令和3(ヨ)449 美浜3号機運転禁止仮処分命令申立事件

裁判年月日・裁判所
令和4年12月20日 大阪地方裁判所
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判決文本文106,821 文字)

1主文本件申立てをいずれも却下する。 申立費用は債権者らの負担とする。 理由第1 申立ての趣旨5債務者は、福井県三方郡美浜町丹生66号川坂山5番地3において、美浜発電所3号機を運転してはならない。 第2 事案の概要本件は、債務者が福井県三方郡美浜町丹生66号川坂山5番地3に設置、運用している発電用原子炉施設である美浜発電所3号炉(以下「本件発電所」と10いう。)について、本件発電所から一定距離の範囲内に居住する債権者らが、本件発電所は、運転開始から40年以上経過して老朽化しており、特に地震に対する安全性を欠いているほか、避難計画にも不備があるから、その運転中に放射性物質を環境中に大量に放出する重大事故を起こし、債権者らの人格権が侵害される具体的危険があると主張して、人格権に基づく妨害予防請求権として15の本件発電所の運転差止請求権を被保全権利として、本件発電所の運転を仮に差し止める仮処分命令を申し立てた事案である。 第3 前提事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、各項末尾掲記の疎明資料又は審尋の全趣旨により容易に認めることができる。 201 当事者(1) 債権者らは、本件発電所から約80kmの範囲内にある別紙当事者目録記載の各肩書住所地(福井県、京都府又は滋賀県)に居住する者らである。 (2) 債務者は、発電事業等を目的とする株式会社であり、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)2条255項所定の発電用原子炉である本件発電所を設置、運用している発電用原子2炉設置者(同法43条の3の5第1項)である。 2 本件発電所の概要等(1) 本件発電所の概要ア 本件発電所は、福井県三方郡美浜町丹生66号川坂山5番地3(敦賀半 運用している発電用原子2炉設置者(同法43条の3の5第1項)である。 2 本件発電所の概要等(1) 本件発電所の概要ア 本件発電所は、福井県三方郡美浜町丹生66号川坂山5番地3(敦賀半島西側の丹生湾を形成する岬角部)に位置する美浜発電所に設置される35号炉である。美浜発電所の東側は丹生湾に、西側及び南側は若狭湾に、それぞれ面しており、その北側には低地を挟んで山地がある。 イ 債務者は、美浜発電所において、昭和45年11月及び昭和47年7月に1号炉及び2号炉の運転を順次開始し、同年3月13日に原子炉設置変更(3号炉増設)許可処分を得て、昭和51年12月1日、本件発電所の10運転を開始した。本件発電所は、平成28年11月30日に原子炉等規制法の原則的な運転期間(40年)に達したが、令和18年11月30日までの運転期間延長認可処分を得て、現在、稼働中である。本件発電所の電気出力は、82万6千kwである。なお、1号炉及び2号炉は、現在、廃炉作業中である。 15(以上(1)につき、乙19〔本文〕、53、58)(2) 原子力発電の仕組み及び本件発電所の種類ウラン燃料であるウラン235等の原子核に中性子が衝突すると、原子核は分裂して熱エネルギーと中性子が発生し、その中性子が次のウラン235等の核分裂を引き起こす。原子力発電は、この核分裂連鎖反応により発20生する熱エネルギーを利用して行う発電方法である。本件発電所は、原子炉内の圧力を加圧することで水(一次冷却材)を沸騰させることなく熱水状態で維持し、一次冷却材が運ぶ熱エネルギーを熱源として蒸気発生器で別系統の水(二次冷却材)を蒸気に変え、蒸気の力でタービンを回転させて発電する加圧水型原子炉(PWR)である。(乙16〔29~31、34~3625頁〕、19) ネルギーを熱源として蒸気発生器で別系統の水(二次冷却材)を蒸気に変え、蒸気の力でタービンを回転させて発電する加圧水型原子炉(PWR)である。(乙16〔29~31、34~3625頁〕、19)3(3) 本件発電所の構造等ア 設備の構成ウラン燃料が核分裂する際、放射性物質が発生するため、原子炉の運転は安全を確保しながら行い、異常事態の発生時は、迅速かつ安全に運転を停止し、炉心の冷却手段を確保して炉心の著しい損傷を防止し、放射性物5質を閉じ込めて、その漏出による周辺住民の生命、身体等への重大な危害を防止する必要がある。そこで、本件発電所は、発電を行うために必要な設備のほか、「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」ための安全上重要な機能を有する設備から構成されている。(乙19)イ 冷却設備等10一次冷却設備(原子炉、加圧器、蒸気発生器、一次冷却材ポンプ、一次冷却材管等)は、炉心のある原子炉容器内を満たす一次冷却材によって、ウラン燃料の核分裂反応から生ずる熱エネルギーを取り出し、それを蒸気発生器へ運んで二次冷却材を蒸気に変える機能を果たす。二次冷却設備(タービン、復水器、主給水ポンプ等)は、蒸気をタービンに運んでタ15ービンを回転させて発電し、発電に使用した蒸気を復水器において海水で冷却し、水に戻った二次冷却材を主給水ポンプ等で再び蒸気発生器へ送る機能を果たす。 緊急時は、中性子を吸収しやすい性質を有する合金を用いた制御棒が自重で炉心に落下して原子炉を自動停止させ、その後も、蒸気発生器への20二次冷却材の供給を維持して原子炉内の熱を除去する。その給水に使用する主給水ポンプの機能喪失に備え、復水タンクを水源とする電動補助給水ポンプ及びタービン動補助給水ポンプが設けられている。電動補助給水ポンプの動力源 を維持して原子炉内の熱を除去する。その給水に使用する主給水ポンプの機能喪失に備え、復水タンクを水源とする電動補助給水ポンプ及びタービン動補助給水ポンプが設けられている。電動補助給水ポンプの動力源は外部電源又は非常用ディーゼル発電機であり、タービン動補助給水ポンプの動力源は二次冷却材の回路である主蒸気管か25ら取り出した蒸気である。いずれの補助給水ポンプも、主給水ポンプの機4能喪失時に自動起動する。さらに、これらの補助給水設備の機能喪失に備えて、屋外に蒸気発生器補給用仮設中圧ポンプが設置されている。その他、海水から水を確保する送水車や大容量ポンプ等が分散配置されている。 この初期段階の冷却により、一次冷却材の圧力及び温度が所定のレベルまで低下した後に、一次冷却材の熱を余熱除去クーラで取り、残留熱を5海へ放出する余熱除去設備が設置されている。 また、一次冷却材の喪失事故(Loss of Coolant Accident。以下「LOCA」という。)時に原子炉容器内にほう酸水を注入して炉心を冷却する非常用炉心冷却設備や、原子炉格納容器内にほう酸水を噴霧するスプレ設備が設けられ、さらに、これらの機能喪失に備10え、原子炉格納容器内に直接給水するための恒設代替低圧注水ポンプ、可搬式代替低圧注水ポンプ及びその電源車等が配置されている。 (以上につき、乙19〔添付書面八、8-3-1、8-3-3~8-3-14、8-3-16~8-3-19、8-3-26~8-3-28、8-4-34~8-4-61、8-5-1、8-5-3~8-5-8、8-5-12~8-5-16、8-5-47~8-5-50、8-5-96~8-5-100、8-5-107、8-5-112、8-5-158、158-6-1、8-6-2、8-9-6、添付書類十、10-2-22、10 8-5-16、8-5-47~8-5-50、8-5-96~8-5-100、8-5-107、8-5-112、8-5-158、158-6-1、8-6-2、8-9-6、添付書類十、10-2-22、10-2-23、10-5-50、10-7-2~10-7-5、10-7-42~10-7-47〕)ウ 電気設備本件発電所内の必要電力は、本件発電所内の発電機又は外部電源から供給されるが、これらの機能喪失に備え、1台で必要電力の供給可能な非20常用ディーゼル発電機2台が分散して配置されている。また、非常用ディーゼル発電機が機能喪失した場合(全交流電源喪失)に備え、空冷式非常用発電装置及び電源車が配置され、これらによる電力供給開始までの間の電源として蓄電池が設けられているほか、所内電源喪失に備えて恒設の代替所内電気設備が設けられている。(乙19〔添付書類八、8-1-481、8-1-25482、8-1-573~8-1-576、8-1-647~8-1-651、8-10-1、8-10-2、8-10-4、8-510-5、8-10-24、8-10-25〕)3 原子力発電所に対する法令の規制等(1) 耐震設計審査指針原子力発電所に対する規制は、原子力安全・保安院及び原子力安全委員会によって、原子力基本法及び原子炉等規制法等に基づき行われてきた。その5耐震安全性は、発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針に基づき審査されてきたが、平成18年に同指針が改訂されて、稼働中の原子力発電所に対する耐震安全性の再評価が行われ、債務者は、本件発電所の基準地震動(最大加速度405ガル)を見直して新たな基準地震動Ss(最大加速度750ガル(水平方向))を策定した。(乙16〔226~228頁〕、29)10(2) 福島第一原子力発電所事故平成23 動(最大加速度405ガル)を見直して新たな基準地震動Ss(最大加速度750ガル(水平方向))を策定した。(乙16〔226~228頁〕、29)10(2) 福島第一原子力発電所事故平成23年3月11日、東北地方太平洋沖で地震が発生し、当時運転中であった福島第一原子力発電所の1号機から3号機までが炉心融解し、その過程で発生した大量の水素が原子炉格納容器から原子炉建屋に漏えいし、1号機、3号機及び3号機から水素が流入した4号機の原子炉建屋の水素爆発や、152号機の原子炉建屋のブローアウトパネルの開放を引き起こし、大量の放射性物質が外部へ放出される重大事故(以下「福島第一原子力発電所事故」という。)が発生した。 福島第一原子力発電所事故の原因については、様々な機関によって調査、検討が行われた。その直接的な原因について、政府、民間及び東京電力株式20会社、原子力安全・保安院の各報告書等においては、津波によって全交流電源及び非常用電源として装備していた所内直流電源を喪失し、炉心を安定的に冷却する機能が失われたことにある旨が報告され、その後に、原子力規制委員会(後記(3)ア参照)や国際原子力機関(以下「IAEA」という。)も同様の評価を行った。他方、国会の事故調査委員会の報告書においては、事25故原因を津波に限定することに疑念が呈され、「安全上重要な機器の地震に6よる損傷はないとは確定的には言えない。特に1号機においては小規模のLOCAが起きた可能性を否定できない。しかし、未解明な部分が残っており、引き続き第三者による検証が行われることを期待する。」とされるとともに、事故の根源的な原因について、「事業者が規制当局に対し、規制の先送りあるいは基準の軟化等に向け強く圧力をかけ、他方、原子力保安院は原子力推進5官庁である れることを期待する。」とされるとともに、事故の根源的な原因について、「事業者が規制当局に対し、規制の先送りあるいは基準の軟化等に向け強く圧力をかけ、他方、原子力保安院は原子力推進5官庁である経済産業省の組織の一部であったことなどから、原子力安全についての規制当局の監視・監督機能は崩壊していた。」とされるなど、原子力法規制の抜本的見直しの必要性が指摘された。 (以上につき、甲3〔10~13、44頁〕、乙16〔42~45頁〕、27、28、30~33)10(3) 原子力規制委員会の設置等ア 原子力規制委員会設置法の制定福島第一原子力発電所事故後の原子力安全規制に関する制度改革の在り方等についての国内やIAEAにおける議論、検討の状況を踏まえ、「規制と利用の分離」の観点から、平成24年6月、原子力規制委員会設置法(以15下「設置法」という。)が成立した。これにより、原子力安全・保安院及び原子力安全委員会は廃止され、同年9月、原子力安全規制を担う新たな行政機関として原子力規制委員会が発足した。 原子力規制委員会は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図20ることを任務とし、高い独立性、中立性を持つ組織として、国家行政組織法3条2項に基づく、いわゆる3条委員会として設置された(設置法2条、3条)。原子力規制委員会の委員長及び委員は、人格が高潔で、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命するものとされ25(同法7条)、委員長及び委員は独立してその職権を行うものとされた(同7法5条)。原子力規制委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するた 内閣総理大臣が任命するものとされ25(同法7条)、委員長及び委員は独立してその職権を行うものとされた(同7法5条)。原子力規制委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、原子力規制委員会規則を制定することができるものとされた(同法4条、26条)。 (以上につき、乙16〔42頁〕、34~36の2)イ 原子炉等規制法の改正5設置法附則15条から18条までに基づき、平成24年6月に原子炉等規制法が改正された。改正後の原子炉等規制法においては、発電用原子炉施設の設計から運転までの各過程を段階的に区分し、各段階に対応した許認可等の規制を行うという従前の段階的安全規制の枠組みの下で、重大事故の発生も考慮した安全規制への転換が図られ、最新の技術的知見に基づ10く規制を行うため、既に許認可を得た発電用原子炉施設についても、原子力規制委員会が新基準への適合を義務付けることができる、いわゆるバックフィット制度が導入された(原子炉等規制法43条の3の23)。(乙16〔9~11、61~63頁〕、37)さらに、同改正により、原子力発電所の運転期間は、当該原子炉の設置15工事について最初に使用前検査の確認を受けた日から起算して40年とされ、その運転期間は、その満了に際し、原子力規制委員会の認可を受けて、1回に限り20年を超えない期間で延長することができること、原子力規制委員会は、長期間の運転に伴い生ずる原子炉その他の設備の劣化状況を踏まえ、安全性を確保するための基準として同委員会で定める基準に20適合しているときに限り延長を認可することができることとされた(同法43条の3の32、同法施行令20条の6。以下、この運転期間の定めを「40年ルール」という。)。 (4 員会で定める基準に20適合しているときに限り延長を認可することができることとされた(同法43条の3の32、同法施行令20条の6。以下、この運転期間の定めを「40年ルール」という。)。 (4) 新規制基準の策定原子力規制委員会は、前記の原子炉等規制法の改正の趣旨に則り、新たな25規制基準を制定するため、「発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討8チーム」及び「発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる規制基準に関する検討チーム」(以下「地震等基準検討チーム」という。)を設置し、各チームにおいて、複数の学識経験者らも参加して議論を行い、所要の検討がされた。そして、原子力規制委員会は、各チームの検討結果を踏まえて、新たな規制基準の骨子案及び基準案を順次作成し、行政手続法39条1項に基づ5く意見公募手続(パブリックコメント)を経た上で、平成25年6月、「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」(以下「設置許可基準規則」という。)、同規則の解釈を示す「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(以下「設置許可基準規則解釈」という。)及び発電用原子炉の設置許可に係る基10準適合性審査で用いる各種審査ガイドを、それぞれ策定した(これらを含む原子力規制委員会の規則、告示及び内規等を総称して「新規制基準」という。)。 (甲25、26、123、乙16〔12、13、51~56頁〕、39の1~52の2)4 本件発電所の再稼働15本件発電所は、福島第一原子力発電所事故後の平成23年5月、運転を停止して定期検査に入った。債務者は、その後、新規制基準の下で、本件発電所の新たな基準地震動Ss(最大加速度993ガル(EW方向))を策定し、これに基づく耐震安全性評 事故後の平成23年5月、運転を停止して定期検査に入った。債務者は、その後、新規制基準の下で、本件発電所の新たな基準地震動Ss(最大加速度993ガル(EW方向))を策定し、これに基づく耐震安全性評価と工事計画の策定を行い、原子力規制委員会に対し、平成27年3月17日に原子炉設置変更許可申請(①)及び保安規定変更認可20申請(②)を、同年11月26日に工事計画認可申請(③)を行った。 また、本件発電所は平成28年11月30日に40年の運転期間に達するところ、後記5(1)アのとおり、運転期間を延長するには、特別点検、劣化状況評価に基づく長期施設管理方針を策定した上で、原子力規制委員会の運転期間延長認可を受けることが必要である(原子炉等規制法43条の3の3225第1項~第4項、同法施行令20条の6、実用発電用原子炉の設置、運転等に9関する規則(以下「実用炉規則」という。)113条1項、2項)とともに、運転開始後30年を超えた発電用原子炉については、40年の期間満了までに高経年化技術評価を行い、これに基づき、認可を受けた延長期間満了までの期間に実施すべき長期施設管理方針を策定すること、これにより保安規定を変更するときには保安規定変更認可を受けることが必要である(原子炉等規5制法第43条の3の32第5項に規定する基準である実用炉規則82条2項、原子炉等規制法43条の3の24第1項)ことから、債務者は、特別点検を実施し、その結果に基づき劣化状況評価及び高経年化技術評価を行い、長期施設管理方針を策定した上、平成27年11月26日に運転期間延長認可申請(④)及び高経年化対策に係る保安規定変更認可申請(⑤)を行った。 10これらに対し、原子力規制委員会は、新規制基準への適合性審査を行った上、平成28年10月5日に前記①に係る設置変 長認可申請(④)及び高経年化対策に係る保安規定変更認可申請(⑤)を行った。 10これらに対し、原子力規制委員会は、新規制基準への適合性審査を行った上、平成28年10月5日に前記①に係る設置変更許可処分を、同月26日に前記③に係る工事計画認可処分を、同年11月16日に前記④に係る運転期間延長認可処分及び前記⑤に係る保安規定変更認可処分を、それぞれ行った。 その後、債務者は、工事計画に基づき工事を行い、平成29年12月15日15に使用前検査申請(⑥)を行った。 他方、原子力規制委員会は、鳥取県西部の大山の噴火による本件発電所に対する影響評価について、令和元年6月にバックフィット命令(原子炉等規制法43条の3の23第1項)を出し、債務者は、これに対応して、同年9月26日に再び原子炉設置変更許可申請(⑦)を行った。 20原子力規制委員会は、令和2年2月27日に前記②に係る保安規定変更認可処分をし、令和3年5月19日に前記⑦に係る設置変更許可処分を、同年7月27日に前記⑥に係る確認を、それぞれ行い、その頃、本件発電所は本格運転を再開した。 その後、本件発電所は、同年10月に、特定重大事故等対処施設(テロ対策25施設)の設置のため再び運転を停止して定期検査に入り、これに係る保安規定10変更認可及び使用前検査確認を経て、令和4年9月26日、本格運転を再開した。 (以上につき、乙53~55の2、57、58、60~84、90)5 後記各争点に関連する前提事実(1) 高経年化対策(後記争点2(1)ア)5ア 新規制基準の定め(ア) 高経年化対策制度発電用原子炉の設置者は、発電用原子炉施設の保全について、原子力規制委員会規則で定めるところにより、保安のための必要な措置(重大事故が生じた場合における措置に関する事 (ア) 高経年化対策制度発電用原子炉の設置者は、発電用原子炉施設の保全について、原子力規制委員会規則で定めるところにより、保安のための必要な措置(重大事故が生じた場合における措置に関する事項を含む。)を講じることが要10求されている(原子炉等規制法43条の3の22第1項1号)。これを受けて、高経年化対策については、実用炉規則において、原子力発電所が運転開始日以後30年、40年及び50年を経過する日までに、それぞれ、原子力規制委員会が定める発電用原子炉施設の安全を確保する上で重要な機器及び構造物並びに実用炉規則82条1項各号に掲げられる機15器及び構造物(以下、これらを併せて「評価対象機器・構造物」という。)の経年劣化に関する技術的な評価を行い、この評価の結果に基づき、長期施設管理方針(30年経過前については10年間に実施すべき施設管理方針、40年経過前及び50年経過前については、認可された延長期間の満了日までに実施すべき施設管理方針)を策定しなければならない20とされた(実用炉規則82条)。その実施方法が原子力規制委員会策定の「実用発電用原子炉施設における高経年化対策実施ガイド」(以下「高経年化対策実施ガイド」という。)に定められており、具体的には、運転開始後40年経過前の評価については、①評価対象機器・構造物に発生しているか又は発生する可能性のある全ての経年劣化事象の中から、25高経年化対策上着目すべき経年劣化事象(経年に伴い機器・構造物に性11能低下を生じさせる事象のうち、性能低下の予測からの乖離の発生が否定できない事象)を抽出し、これに対する運転延長期間の満了日までについての健全性評価を行うとともに、現状の施設管理の有効性を確認し、必要に応じて現状の保守管理に追加すべき保全策を抽出すること(なお 定できない事象)を抽出し、これに対する運転延長期間の満了日までについての健全性評価を行うとともに、現状の施設管理の有効性を確認し、必要に応じて現状の保守管理に追加すべき保全策を抽出すること(なお、同ガイドにおいては、経年劣化事象として、低サイクル疲労、5中性子照射脆化、照射誘起型応力腐食割れ、2相ステンレス鋼の熱時効、電気・計装品の絶縁低下、コンクリートの強度低下及び遮蔽能力低下が示されている。)、②耐震安全上考慮する必要のある経年劣化事象については、経年劣化を加味した耐震安全性評価を行い、必要に応じて追加保全策を抽出し、長期施設管理方針を策定することとされている。 10なお、高経年化対策実施ガイドは、高経年化技術評価の実施に際し、日本原子力学会策定の「原子力発電所の高経年化対策実施基準:2008」(乙188。以下「PLM基準2008版」という。)を利用することを認めるとともに、国内外の原子力発電所における新たな運転経験や最新の知見を適切に反映することを求めている。また、同ガイドは、運15転開始後40年を経過する前の高経年化技術評価においては、後記(イ)の運転期間延長に係る特別点検の結果を適切に反映することを求めている。 そして、長期施設管理方針を定めたことにより保安規定を変更するときには、原子力規制委員会による保安規定変更認可を受けることが20必要とされる。 (以上につき、乙187)(イ) 運転期間延長認可制度運転期間延長認可を受けようとする者は、当該原子力発電所の運転開始から申請までの間の運転に伴い生じた原子炉その他の設備の劣化状況25の把握のための特別点検を実施し、延長しようとする期間における運転12に伴い生ずる原子炉その他の設備の劣化の状況に関する技術的な評価(劣化状況評価)を行い、 原子炉その他の設備の劣化状況25の把握のための特別点検を実施し、延長しようとする期間における運転12に伴い生ずる原子炉その他の設備の劣化の状況に関する技術的な評価(劣化状況評価)を行い、長期施設管理方針を策定する必要がある(原子炉等規制法43条の3の32第1項~第4項、実用炉規則113条1項、2項)。その詳細は、原子力規制委員会策定の「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」(以下「運転期間延長認可申請5運用ガイド」という。)に定められている(乙193)。 原子力規制委員会が運転期間延長認可処分を行うには、当該原子力発電所が、長期間の運転に伴い生ずる原子炉その他の設備の劣化の状況を踏まえ、延長をしようとする期間において安全性を確保するための基準として原子力規制委員会が定める実用炉規則114条の基準に適合して10いることが必要とされる(原子炉等規制法43条の3の32第5項)。実用炉規則114条の要求事項への適合性審査に当たり確認すべき事項が「実用発電用原子炉の運転の期間の延長の審査基準」(以下「運転期間延長審査基準」という。)にまとめられている(乙194)。 運転期間延長審査基準は、審査に当たって確認すべき事項として、①15運転期間延長認可の時点において、原子炉等規制法43条の3の14の技術上の基準(実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則)に適合させるために必要となる同法43条の3の9及び同条の3の10に掲げる工事の計画が全てこれらの規定に基づく認可等の手続により確定していること、②実用炉規則113条2項2号に掲げる原子炉20その他の設備の劣化の状況に関する技術的な評価(劣化状況評価)の結果、延長しようとする期間において、同評価の対象となる機器・構造物が運転期間延長審査基準 炉規則113条2項2号に掲げる原子炉20その他の設備の劣化の状況に関する技術的な評価(劣化状況評価)の結果、延長しようとする期間において、同評価の対象となる機器・構造物が運転期間延長審査基準記載の表に掲げる要求事項に適合すること、又は、同評価の結果要求事項に適合しない場合には、同項3号に掲げる延長しようとする期間における原子炉その他の設備に係る施設管理方針の25実施を考慮した上で、延長しようとする期間において要求事項に適合す13ることを定めている。なお、運転期間延長認可申請運用ガイドは、劣化状況評価の記載内容について、評価の対象とする機器・構造物及び評価手法は、実用炉規則82条2項に規定する運転開始後40年を経過する前の発電用原子炉施設についての高経年化技術評価におけるものと同様とすると定めている。(乙193〔5頁〕、194)5(ウ) 中性子照射脆化評価について中性子照射脆化の評価については、実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則の解釈(以下「技術基準規則解釈」という。)14条4項において、安全設備のうち供用期間中において中性子照射脆化の影響を受ける原子炉容器にあっては、日本電気協会策定の「原子力10発電所用機器に対する破壊靭性の確認試験方法(JEAC4206-2007)」(以下「JEAC4206」という。)の規定に、同規則の解釈別記-1の要件を付したものに掲げる破壊靭性の要求を満足する必要があることが示されており、破壊靭性の評価のために監視試験を行うに当たっては、同協会策定の「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC421501-2007)」(以下「JEAC4201」という。)、「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-2007)[2010年追補版]」及び「原子炉構造材の監視試験 試験方法(JEAC421501-2007)」(以下「JEAC4201」という。)、「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-2007)[2010年追補版]」及び「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-2007)[2013年追補版]」(以下「JEAC4201[2013年追補版]」といい、これと、JEAC4201及びJEAC4201[2010年追補20版]を併せて「JEAC4201-2007シリーズ」という。)の規定に、同規則の解釈別記-6の要件を付したものを用いることが示されている(乙173、225~227)。 そして、運転期間延長審査基準では、中性子照射脆化の項目における加圧熱衝撃(PTS)評価に関する要求事項として、原子炉容器の評価25対象部位において静的平面ひずみ破壊靭性値(亀裂を有する鋼材の脆性14破壊に対する抵抗力を示す値)が応力拡大係数(亀裂を起点とする脆性破壊を起こそうとする力の大きさの尺度)を上回ることが要求されている。また、運転期間延長認可申請運用ガイドにおいては、中性子照射脆化に係る特別点検について、炉心領域全体の母材及び溶接部に対し、超音波探傷試験による欠陥の有無を確認することが定められている。 (乙1593、194)イ 高経年化に関する債務者の対応(ア) 本件発電所は、平成28年11月30日に運転期間40年を満了したところ、債務者は、前記アの各規制を踏まえ、運転期間40年の経過前に、運転期間延長認可申請運用ガイドの定めに従い、特別点検として、10原子炉容器について目視試験、超音波探傷試験及び渦流探傷試験による欠陥の有無の確認、原子炉格納容器について目視試験による塗膜状態の確認、コンクリート構造物について採取したコアサンプル(試料)による強度等の確認による点検を行 、超音波探傷試験及び渦流探傷試験による欠陥の有無の確認、原子炉格納容器について目視試験による塗膜状態の確認、コンクリート構造物について採取したコアサンプル(試料)による強度等の確認による点検を行った。 (イ) 次に、債務者は、高経年化対策実施ガイドが引用する「発電用軽水型15原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針」等に基づき評価対象機器・構造物を抽出し、それらをグループ化し、その代表機器に対して、低サイクル疲労割れ、原子炉容器の中性子照射脆化、照射誘起型応力腐食割れ、2相ステンレス鋼の熱時効、電気・計装品の絶縁低下、コンクリートの強度低下及び遮蔽能力低下等の高経年化対策上着目すべ20き経年劣化事象について、運転期間60年までの健全性評価を行った。 その後、代表機器への評価をグループ内の全機器に水平展開し、代表機器の評価をそのまま展開できない経年劣化事象については個別に評価を実施する手法により、全ての機器について健全性評価を行った。 さらに、債務者は、運転開始後60年時点で想定される経年劣化を加25味した、基準地震動等に対する耐震安全性評価を実施した。 15債務者は、以上の評価の結果を踏まえて、原子炉容器の胴部(炉心領域部)の中性子照射脆化については、原子炉の運転時間及び照射量を勘案して第5回監視試験を実施することなどを追加保全策として定めた。 なお、債務者は、PLM基準2008版やその後の同基準の追補版の内容を参照し、国内外の原子力発電所における事故や設計、点検、補修5等の運転経験に係る情報、経年劣化に係る安全基盤研究の成果等を踏まえて、高経年化技術評価を行った。 (ウ) 中性子照射脆化評価については、債務者は、前記ア(ウ)の規制に従い、まず、シャルピー衝撃試験により得られた実測データを基に、関連温 全基盤研究の成果等を踏まえて、高経年化技術評価を行った。 (ウ) 中性子照射脆化評価については、債務者は、前記ア(ウ)の規制に従い、まず、シャルピー衝撃試験により得られた実測データを基に、関連温度の上昇量の実測値(ΔRTNDT実測値)を導き、JEAC4201[201013年追補版]に規定される国内脆化予測法を用いて、関連温度の上昇量を計算し(ΔRTNDT計算値)、ΔRTNDT実測値を踏まえたマージン等を考慮して関連温度の上昇量の予測値(ΔRTNDT予測値)を導き、このΔRTNDT予測値がΔRTNDT実測値を上回っていることを確認することで、国内脆化予測法が本件発電所に適用可能であると判断した。 15そして、JEAC4206の附属書等に従って、破壊靭性試験により、破壊靭性値(KIC)の実測値を得て、KIC実測値に、国内脆化予測法を基に導いた運転期間60年時までの温度移行量を考慮した破壊靭性遷移曲線(破壊靭性値と温度の関係を示す線)を導き、これとPTS状態遷移曲線(事故時の亀裂先端の鋼材の応力拡大係数と温度の関係を示す線)20とを比較し、両者が交わらないことを確認することで、原子炉容器の脆性破壊に対する健全性評価を実施した(以下「PTS評価」という。)。 なお、特別点検における超音波探傷試験によって原子炉容器に亀裂があることは認められなかったが、債務者は、あえて深さ10mmの大きな亀裂の存在を仮定し、また、高応力の発生を想定(LOCA時の温度変25化が実際の温度変化と比べて急激に変化すると仮定)して、PTS評価16を行った。 また、債務者は、経年劣化事象を考慮した耐震安全性評価において、基準地震動を考慮した応力拡大係数を算出し、運転開始後60年時点において、破壊靭性値がその応力拡大係数を上回っていることを確認した。 また、債務者は、経年劣化事象を考慮した耐震安全性評価において、基準地震動を考慮した応力拡大係数を算出し、運転開始後60年時点において、破壊靭性値がその応力拡大係数を上回っていることを確認した。 (以上イにつき、乙186の1~187、188〔38~40、111頁〕、5189~192、195、233)ウ 原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は、前記4のとおり、平成28年10月26日、工事計画認可申請(③)に係る同認可処分を行った上、運転期間延長認可申請(④)及び高経年化対策に係る保安規定変更認可申請(⑤)の審査を行い、10運転期間延長認可申請運用ガイドで定める特別点検が行われていること並びに劣化状況評価及び耐震安全性評価等が運転期間延長審査基準の要求事項に適合していることを確認し、同運転期間延長申請が実用炉規則114条に適合しているとして、同年11月16日、前記④及び⑤に係る各認可処分を行った。(乙53、57、58、196)15(2) 耐震安全性の余裕(後記争点2(1)イ)ア 新規制基準の定め設置許可基準規則4条3項は、「耐震重要施設は、その供用中に当該耐震重要施設に大きな影響を及ぼすおそれがある地震による加速度によって作用する地震力(以下「基準地震動による地震力」という。)に対して安全20機能が損なわれるおそれがないものでなければならない。」と定めている。 「耐震重要施設」とは、設計基準対象施設(発電用原子炉施設のうち、運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故の発生を防止し、又は、これらの拡大を防止するために必要となるもの。)のうち、地震の発生によって生ずるおそれがあるその安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影25響の程度が特に大きいものをいう(設置許可基準規則2条2項7号、3条17 めに必要となるもの。)のうち、地震の発生によって生ずるおそれがあるその安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影25響の程度が特に大きいものをいう(設置許可基準規則2条2項7号、3条171項)。設置許可基準規則解釈別記2(以下「解釈別記2」という。甲26)は、「安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない」ことを満たすため、建物・構築物については、「常時作用している荷重及び運転時に作用する荷重と基準地震動による地震力との組合せに対して、当該建物・構築物が構造物全体としての変形能力(終局耐力時の変形)について5十分な余裕を有し、建物・構築物の終局耐力に対し妥当な安全余裕を有していること」を求め、機器・配管系については、「通常運転時、運転時の異常な過渡変化時及び事故時に生じるそれぞれの荷重と基準地震動による地震力を組み合わせた荷重条件に対して、その施設に要求される機能を保持すること。なお、上記により求められる荷重により塑性ひずみが生じる10場合であっても、その量が小さなレベルに留まって破断延性限界に十分な余裕を有し、その施設に要求される機能に影響を及ぼさないこと。」を求めている。(甲26(別記2第4条6項1号)、乙110〔11、12頁〕)イ 債務者の対応(ア) 債務者は、本件発電所の耐震重要施設について、建物・構築物及び機15器・配管系の評価値(建物・構築物の耐震壁のせん断ひずみや機器・配管系に生ずる応力値等)が、評価基準値(一定の水準の地震動によって設備が必要な機能を果たさなくなると評価される設備の許容限界)を下回ることを確認した(乙114)。 (イ) 本件発電所の基準地震動の最大加速度は、405ガルから750ガル20を経て993ガルまで引き上げられたが、債務者は、その各引上げに際し、本 限界)を下回ることを確認した(乙114)。 (イ) 本件発電所の基準地震動の最大加速度は、405ガルから750ガル20を経て993ガルまで引き上げられたが、債務者は、その各引上げに際し、本件発電所の耐震補強工事を行い、工事後の設備状態を前提とした上で、その耐震安全性評価を行った(乙90、175)。 ウ 原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は、本件発電所の耐震設計方針について、耐震重要度25分類の方針や地震応答解析による地震力の算定方針が、解釈別記2等に適18合していると認め、工事計画認可申請の審査において具体的な耐震設計を審査し、前記4のとおり、平成28年10月5日に原子炉設置変更許可申請(①)に係る許可処分を行うとともに、同月26日に工事計画認可申請(③)に係る認可処分を行った(乙55の2〔22~24頁〕、175〔12/70~16/70 頁〕)。 5(3) 耐震重要施設の変位のおそれのない地盤への設置(後記争点2(2)ア)ア 新規制基準の定め設置許可基準規則3条3項は、「耐震重要施設は、変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない」と定めている。 「変位」とは、将来活動する可能性のある断層等が活動することにより10地盤に与えるずれをいい、「変位が生ずるおそれがない地盤に設け」るとは、耐震重要施設を将来活動する可能性のある断層等の露頭がないことを確認した地盤に設置することをいう。また、「将来活動する可能性のある断層等」とは、後期更新世(約12~13万年前)以降の活動が否定できない断層等をいい、震源として考慮する活断層のほか、地震活動に伴って永久15変位が生じる断層に加え、支持地盤まで変位及び変形が及ぶ地すべり面を含む(設置許可基準規則解釈別記1(以下「解釈別記1」という。)第3条3 源として考慮する活断層のほか、地震活動に伴って永久15変位が生じる断層に加え、支持地盤まで変位及び変形が及ぶ地すべり面を含む(設置許可基準規則解釈別記1(以下「解釈別記1」という。)第3条3項、甲26)。 イ 敷地内の破砕帯等に関する債務者の調査及び評価債務者は、美浜発電所の敷地の地盤について、文献調査、変動地形学的20調査及び地表地質調査等を実施して、以下のとおりの確認、評価を行った。 (ア) 地質・地質構造(プレート運動や断層活動等によって生じた地層・岩石等の変形や変位)は、約6400~6490万年前に形成された江若花崗岩(以下「花崗岩」という。)を基盤岩とし、この花崗岩に約1960万年前にドレライト(玄武岩質のマグマが別の岩石に貫入してゆっく25り冷えたときにできる岩石)が貫入しており、これらの一部に第四紀(約19260万年前以降)の堆積物が覆っている。 (イ) 美浜発電所の敷地内には、別紙2のとおり、本件発電所の設置位置付近にB破砕帯、B破砕帯から派生するB北破砕帯、C破砕帯、D破砕帯及びE破砕帯があり、その余の部分にⅡ-S-3破砕帯、Ⅱ-S-4破砕帯、F-M1-1破砕帯及びF-M3-9破砕帯の計9本の破砕帯(岩5石が押し潰されて破砕された帯状の部分)がある(以下、この9本の破砕帯を「敷地内破砕帯」という。)。 (ウ) 熱水変質作用(火山活動に伴い、地下深くのマグマから分離するなどした熱水が岩石に含まれる鉱物を粘土鉱物に変化させたり、岩石を軟化、変色させるなどの変質をもたらす作用)に着目して、敷地内破砕帯に見10られる粘土鉱物の状況等を調査したところ、敷地内破砕帯は、熱水変質作用による粘土鉱物の生成後に活動していない。粘土鉱物の生成時期は、同敷地周辺の熱水活動が知られている時期等に照らして、 に見10られる粘土鉱物の状況等を調査したところ、敷地内破砕帯は、熱水変質作用による粘土鉱物の生成後に活動していない。粘土鉱物の生成時期は、同敷地周辺の熱水活動が知られている時期等に照らして、花崗岩の形成やドレライトの貫入と同時期の相当程度古い時代であるから、敷地内破砕帯は、少なくとも後期更新世(約12~13万年前)以降に活動した15ものではない。 (エ) 広域応力場(地球の表面を覆う岩盤のプレートにおいて、ある地域において広域に加わっている圧縮又は引っ張りの力の状況)に着目して、敷地内破砕帯の活動時期を調査したところ、約1500万年前以降現在までの日本海の応力場は逆断層を形成するものであるのに対し、敷地内20破砕帯の中で最後に活動した断層面の動いた方向は正断層センスであることから、敷地内破砕帯の最新の活動時期は約1500万年前までである可能性が高く、少なくとも後期更新世(約12~13万年前)以降に活動したものではない。 (オ) 原子力安全・保安院から、敷地内破砕帯との地質構造上の関連性が不25明瞭であるとの指摘を受けた白木―丹生断層を含め、本件発電所の周辺20の活断層(後記(4)参照)と敷地内破砕帯との間に、連動を引き起こすような地質構造上の関連性は認められない。 (カ) 以上を総合すると、敷地内破砕帯は後期更新世(約12~13万年前)以降には活動しておらず、「将来活動する可能性のある断層等」ではない。 (以上イにつき、乙24、122)5ウ 原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は、平成28年10月5日、前記4の原子炉設置変更許可申請(①)に係る許可処分を行うに際し、前記イの調査及び評価について、新規制基準への適合性を認めた(乙55の2〔33頁〕)。 (4) 基準地震動の策定(後記争点2( 5日、前記4の原子炉設置変更許可申請(①)に係る許可処分を行うに際し、前記イの調査及び評価について、新規制基準への適合性を認めた(乙55の2〔33頁〕)。 (4) 基準地震動の策定(後記争点2(2)イ(ア)から(ウ)まで)10ア 新規制基準の定め耐震重要施設は、その供用中に基準地震動による地震力に対して安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならず(設置許可基準規則4条3項)、同項に規定する基準地震動は、最新の科学的・技術的知見を踏まえ、敷地及び敷地周辺の地質・地質構造、地盤構造並びに地震活動性等の15地震学及び地震工学的見地から想定することが適切なものとし、次の方針により策定するものとされている(解釈別記2第4条5項柱書)。 (ア) 基準地震動は、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について、解放基盤表面(基準地震動を策定するために、基盤面上の表層及び構造物がないものとして仮想的に20設定する自由表面であって、著しい高低差がなく、ほぼ水平で相当な拡がりを持って想定される基盤の表面をいい、基盤とは、おおむねせん断波速度がVs=700m/s以上の硬質地盤であって、著しい風化を受けていないものをいう。)における水平方向及び鉛直方向の地震動としてそれぞれ策定する(解釈別記2第4条5項1号)。 25(イ)「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」21a 解釈別記2の定め「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は、内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、敷地に大きな影響を与えると予想される地震(以下「検討用地震」という。)を複数選定し、選定した検討用地震ごとに、不確かさを考慮して応答スペクトル5に基づく地震動評価及び断層モデルを用い ついて、敷地に大きな影響を与えると予想される地震(以下「検討用地震」という。)を複数選定し、選定した検討用地震ごとに、不確かさを考慮して応答スペクトル5に基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を、解放基盤表面までの地震波の伝播特性を反映して策定する。具体的には、次に示す方針により策定する。なお、「内陸地殻内地震」とは、陸のプレートの上部地殻地震発生層に生ずる地震をいい、海岸のやや沖合で起こるものを含む。「プレート間地震」とは、相接する二つのプレ10ートの境界面で発生する地震をいう。「海洋プレート内地震」とは、沈み込む(沈み込んだ)海洋プレート内部で発生する地震をいい、海溝軸付近又はそのやや沖合で発生する「沈み込む海洋プレート内の地震」と、海溝軸付近から陸側で発生する「沈み込んだ海洋プレート内の地震」の2種類に分けられる。(解釈別記2第4条5項2号)15① 内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、活断層の性質や地震発生状況を精査し、中・小・微小地震の分布、応力場及び地震発生様式(プレートの形状・運動・相互作用を含む。)に関する既往の研究成果等を総合的に検討し、検討用地震を複数選定すること(同号①)。 20② 内陸地殻内地震に関しては、次に示す事項を考慮すること(同号②)。 ⅰ 震源として考慮する活断層の評価に当たっては、調査地域の地形及び地質条件に応じ、既存文献の調査、変動地形学的調査、地質調査、地球物理学的調査等の特性を活かし、これらを適切に組25み合わせた調査を実施した上で、その結果を総合的に評価し活断22層の位置、形状、活動性等を明らかにすること(同号②ⅰ)。 ⅱ 震源モデルの形状及び震源特性パラメータ等の評価に当たっては、孤立した短い活断層の扱いに留 た上で、その結果を総合的に評価し活断22層の位置、形状、活動性等を明らかにすること(同号②ⅰ)。 ⅱ 震源モデルの形状及び震源特性パラメータ等の評価に当たっては、孤立した短い活断層の扱いに留意するとともに、複数の活断層の連動を考慮すること(同号②ⅱ)。 ③ 検討用地震ごとに、以下の応答スペクトルに基づく地震動評価及5び断層モデルを用いた手法による地震動評価を実施して策定すること。なお、地震動評価に当たっては、敷地における地震観測記録を踏まえて、地震発生様式及び地震波の伝播経路等に応じた諸特性(その地域における特性を含む。)を十分に考慮すること(同号④)。 ⅰ 応答スペクトルに基づく地震動評価は、検討用地震ごとに、適10切な手法を用いて応答スペクトルを評価のうえ、それらを基に設計用応答スペクトルを設定し、これに対して、地震の規模及び震源距離等に基づき地震動の継続時間及び振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮して地震動評価を行うこと(同号④ⅰ)。 15ⅱ 断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価は、検討用地震ごとに、適切な手法を用いて震源特性パラメータを設定し、地震動評価を行うこと(同号④ⅱ)。 ④ 前記③の基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ、地震発生層の上端深さ・下端深さ、断層傾斜角、アスペリ20ティの位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等の不確かさ、並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮すること(同号⑤)。 25⑤ 内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、「震源が敷23地に極 メータについて分析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮すること(同号⑤)。 25⑤ 内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、「震源が敷23地に極めて近い場合」は、地表に変位を伴う断層全体を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討するとともに、これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、前記④の各種の不確かさが地震動評価に与5える影響をより詳細に評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して基準地震動を策定すること(同号⑥。以下「本件特別考慮規定」という。)。 ⑥ 検討用地震の選定や基準地震動の策定に当たって行う調査や評10価は、最新の科学的・技術的知見を踏まえること。また、既往の資料等について、それらの充足度及び精度に対する十分な考慮を行い、参照すること。なお、既往の資料と異なる見解を採用した場合及び既往の評価と異なる結果を得た場合には、その根拠を明示すること(同号⑦)。 15b 地震ガイドの定め前記aを受けて、基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド(以下「地震ガイド」という。令和4年6月改正前のもの。以下同様。甲25)は、「Ⅰ.基準地震動」として、以下のとおり定めている。 ① Ⅰ2.(2)〔基本方針(2)〕20「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は、内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、検討用地震を複数選定し、選定した検討用地震ごとに不確かさを考慮して、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価により、それぞれ 震及び海洋プレート内地震について、検討用地震を複数選定し、選定した検討用地震ごとに不確かさを考慮して、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価により、それぞれ解放基盤表面までの地震波の伝播25特性を反映して策定されていること。不確かさの考慮については、24敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせるなどの適切な手法を用いて評価すること。 ② Ⅰ3.2.3(2)〔検討用地震の選定‐震源特性パラメータの設定〕震源モデルの長さ又は面積、あるいは1回の活動による変位量と5地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には、経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する。その際、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある(以下、同項全体を「本件ばらつき条項」という。)。 10③ Ⅰ3.3.1(1)①〔応答スペクトルに基づく地震動評価‐経験式(距離減衰式)の選定〕応答スペクトルに基づく地震動評価において、用いられている地震記録の地震規模、震源距離等から、適用条件、適用範囲について検討した上で、経験式(距離減衰式)が適切に選定されていること15を確認する。 参照する距離減衰式に応じて適切なパラメータを設定する必要があり、併せて震源断層の拡がりや不均質性、断層破壊の伝播や震源メカニズムの影響が適切に考慮されていることを確認する。 ④ Ⅰ3.3.1(1)②〔応答スペクトルに基づく地震動評価‐地震波伝播20特性(サイト特性)の評価〕水平及び鉛直地震動の応答スペクトルは、参照する距離減衰式の特徴を踏まえ、敷地周辺の地 ④ Ⅰ3.3.1(1)②〔応答スペクトルに基づく地震動評価‐地震波伝播20特性(サイト特性)の評価〕水平及び鉛直地震動の応答スペクトルは、参照する距離減衰式の特徴を踏まえ、敷地周辺の地下構造に基づく地震波の伝播特性(サイト特性)の影響を考慮して適切に評価されていることを確認する。 ⑤ Ⅰ3.3.2(4)①〔断層モデルを用いた手法による地震動評価‐震源25モデルの設定〕25震源断層のパラメータは、活断層調査結果等に基づき、地震調査研究推進本部による「震源断層を特定した地震の強震動予測手法」等の最新の研究成果を考慮し設定されていることを確認する。 アスペリティの位置が活断層調査等によって設定できる場合は、その根拠が示されていることを確認する。根拠がない場合は、敷地5への影響を考慮して安全側に設定されている必要がある。なお、アスペリティの応力降下量(短周期レベル)については、新潟県中越沖地震を踏まえて設定されていることを確認する。 ⑥ Ⅰ3.3.2(4)③〔断層モデルを用いた手法による地震動評価‐統計的グリーン関数法及びハイブリッド法による地震動評価〕10統計的グリーン関数法やハイブリッド法による地震動評価においては、震源から評価地点までの地震波の伝播特性、地震基盤からの増幅特性が地盤調査結果等に基づき評価されていることを確認する。 ハイブリッド法を用いる場合の長周期側と短周期側の接続周期は、それぞれの手法の精度や用いた地下構造モデルを考慮して適切に設15定されていることを確認する。また、地下構造モデルは地震観測記録等によってその妥当性が検討されていることを確認する。 ⑦ Ⅰ3.3.2(4)④〔断層モデルを用いた手法による地震動評価‐震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価〕震源が敷地に極めて近 震観測記録等によってその妥当性が検討されていることを確認する。 ⑦ Ⅰ3.3.2(4)④〔断層モデルを用いた手法による地震動評価‐震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価〕震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価においては、地表に変20位を伴う断層全体(地表地震断層から震源断層までの断層全体)を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討されていることを確認する。 これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、各種25の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源の26極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して地震動が評価されていることを確認する。特に、評価地点近傍に存在する強震動生成領域(アスペリティ)での応力降下量などの強震動の生成強度に関するパラメータ、強震動生成領域同士の破壊開始時間のずれや破壊進行パター5ンの設定において、不確かさを考慮し、破壊シナリオが適切に考慮されていることを確認する。なお、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を取り込んだ手法により、地表に変位を伴う国内外被害地震の震源極近傍の地震動記録に対して適切な再現解析を行い、震源モデルに基づく短周期地震動、長周期地震10動及び永久変位を十分に説明できていることを確認する。この場合、特に永久変位・変形についても実現象を適切に再現できていることを確認する。さらに、浅部における断層のずれの進展の不均質性が地震動評価へ及ぼす影響を検討するとともに、浅部における断層のずれの不確かさが十分に評価されていることを確認する。 15震源が敷地に極めて近い場合 らに、浅部における断層のずれの進展の不均質性が地震動評価へ及ぼす影響を検討するとともに、浅部における断層のずれの不確かさが十分に評価されていることを確認する。 15震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価においては、破壊伝播効果が地震動へ与える影響について、十分に精査されていることを確認する。また、水平動成分に加えて上下動成分の評価が適切に行われていることを確認する。 ⑧ Ⅰ3.3.3(1)〔地震動評価‐不確かさの考慮(1)〕20応答スペクトルに基づく地震動の評価過程に伴う不確かさについて、適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。地震動評価においては、用いる距離減衰式の特徴や適用性、地盤特性が考慮されている必要がある。 ⑨ Ⅰ3.3.3(2)〔地震動評価‐不確かさの考慮(2)〕25断層モデルを用いた手法による地震動の評価過程に伴う不確かさ27について、適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。併せて、震源特性パラメータの不確かさについて、その設定の考え方が明確にされていることを確認する。 ⅰ 支配的な震源特性パラメータ等の分析震源モデルの不確かさ(震源断層の長さ、地震発生層の上端深5さ・下端深さ、断層傾斜角、アスペリティの位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等の不確かさ、並びにそれらに係る考え方、解釈の違いによる不確かさ)を考慮する場合には、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析し、その結果を地震動評価に反映させることが必10要である。特に、アスペリティの位置・応力降下量や破壊開始点の設定等が重要であり、震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する。 ⅱ 必要に応じた不確かさの組合せによる適切な考慮地震動の評価過程 スペリティの位置・応力降下量や破壊開始点の設定等が重要であり、震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する。 ⅱ 必要に応じた不確かさの組合せによる適切な考慮地震動の評価過程に伴う不確かさについては、必要に応じて不15確かさを組み合せるなど適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。 地震動評価においては、震源特性(震源モデル)、伝播特性(地殻・上部マントル構造)、サイト特性(深部・浅部地下構造)における各種の不確かさが含まれるため、これらの不確実さ要因を偶20然的不確実さと認識論的不確実さに分類して、分析が適切になされていることを確認する。 c 地震ガイドの改正(a) 地震ガイドは、令和4年6月8日に改正され、本件ばらつき条項の第2文が削除され、ばらつきに関しては、以下のとおり、「Ⅰ3.125審査の方針」の〔解説〕に記載された。 28Ⅰ3.1 審査の方針「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の策定に係る審査は、以下の方針で行う。 (1) 省略(2) 「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の策定におい5て経験式が用いられている場合には、経験式の適用条件、適用範囲について確認した上で、当該経験式が適切に選定されていることを確認する。 (3) 省略〔解説〕10(1) 地震動評価において、経験式として距離減衰式を参照する場合には、震源断層の拡がりや不均質性、断層破壊の伝播や震源メカニズム等の影響が考慮された上で、当該距離減衰式に応じた適切なパラメータが設定されていることに留意する必要がある。 15(2) 複雑な自然現象の観測データにばらつきが存在するのは当然であり、経験式とは、観測データに基づいて複数の物理量等の相関を式として表現するものである。し ることに留意する必要がある。 15(2) 複雑な自然現象の観測データにばらつきが存在するのは当然であり、経験式とは、観測データに基づいて複数の物理量等の相関を式として表現するものである。したがって、評価時点で適用実績が十分でなく、かつ、広く一般に使われているものではない経験式が選定されている場合には、その適用条件、適用20範囲のほか、当該経験式の元となった観測データの特性、考え方等に留意する必要がある。 (b) 不確かさの考慮に関する規定についても、改正前の地震ガイドⅠ2.(2)〔基本方針(2)〕において、「不確かさの考慮については、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメ25ータについて分析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせる。」29とされていた部分が削除され、「基準地震動が、地震動評価に大きな影響を与えると考えられる不確かさを考慮して適切に策定されていることを、地震学及び地震工学的見地に基づく総合的な観点から判断する。」と改正された。 (以上(イ)cにつき、甲140〔3頁〕、141〔93~95、99頁〕、5乙268)(ウ) 「震源を特定せず策定する地震動」a 解釈別記2の定め「震源を特定せず策定する地震動」は、震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍にお10ける観測記録を収集し、これらを基に、各種の不確かさを考慮して敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定すること。なお、震源を特定せず策定する地震動については、次に示す方針により策定すること(解釈別記2第4条5項3号)。 ① 解放基盤表面までの地震波の伝播特性を必要に応じて応答スペク15トルの設定に反映するとともに、設定された応答スペクトルに対 は、次に示す方針により策定すること(解釈別記2第4条5項3号)。 ① 解放基盤表面までの地震波の伝播特性を必要に応じて応答スペク15トルの設定に反映するとともに、設定された応答スペクトルに対して、地震動の継続時間及び振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮すること(同号①)。 ② 「震源を特定せず策定する地震動」として策定された基準地震動の妥当性については、申請時における最新の科学的・技術的知見を20踏まえて個別に確認すること。その際には、地表に明瞭な痕跡を示さない震源断層に起因する震源近傍の地震動について、確率論的な評価等、各種の不確かさを考慮した評価を参考とすること(同号②)。 b 地震ガイドの定め前記aを受けた地震ガイドのⅠ4.2.1〔地震動評価‐検討対象地震の25選定と震源近傍の観測記録の収集〕の解説(3)に、震源を特定せず策定30する地震動の評価において収集対象となる16個の内陸地殻内地震が例示されている。 (エ) 基準地震動の策定に当たっての調査‐解釈別記2の定め基準地震動の策定に当たっての調査については、目的に応じた調査手法を選定するとともに、調査手法の適用条件及び精度等に配慮すること5によって、調査結果の信頼性と精度を確保すること。また、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」の地震動評価においては、適用する評価手法に必要となる特性データに留意の上、地震波の伝播特性に係る次に示す事項を考慮すること。なお、それぞれ策定された地震動の応答スペクトルがどの程度の超過確率に相10当するか把握すること。(解釈別記2第4条5項4号)a 敷地及び敷地周辺の地下構造(深部・浅部地盤構造)が地震波の伝播特性に与える影響を検討するため、敷地及び敷地周辺 の程度の超過確率に相10当するか把握すること。(解釈別記2第4条5項4号)a 敷地及び敷地周辺の地下構造(深部・浅部地盤構造)が地震波の伝播特性に与える影響を検討するため、敷地及び敷地周辺における地層の傾斜、断層及び褶曲構造等の地質構造を評価するとともに、地震基盤の位置及び形状、岩相・岩質の不均一性並びに地震波速度構造等の15地下構造及び地盤の減衰特性を評価すること。なお、評価の過程において、地下構造が成層かつ均質と認められる場合を除き、三次元的な地下構造により検討すること(同号①)。 b 前記aの評価の実施に当たって必要な敷地及び敷地周辺の調査については、地域特性及び既往文献の調査、既存データの収集・分析、20地震観測記録の分析、地質調査、ボーリング調査並びに二次元又は三次元の物理探査等を適切な手順と組合せで実施すること(同号②)。 イ 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動の評価(ア) 検討用地震の選定a 債務者は、文献調査によって本件発電所敷地周辺の過去の地震発生25状況を把握し、11個の検討用地震の候補を抽出した(甲24〔スラ31イド3~7〕)。 b 債務者は、日本原子力発電株式会社及び独立行政法人日本原子力研究開発機構と協力して、陸域については、文献調査、変動地形学的調査(空中写真判読、航空レーザー測量等)及び地表地質調査(トレンチ調査、ピット調査、ボーリング調査、剥ぎ取り調査、反射法地震探5査)を実施し、後期更新世以降の堆積地層に断層活動による変位・変形があった場合は活断層とし、海域については、文献調査、海上音波探査、他機関が行った海上音波探査記録の再解析及び海上ボーリング調査を行い、堆積物や岩石を分析して、後期更新世以降の断層活動による変位・変形があった場合は活断層とし、震源とし は、文献調査、海上音波探査、他機関が行った海上音波探査記録の再解析及び海上ボーリング調査を行い、堆積物や岩石を分析して、後期更新世以降の断層活動による変位・変形があった場合は活断層とし、震源として考慮する活断10層の位置、形状、活動性等を評価した上、本件発電所の敷地に大きな影響を及ぼすと考えられる15個の活断層を抽出した(甲24〔スライド8、9〕、乙95)。 c 債務者は、前記aの過去の被害地震と前記bの活断層による地震について、規模や敷地までの距離に基づき敷地に与える影響を検討し、15前記活断層のうち①C断層、②白木-丹生断層、③三方断層、④大陸棚外縁~B~野坂断層、⑤安島岬沖断層~和布-干飯崎沖断層~甲楽城断層、⑥甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層による6個の地震を検討用地震として選定した。検討用地震の分布状況は、別紙3のとおりである。(甲24〔スライド7~10〕、乙95)20d 前記検討用地震は、いずれも内陸地殻内地震である。債務者は、プレート間地震及び海洋プレート内地震についても検討の上、本件発電所の敷地に大きな影響を与えるものはないと判断した。(甲24〔スライド4〕)(イ) 地震動に影響を与える特性の評価25a 震源特性32① 断層の位置・長さ債務者は、前記(ア)bの調査において、後期更新世以降の地層に断層活動による変位・変形のないことが明確に確認できる箇所をそれぞれの端部とする手法により、各断層の位置、長さを評価した。 ⅰ C断層5C断層は、本件発電所の西側の若狭湾内の沖合い海域に、南北方向に延びる逆断層である。C断層は、既存文献では約2kmから11kmまでの複数の小断層として示され、債務者は、海上音波探査記録による断層の分布状況からも、連続しない複数の小 内の沖合い海域に、南北方向に延びる逆断層である。C断層は、既存文献では約2kmから11kmまでの複数の小断層として示され、債務者は、海上音波探査記録による断層の分布状況からも、連続しない複数の小断層であると分析したが、分布の近接性を考慮して、それらを長さ10約18kmの一連の断層(C断層)として評価した。(乙95〔312~328頁〕)ⅱ 白木-丹生断層白木-丹生断層は、本件発電所の東側の陸域及び海域に位置し、南北方向に延びる逆断層である。白木-丹生断層は、既存文献で15は、陸域及び海域に複数の断層として図示されていたが、債務者は、いずれの断層にも後期更新世以降の活動性が認められたことや、断層の連続的な位置関係、走向、傾斜が調和的であることなどから、それらを長さ約15kmの一連の断層(白木―丹生断層)として評価した。(乙95〔293~311頁〕)20ⅲ その余の断層債務者は、その余の検討用地震の活断層についても、同様の調査を行い、三方断層は、本件発電所の南西側の陸域及び海域に位置し、長さは約27km、大陸棚外縁~B~野坂断層は、本件発電所の北西側と西側の若狭湾内の沖合い海域及び南側の陸域と25海域に位置し、全長は約49km、安島岬沖断層~和布-干飯崎33沖断層~甲楽城断層は、本件発電所の50km程度北方の日本海の沖合い海域に位置し、全長は約76km、甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層は、本件発電所の東側の陸域及び海域に位置し、全長は約36kmとそれぞれ評価した。 なお、債務者は、活断層の長さを評価するに当たり、近接して5分布する断層がある場合には、両断層の活動状況等の異同や両断層間の地層の性状等を検討し、両断層を結ぶ構造の有無を確認した。その結果、債務者は、甲楽城沖断層~浦底 さを評価するに当たり、近接して5分布する断層がある場合には、両断層の活動状況等の異同や両断層間の地層の性状等を検討し、両断層を結ぶ構造の有無を確認した。その結果、債務者は、甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層、大陸棚外縁~B~野坂断層及び安島岬沖断層~和布-干飯崎沖断層~甲楽城断層は、それぞれ、異なる断層のま10とまりであると評価したが、いずれもそのまとまりごとに連動することを考慮して、それぞれ一連のものとして長さを評価した。 (以上につき、乙95〔16~98、136、195~233、330~398、400~426、428頁〕)② 断層の傾き15債務者は、断層の動きが、広域応力場や広域応力場と断層の走向との関係によって影響を受けるとの知見を取り込んだ文部科学省の地震調査研究推進本部(以下「地震本部」という。)による「震源断層を特定した地震の強震動予測手法」(以下「レシピ」という。)を参照して、逆断層であるC断層、白木-丹生断層及び三方断層、右20横ずれ断層である大陸棚外縁断層、左横ずれ断層であるB断層(北部)は、それぞれ60度(水平面から下向きの角度。以下同様。)、左横ずれ断層であるB断層(南部)及び野坂断層は、それぞれ90度、逆断層である安島岬沖断層及び和布-干飯崎沖断層は、それぞれ45度、左横ずれ断層である甲楽城断層及び甲楽城沖断層~浦底25断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層は、それぞれ90度と評価した。 34なお、債務者は、C断層については、本件発電所の敷地に近いため、不確かさを考慮する観点から、C断層(東側傾斜)と白木―丹生断層(東側傾斜)が地表(海底)で最も近い位置にある場合でも、地震発生層の下端で両断層が交差しない限度までC断層を傾斜させた、55度のケースも設定した。 5 から、C断層(東側傾斜)と白木―丹生断層(東側傾斜)が地表(海底)で最も近い位置にある場合でも、地震発生層の下端で両断層が交差しない限度までC断層を傾斜させた、55度のケースも設定した。 5(以上につき、乙23〔4頁〕、92〔16~28頁〕)③ 断層の幅(地震発生層の深さ)債務者は、文献調査によれば、P波速度(Vp=5.8~6.4km/s)の層と地震発生層には良い相関があるとの知見があること、若狭湾周辺を含む近畿地方北部において過去に行われた大都市10大震災軽減化特別プロジェクトによる大規模な地下構造探査の結果によれば、近畿地方北部の浅い地震活動はVp=5.8~6.3km/sの層に集中し、その深さは約5~16km程度であったこと、地震波速度トモグラフィ解析(本件発電所の敷地周辺を取り囲むような震源と観測点の観測記録について、震源から複数の観測点まで15の地震波の到達する時間差を用いた解析を行うことで地盤の速度構造を求めるもの)による検討によれば、若狭湾周辺における地震発生層の上限はおおむね4km以深であったこと、本件発電所の敷地内で取得した観測データに基づき地下構造モデルを検討した結果、Vp=5.8m/s層の上面深度は5kmよりも深く評価されたこ20となどの地盤速度構造による検討に加え、敷地周辺の微小地震の発生状況調査によれば、地震の発生は深さ5~20kmに見られたことなどを踏まえ、断層の上端深さを4kmと評価した。もっとも、原子力規制委員会から、微小地震が深さ4km以浅にも分布していることなどから断層の上端深さを保守的に評価することを求められ25たため、債務者は、断層の上端深さを3kmと設定した。 35また、断層の下端深さについては、敷地周辺の微小地震の発生状況の記録の統計的な評価によると、D を保守的に評価することを求められ25たため、債務者は、断層の上端深さを3kmと設定した。 35また、断層の下端深さについては、敷地周辺の微小地震の発生状況の記録の統計的な評価によると、D90(その値より震源深さが浅い地震の数が全体の90%となる深さ)が約15kmであり、地震本部はD90を地震発生層の下端としているが、債務者は、D90は地震発生層の下限より2~3km浅いとする文献を参照し、下5端深さを18kmと設定した。 なお、震源断層は、一回の地震で必ずしも断層全体が一度にずれるとは限らないが、債務者は、地震発生層の上端から下端まで広がる断層面の全体が一度にずれるものと想定して、地震動評価を行った。 10(以上につき、甲24〔スライド47~55〕、乙55の2〔13頁〕、97〔89~97頁〕、98〔12、37頁注9〕)b 伝播特性伝播特性とは、震源で発生した地震波の敷地までの伝わり方に関する特性をいう。債務者は、その中心的部分である幾何減衰(地震波は15震源から遠ざかるほど減衰すること)を、震源の位置から敷地までの距離で評価した。また、地震波のエネルギーが岩石等の媒質を伝わる間に摩擦熱等に変換されて若干小さくなるという内部減衰の値(Q値)を、若狭湾付近のQ値の既存の研究結果や、本件発電所における測定結果を基に、50f1.1(fは地震波の周波数)と設定した。 20(甲24〔スライド37~43〕、乙92〔33、35~37、41、45頁〕、97、99〔75頁〕、100)c 地盤の増幅特性(サイト特性)① 地震波は、硬い地層(地震波が速く伝わる。)から相対的に軟らかい地層へ伝播する際に増幅されるため、通常、地表に達するまでに25順次増幅される。このような特性を地盤の増幅特性(サイト特性)36 地震波は、硬い地層(地震波が速く伝わる。)から相対的に軟らかい地層へ伝播する際に増幅されるため、通常、地表に達するまでに25順次増幅される。このような特性を地盤の増幅特性(サイト特性)36というところ、その増幅の程度や地震波の進む方向は、地盤の速度構造(地震波の伝わる速さが異なる地層の並び)の影響を受ける。 債務者は、本件発電所の敷地のボーリング調査、PS検層、反射法地震探査等の調査結果から、敷地の地下構造に特異な構造がないことを確認したため、地盤浅部を水平成層構造とみなして一次元の速5度構造モデルを作成した。また、本件発電所敷地周辺に常時存在する小さな揺れについての微動アレイ観測結果から、地盤深部についても一次元の速度構造モデルを作成した。 ② 債務者は、試掘坑内弾性波試験結果等から、本件発電所の地表面付近に、S波速度1.65km/s程度の硬質な岩盤がほぼ均質に広10がっていることを確認し、解放基盤表面を、本件発電所の原子炉格納施設直下に設定した。なお、解放基盤表面の評価地点のP波速度は4.0km/sであった。 (以上cにつき、甲24〔スライド11~55〕、乙97〔3~87、98、99頁〕、99〔79、81頁〕、101)15(ウ) 応答スペクトルに基づく地震動評価a 応答スペクトルに基づく地震動評価とは、距離減衰式に代表される、地震のマグニチュードと震源又は震源断層からの距離との関係で地震動特性を評価する手法である。債務者は、大陸棚外縁~B~野坂断層による地震を除く検討用地震について、一般社団法人日本電気協会(以20下「日本電気協会」という。)の原子力発電耐震設計専門部会が岩盤における観測記録を基に取りまとめた耐専式(Noda et al.(2002))を用いて応答スペクトルに基づく地震動評価を行 以20下「日本電気協会」という。)の原子力発電耐震設計専門部会が岩盤における観測記録を基に取りまとめた耐専式(Noda et al.(2002))を用いて応答スペクトルに基づく地震動評価を行った。なお、耐専式においては、前記(イ)c②のS波速度、P波速度を考慮した地盤の増幅率を乗ずることにより、地盤の硬さに応じた応答スペクトルが求められ25る。 37耐専式の適用範囲については、耐専式の元となった地震観測記録の等価震源距離(震源断層面の各部から放出され敷地に到達する地震波のエネルギーの総計が、特定の1点(点震源)から放出されたものと仮定した場合に到達するエネルギーと等しくなるときの点震源から敷地までの距離)の最小値(極近距離)は、気象庁マグニチュード(以5下「M」と表記する。)8であれば25km、M7であれば12km等であり、極近距離との乖離が大きい(著しく短い)場合は過大評価となる傾向があるため、債務者は、等価震源距離が10.3kmである大陸棚外縁~B~野坂断層については、耐専式を適用するのは不適当であると判断した。他方、C断層、白木-丹生断層、三方断層及び甲10楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層の等価震源距離は、「極近距離」より若干短いが、乖離の程度が小さいため、これらについても耐専式を適用した。 (以上につき、甲24〔スライド56、57〕、乙16〔251~253頁〕、86、102、103)15b 耐専式に入力する地震規模(M)は、断層の長さ(L)からそれを求める経験式である松田式(logL=0.6M-2.9)(松田(1975))を使用した。松田式に、前記(イ)a①の断層の長さを当てはめ、C断層はM6.9、白木-丹生断層はM6.9、三方断層はM7. 2、安島岬沖断層~和布-干飯崎沖断層 0.6M-2.9)(松田(1975))を使用した。松田式に、前記(イ)a①の断層の長さを当てはめ、C断層はM6.9、白木-丹生断層はM6.9、三方断層はM7. 2、安島岬沖断層~和布-干飯崎沖断層~甲楽城断層はM8.0、甲20楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層はM7.4と設定した。(甲24〔スライド56〕、36〔271頁〕)c 耐専式に入力する等価震源距離は、アスペリティの正確な位置の把握が地震の発生前には困難であるため、アスペリティを等価震源距離が短くなるよう本件発電所の敷地に近い位置に配置し、前記(イ)a③の25とおり断層深さ上端を3kmに設定し、前記(イ)a②のとおりC断層に38ついては断層傾斜角を55度とするケースも考慮するなどの条件設定をした(甲24〔スライド57、61~72〕、乙23〔9頁〕)。 d 内陸地殻内地震は、プレート間地震や海洋プレート内地震と比べて同じ地震規模でも地震動が小さめであり、元データにプレート間地震や海洋プレート内地震を含む耐専式を内陸地殻内地震にそのまま適用5すると過大評価になるため、内陸補正係数(低減係数)を乗ずることが提案されているが、債務者は、保守的に評価する観点から、同係数を乗じなかった(乙55の2〔17頁〕、86〔22頁〕)。 e 大陸棚外縁~B~野坂断層の地震については、耐専式は適用せず、他の距離減衰式(別紙1文献一覧(1)~(3)の内山・翠川(2006)の関係10式、片岡他(2006)の関係式、Abrahamson and Silva(2008)の関係式等)を採用し、それぞれの式を使用する際の特徴を踏まえながら応答スペクトルを求めた。そして、その結果は、地震ガイドを踏まえて、後記(エ)「断層モデルを用いた手法による地震動評価」の妥当性を検討するた を採用し、それぞれの式を使用する際の特徴を踏まえながら応答スペクトルを求めた。そして、その結果は、地震ガイドを踏まえて、後記(エ)「断層モデルを用いた手法による地震動評価」の妥当性を検討するために用いた。(甲24〔スライド58〕、25(Ⅰ.3.1(2)))15(エ) 断層モデルを用いた手法による地震動評価a 断層モデルを用いた手法による地震動評価は、震源断層面を設定してアスペリティを配置し、ある一点の破壊開始点から、これが次第に破壊し、揺れが伝わっていく様子を解析することによって地震動を計算する評価手法である。債務者は、レシピ等を参照して震源断層モ20デルを策定し、前記(イ)b、cのとおり伝播特性及び地盤の増幅特性を評価した上、短周期領域について統計的グリーン関数法(他地点の多数の地震観測記録を統計処理して評価した模擬地震波を要素波として、想定する断層の破壊過程に応じて足し合わせて大きな地震による地震動を計算する手法)、長周期領域について離散化波数法を用い、それら25を組み合わせて評価するハイブリッド合成法によって本件発電所の敷39地に次々に伝わる地震波を足し合わせて地震動を評価した。(乙16〔254~256頁〕、55の2〔18頁〕、92〔29~47頁〕)b 債務者は、以下の基本ケースを設定した。 ① 震源断層面積(S)断層面積は、断層の長さ(前記(イ)a①)に、断層の幅(前記(イ)5a③から地震発生層の厚さを15kmと設定した上で、同②の各断層の傾斜角から求めた。)を乗じて設定した。C断層の面積は、C断層が異なる走向の2個の短い逆断層から成り、地下へ向かってこれらが互いに離れていく形状であることを考慮して、大きく設定した。 10② 地震モーメント(M0)地震モーメント(M0)は、別 断層が異なる走向の2個の短い逆断層から成り、地下へ向かってこれらが互いに離れていく形状であることを考慮して、大きく設定した。 10② 地震モーメント(M0)地震モーメント(M0)は、別紙1文献一覧(4)の入倉・三宅(2001)(甲37)で提案されている、震源断層面積と地震モーメント(M0)の関係式(M0≧7.5×1018N・m の場合はS=4.24×10-11×M01/2。 以下「入倉・三宅式」という。)を用いて、前記①の断層面積から求15めた。 ③ 短周期レベル(A)短周期レベル(A)(短い周期の揺れを発生させる能力の大きさを表す値)は、レシピで示される別紙1文献一覧(5)の壇ほか(2001)の提案する地震モーメント(M0)と短周期レベルとの関係式から求20めた。 ④ 破壊伝播速度(Vr)破壊伝播速度(Vr)は、既往の研究結果を踏まえ、地震発生層におけるS波速度βの0.72倍(0.72β)に設定した。 ⑤ アスペリティの配置25アスペリティの位置は、断層面の中央付近に設定するのが基本で40あるが、地震の発生前に正確に特定するのは困難であることを踏まえ、本件発電所の敷地に近い位置に配置した。 ⑥ 破壊開始点破壊開始点の位置を破壊の発生前に予測するのは困難であることや、地震動の評価地点から見て遠くから近くへ破壊が進行する場合5に評価地点での地震動が大きくなるとされていることから、破壊開始点は、断層面下端やアスペリティ下端(本件発電所の敷地から遠い位置)に複数設定した(C断層、白木―丹生断層、三方断層、甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層については5か所、大陸棚外縁~B~野坂断層については7か所、安島岬沖断層~10和布-干飯崎沖断層~甲楽城断層については10か所)。 三方断層、甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層については5か所、大陸棚外縁~B~野坂断層については7か所、安島岬沖断層~10和布-干飯崎沖断層~甲楽城断層については10か所)。 ⑦ その他のパラメータレシピ等を参照して、アスペリティ面積、震源断層全体の応力降下量、アスペリティの応力降下量、すべり量、すべり角等の震源特性パラメータを設定した。また、断層傾斜角については、前記(イ)a15②のとおり設定した(C断層は60度)。 (以上bにつき、甲24〔スライド59~72〕、乙23〔3~6、9、11~13頁〕、92〔28、33~38、41、42、45頁〕、105)c 債務者は、基本ケースに加え、不確かさを考慮する観点から、以下20のケースも設定した。 ① 短周期レベル新潟県中越沖地震の短周期レベルが平均的な短周期レベルの1. 5倍であったとの新たな知見について、債務者は、このような現象が他の地震において一般的に見られてきたものではないこと、本件25発電所の敷地周辺について、平均より短周期レベルが大きくなる地41域性をうかがわせるデータは特段得られていないことから、基本ケースはこの知見を考慮せずに設定し、他方で、全ての検討用地震の断層について、不確かさを考慮するケースとして、短周期レベルを基本ケースの1.5倍とする(アスペリティの面積は基本ケースの設定値を保持し、アスペリティの応力降下量を大きくすることで、5短周期の地震動レベルを1.5倍とする。)ケースを設定した。 ② 破壊伝播速度破壊伝播速度が大きくなると、震源断層面上で断層の破壊がより速く広がるため、より短い時間に多くの地震波が敷地に到達することとなり、敷地での地震動も一般的には大きくなる。債務者は、横10ずれを伴う長い断層で が大きくなると、震源断層面上で断層の破壊がより速く広がるため、より短い時間に多くの地震波が敷地に到達することとなり、敷地での地震動も一般的には大きくなる。債務者は、横10ずれを伴う長い断層である大陸棚外縁~B~野坂断層及び安島岬沖断層~和布-干飯崎沖断層~甲楽城断層について、既往の研究による過去の地震における破壊伝播速度の不確かさも考慮して、βの0. 87倍(0.87β)とするケースを設定した。 ③ 断層傾斜角15前記(イ)a②のとおり、C断層の傾斜角を55度にしたケース(これにより、C断層の断層面積、地震モーメント、短周期レベル、アスペリティ面積が大きくなるケース)を設定した。 (以上cにつき、甲24〔スライド60~72〕、乙92〔33~45頁〕)20d 前記b、cを基に、C断層については15ケース、三方断層、白木-丹生断層及び甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層についてはそれぞれ10ケース、大陸棚外縁~B~野坂断層については21ケース、安島岬沖断層~和布-干飯崎沖断層~甲楽城断層については30ケースを設定して、前記aのとおり地震動評価を行った(甲2524〔スライド60~72〕、乙19〔添付書類六、6-4-43、6-4-44〕、4292〔56~85頁〕)。 ウ 震源を特定せず策定する地震動発電所敷地周辺の状況等を十分考慮した詳細な調査を実施しても、なお敷地近傍において発生する可能性のある内陸地殻内地震の全てを事前に評価し得るとは言い切れないとの観点から、「震源を特定せず策定する5地震動」を評価することが求められている。債務者は、別紙1文献一覧(6)の加藤ほか(2004)で示される「震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内地震の震源近傍での観測記録に基づいて策定された応 評価することが求められている。債務者は、別紙1文献一覧(6)の加藤ほか(2004)で示される「震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内地震の震源近傍での観測記録に基づいて策定された応答スペクトル」を、本件発電所の敷地地盤に対応した応答スペクトルに補正して採用した。 10また、地震ガイドに記載される「観測記録の収集対象となる内陸地殻内の地震の例」のうち、モーメントマグニチュード(Mw)6.5以上の地震については、震源域周辺と本件発電所の敷地周辺の地域性等の異同を検討して、鳥取県西部地震(平成12年)の地震動の観測記録を採用し、岩手・宮城内陸地震(平成20年)の地震動の観測記録は採用しなかった。 15Ⅿw6.5未満の地震については、別紙1文献一覧(6)の加藤ほか(2004)の応答スペクトルを超える記録が得られており、かつ、詳細な地盤調査及び基盤地震動の推定が行われていた北海道留萌支庁南部地震(平成16年)の地震動の観測記録を採用した。そして、それらについて応答スペクトルを設定した。 20(以上につき、甲24〔スライド74~79〕、25〔8頁〕、乙89〔65頁〕)エ 基準地震動の策定債務者は、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の評価結果(前記イ)のうち、応答スペクトルに基づく地震動評価結果(前記イ(ウ))を包25絡するように基準地震動Ss‐1を策定し、次に、断層モデルを用いた手43法による地震動評価結果のうち一部の周期帯で基準地震動Ss‐1を上回る18ケースの地震動評価結果(前記イ(エ))を基準地震動Ss‐2から基準地震動Ss‐19として策定した。 また、別紙3のとおり、甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層には、北側に安島岬沖断層~和布-干飯崎沖断層~甲楽城断層があ5り、 動Ss‐2から基準地震動Ss‐19として策定した。 また、別紙3のとおり、甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層には、北側に安島岬沖断層~和布-干飯崎沖断層~甲楽城断層があ5り、南側には柳ヶ瀬断層南部、鍛冶屋断層、関ヶ原断層が分布しているところ、債務者は、これらが連動する可能性は極めて低いと判断したが、原子力規制委員会から、断層の近接性からこれらの連動を考慮することを求められたため、甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層による地震の断層長さの不確かさのケースとして、これらが全長約137km10のひとつながりの断層として連動するケースを追加し、これによる地震動評価結果を基準地震動Ss‐20から基準地震動Ss‐22として策定した。 さらに、「震源を特定せず策定する地震動」の評価結果(前記ウ)のうち一部の周期帯で基準地震動Ss‐1を上回る鳥取県西部地震と北海道留15萌支庁南部地震の観測記録を考慮した地震動評価結果を基準地震動Ss‐23及び基準地震動Ss‐24として策定した。 以上のとおり策定した基準地震動Ss‐1から基準地震動Ss‐24までの最大加速度は、別紙4のとおりであり、そのうち最も大きなものは、水平方向はC断層が活動した場合(短周期の地震動1.5倍ケース、破壊開20始点2)の993ガル(Ss-3EW方向)、鉛直方向は白木―丹生断層が活動した場合(短周期の地震動1.5倍ケース、破壊開始点1)の577ガル(Ss-8)であった。 (以上につき、甲24〔スライド80~98〕、乙55の2〔18頁〕、92〔46、47頁〕、95〔410~414、428頁〕)25オ 原子力規制委員会による審査44原子力規制委員会は、平成28年10月5日、前記4の原子炉設置変更許可申請(①)に係る許可処分を 46、47頁〕、95〔410~414、428頁〕)25オ 原子力規制委員会による審査44原子力規制委員会は、平成28年10月5日、前記4の原子炉設置変更許可申請(①)に係る許可処分を行うに際し、債務者による基準地震動策定について、各種の不確かさを考慮して、最新の科学的・技術的知見を踏まえ、敷地及び敷地周辺の地質・地質構造、地盤構造並びに地震活動性等の地震学及び地震工学的見地から策定されていることから、解釈別記2の5規定に適合しているとして、新規制基準への適合性を認めた(乙55の2〔11~21頁〕)。 (5) 深層防護の考え方と避難計画(後記争点2(1)ア及び3(1)及び(2))ア 深層防護の考え方原子力基本法2条2項は、原子力利用の安全確保については、確立され10た国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として行うものである旨を規定している。 そうであるところ、国際原子力機関憲章に基づき設立された国際機関であって、我が国も加盟国であるIAEAは、その最上位の安全基準である15「基本安全原則」(SF-1)において、原子力発電所において事故を防止し、かつ、発生時の事故の影響を緩和する主要な手段は深層防護の考え方を適用することであるとしている。 ここにいう深層防護とは、安全に対する脅威から人を守ることを目的として、ある目標を持ったいくつかの障壁(防護レベル)を用意し、各々の20障壁が独立して有効に機能することを求めるという考え方であり、具体的には、IAEAの安全基準の一つである「原子力発電所の安全:設計」(SSR-2/1(Rev.1))が、深層防護を踏まえた安全基準として、次の5つの防護レベルを規定している。すなわち、①第1の防護 的には、IAEAの安全基準の一つである「原子力発電所の安全:設計」(SSR-2/1(Rev.1))が、深層防護を踏まえた安全基準として、次の5つの防護レベルを規定している。すなわち、①第1の防護レベルは、通常運転状態からの逸脱と安全上重要な機器等の故障を防止することを25目的として、品質管理及び適切で実証された工学的手法に従って発電所が45健全でかつ保守的に立地、設計、建設、保守及び運転されることを要求するものであり、②第2の防護レベルは、発電所で運転期間中に予期される事象が事故状態に拡大することを防止するために、通常運転状態からの逸脱を検知し、管理することを目的として、設計で特定の系統と仕組みを備えること、それらの有効性を安全解析により確認すること、さらにそのよ5うな起因事象を防止するか、さもなければその影響を最小に留め、発電所を安全な状態に戻す運転手順を確立することを要求するものであり、③第3の防護レベルは、運転期間中に予期される事象又は想定起因事象が拡大して前段のレベルで制御できず、また、設計基準事故に進展した場合において、固有の安全性及び工学的な安全の仕組み又はその一方並びに手順に10より、事故を超える状態に拡大することを防止するとともに、発電所を安全な状態に戻すことができることを要求するものであり、④第4の防護レベルは、第3の防護レベルにおける対策が失敗した結果の事故の拡大を防止し、重大事故の影響を緩和することを要求するものであり、⑤第5の防護レベルは、重大事故に起因して発生し得る放射性物質の放出による影響15を緩和することを目的として、十分な装備を備えた緊急時対応施設の整備と、所内と所外の緊急事態の対応に関する緊急時計画と緊急時手順の整備を必要とするというものである。 原子力規制委員会 を緩和することを目的として、十分な装備を備えた緊急時対応施設の整備と、所内と所外の緊急事態の対応に関する緊急時計画と緊急時手順の整備を必要とするというものである。 原子力規制委員会が公表した「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」も、設置許可基準規則が前記の深層防護の考え方を踏まえ20て策定されたものであり、具体的には、同規則第2章(「設計基準対象施設」)が前記の第1から第3までの防護レベルに相当する事項を定め、同規則第3章(「重大事故等対処施設」)が主に前記の第4の防護レベルに相当する事項を定めたものとしている。 そして、避難計画等の第5の防護レベルに相当する事項については、我25が国の法制度上、「災害」の一形態としての「原子力災害」に対し、災害対46策基本法及び原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)によって措置がされ、国、地方公共団体、原子力事業者等がそれぞれの責務を果たすものとされている。 また、この深層防護は、複数の連続かつ独立したレベルの防護の組合せによって主に実現され、一つの防護レベル又は障壁が万一機能しなくても、5次の防護レベル又は障壁が機能するとされ、各防護レベルが独立して有効に機能することが、深層防護の不可欠な要素であるとされていることからすれば(前記基本安全原則3.31)、ある防護レベルの安全対策を講ずるに当たって、その前に存在する防護レベルの対策を前提とせず(前段否定)、また、その後に存在する防護レベルの対策にも期待しない(後段否定)こ10とが求められるものといえる。 (以上につき、甲11〔67~69頁〕)イ 避難計画について(ア) 原災法に基づく原子力災害対策指針(原災法6条の2第1項。以下「原災指針」という。)は とが求められるものといえる。 (以上につき、甲11〔67~69頁〕)イ 避難計画について(ア) 原災法に基づく原子力災害対策指針(原災法6条の2第1項。以下「原災指針」という。)は、重点的に原子力災害に特有な対策が講じられる区15域(原子力災害対策重点区域)として、発電所からの距離を目安に、PAZ(原子力発電所からおおむね半径5km)とUPZ(原子力発電所からおおむね半径30km)の2つを設定している。 そして、原災指針においては、緊急事態が発生した場合、住民は一斉に避難するのではなく、原子力発電所の状況(緊急事態区分)と施設か20らの距離(原子力災害対策重点区域)に応じて、段階的に防護措置を実施することとされており、具体的には、①警戒事態(発電所が、公衆への放射線による影響やそのおそれが緊急のものではない異常事象にある事態)には、PAZ内の施設敷地緊急事態要避難者の避難準備を開始し、②施設敷地緊急事態(発電所が、公衆に放射線による影響をもたらす可25能性のある事象にある事態)には、PAZ内の施設敷地緊急事態要避難47者は施設から30km圏外への避難を実施し、PAZ内の施設敷地緊急事態要避難者でない住民は避難準備を開始し、③全面緊急事態(発電所が、公衆に放射線による影響をもたらす可能性の高い事象にある事態)には、PAZ内の施設敷地緊急事態要避難者でない住民は施設から30km圏外への避難を実施し、UPZ内の住民(施設敷地緊急事態要避難5者を含む)は屋内退避を実施し、UPZのさらに外側のUPZ外の住民には、必要に応じて、屋内退避を実施する可能性がある旨の注意喚起を行い、④放射性物質が放出された場合には,各地域の放射線量を測定し、UPZ内及びUPZ外において空間放射線量率が500μSv/h 民には、必要に応じて、屋内退避を実施する可能性がある旨の注意喚起を行い、④放射性物質が放出された場合には,各地域の放射線量を測定し、UPZ内及びUPZ外において空間放射線量率が500μSv/h を超過した区域を数時間内を目途に特定し、当該特定された地域の住民は避難10を実施し、20μSv/h を超過した区域を1 日以内を目途に特定し、当該特定された地域の住民が1 週間程度内に一時移転を実施することとされている。また、UPZ内では、PAZ内より放射性物質の濃度は低くなる傾向があり、屋内退避が有効な防護措置となる一方で、避難等のために屋外で行動した場合、プルーム通過時の放射線被ばくのリスクが高ま15るおそれがあるとされていることから、UPZ内では、放射性物質が放出される前の段階で、予防的に屋内退避を実施することで、放射性物質が放出された際の放射線被ばくを低減させ、その上で、緊急時モニタリングにより空間放射線量率等を確認し、OIL(空間放射線量率等に基づく運用上の介入レベル)に応じた一時移転や避難等の防護措置を実施20することで、放射線被ばくによる確率的影響のリスクを最小限に抑えることとされている。また、放出される放射性物質の量、風向、風速等によっては、UPZ外にも影響が生ずる可能性があるため、UPZ外でも、事態の進展等に応じて、必要があれば屋内退避を実施した上で、緊急時モニタリングにより空間放射線量率等を確認し、OILに応じた防護措25置を実施することとされている。 48(以上につき、乙130)(イ) 大飯発電所は美浜発電所から直線距離で約30km離れており、高浜発電所は美浜発電所から直線距離で約45km離れているところ、美浜発電所から放射性物質が放出される事態となった場合における住民の避難経路や避難先の付 浜発電所から直線距離で約30km離れており、高浜発電所は美浜発電所から直線距離で約45km離れているところ、美浜発電所から放射性物質が放出される事態となった場合における住民の避難経路や避難先の付近に、大飯発電所や高浜発電所が存在する可能性が5ある。 (ウ) 福井県は、災害対策基本法等に基づき、「福井県地域防災計画(原子力災害編・福井県原子力防災計画)」と、当該地域防災計画に基づき、広域避難先、避難ルート、避難者の輸送手段等を定める「福井県広域避難計画要綱」を作成している。滋賀県も同様に、「滋賀県地域防災計画(原子10力災害編)」及び「原子力災害に係る滋賀県広域避難計画」を作成しており、各市町村は、「地域防災計画(原子力災害編)」を作成している。 加えて、原子力発電所の所在地域ごとに設置されている地域原子力防災協議会において、内閣府を含む関係省庁と関係自治体が参加し、関係自治体の地域防災計画や避難計画を含むその地域の緊急時における対応15を取りまとめており、美浜発電所については、福井エリア地域原子力防災協議会において「美浜地域の緊急時対応」を策定している(以下、これらを合わせて「本件避難計画」という。)。 関係府県、内閣府、原子力規制庁、厚生労働省、国土交通省、防衛省、警察庁等を構成員とする福井エリア地域原子力防災協議会における検討20を経て確認・了承された「『美浜地域の緊急時対応』のとりまとめについて」(乙135、136)では、自然災害等によって避難経路を使用できない場合は、美浜町、敦賀市は、代替経路を設定するとともに、当該道路等の管理者は復旧作業を実施する旨を規定している。また、敦賀半島(美浜町・敦賀市)の住民は、まずは自家用車等で避難するが、自然災25害の発生等により孤立した場合には、放射線防護対策 に、当該道路等の管理者は復旧作業を実施する旨を規定している。また、敦賀半島(美浜町・敦賀市)の住民は、まずは自家用車等で避難するが、自然災25害の発生等により孤立した場合には、放射線防護対策が講じられた施設49への屋内退避を実施し、その後、船舶やヘリコプターにより海路及び空路による避難を実施することとされている。なお、債務者において船舶やヘリコプターを確保し、海路や空路による避難を支援することともされている。(乙134〔4頁〕、135、136、137〔53頁〕)(エ) 「美浜地域の緊急時対応」の放射線防護資機材等の備蓄・供給体制に5よれば、福井県、滋賀県、岐阜県及び関係市町は、必要となる放射線防護資機材等を備蓄しているほか、関係市町や避難先市町から要請があった場合などには、福井県、滋賀県及び岐阜県等と協定を締結している民間企業等を通じて物資を調達することとしている。また、これらの放射線防護資機材等が不足する場合は、債務者を含む原子力事業者が、保有10する資源(要員、資機材等)を最大限供給するほか、国の原子力災害対策本部が関係省庁を通じて関係業界団体等に物資の調達を要請することとされている。(乙137〔105~123頁〕)第4 争点1 司法審査の在り方(判断の枠組み)152 地震等によって重大事故が発生する危険性(1) 判断に当たり考慮すべき事情ア 高経年化イ 耐震安全性の余裕(2) 新規制基準の合理性及び同基準への適合性20ア 原子炉建屋の変位のおそれのない地盤への設置の有無イ 基準地震動の策定の合理性(ア) 内陸地殻内地震の震源位置に関する考慮(イ) 使用する経験式の適切性(ウ) 繰り返しの地震の考慮253 避難計画の不備50(1) 避難計画の不備によ 震動の策定の合理性(ア) 内陸地殻内地震の震源位置に関する考慮(イ) 使用する経験式の適切性(ウ) 繰り返しの地震の考慮253 避難計画の不備50(1) 避難計画の不備による人格権侵害の具体的危険性(2) 本件避難計画の不備の有無4 保全の必要性第5 当事者の主張1 争点1(司法審査の在り方(判断の枠組み))5(債権者ら)原子力発電は、巨大なリスクを内在しており、リスクを制御できなくなったときの被害は図り知れない。原子炉設置許可処分取消訴訟についての最高裁平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁)は、被害を受ける可能性がある住民が提起した裁判において、公平の見地から、本来、原10告住民側が負担すべき客観的立証責任を事実上被告行政庁側に転換しているところ、原子力発電所の運転差止めの民事訴訟(民事保全)においても、同様に、主張立証責任が適切に分配されるべきである。 (債務者)原子力発電所に関する裁判においても、民事裁判における主張立証責任の一15般原則を変更すべき理由はない。したがって、債権者らが、本件発電所の運転に伴い、いかなる機序でどのような人格権侵害の具体的危険性が生じ、債権者らにどのような被害が生ずるのかを具体的に主張疎明する責任を負う。なお、前記最高裁判決も客観的主張立証責任を被告行政庁に転換したものではない。 また、債務者は、行政庁の審査を受ける事業者に過ぎず、債権者らとの間で、20実質的公平を害するほどに資料の偏在があるとはいえない。よって、仮に債務者が一定の主張疎明を行う必要があるとしても、その対象事項は、本件発電所が原子力規制委員会策定の安全性の基準に適合することに限られるべきであり、同基準の不合理性や、原子力規制委員会がした審査及び判断 者が一定の主張疎明を行う必要があるとしても、その対象事項は、本件発電所が原子力規制委員会策定の安全性の基準に適合することに限られるべきであり、同基準の不合理性や、原子力規制委員会がした審査及び判断の不合理性は、債権者らが主張疎明する必要がある。 252 争点2(1)ア(判断に当たり考慮すべき事情―高経年化)51(債権者ら)(1) 本件発電所は、昭和51年(1976年)12月1日に運転を開始したものであるところ、1970年代に作られた原子力発電所は、設計、材質、施工、検査技術等のいずれもレベルが高くなく、型が旧式であることによる問題も大きい。老朽化した原子力発電所においては、故障発生率がバスタブ曲5線状に増加することが知られている。実際に、東海第二原子力発電所のトラブル発生件数の推移はこれに沿っており、本件発電所においても、過去に、金属材料の劣化により11名の死傷者を出す重大事故が発生している。老朽化は、原子力発電所全体に対して起こる点で共通起因事象であり、これと自然災害等が重なると、一気に多数の故障と損傷が発生し、事故の重篤さも増10す可能性がある。 それにもかかわらず、原子炉等の施設は基本的に開放点検ができず、放射線被ばくのリスク回避のため大幅な更新、補修作業もできないため、経年劣化の管理が著しく困難である。債務者の劣化状況評価では、評価対象機器・構造物をグループ化し、代表機器の評価を行っているに過ぎないため、損傷15等の見落としが避けられない。多種多様な技術の集合施設を統括管理できる人材も時の経過で不足し、ヒューマンエラーのリスクもつきまとう。 (2) 老朽化した加圧水型原子炉は、常に高温・高圧の過酷な環境に置かれ、原子炉容器の金属材料の粘り気が中性子照射によって低下する中性子照射脆化が生じて し、ヒューマンエラーのリスクもつきまとう。 (2) 老朽化した加圧水型原子炉は、常に高温・高圧の過酷な環境に置かれ、原子炉容器の金属材料の粘り気が中性子照射によって低下する中性子照射脆化が生じている。そのため、事故発生時に緊急炉心冷却設備が作動して注水さ20れると、このように脆化した金属材料が、PTS(加圧熱衝撃)により伸びずに切れてひび割れを生じ、それが拡がって材料が破断する脆性破壊を起こし、過酷事故に至る危険性がある。中性子照射脆化の評価は、「監視試験による脆化度合いの先行把握」、「脆化予測」、「健全性評価」のステップで行われるところ、債務者の行った中性子照射脆化評価には、①超音波探傷試験で漏25れなく亀裂の不存在を確認することはできない、②脆化予測の規制で用いら52れる基準(JEAC4201)は、専門家から、基礎となる「反応速度式」に誤りがあることが指摘されているとともに、同式が経験式であるとしても、パラメータ数が常識を超えて多いため理解が困難な式になっており、問題があることが指摘されている、③健全性評価の規制で用いられる基準(JEAC4206)は、破壊靭性曲線の決め方の過程に誤りがある上、同規準は、5下限包絡線を決める直近の監視試験データが少ないため、測定値が増えてより小さい値が観測された場合には、下限包絡曲線が下方へシフトするので、少数の測定値では破壊靭性値の下限を与えるものとはいえない、④債務者がPTS状態遷移曲線を導く過程で用いた重要な熱伝達率の値が原子力規制委員会に明らかにされないまま審査が行われた、などの問題点がある。したが10って、中性子照射脆化の評価について行われた原子力規制委員会の審査が妥当であるとはいえない。 (3) 「主給水喪失、外部電源喪失」は、基準地震動を下回る地震動によっても 題点がある。したが10って、中性子照射脆化の評価について行われた原子力規制委員会の審査が妥当であるとはいえない。 (3) 「主給水喪失、外部電源喪失」は、基準地震動を下回る地震動によっても同時に生ずるおそれがあるが、その際の補助給水設備への自動切替えに失敗した場合、従業員は、強い精神的緊張の中で、一つの手順も間違わずに複数15の工程を踏んで迅速かつ適切に補助給水設備への切替えを行う必要がある。 しかし、これに関する債務者のイベントツリーでは、非常用ディーゼル発電機が正常に機能したとしても、補助給水による蒸気発生器への給水、主蒸気逃がし弁による熱放出、充てん系によるほう酸の添加、余熱除去による冷却という全ての手順に成功しなければならず、いずれか一つに失敗しただけ20でも炉心損傷又は危機的な状況(緊急安全対策シナリオ等)に陥る。第1陣の備え(主給水ポンプと外部電源)が貧弱なためいきなり背水の陣となるような備えは、深層防護の趣旨から外れている。そして、老朽化した機器には起動不能、誤作動、誤発信のおそれがあり、前記作業時に各装置が正常に機能することは期待できないから、前記手順を確実に進められるとはいえない。 25よって、本件発電所には、老朽化ゆえの事故発生、拡大による重大事故が53生ずる具体的危険性がある。 (4) 福島第一原子力発電所事故も、老朽化特有の問題が事故の発生、進展に影響した可能性は否定できない。40年ルールは福島第一原子力発電所事故を教訓として策定されたものであるから、40年の運転期間を延長して稼働しようとする原子力発電所の安全性は、老朽化した原子力発電所の抱える危険5性を考慮して、厳格、慎重に判断されなければならない。 (債務者)(1) 債務者は、本件発電所について、40年経過以前から定期的な 原子力発電所の安全性は、老朽化した原子力発電所の抱える危険5性を考慮して、厳格、慎重に判断されなければならない。 (債務者)(1) 債務者は、本件発電所について、40年経過以前から定期的な保守・点検作業等を行ってきた。そして、40年を経過する前には、新規制基準の高経年化対策制度及び運転期間延長認可制度の定めに従った対応を行い、原子力10規制委員会による高経年化対策に係る保安規定変更認可処分及び運転期間延長認可処分を受けている(前記第3の5(1))。 なお、原子力発電所においては、原子炉容器を含むほぼ全ての設備で開放点検が可能であり、放射線量が多く直接的な目視点検が困難な設備については、水中カメラによる間接的な目視点検や超音波探傷試験、渦流探傷試験等15によって点検が行われている。保守管理に当たる要員については、原子力発電所の保守管理規程JEAC4209-2007に基づき力量管理を行っている。 このように、本件発電所については、新規制基準に従い、適切な保守管理を実施して十分な安全性を確保している。本件発電所についての高経年化対20策や、独立性、多重性のある電気設備等の設置状況(前記第3の2(3)ウ)等を踏まえれば、設備等の旧さや高経年化から重大事故が発生する危険性があるという債権者らの主張は、抽象的危険性を指摘するに過ぎないものであり、理由がない。 (2) 一般社団法人日本原子力技術協会(現原子力安全推進協会)の発表によれ25ば、運転開始から30年を経過した原子力発電所におけるトラブル発生件数54の5年ごとの推移をまとめると、おおむね運転開始後15年以降に減少傾向となり、30年以降は年平均件数がほぼ1件以下になるなど、運転期間とともにトラブルの発生件数は低下傾向にあるとされており、高経年化した原子力発 移をまとめると、おおむね運転開始後15年以降に減少傾向となり、30年以降は年平均件数がほぼ1件以下になるなど、運転期間とともにトラブルの発生件数は低下傾向にあるとされており、高経年化した原子力発電所の事故発生率が増加するということはない。本件発電所で平成16年に発生した復水配管の破損事故は、点検リストから破損箇所が漏れていた5という劣化管理の問題によるものであって、高経年化が原因ではなく、債務者は、要因を分析した上で具体的対策を実施し、再発防止を図っている。福島第一原子力発電所事故も、津波による全電源喪失により原子炉の冷却を継続できなくなったことが原因であり、高経年化が原因ではない。 (3) 中性子照射脆化による脆性破壊が起こる要因は、①亀裂の存在、②鋼材の10粘り強さ(靭性)の低下、③原子炉容器への高応力であるところ、債務者は、①製造時や供用期間中の点検、特別点検における超音波探傷試験により亀裂が存在しないことを確認し、②供用期間中に実施する監視試験により靭性低下傾向を確認して、これを基に運転開始後60年時の破壊靭性値を予測し、あえて深さ10mmの大きな亀裂の存在を仮定した上で、③高応力を想定し15て算出した応力拡大係数によっても原子炉容器が脆性破壊により破損しないことをPTS評価により確認している。また、経年劣化事象を考慮した耐震安全性評価において、基準地震動を考慮した応力拡大係数を算出し、運転開始後60年時点において、破壊靭性値がその応力拡大係数を上回り、脆性破壊が起こらないことを確認している。 20このように、債務者は、中性子照射脆化の影響を考慮してもPTS(加圧熱衝撃)により原子炉容器が破壊に至らないことを確認している。 (4) 本件発電所においては、主給水ポンプ及び外部電源が機能喪失した場合は、動力源 者は、中性子照射脆化の影響を考慮してもPTS(加圧熱衝撃)により原子炉容器が破壊に至らないことを確認している。 (4) 本件発電所においては、主給水ポンプ及び外部電源が機能喪失した場合は、動力源の独立した補助給水ポンプ及び非常用ディーゼル発電機がそれぞれ自動起動し、蒸気発生器への給水を継続する仕組みとなっており、補助給水設25備及び非常用ディーゼル発電機は耐震重要度分類Sクラスに分類され(Sク55ラスに分類される施設とは、地震により発生するおそれがある事象に対して、原子炉を停止し、炉心を冷却するために必要な機能を持つ施設や自ら放射性物質を内蔵している施設等であって、機能喪失による影響が大きい施設である。解釈別記2第4条2項)、運転開始60年時点における基準地震動に対する耐震安全性が確認されている。債権者らは、補助給水の確立に失敗する原5因を具体的に指摘しておらず、その失敗を前提とする主張に理由はない。 債務者は、「主給水喪失と外部電源喪失」について、「主給水流量喪失」事象として、外部電源の喪失等を解析条件とした解析評価を行い、事故初期において運転員の操作なくしてプラントを安定状態に保持可能であることを確認するなど、対策の妥当性を確認している。また、補助給水ポンプの機能も10喪失した場合(フィードアンドブリードシナリオの場合)については、非常用炉心冷却設備や余熱除去設備を用いて炉心の著しい損傷を防止する対策が整備され(前記第3の2(3)イ)、これとは別に、非常用電源設備の機能も喪失する全交流電源喪失の場合(緊急安全対策シナリオの場合)についても、空冷式非常用発電装置及び電源車等を備えている(前記第3の2(3)ウ)。そ15して、前記「フィードアンドブリードシナリオ」や前記「緊急安全対策シナリオ」の対策の有効性は、原 の場合)についても、空冷式非常用発電装置及び電源車等を備えている(前記第3の2(3)ウ)。そ15して、前記「フィードアンドブリードシナリオ」や前記「緊急安全対策シナリオ」の対策の有効性は、原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査において、炉心損傷防止対策として有効なものであることが確認されている。 このように、炉心損傷防止対策が多重的に設けられ、かつ、それが有効に20機能するための対策が取られているから、債権者らが主張する「各装置が正常に機能することは期待できない」ことを示す具体的な根拠はない。 3 争点2(1)イ(判断に当たり考慮すべき事情―耐震安全性の余裕)(債権者ら)(1) 本件発電所の基準地震動は、運転開始時は405ガルであったのに、99253ガルまで上積みされた。システムの設計時には、強度や負荷の不確実性を56考慮して、予測される最大の負荷に、ある程度の余裕(安全余裕)を持たせて、システムが故障に至る最小の負荷を設定する。仮に本件発電所が993ガルの地震動に耐え得るとのコンピュータのシミュレーション結果が出たとしても、それは当初の安全余裕を食いつぶしたに過ぎず、不確実性を前提にしたとしても安全であるといえるか疑問である。一般に、規模が大きく、そ5の損傷が公共に甚大な影響を与える設備の設計に当たっては、想定すべき荷重の不確かさ、構造物材料強度のばらつき、溶接や保守等品質のばらつき等の不確定要素があるため、求められる基準値の何倍かの余裕を持たせた設計(安全率の設定)がなされているが、本件発電所の機械品について、その許認可・設計・建設時においては、このような明解な安全余裕を示す安全率(安10全裕度)は設定されていない。また、本件発電所の電気・計装品についても、構造体に対するコンピュータシミ について、その許認可・設計・建設時においては、このような明解な安全余裕を示す安全率(安10全裕度)は設定されていない。また、本件発電所の電気・計装品についても、構造体に対するコンピュータシミュレーションと並行して、振動台で実際に揺らす試験を行うなど、地震動や揺れに伴う環境の変化が電気・計装品に与える影響を個別に確認すべきであるのに、それもされていない。安全率を設定することは、科学技術に内在する不確かさに対処するために必要不可欠な15ものである。 (2) 債務者は、耐震安全上3つの余裕があり、安全率を設定しなければ安全確保されていないわけではないと主張する。しかし、基準地震動が現実に設備に働く力(①)は正確には分からないから、高い安全性が求められる原子力発電所について、計算上設備に働く力の評価値(②)を算出するに当たって20高めの計算結果を求めるのは当然であり、それを安全余裕と考えることは許されない。また、安全率の設定が建設時の設計段階でなされていないにもかかわらず、事後評価として、評価基準値(③)と評価値(②)の数値に差があるからといって、その差を安全余裕と呼ぶことも許されない。さらに、原子力発電所は規模が大きく、設備も多様で、全体的な実験を行うことはでき25ず、設備が現実に機能喪失する限界値(実耐力。④)たる地震動は確定でき57ないから、耐震性評価に当たっては、一定の水準の地震動によって設備が必要な機能を果たさなくなると仮定せざるを得ないのであって、その数値を明示しないまま、評価基準値(③)と限界値(④)との間に余裕があるかもしれないと期待して危険性を否定することは許されない。したがって、債務者の主張する安全余裕は、本件発電所の安全性を示すものではない。 5(債務者)(1) 債務者は、新規制基準の があるかもしれないと期待して危険性を否定することは許されない。したがって、債務者の主張する安全余裕は、本件発電所の安全性を示すものではない。 5(債務者)(1) 債務者は、新規制基準の施行後、変更後の基準地震動を踏まえて、耐震補強が必要となるものについては補強工事を実施し、工事後の設備状態を前提として、安全上重要な設備について、基準地震動に対する地震応答解析(地震動によって構造物がどのように揺れるか評価するために、構造物を適切な10モデルに置き換え、同モデルに地震動を入力して地震動によって構造物に作用する荷重を求める解析方法)及び応力解析(地震応答解析により得られた構造物に対する荷重によって、当該構造物を構成する各部位に発生する応力を求める解析方法)を行い、その結果得られた発生応力値等(評価値)が、基準・規格等に基づいて定められている評価基準値(許容値)を下回ってい15ることを確認して、基準地震動に対する本件発電所の耐震安全性を確認している。本件発電所の運転期間延長認可を受けるに際し、運転開始後60年時点においても耐震安全性が確保されることを確認している。 (2) また、耐震安全性評価においては、耐震安全上の余裕として3つの余裕が存在する。まず、評価値(債権者らの主張の②)の評価基準値(許容値。同20③)に対する余裕がある。次に、評価基準値(許容値)の設定に用いる日本電気協会策定の民間規格では、既往の実験結果のばらつきも考慮して評価基準値が保守的に設定されているため、評価基準値(許容値)は、実際に機器等が機能喪失する限界値(同④)に対して余裕を持った値に設定されている。 さらに、評価値(同②)を計算する過程において、地震応答解析を行う際は、25機器・配管系に生ずる揺れを大きくするような条件設定を行い、応力解 限界値(同④)に対して余裕を持った値に設定されている。 さらに、評価値(同②)を計算する過程において、地震応答解析を行う際は、25機器・配管系に生ずる揺れを大きくするような条件設定を行い、応力解析を58行う際は、実際の地震では想定し難いが、地震の揺れによって瞬間的に作用する最大の力が機器・配管系にとって厳しい方向に一定してかかり続けるとあえて仮定して条件設定を行うなど、保守的な計算条件の設定を行っている。 このように、設計上想定すべき強度等の不確定要素については、評価基準値(許容値)の設定段階及び評価値の計算段階で適切に考慮され、結果とし5て評価基準値(許容値)の持つ余裕や評価値の計算条件の余裕が生じているのであり、債権者らのいう「安全率」を設定しなければ安全性を確保できないものではない。 前記のような耐震安全性の余裕の存在は、原子力発電技術機構の多度津工学試験センターにおいて実施された実証試験の結果や、新潟県中越沖地震10により当時の基準地震動を超える地震動を受けた柏崎刈羽原子力発電所の重要な施設に有意な損傷が認められなかったことからも、認められる。 (3) 本件発電所の基準地震動の数値が変化したのは、建設以降の関連分野の調査研究の成果や、活断層の調査、地震動評価手法の精度の向上によるものである。他方、耐震安全性についても、新たな知見や技術の進歩等を考慮した15検討、評価が行われているため、基準地震動の数値が変化したとしても本件発電所の耐震安全性が左右されるものではない。 4 争点2(2)ア(新規制基準の合理性及び同基準への適合性―原子炉建屋の変位のおそれのない地盤への設置の有無)(債権者ら)20(1) 耐震重要施設の変位のおそれのない地盤への設置について、解釈別記1第3条3項は、後期更新世(約1 準への適合性―原子炉建屋の変位のおそれのない地盤への設置の有無)(債権者ら)20(1) 耐震重要施設の変位のおそれのない地盤への設置について、解釈別記1第3条3項は、後期更新世(約12~13万年前)以降の活動が否定できない断層等の露頭の上に設置されているのでなければ設置許可基準規則3条3項の要求を満たすことを定める。しかし、元原子力規制委員会委員長代理・東京大学名誉教授の島崎邦彦氏の論文(甲28)には、「平成28年に発生した25熊本地震(以下「熊本地震」という。)では主断層帯から10kmの範囲内で59顕著な地震変状が広い範囲で数多く出現したが、このような状況は新規制基準や審査ガイドの策定前には知られていなかった。新知見に基づく議論を始めるべきである。」旨記載されている。また、東洋大学教授渡辺満久氏外の論文(甲29)にも、「熊本地震では供役断層や副次的断層が数多く出現した。 副断層は主断層が活動する際にいつも一緒に活動するとは限らず、活動性は5相対的に低く、挙動予測が難しい。副断層の活動性が低ければ、最近の12~13万年間だけを活動性判断のスクリーニング期間とする現行の規制基準では不足がある。」旨記載されている。これらの知見によれば、解釈別記1第3条3項は不合理であるというべきであり、同項に則って本件発電所が設置許可基準第3条第3項に適合するとした原子力規制委員会の判断も不合理で10ある。 なお、アメリカ合衆国原子力規制委員会(以下「NRC」という。)の1998年4月策定の規制指針においては、長さ1000フィート(300m)以上の地表断層が5マイル(8km)以内にある敷地は原子力発電所の敷地に適さないと規定されていた。2014年改訂後の同規制指針には数値は明15記されていないが、考え方を改めた旨の説明 300m)以上の地表断層が5マイル(8km)以内にある敷地は原子力発電所の敷地に適さないと規定されていた。2014年改訂後の同規制指針には数値は明15記されていないが、考え方を改めた旨の説明はないから、NRCの基本的な考え方に変更はないと解すべきであり、アメリカにおいては、本件発電所の敷地のような場所に原子力発電所の建設が許可されることはあり得ない。 (2) 原子力規制委員会の美浜発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合(以下「破砕帯有識者会合」という。)の評価書(甲86)では、敷地内破砕20帯について、「後期更新世以降に活動していない可能性が高いと判断する。」と結論付けられているが、その取りまとめ前の第4回会合において、A原子力規制委員が、「後期更新世以後にこれらの破砕帯が動いたという明確な、積極的な証拠はないが、後期更新世以後はそれらが絶対に動いていないか、それを否定するような根拠というものも残念ながらないという点では、皆さん25大体一致しているのではないかと思う。」とまとめていることからすると、前60記結論は明確なものとはいえない。敷地内破砕帯が後期更新世以降に活動していないと断定する根拠がない以上、「将来活動する可能性のある断層等」であると評価されるべきであった。 本件発電所は、周囲7kmに5つもの長大な活断層があり、本件発電所の原子炉建屋の直下にはC断層という主断層が存在し、本件発電所の敷地には5敷地内破砕帯(小さな断層)が複数存在しているにもかかわらず、本件発電所の敷地を変位が生ずるおそれがないものとした債務者及び原子力規制委員会の評価には、看過し難い過誤、欠落がある。 (債務者)(1) 債務者は、本件発電所の敷地の地質・地質構造を把握した上、敷地内破砕10帯について、熱水変質作用や広域 債務者及び原子力規制委員会の評価には、看過し難い過誤、欠落がある。 (債務者)(1) 債務者は、本件発電所の敷地の地質・地質構造を把握した上、敷地内破砕10帯について、熱水変質作用や広域応力場に着目した詳細な調査、評価を行い、その他観察事実も総合して、耐震重要施設が設けられている地盤に、将来活動する可能性のある断層等の露頭がないことを確認しており(前記第3の5(3)イ)、債務者の調査及び評価と、新規制基準適合性を認めた原子力規制委員会の判断に不合理な点はない。 15(2) 「将来活動する可能性のある断層等」には「地震活動に伴って永久変位が生じる断層」も含まれ(前記第3の5(3)ア)、「副断層等」もこれに該当すると解されるから、新規制基準は、債権者らが熊本地震で得られた新知見であると主張する点も踏まえて策定されている。債務者も、敷地内破砕帯について、主断層、副断層のいずれが活動したかを問わず、それらの後期更新世以20降の活動がないことを確認している。 債権者らが引用する二つの論文(甲28、29)においては、副断層が主断層に比べて相対的に活動性が低いことなど、従来の一般的な科学的知見は述べられているものの、後期更新世以降に活動していなかった副断層が熊本地震の際に活動したことを具体的に示した箇所は見当たらず、むしろ、原子25力規制委員会の実施した断層変位評価に係る調査の成果報告書(乙125)61によれば、熊本地震における複数の副断層は、後期更新世以降の活動があるものであったことが分かる。 熊本地震で変状、副次的な断層等が出現した地点が沖積地内等の堆積層に覆われた地域であったのと異なり、本件発電所の敷地周辺は、断層が繰り返し活動した痕跡が地表に現れ、詳細な調査、評価によって活断層を網羅的に5把握することが可 が出現した地点が沖積地内等の堆積層に覆われた地域であったのと異なり、本件発電所の敷地周辺は、断層が繰り返し活動した痕跡が地表に現れ、詳細な調査、評価によって活断層を網羅的に5把握することが可能な地域である。債務者は、このような地域において詳細な調査、評価を行ったものであり、熊本地震に関する前記各論文によって、敷地内破砕帯が本件発電所の運転期間中に活動する可能性が示されたとはいえない。 (3) 債務者は、破砕帯有識者会合における報告を踏まえて、全ての敷地内破砕10帯の薄片の再観察や化学的分析(EPMA分析等)を実施して、敷地内破砕帯の粘土鉱物の成因が熱水変質作用であるものと評価し、また、年代測定法を実施して、雲母粘土鉱物が花崗岩の冷却過程で生成したと仮定しても矛盾がないことを確認して、熱水変質作用の時期を少なくとも後期更新世以降ではないと評価した。原子力規制委員会も、このような債務者の調査、評価を15妥当なものと判断して新規制基準への適合性を認めたのであるから、敷地内破砕帯が将来活動する可能性のある断層等でないことは明らかである。 5 争点2(2)イ(ア)(新規制基準の合理性及び同基準への適合性―内陸地殻内地震の震源位置に関する考慮)(債権者ら)20(1) 新規制基準は、本件特別考慮規定を設けて、内陸地殻内地震の震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価の問題を重視し、その場合にすべき慎重な考慮の内容を詳細に定めている(前記第3の5(4)ア(イ)a⑤、同b⑦)。本件特別考慮規定の「震源が敷地に極めて近い場合」とは、同規定の表現から、敷地内に活断層の露頭がある場合に限る趣旨でないことは明らかであるが、「極25めて近い」の意義が定量的に明らかにされていないため、本件特別考慮規定62が定められた実質的理由や、 表現から、敷地内に活断層の露頭がある場合に限る趣旨でないことは明らかであるが、「極25めて近い」の意義が定量的に明らかにされていないため、本件特別考慮規定62が定められた実質的理由や、同規定策定時の議論の経過に基づき具体的に判断する必要がある。 この点、地震等基準検討チームの会合における議論では、原子力規制委員会から、250mの距離に浦底断層がある敦賀原子力発電所の例を挙げながら震源断層が敷地の極近傍にある場合の地震動評価について問題提起がされ5たが、国立研究開発法人防災科学研究所社会防災システム研究領域長のB氏(以下「B氏」という。)が、「要素断層よりも距離的に近いサイトですね、数km以内、例えば1kmとか2km以内のサイトについては、物理モデルとして波動論的な計算手法が破綻する領域になっているということで」と発言し、C委員もこれに同調し、出席有識者らの中では、断層が数km以内に10あるサイトを念頭に議論が行われた。また、本件特別考慮規定の素案では、適用範囲に関して「敷地内に活断層の露頭がある等、震源が敷地に近接している場合」とされていたが、外部有識者として参加していた京都大学原子炉実験所附属安全原子力システム研究センターのD教授(以下「D氏」という。)が、「大事なのは地下の震源断層と敷地との距離の問題であって、露頭と敷地15の距離の問題ではないから、『敷地内に活断層の露頭がある等』と例示を記載するのは望ましくない。」との意見を述べたため、「敷地内に活断層の露頭がある等」との文言が削除されたという経緯がある。このように、原子力規制委員会としては、敷地内に活断層が存在する事例を想定していたことがうかがわれるものの、出席有識者らの意見により素案を修正し、本件特別考慮規20定の策定に至ったものであることから うに、原子力規制委員会としては、敷地内に活断層が存在する事例を想定していたことがうかがわれるものの、出席有識者らの意見により素案を修正し、本件特別考慮規20定の策定に至ったものであることからすると、それに限らないとしたことは明らかである。 本件発電所の東側約1kmには白木―丹生断層の露頭、西側約3kmの地点にはC断層の露頭があり、直下約4kmにはC断層の震源がある。前記の本件特別考慮規定の策定経過等も踏まえれば、本件発電所の敷地は内陸地殻25内地震の震源に極めて近く、同規定の定める特別の考慮を行う必要があった63というべきであり、それにもかかわらず、債務者はその考慮を行っていないことになる。 (2) この点に関して、山田雅行他の「断層極近傍のための理論地震動シミュレーション法を用いた断層表層領域破壊時の地震動推定」の論文(甲33。以下「山田論文」という。)において、断層極近傍における地震動予測は精度よ5くできないとの問題意識から、断層から極めて近い位置における地震動がどの程度の強度となり得るかの数値シミュレーションを行った結果、断層表層領域における地震動の生成を考慮した場合は、断層表層領域を考慮しない場合に比べて、最大速度(平均)及び最大加速度(平均)がそれぞれ1.7倍、1.6倍程度となったことが報告されている。これは、「震源の極近傍での地10震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見」(前記第3の5(4)ア(イ)b⑦)といえるが、債務者はこれも踏まえていない。 (3) さらに、B氏は、地震等基準検討チームが実施した意見聴取会において、敷地の極近傍に震源断層がある場合は、距離減衰式や断層モデルが持つ不確かさを考慮する適切な手法が十分にない現状を踏まえると、基準地震動は、15断層近傍の実際の記録の最大値(岩 見聴取会において、敷地の極近傍に震源断層がある場合は、距離減衰式や断層モデルが持つ不確かさを考慮する適切な手法が十分にない現状を踏まえると、基準地震動は、15断層近傍の実際の記録の最大値(岩手・宮城内陸地震の一関西観測点の地中観測点の記録)を上回るレベルで設定することが必須である旨強く警告しているが、本件発電所の基準地震動は、同観測記録の1077ガル(三成分合成)を下回っている。 (4) 原子力規制庁のE安全規制管理官は、「極めて近い」の意義を「大体1km」20などと述べるが、同人に設置許可基準規則解釈の文言を解釈する権限はなく、仮に原子力規制委員会が同様の見解を持つのであれば、白木―丹生断層については、本件特別考慮規定の特別の考慮の要否を債務者に検討させるべきであった。 (5) 以上のとおり、本件発電所には本件特別考慮規定が適用されるべきであっ25たにもかかわらず、債務者に、本件特別考慮規定の考慮の欠如を是正させる64ことも、その考慮の要否を検討させることもしていないから、設置変更許可処分をした原子力規制委員会の調査審議及び判断には、看過し難い過誤・欠落がある。 (債務者)(1) 本件発電所の検討用地震は、いずれも、本件特別考慮規定の「震源が敷地5に極めて近い場合」に当たらず、同規定の特別な考慮、検討が必要となるものではない。原子力規制委員会における新規制基準適合性審査においても、これと異なる見解が示されたことはない。 地震等基準検討チームの会合における本件特別考慮規定の策定へ向けた議論では、冒頭に、担当官から、背景事情として、敦賀原子力発電所では原子10炉からおよそ250mという至近距離に活断層である浦底断層の露頭があることなどが説明され、出席者らは、これを念頭に議論を行った。また、本件特別 から、背景事情として、敦賀原子力発電所では原子10炉からおよそ250mという至近距離に活断層である浦底断層の露頭があることなどが説明され、出席者らは、これを念頭に議論を行った。また、本件特別考慮規定の骨子素案の例示(「敷地内に活断層の露頭がある等」)の削除に関するD氏の意見は、震源が敷地に極めて近い場合は、断層の上端深さ等の不確かさを考慮して保守的に設定することが要求されることを指摘するも15のであり、露頭の有無に関して論評したものではない。同会合における出席者らの議論は、特別考慮を要する対象範囲を拡大するものではなく、その議論の前提状況も、敷地内に活断層の露頭がない本件発電所とは全く異なるものである。 (2) また、山田論文におけるシミュレーションは、地表断層線からわずか10200mという至近距離の地点を予測地点とするものであるが、本件発電所には、そのような至近距離に活断層は存在しないから、同シミュレーションは、本件発電所には当てはまらない。 (3) 債権者らは、本件発電所の基準地震動が、岩手・宮城内陸地震の一関西観測点の観測値1077ガルを下回っていることを問題視するが、そもそも、25最大加速度の数値のみから本件発電所の耐震安全性に疑義を述べるのは適切65ではない。また、岩手・宮城内陸地震の地震動には、その震源域近傍の複雑な地下構造が影響を与えたと考えられるところ、地域性の相違を捨象して数値を単純に比較することに合理性はないから、本件発電所の基準地震動を上乗せする必要ない。原子力規制委員会も、同旨の見解を述べている。 (4) 以上のとおり、債権者らの主張は、いずれも、本件発電所の検討用地震が5「震源が敷地に極めて近い場合」に当たり、特別な考慮、検討が必要となる根拠とはなり得ない。 6 争点2(2)イ 。 (4) 以上のとおり、債権者らの主張は、いずれも、本件発電所の検討用地震が5「震源が敷地に極めて近い場合」に当たり、特別な考慮、検討が必要となる根拠とはなり得ない。 6 争点2(2)イ(イ)(新規制基準の合理性及び同基準への適合性―使用する経験式の適切性)(債権者ら)10(1) 債務者が応答スペクトルに基づく地震動評価において使用した松田式は、元データの地震が14個と少ない上、断層の長さや地震規模の数値が確定していないものが多く、松田式に数理的根拠はない。また、松田式の観測データは、松田式を表示したグラフの周囲に大きくばらついており、このばらつきを十分に考慮しなければ顕著な過小評価となるおそれがあるが、松田式は、15活断層の長さに応じた地震規模の平均的イメージでしかないから、これによって、将来の最大の地震規模を予測することはできないというべきである。 他方で、観測データの最大規模を結んだ線を最低限の地震規模として想定するなど他に合理的な方法がある。したがって、松田式を採用する正当性、合理性はなく、格段に高い安全性が求められる原子力発電所の基準地震動の策20定に松田式を使うことは適切でない。 (2) 仮に松田式を使用するとしても、そのまま適用することは本件ばらつき条項(前記第3の5(4)ア(イ)b②)に反する。 本件ばらつき条項の第1文は、当該活断層に適用すべき経験式を間違わないよう求め、同第2文は、地震規模を設定するについて当該経験式の元とな25ったデータのばらつきを考慮するよう求めるものであり、第2文の「その際」66とは、「経験式を用いて地震規模を設定する際」と解するのが自然である。これは、マグニチュードが0.2上がるごとに地震のエネルギー量が2倍、4倍に増すという次元の問題であることを踏まえ の際」66とは、「経験式を用いて地震規模を設定する際」と解するのが自然である。これは、マグニチュードが0.2上がるごとに地震のエネルギー量が2倍、4倍に増すという次元の問題であることを踏まえ、地震規模のばらつきの問題を、地震動の問題に反映して解消するのではなく、地震規模の設定において考慮することを求めたものである。 5これに対し、債務者は、第2文の「その際」を「経験式の適用範囲が検討されていることを確認する際」と解釈するが、「経験式の適用範囲」とは、その基礎となった「データセットの範囲」であって、そのデータにばらつきがあるか否かは適用すべき経験式を決める際の要素にはならないから、債務者の解釈は意味がない。債務者が、松田式の適用を決定した際に、そのデータ10のばらつきを検討した形跡もない。 また、債務者は、経験式のもつデータのばらつきは不確かさで考慮するのが新規制基準の考え方であるなどと主張するが、地震ガイドがばらつきの考慮を求めるのは、「断層モデルの長さ、面積、あるいは1回の活動による変位量」と「地震規模」とを関連付ける経験式を用いて地震規模を設定する場面15であるのに対し、不確かさの考慮を求めるのは、地震動評価の過程の場面であるから、両者の考慮が求められる局面は異なっている。 したがって、債務者の主張は失当である。債務者は、本件ばらつき条項の第2文により、松田式から求められる地震規模に大幅な上乗せをすべきであったのにこれをせず、同第2文を適用する必要性の有無すら検討しないまま、20松田式を用いている。したがって、C断層の応答スペクトルに基づく地震動評価においては、本来、750ガルを遥かに上回る地震動が算定されるはずであったから、これとの比較で採用されたC断層の断層モデルに基づく基準地震動993ガルには合理 断層の応答スペクトルに基づく地震動評価においては、本来、750ガルを遥かに上回る地震動が算定されるはずであったから、これとの比較で採用されたC断層の断層モデルに基づく基準地震動993ガルには合理性がない。 (3) 入倉・三宅式についても、過去の資料を将来予測に用いる危険性があるこ25と、他の合理的な方法があって入倉・三宅式を採用する合理性・正当性を欠67くことは、松田式と同様である。また、入倉・三宅式の観測データは、同式の周囲に、別紙1文献一覧(7)のSomerville et al.(1999)の式の標準偏差を超えてほぼ倍半分までばらついているから、このばらつきを十分に考慮しなければ顕著な過小評価に陥るおそれがある。にもかかわらず、債務者は、入倉・三宅式をそのまま適用しているのであるから、本件ばらつき条項の第52文に反している。したがって、入倉・三宅式に基づき算出されたC断層の断層モデルに基づく地震動評価993ガルの算定自体も合理性がない。 (4) 以上のとおり、債務者が松田式及び入倉・三宅式を使用して策定した本件発電所の基準地震動は、合理性がなく、本件ばらつき条項の第2文の要請を満たしていないから、これを看過して設置変更許可処分をした原子力規制委10員会の判断には過誤がある。地震ガイドは、審査官が設置許可基準規則及び同規則解釈の趣旨を十分に踏まえ、基準地震動の妥当性を厳格に確認するために活用される目的を有するものであるから、地震ガイドに適合しない基準地震動は特段の事情のない限り不十分であり、周辺住民の人格権侵害の具体的危険のあることが推定されるというべきである。 15(5) 地震ガイドは、本件ばらつき条項の第2文が削除されるなどの改正がされているが(前記第3の5(4)ア(イ)c)、その改正は、応答スペクトル 危険のあることが推定されるというべきである。 15(5) 地震ガイドは、本件ばらつき条項の第2文が削除されるなどの改正がされているが(前記第3の5(4)ア(イ)c)、その改正は、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価が「適切な手法」を用いなければならないことを定める解釈別記2第4条5項に反し、明らかに不合理なものである。 20(債務者)(1) 松田式は、最新のレシピにおいても地震規模を求めるための関係式として引用され、別紙1文献一覧(8)の武村(1998) (乙184)でも、松田式は実際に発生した地震のマグニチュードと震源断層の長さとの関係をよく示していると記載されている。また、松田式の元データである14個の地震につい25て、それぞれのマグニチュードを最新の知見に基づいて見直すと、それらの68地震データは松田式によく整合しており、最新の科学的知見を踏まえても、活断層の長さと地震の規模との関係式として信頼性を有するものである。 (2) 経験式から算出される値は、多数の地震、地震動の標準的・平均的な姿を明らかにしたものであるから、個々の観測データとの偏差(ばらつき)が生ずるところ、このような「ばらつき」は、自然現象のゆらぎに由来する偶然5的不確かさや、自然現象に対する知識・経験が現在の科学的・専門技術的知見においても不完全であるとの認識論的不確かさによって生ずるものであり、経験式から算出される値からの偏差は、観測値として見ると「ばらつき」であり、基準地震動の策定過程において経験式を用いてパラメータを設定する際に検討すべきものと考えれば「不確かさ」である。したがって、経験式を10用いる際には、「不確かさ」を適切に考慮することが合理的であり、経験式に対するデータの「ばらつき いてパラメータを設定する際に検討すべきものと考えれば「不確かさ」である。したがって、経験式を10用いる際には、「不確かさ」を適切に考慮することが合理的であり、経験式に対するデータの「ばらつき」は「不確かさ」の考慮によって対応するというのが、基準地震動策定の実務であり、新規制基準の考え方である。 (3) 本件ばらつき条項は、ばらつきの考慮として地震規模への上乗せを求めるものではない。地震ガイドは、本件ばらつき条項以外にも、基準地震動策定15の基本方針や、各地震動評価におけるそれぞれの方針として、不確かさの考慮規定を置いており(前記第3の5(4)ア(イ)b①、⑧、⑨)、断層モデルを用いた手法による地震動評価についての規定(同(イ)b⑨)は、震源断層の長さ、地震発生層の上端深さ・下端深さ、断層傾斜角等を含む震源モデルの「不確かさ」に関し、支配的パラメータの分析による反映を求めているのであって、20地震ガイドは、経験式に対するデータの「ばらつき」を「不確かさ」の考慮によって解決することを求めているものと理解される。原子力規制委員会も、本件ばらつき条項の第2文は、経験式を用いて地震規模を設定する場合の当該経験式の適用範囲を確認する際の留意点として、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、当該経験式の適用範囲を単に確認す25るのみではなく、より慎重に、当該経験式の前提とされた観測データとの間69の乖離の度合いまでを踏まえる必要があることを意味していると説明している。地震学や地震工学等の専門家らも同様の見解を述べている。 なお、地震ガイドは、行政手続法上の「審査基準」ではなく、原子力規制委員会はその記載内容に拘束されるわけではない。しかも、地震ガイドは、令和4年6月に改正され、手引きとしての位置付けが明確に る。 なお、地震ガイドは、行政手続法上の「審査基準」ではなく、原子力規制委員会はその記載内容に拘束されるわけではない。しかも、地震ガイドは、令和4年6月に改正され、手引きとしての位置付けが明確にされるとともに、5本件ばらつき条項の第2文が削除されているのであって、債権者らの地震ガイドの理解が誤っていることがより明確になった。 (4) 「不確かさ」の考慮とは別に「ばらつき」の考慮として地震規模の上乗せをすることに、科学的合理性がない。例えば、入倉・三宅式を使用して地震規模を評価する際、不確かさを考慮して面積を大きく評価することにより地10震モーメントの値は大きくなるが、その地震モーメントに「ばらつき」の考慮としてさらに上乗せをすることは、面積の「不確かさ」を二重評価することになる。また、このような上乗せをすると、地震モーメントと面積との相関関係を崩して物理的に考え難い震源モデルとなり、各パラメータが複数のパラメータと相関関係を持つ一連の地震動評価手法であるレシピを用いた実15務と相容れない。 松田式、入倉・三宅式に入力する断層の長さや面積のほか、剛構造の原子力発電所の構造物への影響が大きい短周期領域の地震動に直接かつ大きく作用するパラメータ(アスペリティの位置、応力降下量、破壊開始点の位置等)を保守的に設定して各種の不確かさを考慮することで、十分に保守的な地震20動評価は可能である。 (5) 以上のとおり、松田式、入倉・三宅式をそのまま適用することは、本件ばらつき条項に反するものとはいえず、債権者らの主張は理由がない。 7 争点2(2)イ(ウ)(新規制基準の合理性及び同基準への適合性―繰り返しの地震の考慮)25(債権者ら)70(1) 設置許可基準規則4条3項は、耐震重要施設は、基準地震動による地震力 7 争点2(2)イ(ウ)(新規制基準の合理性及び同基準への適合性―繰り返しの地震の考慮)25(債権者ら)70(1) 設置許可基準規則4条3項は、耐震重要施設は、基準地震動による地震力に対して「安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない。」とするが(前記第3の5(2)ア)、これを満たすための要求事項を定める解釈別記2第4条6項は、安全余裕が残っている限り、耐震重要施設が変形することを許容している。しかし、塑性変形した施設、設備は、耐震性能が大幅に5低下するから、基準地震動による地震力が耐震重要施設を複数回襲った場合、その安全性は確保できない。熊本地震では震度7の激震が短時間に2度発生し、2度目の激震で倒壊した家屋も多かった。したがって、基準地震動が原子力発電所を繰り返し襲うことを想定していない新規制基準は不合理であり、本件発電所は合理的な基準に基づく適合性判断を受けていない。 10(2) 債務者は、本件発電所が基準地震動と同等の地震動に連続して襲われる可能性はおよそ考えられないと主張するが、大地震の発生後に同程度の地震が発生する例は数多く生じている。断層の長さを正確に把握することが困難であり、断層が想定より長かったため2度にわたり破壊が起こる可能性や、他の断層で誘発地震が起こる可能性、特に、本件発電所の周辺地域には多くの15活断層があることからすれば、他の活断層が誘発されて発生する誘発地震が起こる現実的な危険性があるというべきである。この点、本件発電所の敷地周辺地域は活断層の「未発達」な地域ではないから震源断層の規模を正確に把握できるとの債務者の主張は、それ自体飛躍がある上、「震源を特定せずに策定する地震動」の策定を求めた設置許可基準規則解釈や地震ガイドの趣旨20にも反する。 (債務者) 源断層の規模を正確に把握できるとの債務者の主張は、それ自体飛躍がある上、「震源を特定せずに策定する地震動」の策定を求めた設置許可基準規則解釈や地震ガイドの趣旨20にも反する。 (債務者)(1) 長期間にわたり岩盤に蓄えられたひずみが限界に達して断層面を境にずれることによって生ずるという地震のメカニズムからすると、短期間に基準地震動と同等の地震動が発生することはおよそ考えられない。 25熊本地震において震度7が2度観測されたが、柔らかい地盤上における観71測結果であり、硬質な地盤における地震動は、基準地震動に匹敵するほどの大きなものではなかった。熊本地震の前震(M6.5)と本震(M7.3)は、短い間隔で発生したものの、近傍の原子力発電所の基準地震動策定の際に一連のものと評価された断層の異なる部分がそれぞれ破壊されたものであり、断層全体が一度にエネルギーを放出する地震が短期間に発生したもので5はなく、基準地震動策定の際に想定された地震規模であるM8.1(前震の約250倍、本震の約16倍のエネルギーに相当するもの)より小さな規模のものであった。 原子力規制委員会も、熊本地震の後、原子力発電所における基準地震動の策定方法を見直す必要はないとしている。 10よって、熊本地震を根拠に新規制基準の不備をいう債権者らの主張はその前提を欠くというべきである。 (2) 本件発電所の敷地周辺地域は、活断層の発達過程が未成熟でなく、地表地震断層を調査することで震源断層を把握することができる地域である。そして、債務者は、陸域及び海域を網羅的に調査して活断層を把握し、その端部15を慎重に定めて活断層の長さを保守的に評価したほか、十分に保守的な条件設定の下で地震動評価を行い、本件発電所に到来し得るおおむね最大の地震動を考慮した 羅的に調査して活断層を把握し、その端部15を慎重に定めて活断層の長さを保守的に評価したほか、十分に保守的な条件設定の下で地震動評価を行い、本件発電所に到来し得るおおむね最大の地震動を考慮した基準地震動を策定している。したがって、本件発電所が基準地震動に襲われる可能性はそもそも非常に低く、基準地震動相当の地震に立て続けに2回襲われることを考慮する必要はない。 208 争点3(1)(避難計画の不備による人格権侵害の具体的危険性)(債権者ら)IAEA加盟国である我が国の原子力基本法が原子力利用の安全の確保について確立された国際的な基準を踏まえるものとしていることや、IAEAは深層防護の考え方を採用していること等からすれば、発電用原子炉施設の安全性25は深層防護の第1から第5までの防護レベルをそれぞれ確保することにより図72るものとされているといえる。そうすると、深層防護の第1から第5までの防護レベルのいずれか一つでも欠落し又は不十分といえる場合には、発電用原子炉施設が安全であるということはできず、周辺住民の生命、身体が害される具体的危険があるというべきである。 したがって、深層防護の第1から第4までの防護レベルが達成されていたと5しても、第5の防護レベル(避難計画等)が不十分であれば、発電用原子炉施設が安全であるということはできない。 (債務者)深層防護の考え方は、飽くまでも予防的な観点から防護を確実なものとするために求められるものであって、第5の防護レベル(避難計画)に不備があれ10ば直ちに地域住民に放射線被害が及ぶ具体的危険があるということを意味するものではない。 したがって、避難計画の不備を理由に人格権侵害の具体的危険を疎明する場合には、その前提として、債権者らが ば直ちに地域住民に放射線被害が及ぶ具体的危険があるということを意味するものではない。 したがって、避難計画の不備を理由に人格権侵害の具体的危険を疎明する場合には、その前提として、債権者らが避難を要するような事態(放射性物質が外部に放出される事態)が発生する具体的危険を具体的に疎明する必要がある。 15そうであるところ、そもそも、債権者らが避難を要するような事態(放射性物質が外部に放出される事態)が発生する具体的危険について十分な疎明があるとはいえないため、避難計画の不備について検討するまでもなく、被保全権利の疎明があるとはいえない。 9 争点3(2)(本件避難計画の不備の有無)20(債権者ら)本件避難計画は次の点から不備があることが明らかであるといえるため、第5の防護レベルが不十分であって、発電用原子炉施設としての安全性を欠くものであるといえる。 ア OILに基づく防護措置を実施するまで屋内退避を継続する点25全面緊急事態となった場合、PAZの住民は即時避難を開始すべきものと73されているのに対し、UPZの住民は、放射性物質の放出に至った後もOILに基づく防護措置を実施するまでは屋内退避を継続する(累積線量は3360μ㏜(480μ㏜×7日間)にもなる)ため、UPZの住民が放射線被ばくすることを前提とした計画となっている。 イ 避難先又は避難途上に原子力発電所がある点5本件避難計画においては、避難先又は避難途上に原子力発電所があるため、原発事故が同時多発的に発生した場合には、放射線被ばくを避けて避難することができない計画となっている。 ウ 国道・高速道路の渋滞・通行止めが生ずる点本件避難計画における避難ルートのうち国道27号線(片側1車線)と国1 は、放射線被ばくを避けて避難することができない計画となっている。 ウ 国道・高速道路の渋滞・通行止めが生ずる点本件避難計画における避難ルートのうち国道27号線(片側1車線)と国10道161号線(片側1車線)は避難の際に渋滞することが予想されるし、後者は琵琶湖西岸の狭路であるため、土砂災害で寸断されれば通行不可となる。 舞鶴若狭自動車道(対面通行)もICやJCTでの渋滞が予想される。 エ 車両(放射線からの防護効果がない)での避難を前提としている点車両には放射線(浮遊放射性物質のγ線)を防護する効果がないため、車15両で避難している間は屋外にいるに等しいのに、本件避難計画は、車両での避難を前提としている。 オ 屋内退避の問題点(倒壊や放射線被ばくの危険)、屋外退避の危険(放射線被ばくの危険)本件避難計画は、地震による建物倒壊の可能性があるのに、屋内退避を前20提としている。そもそも、屋内退避では放射線被ばくに対する防護効果が期待できない。また、本件避難計画が前提とする公共の指定避難所64箇所はいずれも屋外であるため、やはり放射線被ばくのおそれがある。 カ 避難者が安定ヨウ素剤を受け取るのが遅すぎる点本件避難計画においては、避難者が避難中に安定ヨウ素剤の服用指示を受25けることを前提としているが、配布場所に向かうまでの間に放射性ヨウ素を74吸い込んでしまうおそれがある。 キ コロナ禍の避難計画では換気をせざるを得ず、放射線被ばくを余儀なくされる点本件避難計画は、放射性物質からの遮断を目的として屋内退避をすることを前提とするが、コロナ禍の避難計画においては常時換気が必須となるため、5本件避難計画には不備がある。 (債務者)ア OILに基づく防護措置を らの遮断を目的として屋内退避をすることを前提とするが、コロナ禍の避難計画においては常時換気が必須となるため、5本件避難計画には不備がある。 (債務者)ア OILに基づく防護措置を実施するまで屋内退避を継続する点について本件避難計画は、UPZ内の住民については、専門的知見を有する原子力規制委員会が、原子力発電所の状況や緊急時モニタリングの結果等を踏まえ10て屋外退避の必要性を判断することとしているが、このような段階的な屋外退避を実施する結果、UPZ内の住民がPAZ内の住民に比べて直ちに避難開始とならないとしても、不合理とはいえない。 イ 避難先又は避難途上に原子力発電所があるとする点について大飯発電所や高浜発電所と美浜発電所の位置関係からすると、美浜発電所15の近傍で地震が発生し、美浜発電所の安全機能を喪失するような大きさの地震動が生じたとしても、これを生じさせた地震動が大飯発電所や高浜発電所の安全機能を同時に失わせるということはにわかに想定し難いし、これらの発電所が、連続する地震によって同時多発的に連続して安全機能を喪失するおそれがあることも想定し難い。 20ウ 国道・高速道路の渋滞・通行止めが発生するという点について地域防災計画(原子力災害対策編)を含む地域防災計画の各編や「美浜地域の緊急時対応」は、自然災害の発生等をも想定し、具体的な対策を採ることとしているため、本件避難計画に不備があるとはいえない。 エ 車両での避難に合理性がないとする点について25福井県、滋賀県、岐阜県及び関係市町では、必要となる放射線防護資機材、75食料等の物資、燃料等が備蓄されているほか、関係市町や避難先市町から要請があった場合などには、福井県、滋賀県及び岐阜県等と協定を 、滋賀県、岐阜県及び関係市町では、必要となる放射線防護資機材、75食料等の物資、燃料等が備蓄されているほか、関係市町や避難先市町から要請があった場合などには、福井県、滋賀県及び岐阜県等と協定を締結している民間企業等を通じて物資が調達されることとされている。また、これらの放射線防護資機材等が不足する場合は、債務者を含む原子力事業者が、保有する資源(要員、資機材等)を最大限供給するほか、国の原子力災害対策本5部が関係省庁を通じて関係業界団体に物資の調達を要請することとされている。これらの計画をも勘案すると、車両による避難を前提としていることをもって、本件避難計画に不備があるとはいえない。 オ 屋内退避の問題点、屋外退避に伴う危険について債務者による対策(モニタリングポスト、可搬型モニタリングポスト、モ10ニタリングカー、可搬型放射線計測装置等による放射線量等の測定)等が整備されることに加えて、避難方法として、船舶やヘリコプターにより海路及び空路による避難も可能とされていることをも勘案すると、屋内退避や屋外退避に放射線被ばく等のおそれがある場合には、速やかに放射線被ばく等の危険を回避できるように計画が立てられているものといえる。本件避難計画15に合理性がないとはいえない。 カ 避難者が安定ヨウ素剤を受け取るのが遅すぎるという指摘について地方公共団体が必要と判断すれば、安定ヨウ素剤の事前配布が行われることになるため、債権者らの主張は前提を欠く。 キ コロナ禍の避難計画では換気をせざるを得ないとする点について20コロナ禍においては、「防護措置」と「感染防止対策」を可能な限り両立させ、「感染拡大・予防対策を十分考慮した上で、避難や屋内退避等の各種防護措置を行うこと」が国の基本姿勢 について20コロナ禍においては、「防護措置」と「感染防止対策」を可能な限り両立させ、「感染拡大・予防対策を十分考慮した上で、避難や屋内退避等の各種防護措置を行うこと」が国の基本姿勢であるとされており、福井県は新型コロナウイルス感染症流行下で原子力災害が起きた場合を想定した広域避難訓練を実施している。そうすると、新型コロナウイルス感染が拡大している状況下25においても、防護措置を講ずることは可能であるといえるから、コロナ禍で76あることをもって、本件避難計画に不備があるということはできない。 10 争点4(保全の必要性)(債権者ら)本件発電所が重大事故を起こすことにより債権者らの人格権が侵害される事態を回避するためには、本件発電所の運転を差し止める以外に方法がない。運5転を差し止めても、原子炉内に核燃料が装荷されている以上、人格権侵害のリスクはあるが、重大事故に至る可能性を大幅に軽減することができる。よって、債権者らは、著しい損害又は急迫の危険を避けるため(民事保全法23条2項)、本件発電所の運転の差止めを請求できる。 (債務者)10争う。 第6 当裁判所の判断1 争点1(司法審査の在り方(判断の枠組み))について本件における被保全権利は、人格権に基づく妨害予防請求権としての本件発電所の運転差止請求権であるところ、このような人格権に基づく妨害予防請求15としての発電用原子炉施設の運転差止請求は、当該発電用原子炉施設が客観的にみて安全性に欠けるところがあり、その運転に起因する放射線被ばくにより、周辺住民の生命、身体に直接的かつ重大な被害が生ずる具体的な危険が存在するといえる場合に認められると解される。 当該発電用原子炉施設が確保すべき安全性については、社会通念を基準とし20て り、周辺住民の生命、身体に直接的かつ重大な被害が生ずる具体的な危険が存在するといえる場合に認められると解される。 当該発電用原子炉施設が確保すべき安全性については、社会通念を基準とし20て判断するべきであるところ、原子炉等規制法は、発電用原子炉施設について事故の発生を防止し、万が一重大な事故が生じた場合でも放射性物質が異常な水準で当該発電用原子炉施設の外へ放出されるような災害が起こらないようにするため(同法1条)、発電用原子炉の設計から運転までの各段階における原子力規制委員会による安全性の審査を定め、既に許認可を得た発電用原子炉施設25についても、原子力規制委員会が最新の知見に基づき定める新基準への適合を77義務付けていること(前記第3の3(3)イ)からすれば、原子力規制委員会が策定した安全性の基準は、社会通念上求められる程度の安全性を具現化したものであるといえ、原子力規制委員会が同基準に適合するものとして安全性を認めた発電用原子炉施設は、当該審査に用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、又は当該発電用原子炉施設が当該具体的審査基準に適合するとした原子5力規制委員会の判断に不合理な点が認められない限り、前記の安全性を具備するものというべきである。 そして、一般に、被保全権利の主張疎明責任は債権者側が負うものと解されるから、本件発電所が前記の安全性を欠き、債権者らの生命、身体及び健康を侵害する具体的危険が存することは、本件発電所の運転差止めを求める債権者10らが主張、疎明すべきである。ただし、前記のような規制体系の下で当該発電用原子炉を設置、運用する事業者である債務者は、原子力規制委員会が策定した審査基準の内容が合理的であるか否か及び原子力規制委員会が示した発電用原子炉施設に係る審査基準への適合性判断が合理 で当該発電用原子炉を設置、運用する事業者である債務者は、原子力規制委員会が策定した審査基準の内容が合理的であるか否か及び原子力規制委員会が示した発電用原子炉施設に係る審査基準への適合性判断が合理的であるか否かについての専門技術的な知見及び資料を十分に保有していると認められることからすれば、15債務者の設置、運用する本件発電所が具体的審査基準に適合する旨の判断が原子力規制委員会により示されている本件においては、まず、債務者において、当該具体的審査基準に不合理な点のないこと、及び、本件発電所が当該具体的審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断について、その調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落がないなど、不合理な点がないことを、20相当の根拠、資料に基づいて主張、疎明する必要があり、債務者がこの主張疎明を尽くさない場合には、前記の具体的危険が存在することが事実上推認されると解すべきである。 他方、債務者が前記の主張、疎明を尽くした場合には、債権者らにおいて、本件発電所の安全性に欠ける点があり、債権者らの生命、身体等の人格的利益25が侵害される具体的危険が存在することについて、主張、疎明する必要がある78というべきである。 そこで、以下においては、原子力規制委員会が本件発電所の審査に用いた具体的審査基準に不合理な点がないか否か、及び、原子力規制委員会のした適合性判断について、その調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落がないなど不合理な点がないか、という観点から、債務者が前記の主張、疎明を尽く5しているか否かについて判断していくこととする。 2 争点2(1)ア(判断に当たり考慮すべき事情―高経年化)について(1) 前記第3の5(1)によれば、新規制基準は、発電用原子炉設置者に対し、30年を超え かについて判断していくこととする。 2 争点2(1)ア(判断に当たり考慮すべき事情―高経年化)について(1) 前記第3の5(1)によれば、新規制基準は、発電用原子炉設置者に対し、30年を超えて運転を継続する原子力発電所について、30年目、40年目及び50年目を節目として、それぞれ、評価対象機器・構造物の経年劣化事象10の抽出と健全性評価、耐震安全性等の評価、追加保全策の抽出を行わせ、長期施設管理方針を策定させて、保安規定変更認可についての原子力規制委員会の審査を受けさせることを内容とする高経年化対策に関する規制を設けていること、40年を超える運転期間の延長について、新規制基準に定める特別点検の実施や、高経年化技術評価と同内容の劣化状況評価を行わせ、長期15施設管理方針を策定させて、原子力規制委員会による運転期間延長認可処分を受けた場合に限り運転期間の延長が認められることを内容とする規制を設けていること、債務者はこれらの規制の内容を踏まえた対応を行っていることが認められるところ、本件各疎明資料からは、これらの債務者の対応や、保安規定変更認可処分及び運転期間延長認可処分における原子力規制委員会20の判断が不合理なものであるとうかがわせる事情は認められない。原子力発電所の高経年化等については、新規制基準において特別の定めが設けられ、本件発電所もその要求を充たしていることを踏まえると、本件発電所が平成28年11月30日で運転開始後40年を経過し、現在46年目であるとしても、そのことから、本件発電所において重大事故が生ずる具体的危険性が25あるとは認められないというべきである。 79(2)債権者らの主張についてア 中性子照射脆化評価について(ア) 債権者らは、債務者が用いたJEAC4201‐2007シリーズに が25あるとは認められないというべきである。 79(2)債権者らの主張についてア 中性子照射脆化評価について(ア) 債権者らは、債務者が用いたJEAC4201‐2007シリーズによる脆化予測法が基礎とする反応速度式には誤りがある、また、同式が経験式であるとしても、パラメータ数が常識を超えて多いため理解が困5難な式になっており、問題がある旨主張する。 しかし、疎明資料(甲102、103、乙230、234〔8、9頁〕、236〔3、4頁〕、237〔25~29頁〕、238~240)によれば、①平成23年11月から平成24年7月にかけて原子力安全・保安院が行った高経年化技術評価に関する意見聴取会において、外部有識者10から「反応速度式の拡散係数Dについては2乗でなく1乗にすべきである。」との意見が出されたことを踏まえて議論がされ、「JEAC4201で採用された脆化予測モデルは複雑な物理現象の基礎過程を記述するものではなく、脆化に効くクラスターが形成されるまでの複雑なプロセスを簡単な項により近似するために考えられたものであり、誤りではな15い。」などの意見も出され、学協会による更なる検討を要するものの、JEAC4201による脆化予測法には保守的に予測を行う仕組みが組み込まれていることなどから、直ちにJEAC4201による規制を見直す必要はないとの結論に至ったこと、②その後、原子力規制委員会において、専門家から出された債権者らの主張と同趣旨の意見書も踏まえて20更にこの点を議論し、平成27年10月に取りまとめたJEAC4201〔2013年追補版〕の技術評価結果及びその取りまとめの際に募集した意見に対する回答において、JEAC4201〔2013年追補版〕の脆化予測法はJEAC4201から予測式の基となるモデル式( 201〔2013年追補版〕の技術評価結果及びその取りまとめの際に募集した意見に対する回答において、JEAC4201〔2013年追補版〕の脆化予測法はJEAC4201から予測式の基となるモデル式(基本モデル式)を変更したものではないとの前提で、「2013年追補版の予25測式は、300点を超えるデータを基に最適化されていることから、基80本モデル式を工学的な多項近似式であると捉えて差し支えないと認識し、関連温度移行量の予測が適切であることなどについて技術評価を行い、規制に適用可能であると判断した。」とし、技術基準規則解釈中に位置付けることができるとされたことのほか、③JEAC4201〔2013年追補版〕において、ΔRTNDT予測値を保守的に設定するためのマー5ジンの値が、JEAC4201よりも大きく設定されていることが認められる。このような有識者らの議論や、その後の原子力規制委員会における技術評価の内容等を踏まえると、JEAC4201‐2007シリーズの関連温度の上昇値の予測式が直ちに不合理なものであるとはいえないから、債権者らの主張は理由がない。 10(イ) 債権者らは、JEAC4206が、破壊靭性の温度移行量(ΔTKIC)と関連温度の上昇量(ΔRTNDT)とが等しいとの仮定の下に、破壊靭性値のばらつきに対して、試験結果の下限値を使用して破壊靭性遷移曲線を設定するが、前記の仮定は成り立っていない旨主張する。 しかし、疎明資料(甲105、乙235〔1、50頁〕、236〔8~1510頁〕、237〔32~46頁〕)によれば、前記の仮定は、国の委託に基づき財団法人発電設備技術検査協会が調査・研究した結果に基づくものであるところ、平成23年11月から平成24年7月にかけて原子力安全・保安院が行った高経年化技術評価に関す 前記の仮定は、国の委託に基づき財団法人発電設備技術検査協会が調査・研究した結果に基づくものであるところ、平成23年11月から平成24年7月にかけて原子力安全・保安院が行った高経年化技術評価に関する意見聴取会において、外部有識者から、前記の仮定について、試験結果の下限値ではなく中央20値をベースにして全体を見ながら遷移曲線を設定する方がよいのではないかとの意見が出され、議論の結果、データに基づく定量的な検証が不足していることなどから、JEAC4206によるPTS評価自体の見直しはされず、学協会における更なる検討を要するものとされたことが認められる。このような経緯からすれば、JEAC4206が直ちに不25合理なものであるということはできず、債権者らの主張は理由がない。 81(ウ) また、債権者らは、JEAC4206は、下限包絡線(破壊靭性遷移曲線)を決める直近の監視試験データが少ないため、測定値が増えてより小さな値が観測された場合には、下限包絡曲線は下方にシフトするので、少数の測定値では破壊靭性値下限を与えるものとはいえない旨主張する。 5しかし、破壊靭性遷移曲線のシフト量(移行量)は、国内の複数の原子力発電所における監視試験結果を含む多数のΔRTNDT実測値を基に策定された脆化予測法を基に求められる「ΔRTNDT計算値」に、一定の余裕(マージン)を加えた値とすることが求められていること(乙225〔附C-4頁〕、227)を踏まえると、債権者らの主張は理由がな10い。 (エ) さらに、債権者らは、債務者がPTS状態遷移曲線を導く過程で用いた重要な熱伝達率の値が、原子力規制委員会に明らかにされないまま審査が行われた旨も主張する。 しかし、疎明資料(乙225〔附C-1~C-3頁〕、233〔8、9、1535頁〕 線を導く過程で用いた重要な熱伝達率の値が、原子力規制委員会に明らかにされないまま審査が行われた旨も主張する。 しかし、疎明資料(乙225〔附C-1~C-3頁〕、233〔8、9、1535頁〕、235〔14、15、78、79、84頁、図3.4-3〕)によれば、債務者は、技術基準規則解釈14条4項に定めるJEAC4206の附属書C及び運転期間延長認可申請運用ガイドに基づきPTS評価を行ったものであるが、この附属書CにおけるPTS評価の手法は、財団法人発電設備技術検査協会の原子炉圧力容器加圧熱衝撃試験実施委20員会で開発された手法をベースに基準化されたものであり、債務者は、PTS評価において、同協会作成の「溶接部等熱影響部信頼性実証試験に関する調査報告書「原子炉圧力容器加圧熱衝撃試験」[総まとめ版]」に記載のPTS状態遷移曲線を用いたものであることが認められ、以上の内容を原子力規制委員会に対して書面で説明したことが認められる。 25そして、同調査報告書には、PTS状態遷移曲線を設定する際の応力解82析のうち熱応力を導くために用いられる熱伝達率の式等がまとめられていること(乙235〔14、15頁〕)からすれば、債務者において、原子力規制委員会に対し、その行ったPTS評価の基礎となる情報を明らかにしたものといえるから、債権者らの主張は理由がない。 (オ) 以上によれば、中性子照射脆化の評価に関する債権者らのその余の主5張を踏まえて検討しても、債務者の行った中性子照射脆化評価及び原子力規制委員会の審査が不合理であったものとは認められない。 イ 「主給水喪失と外部電源喪失」による過酷事故の発生について債権者らは、「主給水喪失と外部電源喪失」が同時に起こる場合、老朽化した装置が正常に機能することは期待できないから、補助給水設 ない。 イ 「主給水喪失と外部電源喪失」による過酷事故の発生について債権者らは、「主給水喪失と外部電源喪失」が同時に起こる場合、老朽化した装置が正常に機能することは期待できないから、補助給水設備への切10替えの失敗による過酷事故の発生の具体的危険がある旨主張する。 しかし、疎明資料(乙19〔添付書類十、10-2-22~10-2-25、10-2-55〕)によれば、債務者は、「主給水流量喪失」事象として、外部電源の喪失等を解析条件とした解析評価を行い、事故初期において、制御棒の作動とともに、補助給水ポンプが自動起動して蒸気発生器の水位を補い、原子炉圧力15及び一次冷却材平均温度を低下、安定させることができることを確認している。さらに、前記第3の2(3)イ、ウ記載のとおり、補助給水ポンプの機能喪失に対しては非常用炉心冷却設備や余熱除去設備を備えるとともに、全交流電源喪失に対しては空冷式非常用発電装置及び電源車等を備えて、前記事象時の炉心損傷防止対策が講じられている。 20そして、前記第3の5(1)イ(ア)及び(イ)のとおり、本件発電所の原子炉その他の設備については、新規制基準が要求する高経年化対策等が実施されていることからすれば、「主給水流量喪失」事象時に本件発電所の機器等が高経年化ゆえに正常に機能することが期待できないというべき根拠は乏しいといわざるを得ない。 25したがって、この点に関する債権者らの主張は理由がない。 83ウ 本件発電所の高経年化に係る債権者らのその余の主張も、高経年化によって本件発電所において重大事故が発生する具体的危険があることを基礎付けるものとは認め難い。 (3) 以上によれば、高経年化に関する債権者らの主張はいずれも採用することができず、本件発電所が運転開始後40年以上経過しているこ 故が発生する具体的危険があることを基礎付けるものとは認め難い。 (3) 以上によれば、高経年化に関する債権者らの主張はいずれも採用することができず、本件発電所が運転開始後40年以上経過していることをもって、5新規制基準が定める高経年化対策以上に、本件発電所の安全性を厳格、慎重に判断しなければならないとする事情は認められないというべきである。 3 争点2(1)イ(判断に当たり考慮すべき事情―耐震安全性の余裕)(1) 前記第3に加え、各項末尾掲記の疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 10ア 債務者は、前記第3の5(2)イのとおり、本件発電所の耐震重要施設について、建物・構築物及び機器・配管系の評価値が、評価基準値を下回ることを確認しているところ、評価値及び評価基準値を設定するに当たって、以下の考慮がされている。 (ア) 評価基準値について、債務者は、原子力規制委員会が工事計画認可申15請の審査時に耐震設計の妥当性を確認するために活用する「耐震設計に係る工認審査ガイド」において「適用可能な規格」として引用される日本電気協会策定の「原子力発電所耐震設計技術指針(JEAG4601-1987)」及び「原子力発電所耐震設計技術指針 重要度分類・許容応力編(JEAG4601・補-1984)」(以下、これらを併せて「J20EAG4601-1987等」という。)に規定された評価基準値を用いているところ、同評価基準値は、材料のばらつきが強度のばらつきとなって耐震安全性の評価に及ぼす影響を考慮するため、材料ごとに破壊実験結果から得られた強度のばらつきを統計的に処理して定められた材料の強度に対して、更に余裕を見込んで保守的に設定されている。 25(イ) 評価値について、債務者は、JEAG4601-1987等を 験結果から得られた強度のばらつきを統計的に処理して定められた材料の強度に対して、更に余裕を見込んで保守的に設定されている。 25(イ) 評価値について、債務者は、JEAG4601-1987等を参照し84て、地震応答解析(前記第5の3(債務者の主張)参照)及び応力解析(同参照)を行って、建物・構築物の耐震壁のせん断ひずみや機器・配管系に生ずる応力値等の評価値を求めているところ、地震応答解析において、原子炉容器等の重要な機器等の応力解析を行う際は、その寸法にばらつきのあることを考慮し、製造上定められた仕様の中の最小の寸法5と設定して、応力が大きくなるようにしている。 また、各階の床に設置されている機器・配管系に生ずる揺れのスペクトル(床応答スペクトル)については、材料や寸法等のばらつきによる剛性のばらつきを考慮するため、基準地震動による応答スペクトルの加速度よりも、個々の機器への入力加速度を大きく設定することによって、10評価値を計算している。 さらに、実際の地震動は特定の方向にかかり続けるものではないが、地震動による最大の力が、機器・配管系にとって厳しい方向に一定してかかり続けると仮定して評価を行っている。 (以上につき、乙112~115、163の1~163の8)15イ 債務者は、電気計装品についても、基準地震動による応答加速度(評価値)が、各々の盤、器具等について加振試験等により機能が維持できることを確認した加速度(評価基準値)を下回ること、あるいは解析による最大発生応力(評価値)が許容応力(評価基準値)を下回ることを確認している(乙223、224)。 20(2) 前記第3の5(2)及び前記(1)によれば、債務者は、新規制基準の定めに従って本件発電所の現在の基準地震動を基にした耐震安全性評価を行ってい とを確認している(乙223、224)。 20(2) 前記第3の5(2)及び前記(1)によれば、債務者は、新規制基準の定めに従って本件発電所の現在の基準地震動を基にした耐震安全性評価を行っていること、同評価においては、機器等の材料や寸法のばらつきが剛性のばらつきを発生させるという事象を考慮するため、保守的に評価基準値や評価値を設定していることが認められる。 25そうすると、このようなばらつきが設備に大きな影響を与える方向で生じ85たとしても安全性が確保される設定がされているといえるから、本件発電所について、耐震安全性の余裕がなく、耐震安全性が確保されていないとはいえないというべきである。 (3) 債権者らは、本件発電所において基準地震動が2度にわたって405ガルから993ガルまで引き上げられていることを耐震安全性の余裕のないこと5の根拠として主張するが、前記第3の5(2)イ(イ)のとおり、債務者は、耐震補強工事を実施した後の設備の状態を前提にして現在の基準地震動に対する耐震安全性評価を行っていることからすると、設計当時の基準地震動がその後に引き上げられたとしても、直ちに本件発電所の安全性を低下させるものとはいえない。 10また、債権者らは、原子力発電所の設計等や、債務者の耐震安全性評価において、「安全率」が設定されていないことを問題にするが、前記(1)アのとおり、新規制基準が使用を認めているJEAG4601-1987等の基準に従った耐震安全性評価において、債権者らが主張する設計時に考慮すべき「不確かさ」は考慮されていることを踏まえると、安全率等を設定していな15いことをもって新規制基準や債務者の耐震安全性評価が不合理であるとはいえず、本件発電所の安全性に問題があるとはいえない。債権者らのその余の主張も、 ることを踏まえると、安全率等を設定していな15いことをもって新規制基準や債務者の耐震安全性評価が不合理であるとはいえず、本件発電所の安全性に問題があるとはいえない。債権者らのその余の主張も、前記判断を左右しない。 (4) 以上によれば、本件発電所の安全性の余裕に関する債権者らの主張はいずれも採用することができないというべきである。 204 争点2(2)ア(新規制基準の合理性及び同基準への適合性―原子炉建屋の変位のおそれのない地盤への設置の有無)について(1) 前記第3に加え、各項末尾掲記の疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア 本件発電所の敷地周辺の地盤の特性についての調査、評価25債務者は、本件発電所の敷地周辺の地盤の特性について、①地震は同じ86場所で繰り返し起こるとの一般的知見があること、②文献調査によれば、中部・近畿地方では、累積変位量の大きな明瞭な活断層が密に発達し、第四紀(約260万年前以降)以前から現在の応力場に組み入れられ、大規模な活構造は内帯全域に発達しているとされていること、③断層模型を用いた断層変位地形の形成過程に関する実験により、震源断層が繰り返し活5動して「成熟」するにつれ、地表の痕跡(地表地震断層)が明瞭になっていくとの結果が得られていること、④債務者が行った地質・地質構造調査によっても、C断層が繰り返し活動した痕跡が確認でき、また、本件発電所の敷地及びその周辺地域に多く分布する花崗岩や美濃―丹波帯中・古生層は、新第3紀(約2300万年前~約260万年前)以前に形成された10比較的堅い岩盤であって、本件発電所の敷地周辺には広範囲にわたり柔らかい堆積物や火山噴出物が厚く分布するところはなく、地下で生じた「ずれ」は地表に現れやすいと評価できたことな 前に形成された10比較的堅い岩盤であって、本件発電所の敷地周辺には広範囲にわたり柔らかい堆積物や火山噴出物が厚く分布するところはなく、地下で生じた「ずれ」は地表に現れやすいと評価できたことなどから、本件発電所の敷地周辺地域は、活断層が繰り返し活動し、活断層の発達過程が成熟した地域であり、調査によって震源断層を明確に把握することのできる地域であると15評価した(乙19〔添付書類六、6-1-8~6-1-22、6-1-202〕、91~95)。 イ 敷地内破砕帯が「将来活動する可能性のある断層等」であるか否かの調査及び評価(ア) 熱水変質作用に着目した評価a 粘土鉱物が熱水変質作用により生成されたものである場合は、熱水20の通り道となりやすい破砕帯やその近傍に粘土鉱物がより多く分布すると考えられるため、債務者は、全ての敷地内破砕帯について、露頭観察、薄片観察(破砕部から採取した試料より作成した薄片を観察し、顕微鏡下での変質の性状、範囲を整理するもの)及び熱水変質作用により化学組成が変化する長石類のEPMA分析(試料に電子線を照射25することで、試料を構成している元素を調べる分析手法)を行ったと87ころ、本件発電所の敷地内において、破砕部及びその近傍ほど、強く熱水による変質を受け、より多くの粘土鉱物が生成されていることを確認した。 また、粘土鉱物が風化作用により生成された場合と熱水変質作用により生成された場合とでは、破砕帯に含まれる粘土鉱物の組合せが異5なることから、債務者は、Ⅹ線回析法(試料にⅩ線を照射することで原子の配列を調べる手法)を用いて、全ての敷地内破砕帯の粘土状破砕部、風化部及び母岩(新鮮岩)の構成鉱物を同定して比較したところ、粘土状破砕部には、母岩に比べ、熱水変質作用により曹長石化する斜長 原子の配列を調べる手法)を用いて、全ての敷地内破砕帯の粘土状破砕部、風化部及び母岩(新鮮岩)の構成鉱物を同定して比較したところ、粘土状破砕部には、母岩に比べ、熱水変質作用により曹長石化する斜長石や粘土鉱物等に変化するカリ長石の割合が少ない一方で、熱10水変質作用により生成される雲母粘土鉱物がスメクタイト及びカオリン鉱物と併せて生成されていること、他方、風化部には、スメクタイトは認められず、ハロイサイトが生成していることを確認した。また、薄片観察により、最新面及び最新ゾーン(最新面を含み、最新面の周囲で活動した影響が及んでいる範囲)を横断する粘土鉱物脈は、顕微15鏡下では光学特性に差が認められず、組織も類似していることを確認し、それらが同一の鉱物群で構成されていると評価した。 さらに、債務者は、最新面を横断する粘土鉱物脈が比較的大きく認められるⅡ-S-4破砕帯について、破砕部のEPMA分析を行い、最新ゾーンと最新面を横断する粘土鉱物脈の主成分組成を比較した結20果、両者の主成分構成に違いはなく、XRD分析結果で認められた雲母粘土鉱物とスメクタイトは最新面を跨る粘土鉱物脈全体に混在しているものと考えられると評価した。 これらの粘土鉱物の分布、組合せにより、債務者は、敷地内破砕帯の粘土鉱物は、風化作用ではなく熱水変質作用により生成したもので25あると評価した。 88b 熱水変質作用以降に破砕帯が活動した場合、破砕帯を境に両側の岩盤がずれ動くことで破砕帯を横断する粘土鉱物脈にずれや変形が生ずる。また、熱水作用により破砕帯内部に粘土鉱物が生成された場合、岩盤の亀裂や破砕部に熱水が浸透するため、最新ゾーンの粘土鉱物は網目状に発達し、かつ、熱水の浸透により粘土鉱物が生成されるため5最新面は粘土鉱物で充填され不明瞭 内部に粘土鉱物が生成された場合、岩盤の亀裂や破砕部に熱水が浸透するため、最新ゾーンの粘土鉱物は網目状に発達し、かつ、熱水の浸透により粘土鉱物が生成されるため5最新面は粘土鉱物で充填され不明瞭になるが、繰り返し活動している活断層の最新面は直線性があって明瞭であり、最新ゾーンに層状構造が観察される。そこで、債務者は、全ての敷地内破砕帯について、露頭観察・ボーリングコア観察で断層面を選定し、CT画像観察で三次元的に解析し、薄片観察を実施した結果、最新面を横断する粘土鉱物10脈及び最新ゾーンに存在する粘土鉱物について、粘土鉱物脈が破砕帯の最新面を横断しており、変形していないこと、最新ゾーンは粘土鉱物が網目状に発達したままの状態であり、最新面は粘土鉱物で充填され不明瞭になっていることを確認した。そして、これら二つの観点から、債務者は、敷地内破砕帯が、熱水変質作用による粘土鉱物の生成15以降に活動した痕跡はないと評価した。 c 本件発電所の敷地の花崗岩は、全体的に熱水変質作用により岩石の性質が変化し、敷地内破砕帯及びその周辺の岩石においても、粘土鉱物脈が破砕帯を横断する割れ目に沿って認められる箇所や、破砕帯そのものが熱水の影響を受けて内部に粘土鉱物を生成している箇所が認20められること、また、若狭湾周辺に約260万年前以降に活動した火山はなく、美浜発電所の敷地においてはドレライトが形成された約1960万年前以降の熱水変質作用をもたらすような熱水活動は知られていないことから、債務者は、前記粘土鉱物脈の生成時期は、花崗岩の形成(約6400~6490万年前)やドレライトの貫入(約192560万年前)と同時期の相当程度古い時代であると評価した。そして、89前記bのとおり、敷地内破砕帯が熱水変質作用による粘土鉱物脈の生成後 00~6490万年前)やドレライトの貫入(約192560万年前)と同時期の相当程度古い時代であると評価した。そして、89前記bのとおり、敷地内破砕帯が熱水変質作用による粘土鉱物脈の生成後に活動していないことから、敷地内破砕帯は、少なくとも後期更新世(約12~13万年前)以降に活動したものではないと評価した。 d 債務者は、敷地内破砕帯の粘土鉱物の生成時期が少なくとも後期更新世以降ではないことを明確にするため、本件発電所の基盤岩である5花崗岩、熱水変質作用で生成された敷地内破砕帯の雲母粘土鉱物、破砕部のスメクタイト及びドレライト等の年代分析も行い、その結果、雲母粘土鉱物の年代は約5900万年前であって、花崗岩より多少若い年代であり、花崗岩の冷却過程に相当する年代と考えて矛盾しない(雲母粘土鉱物が花崗岩の冷却過程で生成したと仮定しても矛盾がな10い)と評価した。 (イ) 広域応力場に着目した評価一般に、正断層は、引張応力場において引張方向と断層の走向が直交する場合に、逆断層は、圧縮応力場において圧縮方向と断層の走向が直交する場合に、横ずれ断層は、圧縮応力場又は引張応力場において圧縮15方向又は引張方向から見て断層の走向が斜め横方向である場合に、それぞれ形成されるところ、債務者は、敷地内破砕帯の薄片観察等によって敷地内破砕帯の最新の運動センス(断層面の動いた方向)が引張応力場で形成される正断層センスであることを確認した。他方、債務者は、文献調査により、日本海は、約1500万年前までは引っ張りの力がかか20っていたが、それ以降は圧縮の力がかかっていることを確認したことから、敷地内破砕帯の最新の活動時期は約1500万年前までの可能性が高く、少なくとも後期更新世(約12~13万年前)以降に活動したものとはいえな 、それ以降は圧縮の力がかかっていることを確認したことから、敷地内破砕帯の最新の活動時期は約1500万年前までの可能性が高く、少なくとも後期更新世(約12~13万年前)以降に活動したものとはいえないと評価した。 (以上(ア)、(イ)につき、乙24)25(ウ) 本件発電所周辺の活断層との連動を引き起こすような地質構造上の90関連性の有無の調査債務者は、本件発電所の敷地周辺の地質・地質構造について詳細な調査を実施したところ、本件発電所の周辺の活断層と敷地内破砕帯との関連性を示す地質構造は確認されなかったが、原子力安全・保安院から、敷地内破砕帯と白木―丹生断層との地質構造上の関連性が不明瞭である5との指摘を受けたことから、改めて調査を実施した。その結果、リニアメントとは評価できない微弱な線状構造を高精度のレーザー測量等による変動地形判読で抽出し、地表地質調査を実施して白木―丹生断層の活動時期と照らし合わせ、それらが白木―丹生断層から敷地へ派生する活断層ではないことを確認するとともに、仮に白木―丹生断層から敷地へ10向かう断層があるとすれば存在場所として考えられる地形の境界について、ボーリング調査やベイケーブル調査を行い、同境界と敷地内破砕帯との間に、白木―丹生断層と連動を引き起こすような活断層の存在を示唆する地形や地質構造がないことを確認した。(甲27、乙24、95、122)15ウ 破砕帯有識者会合の評価本件発電所の敷地内破砕帯について検討を行った破砕帯有識者会合は、平成27年7月頃、「関西電力株式会社美浜発電所の敷地内破砕帯の評価について」と題する評価書を取りまとめて、原子力規制委員会に報告しているところ、同評価書においては、敷地内破砕帯の構造や鉱物に基づく検20討について、最新の熱水変質作用以降 の敷地内破砕帯の評価について」と題する評価書を取りまとめて、原子力規制委員会に報告しているところ、同評価書においては、敷地内破砕帯の構造や鉱物に基づく検20討について、最新の熱水変質作用以降に活動した明確な証拠を見い出すことはできないこと、また、敷地内破砕帯と白木―丹生断層との地質構造上の関連性の検討について、後期更新世以降の活動を示唆するデータはなく、丹生湾、丹生地区及び敷地内低地においては、白木―丹生断層から敷地に向かう活断層の存在を強く示唆する地形や地質構造は認められないこと、25敷地外破砕帯と敷地内破砕帯は姿勢や活動センスが類似しており、敷地内91外の破砕帯が一連の構造運動を反映して形成されたものであると仮定すれば、敷地内破砕帯についても同様に、後期更新世以降の活動はないと推定されることなどを総合すると、敷地内破砕帯は、後期更新世以降に活動していない可能性が高いと判断すると結論付けられている。 もっとも、同評価書においては、留意点として、粘土鉱物脈が最新面を5横断することの確認に当たっては、粘土鉱物脈が地震時に破砕帯の内部の流動化に伴い発生する注入脈でないことを確認する必要があることや、最新面が粘土鉱物で充填されていることの確認に当たっては、粘土鉱物の充填後に母岩との境界(最新面)が滑っていないことを確認する必要があることが指摘されていたことから、債務者は、前記イ(ア)a のとおり、全ての10敷地内破砕帯の薄片の再観察や、化学的分析(EPMA分析)を行った。 (以上につき、甲27、86、87、乙249の1)エ 本件発電所が「変位が生ずるおそれがない地盤」に設けられているかの評価債務者は、前記アからウまでの調査及び評価の結果を総合して、敷地内15破砕帯は「将来活動する可能性のある断層等」ではな エ 本件発電所が「変位が生ずるおそれがない地盤」に設けられているかの評価債務者は、前記アからウまでの調査及び評価の結果を総合して、敷地内15破砕帯は「将来活動する可能性のある断層等」ではなく、本件発電所は、「変位が生ずるおそれがない地盤」に設けられていると評価した。 オ 原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は、破砕帯有識者会合の評価書において示された留意点及びこれに対する債務者の追加調査の結果等に関する議論も行った上20で、債務者の調査内容、調査結果等を基に、新規制基準(前記第3の5(3)ア)への適合性審査を行い、「債務者の行った各種調査の結果、耐震重要施設を設置する地盤における断層の活動性評価手法等が適切であり、耐震重要施設設置位置に分布する断層は、将来活動する可能性のある断層等には該当せず、設置許可基準解釈別記1の規定に適合していること及び地質ガ2592イドを踏まえていることを確認した。」として、この点に関する新規制基準への適合性を認めた(乙55の2〔31~33頁〕)。 (2) 前記(1)によれば、債務者は、本件発電所の敷地及びその近傍の地盤について変動地形学的調査、地表地質調査を行い、確認された敷地内破砕帯について、破砕部の粘土鉱物脈との接触関係や運動センス等に着目した検討を行い、5化学的手法その他の手法によりその裏付け調査を行うなど、複数の手法を用いて総合的な検討を行った上で、本件発電所の敷地内破砕帯が将来活動する可能性のある断層等ではないと評価したものであるところ、本件各疎明資料からも、その調査手法に不合理な点は見当たらない。 (3)ア 債権者らは、熊本地震においては主断層帯から広範囲で多数の副断層等10が出現したこと、副断層等の活動性は主断層の活動性に比べて相対的に低いため、後期 法に不合理な点は見当たらない。 (3)ア 債権者らは、熊本地震においては主断層帯から広範囲で多数の副断層等10が出現したこと、副断層等の活動性は主断層の活動性に比べて相対的に低いため、後期更新世以降だけを活動性判断のスクリーニング期間とするのでは不足があるとの見解が出されていることなどを指摘し、これらの熊本地震で得られた新知見を踏まえれば、設置許可基準規則3条3項の要求を、後期更新世以降のみの活動性で判断する解釈別記1第3条3項は不合理で15ある旨主張する。 しかし、熊本地震において事前に把握されていなかった断層が出現したのは、その大半が沖積地内にあり、変動地形学的手法が適用しにくかったからである旨指摘されているところ(甲29)、前記(1)アによれば、本件発電所の敷地周辺地域は、活断層の発達過程が成熟し、調査によって活断20層を把握しやすい地域であると認められるから、地盤の特性が異なる上、前記(1)イによれば、債務者は、主断層として活動するか副断層等として活動するかを問わず、本件発電所の敷地内破砕帯の活動性について詳細な調査を行って敷地内破砕帯の活動性について評価しているのであるから、本件発電所において、熊本地震と同様の地震発生状況になるとはいえない。 25また、債権者らが引用する論文(甲28、29)を含めて本件各疎明資料93からも、熊本地震において、後期更新世以降に活動していなかった断層が活動したことを具体的に示す事情は認められない。したがって、熊本地震の発生状況を前提に、解釈別記1第3条3項が不合理であるとする債権者らの主張は理由がない。 イ 債権者らは、破砕帯有識者会合の評価書の「敷地内破砕帯は後期更新世5以降に活動していない可能性が高いと判断する。」との結論は明確なものではなく、敷地内破砕帯が 者らの主張は理由がない。 イ 債権者らは、破砕帯有識者会合の評価書の「敷地内破砕帯は後期更新世5以降に活動していない可能性が高いと判断する。」との結論は明確なものではなく、敷地内破砕帯が後期更新世以後に活動していないと断定するだけの根拠がない以上、「将来活動する可能性のある断層等」と評価されるべきである旨主張する。 しかし、債権者らが指摘する破砕帯有識者会合の第4回会合において、10有識者らから敷地内破砕帯の後期更新世以降の活動を示唆する指摘はなく、有識者らは、敷地内破砕帯位置に後期更新世以降の堆積物(上載層)がないことから、上載層との関係から活動性を判断する手法を用いることができないことを述べる文脈において、「後期更新世以降活動していないと確実に言い切れるところではない。」、「こういう破砕帯の第四紀後期の15活動性を非常に高い確度で明らかにするのは難しい。」、「破砕物質の調査からは後期更新世以降の活動の可能性は明確に否定することは現時点ではできていない。ただし、否定できていないからといってすぐさま活動性があるということを言いたいのではなく、活動の可能性を積極的に支持する証拠も一方で見つかっているわけではない。上載層がなく、古典的な手20法を用いることができないため、破砕物質に着目するなど難しい手法を導入せざるを得ない。」などと述べたものであり(甲87〔4、17、28頁〕)、同評価書は、そのような本件発電所の敷地内破砕帯の活動性の判断の難しさを踏まえつつ、前記(1)ウの事情を総合的に考慮して結論付けたものと解されるから、同評価書の結論が明確なものではなかったということはで25きない。 94また、敷地内破砕帯について後期更新世以後の活動がないと断言できる根拠がない以上、「将来活動する可能性のある断層等 ら、同評価書の結論が明確なものではなかったということはで25きない。 94また、敷地内破砕帯について後期更新世以後の活動がないと断言できる根拠がない以上、「将来活動する可能性のある断層等」と評価すべきであるとする点についても、「将来活動する可能性のある断層等」と評価されるのは、各種調査の結果、後期更新世以降の活動が否定できない場合であると解すべきであり、様々な調査を尽くした上で活動の可能性が推定できない5と評価したような場合にまで「将来活動する可能性のある断層等」に当たるとされるものではないと解される(乙16〔224、225頁〕)。 したがって、これらの点に関する債権者らの主張は理由がない。 ウ 債権者らは、NRCの旧規制指針には、地表断層との距離による原子力発電所の敷地としての不適地の定めがあることを指摘するが、その根拠は10明らかでなく、現行のNRCの規制指針には、このような距離的要件に係る定めはないのであるから、アメリカ合衆国における旧規制指針をもって、我が国の新規制基準の合理性が否定されるとはいえない。 (4) 以上によれば、本件発電所の敷地の地盤の変位に関する債権者らの主張はいずれも採用することができず、債務者が本件発電所の敷地に変位が生ずる15おそれがないと評価し、原子力規制委員会が新規制基準への適合性を認めたことに不合理な点は認められない。 5 争点2(2)イ(ア)(新規制基準の合理性及び同基準への適合性―内陸地殻内地震の震源位置に関する考慮)(1) 前記第3に加え、各項末尾掲記の疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、次20の事実が認められる。 ア 本件発電所の基準地震動策定の検討用地震とされた断層のうち本件発電所の敷地に特に近い断層は、C断層と白木―丹生断層である。C断層は、本件発電 全趣旨によれば、次20の事実が認められる。 ア 本件発電所の基準地震動策定の検討用地震とされた断層のうち本件発電所の敷地に特に近い断層は、C断層と白木―丹生断層である。C断層は、本件発電所の敷地から約3km西側の若狭湾内の沖合い海域に位置し、南北方向に延びる長さ約18kmの逆断層である。傾斜は、東側傾斜で、傾25斜角は水平面から下向きに60度(不確かさを考慮した場合は55度)で95あり、震源断層面は、本件発電所の下に位置する。白木-丹生断層は、本件発電所の敷地から約1km東側の陸域及び海域に位置し、南北方向に延びる長さ約15kmの逆断層である。傾斜は、東側傾斜で、傾斜角は水平面から下向きに60度である。 債務者は、C断層及び白木―丹生断層の地震発生層の上端深さについ5て、当初、4kmと設定したが、原子力規制委員会からの指摘を受けて保守的に設定することとし、いずれも3kmと設定した。 (前記第3の5(4)イ(イ)a①~③、甲24〔スライド61、62〕)イ 新規制基準は、検討用地震の震源が敷地に極めて近い場合について、本件特別考慮規定を設けて、特別の考慮を求めており、これを受けて、地震10ガイドも、その具体的な考慮、検討事項を定めている(前記第3の5(4)ア(イ)a⑤、同b⑦)。 ウ 本件特別考慮規定が設けられた際の地震等基準検討チームにおける議論及び検討の状況は、以下のとおりである。 (ア) 原子力規制委員会は、新規制基準の検討事項の一つに「活断層がサイ15トの至近距離にある場合の不確かさを考慮した地震動評価」を挙げ、地震等基準検討チームの第3回会合において有識者らに諮ったが、その冒頭で、原子力規制庁の担当官から、「背景事情として、敦賀発電所においては基準地震動策定の検討用地震となっている浦底断層の 」を挙げ、地震等基準検討チームの第3回会合において有識者らに諮ったが、その冒頭で、原子力規制庁の担当官から、「背景事情として、敦賀発電所においては基準地震動策定の検討用地震となっている浦底断層の露頭が1号機及び2号機の約250mの至近距離にあるが、同浦底断層など活断層が20サイトの至近距離にある場合の地震動評価には、①現在の断層モデルを用いた手法の枠組みで評価できない事象、効果等が存在する可能性があること、②断層モデルを用いた手法を用いる場合、震源断層モデル等の設定が地震動評価に及ぼす影響が顕著に表れやすいと考えられるため、既存の調査、評価手法による設定の適用性を再検討する必要があること25などの課題がある。」旨の説明がされ、「震源断層モデル等の不確かさの96考慮をより総合的に実施するための考え方か、地震動評価そのものに工学的な判断を加味した考え方を検討してはどうか。」との問題提起がされた。なお、同会合で配布された資料には、前記説明内容と併せて敦賀原子力発電所の地震発生層の評価概要が図示されており、同図には、「上端深さは4kmとされているが、原子力保安院意見聴取会では、地表面ま5で断層が露頭していることから、地震発生層上端深さはもっと浅いのではないかと指摘されている。」旨が付記されていた。(甲32の1〔2、38、39頁〕、122、乙164)(イ) 地震等基準検討チームのB氏は、原子力規制庁の担当官からの説明と問題提起を受けて、「数km以内、例えば1kmとか2km以内のサイト10については、物理モデルとして波動論的な計算手法が破綻する領域になっている。不均一さもどの程度の大きさを持っているのかわからない。」、「それでも安全性を審査しなければならないのであれば、恐らく今我々が持っている手法が破綻をしかけている 計算手法が破綻する領域になっている。不均一さもどの程度の大きさを持っているのかわからない。」、「それでも安全性を審査しなければならないのであれば、恐らく今我々が持っている手法が破綻をしかけているようなところなので、その不確実さを定量的に上乗せして初めて説得できる値を作ることができる。」な15どと述べた。C委員が、「震源に非常に近づいてくると、我々、よくわかっていない領域である。」、「このようなときには実は適切な手法がない。」などとB氏の発言を引き取り、他の有識者からは、厳しい耐震設計を要求すべきである旨の意見が出された。 (甲32の1〔47、49~61頁〕)(ウ) 原子力規制委員会は、地震等基準検討チームの第5回会合において、20「(骨子素案)発電用軽水型原子炉施設の地震及び津波に関わる新安全設計基準〈前回からの修正版〉」と題する書面(以下「骨子素案」という。)を配布した。骨子素案には、「⑦内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、敷地内に活断層の露頭がある等、震源が敷地に近接している場合は、上記⑥の各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳25細に評価し、十分な裕度を考慮して基準地震動Ssを策定すること」と97の本件特別考慮規定の案が記載されていた。(乙165)(エ) 骨子素案に対しては、D氏が、震源として考慮する活断層の露頭やそれに伴う副次的なものが敷地の中にある場合については地盤の安定性の箇所に関連する記述があること、また、基準地震動評価における地震発生層の上端深さを考えると、ここの記述で重要なのは、震源断層が敷地5に近い場合の基準地震動の保守的な評価であるため、「敷地内に活断層の露頭がある等」を削除し、「敷地に近接する」を「敷地に近い」にすべきであるとの意見書を提出し、地震等基準検討 震源断層が敷地5に近い場合の基準地震動の保守的な評価であるため、「敷地内に活断層の露頭がある等」を削除し、「敷地に近接する」を「敷地に近い」にすべきであるとの意見書を提出し、地震等基準検討チームの第6回会合において、「要求しているのは震源断層、基準地震動なので、やはり地震発生層等の深さの関係、そういうことを考えると、地震動の要求事項としては10このような文章の方がよい。」との意見を述べた。(甲89〔44頁〕、124)(オ) 原子力規制委員会は、地震等基準検討チームの第7回会合において、骨子素案を、「⑥内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、震源が敷地に極めて近い場合は、震源として想定する断層の形状及び位置15の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討するとともに、これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、前記⑤の各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源が敷地に極めて近い場合の地震動の特徴に係る最新の知見を踏まえても十分な裕度を20考慮して基準地震動Ssを策定すること」と修正した案を示し(甲88)、その後、若干の修正を経て、本件特別考慮規定が定められた。 エ 債務者は、本件発電所の検討用地震の地震動評価においては、本件特別考慮規定による考慮をしていない。また、本件発電所の設置変更許可申請に係る審査において、原子力規制委員会が本件特別考慮規定の適用に関す25る事項を債務者に指摘したこともない。(乙55の2)98オ 原子力規制庁が令和4年5月26日に実施した第53回技術情報検討会において、最新知見のスクリーニングとして、地震本部が行っている熊本地震の観測記録に基づく強震動予測手法の検証(断層極近傍の 8オ 原子力規制庁が令和4年5月26日に実施した第53回技術情報検討会において、最新知見のスクリーニングとして、地震本部が行っている熊本地震の観測記録に基づく強震動予測手法の検証(断層極近傍の地震動再現性を向上させるために試みた検討手法)について議論がされた際、原子力規制庁原子力規制部の安全規制管理官は、原子力規制委員会の委員から「極5めて近い場合」の距離の意義を問われたのに対し、強震動を発生する場所はどこなのか、地震動評価上の距離は離れているものがあるのでそれをチェックする必要はあるが、大体、地表で1kmくらいになると検討の対象になる旨や、既に審査を終了している原子力発電所については「極近傍」ではないと判断しており、約200mしか離れていない「敦賀」は対象と10なり、「志賀」は断層調査による強震動発生位置を見極めた上で判断する必要があると考えられる旨述べた(乙259の1〔19頁〕、259の2)。 (2) 本件特別考慮規定は、震源断層が原子力発電所の敷地の至近距離にある場合には、従来からの断層モデル化手法の枠組みで評価できない事象、効果が存在し得ることや、断層モデル等の設定が顕著に地震動評価に影響を与える15と考えられることから、これらによって適正な地震動評価ができないおそれに対処するため、通常要求される不確かさの考慮にとどまらず、震源をモデル化する際の各種要素の設定の妥当性の詳細な検討、その検討結果を踏まえた評価手法の選択、各種不確かさが地震動評価に与える影響のより詳細な評価、極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえるこ20と等を求め、これらに基づき、さらに十分な余裕を考慮した基準地震動を策定することを要求したものであると解される。また、本件特別考慮規定が、その適用範囲を画する定量的な定め 的知見を踏まえるこ20と等を求め、これらに基づき、さらに十分な余裕を考慮した基準地震動を策定することを要求したものであると解される。また、本件特別考慮規定が、その適用範囲を画する定量的な定めをしていないことなどからすれば、本件特別考慮規定の適用の有無については、原子力規制委員会が、中立的な立場から、専門的技術的知見に基づき、本件特別考慮規定が設けられた前記趣旨25等を踏まえながら、個々の検討用地震の震源と当該原子力発電所の敷地との99位置関係等に照らして判断することが前提とされているものと解される。 前記(1)によれば、本件特別考慮規定の策定へ向けた検討が行われた地震等基準検討チームにおいて、検討を行う背景として原子力規制委員会から説明されたのは、活断層の露頭が原子炉から約250mの至近距離にある例であるところ、本件発電所の検討用地震のうち、C断層は、本件発電所の西側約53kmの位置にあり、水平面から60度(又は55度)の角度で東側に傾斜しているため震源断層面は本件発電所の真下に位置するが、震源断層の上端深さは3kmと設定されている。また、白木―丹生断層は、本件発電所の東側約1kmに位置するが、水平面から60度の角度で東側(本件発電所とは逆方向)へ傾斜していることが認められる。このように本件発電所は震源か10ら一定の距離があると認められることに加えて、地震等基準検討チームのその後の議論においても、適用範囲について解釈の指針を示すような明確な議論は行われていないことなどを踏まえれば、C断層や白木―丹生断層を含め、本件発電所の検討用地震について、債務者が「震源が敷地に極めて近い場合」に当たると判断しなかったことが不合理であるとまではいえないというべき15である。 (3)ア 債権者らは、本件特別考慮規定の策定に 所の検討用地震について、債務者が「震源が敷地に極めて近い場合」に当たると判断しなかったことが不合理であるとまではいえないというべき15である。 (3)ア 債権者らは、本件特別考慮規定の策定に至る議論の状況は、B氏が「数km以内、例えば1km、2kmのサイト」と言及して特別な対処の必要性を力説したことで、その後の有識者らの議論は断層が数km以内にあるサイトを念頭に行われたものであったこと、当初、敷地内に活断層が存在20する事例を想定して問題提起をした原子力規制委員会も、有識者らからの意見により、骨子素案を修正して本件特別考慮規定が規定されたことから、C断層及び白木―丹生断層と前記の位置関係にある本件発電所については本件特別考慮規定が適用されるべきである旨主張する。 しかし、前記(1)によれば、地震等基準検討チームにおける本件特別考慮25規定の策定に関する議論は、そもそも、震源が原子力発電所の至近距離に100ある場合の評価手法の在り方を検討事項として行われたものであり、B氏からの発言があった後も、適用範囲に焦点を当てた議論は行われていないのであって、他の有識者らがB氏の述べた距離を前提にしていたとは認め難い。また、骨子素案にあった「敷地内に活断層の露頭がある等」の文言が削除されたのも、「震源断層が敷地に近い場合の基準地震動の保守的な評5価」という同規定の要求事項を適切に表現する観点からであって、適用範囲についての意見を踏まえて修正したものであるとは認められない。したがって、議論の状況、経過を根拠に本件特別考慮規定の適用をいう債権者らの主張は理由がない。 イ また、債権者らは、本件発電所の基準地震動は、最低でも、断層の近傍10で取られた実際の記録の最大値である岩手・宮城内陸地震における一関西観測点の観測値1 いう債権者らの主張は理由がない。 イ また、債権者らは、本件発電所の基準地震動は、最低でも、断層の近傍10で取られた実際の記録の最大値である岩手・宮城内陸地震における一関西観測点の観測値1077ガルを上回るべきであると主張する。 しかし、岩手・宮城内陸地震の震源域近傍の地盤は、上部に火山岩、堆積岩が厚く分布し、顕著な褶曲構造が発達するなど、本件発電所の敷地周辺地域の特徴とは異なる特性を有しているところ(乙92〔90~99頁〕、15前記4(1)ア)、地震動の評価は、検討用地震の震源特性、震源から敷地までの地震波の伝播特性及び敷地周辺の地下構造に基づく増幅特性(サイト特性)を踏まえて行うものであり、地震ごと、地盤ごとに異なるから、それを捨象して、一律に他の地域で観測された地震動を上回る基準地震動を策定することを求めることに合理的な根拠はないというべきである。 20ウ さらに、債権者らは、山田論文における地震動評価のシミュレーション結果も指摘するところ、同シミュレーション結果が「震源の極近傍での地震動の特徴に係る科学的・技術的知見」であるとしても、前記(2)のとおり、本件発電所について本件特別考慮規定を適用すべきであるとはいえないので、債務者においてこのような知見の検討が必要であったとはいえない。 25(4) 以上によれば、本件特別考慮規定の「震源が敷地に極めて近い場合」の該101当性に関する債権者らの主張はいずれも採用することができず、原子力規制委員会が、本件発電所について「震源が敷地に極めて近い場合」に該当すると判断せずに債務者に対して本件特別考慮規定の適用について検討させなかったことが不合理であるとはいえないというべきである。 6 争点2(2)イ(イ)(新規制基準の合理性及び同基準への適合性―使用する経験 せずに債務者に対して本件特別考慮規定の適用について検討させなかったことが不合理であるとはいえないというべきである。 6 争点2(2)イ(イ)(新規制基準の合理性及び同基準への適合性―使用する経験5式の適切性)について(1) 前記第3に加え、各項末尾掲記の疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア 債務者は、応答スペクトルに基づく地震動評価に用いる耐専式に入力する地震の規模(M)を、松田式を使用して震源断層の長さから算出し、断10層モデルを用いた手法による地震動評価において、入倉・三宅式を使用して震源断層の面積から地震の規模(M0)を算出した(前記第3の5(4)イ(ウ)b、同(エ)b②)。 松田式は、松田時彦東京大学地震研究助教授(当時)が、昭和50年に、「活断層から発生する地震の規模と周期について」において、主に断層の15長さが20km(Ⅿ7に相当)から80km(Ⅿ8に相当)までの範囲の国内の内陸で起きた14個の地震の観測記録等を基に経験的、帰納的に導いた地震の規模(マグニチュード、M)と活断層の長さ(L)との関係を示す経験式(logL=0.6M-2.9)である(甲36)。なお、レシピにおいては、活断層長さがおおむね80kmを超える場合は、松田式の20基になったデータの分布より、松田式の適用範囲を逸脱するおそれがあるとされるが、本件の検討用地震の断層長さは80kmを超えていない。 (乙23〔5頁〕、前記第3の5(4)イ(イ)a①)入倉・三宅式は、入倉孝次郎・三宅弘恵(2001)「シナリオ地震の強震動予測」で提案されている震源断層面積(S)と地震規模(モーメント、25M0)との関係を示す経験式であり、過去の地震データから地震の断層面積102や地震規模等の物理量の相互関係を分析した既往 動予測」で提案されている震源断層面積(S)と地震規模(モーメント、25M0)との関係を示す経験式であり、過去の地震データから地震の断層面積102や地震規模等の物理量の相互関係を分析した既往の研究を踏まえ、M0が1025×dyne-cm(=7.5×1018(N・m))以上の地震の場合には、SはM0の1/2乗に比例するとの関係式が成り立つとして求められるものである(甲37)。なお、レシピにおいては、M0が7.5×1018(N・m)以上の場合に入倉・三宅式(M0=(S/4.24×1011)2×10-7((3)式))を用い、それを下回5る場合は、別紙1文献一覧(7)のSomerville et al.(1999)の式(M0=(S/2.23×1015)3/2×10-7((2)式))を用いるものとされているところ、C断層及び白木-丹生断層のM0は、7.0×1018(N・m)及び6.7×1018(N・m)であり、7.5×1018(N・m)をやや下回っているが、債務者は、前記(2)式を用いるよりも、前記(3)式(入倉・三宅式)を適用した場合の方がM0が大きく10なり、保守的な評価となることから、これらについても、入倉・三宅式を適用することとした。(乙23〔5、6頁〕、乙92〔33、36頁〕)イ 地震ガイド(前記第3の5(4)ア(イ)b⑤)において、震源断層のパラメータの設定について最新の研究成果として例示されているレシピは、地震本部が、強震動評価に関する検討結果から、強震動予測手法の構成要素と15なる震源特性、地下構造モデル、強震動計算、予測結果の検証の現状における手法や震源特性パラメータの設定に当たっての考え方を取りまとめたものであり、地震学における最新の知見に基づき、個々の断層で発生する地震によってもたらされる強震動を詳細に 予測結果の検証の現状における手法や震源特性パラメータの設定に当たっての考え方を取りまとめたものであり、地震学における最新の知見に基づき、個々の断層で発生する地震によってもたらされる強震動を詳細に評価する手法である。松田式及び入倉・三宅式は、いずれもレシピにおいて地震規模(モーメント)を20求める関係式として示されている。 そして、別紙1文献一覧(8)の武村(1998)においては、松田式と実際の国内の地震とが整合する旨が記載されている。また、気象庁は、平成15年にマグニチュードの算出方法を改訂し、松田式の元データである14個の地震のマグニチュードも再評価したところ、債務者は、再評価後の元デー25タを松田式を表示したグラフに描き直し、再評価後の元データと松田式と103の偏差は小さくなり、より整合することを確認した。 (以上につき、乙16〔296、297頁〕、23〔1、4、5頁〕、183、184〔224頁〕)ウ 令和4年6月改正前の地震ガイドには、本件ばらつき条項が設けられていたところ(前記第3の5(4)ア(イ)b②)、原子力規制委員会は、「本件ば5らつき条項の第1文は、経験式の適用範囲について十分な検討を求めるものであり、本件ばらつき条項の第2文は、経験式を用いて地震規模を設定する場合の当該経験式の適用範囲を確認する際の留意点として、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、当該経験式の適用範囲を単に確認するのみではなく、より慎重に、当該経験式の前提とされ10た観測データとの間の乖離の度合いまでを踏まえる必要があることを意味しているものである。前記第2文の『経験式が有するばらつき』とは、当該経験式とその前提とされた観測データとの間の乖離の度合いのことである。前記第2文も、地震ガイドの経験式の適 る必要があることを意味しているものである。前記第2文の『経験式が有するばらつき』とは、当該経験式とその前提とされた観測データとの間の乖離の度合いのことである。前記第2文も、地震ガイドの経験式の適用に係る規定としては初出となることから、確認的に、当該経験式の適用範囲を確認する際の留意点を15記載したものである。」と説明していた(乙16〔293~295頁〕)。 なお、本件ばらつき条項第2文は、前記第3の5(4)ア(イ)c(a)のとおり、令和4年6月の地震ガイド改正により、削除された。 エ 解釈別記2は、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価に基づく基準地震動の策定過程に伴う各種の20不確かさについて、適切な手法を用いて考慮することを定め(前記第3の5(4)ア(イ)a④)、これを受けた地震ガイドは、基準地震動策定の基本方針や、各地震動評価における個別の方針として、不確かさの考慮を求めており(前記第3の5(4)ア(イ)b①、⑧、⑨)、不確かさの考慮は、基準地震動策定における基本的な要求事項とされている。 25なお、前記第3の5(4)ア(イ)c(b)の地震ガイドの改正後も、不確かさの104考慮に関する基本的な要求事項は変わっていない。 オ 経験式の有するばらつきの考慮の仕方については、専門家から、以下の意見書が提出されている。 (ア) 原子力安全委員会の「原子力安全基準・指針専門部会 地震・津波関連指針等検討小委員会」(以下「地震等検討小委員会」という。)の委員5であったF氏の意見書(令和3年5月31日付。乙176)には、「決定論的に行う地震動評価においては、使用される関数形も経験的関係も建前上は全て真値として扱われるため、そこから生じる偏差は、観測値としてみれば「ばらつき(偶然 3年5月31日付。乙176)には、「決定論的に行う地震動評価においては、使用される関数形も経験的関係も建前上は全て真値として扱われるため、そこから生じる偏差は、観測値としてみれば「ばらつき(偶然的ばらつき)」であり、評価に組み込むべきものとしてみれば「不確かさ(偶然的不確かさ)」であり、データにはば10らつきがあるので、予測にはその不確かさを考慮するという理論構成になっている。」、「M0‐S関係等に見られる平均値からのばらつきは、あくまで計測や評価を経て求まる(つまり完全な真値とはいえない)地震モーメントや震源断層面積の値の変動幅を指すものとして理解されるべきであり、一方、強震動予測にあたって決定論的評価手法によってこれ15を評価する際には、それは不確かさとして考慮すべきものの一つとして、必要に応じて参照すべき変動の幅として理解されるべきである。」、「よって、地震ガイドがM0‐S関係等だけ『ばらつきも考慮されている必要がある』と記載していることをもって、M0‐S関係等についてのみ不確かさの考慮とは別にばらつきを考慮すべきことを指示したものと解釈す20べきではない。」との内容が記載されている。 (イ) 入倉・三宅式の提案者であり、レシピの策定に関わり、地震等検討小委員会の委員であったG氏の意見書(令和3年5月28日付。乙177)には、「レシピの地震動の保守的な評価のために、地震ガイドでは、不確かさ(ばらつき)を考慮することが必要とされるが、M0‐S関係など、25関係式で結ばれている量は、個々のパラメータ間の関係に科学的に齟齬105が生じないように総合的な検討が必要とされるのであり、地震ガイドの規定の基となった耐震設計審査指針等の改定案を作った地震等検討小委員会における考え方も、様々な震源パラメータにばらつきは当 105が生じないように総合的な検討が必要とされるのであり、地震ガイドの規定の基となった耐震設計審査指針等の改定案を作った地震等検討小委員会における考え方も、様々な震源パラメータにばらつきは当然あるのだから、パラメータを決める際にはその点も考慮して、全体の震源モデルを決めていこうとの趣旨であり、本件ばらつき条項は、M0の値の上乗5せを求める文章ではない。」との内容が記載されている。 (ウ) 地震等検討小委員会の委員として耐震設計審査指針の改訂に関わるとともに、地震等基準検討チームにおいて外部有識者として新規制基準の策定に関与したD氏の意見書(令和3年5月28日付。乙178)には、「レシピの中では、経験式によって算出される値は真値として扱われ10るが、経験式の元になる観測記録のデータ自体にはばらつきがあるため、震源パラメータの設定や基準地震動策定の段階で種々の不確かさが考慮される。」、「不確かさとばらつきを区別して別々に考慮するのではなく、不確かさ(ばらつき)として考慮することが、平成18年の耐震設計審査指針の改訂や、改訂後の同指針等に基づき行われた耐震バックチェッ15クにおける専門家らの共通認識であった。」との内容が記載されている。 カ 債務者は、前記第3の5(4)イのとおり、地震動の評価に当たって、震源断層モデルの基本ケースにおいてC断層など検討用地震の一部につき連動の可能性を考慮して断層の長さを設定したほか、各断層についての上端深さ、地震規模、アスペリティの配置、破壊開始点やC断層についての面積20を、不確かさを考慮して保守的に設定したほか、耐専式の適用において保守的に評価する観点から内陸補正係数を乗じなかった。また、債務者は、不確かさを考慮するケースとして、各断層の短周期レベル、大陸棚外縁~B~野坂断層 慮して保守的に設定したほか、耐専式の適用において保守的に評価する観点から内陸補正係数を乗じなかった。また、債務者は、不確かさを考慮するケースとして、各断層の短周期レベル、大陸棚外縁~B~野坂断層及び安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層の破壊伝播速度、C断層の傾斜角(同傾斜角を55度とすることにより、C断層の断層面積、25地震モーメント、短周期レベル、アスペリティ面積が大きくなる。)につ106いて、地震動が基本ケースより大きくなるような条件を設定した上で地震動評価を行ったほか、甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層と両端の断層の連動可能性を考慮して、地震動評価を行った。 (2) 前記(1)によれば、松田式及び入倉・三宅式は、強震動予測の際に使用することのできる経験式として広く知られており、現在においても一般的な信頼5性を有するものといえる。また、松田式については、最新の知見を基に検証すると、元データとより整合することが認められ、また、他の専門家の研究において、松田式と実際の国内の地震とが整合する旨が報告されている。したがって、これらの経験式が、基準地震動の策定の際に用いられるべき経験式として不適切なものであるとはいえない。 10また、経験式は、多数の地震の平均的な姿を明らかにしたものであるから、当該経験式により算出した値と、その元となった個々の観測データとの間に偏差(ばらつき)が生ずるものであるところ、債務者は、前記(1)カのとおり、各経験式を用いる際に入力するパラメータの設定を含め、支配的パラメータについて各種の不確かさを考慮した条件設定を行った上で、地震動を評価し15ている。そして、このような債務者の地震動の評価は、経験式の有するばらつきの考慮について、地震等検討小委員会や地震等基準検討チームに関与 不確かさを考慮した条件設定を行った上で、地震動を評価し15ている。そして、このような債務者の地震動の評価は、経験式の有するばらつきの考慮について、地震等検討小委員会や地震等基準検討チームに関与した専門家らから提出された意見書(前記(1)オ)の内容に沿った手法であることからすると、本件発電所の基準地震動策定において使用された経験式の用い方が不適切であるとはいえない。 20(3)ア 債権者らは、松田式や入倉・三宅式を用いた場合、経験式の基礎になった観測データのばらつきを考えないと、地震動が顕著な過小評価となるおそれがある旨主張する。 しかし、債務者は、松田式や入倉・三宅式へ代入する値ないしその根拠となる断層の長さ、断層の上端・下端深さ、C断層の面積等を含む各種の25不確かさを考慮した上で地震動評価を行っていることからすると、観測デ107ータのばらつきを考慮していないとしても、地震動評価が顕著な過小評価になるものとはいえない。 イ また、債権者らは、地震ガイドがばらつきの考慮を求めるのは地震規模を求める場面であるのに対し、不確かさの考慮を求めるのは地震動評価の過程の場面であるから、両者の考慮が求められる局面が異なり、松田式や5入倉・三宅式から求められる地震規模に大幅な上乗せをすべきである旨主張する。 確かに、不確かさの考慮とは別に本件ばらつき条項が設けられていることからすると、観測データのばらつきを別途考慮することが求められているようにも思える。しかし、経験式を使用しながらその結果に修正を加え10ることは、経験式の意義を失わせるものともいえ、例えば、入倉・三宅式を使用して地震規模を設定する際に、不確かさを考慮して面積を大きく評価しながら同式によって求められる地震規模に上乗せをすることは、面積の不確かさを二重 義を失わせるものともいえ、例えば、入倉・三宅式を使用して地震規模を設定する際に、不確かさを考慮して面積を大きく評価しながら同式によって求められる地震規模に上乗せをすることは、面積の不確かさを二重に評価することになり、かえって不合理な結果をもたらすことにもなりかねない。したがって、本件ばらつき条項が、経験式から15算出された地震規模それ自体に上乗せを求めているとまではいえないというべきである。 そして、前記(1)オのとおり、地震等検討小委員会や地震等基準検討チームに関与した専門家らから、経験式の元となる観測データのばらつきは地震動評価における不確かさとして考慮するものである旨の意見書が提20出されていることを踏まえると、基準地震動の策定において、不確かさの考慮とは別に観測データのばらつきを考慮していないとしても不合理なものとはいえないというべきである。 (4) 以上によれば、使用する経験式の適切性に関する債権者らの主張はいずれも採用することができない。債務者が行った基準地震動の策定は、地震ガイ25ドの改正に関わらず、本件ばらつき条項に反するものであるとはいえないの108であり、新規制基準への適合性を認めた原子力規制委員会の判断に不合理な点は認められない。 7 争点2(2)イ(ウ)(新規制基準の合理性及び同基準への適合性―繰り返しの地震の考慮)について(1) 債権者らは、熊本地震において、震度7の激震が短時間に2度発生し、25度目の本震で倒壊した家屋も多かったことなどを指摘して、繰り返しの地震の考慮をしていない新規制基準は不合理である旨主張する。 しかし、疎明資料(甲35、52、乙170)によれば、熊本地震は、九州電力株式会社が川内原子力発電所の基準地震動策定において、連動して断層全体が一度にずれることを想 基準は不合理である旨主張する。 しかし、疎明資料(甲35、52、乙170)によれば、熊本地震は、九州電力株式会社が川内原子力発電所の基準地震動策定において、連動して断層全体が一度にずれることを想定した日奈久断層‐布田川断層の一部が順次10破壊されて発生したものであり、2度にわたり断層面全体がずれた場合ではなかったこと、基準地震動策定において想定したマグニチュードは8.1、同発電所に与える影響は100ガル程度であったところ、熊本地震の前震及び本震のマグニチュード(M6.5、M7.3)はこれより小さく、同発電所で観測した最大の揺れも数ガルないし数十ガル程度であったことが認めら15れる。このように、熊本地震の際に原子力発電所に基準地震動相当の地震動が短時間で2度発生する状況が生じたものではないことからすれば、熊本地震の発生状況を根拠として新規制基準の不合理性をいう債権者らの主張は理由がないというべきである。 (2) 債権者らは、本件発電所の周囲には活断層が多数あり、誘発地震の可能性20が現実的にあることなども主張するが、前記4(3)アのとおり、債務者は、熊本地震の震源地域と異なり断層が把握しやすい本件発電所の敷地周辺地域において、詳細な調査を行った上、断層の連動の可能性も考慮して断層の長さの設定や地震動評価を行い(前記第3の5(4)イ(イ)a①、同(4)エ)、前記6のとおり、その余の不確かさも考慮して基準地震動を策定しているのであっ25て、本件発電所について、基準地震動に相当する地震動が短期間内に複数発109生する現実的な危険性があるとはいえないから、債権者らの主張は理由がない。 (3) 以上によれば、繰り返しの地震の考慮に関する債権者らの主張はいずれも採用することはできないというべきである。 8 争点3(1)( 険性があるとはいえないから、債権者らの主張は理由がない。 (3) 以上によれば、繰り返しの地震の考慮に関する債権者らの主張はいずれも採用することはできないというべきである。 8 争点3(1)(避難計画の不備による人格権侵害の具体的危険性)について5(1) 債権者らは、原子力基本法2条2項が原子力利用の安全確保については確立された国際的な基準を踏まえるべき旨を規定しているところ、確立された国際基準であるIAEAの安全基準が深層防護の考え方を踏まえていることからすれば、深層防護の第5レベルである避難計画に不備があるといえる場合には直ちに人格権侵害の具体的危険性についての疎明があるものと認める10べきである旨主張する。 確かに、前記第3の5(5)アのとおり、IAEAの安全基準の一つである「原子力発電所の安全:設計」(SSR-2/1(Rev.1))が、深層防護の考え方(安全に対する脅威から人を守ることを目的として、ある目標を持ったいくつかの障壁である防護レベルを用意し、各々の障壁が独立して有効に15機能することを求めるという考え方)に基づき、独立した5つの防護レベルを複数組み合わせた安全基準を策定しており、我が国の原子力規制委員会が公表した「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」も、設置許可基準規則が前記の深層防護の考え方を踏まえて策定されたものであることを認めていることからすれば、設置許可基準規則が策定したある防護レベ20ルの安全対策を講ずるに当たっては、その前に存在する防護レベルの対策を前提とせず(前段否定)、また、その後に存在する防護レベルの対策にも期待しない(後段否定)ことが求められるものといえる。 しかし、深層防護の考え方の基礎である「前段否定」「後段否定」という概念は、あえて各々を独立した対策 また、その後に存在する防護レベルの対策にも期待しない(後段否定)ことが求められるものといえる。 しかし、深層防護の考え方の基礎である「前段否定」「後段否定」という概念は、あえて各々を独立した対策として捉え、各段階における対策がそれ25ぞれ充実した十分な内容となることを意図したものであることは明らかであ110るから、人格権侵害による被害が生ずる具体的危険が存在するか否かにおいて、第1から第4までの各防護レベルの存在を捨象して無条件に放射性物質の異常放出が生ずるとの前提を置くことは相当でなく、放射性物質の異常放出が生ずるとの疎明を欠くにもかかわらず、第5の防護レベル(避難計画)に不備があれば直ちに地域住民に放射線被害が及ぶ具体的危険があると認め5ることはできない。このことは、仮に第5の防護レベルに不備があること自体に基づいて人格権侵害の抽象的なおそれの疎明があると認めるとすれば、放射性物質放出の抽象的・潜在的な危険性のみをもって本件発電所の運転差止めを認めることとなって相当でないことからも明らかである。 したがって、避難計画の不備を理由に人格権侵害の具体的危険を疎明する10場合においては、その前提として、債権者らが避難を要するような事態(放射性物質が外部に放出される事態)が発生する具体的危険を具体的に疎明する必要があるものと解される。 (2) この点を本件について検討すると、そもそも、債権者らが避難を要するような事態(放射性物質が外部に放出される事態)が発生する具体的危険につ15いて十分な疎明があるとはいえないことは前記2から7までにおいて検討したとおりであるから、この点に関する債権者らの主張は、前記の前提を欠くものであり、避難計画に不備があるか否かについて検討するまでもなく、理由がないものというほかない。 9 から7までにおいて検討したとおりであるから、この点に関する債権者らの主張は、前記の前提を欠くものであり、避難計画に不備があるか否かについて検討するまでもなく、理由がないものというほかない。 9 争点3(2)(本件避難計画の不備の有無)について20(1) 前記8によれば、争点3(2)について判断するまでもなく、債権者らの主張に理由がないことは明らかであるが、なお念のため、債権者らが主張する本件避難計画の不合理性について検討しても、次のとおり、本件避難計画が不合理であると認めることはできないから、いずれにせよ、債権者らの主張は理由がない。 25(2)ア OILに基づく防護措置を実施するまで屋内退避を継続する点111債権者らは、原災指針がOILに基づく防護措置を実施するまで、UPZ(原子力発電所からおおむね半径30km)内の住民につき屋内退避を継続するとしていることから、本件避難計画に不備がある旨主張する。 しかし、前記第3の5(5)イ(ア)のとおり、原災指針は、UPZ内ではPAZ内より放射性物質の濃度が低くなる傾向があるため、屋内退避が有効5な防護措置となることに加えて、避難等のために屋外で行動した場合にはプルーム通過時の放射線被ばくのリスクが高まるおそれがあることから、UPZ内では、放射性物質が放出される前の段階で予防的に屋内退避を実施することで、放射性物質が放出された際の放射線被ばくを低減させることとし、その上で、緊急時モニタリングにより空間放射線量率等を確認し、10OILに応じた一時移転や避難等の防護措置を実施することで、放射線被ばくによる確率的影響のリスクを最小限に抑えることとしたというのであるから、OILに基づく防護措置を実施するまでの間に屋内退避を継続するとしているからといって 等の防護措置を実施することで、放射線被ばくによる確率的影響のリスクを最小限に抑えることとしたというのであるから、OILに基づく防護措置を実施するまでの間に屋内退避を継続するとしているからといって、本件避難計画に不備があるものとはいえない。 15また、原災指針においては、専門的知見を有する原子力規制委員会が、原子力発電所の状況や緊急時モニタリングの結果等を踏まえて屋外退避の必要性を判断し、国の原子力災害対策本部等の指示により、これが段階的に実施されることとされているというのであるから(乙130〔72、73頁〕)、その結果、UPZ内の住民がPAZ内の住民に比べて直ちに20避難開始とならないとしても、不合理とはいえない。 イ 避難先又は避難途上に原子力発電所がある旨を指摘する点債権者らは、避難先又は避難途上に原子力発電所があるために、本件避難計画には不備がある旨主張する。 しかし、前記第3の5(5)イ(イ)のとおり、大飯発電所は美浜発電所から25直線距離で約30km離れており、高浜発電所は美浜発電所から直線距離112で約45kmも離れていることからすれば、美浜発電所の近傍で地震が発生して美浜発電所が安全機能を喪失するような大きさの地震動が生じたとしても、これを生じさせた地震動が大飯発電所や高浜発電所の安全機能を同時に失わせるということはにわかに想定し難いし、これらの発電所が、連続する地震によって同時多発的に安全機能を喪失するおそれがあるこ5とも想定し難いから、本件避難計画に不備があるものとはいえない。 ウ 国道・高速道路の渋滞・通行止めについて債権者らは、地震発生時には、避難経路として想定されている国道や高速道路の渋滞や通行止めが発生する可能性が高いため、緊急時の本件避難計画には不備が 国道・高速道路の渋滞・通行止めについて債権者らは、地震発生時には、避難経路として想定されている国道や高速道路の渋滞や通行止めが発生する可能性が高いため、緊急時の本件避難計画には不備がある旨主張する。 10しかし、前記第3の5(5)イ(ウ)のとおり、福井エリア地域原子力防災協議会における検討を経て確認・了承された「『美浜地域の緊急時対応』のとりまとめについて」によれば、自然災害等によって国道や高速道路の使用ができない場合は、美浜町及び敦賀市は代替経路を設定するとともに、当該道路等の管理者は復旧作業を実施することとされている。また、敦賀15半島(美浜町・敦賀市)の住民は、まずは自家用車等で避難するが、自然災害の発生等により孤立した場合には、放射線防護対策が講じられた施設への屋内退避を実施し、その後、船舶やヘリコプターによって海路及び空路により避難することとされている。加えて、債務者において船舶やヘリコプターを確保し、海路や空路による避難を支援することともされている。 20そうすると、本件避難計画においては、それぞれの地方公共団体に必要となる土砂災害等への対策が行われており、「美浜地域の緊急時対応」では、自然災害の発生をも想定した具体的な対策が執られているといえるため、本件避難計画が不合理であるとはいえない。 エ 車両(放射線からの防護効果がない)での避難を前提としているために25不備があると指摘する点について113債権者らは、車両には放射線からの防護効果があるとはいえないところ、車両での避難を前提としていることから、本件避難計画には不備がある旨主張する。 しかし、前記第3の5(5)イ(エ)のとおり、福井県、滋賀県、岐阜県及び関係市町は、必要となる放射線防護資機材等 での避難を前提としていることから、本件避難計画には不備がある旨主張する。 しかし、前記第3の5(5)イ(エ)のとおり、福井県、滋賀県、岐阜県及び関係市町は、必要となる放射線防護資機材等を備蓄しており、関係市町や5避難先市町から要請があった場合などには、福井県、滋賀県及び岐阜県等と協定を締結している民間企業等を通じて物資を調達するほか、これらの放射線防護資機材等が不足する場合には、債務者を含む原子力事業者が保有する資源(要員、資機材等)を最大限供給するほか、国の原子力災害対策本部が関係省庁を通じて関係業界団体等に物資の調達を要請するとい10うのであるから、これらの補充的な物資の状況をも勘案すると、本件避難計画が車両による避難を前提としていることがうかがわれるとしても、当該避難計画が不合理であると認めることはできない。 オ 屋内退避には倒壊や放射線被ばくの危険があるほか、屋外退避にも放射線被ばくの危険があると指摘している点について15債権者は、屋内退避には倒壊や放射線被ばくの危険があるほか、屋外退避にも放射線被ばくの危険があるから、本件避難計画には不備がある旨主張する。 しかし、疎明資料(乙137〔124~134頁〕)によれば、債務者は、緊急時には、国が設置する緊急時モニタリングセンターの指揮の下、20国、福井県、滋賀県及び岐阜県とともに、モニタリングポスト、可搬型モニタリングポスト、モニタリングカー、可搬型放射線計測装置等により、放射線量等を測定することとされていることが認められるし、また、疎明資料(乙137〔125、132頁〕)によれば、債務者は、緊急時には、国、地方公共団体が実施する緊急時モニタリングの拠点である緊急時モニ25タリングセンター、国の現地対策本部となる原 また、疎明資料(乙137〔125、132頁〕)によれば、債務者は、緊急時には、国、地方公共団体が実施する緊急時モニタリングの拠点である緊急時モニ25タリングセンター、国の現地対策本部となる原子力防災センター(オフサ114イトセンター)、地方公共団体の災害対策本部等に、防護措置に関する協力、事故情報の提供、技術的事項等の支援を行う要員を派遣することとされていることが認められる。そして、これらの態勢が執られることに加えて、避難方法として、前記ウのとおり、空路等による避難も可能とされていることをも勘案すると、屋内退避や屋外退避に放射線被ばく等のおそれ5がある場合には、速やかに放射線被ばく等の危険を回避できるように計画が立てられているものといえる。 そもそも、疎明資料(甲61〔スライド4〕)によれば、木造家屋の場合であっても、放射線の内部被ばくは75%低減されることが認められ、木造家屋への屋内退避であっても、放射線の内部被ばくに対しては効果が10ないとはいえない。また、債権者らは、避難や屋内退避時の累積放射線被ばく量が年間1mSvを超えることを問題視するが、疎明資料(乙161〔16頁〕、162の1及び2)によれば、国際放射線防護委員会(ICRP)及び原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の報告においては、年間100mSv以下の低線量放射線被ばくでは人に関する放15射線リスクの直接的な証拠は存在しないとされていることが認められることをも勘案すると、屋内退避を前提とする避難に不備があるとはいえない。 カ 安定ヨウ素剤の避難者への配布が遅すぎるとの指摘について債権者らは、安定ヨウ素剤を避難者に配布するのが遅すぎるから避難計20画には不備がある旨主張する。 しかし、疎明資料(乙13 安定ヨウ素剤の避難者への配布が遅すぎるとの指摘について債権者らは、安定ヨウ素剤を避難者に配布するのが遅すぎるから避難計20画には不備がある旨主張する。 しかし、疎明資料(乙130〔65頁〕)によれば、原災指針においては、UPZのうち、予防的な即時避難を実施する可能性のある地域や、避難の際に学校や公民館等の配布場所で安定ヨウ素剤を受け取ることが困難と想定される地域等においては、地方公共団体が安定ヨウ素剤の事前配25布を必要と判断する場合は、事前配布を行うことができるとされているこ115とが認められる。 そうすると、地方公共団体が必要と判断すれば避難者は安定ヨウ素剤の事前配布を受けることができるのであって、本件避難計画が不合理であるとはいえない。 キ コロナ禍の避難計画では換気をせざるを得ないとする点について5債権者らは、コロナ禍における避難計画では換気をせざるを得ないため、放射線被ばくのおそれがある点で不備がある旨主張する。 しかし、疎明資料(乙154、155、156)及び審尋の全趣旨によれば、内閣府は、令和2年6月2日、「新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた感染症の流行下での原子力災害時における防護措置の基本的な考10え方について」において、「原子力災害時においては、各地域の緊急時対応等に基づく防護措置と、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく行動計画等による感染防止対策を可能な限り両立させ、感染症流行下での原子力災害対策に万全を期すこととする」との基本姿勢を示した上で、具体的な対応として、「感染症流行下において原子力災害が発生した場合、15感染症や感染の疑いのある者も含め、感染拡大・予防対策を十分考慮した上で、避難や屋内退避等の各種防護措置を行うこととなる 具体的な対応として、「感染症流行下において原子力災害が発生した場合、15感染症や感染の疑いのある者も含め、感染拡大・予防対策を十分考慮した上で、避難や屋内退避等の各種防護措置を行うこととなる」としたこと、内閣府等は、同月8日、「新型コロナウイルス感染症対策に配慮した避難所開設・運営訓練ガイドライン」を策定し、地方公共団体に向けて、避難所における新型コロナウイルス感染症対策の在り方を助言したこと、内閣20府は、同年11月2日に「新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた感染症の流行下での原子力災害時における防護措置の実施ガイドライン」を策定し、関係道府県に対して、訓練の実施等を通じて、同ガイドラインを利活用し、各地域の実情に合わせた避難計画(原子力災害対策)の継続的な検討及び準備を進めていくよう助言したことが、それぞれ認められ、これら25一連の流れの中で、福井県は、「高浜地域の緊急時対応」及び「大飯地域116の緊急時対応」等に基づき、同年8月27日に、新型コロナウイルス感染症の流行中に大飯発電所及び高浜発電所で同時に事故が起きた場合を想定した広域避難訓練を全国で初めて実施し、当該訓練には、内閣府、自衛隊、福井県、小浜市、敦賀市、おおい町、高浜町、美浜町、警察、消防、債務者等、約40機関が参加し、新型コロナウイルス感染症対策を行いな5がら、住民が広域避難訓練等を実施するとともに、地方自治体等が避難所の開設やその運営手順等を確認したことが認められる。 以上の事実を勘案すると、新型コロナウイルス感染が拡大している状況下と防護措置は両立できないものとはいえないから、コロナ禍であることをもって、本件避難計画に不備があるということはできない。 10第7 結論以上によれば、本件発電所の安全性が欠如していることの疎明がある は両立できないものとはいえないから、コロナ禍であることをもって、本件避難計画に不備があるということはできない。 10第7 結論以上によれば、本件発電所の安全性が欠如していることの疎明があるとはいえず、被保全権利の疎明があるとはいえないから、保全の必要性について判断をするまでもなく、債権者らの本件仮処分命令申立ては理由がない。よって、本件申立てをいずれも却下することとし、主文のとおり決定する。 15令和4年12月20日大阪地方裁判所第1民事部裁判長裁判官 井 上 直 哉 裁判官 三 宅 知三郎20 裁判官 太 田 多 恵 117別紙1文献一覧(1) 内山・翠川(2006)内山泰生、翠川三郎「震源深さの影響を考慮した工学的基盤における応答スペクトルの距離減衰式」日本建築学会構造系論文集、606 号、81−88 頁5(2) 片岡他(2006)片岡正次郎ほか「短周期レベルをパラメータとした地震動強さの距離減衰式」土木学会論文集A、62、740-757 頁(3) Abrahamson and Silva(2008)Abrahamson、N.and W.Silva「Summary of the Abrahamson & Silva NGA10Ground-Motion Relations」Earthquake Spectra、Vol.24、67-97 頁(4) 入倉・三宅(2001)入倉孝次郎・三宅弘恵「シナリオ地震の強震動予測」地学雑誌第110 巻、849~875 頁(甲37)(5) 壇ほか(2001)15 24、67-97 頁(4) 入倉・三宅(2001)入倉孝次郎・三宅弘恵「シナリオ地震の強震動予測」地学雑誌第110 巻、849~875 頁(甲37)(5) 壇ほか(2001)15壇一男ほか「断層の非一様すべり破壊モデルから算定される短周期レベルと半経験的波形合成法による強震動予測のための震源断層のモデル化」日本建築学会構造系論文集第545 号、51~62 頁(6) 加藤ほか(2004)加藤研一ほか「震源を事前に特定できない内陸地殻内地震による地震動レ20ベル-地質学的調査による地震の分類と強震観測記録に基づく上限レベルの検討-」日本地震工学会論文集第4 巻第4 号、46~86 頁(乙89)(7) Somerville et al.(1999)Somerville、P.G.ほか「Characterizing crustal earthquake slip modelsfor the prediction of strong ground motion」、Seismological Research25Letters、70、59-80 頁118(8) 武村(1998)武村雅之「日本列島における地殻内地震のスケーリング則―地震断層の影響および地震被害との関連―」地震第2 輯第51 巻、211~228 頁(乙184)以 上 5119(別紙当事者目録及び別紙2から4までは掲載省略)

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