- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人が控訴人に対して平成15年2月24日付けでした指定統計調査調査票使用承認申請を承認しない旨の処分を取り消す。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2事案の概要 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,昭和55年から平成14年までの指定統計調査である家計調査により収集された家計簿や世帯票などの調査票の記載内容のうち,氏名,住所,電話番号及び勤務先の名称を除くものが転写された磁気テープ(以下「本件保存データ」という)について,統計法15条2項。 に基づきその使用の承認を申請したが,被控訴人がこれを承認しなかった(以下「本件不承認処分」という)ため,本件不承認処分が違法であると主張し。 て,その取消しを求め,これに対し,被控訴人が,上記調査票は,被調査者の秘密保護が担保され高度の公益性が認められる場合に,例外的に被控訴人の承認及び使用公示の手続を経ることを要件として,当該指定統計の作成目的以外の目的に使用することができ,その判断は被控訴人の広い裁量に委ねられているところ,本件不承認処分は上記裁量の範囲内であり,また控訴人のみを不利益に扱ったものでもないから適法であるなどと主張して争った事案である。 原審は,統計法15条1項の「統計上の目的」とは,同法7条1項で承認を受けた調査により当該指定統計を作成する目的をいい,例外的に目的外使用を承認するか否かの判断については,被控訴人の広範な裁量が認められ,その判断が違法とされるのはその裁量権の行使に逸脱,濫用があった場合に限られる- 2 -,,,,ものとし本件不承認処分には裁量権の逸脱濫用の違法は認められずまた本件不 範な裁量が認められ,その判断が違法とされるのはその裁量権の行使に逸脱,濫用があった場合に限られる- 2 -,,,,ものとし本件不承認処分には裁量権の逸脱濫用の違法は認められずまた本件不承認処分は控訴人のみを不利益に扱ったものではないから平等原則にも反しないとして,控訴人の請求を棄却したため,控訴人がこれを不服として控訴した。 前提事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり付加訂正するほか,原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」1ないし4(原判決2頁9行目から21頁下から11行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の付加訂正(1)原判決3頁7行目の「全世帯」を「勤労者世帯」に改め,同8,9行目の「本件不承認処分をした」の次に「。その理由は,統計法15条2項に規定する統計上の目的以外の使用については公益性が高く,かつ,秘密の保護に欠けるところがない場合にのみ承認しているところ,公益性の判断に当たっては行政判断の客観性を確保する上から,①行政機関又はそれに準じる機関との共同で行う研究等の一環として使用する場合、②行政機関又はそれに準じる機関から委託又は補助金を受けて行う研究等の一環として使用する場合、③当該使用が公益性を有する旨の行政機関の文書が添付されている場合のいずれかに該当することをもって,公益性が充足されるものと判断してお,,,」り本件申請についてはそのいずれにも該当しないというものであったを加える。 当審における控訴人の補充的主張(2)ア本件申請には,次のとおり被調査者の権利保護に対する配慮に欠けるところはない。 ア控訴人が使用承認を求める本件保存データは,調査票そのものでは()なく,世帯区分,市町村番号,世帯人員,就業人員,単身及び2人以上の別,続柄,性別 利保護に対する配慮に欠けるところはない。 ア控訴人が使用承認を求める本件保存データは,調査票そのものでは()なく,世帯区分,市町村番号,世帯人員,就業人員,単身及び2人以上の別,続柄,性別,満年齢,就非別,副業事業内職の別,在学者の学校- 3 -の種別,住居の所有関係,家賃・地代,収入の種類又は支出の品名及び用途,現金収入額,現金支出額,本日の現金残高,クレジットカード等による購入又は現物の品名及び購入方法並びに金額などに限定され,加工されたデータであること,被調査者は統計学的な無作為抽出の手法に. ()よって全国世帯数のわずか002パーセント程度であること甲46からすると,個体の再識別は実際上不可能である上,控訴人には再識別をする目的や意思はない。 イ被調査者は,調査票そのものが他人に開示されることは承諾しない()が,調査票の記載内容の一部が被調査者を再識別ないし特定できないデータの形に加工された段階では,当該データは「公共財」となり「統計上の目的」に使用されることを理解して承諾しているのであって,またそのためにこそ調査に協力しているのである。したがって,本件申請に係る統計の目的に本件保存データが使用されることは,上記承諾の範囲内である。 イ甲11,甲32に挙げたA氏ら経済学者が現に使用した指定統計調査の個票データを,民間人であるというだけで控訴人には使用する可能性すら与えられないことは不均衡である。 第3当裁判所の判断 当裁判所も,統計法15条1項の「統計上の目的」は,同法7条1項で承認を受けた調査により当該指定統計を作成する目的を意味するものと解すべきであり,被控訴人が同法15条2項に基づく目的外使用を承認するか否かの判断に当たっては広範な裁量を有し,上記判断が違法とされるのは,その裁量権の逸脱,濫 定統計を作成する目的を意味するものと解すべきであり,被控訴人が同法15条2項に基づく目的外使用を承認するか否かの判断に当たっては広範な裁量を有し,上記判断が違法とされるのは,その裁量権の逸脱,濫用があった場合に限られるものというべきであるところ,本件不承認処分には,上記裁量権の逸脱,濫用は認められず,また,控訴人のみを不利益に扱うものともいえないから,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほか,原判決「事実及び理由」の「第3- 4 -当裁判所の判断」1ないし3(原判決21頁下から9行目から32頁下から4行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の付加訂正(1)原判決23頁下から9行目の「甲20」を「甲20の2」に,26頁下から6行目の「このような基準にも」から同下から5行目末尾までを「上記説示のような広範な裁量が認められている判断の客観性,統一性の確保という観点をも考慮すると,類型的に高度の公益性が認められる場合を示した上記基準にも一応の合理性を認めることができるといえる」に,29頁下から。 2,1行目の「公益性が高いかどうかを」から30頁2行目の「いわざるを得ないのであって」までを「公益性が高いかどうかを行政機関が関与して,いるかなどといった観点のみから判断することの合理性については少なからざる疑問が生じ得るところであり」に,30頁4行目の「統計法15条」,を「統計法15条2項」に,同7行目の「甲20の2・184頁」を「甲20の2・185頁」にそれぞれ改める。 当審における控訴人の補充的主張について(2)ア裁量権の逸脱,濫用に関する主張についてア控訴人は,本件保存データからの再識別は実際上不可能である上,()控訴人には再識別をする目的や意思はない旨主張する。 の補充的主張について(2)ア裁量権の逸脱,濫用に関する主張についてア控訴人は,本件保存データからの再識別は実際上不可能である上,()控訴人には再識別をする目的や意思はない旨主張する。 しかしながら,上記(第2の2アア)のように控訴人が使用を求(2)(),,,めるデータの内容は詳細であり地域や家族構成購入品の特殊性などその具体的な記載内容を総合することによって個体が再識別される可能性が全くないと断定することは困難であるといわざるを得ない。 その上,既に説示したとおり,統計法が,指定統計調査に関する調査票の目的外使用を原則として認めないこととした上で,被調査者に対して申告義務(5条,真実陳述義務(19条)を課してその秘密に属す)る事項についても調査を行う制度を採用していることからすると,同法- 5 -15条2項の承認をするには,被調査者の秘密が保護されることを制度,,的に担保するとともに調査票がみだりに目的外に使用されないという調査主体及び指定統計調査の制度に対する被調査者の信頼を保護するため,目的外使用は真にやむを得ない高度の公益上の必要性に基づくものであることを要するものというべきである。そして,同項が承認のための具体的な要件について何も定めていないこと等も考慮すると,上記高度の公益性についての判断に当たっては,被控訴人に広範な裁量が認められ,その裁量権行使の基準として定められた本件内部基準は,行政判断の客観性,統一性を確保する観点からも一応の合理性が認められるところである。そうすると,目的外使用の承認に当たっては,被調査者の信頼保護の観点から,再識別が実際上不可能であるかどうかにかかわらず,当該申請に高度の公益性を認めることができるか否かが判断される,,,べきであり被控訴人はそのような見地に っては,被調査者の信頼保護の観点から,再識別が実際上不可能であるかどうかにかかわらず,当該申請に高度の公益性を認めることができるか否かが判断される,,,べきであり被控訴人はそのような見地に立って本件内部基準に従い本件不承認処分をしたものということができる。したがって,仮に控訴人主張のとおり再識別が実際上不可能であるとしても,このことは,本件不承認処分が被控訴人の裁量権の逸脱,濫用に当たらないとの前記判断を左右するものではない。 イ控訴人は,被調査者は再識別されないデータの形に加工された段階()では当該データが公共財であることを理解し,統計上の目的に使用され,。 ることを承諾しておりそのためにこそ調査に協力している旨主張するしかしながら,被調査者に対して事前にそのような説明がされていないにもかかわらず,被調査者が,与り知らない第三者によって当該指定統計調査に係る統計作成以外の目的で上記データが使用されることを承諾した上で当該調査に協力していると解すべき合理的根拠は見出し難い上,近時の国民の個人情報の保護に関する意識の高さからしても,被調査者が上記のように理解しているものとはにわかに考えられないところ- 6 -である。その上,控訴人が求めるデータが再識別の可能性の全くないものとは断定し難いことは上記説示のとおりであり,控訴人の上記主張は採用することができない。 イ平等原則違反に関する主張について控訴人は,A氏を始めとする経済学者らが使用した個票データを民間人であるというだけで控訴人には使用する可能性すら与えられないことは不均衡である旨主張する。 しかしながら,控訴人主張の経済学者らがその個人の名義で論文等を発表しているとしても,調査票の目的外使用の承認を受けたのは経済企画庁経済研究所長等の行政機関であって,各経済学 均衡である旨主張する。 しかしながら,控訴人主張の経済学者らがその個人の名義で論文等を発表しているとしても,調査票の目的外使用の承認を受けたのは経済企画庁経済研究所長等の行政機関であって,各経済学者らが独自に目的外使用の承認を得たものではなく,同経済学者らは調査票の使用者の範囲として挙げられているものである上(なお,上記論文等が目的外使用の承認の趣旨を逸脱して個票データを使用して作成されたものであることを認めるに足りる証拠はない,被控訴人は,目的外使用の承認申請者が民間人等の。)場合には,本件内部基準を基に,その要件のいずれかに該当することをもって高度の公益性を認める取扱いとしているのであるから,被控訴人における控訴人の扱いが不均衡であるとはいえない。 なお,控訴人は,本件申請の目的は,家計による個別の財・サービスの支出額の変遷・多様化という観点から調査票を統計として再集計し,戦後日本における経済成長及び景気循環の過程で財の多様化がどのような役割を果たしてきたのかを分析・解明することで,マクロ経済政策の改善・向上にも貢献し得るものであり,極めて公益性が高い旨主張するが,そうであるとすれば,控訴人は,本件内部基準の1つである「当該使用が公益性を有する旨の行政機関の文書」を申請することも可能であったというべきであり(乙12参照,その申請をすることができなかった事情も証拠。)上うかがわれない。 - 7 -したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 よって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部裁判長裁判官横山匡輝裁判官石井忠雄裁判官相澤眞木 これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部裁判長裁判官横山匡輝裁判官石井忠雄裁判官相澤眞木
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