令和3(ワ)5941 特許権に基づく差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年6月7日 東京地方裁判所
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判決文本文45,358 文字)

令和6年6月7日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和3年(ワ)第5941号特許権に基づく差止等請求事件口頭弁論終結日令和6年3月6日判 決 原告X 同訴訟代理人弁護士石下雅樹 被告関東クリーンシステム株式会社 (以下「被告KCS」という。) 被告株式会社カンツール (以下「被告カンツール」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士中野浩和 同訴訟代理人弁理士黒田博道主文 1 被告KCSは、別紙被告製品目録1記載(1)及び(2)の各製品を製造し、譲渡し又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告KCSは、前項記載の各製品を廃棄せよ。 3 被告カンツールは、別紙被告製品目録2記載の製品を譲渡し又は譲渡の申出をしてはならない。 4 被告カンツールは、前項記載の製品を廃棄せよ。 5 被告KCSは、原告に対し、937万0139円及びこれに対する令和3年 4月8日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 6 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 7 訴訟費用は、原告に生じた費用の2分の1と被告KCSに生じた費用との合計の2分の1を原告の、その余を被告KCSの各負担とし、原告に生じた費用の2分の1と被告カンツールに生じた費用との合計の25分の24を原告の、 その余を被告カンツールの各負担とする。 8 この判決は、第1項、第3項及び第5項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告KCSは、別紙被告製品目録1記載(1)及び(2)の各製品を製造し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸 3項及び第5項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告KCSは、別紙被告製品目録1記載(1)及び(2)の各製品を製造し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しの申出をし、又は輸出若しくは輸入をして はならない。 2 主文第2項と同旨 3 被告カンツールは、別紙被告製品目録2記載の製品を製造し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しの申出をし、又は輸出若しくは輸入をしてはならない。 4 主文第4項と同旨 5 被告らは、原告に対し、連帯して、4200万円及びこれに対する被告カンツールについては令和3年4月7日から、被告KCSについては同月8日から、それぞれ支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は、発明の名称を「洗浄作業用バン型自動車及びこれを用いた洗浄方法」とする特許第4372742号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を保有する原告が、被告KCSの製造、販売等する別紙被告製品目録1記載の各製品(以下、これらを総称して「被告製品 1」という。)及び被告カンツールの製造、販売等する別紙被告製品目録2記載の製品(以下「被告製品2」といい、被告製品1と合わせて「被告各製品」という。)は、いずれも本件特許に係る発明の技術的範囲に属するものであって、(1) 被告らに対し、被告らの被告各製品の製造、販売等が本件特許権を侵害するものであると主張して、特許法100条1項及び2項に基づき、被告各製 品の製造、譲渡等の差止め及び廃棄を、 (2) 被告らに対し、a 平成21年9月11日から平成28年7月13日までの期間については、被告らの被告各製品の製造、販売等によ 製 品の製造、譲渡等の差止め及び廃棄を、 (2) 被告らに対し、a 平成21年9月11日から平成28年7月13日までの期間については、被告らの被告各製品の製造、販売等により、原告が破産手続開始の決定を受けるに至って、これにより1243万4291円の損害を被ったb(a) 同月14日から令和元年7月14日までの期間については、被告らの 被告各製品の製造、販売等により、原告の有していた本件特許権に係る独占的通常実施権が侵害され、(b) 同月15日以降の期間については、被告らの被告各製品の製造、販売等により、原告の有する本件特許権が侵害されて、これらにより2136万7037円の損害(特許法102条2項により算 定される損害額及び弁護士費用相当額の合計)を被ったと主張し、民法709条、719条1項に基づき、損害金合計3380万1328円及びこれに対する被告カンツールについては令和3年4月7日から、被告KCSについては同月8日から(いずれも不法行為後の日)それぞれ支払済みまで民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金の連帯支払を、 それぞれ求める事案である。 なお、原告は、前記(2)aに係る損害金を追加したり、同bに係る損害金に関し損害額算定に係る具体的な資料の提供を受けたりしたにもかかわらず、当初の請求額を訂正しなかったため、請求の趣旨における請求額と請求原因として主張する損害額とは一致していない。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠(以下、特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告は、クリーニング業及び清掃業を営んでいる個人事業者である。 原告は、少なくとも平成28年7月13日までの間、有限会社エ む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告は、クリーニング業及び清掃業を営んでいる個人事業者である。 原告は、少なくとも平成28年7月13日までの間、有限会社エーテル 産業(以下「エーテル産業」という。)の代表取締役を務めていた。 イ被告KCSは、高圧洗浄車を製造、販売している株式会社である。 被告カンツールは、上下水道維持管理機材、高圧洗浄車を販売している株式会社である。 (2) 本件特許(甲8、9、乙11)エーテル産業及び新明和工業株式会社(以下「新明和工業」という。)は、 平成17年10月21日、発明の名称を「洗浄作業用バン型自動車及びこれを用いた洗浄方法」として、本件特許に係る特許出願(特願2005-307590号)をした(以下「本件出願」という。また、本件出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】などと記載する。)。 エーテル産業は、平成19年8月2日、本件出願に係る発明について、新明和工業が有していた特許を受ける権利の持分全部の譲渡を受けた。 エーテル産業は、平成21年9月11日、本件特許権の設定登録(請求項の数13)を受けた。 (3) 本件特許の特許請求の範囲 本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである(甲9。以下、同請求項に係る発明を「本件発明」という。)。 乗員室(Cf)と、その乗員室(Cf)の後側に連続すると共に後端が車体(F)後面に開口する荷室(Cr)とを備え、その荷室(Cr)の後端開口部を、車体(F)後端に設けたテールゲート(G)で開閉できるようにし た洗浄作業用バン型自動車において、前記荷室(Cr)には、水を貯めるタンク(T)と、このタ え、その荷室(Cr)の後端開口部を、車体(F)後端に設けたテールゲート(G)で開閉できるようにし た洗浄作業用バン型自動車において、前記荷室(Cr)には、水を貯めるタンク(T)と、このタンク(T)内の水を吸引し得るポンプ(P)と、このポンプ(P)を駆動する内燃機関(E)と、その内燃機関(E)から延びる排気管(Ex)に介装される排気消音器(M)とが収納、固定され、 車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff)には、前記ポンプ (P)の吐出側より延出する圧送管(A)を挿通させて該圧送管(A)を車外に引き出すための圧送管挿通部(Ha)と、前記排気消音器(M)より下流側の前記排気管(Ex)を挿通させて該排気管(Ex)の下流端を車外の大気に開放するための排気管挿通部(Hb)とが設けられることを特徴とする、洗浄作業用バン型自動車。 (4) 本件発明の構成要件の分説本件発明は、次のとおりの構成要件に分説することができる(以下、各構成要件につき、頭書の符号に従って、「構成要件A」などという。)。 A 乗員室(Cf)と、B その乗員室(Cf)の後側に連続すると共に後端が車体(F)後面 に開口する荷室(Cr)とを備え、C その荷室(Cr)の後端開口部を、車体(F)後端に設けたテールゲート(G)で開閉できるようにした洗浄作業用バン型自動車において、D 前記荷室(Cr)には、 D1 水を貯めるタンク(T)と、D2 このタンク(T)内の水を吸引し得るポンプ(P)と、D3 このポンプ(P)を駆動する内燃機関(E)と、D4 その内燃機関(E)から延びる排気管(Ex)に介装される排気消音器(M)とが収納、固定され、 E 車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff P)を駆動する内燃機関(E)と、D4 その内燃機関(E)から延びる排気管(Ex)に介装される排気消音器(M)とが収納、固定され、 E 車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff)には、E1 前記ポンプ(P)の吐出側より延出する圧送管(A)を挿通させて該圧送管(A)を車外に引き出すための圧送管挿通部(Ha)と、E2 前記排気消音器(M)より下流側の前記排気管(Ex)を挿通させて該排気管(Ex)の下流端を車外の大気に開放するための排気管挿 通部(Hb)とが設けられることを特徴とする、 F 洗浄作業用バン型自動車。 (5) 被告各製品の構成被告各製品は、次の構成(以下、頭書の符号に従って、「構成a」などという。)を有している。 a 乗員室と、 b その乗員室の後側に連続すると共に後端が車体後面に開口する荷室と、荷室前方の左右に乗降口ステップとを備え、c その荷室の後端開口部を、車体後端に設けた後部ドアで開閉できるようにした洗浄作業用バン型自動車において、d 前記荷室には、 d1 水を貯める水タンクと、d2 この水タンク内の水を吸引し得るポンプと、d3 このポンプを駆動するエンジンと、d4 そのエンジンから延びる排気管に介装される排気消音器とが収納、固定され、 e 車体の、前記乗降口ステップには、e1 蓋により開閉自在となっている透過孔が設けられ、この透過孔を開けて、高圧ホースを差し込み、この高圧ホースを前記ポンプに接続された高圧排水部に固定可能として形成し、e2 前記排気管に介装される排気消音器を挿通させて排気を車外の大気 に開放するための孔が設けられることを特徴とする、f 洗浄作業用バン型自動車。 なお、被告各製品におい として形成し、e2 前記排気管に介装される排気消音器を挿通させて排気を車外の大気 に開放するための孔が設けられることを特徴とする、f 洗浄作業用バン型自動車。 なお、被告各製品において、本件発明の「圧送管挿通部(Ha)」に該当する箇所(構成e1の「透過孔」)は、左側面スライドドアの乗降口ステップに、同「排気管挿通部(Hb)」に該当する箇所(構成e2の「孔」)は、右側面 スライドドアの乗降口ステップにそれぞれ設けられている。 (6) 被告各製品の構成要件充足性被告各製品は、構成要件AないしD4、E1ないしFをいずれも充足する。 (7) 被告らによる被告各製品の製造、譲渡等被告KCSは、業として、被告製品1を製造及び販売の申出をするとともに、別紙限界利益計算表1ないし7の「販売日」欄記載の各日に、同「販売 先」欄記載の各販売先に対し、同「裁判所認定額」「金額」「販売額(税抜)」欄記載の額(消費税抜き)で販売した(甲2、3)。 被告カンツールは、業として、被告KCSが製造した被告製品2を「ECOACEJET」との製品名で販売及び販売の申出をした(ただし、具体的な販売時期及び販売数や被告製品1と被告製品2との差異については争い がある。)。 (8) 本件特許権の設定登録後の経緯アエーテル産業は、Y(以下「Y」という。)に対し、本件特許権を譲渡し(以下「本件第1譲渡」という。)、平成26年12月22日、その旨の登録がされた。 Yは、同日、原告に対し、本件特許権について独占的通常実施権(以下「本件独占的通常実施権」という。)を許諾した。なお、当該実施許諾契約においては、第三者への再実施許諾の権利が含まれていた。(甲23)イ原告及びエーテル産業は、平成28年7月2日、東京地 (以下「本件独占的通常実施権」という。)を許諾した。なお、当該実施許諾契約においては、第三者への再実施許諾の権利が含まれていた。(甲23)イ原告及びエーテル産業は、平成28年7月2日、東京地方裁判所に対し、破産手続開始の申立てをした。同裁判所は、同月13日午後5時、両名に ついて、弁護士Zを破産管財人として選任した上、破産手続開始の決定をした。(甲26、27、乙1)同裁判所は、原告及びエーテル産業に係る破産手続について、破産手続廃止の決定をし、平成28年10月13日、同決定は確定した(甲26、27、乙1)。 ウ Yは、令和元年7月15日、本件特許権を原告に譲渡し(以下「本件第 2譲渡」という。)、同年8月19日、その旨の登録がされた(甲24)。 (9) 本件訴訟の経緯原告は、被告らに対し、令和2年8月20日付けの書面により、被告らが被告各製品を製造及び販売する行為は本件特許権を侵害するものであるところ、当該書面の到達後15日以内に、当該侵害行為に対する被告らの見解、 対応を具体的に回答することを求めるとともに、これに対する誠意ある対応がない場合には、損害賠償請求等の措置を講ずる旨を通知した(甲10)。 原告は、令和3年3月10日、東京地方裁判所に対し、被告らを相手方として本件訴訟を提起した。 被告らは、令和6年3月6日の本件口頭弁論期日において、後記4(6)(被 告らの主張)記載の消滅時効を援用するとの意思表示をした。 3 争点(1) 被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)(2) 権利濫用の抗弁の成否(争点2)(3) 差止め等の必要性(争点3) (4) 被告らの行為と相当因果関係のある損害の有無及びその額(争点4)(5) 被告KCSによる被告 点1)(2) 権利濫用の抗弁の成否(争点2)(3) 差止め等の必要性(争点3) (4) 被告らの行為と相当因果関係のある損害の有無及びその額(争点4)(5) 被告KCSによる被告製品1の製造、販売等に係る被告カンツールの共同不法行為責任の成否(争点5)(6) 消滅時効の成否(争点6) 4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について(原告の主張)ア構成要件Eを充足すること(ア) 「車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff)」の意義「荷室」とは、車両の中に存在するある機能を持つ空間を指す。そし て、本件特許の特許請求の範囲には、「荷室」につき、「乗員室(Cf) の後側に連続すると共に後端が車体(F)後面に開口する荷室(Cr)」と定義されているところ、本件明細書にはこれを限定する記載はない。 したがって、用語の通常の意義及び特許請求の範囲の記載によれば、本件発明における「荷室」とは、純粋に荷物を積むことを想定した床の上部空間のみを指すのではなく、車両の前後方向との観点から、乗員室 の後側から始まって車体後面の開口部までの空間をいうものと解される。 また、車両の左右方向との観点から、「荷室」を限界づける事項は、特許請求の範囲にも本件明細書にも何ら記載がないから、「荷室」とそうでないものを区切るものは、当該車両の左右の側壁と解すべきである。 (イ) あてはめ 本件発明の「荷室」を前記(ア)のように解すると、乗降口ステップであっても「荷室」の下方にある床であることに変わりはないから、当該乗降口ステップは、「荷室(Cr)下方の床部(Ff)」に当たる。 そして、被告各製品の「圧送管挿通部(Ha)」及び「排気管挿通部( あっても「荷室」の下方にある床であることに変わりはないから、当該乗降口ステップは、「荷室(Cr)下方の床部(Ff)」に当たる。 そして、被告各製品の「圧送管挿通部(Ha)」及び「排気管挿通部(Hb)」にそれぞれ該当する箇所は、乗降口ステップに設けられている から、構成要件Eを充足する。 (ウ) 被告らの主張についてa 被告らは、本件明細書の記載から、「荷室(Cr)下方の床部(Ff)」は「ベースプレートB」そのものであると主張する。 しかし、本件明細書の【0033】の「荷室Crに臨む車体床部F fの上面には…ベースプレートBがボルト等の固着手段により着脱可能に固着される」との記載から、「床部(Ff)」と「ベースプレートB」とが別の物であることは明らかである。 b また、被告らは、被告各製品の乗降口ステップについて、荷物を積むことを想定していないとか、重量物を配置することが可能な強度を 有しないという理由から、「荷室(Cr)下方の床部(Ff)」に当た らないと主張する。 しかし、「荷室」を構成する空間における床の一部が、荷物を積むこと以外の目的や機能を有しているとしても、直ちに「荷室」の一部ではないとはいえない。 そして、本件発明の構成要件E1との関係で、同Eの「荷室(Cr) 下方の床部(Ff)」に必要とされていることは、荷物や重量物を配置できることではなく、「圧送管挿通部(Ha)」及び「排気管挿通部(Hb)」を備えることであるから、その観点からしても、「荷室(Cr)下方の床部(Ff)」に乗降口ステップが含まれない理由はない。 c さらに、本件発明が奏する効果の観点から見ても、被告各製品のよ うに乗降口ステップに「圧送管挿通部(Ha)」に当たる構成e1の「透過孔」及び「排気管挿通部 テップが含まれない理由はない。 c さらに、本件発明が奏する効果の観点から見ても、被告各製品のよ うに乗降口ステップに「圧送管挿通部(Ha)」に当たる構成e1の「透過孔」及び「排気管挿通部(Hb)」に当たる構成e2の「孔」が設けられていても、清掃作業中にテールゲート、ドア及び窓を全て閉め切ることによる静粛性の実現という、本件発明の効果と同様の効果を奏することは明らかである。 イ小括したがって、被告各製品は、本件各発明の技術的範囲に属する。 (被告らの主張)ア構成要件Eを充足しないこと(ア) 「車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff)」の意義 本件明細書の【0033】には、「荷室Crに臨む車体床部Ffの上面には、本発明の洗浄装置を取付けるための平坦な金属板(図示例ではステンレス板)よりなるベースプレートBが…固着される。そのベースプレートB上には、…水を貯留するタンクTと、このタンクT内の水を吸引し得るポンプPと、このポンプPを駆動すべく該ポンプPに連動連結 された内燃機関Eと、その内燃機関Eから延びる排気管Exの途中に介 装される排気消音器Mとが収納、固定される。」と、【0034】には「床部Ff(図示例ではベースプレートB)」と、それぞれ記載されている。 これらの記載によれば、「床部Ff」は具体的に「ベースプレートB」として説明されていると理解できる。そして、「ベースプレートB」は、 「水を貯留するタンクT」、「ポンプP」及び「内燃機関E」という複数の重量物が配置される部位である。水を貯えたタンクの重量は極めて重い上、自動車は走行するものであるから、走行中に多少の衝撃が加わったり、走行中の揺れによりタンクの水が偏ったりしても、当該床部はこれに耐えられるだけの る部位である。水を貯えたタンクの重量は極めて重い上、自動車は走行するものであるから、走行中に多少の衝撃が加わったり、走行中の揺れによりタンクの水が偏ったりしても、当該床部はこれに耐えられるだけの強度を有する必要がある。 バン型の自動車において、そのような強度を有する部位は、荷物が積載される車体荷室下方の床(鉄板の凹凸の連続している部分)以外にないから、「車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff)」とは、車体荷室下方の床でなければならない。そして、上記の技術的意義にかんがみれば、「車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff)」に 当たるか否かは、重量物を配置することが可能な強度を有するか否かが重要な判断要素となる。 (イ) あてはめ被告各製品の乗降口ステップは、乗り降りする際に足をかける部分であり、体重を支えることができれば十分であって、荷物を載せることを 想定していないから、床部ほど頑丈には作られていない。 特に、被告各製品の車両右側に設けられている乗降口ステップには、ポンプを駆動する内燃機関を冷却するための空気を取り入れる四角い穴が開けられているところ、この四角い穴の総面積は、当該乗降口ステップ水平部の面積の2分の1以上を占めるから、当該乗降口ステップは、 もはや通風口と言う方が適切である。そのため、当該乗降口ステップに は、重量物を配置することが可能な強度はない。 また、被告各製品の乗降口ステップは、上記の構造を有することにより、遮音性能もないから、清掃作業中にテールゲート、ドア及び窓を全て閉め切ることにより静粛性を実現するという本件発明の効果との観点からすると、当該乗降口ステップは、この効果を減殺するものである。 このように、被告各製品の乗降口ステップは、重量物 及び窓を全て閉め切ることにより静粛性を実現するという本件発明の効果との観点からすると、当該乗降口ステップは、この効果を減殺するものである。 このように、被告各製品の乗降口ステップは、重量物を配置することが可能な強度、荷物を積む目的も機能も有しない上、静粛性の実現という本件発明の効果を減殺するものであるし、そもそも、人が歩くと足が穴を突き抜け、走行中であれば大事故に繋がりかねないようなものであるから、一般的な床ですらない。 以上によれば、被告各製品の乗降口ステップは、「車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff)」に当たらないから、被告各製品は、構成要件Eを充足しない。 イ小括したがって、被告各製品は、本件各発明の技術的範囲に属しない。 (2) 争点2(権利濫用の抗弁の成否)について(被告らの主張)アエーテル産業及び原告の破産手続開始の申立てに係る申立書に添付した財産目録に本件特許権等が記載されていないこと(ア) 破産手続開始の申立書には、債務者の財産目録を添付しなければなら ない。また、東京地方裁判所に破産手続開始の申立てをする際、当該申立時から過去2年以内に、処分額又は評価額が20万円以上の財産を換価処分したことがある場合には、その申立書に添付した財産目録に、当該処分した物品の名称・処分金額・評価額・使途等を、金銭であれば受領額やその使途等を記載すべき裁判手続上の義務がある。 しかし、エーテル産業についての破産手続開始の申立てに係る申立書 (以下「本件法人申立書」という。)に添付した財産目録には、当該申立ての約1年半前に処分された本件特許権が記載されていなかった。原告は、Yから本件特許権を担保として500万円を借り受けたり、本件第2譲渡に係る契約において という。)に添付した財産目録には、当該申立ての約1年半前に処分された本件特許権が記載されていなかった。原告は、Yから本件特許権を担保として500万円を借り受けたり、本件第2譲渡に係る契約において、本件特許権の譲渡の対価を500万円と定めたりしていたことからすると、本件特許権の価値を500万円と評価 していたのであるから、単に記載し忘れていたといえるものではない。 また、原告についての破産手続開始の申立てに係る申立書(以下「本件個人申立書」という。)には、本件独占的通常実施権の存在を示唆する記載すらされていなかった。 これらの不記載は、原告が負っていた原告自身及びエーテル産業の代 表者としての義務に違反するとともに、破産裁判所の判断を誤らせる行為であって、司法制度の信頼に背くものである。 (イ) さらに、原告は、原告のYに対する債務のために、エーテル産業が権利者であった本件特許権について譲渡担保権を設定し、その担保権の実行として、本件第1譲渡をした。 エーテル産業の債権者と原告の債権者とは構成が異なるから、原告が本件特許権に担保権を設定し、これを実行させることは、エーテル産業の債権者に対する配当額を減少させる行為である。 このように、原告の上記行為は、偏頗弁済に当たる可能性が否定できないから、破産裁判所の審査を経るべきであったのに、本件法人申立書 に添付した財産目録に本件特許権を記載しなかったことにより、何ら審査がされなかった。この点からも、当該不記載行為の違法性は高いというべきである。 イ本件第1譲渡から本件第2譲渡に至る行為は財産の隠匿に当たること本件第1譲渡がされたことに加え、本件法人申立書に添付した財産目録 に本件特許権が記載されなかったことにより、本件特許権は、原告及びエ 本件第2譲渡に至る行為は財産の隠匿に当たること本件第1譲渡がされたことに加え、本件法人申立書に添付した財産目録 に本件特許権が記載されなかったことにより、本件特許権は、原告及びエ ーテル産業についての破産手続において、換価の対象とならなかった。そして、両名についての破産手続廃止の決定が確定した後、本件第2譲渡がされた。また、前記アのとおり、本件個人申立書には、本件独占的通常実施権について何ら記載がなかった。これらの事実に照らせば、原告は、両名についての破産手続において本件特許権及び本件独占的通常実施権が換 価の対象とならないようにしていたといえ、債務者の財産の隠匿に当たる。 財産の隠匿は、詐欺破産罪に当たる違法性の強い行為であるところ、本件訴訟において、原告がこのような経緯によって取得した本件特許権及び本件独占的通常実施権を行使することを許容することは、司法制度の信頼に背くものである。 ウ小括前記ア及びイに照らせば、原告による本件特許権及び本件独占的通常実施権の行使は、権利の濫用に当たる。 (原告の主張)ア本件法人申立書とともに提出した書類に本件特許権の存在が記載されて いたこと原告が、エーテル産業の代表者として、本件法人申立書とともに提出した同社の第19期(平成24年5月1日から平成25年4月30日まで)及び第20期(同年5月1日から平成26年4月30日まで)に係る「減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」及び「減価償却資産の計算書」 には、本件特許権が明記されている。なお、当該「減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」には、取得年月日を平成18年4月1日とする特許権(取得価額20万8655円)と、取得年月日を平成19年10月1日とする特許権(取得価額37万08 、当該「減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」には、取得年月日を平成18年4月1日とする特許権(取得価額20万8655円)と、取得年月日を平成19年10月1日とする特許権(取得価額37万0845円)とが計上されているところ、前者は、平成17年10月21日にエーテル産業と新明和工業が共同で出 願したもののうちエーテル産業の持分を、後者は、平成19年8月2日に、 新明和工業がエーテル産業に出願中の特許を受ける権利の持分を譲渡したことに伴って、エーテル産業が譲り受けた当該持分を、それぞれ減価償却資産として計上したものである。 このように、破産管財人も破産裁判所も、エーテル産業が過去に本件特許権を保有していたことを認識できていたから、本件法人申立書に添付し た財産目録に本件特許権が記載されていないことについて疑義があれば、原告に尋ねたり資料の提出を求めたりして、その解消を図ったはずである。 しかし、この点について、破産裁判所、破産管財人及び破産債権者から何ら指摘がされることはなく、エーテル産業についての破産手続廃止の決定が確定した。 すなわち、破産管財人及び破産裁判所は、エーテル産業についての破産手続において、エーテル産業が破産手続開始の申立てから比較的近い時期に本件特許権を保有していたことを認識した上で、財産状況を調査し、手続を進行していたことが明らかであるから、原告において財産の隠匿と評価されるような行為はない。 イ本件独占的通常実施権の無申告に問題はないこと原告は、本件独占的通常実施権につき、何ら金銭的収益を生んでおらず、換価価値を評価してもゼロ又は極めて低額であると考えて、特に申告する必要性を感じなかったため、破産手続において、本件独占的通常実施権の存在を申告していなかった。 、何ら金銭的収益を生んでおらず、換価価値を評価してもゼロ又は極めて低額であると考えて、特に申告する必要性を感じなかったため、破産手続において、本件独占的通常実施権の存在を申告していなかった。 もっとも、Yが原告に本件独占的通常実施権を許諾したのは、原告がYの長年の知人で、かつ、原告とYが仕事上の密接な協力関係にあったからであって、Yが第三者に対する本件独占的通常実施権の譲渡を承諾する可能性はなく、換価は事実上不可能であった。そのため、原告が、破産手続において、本件独占的通常実施権の存在を申告していたとしても、破産管 財人は、換価不能な無意味な財産と判断せざるを得ず、破産債権者にとっ ても何の利益にならなかった。 したがって、原告が本件独占的通常実施権の存在を申告しなかったことに何ら問題はない。 ウ原告による譲渡担保権の設定等は偏頗弁済に当たらないことエーテル産業が、原告のYに対する借入金債務に係る担保として、本件 発明について特許を受ける権利及び本件特許権を目的とする譲渡担保権を設定したのは、原告及びエーテル産業が破産手続開始の申立てをするより11年半も前の平成16年12月15日である。仮に、当該譲渡担保権の設定が本件出願を停止条件とするものであったとしても、その設定時期は平成17年10月21日となり、原告及びエーテル産業が破産手続開始の 申立てをするよりも10年以上前のことである。 そして、本件第1譲渡は、Yが担保権を実行したものにすぎないし、原告は、その時点で、エーテル産業が、将来、破産手続開始の申立てをすることを全く予期していなかった。 これらの事実関係に照らせば、上記譲渡担保権の設定等を偏頗弁済と評 価する余地はない。 エ被告らによる権利濫用の抗弁の主張自体が権利の 続開始の申立てをすることを全く予期していなかった。 これらの事実関係に照らせば、上記譲渡担保権の設定等を偏頗弁済と評 価する余地はない。 エ被告らによる権利濫用の抗弁の主張自体が権利の濫用であること仮に、原告が、破産手続において本件独占的通常実施権の存在を申告しなかったことを理由として権利濫用の抗弁が成立するとすれば、以下のとおり、被告らがこの権利濫用の抗弁を主張すること自体が権利の濫用に当 たる。 すなわち、後記(4)(原告の主張)アのとおり、原告が破産手続開始の決定を受けるに至ったのは、被告らによる本件特許権の侵害行為が原因である。そして、原告が破産手続開始の決定を受けるに至った原因を作った被告らが、原告の破産手続における手続上の瑕疵を主張して、被告ら自身の 責任を免れることは、著しく正義公正の観念に反する。 したがって、被告らによる権利濫用の抗弁の主張は、それ自体が権利の濫用に当たり許されない。 (3) 争点3(差止め等の必要性)について(原告の主張)前記(1)及び(2)の各(原告の主張)のとおり、被告KCSによる被告各製 品の製造は、本件発明に係る物の「生産」に、被告らによる被告各製品の販売若しくは貸渡し又は販売若しくは貸渡しの申出は、本件発明に係る物の「譲渡」若しくは「貸渡し」又は「譲渡等の申出」にそれぞれ当たり、本件特許権を侵害するものである。 また、被告らが、被告各製品を他国へ転売するなどの理由から輸出するお それがあり、また、他国で製造させた被告各製品を輸入するおそれもある。 さらに、被告カンツールにおいては、将来、被告製品2の製造を開始するおそれもある。 加えて、被告らは、業として、継続的に被告各製品の販売を行っているから、日本国内に被告各製品の在 るおそれもある。 さらに、被告カンツールにおいては、将来、被告製品2の製造を開始するおそれもある。 加えて、被告らは、業として、継続的に被告各製品の販売を行っているから、日本国内に被告各製品の在庫を保有している可能性が高い。 したがって、被告らに対し、被告各製品の製造、譲渡、貸渡し、譲渡及び貸渡しの申出、輸出及び輸入の差止め並びに被告各製品の廃棄を命じる必要がある。 (被告らの主張)否認ないし争う。 (4) 争点4(被告らの行為と相当因果関係のある損害の有無及びその額)について(原告の主張)ア平成21年9月11日(本件特許権の設定登録日)から平成28年7月13日(破産手続開始決定日)までの被告各製品に係る侵害行為に基づく 損害 (ア) 被告らの行為と原告に生じた損害との間に相当因果関係があること原告は、平成28年7月13日までの間、個人として本件発明を実施していなかったものの、被告らによる本件特許権の侵害行為によって、破産手続開始の申立てを余儀なくされ、同決定を受けるに至ったことによる損害を被った。 すなわち、エーテル産業は、平成22年頃から、本件発明を実施する高圧洗浄車「エーテルファイン」の販売を開始したが、本件特許権の設定登録後から破産手続開始の決定がされるまでの間、1台も売れなかった。当時、バン型の高圧洗浄車を販売する事業者は、エーテル産業及び被告ら以外には存在していなかったから、仮に被告らが被告各製品を販 売していなければ、バン型の高圧洗浄車を必要とする需要者は、「エーテルファイン」を購入していた蓋然性がある。 そして、被告らによる被告各製品の製造、販売等という本件特許権の侵害行為がなければ、エーテル産業は、「エーテルファイン」を年間2台程度販売でき 、「エーテルファイン」を購入していた蓋然性がある。 そして、被告らによる被告各製品の製造、販売等という本件特許権の侵害行為がなければ、エーテル産業は、「エーテルファイン」を年間2台程度販売できたと考えられる。また、「エーテルファイン」の1台当たり の粗利益は少なくとも114万6000円程度であったから、エーテル産業は、「エーテルファイン」の販売によって、年間229万円ほどの営業利益を上げられたはずである。エーテル産業は、破産手続開始の決定がされる直前において、年間約142万円の借入金元本の弁済義務を負っていたものの、「エーテルファイン」に係る上記の水準の営業利益を上 げていれば、法人税等の支払を考慮しても、当該借入金元本を滞りなく弁済することができ、資金繰りに行き詰まることはなかった。そうであれば、エーテル産業の借入金債務について連帯保証をしていた原告が支払不能に陥ることはなく、破産手続開始の決定を受けることもなかったというべきである。 したがって、原告が破産手続開始の決定を受けるに至ったことによっ て被った損害は、平成28年7月13日(破産手続開始決定日)までの被告らによる本件特許権の侵害行為と相当因果関係のある損害である。 (イ) 原告に生じた損害及びその額a 積極損害原告が破産手続開始の決定を受けたことにより、当時、原告が保有 していた以下の財産を喪失した。 ① 借入先に対する過払金返還請求権 102万3532円② 現金 13万0759円b 逸失利益原告及びエーテル産業が破産手続開始の決定を受けなければ、原告 は、エーテル産業の取締役として、少なくとも年間276万円の役員報酬を継続して受領することができた。エーテル産業には借入金債務 原告及びエーテル産業が破産手続開始の決定を受けなければ、原告 は、エーテル産業の取締役として、少なくとも年間276万円の役員報酬を継続して受領することができた。エーテル産業には借入金債務があったものの、被告らによる本件特許権の侵害行為がなければ資金繰りに行き詰まることがなかったといえることを考慮すると、原告が役員報酬を得られていた期間は、短く見積もっても3年を下らない。 したがって、原告が得られたであろう役員報酬相当額は、828万円(=276万円/年×3年)を下らない。 c 信用喪失による損害破産手続開始の決定を受けることは、自己の財産の処分権を失うという直接的な財産的損失をもたらすだけではなく、経済的、社会的信 用を失う重大な事由である。 原告が経済的、社会的信用を喪失したことによる損害額は、300万円を下らない。 d 合計以上によれば、平成28年7月13日(破産手続開始決定日)まで の被告らによる本件特許権の侵害行為によって生じた損害は、124 3万4291円を下らない。 (ウ) 破産財団に属しないことこの損害賠償請求権は、原告の破産手続開始の決定を最終的な原因として発生した債権であって、同決定時に既に発生して存在していたものではないから、破産財団に属しない。 イ平成28年7月14日(破産手続開始決定日の翌日)以降の被告各製品に係る侵害行為に基づく損害(ア) 特許法102条2項が適用されること被告らによる被告各製品の製造、販売等は、平成28年7月14日(破産手続開始決定日の翌日)以降から令和元年7月14日(本件第2 譲渡に係る移転登録日の前日)までの期間においては本件独占的通常実施権を、令和元年7月15日(本件第2譲渡に係 8年7月14日(破産手続開始決定日の翌日)以降から令和元年7月14日(本件第2 譲渡に係る移転登録日の前日)までの期間においては本件独占的通常実施権を、令和元年7月15日(本件第2譲渡に係る移転登録日)以降の期間においては本件特許権を、それぞれ侵害する。 Yは、本件第1譲渡によって本件特許権を取得したものの、原告やエーテル産業が関与することなく本件発明を実施する能力がなかったため、 本件第1譲渡の際、原告に対し、本件独占的通常実施権を許諾した。そこで、原告は、エーテル産業に本件特許権を再実施許諾し、エーテル産業が本件発明を実施して、被告各製品の競合品である「エーテルファイン」の販売を続けた。原告及びエーテル産業が破産手続開始の決定を受けた後は、原告が本件独占的通常実施権に基づき、個人事業として本件 発明の実施を続けた。 原告は、本件第2譲渡によって本件特許権を取得した後も、本件発明を実施して、「エーテルファイン」を販売している。 したがって、被告らが被告各製品の販売により受けた利益の額は、特許法102条2項により、原告が受けた損害の額と推定される。 (イ) 被告各製品の販売により受けた利益の額 a 被告KCSが、別紙限界利益計算表1ないし7の「販売日」欄記載の各日に、「販売先」欄記載の各取引先に対し、「原告の主張」「金額」「販売額(税抜)」欄記載の各金額で被告製品1を合計8台販売したことにより受けた利益の額は、同「原告の主張」「金額」「限界利益(税込)」欄記載のとおりであり、その合計は1554万1631円である。 b 被告らは、前記aの8台以外に、被告各製品を2台販売した。 これらの販売に係る被告各製品1台分の限界利益は、前記aの8台分の限界利益の平均値である194万 万1631円である。 b 被告らは、前記aの8台以外に、被告各製品を2台販売した。 これらの販売に係る被告各製品1台分の限界利益は、前記aの8台分の限界利益の平均値である194万2703円と考えられるから、2台分の限界利益は388万5406円である。 (ウ) 控除すべき経費について a 高圧ポンプ、調圧弁及び洗浄アクセサリー(付属品)について高圧ポンプ及び調圧弁は、ワンボックス高圧洗浄車ユニットを構成する必須の構成部品又は構成部分である。そして、被告らが計上したワンボックス高圧洗浄車ユニットに係る費用が極端に高額であることからすると、高圧ポンプ及び調圧弁に係る費用は、ワンボックス高圧 洗浄車ユニットの費用として計上済みというべきであるから、高圧ポンプ及び調圧弁に係る費用を更に計上するのは妥当でない。 洗浄アクセサリー(付属品)についても同様である。 b 販売経費について被告各製品の販売に直接関連して追加的に必要となった経費とはい えない。 c 長野工場最終確認検査同行費用について一般的に車両の最終検査のために、当該車両の販売者と顧客とが工場に赴くとは考え難い。 また、被告らの主張では、全ての案件について、被告ら関係者2名 と顧客2名とが同行し、各費目の支出額も全く同一となっていること からすると、現実に支出された額ではないことが強くうかがわれ、信用できないものというべきである。 d その他雑費について通常、案件によって支出した額が異なるはずであるのに、被告らの主張では、全ての案件について同じ額が計上されていることからする と、現実に支出された額ではないことが強くうかがわれ、信用できないものというべきである。 e 納車後1年間保証について被告らが実 では、全ての案件について同じ額が計上されていることからする と、現実に支出された額ではないことが強くうかがわれ、信用できないものというべきである。 e 納車後1年間保証について被告らが実際にメンテナンス、修理等に要した費用は、販売した車両の状態(新車か中古車かなど)、機器の仕上がりの精度、顧客による 使用頻度、使用方法、保管方法、使用環境等によって異なるはずである。 しかし、被告らの主張では、全ての案件について同じ額が計上されていることからすると、現実に支出された額ではないことが強くうかがわれ、信用できないものというべきである。 (エ) 消費税相当額特許法102条2項の「利益の額」の算定に当たり、消費税相当額を加算すべきである。 平成28年7月14日(破産手続開始決定日の翌日)以降の原告の課税売上高は1000万円以下であったから、原告に消費税の納税義務は なかったものの、消費税の納税義務がない事業者も、課税売上げの対象となる資産の譲渡や役務の提供について消費税を請求し受領することができるから、原告も同様に消費税相当額を受領していた。そもそも、特許権侵害に係る逸失利益は、侵害行為がなければ特許権者が得られていたであろう利益である。被告らによる本件特許権の侵害行為がなければ 原告が得られていた利益は、売上げから経費を控除して算定されるとこ ろ、この売上げは当然に消費税相当額を含む額である。 したがって、特許法102条2項の「利益の額」の算定に当たり、令和元年9月30日以前に販売された分については8パーセントの割合、同年10月1日以降に販売された分については10パーセントの割合による消費税相当額を加算すべきである。 (オ) 推定覆滅事由についてa 原告は被告各製品の競 については8パーセントの割合、同年10月1日以降に販売された分については10パーセントの割合による消費税相当額を加算すべきである。 (オ) 推定覆滅事由についてa 原告は被告各製品の競合品の生産販売能力を有していること原告は、破産手続開始の決定を受けた後、清掃業を中心とする個人事業を開始したが、高圧洗浄車に関心がある清掃事業者に対し、「エーテルファイン」を紹介している。そして、原告は、エーテル産業が破 産手続開始の決定を受ける前に「エーテルファイン」について協力を依頼していた販売提携会社及び製造受託会社との間で、引き続き協力関係を維持している。 このように、原告が、被告各製品の競合品である「エーテルファイン」を製造、販売する能力を有していることは、明らかである。 b 原告の製品と被告各製品との市場は重なっていること「エーテルファイン」と被告各製品とは、バン型の高圧洗浄車という範疇において同一であるし、価格帯も600万円台から900万円台と似通っている。また、いずれも低騒音で洗浄ができるとの特徴を有している。さらに、被告各製品の用途は、配管洗浄に限定されてい ないから、用途においても少なからぬ部分で重なり合っているといえる。 したがって、「エーテルファイン」と被告各製品の市場が同一ではないとの被告らの主張は失当である。 (カ) 弁護士費用相当額 被告各製品に係る本件特許権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士 費用は194万円である。 (キ) 小括以上によれば、平成28年7月14日(破産手続開始決定日の翌日)以降の被告各製品に係る侵害行為に基づく損害額は合計2136万7037円となる。 (被告らの主張)ア平成21年9月11日(本件特許権の設定登録日)から 14日(破産手続開始決定日の翌日)以降の被告各製品に係る侵害行為に基づく損害額は合計2136万7037円となる。 (被告らの主張)ア平成21年9月11日(本件特許権の設定登録日)から平成28年7月13日(破産手続開始決定日)までの被告各製品に係る侵害行為に基づく損害について被告らの行為と、原告が破産手続開始の決定を受けたこととの間に、相 当因果関係はない。 その余の事実及び法的主張については、否認ないし争う。 イ平成28年7月14日(破産手続開始決定日の翌日)以降の被告各製品に係る侵害行為に基づく損害(ア) 被告各製品の販売により受けた利益の額について a 被告らが販売した被告各製品について被告らは、平成28年7月14日以降、被告KCSが別紙限界利益計算表1ないし7記載のとおり被告製品1を合計8台販売したほかには、被告各製品を販売していない。 b 消費税相当額について 特許法102条2項の「利益の額」の算定に当たり、消費税相当額を加算すべき理由は、特許権者が消費税を納税する場合において、原告に生じた損害額を実質的に同項所定の「その侵害の行為により利益を受けている」「その利益の額」のとおりの額と推定するためである。 他方、インボイス制度の趣旨は、正確な納税額の算出・納付によっ て、益税(消費者が事業者に支払った消費税の一部が、納税されずに 事業者の手元に残り、利益となってしまうこと)に対する不公平感を解消することにある。 そうすると、インボイス制度が導入された現在において、原告が消費税を納税していなかったことによりインボイス制度導入前に存在していた益税分を原告に生じた損害額の算定に当たって加算することは、 実質的にも形式的にも同項所定の文言に反することとな て、原告が消費税を納税していなかったことによりインボイス制度導入前に存在していた益税分を原告に生じた損害額の算定に当たって加算することは、 実質的にも形式的にも同項所定の文言に反することとなる。 したがって、本件においては、同項の「利益の額」の算定に当たり、消費税(益税分)相当額を加算することは許されない。 (イ) 控除すべき経費a 総論 別紙限界利益計算表1ないし7の「被告らの主張」「金額」「製造原価(税抜)」及び「諸経費(税抜)」欄記載の各金額は、以下に敷衍するとおり、いずれも被告KCSが被告製品1の製造、販売等に直接関連して追加的に必要となった経費であるから、被告KCSが被告製品1の販売により受けた利益の額を算定するに当たって控除すべきであ る。 b 高圧ポンプ及び調圧弁に係る購入費用被告KCSは、ワンボックス高圧洗浄車ユニットの製作をエース・テックという名称の業者(以下「エース・テック」という。)に依頼したが、その際、高圧ポンプ及び調圧弁については、被告KCSからエ ース・テックへの支給品としていた。このように、高圧ポンプ及び調圧弁は、被告KCSが自ら購入したもので、その費用はワンボックス高圧洗浄車ユニットの費用に含まれていない。したがって、当該費用は、製造原価として控除すべき経費に当たる。 c 洗浄アクセサリー(付属品)に係る購入費用 洗浄アクセサリー(付属品)は、被告製品1の納車後に直ちに現場 作業ができるように、洗浄作業に最低限必要となる器具等を標準で付属させているものであり、その購入費用は、ワンボックス高圧洗浄車ユニットの費用に含まれていない。したがって、当該費用は、製造原価として控除すべき経費に当たる。 d 販売経費 被告製品1の販売に要した販 ものであり、その購入費用は、ワンボックス高圧洗浄車ユニットの費用に含まれていない。したがって、当該費用は、製造原価として控除すべき経費に当たる。 d 販売経費 被告製品1の販売に要した販売経費を、概括的に「契約までの営業日数を10日」と見積もって算出することには合理性がある。また、高速代、燃料費、日当等は、費用の発生が当然に予想されるものであって、その額も予想される程度のものである。 e 長野工場最終確認検査同行費用 長野工場最終確認検査に同行する際の高速代、燃料費、日当等は、費用の発生が当然に予想されるものであって、その額も予想される程度のものである。 f 納車後1年間保証被告製品1販売後の1年間保証は、メーカーとして当然にかかる費 用である。 (ウ) 特許法102条2項の推定が覆滅されることa 原告は被告各製品の競合品の生産販売能力を欠くこと原告は、破産手続中に事業を行ってはならないとされていたし、破産手続において生活必需品以外の財産は換価されたはずである。そし て、自動車の生産販売能力を短期間で獲得するのは常識的に不可能であるところ、原告が自動車の生産販売能力を獲得したこと、「エーテルファイル」を1台でも販売できたことについての立証はない。したがって、原告は、破産手続開始決定日の翌日である平成28年7月14日以降現在に至るまで、被告各製品の競合品の生産販売能力を有しな いと考えられる。 b 原告の製品と被告各製品との市場非同一性原告の製品である「エーテルファイン」のポンプ駆動エンジンの最高出力は、被告各製品のそれと比較すると半分以下しかない。そのため、被告各製品の主たる用途は、専用ノズルによる排水管洗浄であるのに対し、「エーテルファイン」の用途は、墓石、建 ポンプ駆動エンジンの最高出力は、被告各製品のそれと比較すると半分以下しかない。そのため、被告各製品の主たる用途は、専用ノズルによる排水管洗浄であるのに対し、「エーテルファイン」の用途は、墓石、建材の外壁洗浄に限 定される。被告各製品についても、ポンプの出力を落とすことにより、墓石、建材の外壁の洗浄に使用することは可能であるものの、費用対効果が悪くなることから一般的ではない。 したがって、「エーテルファイン」と被告各製品とは、市場が異なっている。 (5) 争点5(被告KCSによる被告製品1の製造、販売等に係る被告カンツールの共同不法行為責任の成否)について(原告の主張)被告カンツールは、ウェブサイト及びカタログにおいて、「ECOACEJET」との名称で被告製品1を広告宣伝している。また、被告カンツール は、本件訴訟提起前の原告との交渉において、被告KCSから「ECOACEJET」の納品を受けて販売していると回答していた。このように、被告らは、被告KCSが製造した同一の製品を、被告KCSは「EJWシリーズ」との名称で、被告カンツールは「ECOACEJET」との名称で、それぞれ販売している。 上記のとおり、①被告らの間には、被告製品1について、売買又は他の取引があったこと(少なくとも取引の意思があったこと)、②被告らが、製品名を変えて同じ被告製品1の販売又は販売の申出をしていたこと、③被告らが、相互に、上記①及び②の事実を知っていたことに照らせば、被告らの間には、少なくとも共同不法行為の成立要件である客観的共同関係があったというべ きである。 仮に、被告カンツールにおいて被告製品1の販売実績がなかったとすると、被告カンツールは、同社に「ECOACEJ の成立要件である客観的共同関係があったというべ きである。 仮に、被告カンツールにおいて被告製品1の販売実績がなかったとすると、被告カンツールは、同社に「ECOACEJET」の照会や注文があった際、被告KCSに顧客又は見込客を紹介するなどして、被告KCSにおける被告製品1の販売に寄与していた可能性も高い。 したがって、被告カンツールは、平成28年7月14日以降の被告KCS による被告製品1の製造、販売等につき、共同不法行為者として、原告に生じた損害を連帯して賠償する責任を負う。 (被告らの主張)被告製品1と被告製品2とは、製品名が異なるだけではなく、後部窓が前者ではガラス製であるのに対し、後者ではFRP板で塞がれており、外観も 異なる。 このように、需要者は、被告製品1と被告製品2とを同一の製品と認識することはないから、被告カンツールが被告製品2の広告宣伝をしているとしても、被告KCSにおける被告製品1の販売に寄与することはない。 したがって、被告カンツールが、被告KCSによる被告製品1の製造、販 売等について責任を負うことはない。 (6) 争点6(消滅時効の成否)について(被告らの主張)原告は、令和2年8月20日、被告らに催告をしたものの、本件訴訟を提起したのはそれよりも6か月以上後の令和3年3月9日であるから、当該催 告に、時効の完成猶予の効力はない。 したがって、被告らは、平成28年7月13日(破産手続開始決定日)までの侵害行為を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権について、消滅時効を援用する。 (原告の主張) 原告が被告らの不法行為を知ったのは、令和2年1月頃であるから、消滅 時効の起算点である「加害者及び損害を知ったとき」は、同月 ついて、消滅時効を援用する。 (原告の主張) 原告が被告らの不法行為を知ったのは、令和2年1月頃であるから、消滅 時効の起算点である「加害者及び損害を知ったとき」は、同月から起算される。 したがって、消滅時効は完成していない。 第3 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載事項等 (1) 本件明細書(甲9)の「発明の詳細な説明」には、以下の記載がある(下記記載中に引用する図面については、別紙本件明細書図面目録参照)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は、乗員室と、その乗員室の後側に連続すると共に後端が車体 後面に開口する荷室とを備え、その荷室の後端開口部を、車体後端に設けたテールゲートで開閉できるようにしたバン型自動車、特に手軽に利用できる水源が近くにないような被洗浄部位、例えば建物の外壁や窓、シャッター、道路、屋外設置品等に対する水洗浄作業に好適な洗浄作業用バン型自動車に関する。 【背景技術】【0002】従来の上記洗浄作業用バン型自動車としては、例えば、車両の荷室内に、水を貯めるタンクと、このタンク内の水を吸引し得るポンプとを設置、固定し、そのポンプの吐出側に接続された圧送管の下流端に洗浄ガ ンを接続し、ポンプで加圧された高圧洗浄水を洗浄ガンより被洗浄体に向けて噴射して、被洗浄体を洗浄するようにしたものが既に提案されている…。 イ 【発明が解決しようとする課題】【0003】 しかしながら上記従来のものでは、テールゲートを開放して荷室の後 端開口部を開けっ放しにしたままの状態で、その開口部を通してポンプに連なる圧送管を外部に引き出すようにしているため、洗浄作業中のポンプの作動音やこれを駆動する内燃機関の運転音が騒音となって、車外に大 開口部を開けっ放しにしたままの状態で、その開口部を通してポンプに連なる圧送管を外部に引き出すようにしているため、洗浄作業中のポンプの作動音やこれを駆動する内燃機関の運転音が騒音となって、車外に大きく伝わり易く、従って、静粛性が求められる住宅街等の被洗浄場所や深夜等の作業時間帯においては、実質的に洗浄作業が困難となって 作業環境や作業時間帯が大きく制限されてしまう問題がある。また、テールゲートを開けっ放しで洗浄作業を行うため、作業員が車から離れて作業を行っているときに、車内の備品が盗難にあったり或いは悪戯されたりする虞れがある。 【0004】 本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、従来のものの上記問題を簡単な構造で一挙に解決できるようにした洗浄作業用バン型自動車及びこれを用いた洗浄方法を提供することを目的とする。 ウ 【課題を解決するための手段】【0005】 上記目的を達成するために請求項1の発明は、乗員室と、その乗員室の後側に連続すると共に後端が車体後面に開口する荷室とを備え、その荷室の後端開口部を、車体後端に設けたテールゲートで開閉できるようにした洗浄作業用バン型自動車において、前記荷室には、水を貯めるタンクと、このタンク内の水を吸引し得るポンプと、このポンプを駆動す る内燃機関と、その内燃機関から延びる排気管に介装される排気消音器とが収納、固定され、車体の、前記荷室下方の床部には、前記ポンプの吐出側より延出する圧送管を挿通させて該圧送管を車外に引き出すための圧送管挿通部と、前記排気消音器より下流側の前記排気管を挿通させて該排気管の下流端を車外の大気に開放するための排気管挿通部とが設 けられることを特徴とする。 エ 【発明の効果】【0018】以 り下流側の前記排気管を挿通させて該排気管の下流端を車外の大気に開放するための排気管挿通部とが設 けられることを特徴とする。 エ 【発明の効果】【0018】以上のように本発明によれば、洗浄作業用バン型自動車において、水のタンクと、ポンプと、このポンプを駆動する内燃機関と、その内燃機関から延びる排気管の途中に介装される排気消音器とを荷室に収納、固 定し、車体の、荷室下方の床部には、ポンプの吐出側より延出する圧送管を挿通させて該圧送管を車外に引き出すための圧送管挿通部と、排気消音器より下流側の排気管を挿通させて該排気管の下流端を車外の大気に開放するための排気管挿通部とを設けたので、圧送管挿通部より車外に引き出された圧送管より勢いよく出る水を利用して水洗浄作業を支障 なく行うことができ、手軽に利用可能な水源が近くにない被洗浄部に対しても水洗浄作業を容易に行える。またその水洗浄作業に際してテールゲート並びに自動車のドア及び窓を全部閉じても、内燃機関からの排気の車外排出と、ポンプから延びる圧送管の車外への引出しとを支障なく行えるので、水洗浄作業のために内燃機関を運転してポンプを駆動して いるときにテールゲート並びに自動車のドア及び窓を全部閉じておくことができて、荷室内のポンプ及び内燃機関を外部から有効に遮断でき、従って、荷室内の排気消音器による消音効果とも相俟って、洗浄作業中のポンプの作動音や内燃機関の運転音が車外に大きく伝わることを効果的に回避でき、静粛性を求められる住宅街等の作業場所においても洗浄 作業を支障なく行うことができる。またテールゲート等を閉じてこれをロックしたままでも水洗浄作業を継続的に行えるため、作業員が車から離れて作業している場合でも、車内の備品が盗難にあったり 洗浄 作業を支障なく行うことができる。またテールゲート等を閉じてこれをロックしたままでも水洗浄作業を継続的に行えるため、作業員が車から離れて作業している場合でも、車内の備品が盗難にあったり或いは悪戯されたりするのを回避することができる。 オ 【発明を実施するための最良の形態】 【0031】 …図1は、洗浄作業用バン型自動車を用いて建物のシャッターを水洗浄している一例を示す全体側面図、図2は、前記自動車の一部を破断した全体側面図…である。 【0032】先ず、図1において、洗浄作業用バン型自動車Vは、いわゆるワンボ ックス型と呼ばれる箱型の車体Fを有しており、その車体F内に形成される車室Cは、乗員室Cfと、その乗員室Cfの後側に連続すると共に後端が車体F後面に開口する荷室Crとより構成されている。前側の乗員室Cfには、前後2列のシートSf,Srが前後に間隔をおいて並設されており、その何れのシートSf,Srも背もたれ部が前後揺動可能 となっており、特に後列シートSrの背もたれ部を前倒しすれば、荷室Crの前側に臨時の延長荷室が形成可能である。また荷室Crの後端開口部は、車体Fの後端上部に揺動可能に軸支されたテールゲートGで開閉できるようになっており、このテールゲートGは、それが荷室Crの後端開口部を閉じる閉じ位置にあるときには、ゲート内面の外周縁部が 車体Fの後端開口縁部にシールパッキン(図示せず)を介して圧接していて、外から雨や埃等が荷室Cr内に侵入しないように(従って車室C内の音が外に漏れないように)なっている。以上は、従来の貨物運搬用バン型自動車の車室構成と同様である。 【0033】 荷室Crに臨む車体床部Ffの上面には、本発明の洗浄装置を取付けるための 漏れないように)なっている。以上は、従来の貨物運搬用バン型自動車の車室構成と同様である。 【0033】 荷室Crに臨む車体床部Ffの上面には、本発明の洗浄装置を取付けるための平坦な金属板(図示例ではステンレス板)よりなるベースプレートBがボルト等の固着手段により着脱可能に固着される。そのベースプレートB上には、後列シートSrに後側に隣接配置されて水を貯留するタンクTと、このタンクT内の水を吸引し得るポンプPと、このポン プPを駆動すべく該ポンプPに連動連結された内燃機関Eと、その内燃 機関Eから延びる排気管Exの途中に介装される排気消音器Mとが収納、固定される。…【0034】また特に図示例では、内燃機関Eと、その内燃機関Eに直結駆動されるプランジャ式ポンプPとが、車輪W付きの共通の機枠1に一纏めに搭 載されてユニット化されており、該機枠1の適所が車体Fの床部Ff(図示例ではベースプレートB)にボルト等の固着手段により着脱可能に固着される。このようにポンプPとその駆動系(内燃機関E)をユニット化すれば、それらをコンパクトに纏めて荷室Crに無理なく収納可能となる。… 【0035】車体Fの、前記荷室Cr下方の床部Ffには、前記ポンプPの吐出側より延出する圧送管Aを挿通させて該圧送管Aを車外に引き出すための圧送管挿通部Haと、前記排気消音器Mより下流側の排気管Exを挿通させて該排気管Exの下流端を車外の大気に開放するための排気管挿通 部Hbとが設けられる。圧送管挿通部Haは、車体Fの床部Ffに穿設された第1挿通孔hと、その挿通孔hに対応してベースプレートBに穿設された第1プレート孔Bhと、そのプレート孔Bhの開口縁に上端を固着(図示例では溶接)されて第1挿通孔hを通し 体Fの床部Ffに穿設された第1挿通孔hと、その挿通孔hに対応してベースプレートBに穿設された第1プレート孔Bhと、そのプレート孔Bhの開口縁に上端を固着(図示例では溶接)されて第1挿通孔hを通して(床部Ffを貫通して)下方に延びる第1筒体2とで構成され、この筒体2内に可撓性を 有する前記圧送管Aが通される。また排気管挿通部Hbは、車体Fの床部Ffに第1挿通孔hとは間隔をおいて穿設された第2挿通孔h′と、その挿通孔h′に対応してベースプレートBに穿設された第2プレート孔Bh′と、そのプレート孔Bh′の開口縁に上端を固着(図示例では溶接)されて第2挿通孔h′を通して(床部Ffを貫通して)下方に延 びる第2筒体2′とで構成され、この筒体2′内に可撓性を有する前記 排気管Exが通される。 【0057】而して本実施例によれば、圧送管挿通部Haより車外に引き出された圧送管Aより勢いよく出る水を利用して水洗浄作業を行うことができるため、手軽に利用できる水源が近くにない被洗浄部に対しても水洗浄作 業を容易に行える。またその水洗浄作業に際してテールゲートG並びに自動車Vのドア及び窓を全部閉じたままでも、内燃機関Eからの排気の車外排出と、ポンプPから延びる圧送管Aの車外引出しとを支障なく行えるので、水洗浄作業のために内燃機関Eを運転してポンプPを駆動しているときにテールゲートG並びに自動車Vのドア及び窓を全部閉じて おくことで、荷室Cr内のポンプP及び内燃機関Eを外部から有効に遮断でき、これにより、排気消音器M,MXによる消音効果とも相俟って、洗浄作業中のポンプPの作動音や内燃機関Eの運転音が車外に大きく伝わることを効果的に回避できるから、静粛性を求められる住宅街等の作業場所においても、或いは静粛性を求め Xによる消音効果とも相俟って、洗浄作業中のポンプPの作動音や内燃機関Eの運転音が車外に大きく伝わることを効果的に回避できるから、静粛性を求められる住宅街等の作業場所においても、或いは静粛性を求められる深夜等の作業時間帯にお いても洗浄作業を支障なく行うことができる。 【0058】またテールゲートG並びに自動車Vのドア及び窓を全部閉じたまま洗浄作業を行えるようにしたことにより、作業員が車から離れて作業している場合にテールゲートG並びに自動車Vのドア及び窓を全部閉じてテ ールゲートG及び各ドアをロックしておくことができるため、車内の備品が盗難にあったり或いは悪戯されたりするのを効果的に防止することができる。 (2) 前記(1)の記載事項によれば、本件明細書には、本件発明に関し、以下のとおりの開示があると認められる。 ア従来の洗浄作業用バン型自動車としては、例えば、車両の荷室内に、水 を貯めるタンクと、このタンク内の水を吸引し得るポンプとを設置、固定し、そのポンプの吐出側に接続された圧送管の下流端に洗浄ガンを接続し、ポンプで加圧された高圧洗浄水を洗浄ガンより被洗浄体に向けて噴射して、被洗浄体を洗浄するようにしたものが既に提案されているが、テールゲートを開放して荷室の後端開口部を開けっ放しにしたままの状態で、その開 口部を通してポンプに連なる圧送管を外部に引き出すようにしているため、洗浄作業中のポンプの作動音やこれを駆動する内燃機関の運転音が騒音となって、車外に大きく伝わり易く、静粛性が求められる住宅街等の被洗浄場所や深夜等の作業時間帯においては、実質的に洗浄作業が困難となって作業環境や作業時間帯が大きく制限されてしまう、また、テールゲートを 開けっ放しで洗浄作業を行うため、作業員 住宅街等の被洗浄場所や深夜等の作業時間帯においては、実質的に洗浄作業が困難となって作業環境や作業時間帯が大きく制限されてしまう、また、テールゲートを 開けっ放しで洗浄作業を行うため、作業員が車から離れて作業を行っているときに、車内の備品が盗難にあったり或いは悪戯されたりする虞れがあるとの問題があった(【0002】及び【0003】)。 イ 「本発明」は、前記アの問題を解決することを目的として、乗員室と、その乗員室の後側に連続すると共に後端が車体後面に開口する荷室とを備 え、その荷室の後端開口部を、車体後端に設けたテールゲートで開閉できるようにした洗浄作業用バン型自動車において、前記荷室には、水を貯めるタンクと、このタンク内の水を吸引し得るポンプと、このポンプを駆動する内燃機関と、その内燃機関から延びる排気管に介装される排気消音器とが収納、固定され、車体の、前記荷室下方の床部には、前記ポンプの吐 出側より延出する圧送管を挿通させて該圧送管を車外に引き出すための圧送管挿通部と、前記排気消音器より下流側の前記排気管を挿通させて該排気管の下流端を車外の大気に開放するための排気管挿通部とが設けられるとの構成を採用したものである(【0005】)。これにより、洗浄作業に際してテールゲート並びに自動車のドア及び窓を全部閉じても、内燃機関か らの排気の車外排出と、ポンプから延びる圧送管の車外への引出しとを支 障なく行えるので、洗浄作業のために内燃機関を運転してポンプを駆動しているときにテールゲート並びに自動車のドア及び窓を全部閉じておくことができ、荷室内のポンプ及び内燃機関を外部から有効に遮断でき、荷室内の排気消音器による消音効果とも相俟って、洗浄作業中のポンプの作動音や内燃機関の運転音が車外に大きく伝わること を全部閉じておくことができ、荷室内のポンプ及び内燃機関を外部から有効に遮断でき、荷室内の排気消音器による消音効果とも相俟って、洗浄作業中のポンプの作動音や内燃機関の運転音が車外に大きく伝わることを効果的に回避でき、静 粛性を求められる住宅街等の作業場所においても洗浄作業を支障なく行うことができるとともに、テールゲート等を閉じてこれをロックしたままでも水洗浄作業を継続的に行えるため、作業員が車から離れて作業している場合でも、車内の備品が盗難にあったり或いは悪戯されたりするのを回避することができるとの効果を奏する(【0018】)。 2 争点1(被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について(1) 構成要件Eの充足性ア 「車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff)」の意義(ア) 本件特許の特許請求の範囲には、「車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff)には、前記ポンプ(P)の吐出側より延出する圧送管 (A)を挿通させて該圧送管(A)を車外に引き出すための圧送管挿通部(Ha)と、前記排気消音器(M)より下流側の前記排気管(Ex)を挿通させて該排気管(Ex)の下流端を車外の大気に開放するための排気管挿通部(Hb)とが設けられる」(構成要件E、E1及びE2)との記載がある。この記載によれば、「圧送管挿通部(Ha)」及び「排気 管挿通部(Hb)」のいずれもが「荷室(Cr)下方の床部(Ff)」に設けられることが規定されている。そして、本件特許の特許請求の範囲の記載によれば、「圧送管挿通部(Ha)」は、「荷室(Cr)」に設けられる「ポンプ(P)」(構成要件D、D2)の「吐出側より延出する圧送管(A)を挿通させて該圧送管(A)を車外に引き出すための」(構成要 件E1)ものであり、「排気管挿通 荷室(Cr)」に設けられる「ポンプ(P)」(構成要件D、D2)の「吐出側より延出する圧送管(A)を挿通させて該圧送管(A)を車外に引き出すための」(構成要 件E1)ものであり、「排気管挿通部(Hb)」は、「荷室(Cr)」に設 けられる「排気消音器(M)より下流側の前記排気管(Ex)」(構成要件D、D4)を「挿通させて該排気管(Ex)の下流端を車外の大気に開放するための」(構成要件E2)ものであるから、「圧送管挿通部(Ha)」及び「排気管挿通部(Hb)」が設けられる「荷室(Cr)下方の床部(Ff)」は、車体の外部と荷室とを隔てる車体を構成する部材と理 解することができる。もっとも、「圧送管挿通部(Ha)」及び「排気管挿通部(Hb)」が「荷室(Cr)下方の床部(Ff)」のどの位置に設けられるのかについては明らかでない。 また、本件明細書の【0003】及び【0005】には、本件発明が解決しようとする課題は、従来の洗浄作業用バン型自動車では、テール ゲートを開放して荷室の後端開口部を開放したままの状態で作業をすることになるため、ポンプの作動音やこれを駆動する内燃機関の運転音が騒音となったり、作業員が車から離れて作業を行っているときに車内の備品が盗難にあったりするおそれがあるということであって、これを解決するために、荷室下方の床部に、圧送管を車外に引き出すための圧送 管挿通部及び排気管を挿通する排気管挿通部を設ける構成としたことが記載されているものの、圧送管挿通部及び排気管挿通部を荷室下方の床部のどの位置に設けるのかについての記載はない。 そして、本件特許の特許請求の範囲には、「荷室(Cr)」は「乗員室(Cf)の後側に連続すると共に後端が車体(F)後面に開口する」(構 成要件B)部分であるとされ るのかについての記載はない。 そして、本件特許の特許請求の範囲には、「荷室(Cr)」は「乗員室(Cf)の後側に連続すると共に後端が車体(F)後面に開口する」(構 成要件B)部分であるとされているから、「車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff)」とは、その字義のとおり、荷室(乗員室の後側に連続すると共に後端が車体後面に開口する部分)の下方に位置し、車体の外部と荷室とを隔てる車体を構成する部材を意味するものと解するのが相当である。 (イ) 被告らは、本件発明における「荷室(Cr)下方の床部(Ff)」は重 量物を配置することが可能な強度を有することが必要であると主張する。 しかし、前記(ア)のとおり、本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書には、「圧送管挿通部(Ha)」及び「排気管挿通部(Hb)」が「荷室(Cr)下方の床部(Ff)」のどの位置に設けられるのかについての特段の記載はなく、「圧送管挿通部(Ha)」及び「排気管挿通部(Hb)」が設 けられる箇所について、重量物を配置することが可能な強度を有しなければならないとの限定はされていない。 また、被告らは、本件明細書の【0033】及び【0034】の記載を指摘して、「床部Ff」は具体的に「ベースプレートB」として説明されているから、やはり「荷室(Cr)下方の床部(Ff)」は強度を有す ることが必要であると主張する。しかし、本件明細書の「荷室Crに臨む車体床部Ffの上面には、本発明の洗浄装置を取付けるための平坦な金属板(図示例ではステンレス板)よりなるベースプレートBがボルト等の固着手段により着脱可能に固着される。」(【0034】)との記載からすると、この「ベースプレートB」は、「洗浄装置」を床に直接取り付 けるのではなく、「洗浄装置」を ースプレートBがボルト等の固着手段により着脱可能に固着される。」(【0034】)との記載からすると、この「ベースプレートB」は、「洗浄装置」を床に直接取り付 けるのではなく、「洗浄装置」を「ベースプレートB」を介して床に取り付けるために用いられるものと理解することができる。したがって、「床部Ff」と「ベースプレートB」とは別の部材であると解されるから、被告らの主張は前提を欠くものであって、いずれにせよ「圧送管挿通部(Ha)」及び「排気管挿通部(Hb)」が設けられる箇所を限定する趣 旨の記載と解することはできない。 したがって、被告らの上記各主張を採用することはできない。 イ被告各製品の構成及びあてはめ前提事実(5)のとおり、被告各製品において、圧送管挿通部に該当する箇所及び排気管挿通部に該当する箇所は、いずれも荷室前方の左右に備えら れている乗降口ステップに設けられている(構成b、e、e1及びe2)。 そして、証拠(甲2の3、乙6)によれば、被告各製品の乗降口ステップは、荷室の下方に位置し、車体の外部と荷室とを隔てる車体を構成する部材であることが認められる。 したがって、被告各製品は、構成要件Eを充足すると認められる。 (2) 小括 前提事実(6)のとおり、被告各製品は、構成要件AないしD4、E1ないしFをいずれも充足する。 したがって、被告各製品は、本件発明の技術的範囲に属すると認められる。 3 争点2(権利濫用の抗弁の成否)について(1) 前提事実及び後掲の各証拠並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認 めることができる。 ア Yからの借入れ及び譲渡担保権の設定原告は、平成16年12月15日、Yから、新型バン型高圧洗浄車の開発及びその開発が成功した際の特許等の出願 れば、以下の事実を認 めることができる。 ア Yからの借入れ及び譲渡担保権の設定原告は、平成16年12月15日、Yから、新型バン型高圧洗浄車の開発及びその開発が成功した際の特許等の出願、登録のための費用として、500万円を借り受けた。その際、原告は、Yに対し、当該高圧洗浄車の 開発が成功し、これに係る特許をエーテル産業が取得したときは、同社に当該特許に係る特許権を目的とする譲渡担保権を設定させることを約束した。(甲21)イ本件出願から本件独占的通常実施権の許諾までエーテル産業及び新明和工業は、平成17年10月21日、発明の名称 を「洗浄作業用バン型自動車及びこれを用いた洗浄方法」として、本件出願をした(前提事実(2))。 エーテル産業は、平成19年8月2日、本件特許に係る発明について、新明和工業が有していた特許を受ける権利の持分全部の譲渡を受けた(前提事実(2))。 エーテル産業は、平成21年9月11日、本件特許権の設定登録を受け た(前提事実(2))。 エーテル産業は、Yに対し、本件特許権を譲渡し(本件第1譲渡)、平成26年12月22日、その旨の登録がされた。Yは、同日、原告に対し、本件特許権について独占的通常実施権(本件独占的通常実施権)を許諾した。(前提事実(8)ア) ウ原告及びエーテル産業による破産手続開始の申立て原告は、平成27年5月31日、エーテル産業の営業を廃止した(甲27)。 原告及びエーテル産業は、平成28年7月2日、東京地方裁判所に対し、それぞれ本件個人申立書及び本件法人申立書により、破産手続開始の申立 てをした(前提事実(8)イ)。 本件個人申立書添付の財産目録及び報告書には、本件独占的通常実施権についての記載はなかった(甲26)。 個人申立書及び本件法人申立書により、破産手続開始の申立 てをした(前提事実(8)イ)。 本件個人申立書添付の財産目録及び報告書には、本件独占的通常実施権についての記載はなかった(甲26)。 また、本件法人申立書添付の財産目録には、本件特許権及び本件特許権に係る実施権についての記載はなかったが、同添付の陳述書には、平成1 7年に、高圧洗浄車を改造した「エーテルファイン」について特許出願をし、平成21年9月に、その特許権を取得した旨が、同添付のエーテル産業の第19期(平成24年5月1日から平成25年4月30日まで)及び第20期(同年5月1日から平成26年4月30日まで)に係る「旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」及び 「減価償却資産の計算書」には、取得年月日を平成18年4月1日として名称を「洗浄作業用自動車を用いた洗浄方法①」とする特許権(取得価額は20万8655円)及び取得年月日を平成19年10月1日として名称を「洗浄作業用自動車を用いた洗浄方法②」とする特許権(取得価額は37万0845円)の二つが記載されていた(甲27)。 エ原告及びエーテル産業の破産手続 東京地方裁判所は、平成28年7月13日午後5時、原告及びエーテル産業の両名について、弁護士Zを破産管財人として選任した上、破産手続開始の決定をしたが、その後、両名に係る破産手続について、いずれも破産手続廃止の決定をし、同年10月13日、それらの決定は確定した(前提事実(8)イ)。 オ本件第2譲渡Yは、令和元年7月15日、本件特許権を原告に譲渡し(本件第2譲渡)、同年8月19日、その旨の登録がされた(前提事実(8)ウ)。 (2) 前記(1)の認定事実に基づいて、原告による本件特許権及び本件独 は、令和元年7月15日、本件特許権を原告に譲渡し(本件第2譲渡)、同年8月19日、その旨の登録がされた(前提事実(8)ウ)。 (2) 前記(1)の認定事実に基づいて、原告による本件特許権及び本件独占的通常実施権の行使が権利の濫用に当たるか否かについて検討する。 アまず、本件法人申立書に添付された陳述書には、平成17年に、高圧洗浄車を改造した「エーテルファイン」について特許出願をし、平成21年9月に、その特許権を取得した旨が記載されていた。 そして、本件法人申立書に添付されたエーテル産業の第19期(平成24年5月1日から平成25年4月30日まで)及び第20期(同年5月1 日から平成26年4月30日まで)に係る書類に記載されていた各特許権の名称は、洗浄作業用自動車を用いた洗浄方法との点で本件特許に係る発明の名称と共通している。また、上記の各特許権の取得年月日についてみると、前者の平成18年4月1日は本件出願の日(平成17年10月21日)に基づいて、後者の平成19年10月1日は新明和工業が有していた 特許を受ける権利の持分全部の譲渡を受けた日(平成19年8月2日)に基づいて、それぞれ記載されたものと考えても不合理ではないといえる。 これらの事情のほか、本件全証拠によっても、エーテル産業が本件特許権以外の特許権を保有していたとは認められないことに照らせば、上記の各特許権についての記載は、本件特許権につき、①平成17年10月21日 にエーテル産業と新明和工業が共同で出願したもののうちエーテル産業の 持分を、②平成19年8月2日に新明和工業がエーテル産業に出願中の特許を受ける権利の持分を譲渡したことに伴ってエーテル産業が譲り受けた当該持分を、それぞれ別個の減価償却資産として計上したものと認めるのが相当 平成19年8月2日に新明和工業がエーテル産業に出願中の特許を受ける権利の持分を譲渡したことに伴ってエーテル産業が譲り受けた当該持分を、それぞれ別個の減価償却資産として計上したものと認めるのが相当である。 これに対し、本件法人申立書に添付した財産目録において本件特許権に ついての記載は存在しないから、エーテル産業が、第20期の事業年度の末日の翌日である平成26年5月1日から破産手続開始の申立てをした平成28年7月2日までの間に、本件特許権を処分していることは明らかである。 このように、エーテル産業に係る破産手続の記録上、破産管財人及び破 産裁判所において、エーテル産業がかつて本件特許権を保有しており、かつ、これが第20期の事業年度の末日の翌日である平成26年5月1日から破産手続開始の申立てをした平成28年7月2日までの間に処分されていることを認識できたと認められるから、この点において、原告が財産を隠匿したということはできない。 イ次に、前記(1)ウのとおり、本件個人申立書に添付した財産目録及び報告書に、本件独占的通常実施権についての記載はなく、原告が、破産手続において、破産管財人又は破産裁判所に対し、本件独占的通常実施権が許諾されていることを申告したと認めるに足りる証拠もない。 もっとも、証拠(甲27)によれば、エーテル産業の第20期(平成2 5年5月1日から平成26年4月30日まで)に係る書類に記載された二つの「特許権」の期末帳簿価額は、その取得価額と同額の合計57万9500円であったと認められ、前記アの検討結果によれば、これらの二つの「特許権」の記載は、いずれも本件特許権に係るものであるところ、本件独占的通常実施権の評価額は、上記の期末帳簿価額等を下回るのが通常で あると考えられる。そして、 結果によれば、これらの二つの「特許権」の記載は、いずれも本件特許権に係るものであるところ、本件独占的通常実施権の評価額は、上記の期末帳簿価額等を下回るのが通常で あると考えられる。そして、原告又はエーテル産業が「エーテルファイン」 を販売して売上げを計上できていたと認めるに足りる証拠はないこと、知的財産権の換価には相応の費用を要するのが通例であることを考慮すると、原告が破産手続において本件独占的通常実施権が許諾されていることを申告していたとしても、本件独占的通常実施権が換価されるなどして、原告がこれに基づく請求をすることができなかった可能性が高いとはいえない。 ウこのほか、被告らは、原告がYに対する債務のために本件特許権について譲渡担保権を設定したことについて、偏頗弁済に当たる可能性が否定できないと主張するが、当該行為が破産法所定の否認の対象に当たると認めるに足りる証拠はない。 エ以上のとおり、破産管財人及び破産裁判所は、本件法人申立書に添付し た陳述書及び書類に記載されている事項から、エーテル産業が平成21年9月から本件特許権を保有しており、かつ、これが第20期の事業年度の末日の翌日である平成26年5月1日から破産手続開始の申立てがされた平成28年7月2日までの間に処分されていることを認識できたはずである。そうすると、この点において、原告が財産を隠匿したと認めることは できないというべきである。 また、原告が、破産手続において、自身に本件独占的通常実施権が許諾されていることを申告しなかったことは、不適切であったといえるものの、これを申告していれば、原告が本件独占的通常実施権を喪失し、これに基づく請求をすることができなかったとまではいえない。そうすると、この 事実から直ちに上記請 は、不適切であったといえるものの、これを申告していれば、原告が本件独占的通常実施権を喪失し、これに基づく請求をすることができなかったとまではいえない。そうすると、この 事実から直ちに上記請求が権利の濫用であると評価することはできないというべきである。 このほか、本件全証拠によっても、原告の被告らに対する本件特許権及び本件独占的通常実施権に基づく請求が権利の濫用に当たることを基礎付ける事実を認めることはできない。 したがって、被告らの権利濫用の抗弁は理由がない。 4 争点3(差止め等の必要性)について(1) 前提事実(7)及び前記2及び3のとおり、被告KCSは、業として、被告製品1を製造、譲渡及び譲渡の申出をしたこと、被告カンツールは、業として、被告製品2の譲渡及び譲渡の申出をしたことがそれぞれ認められるところ、被告各製品は本件発明の技術的範囲に属すると認められるから、被告らの当 該行為は本件特許権を侵害する。 (2) そして、被告らは、本件訴訟において、前記第2の4の各(被告らの主張)のとおり、被告各製品が本件発明の技術的範囲に属することなどについて争っていることを考慮すると、被告KCSに対し、被告製品1の製造、譲渡及び譲渡の申出について、被告カンツールに対し、被告製品2の譲渡及び譲渡 の申出について、それぞれ差止めを命じるとともに、被告らに対し、当該各製品の廃棄を命じる必要性が認められる。 (3) 原告は、被告らに対し、被告各製品の製造、譲渡、貸渡し、譲渡及び貸渡しの申出、輸出及び輸入の差止めをそれぞれ求めているが、被告らが、前記(2)において認定した実施行為以外の行為をしているとか、そのおそれがある と認めるに足りる証拠はないから、前記(2)において認定した実施行為以外の行 めをそれぞれ求めているが、被告らが、前記(2)において認定した実施行為以外の行為をしているとか、そのおそれがある と認めるに足りる証拠はないから、前記(2)において認定した実施行為以外の行為についての差止請求はいずれも理由がない。 5 争点4(被告らの行為と相当因果関係のある損害の有無及びその額)について(1) 平成21年9月11日(本件特許権の設定登録日)から平成28年7月1 3日(破産手続開始決定日)までの被告各製品に係る侵害行為に基づく損害についてア原告は、仮に被告らが被告各製品を販売していなければ、バン型の高圧洗浄車を必要とする需要者は「エーテルファイン」を購入していた蓋然性があるから、被告らによる被告各製品の製造、販売等という本件特許権の 侵害行為によって、原告は、破産手続開始の決定を受けるに至り、損害を 被ったと主張する。 イそこで検討すると、被告らが被告各製品を販売していなければ、エーテル産業が「エーテルファイン」の販売を通じて売上げを計上できた蓋然性が認められるか否かについては、バン型の高圧洗浄車の需要の有無、当該製品の価格・性能、広告宣伝の状況、製造者・販売者の知名度、営業力な どの様々な事情を考慮して判断するのが相当である。 本件において、原告及びエーテル産業が破産手続開始の決定を受けるまでに「エーテルファイン」の販売によりどの程度の売上げを計上していたかを認めるに足りる証拠はないが、前記第2の4(4)(原告の主張)のとおり、原告は、本件特許権の設定登録後から破産手続開始の決定を受けるま での間、「エーテルファイン」が1台も売れなかったと主張していること、前提事実(7)のとおり、被告KCSが販売した被告製品1は、平成28年11月18日から令和3年3月22日 の決定を受けるま での間、「エーテルファイン」が1台も売れなかったと主張していること、前提事実(7)のとおり、被告KCSが販売した被告製品1は、平成28年11月18日から令和3年3月22日までの約4年5か月の間に8台と、年間2台程度にとどまっていることからすると、バン型の高圧洗浄車の需要はかなり小さいといえる。そして、そのような小さな市場において、需要 者が、「エーテルファイン」と被告各製品とを比較して、当該各製品の価格・性能、広告宣伝の状況、製造者・販売者の知名度、営業力等を考慮し、被告各製品ではなく「エーテルファイン」を購入するとは考え難い。これらの事情を前提に検討すると、本件全証拠によっても、被告らが被告各製品を販売していなければ、エーテル産業が「エーテルファイン」の販売を 通じて売上げを計上できた蓋然性があると認めることはできないというべきである。 また、本件法人申立書添付の陳述書(甲27)において、エーテル産業の経営が窮状に陥った理由として、平成24年9月に経理事務等を担っていた実母が事故により稼働できなくなったため、経理事務のみならず電話 番などの人手がなくなり、混乱状態となった旨が記載されていることから すると、原告及びエーテル産業が破産手続開始の申立てに至った要因には、「エーテルファイン」の売上げがなかったこと以外にも様々な事情があったと認められる。そうすると、需要者が「エーテルファイン」を購入していれば、エーテル産業の代表取締役であった原告が破産手続開始の決定を受けることを回避できたと認めることもできず、他にそのような可能性を 認めるに足りる証拠もない。 したがって、被告らが被告各製品を販売したことと原告が破産手続開始の決定を受けたこととの間に相当因果関係があると認め たと認めることもできず、他にそのような可能性を 認めるに足りる証拠もない。 したがって、被告らが被告各製品を販売したことと原告が破産手続開始の決定を受けたこととの間に相当因果関係があると認めることはできない。 ウ以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、平成21年9月11日(本件特許権の設定登録日)から平成28年7月13日(破産手 続開始決定日)までの被告各製品に係る侵害行為に基づく損害賠償請求は理由がないというべきである。 (2) 平成28年7月14日(破産手続開始決定日の翌日)以降の被告各製品に係る侵害行為に基づく損害についてア被告らの行為により本件特許権及び本件独占的通常実施権が侵害された こと前提事実(7)及び前記2及び3のとおり、被告KCSは、業として、被告製品1を製造、譲渡及び譲渡の申出をしたこと、被告カンツールは、業として、被告製品2の譲渡及び譲渡の申出をしたことがそれぞれ認められるところ、被告各製品は本件発明の技術的範囲に属すると認められるから、 被告らの当該行為により本件特許権及び本件独占的通常実施権が侵害されたといえる。 イ販売額(ア) 前提事実(7)のとおり、被告KCSは、別紙限界利益計算表1ないし7の「販売先」欄記載の各取引先に対し、被告製品1を同「裁判所認定額」 「金額」「販売額(税抜)」欄記載の額(消費税抜き)で販売した。 (イ) 原告は、被告らが、別紙限界利益計算表1ないし7に係る合計8台以外に、被告各製品を2台販売したと主張する。 そこで検討すると、エース・テックが作成した令和5年3月10日付けの報告書(甲70)には、エース・テックが、平成28年から令和2年にかけて、被告らに対し、被告製品1を合計10台販売した旨が記載 こで検討すると、エース・テックが作成した令和5年3月10日付けの報告書(甲70)には、エース・テックが、平成28年から令和2年にかけて、被告らに対し、被告製品1を合計10台販売した旨が記載 されていることが認められる。しかし、エース・テックが作成した令和4年7月21日付けの報告書(甲58)には、同報告書に記載したエース・テックから被告らに対する被告各製品の販売数は、書類を紛失したため、メモ及び記憶に基づいた正確なものではない旨が記載されている上、令和5年3月10日付けの報告書の記載内容が客観的な裏付けのあ る資料に基づくものであることを認めるに足りる証拠はない。このような事情を考慮すると、令和5年3月10日付けの報告書が信用性を有するものであるとはいえず、その記載内容を採用することはできない。そして、このほかに、被告らが、別紙限界利益計算表1ないし7に係る合計8台の被告製品1以外に被告各製品を販売したと認めるに足りる証拠 はない。 したがって、原告の上記主張を採用することはできないというべきである。 ウ経費(ア) 製造原価について a 高圧ポンプ及び調圧弁に係る購入費用について(a) 証拠(乙62ないし64)によれば、被告KCSがエース・テックにワンボックス高圧洗浄車ユニットの製作を依頼した際の発注書に添付した見積書において、高圧ポンプ及び調圧弁に係る費用が空欄ないし削除されている上、これらが支給品である旨が記載されて いることが認められる。そして、証拠(乙33、34、36ないし 42、43の2、44)によれば、被告KCSは、被告製品1に係る高圧ポンプ及び調圧弁を、業者から購入していたことが認められる。これに対し、当該ワンボックス高圧洗浄車ユニットに係る費用に高圧ポンプ及 42、43の2、44)によれば、被告KCSは、被告製品1に係る高圧ポンプ及び調圧弁を、業者から購入していたことが認められる。これに対し、当該ワンボックス高圧洗浄車ユニットに係る費用に高圧ポンプ及び調圧弁に係る費用が含まれていることを認めるに足りる証拠はない。 以上に照らせば、被告KCSは、被告製品1に係るワンボックス高圧洗浄車ユニットの製作をエース・テックに依頼した際、高圧ポンプ及び調圧弁については、被告KCSが購入した物品をエース・テックへ支給していたと認められる。そして、高圧ポンプ及び調圧弁の購入費用は、いずれも被告製品1の製造数量、販売数量等が増 加すれば当該費用が増加するとの関係にあると認められるから、被告製品1の製造、販売等に直接関連して追加的に必要となった経費に当たる。 したがって、高圧ポンプ及び調圧弁に係る費用は、被告製品1の販売により受けた利益の額を算定するに当たって控除すべきである。 (b) 証拠(乙33、34、36ないし42、43の2、44)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1の販売により受けた利益の額を算定するに当たって控除すべき高圧ポンプ及び調圧弁に係る費用は、別紙限界利益計算表1ないし7の「裁判所認定額」「金額」「製造原価(税抜)」の各「高圧ポンプ」及び「調圧弁」欄記載の額(消費税 抜き)と認められる。 b 洗浄アクセサリー(付属品)に係る購入費用について(a) 証拠(乙35)によれば、被告KCSは、被告製品1を販売する際、購入者が同製品の納車後に直ちに現場作業ができるように、洗浄作業に最低限必要となる高圧ゴムホース、ネットワイヤーホース、 ワンタッチカプラ、ボールバルブ、タービン式洗浄ガン、ホース養 生袋、ジョイントガード等を洗浄アクセサリー(付属 浄作業に最低限必要となる高圧ゴムホース、ネットワイヤーホース、 ワンタッチカプラ、ボールバルブ、タービン式洗浄ガン、ホース養 生袋、ジョイントガード等を洗浄アクセサリー(付属品)として備え付けて販売していることが認められる。そして、被告KCSがエース・テックにワンボックス高圧洗浄車ユニットの製作を依頼した際の発注書等には、これらの部材について何ら記載がなく(乙62、63、65)、むしろ、証拠(乙53ないし59)によれば、被告K CSがこれらを業者から購入していたことが認められる。 以上に照らせば、被告KCSは、被告製品1を販売するに当たり、同社が購入した部材を洗浄アクセサリー(付属品)として備え付けて販売していたことが認められる。そして、洗浄アクセサリー(付属品)の購入費用は、いずれも被告製品1の製造数量、販売数量等 が増加すれば、当該費用が増加するとの関係にあると認められるから、被告製品1の製造、販売等に直接関連して追加的に必要となった経費に当たる。 したがって、洗浄アクセサリー(付属品)に係る費用は、被告製品1の販売により受けた利益の額を算定するに当たって控除すべき である。 (b) 証拠(乙35、53ないし59)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1の販売により受けた利益の額を算定するに当たって控除すべき洗浄アクセサリー(付属品)に係る費用は、別紙限界利益計算表1ないし7の「裁判所認定額」「金額」「製造原価(税抜)」の「洗 浄アクセサリー(付属品)」欄記載の額(消費税抜き)と認められる。 c 別紙限界利益計算表7に係る山地製洗浄車買取りについては、証拠(乙45ないし49、68)によれば、被告KCSは、株式会社友伸産業に被告製品1を販売する際、同社から車両を50万円で買い取った c 別紙限界利益計算表7に係る山地製洗浄車買取りについては、証拠(乙45ないし49、68)によれば、被告KCSは、株式会社友伸産業に被告製品1を販売する際、同社から車両を50万円で買い取った上、その後、当該車両を1万円で売却したことが認められるから、 その差額の49万円は、被告KCSが被告製品1の販売により受けた 利益の額を算定するに当たって控除するのが相当である。 (イ) 諸経費についてa 被告KCSは、販売経費、長野工場最終確認検査同行費用、その他雑費及び納車後1年間保証に係る各費用が、被告製品1の販売により受けた利益の額を算定するに当たって控除すべき経費に当たると主張 する。 しかし、被告KCSが、被告製品1の販売に当たり、これらの費用に相当する支出を現実に行ったことを認めるに足りる証拠はない。 したがって、この点についての被告らの主張を採用することはできない。 b 別紙限界利益計算表3に係る長野工場からの車輌搬送費用(往復)については、これが2台分の費用であることに照らせば、弁論の全趣旨により、25万円と認めるのが相当である。 (ウ) まとめ以上によれば、被告KCSが被告製品1の販売により受けた利益の額 を算定するに当たって控除すべき経費の合計額は、別紙限界利益計算表1ないし7の「裁判所認定額」「金額」「経費合計(税抜)」欄記載の額(消費税抜き)となる。 エ消費税相当額原告は、個人事業者であるから、原告が国内において事業として対価を 得て行う資産の譲渡等は消費税の課税の対象となる(消費税法2条1項3号、同項4号、4条1項)。そして、消費税法基本通達5-2-5柱書及び(2)によると、「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損 税の対象となる(消費税法2条1項3号、同項4号、4条1項)。そして、消費税法基本通達5-2-5柱書及び(2)によると、「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」は、資産の譲渡等の対価に該当するものとされていることからすれば、特許法102条2項の「侵害の行為に より利益を受けているとき」にいう「利益」には消費税相当分も含まれる と解すべきである。 原告は、被告KCSが別紙限界利益計算表1ないし7に係る被告製品1を販売した時点において、課税期間の基準期間における課税売上高が1000万円以下であったため、消費税の納税義務が免除されていたというところ、これは、納税義務が免除されるだけで、課税されるべき事業者であ ることに変わりはないから、上記の結論を左右しないというべきである。 以上によれば、被告KCSが被告製品1の販売により受けた利益の額を算定するに当たり、消費税相当額を加算すべきであり、その額は、別紙限界利益計算表1ないし7の「裁判所認定額」「金額」「消費税相当額」欄記載の額となる。 オ限界利益額前記イないしエによれば、被告KCSが被告製品1の販売により受けた利益の額は、別紙限界利益計算表1ないし7の「裁判所認定額」「金額」「限界利益(税込)」欄記載の額となり、その合計は847万0139円と認められる。 カ特許法102条2項の推定覆滅の成否(ア) 総論特許法102条2項における推定の覆滅については、侵害者が主張立証責任を負うものであり、侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。 以下、被告らが主張する事情について検討する。 (イ) 原告が被告製品1の競合品の生産販売能力を有 が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。 以下、被告らが主張する事情について検討する。 (イ) 原告が被告製品1の競合品の生産販売能力を有しないかについてa 後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (a) 「エーテルファイン」は、日産自動車株式会社(以下「日産自動車」という。)の販売するバン型の車両を改造し、本件発明を実施す るための構造や設備を実装した製品である。 (b) エーテル産業は、自社単独で「エーテルファイン」を製造する能力を有しなかったため、バン型の車両は日産プリンス東京販売株式会社(以下「日産プリンス東京販売」という。)を介して日産自動車が供給し、新明和工業の子会社である新明和オートエンジニアリング株式会社(以下「新明和オートエンジニアリング」という。)に、 当該車両の改造や設備(タンク、高圧噴射用の原動機、消音器等)の搭載を委託し、同社において施工することになっていた(甲29、55、62ないし64、73、74)。 (c) 原告は、破産手続開始の決定を受けた後、清掃業務を中心とする個人事業を開始したが、清掃業務に係るパンフレットに「エーテル ファイン」を掲載したり、バン型の高圧洗浄車に関心のある清掃事業者に「エーテルファイン」を紹介したりしていた(甲71、72)。 また、原告は、破産手続開始の決定を受けた後も、日産プリンス東京販売の元担当者を通じて日産自動車からバン型の車両の供給を受けたり、新明和オートエンジニアリングに所要の改造、設備の搭載 を委託したりすることができる関係を維持していた(甲73、74)。 b 前記aの認定事実を前提に検討すれば、本件全証拠によっても、原告が、破産手続開始の決定 アリングに所要の改造、設備の搭載 を委託したりすることができる関係を維持していた(甲73、74)。 b 前記aの認定事実を前提に検討すれば、本件全証拠によっても、原告が、破産手続開始の決定を受けた後において、被告製品1の競合品を生産、販売する能力を有していなかったと認めることはできないというべきである。 (ウ) 原告の製品と被告製品1との市場が同一でないかについてa 後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (a) 「エーテルファイン」と被告製品1は、いずれもバン型の車両に高圧洗浄機を搭載した製品である(甲2の3、29)。 (b) 被告製品1の販売価格(消費税抜き)は、別紙限界利益計算表1 ないし7記載のとおり、1台当たり460万円ないし915万円と 認められる。これに対し、「エーテルファイン」の主たる製造原価は、車両代金が約566万円(消費税込み。甲64)、高圧洗浄装置取付工事代金が231万円(消費税込み。甲62)と認められるから、その余の諸経費や利益を考慮しても、「エーテルファイン」と被告製品1は、概ね同じ販売価格帯にあると認められる。 (c) 「エーテルファイン」のカタログには、主な清掃対象物として、墓石、石碑、シャッター、建物の外壁、マンションの共用部分床、工事後のアスファルトの汚れが記載されている(甲29、71)。これに対し、被告製品1は、主に専用ノズルによる排水管洗浄に使用されるものの、出力を落とすことにより、墓石、建材の外壁洗浄に も使用できる(弁論の全趣旨)。 b 前記aの認定事実によれば、「エーテルファイン」と被告製品1とは、同じ分野に属する製品で、販売価格帯も概ね同一であって、いずれも墓石、建材の外壁洗浄に用いることができる製品であると 全趣旨)。 b 前記aの認定事実によれば、「エーテルファイン」と被告製品1とは、同じ分野に属する製品で、販売価格帯も概ね同一であって、いずれも墓石、建材の外壁洗浄に用いることができる製品であるというのであるから、これを前提に検討すれば、本件全証拠によっても、被告製品 1の競合品である「エーテルファイン」と被告製品1との市場が同一でないと認めることはできないというべきである。 (エ) 検討前記(イ)及び(ウ)のとおり、原告が、破産手続開始の決定を受けた後において、被告製品1の競合品である「エーテルファイン」を生産、販売 する能力を有していないとも、「エーテルファイン」と被告製品1との市場が同一でないとも認めることはできず、このほかに、侵害者である被告KCSが得た利益と特許権者及び独占的通常実施権者である原告が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情があることについての具体的な主張立証はない。 したがって、特許法102条2項の推定が覆滅されるとはいえない。 キ特許法102条2項により推定される損害額前記オ及びカによれば、特許法102条2項により推定される原告が受けた損害の額は、847万0139円となる。 ク弁護士費用相当額被告KCSによる被告製品1に係る本件特許権及び本件独占的通常実施 権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は、90万円と認めるのが相当である。 ケ小括以上によれば、被告KCSによる被告製品1に係る本件特許権及び本件独占的通常実施権侵害行為によって原告に生じた損害額は、937万01 39円となる。 6 争点5(被告KCSによる被告製品1の製造、販売等に係る被告カンツールの共同不法行為責任の成否)について前提事実(7)及び証拠(乙67)によれば、 額は、937万01 39円となる。 6 争点5(被告KCSによる被告製品1の製造、販売等に係る被告カンツールの共同不法行為責任の成否)について前提事実(7)及び証拠(乙67)によれば、被告カンツールは、被告KCSが製造した被告製品2を「ECOACEJET」との製品名で販売し、販売の 申出をしているものの、被告製品1と被告製品2とは、製品名が異なるだけではなく、後部窓が前者ではガラス製であるのに対して後者ではFRP板で塞がれているとの点で差異があることが認められるから、両者は異なる製品であるというべきである。 また、被告カンツールが、同社の顧客に対し、被告製品1を紹介していたり、 被告KCSに当該顧客を紹介したりしていたと認めるに足りる証拠はない。 このほか、本件全証拠によっても、被告カンツールが、被告KCSと共同して被告製品1を製造、販売等したり、被告KCSによる被告製品1の製造、販売等を補助、支援などしたりしたと認めることはできない。 したがって、被告カンツールが、平成28年7月14日以降の被告KCSに よる被告製品1の製造、販売等につき、共同不法行為者として、原告に生じた 損害を連帯して賠償する責任を負うと認めることはできない。 第4 結論以上によれば、原告の請求は、主文の限度で理由があるからこれを認容することとし、その余は理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 なお、主文第2項及び第4項について仮執行宣言を付すこと、主文第1項、第3項及び第5項について仮執行免脱宣言を付すことは、いずれも相当でないので、これらを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 て仮執行免脱宣言を付すことは、いずれも相当でないので、これらを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 間明宏充 裁判官バヒスバラン薫は、退官のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 國分隆文 (別紙)被告製品目録1 (1) 製品名 EJWシリーズ一般名称高圧洗浄車型式 EJW2040MA(2) 製品名 EJWシリーズ一般名称高圧洗浄車型式 EJW2070T以上 (別紙)被告製品目録2 製品名 ECOACEJET一般名称高圧洗浄車以上 (別紙)本件明細書図面目録 図1 図2 以上

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