で休憩をしている際に、従前と同様に、部員らに対し、本件道路はC高校に戻るための移動であり練習ではなく、それぞれのペースでゆっくり走行するよう指導した上で、原告Aに対しては、上級生らの速度に追い付こうと思わないよう指導し、上級生ら(特に、3年生であったG及びH)に対しては、1年生の原告Aがグループに加わること から普段より相当ゆっくり走行するよう指導した。したがって、D教諭 は、原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う特別な指導を行うべき注意義務を果たしていた。 ⑵ 過失相殺の可否(被告の主張)仮にD教諭に注意義務違反があったとしても、次の点を考慮して相応の過 失相殺がなされるべきである。 ア原告Aは、自転車で走行する以上、転倒しないような速度を維持しながらバランスを保持する義務があったにもかかわらず、十分に注意しなかった。 イ原告Aは、車間距離を詰める必要があると道路交通法に違反した認識を 有していた。 ウ原告Aは、本件事故直前の休憩においても、上級生に交じって出発するよう指示された際にも、相当な疲労を感じていたにもかかわらず、それをD教諭に申告しなかった。 (原告らの主張) 原告Aが、上級生らに合わせて走行する必要があると認識したことや、本件カーブに差し掛かるまで走行速度が自分の実力以上のものとなっていると をD教諭に申告しなかった。 (原告らの主張) 原告Aが、上級生らに合わせて走行する必要があると認識したことや、本件カーブに差し掛かるまで走行速度が自分の実力以上のものとなっていると認識することができなかったことは、やむを得ない状況であった。したがって、過失相殺はされるべきではない。 ⑶ 原告Aの損害額 (原告Aの主張)ア入院治療費 75万0978円E病院分(43万4738円)、I医療センター分(8170円)及びF病院分(30万8070円)の合計額。 イ通院治療費 6万9760円 Jクリニック分(3万3480円)、Kクリニック分(2万3900 円)、L病院分(8280円)、M薬局分(1080円)、N診療所分(3020円)の合計額。 ウ付添看護費 175万2000円原告Aは、E病院及びF病院での入院(合計207日)に加え、平成29年3月15日から同月26日までの12日間、O病院に入院した。上記 の入院期間219日について、家族による付添看護が必要であったから、175万2000円(=8000円×219日)の付添看護費が生じた。 エ付添人交通費 7万8320円原告Aの入院期間中、付添いに伴う交通費として合計7万8320円を要した。 オ入院雑費 43万8000円日額2000円×入院日数219日=43万8000円カ室内用車椅子及びクッション代 71万0752円 室内用車椅子代公費外負担分(バルブ)として、4320円を 額2000円×入院日数219日=43万8000円カ室内用車椅子及びクッション代 71万0752円 室内用車椅子代公費外負担分(バルブ)として、4320円を要した。 クッション代原告Aは、褥瘡の発生を予防するために、クッションを使用する必要があり、平成28年に室外用車椅子のクッション代を2万8620円で購入した。また、車のクッション代は7000円であり(合計3万5620円)、いずれも1年ごとの買換えが必要であるから、平成30年3 月からの原告Aの平均余命62年間(それに対応するライプニッツ係数は19.029)に要するクッション代は、67万7812円(=3万5620円×19.029)となる。 キ車両改造費 35万8303円原告AがF病院を退院後、自動車で通院等を行えるようにするため、車 椅子を助手席に乗せることができる機能等を加える改造をし、35万83 03円を要した。 ク介護用品代 676万6722円原告Aは、排尿及び排便ができないため、尿はカテーテル等を利用し、便は摘出をしなければならない。排尿には月額2万4100円の用品代を、排便には月額2400円の用品代を要する(合計2万6500円)か ら、介護用品代は、以下のとおり合計676万6722円となる。 F病院を退院した平成27年12月から本件訴訟を提起した平成30年2月までの介護用品代2万6500円×27か月=71万5500円 平成30年3月からの原告Aの平均余命62年間に要する介護用品 代2万6500円×12か月×19.029(62年に対応するライプ 6500円×27か月=71万5500円 平成30年3月からの原告Aの平均余命62年間に要する介護用品 代2万6500円×12か月×19.029(62年に対応するライプニッツ係数)=605万1222円ケ介護費 4977万2800円 F病院を退院した平成27年12月2日から本件訴訟を提起した平成 30年2月27日まで(O病院入院期間を除く807日)の介護費日額4000円×807日=322万8000円 平成30年2月から原告Bが70歳になる令和15年まで(15年間)の介護費日額4000円×365日×10.38(15年に対応するライプニ ッツ係数)=1515万4800円 令和15年からの原告Aの平均余命47年間に要する職業介護人による介護費日額1万円×365日×(18.98-10.38)=3139万円コ後遺障害逸失利益 9011万0229円 原告Aは、本件事故により両下肢全廃等の後遺障害を負い、労働能力を 100%喪失した。原告Aの基礎収入を月額41万5400円とし、原告Aの就労可能年数を22歳から70歳までの48年間(それに対応するライプニッツ係数は18.077)とすると、後遺障害逸失利益の額は、9011万0229円(=41万5400円×12か月×18.077)となる。 サ傷害慰謝料 312万円原告Aは、本件事故により、E病院及びF病院に約7か月間入院したことからすれば、傷害慰謝料は312万円が相当である。 シ後遺障害慰謝料 4000万円原告A Aは、本件事故により、E病院及びF病院に約7か月間入院したことからすれば、傷害慰謝料は312万円が相当である。 シ後遺障害慰謝料 4000万円原告Aの両下肢全廃等の後遺障害が、自動車損害賠償保障法施行令別表 第2第1級に相当するものであることからすれば、後遺障害慰謝料は4000万円が相当である。 ス損益相殺 △4274万2000円 独立行政法人日本スポーツ振興センター分原告Aは、独立行政法人日本スポーツ振興センターから、障害見舞金 として3770万円の支給を受けた。 高校生総合補償制度分原告Aは、高校生総合補償制度により、後遺障害保険金として504万2000円の支給を受けた。 セ弁護士費用 1723万円 ソ合計 1億6841万5864円(被告の主張)ア入院治療費食事療養費は本件事故の有無にかかわらず必要な支出であり、室料差額は必要性が明らかでないから、いずれも本件事故との因果関係がない。 イ通院治療費 原告Aは、平成27年9月25日に症状固定の診断を受けているから、同日以降に生じたL病院分以外の通院治療費は、いずれも本件事故との因果関係がない。 また、L病院分、M薬局分及びN診療所分の通院治療費は、原告Aが負った傷害との関係が明らかでない。 ウ付添看護費家族による付添看護が必要であった具体的事情が明らかでなく、本件事故との因果関係がない。また、日額8000円の付添看護費は過大である。 エ付添人交通費 看護費家族による付添看護が必要であった具体的事情が明らかでなく、本件事故との因果関係がない。また、日額8000円の付添看護費は過大である。 エ付添人交通費 付添人交通費は付添看護費や入院雑費に含まれているから、別途損害として計上すべきではない。 オ入院雑費日額2000円の入院雑費は過大である。 カ室内用車椅子及びクッション代 室外用車椅子に要した費用が取り下げられたことからすれば、室外用車椅子のクッション代は本件事故との因果関係がない。 キ車両改造費争う。 ク介護用品代 原告Aの現状は知らない。また、個々の用品代の根拠が明らかでない。 ケ介護費原告Aは、F病院退院時には全介助が必要な状態ではなく、平成28年4月からC高校への登校を再開していることからすれば、本件訴訟提起日までの期間について、日額4000円の介護費は過大である。 また、原告Aは、現在は家族の介護なく一人暮らしをすることができて いるから、本件訴訟提起日以降の介護費は認められない。 コ後遺障害逸失利益原告Aが就労可能期間を通じて労働能力を100%喪失したことは争う。また、原告Aの就労可能期間は67歳までとして後遺障害逸失利益を算定すべきである。 サ傷害慰謝料症状固定日である平成27年9月25日以降の入院は必要性が明らかでないから、312万円の傷害慰謝料は過大である。 シ後遺障害慰謝料4000万円の後遺障害慰謝料は過大である。 ス損益相殺原告Aは、原告Aが自認する支給額のほかに、独立 の傷害慰謝料は過大である。 シ後遺障害慰謝料4000万円の後遺障害慰謝料は過大である。 ス損益相殺原告Aは、原告Aが自認する支給額のほかに、独立行政法人日本スポーツ振興センターから医療費として合計106万4720円の、高校生総合補償制度により医療費として合計82万2800円の支給を受けた。 ⑷ 原告Bの損害額 (原告Bの主張)ア近親者慰謝料 500万円原告Bは、本件事故により、自転車競技においてプロになるという原告Aの夢を実現させることができなくなり、生涯原告Aの介護を行う立場となったことからすれば、近親者慰謝料は500万円が相当である。 イ弁護士費用 45万円ウ合計 545万円(被告の主張)原告Bの原告Aに対する介護の実情は明らかでないし、500万円の近親者慰謝料は過大である。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(D教諭の注意義務違反の有無)について⑴ 前提事実のほか、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる(この項において、平成27年については表記を省略する。)。 ア本件事故発生までの主な公道での練習状況(甲9、28、29、33、乙9、34、証人D7頁、証人G14、24頁、原告A5頁) 原告Aを含む1年生は、入部後、往復約15㎞から35㎞のコースを5回走行し、4月29日には丙トンネル南側までの往復約42㎞のコースを走行した。その後も、往復約35㎞のコースを4回走行し、5月9日には、己方面までの往復約55㎞のコースを走行した。 ースを5回走行し、4月29日には丙トンネル南側までの往復約42㎞のコースを走行した。その後も、往復約35㎞のコースを4回走行し、5月9日には、己方面までの往復約55㎞のコースを走行した。 (イ) 1年生は、4月29日と5月9日の練習で、本件カーブを含む下り 坂を走行したが、D教諭は、走行前に「ここからの下りは練習ではない、下りるだけ。」、「自転車に負荷を掛けないで足を回すだけ。」などと指導し、1年生はそれに従い速度を出さずに本件事故現場を含む下り坂を走行した。 イ本件事故当日の経過 5月10日、1年生5人、2年生2人、3年生3人の合計10人で、丁方面への往復約90㎞のコースを走行する予定で、午前9時頃、C高校を出発した。往路においては、庚峠(丙峠の南側)まで、1年生は2年生が伴走して走行し、庚峠から丙峠までは、上級生らのグループが先行し、1年生のグループはその後を走行したところ、原告Aは、高校に 入学するまでサッカーのクラブチームに属しており、筋力や持久力に優れていたため、1年生の中では抜きん出て速く上り坂を走行することができた。 その後、上級生らのグループと1年生のグループは、丁の道の駅までの緩やかな下り坂をそれぞれ走行した。1年生が丁の道の駅に到着して 休憩している間、上級生らはその先の戊まで走行し、同日午前11時 頃、1年生と合流した。(甲8、9、28、33、35、乙9、34、証人D12頁) a 丁の道の駅において、D教諭は、原告Aの往路における走行を見て、原告Aを除く1年生を先に出発させ、原告Aを上級生らの最後尾で走行させるよう指示した。同日午後0時頃、原告Aを含む後発グル ープが休憩地である本件駐車場に到着した。 b 原告A て、原告Aを除く1年生を先に出発させ、原告Aを上級生らの最後尾で走行させるよう指示した。同日午後0時頃、原告Aを含む後発グル ープが休憩地である本件駐車場に到着した。 b 原告Aは、本件駐車場に到着するまでの走行において上級生に付いていくのが精一杯であったこと、前日もこれまでより長距離の練習であったことから、相当の疲労を感じていた。 c 本件駐車場に到着後、D教諭は、原告Aには上級生に付いていくこ とができたことを褒めた。また、上級生らは強い1年生が入ってきたなと感じている様子であった。 部員らが同所において軽食を摂った後、D教諭は、部員らに対し、「ここからの下りは練習ではない、下りるだけ。」などと指導し、原告Aを引き続き上級生らとともに走行するよう指示した。 このとき、D教諭は、原告Aに対して上級生らに合わせて走行する必要はないと指導する、上級生らに対して原告Aがグループに加わることから普段よりゆっくり走行するよう指導するなど、原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う特別な指導は行わなかった。また、入部から本件事故に至るまで、D教諭から原告Aに対して、本件 カーブのような急な下り坂の中のヘアピンカーブを曲がる際の走行に関する技術的指導はされなかった。 (以上につき、甲8、9、28、29、33、35、乙9、34、証人D14、16、27頁、証人G3、4、13、16、17、22、25頁、証人H6、7頁、原告A6、7頁) 原告Aは、先ほどの走行と同様に、上級生らの最後尾を走行しようと したが、靴の紐がほどけたGから先に行くよう言われたため、上級生4人に続いて出発した。原告Aの前を走行していた3人は、丙トンネルを抜けた先の本件道路の直線部分を、それぞれ自動車1台分 と したが、靴の紐がほどけたGから先に行くよう言われたため、上級生4人に続いて出発した。原告Aの前を走行していた3人は、丙トンネルを抜けた先の本件道路の直線部分を、それぞれ自動車1台分程度の距離を空けて時速約50㎞(普段の走行どおりの速度)で走行し(先頭の2年生はそれよりやや速く走行した。)、原告Aは、上級生らに付いていか なければ迷惑がかかると考えて、先行自転車のタイヤを見ながら同じ速度で追走した。 原告Aの前を走行していた3人は、本件カーブの数十m前から断続的に設置されている減速帯が開始する辺りで時速約30㎞程度まで減速して本件カーブを曲がった。原告Aは、先行自転車に合わせて走行すれば 本件カーブを曲がることができると考えており、先行自転車との距離が詰まったときにブレーキを掛けようとしたが、減速することができないまま、本件カーブのガードレールに衝突し、側溝に転落した。(甲8、12、28、29、33、35、乙9、34、36、証人G5~10頁、証人H10頁、原告A10~14、35、36頁) ウ本件道路の状況本件道路は、制限速度が時速40㎞であり、丙トンネルを抜けた直後に道路脇に「速度注意」と記載された看板があり、制限速度の道路標識が二つ続き、路面の「急カーブ注意速度落せ」という表示とともに減速帯が敷設され、本件カーブに至る。本件道路の勾配は約10%であり (制限速度時速40㎞の普通道路の最大縦断勾配は10%である。道路構造令20条)、本件カーブの半径は35mである。(甲11、17、20、乙31、弁論の全趣旨)エ事実認定の補足説明 被告は、D教諭が、4月29日、5月9日及び本件事故当日、1年生 が本件道路を下る前に、本件道路は練習ではないこと 、20、乙31、弁論の全趣旨)エ事実認定の補足説明 被告は、D教諭が、4月29日、5月9日及び本件事故当日、1年生 が本件道路を下る前に、本件道路は練習ではないことだけでなく、それ ぞれのペースでゆっくり走行するよう指導していた旨の主張をし、D教諭もこれに沿う証言をする。 しかし、本件道路を含むコースを1年以上月3回程度の頻度で走行していたGが(証人G2、9頁)、D教諭からの普段の指導の内容について、本件道路は練習ではなく、自転車に負荷を掛けないで足を回すだけ (休憩)であると聞いた明確な記憶を有している一方で、スピードを上げすぎないようにするといった指導を受けた記憶がない旨証言していること(証人G14、24頁)からすれば、D教諭がそれぞれのペースでゆっくり走行するよう指導していたとは認め難く、D教諭の上記証言は採用することができない。 被告は、上記イcに関し、D教諭は、本件駐車場での休憩の際、①原告Aに対しては、上級生らの速度に追い付こうと思わないよう指導し、②上級生ら(特に、G及びH)に対しては、1年生の原告Aがグループに加わることから普段より相当ゆっくり走行するよう指導したと主張し、D教諭もこれに沿う証言をする。D教諭は、本件事故からさほど 期間の経過していない平成27年7月までに行われた聞き取り調査の際にも同旨の発言をしていることがうかがわれるし(乙13)、保険会社からの照会に対してD教諭からの聞き取りを基に平成28年3月に作成した回答書(乙9)にも同旨の記載がある。 しかし、上記①について、原告Aが上級生らに付いて行かないでよか ったのであれば、原告Aを敢えて上級生と同じグループで走行させる必要性が見当たらない。D )にも同旨の記載がある。 しかし、上記①について、原告Aが上級生らに付いて行かないでよか ったのであれば、原告Aを敢えて上級生と同じグループで走行させる必要性が見当たらない。D教諭は、1年生5人を1つのグループにすると、全体として列が長くなりすぎ、自動車が追い越しをする際に危険が生じるおそれがあると考えたと証言するが(証人D17頁)、1年生が本件道路を1つのグループで走行したことが本件事故までに2回あった が、その際にD教諭が証言するような危険が生じていたと認めるに足り る証拠はない。また、原告Aが上級生らに付いていかなければ迷惑がかかると考えたのも、D教諭から上級生らの速度に追い付こうと思わないよう指導を受けていなかったからと考えるのが自然である。 また、上記②について、仮に上級生ら(特に、G及びH)に対して1年生の原告Aがグループに加わることから普段より相当ゆっくり走行す るよう指導したのであれば、G及びH(D教諭は、特に面倒見の良いG及びHの目を見て指導したと証言している〔証人D32、37頁〕。)がその旨記憶していないとは考えにくいところ、G及びHはそのような指導を受けていない旨の証言をしている(G16、25頁、H6頁。)。さらに、上記指導が行われたのであれば、原告Aの前を走行し ていた3人が時速約50㎞で走行するとは考え難い(D教諭は、「ゆっくり」という表現について、時速約20~30㎞を想定していたと証言している〔証人D40頁〕。)。そうすると、上記指導も行われなかったと見るのが自然である。 以上によれば、D教諭の上記証言は採用することができない。 ⑵ D教諭の予見可能性についてア前記認定のとおり、原告Aの前を走行していた上級生ら るのが自然である。 以上によれば、D教諭の上記証言は採用することができない。 ⑵ D教諭の予見可能性についてア前記認定のとおり、原告Aの前を走行していた上級生らは、上級生らが行っていた普段の走行どおりの速度又はそれより速い速度で本件道路及び本件カーブを走行していたのであって、原告Aを配慮を要する相手ではないと考えていたとみるほかないところ、指導経験が豊富なD教諭に とって、1年生の中から抜擢された原告Aに対して上級生らがこのような考えを持つことは容易に想定できることであった。 そして、原告Aは、本件駐車場を出発する前にD教諭から上級生に付いて行くことができたことを褒められたのであるから、下り坂も上級生に付いて行こうという意欲を持つことも容易に想定できることであった。 実際に、D教諭は、原告Aが上級生らの最後尾を走行すれば、上級生ら を追いかける危険があると認識していた(証人D29頁)。 したがって、D教諭においては、本件道路において原告Aを上級生らとともに走行させれば、上級生らが普段と同じ速度で走行し、原告Aが上級生らに合わせて同じ速度で走行することを予見することができたと認められる。 イ原告Aは、本件道路の直線部分を上級生3人に続いて同程度の速度で走行していたところ、前を走行していた上級生らと同じタイミングでブレーキを掛けて減速したが、本件カーブを曲がりきることができなかった。 競技用自転車は、通常の自転車と比較してタイヤが細く、ブレーキを掛 けた際の制動力が劣るところ(乙3・35頁)、原告Aは、本件事故当時、自転車競技部に入部してから1か月程度しか経過していない初心者で、競技用自転車の操作には慣れていなかったし、本件カーブを走行した経 た際の制動力が劣るところ(乙3・35頁)、原告Aは、本件事故当時、自転車競技部に入部してから1か月程度しか経過していない初心者で、競技用自転車の操作には慣れていなかったし、本件カーブを走行した経験は2回あったものの、速度を出して走行するのは初めであったのであるから、原告Aは、上級生らと比較して、本件カーブを走行する技 量が不足していたし、どの程度の速度であれば自己の制御できる範囲であるのか、どの辺りでどの程度の力でブレーキを掛ければ本件カーブを曲がることができるのかといった感覚をおよそ持ち合わせていなかったと認められる(実際、原告Aは上級生に合わせてブレーキを掛ける必要を感じるまで特段の危険を感じていなかった。)。 そうすると、原告Aが上級生らと同じ速度で本件道路から本件カーブを走行すれば、走行を制御することができない事態に陥る危険があることは容易に想定できることであった。 したがって、D教諭は、原告Aが上級生らに合わせて走行すれば、本件カーブを曲がりきることができずに転倒等してしまう可能性があること を予見することができたと認められる。 ⑶ 原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う特別な指導を行うべき注意義務について上記のとおり、D教諭は、本件道路において原告Aを上級生らとともに走行させれば、原告Aが上級生らに合わせて走行し、本件カーブを曲がりきることができずに転倒等してしまう可能性があることを予見することができた のであるから、本件駐車場を出発するに際し、①原告Aに対し、上級生らに合わせて走行する必要はないと指導する、②上級生らに対し、原告Aがグループに加わることから自分たちの普段の練習より遅い速度で走行するよう指導するなど、原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う に合わせて走行する必要はないと指導する、②上級生らに対し、原告Aがグループに加わることから自分たちの普段の練習より遅い速度で走行するよう指導するなど、原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う特別な指導を行うべき注意義務を負っていたと認められる。 しかるに、D教諭は、部員らに対し、「ここからの下りは練習ではない、下りるだけ。」などと指導したものの、原告Aを上級生らとともに走行させることに伴う特別な指導を行わなかったのであるから、D教諭には上記義務の違反があった。 2 争点⑵(過失相殺の可否)について 被告が過失相殺事由として主張するところは次のとおりいずれも採用することができない。 (1) 原告Aが転倒しない速度を維持しなかったなどとの主張については、原告Aは転倒しない速度について指導されたことはなく、余裕のある状況の下で徐々に速度を上げて下り坂を走行するなど転倒しない速度の感覚をつかむ 練習をする機会も与えられていなかったのであるから、原告Aが転倒しない速度を維持できなかったことをもって過失とみることはできない。 (2) 原告Aが車間距離を詰める必要があると道路交通法に違反した認識を有していたとの主張については、原告Aが道路交通法についての指導を受けたと認めるに足りる証拠はなく、上記の点をもって原告Aの過失とみることは できない。 (3) 原告Aが相当の疲労を感じていたことをD教諭に申告しなかったとの主張については、原告Aが相当の疲労を感じていたことが本件事故の原因となったと認めるに足りる的確な証拠はない。原告A作成の陳述書には、本件カーブにさしかかった際の状況について「手が疲れていたためか、路面の凹凸があったためか、そもそも速度がすでに出すぎていたためか、速 ったと認めるに足りる的確な証拠はない。原告A作成の陳述書には、本件カーブにさしかかった際の状況について「手が疲れていたためか、路面の凹凸があったためか、そもそも速度がすでに出すぎていたためか、速度はなかな か落ちませんでした。」と記載しており(甲33)、速度を下げることができなかったことの考え得る原因の一つとして疲労を挙げるが、可能性の一つとして挙げられているものにすぎない。また、本件事故当日と前日は、それまでより長距離の練習であった上、本件駐車場に至るまで原告Aは上級生と同じグループで走行していたという状況から、本件駐車場を出発する際に原 告Aに相当の疲労があったことは申告がなくてもD教諭にとって明らかであったといえる。 したがって、原告Aが疲労を申告しなかったことをもって過失とみることはできない。 3 争点⑶(原告Aの損害額)について ⑴ 入院治療費等 62万4978円ア E病院分 40万0088円 証拠(甲26の1・2)によれば、原告Aは、平成27年5月10日から同年7月7日までE病院に入院し、治療関係費として合計39万6088円(室料差額を含み、食事療養費3万4650円を含まない。) を要したことが認められる。 室料差額については、原告Aは、本件事故により、胸椎破裂骨折及び胸髄損傷という重篤な傷害を負ったものであり、体温調整の必要等から、病院との協議の結果、個室を利用したことが認められるから(甲34)、必要かつ相当な支出と認められる。 他方、食事療養費については、本件事故による受傷の有無にかかわら ず必要な支出であり、また、入院中の食事が治療の一環として行わ 4)、必要かつ相当な支出と認められる。 他方、食事療養費については、本件事故による受傷の有無にかかわら ず必要な支出であり、また、入院中の食事が治療の一環として行われたことをうかがわせる事情は存在しないから、損害とは認められない。 また、証拠(甲1、26の3~5)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは、平成29年1月11日及び同年3月1日、E病院を受診し、再診料及び文書料として合計4000円を要したことが認められる。 イ I医療センター分 8170円証拠(甲26の6)によれば、原告Aは、E病院に入院中の平成27年6月26日、I医療センターを受診し、初診料及び画像診断料として8170円を要したことが認められる。 ウ F病院分 21万6720円 証拠(甲26の8)によれば、原告Aは、平成27年7月7日から同年12月2日までF病院に入院し、治療関係費として合計21万2400円(食事代9万1350円を含まない。上記アのとおり。)を要したことが認められる。 なお、症状固定日である平成27年9月25日以降の入院期間につい ても、原告Aは、退院後の生活に適応するための外出練習等を行っていたものであり、上記期間に対応する治療関係費についても本件事故との因果関係が認められる。 また、証拠(甲2、26の7・9)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは、平成29年1月12日及び2月17日、文書料として合計432 0円を要したことが認められる。 ⑵ 通院治療費 6万6740円ア Jクリニック分 び2月17日、文書料として合計432 0円を要したことが認められる。 ⑵ 通院治療費 6万6740円ア Jクリニック分 3万3480円証拠(甲26の10~16、42)によれば、原告Aは、F病院退院後、定期的にJクリニックに通院し、合計3万3480円の治療関係費 を要したことが認められる。 上記治療関係費は、症状固定後に支出したものではあるが、原告Aが、神経因性膀胱障害の後遺障害を負い、排尿ができないため(甲4)、カテーテルや薬剤の処方を受けるために通院を要したものであり、必要かつ相当な支出と認められる。 イ Kクリニック分 2万3900円 証拠(甲26の17~20)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは、平成28年2月から4月にかけて、生殖能力が維持されているかどうかを検査した上で健康な精子を保全することを目的として、Kクリニックに通院し、合計2万3900円を要したたことが認められる。 被告は、上記通院について医学的必要性がないと主張するが、原告Aが 負った後遺障害の内容(下肢全廃)からすれば、生殖能力が維持されているかどうかを検査等することには相応の合理性が認められるから、必要性及び相当性がないとはいえない。 ウ L病院分 8280円証拠(甲26の21、44)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは、平 成27年6月10日、iPS細胞を用いた胸髄損傷の再生医療を希望してL病院を受診し、初診料及び画像診断料として8280円を要したことが認められる。 被告は、iPS細 原告Aは、平 成27年6月10日、iPS細胞を用いた胸髄損傷の再生医療を希望してL病院を受診し、初診料及び画像診断料として8280円を要したことが認められる。 被告は、iPS細胞を用いた再生医療が研究途上であることから必要性及び相当性がないと主張するが、L病院は、E病院からの紹介に基づ き、再生医療の適応等について検討したものであり(甲44)、必要性及び相当性がないとはいえない。 エ M薬局分 1080円証拠(甲26の22)によれば、原告Aは、平成28年11月14日、M薬局において、パットを1080円で購入したことが認められ、原告 Aが負った後遺障害の内容(神経因性膀胱障害)からすれば、必要かつ 相当な支出と認められる。 オ N診療所分 0円原告Aは、平成27年10月2日、N診療所を受診し、3020円を支出しているところ(甲26の23)、原告Aは、入院期間中のステロイド治療により歯が溶ける症状が出現したことに対する治療を受けたと主 張する。しかし、上記診療所の同日付けの診療録(甲43)を見ても治療内容は判然とせず、本件事故との因果関係を認めることはできない。 ⑶ 付添看護費 124万2000円ア原告Aは、E病院に入院した当初は、上半身及び下半身を動かすことができず、食事介助が必要な状態であり、また、体温調整の補助等の看護 を行う必要もあった(甲34、39、45、原告A14頁)。原告Aは、徐々に上半身を動かすことができるようになったものの、引き続き上記看護を行う必要があり、原告Aの家族は、毎日E病院に行き、体温 を行う必要もあった(甲34、39、45、原告A14頁)。原告Aは、徐々に上半身を動かすことができるようになったものの、引き続き上記看護を行う必要があり、原告Aの家族は、毎日E病院に行き、体温調整の補助や着替えのサポート等を行った(甲27の1~3、34、45、原告A14頁)。したがって、E病院における入院期間全日につい て、近親者による付添看護が必要であったといえる。 イそして、F病院転院後も、原告Aの家族は、毎日原告Aの見舞いに行き、上記アと同様の看護を行い、原告Aが後遺障害が残ることを伝えられて以降は、精神的不安の緩和や外出練習の付添いに努めた(甲27の3~7、34、45、原告A15、16頁)。本件事故当時の原告Aの 年齢(16歳)や原告Aに残存した後遺障害の程度からすれば、F病院における入院期間全日についても、近親者による付添看護が必要であったと認められる。 ウそして、付添看護費の日額は、付添人に生じた交通費を含めて6000円とするのが相当であるから、E病院及びF病院における入院日数20 7日について、124万2000円(=6000円×207日)の付添看 護費が生じたと認められる。 エ他方、平成29年3月15日から同月26日までのO病院における入院期間(甲3)については、原告Aの家族による看護の有無が明らかでなく、上記期間について付添看護費が生じたとは認められない。 ⑷ 付添人交通費 0円 上記⑶のとおり、付添人交通費は付添看護費に含まれており、別途の損害が生じたとは認められない。 ⑸ 入院雑費 32万8500円入院雑費の日額は1500円と認めるのが相当 通費は付添看護費に含まれており、別途の損害が生じたとは認められない。 ⑸ 入院雑費 32万8500円入院雑費の日額は1500円と認めるのが相当であるから、O病院における入院期間12日(甲3)を含めた入院期間219日について、32万85 00円(=1500円×219日)の入院雑費が生じたと認められる。 ⑹ 室内用車椅子及びクッション代 71万0752円ア室内用車椅子代 4320円証拠(甲26の24)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは、平成28年1月頃、室内用車椅子の公費外負担分として、バルブ代4320円を 要したことが認められる。 イクッション代 70万6432円原告Aは、臀部周辺に褥瘡が発生するのを予防するために、車椅子や車に乗る際にクッションを使用する必要があるところ(甲37・45頁)、証拠(甲26の25)によれば、原告Aは、平成28年1月、室 外用車椅子のクッション代として2万8620円を要したことが認められる(原告が室外用車椅子に係る損害を取り下げたことは、室外用車椅子のクッションの要否に影響しない。)。 また、弁論の全趣旨によれば、車用のクッションは7000円であり、室外用車椅子のクッションとともに、平成30年3月からの原告Aの余 命62年(それに対応するライプニッツ係数は19.029)につい て、1年ごとに交換する必要があることが認められるから、将来の買替え費用は、67万7812円(=3万5620円×19.029)となる。 したがって、クッション代は、合計70万6432円(=2万86 とに交換する必要があることが認められるから、将来の買替え費用は、67万7812円(=3万5620円×19.029)となる。 したがって、クッション代は、合計70万6432円(=2万8620円+67万7812円)となる。 ⑺ 車両改造費 35万8303円証拠(甲34)及び弁論の全趣旨によれば、原告AがF病院を退院後、自動車で通院等を行えるようにするため、介護用車両を新たに購入し、助手席のリフトアップ機能等を加える改造をしたことが認められる。原告Aが負った後遺障害の内容(下肢全廃)からすれば、上記の支出は、必要かつ相当な ものであったと認められ、証拠(甲52、53)によれば、その費用は35万8303円を下らないと認められるから、同額の限度で損害と認める。 ⑻ 介護用品代 676万6722円原告Aは、排尿及び排便ができないため、排尿には収尿器やカテーテル等を利用し、便は摘出をしなければならないところ(甲4、34、45、原告 A20頁、弁論の全趣旨)、証拠(甲46~50)及び弁論の全趣旨によれば、上記作業について1か月に要する費用は、①排尿についてはおむつ代(8000円)、カテーテル代(3000円)、パット代(600円)、収尿器(1万1000円)、収尿器に接続するバッグ(1500円)の合計2万4100円、②排便については手袋代(650円)、ワセリン代(50 円)、消臭袋代(1700円)の合計2400円であることが認められるから、介護用品代は月額2万6500円(2万4100円+2400円)となる。 そうすると、原告AがF病院を退院した平成27年12月から本件訴訟を提起した平成30年2月までの27か月 られるから、介護用品代は月額2万6500円(2万4100円+2400円)となる。 そうすると、原告AがF病院を退院した平成27年12月から本件訴訟を提起した平成30年2月までの27か月に要した介護用品代は、71万55 00円(2万6500円×27か月)となり、同年3月からの原告Aの余命 62年(それに対応するライプニッツ係数は19.029)に要する介護用品代は、605万1222円(=2万6500円×12か月×19.029)となる。 したがって、介護用品代は、合計676万6722円(=71万5500円+605万1222円)となる。 ⑼ 介護費 255万3000円証拠(甲34、45、原告A16、17頁)によれば、原告Aは、F病院を退院後、母とともに暮らし、トイレ介助、褥瘡の発生を予防するための体位変換の介助、車椅子への乗り降りの介助、病院等への送迎等の介護を受けていたことが認められる。もっとも、原告Aは、大学進学に伴い、一人暮ら しを開始して、大学には自ら自動車を運転して通学しており(甲51、原告A31、32頁)、現在何らかの介護を受けているという事情はうかがわれない。 そして、F病院の医師作成に係る意見書(甲4)では、原告Aの介護の要否について、「食事」が「自立」とされ、「入浴」が「常に介護が必要」と され、「用便」及び「更衣」が「時に介護が必要」とされていることや、原告Aの家族が実際に行った上記介護の内容からすれば、原告AがF病院を退院した平成27年12月2日からC高校を卒業したと認められる平成30年3月31日までの851日について介護費の日額は3000円とするのが相当である。 したがって、介護費は 病院を退院した平成27年12月2日からC高校を卒業したと認められる平成30年3月31日までの851日について介護費の日額は3000円とするのが相当である。 したがって、介護費は、255万3000円(=3000円×851日)となる。 ⑽ 後遺障害逸失利益 6611万3402円原告Aの両下肢全廃等の後遺障害が、自動車損害賠償保障法施行令別表第2第1級に相当するものであることからすれば、平成27年9月の症状固定 時16歳であった原告Aは、就労を開始する22歳から67歳までの45年 間にわたり、労働能力を100%喪失したと認められる。被告は、労働能力喪失率を争うが、具体的な反証をしない。 そして、原告Aの基礎収入は、原告Aが主張する年収498万4800円(=41万5400円×12か月)を相当額と認め、後遺障害逸失利益は、以下のとおり、6611万3402円となる。 498万4800円×13.263(18.339〔51年に対応するライプニッツ係数〕)-5.076〔6年に対応するライプニッツ係数〕)=6611万3402円⑾ 傷害慰謝料 312万円原告Aの受傷内容や入院期間(約7か月。なお、症状固定日以降の入院に 必要性が認められることは、上記3⑴ウのとおり。)に照らせば、原告Aに生じた傷害慰謝料の額は312万円と認めるのが相当である。 ⑿ 後遺障害慰謝料 2800万円原告Aの後遺障害の内容に照らせば、原告Aに生じた後遺障害慰謝料の額は2800万円と認めるのが相当である。 ⒀ 損益相殺 △4462万 00万円原告Aの後遺障害の内容に照らせば、原告Aに生じた後遺障害慰謝料の額は2800万円と認めるのが相当である。 ⒀ 損益相殺 △4462万9520円ア独立行政法人日本スポーツ振興センター分 △3876万4720円証拠(乙18~26)によれば、原告Aは、平成28年6月までに、独立行政法人日本スポーツ振興センターから、医療費として合計106万4720円の、障害見舞金として合計3770万円の支給を受けたこと が認められるから、原告Aに生じた損害からこれを控除する。 イ高校生総合補償制度分 △586万4800円証拠(乙27)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは、平成29年11月までに、高校生総合補償制度により、医療費として合計82万2800円の支払を、後遺障害保険金として504万2000円の支払を受け たことが認められるから、原告Aに生じた損害からこれを控除する。 ⒁ 小計 6525万4877円⒂ 弁護士費用 652万円本件事故と因果関係のある弁護士費用は、上記⒁の約1割の652万円とするのが相当である。 ⒃ 合計 7177万4877円 4 争点⑷(原告Bの損害額)について⑴ 近親者慰謝料 200万円原告Aが負った後遺障害の内容及び程度に照らすと、その父である原告Bは、生命侵害にも比肩し得る精神的苦痛を被ったと認められ、近親者慰謝料の額は、200万円とするのが相当である。 ⑵ 弁護士 Aが負った後遺障害の内容及び程度に照らすと、その父である原告Bは、生命侵害にも比肩し得る精神的苦痛を被ったと認められ、近親者慰謝料の額は、200万円とするのが相当である。 ⑵ 弁護士費用 20万円本件事故と因果関係のある弁護士費用は、上記⑴の1割の20万円とするのが相当である。 ⑶ 合計 220万円 5 結論 以上によれば、原告Aの請求は、7177万4877円及びこれに対する平成27年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないから棄却し、原告Bの請求は、220万円及びこれに対する同日から支払済みまで上記割合による金員の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理 由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官松山昇平 裁判官田中いゑ奈 裁判官佐 々 木悠土
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