令和4年8月4日判決言渡令和3年(行ケ)第10090号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和4年5月26日判決 原告フマキラー株式会社 同訴訟代理人弁護士高橋元弘碓井允揮同訴訟代理人弁理士前直美 被告アース製薬株式会社 同訴訟代理人弁理士三嶋眞弘堤之達也 飛彈図茂子木ノ村尚也 主文 1 特許庁が無効2020-800014号事件について令和3年6月21日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文第1項と同旨第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は、発明の名称を「噴射製品および噴射方法」とする発明について、平成29年3月31日を国際出願日とする特許出願(特願2018-509670号。優先日平成28年3月31日(以下「本件第1優先日」という。)、同年11月25日(以下「本件第2優先日」という。)、優先権主張国日本国。 以下「本件出願」という。)をし、令和元年6月14日、特許権の設定登録(特 許第6539407号。請求項の数4。以下、この特許を「本件特許」という。)を受けた(甲14、61)。 ⑵ 原告は、令和2年2月14日、本件特許のうち、請求項1ないし3に係る特許について特許無効審 許第6539407号。請求項の数4。以下、この特許を「本件特許」という。)を受けた(甲14、61)。 ⑵ 原告は、令和2年2月14日、本件特許のうち、請求項1ないし3に係る特許について特許無効審判(無効2020-800014号事件。以下「本件審判」という。)を請求した(甲44)。 被告は、同年6月29日付けで本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし3について訂正請求(以下「本件訂正」という。)をした(甲46)。 特許庁は、令和3年6月21日、本件訂正を認めた上で、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年7月1日、原告に送達された。 ⑶ 原告は、令和3年7月30日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載⑴ 設定登録時(本件訂正前)本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は、次 のとおりである(甲14)。 【請求項1】害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、か つ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートか らなる群から選択される少なくとも1の成分であり、前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記 ル、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートか らなる群から選択される少なくとも1の成分であり、前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された、噴射製品。 【請求項2】前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填されたポンプ容器と、前記ポ ンプ容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたアクチュエータとを備えるポンプ製品である、請求項1記載の噴射製品。 【請求項3】害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)を用 いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロ ピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプ ロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30と カルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となり、かつ、前記噴口から30cm離れた 位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう前記害虫忌避組成物を噴射する、噴射方法。 ⑵ 本件訂正後本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は、次のとおりである(以下、請求項の番号に応じて、請求項1に係る発明を「本 件発明1」などといい、本件発明1ないし3を併せて「本件発明」という場合がある。下線部は本件訂正による訂正箇所である。甲46)。 【請求項1】害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であ り、前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロ ピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴 射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/ 離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴 射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/ r15)が、0.6以上となるよう調整され、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整され、粘膜への刺激が低減された、噴射製品。 【請求項2】 前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填されたポンプ容器と、前記ポンプ容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたアクチュエータとを備えるポンプ製品である、請求項1記載の噴射製品。 【請求項3】害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴 射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記 噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となり、かつ、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平 噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となり、かつ、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう前記害虫忌避組成物を噴射し、粘膜への刺激を低減する、噴射方法。 3 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は、別紙審決書(写し)記載のとおりであり、本件訂正を認めた上で、本件発明1ないし3について、原告主張の無効理由1(本件第1優先日前に公然実施をされた、製品名「服にスプレースキンベープミストナチュラル UVカット」のポンプ製品(製造ロット番号「8F2C1A」・包装ロット番号「8G2KA」。甲1、5)(以下「甲1製品」という。)に係る発明を 主引用例とする新規性の欠如)、無効理由2(本件第2優先日前に公然実施をされた、製品名「天使のスキンベープミストプレミアム200mL」のポンプ製品(製造ロット番号「8F881A」。甲5、8)(以下「甲8製品」という。)に係る発明を主引用例とする新規性の欠如)、無効理由3(実施可能要件違反)及び無効理由4(明確性要件違反)は、いずれも理由がないというものである。 このうち、無効理由1の理由の要旨は、次のとおりである。 ⑴ 「公然実施発明1-1」及び「公然実施発明1-3」本件審決は、甲1製品は、本件第1優先日前に、少なくとも「AmazonVine 先取りプログラム」のカスタマーレビュー投稿者に対してそのサンプルが譲渡されていたと認められるとした上で、甲1製品と甲1、2 及び5の記載事項に基づいて、次のとおりの「公然実施発明1-1」及び「公然実施発明1-3」(以下、これらを併せて「公然実施発明1」という。)を認定した。 ア した上で、甲1製品と甲1、2 及び5の記載事項に基づいて、次のとおりの「公然実施発明1-1」及び「公然実施発明1-3」(以下、これらを併せて「公然実施発明1」という。)を認定した。 ア公然実施発明1-1「 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物 を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であり、前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.545質量%含み、前記害虫忌避成分は、p-メンタン-3,8-ジオールであり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組 成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.80であり、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、236.27μmである、噴射製品で あり、前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填された容器と、前記容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたトリガーポンプを備えるポンプ製品である、噴射製品」の発明イ公然実施発明1-3 「 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.545質量%含み、 前記害虫忌避成分は、p-メンタン-3,8-ジオールであり、前記 物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.545質量%含み、 前記害虫忌避成分は、p-メンタン-3,8-ジオールであり、前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.80となり、かつ、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、236.27μmとなる、噴射方法」の発明⑵ 本件発明1と公然実施発明1-1との一致点及び相違点本件審決が認定した本件発明1と公然実施発明1-1との一致点及び相違 点は、次のとおりである。 ア一致点「 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であり、前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下である 成分(ただしグリセリンを除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、前記害虫忌避成分は、p-メンタン-3,8-ジオールであり、前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置にお ける噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上であり前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上である、噴射製品」である点 イ相違点(相違点1)害虫忌避組 あり前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上である、噴射製品」である点 イ相違点(相違点1)害虫忌避組成物について、本件発明1は、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分を含むのに対し、公然実施発明1-1は、揮発抑制成分を含むか明らかでない点 (相違点2)噴射製品について、本件発明1は、噴口から15cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、かつ、 噴口から30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の5 0%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整されているのに対し、公然実施発明1-1は、そのように調整されているか明らかでない点(相違点3)噴射製品について、本件発明1は、粘膜への刺激が低減されたものであるのに対し、公然実施発明1-1は、粘膜への刺激が低減されたものであ るか明らかでない点⑶ 本件発明1と公然実施発明1-1との同一性ア相違点2及び3について(ア) 本件発明1は、害虫忌避成分が配合されている場合における粘膜への刺激の原因について研究した結果、噴射された害虫忌避剤の中には、 皮膚や髪等の適用箇所に付着せずに、適用距離(たとえば噴口から15cmの距離)を超えてさらに離れた位置(たとえば噴口から30cm離れた位置)に到達し、浮遊するものがあること、このような離れた位置では、粒子径は、適用距離における粒子径よりも小さくなる結果、小さくなった粒子は、吸引されやすく粘膜を刺激しやすいこと、そこで、 m離れた位置)に到達し、浮遊するものがあること、このような離れた位置では、粒子径は、適用距離における粒子径よりも小さくなる結果、小さくなった粒子は、吸引されやすく粘膜を刺激しやすいこと、そこで、「適 用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も考慮し、それぞれの位置における粒子径の比が所定の値以上となるよう調整された噴射製品であれば、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺激が低減されることを見出した」ことに基づいて発明されたものであり(【0006】)、「噴口から 15cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、噴口から30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよ う調整された」噴射製品であれば、「粘膜への刺激が低減された、噴射製 品」となることが特定されたものである。 (イ) 他方、公然実施発明1-1あるいは、甲1ないし38のいずれを検討したとしても、害虫忌避組成物の噴霧された粒子径比(r30/r15)に着目して、当該粒子径比(r30/r15)を0.6以上となるように調整し、及び、50%平均粒子径r30に着目して、当該r30が50μm以上 となるように調整することによって、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺激が低減された噴射製品となるという技術的思想は、導き出すこともできないし、また、その技術的思想が、本件第1優先日当時、周知技術であったとも認められない。 それゆえ、公然実 であっても、粘膜への刺激が低減された噴射製品となるという技術的思想は、導き出すこともできないし、また、その技術的思想が、本件第1優先日当時、周知技術であったとも認められない。 それゆえ、公然実施発明1-1が、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分 を配合している場合であっても、粘膜への刺激が低減された噴射製品となるよう、当該粒子径比(r30/r15)に着目し、当該粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるように調整され、及び、当該50%平均粒子径r30に着目し、当該50%平均粒子径r30が50μm以上となるように調整されたものであるとは認められず、それらの技術的思想の観 点から当該粒子径比(r30/r15)及び当該50%平均粒子径r30を測定してみると、粒子径比(r30/r15)が、0.6以上、及び、当該50%平均粒子径r30が50μm以上に該当していたにすぎないものであると認められる。 したがって、公然実施発明1-1は、当該粒子径比(r30/r15)が 0.6以上となるように調整され、及び、当該50%平均粒子径r30が50μm以上となるように調整されることにより、粘膜への刺激が低減された噴射製品であると、認識されていたものとは認められず、公然実施発明1-1にそのような技術的思想が存在したとはいえない。 よって、相違点2及び3は実質的な相違点であるといえる。 イ相違点1について (ア) 本件発明1の「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分」について、本件出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。 甲14)には、「害虫忌避組成物は、上記害虫忌避成分のほかに、噴射後の揮発を抑制するため、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下となる揮発抑制成分を好適に含む。これにより、噴射さ 「本件明細書」という。 甲14)には、「害虫忌避組成物は、上記害虫忌避成分のほかに、噴射後の揮発を抑制するため、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下となる揮発抑制成分を好適に含む。これにより、噴射された害虫忌避組成物は、 揮発が抑制され、粒子径が小さくなりにくい。揮発抑制成分は特に限定されない。一例を挙げると、揮発抑制成分は…水からなる群から選択される少なくとも1の成分である。揮発抑制成分としてこれらの成分が含有される場合、噴射された害虫忌避組成物は、揮発がより抑制されやすく、適用箇所を超えた範囲(たとえば噴口から30cm離れた位置)に まで噴射された場合であっても、粒子径が小さくなりにくい。」(【0014】)、「…揮発抑制成分の含有量は、害虫忌避組成物中、10質量%以上であることが好ましく…。揮発抑制成分の含有量が10質量%未満である場合、噴射製品は、揮発抑制成分を含有させることによる効果が充分に発揮できない可能性がある。」(【0015】)と記載されている。 それゆえ、害虫忌避組成物に、「20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含」ませれば、噴射された害虫忌避組成物は、揮発がより抑制されやすく、適用箇所を超えた範囲である噴口から30cm離れた位置にまで噴射された場合であっても、粒子径が小さく なりにくくなることに基づき、本件発明1は、「害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含」ませることを、発明特定事項としていると理解される。 確かに、公然実施発明1-1には、水が含まれている。しかしながら、 るための揮発抑制成分を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含」ませることを、発明特定事項としていると理解される。 確かに、公然実施発明1-1には、水が含まれている。しかしながら、 公然実施発明1-1を認定する際に検討した甲2には、水を「溶剤」と して添加していることから、本件発明1とは、水の添加目的が異なっており、水が、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分として認識されていたとは認められない。 (イ) そして、前記アで述べたことも踏まえると、「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分を含」ませ(相違点1に係る本件発明1の発明特 定事項)、「粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるように調整され」、及び、「50%平均粒子径r30が50μm以上となるように調整され」ることにより(相違点2に係る本件発明1の発明特定事項)、「粘膜への刺激が低減された、噴射製品」(相違点3に係る本件発明1の発明特定事項)となるということは、一体の技術的思想をなすものと理解される。 この観点からも、公然実施発明1-1において、水が含まれているからといって、当該水が、「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分」として作用し、「粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるように調整され」、及び、「50%平均粒子径r30が50μm以上となるように調整され」ることにより、「粘膜への刺激が低減された、噴射製品」となる という技術的思想が認識されていたとは認められない。 また、甲1ないし38のいずれを検討しても、公然実施発明1-1に水が含まれることについて、このような技術的思想が認識されていたことを裏付けるものはない。 (ウ) そうすると、相違点1も、実質的な相違点といえる。 討しても、公然実施発明1-1に水が含まれることについて、このような技術的思想が認識されていたことを裏付けるものはない。 (ウ) そうすると、相違点1も、実質的な相違点といえる。 ウまとめ以上より、本件発明1は、公然実施発明1-1と同一であるとはいえないから、本件第1優先日前に公然実施された発明であるとはいえない。 ⑷ 本件発明2について本件発明2は、本件発明1を直接引用し、さらに、ポンプ容器やアクチュ エータを備えることで限定していることから、本件発明2についても、前記 ⑵及び⑶で述べたことが該当するため、同様に、本件第1優先日前に公然実施された発明であるとはいえない。 ⑸ 本件発明3と公然実施発明1-3との一致点及び相違点本件審決が認定した本件発明3と公然実施発明1-3との一致点及び相違点は、次のとおりである。 ア一致点「 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する方法であり、前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下である 成分(ただしグリセリンを除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、前記害虫忌避成分は、p-メンタン-3,8-ジオールであり、前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径 比(r30/r15)が、0.6以上であり、かつ、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上である、前記害虫忌避組成物を噴射する、噴射方法」である点イ相違点 以上であり、かつ、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上である、前記害虫忌避組成物を噴射する、噴射方法」である点イ相違点 (相違点1)害虫忌避組成物について、本件発明3は、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分を含むのに対し、公然実施発明1-3は、揮発抑制成分を含むか明らかでない点(相違点2) 噴射方法について、本件発明3は、噴口から15cm離れた位置におけ る50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となり、かつ、噴口から30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう噴射する方法であるのに対し、公然実施発明1-3は、そのように噴射しているか明らかでない点 (相違点3)噴射方法について、本件発明3は、粘膜への刺激を低減するのに対し、公然実施発明1-3は、粘膜への刺激を低減するか明らかでない点⑹ 本件発明3と公然実施発明1-3との同一性公然実施発明1-3は、甲1に、公然実施品1について「衣類から約10 cm離し、衣類にまんべんなくスプレーしてください」と、その使用方法が説明されていることに基づき、認定されたものであるから、物の発明である公然実施発明1-1と方法の発明である公然実施発明1-3とは、発明のカテゴリーが異なるものの、両発明から把握される技術的事項に変わりはないといえるので、本件発明3と公然実施発明1-3の相違点1ないし3は、前 記⑵イの本件発明1と公然実施発明1-1の相違点1ないし3と実質的に同じである。 したがって、本件発明3と公然実施発明1-3の るので、本件発明3と公然実施発明1-3の相違点1ないし3は、前 記⑵イの本件発明1と公然実施発明1-1の相違点1ないし3と実質的に同じである。 したがって、本件発明3と公然実施発明1-3の相違点1ないし3についても、前記⑶で述べたことと同様のことがいえるから、本件発明3の技術的思想が認識された噴射方法の発明であるとはいえない。 よって、本件発明3は、本件第1優先日前に公然実施された発明であるとはいえない。 第3 当事者の主張 1 取消事由1(訂正要件の判断の誤り)⑴ 原告の主張 ア訂正の目的の判断の誤り 本件審決は、本件訂正について、①訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「噴射製品」を「粘膜への刺激が低減された、噴射製品」と訂正するものであるが、当該噴射製品は、害虫忌避組成物を充填した物の発明であり、その害虫忌避組成物が有している粘膜への刺激という作用に対し、当該粘膜への刺激を低減したものと、実質的に害虫忌避組成物を充填した物 の発明の作用・用途が、発明の構成として限定されたものと理解することができるから、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」(特許法134条の2第1項ただし書1号)を目的とするものということができる、②訂正事項2は、本件訂正前の請求項3の「噴射方法」を、「粘膜への刺激を低減する、噴射方法」とするものであるが、当該噴射方法は、「害虫忌避組成物 を噴射する噴射方法」の発明であり、その害虫忌避組成物が有している粘膜への刺激という作用に対し、当該粘膜への刺激を低減したものと、実質的に害虫忌避組成物を噴射する方法の発明の作用・用途が、発明の構成として限定されたものと理解することができるから、訂正事項2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものということができる旨 と、実質的に害虫忌避組成物を噴射する方法の発明の作用・用途が、発明の構成として限定されたものと理解することができるから、訂正事項2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものということができる旨判断したが、次 のとおり、本件審決の判断には誤りがある。 (ア) 用途を限定する場合用途限定が発明を特定するための意味を有していると解されるためには、①用途限定が付された発明がその用途に特に適した物や方法を意味する場合に該当するか、又は②いわゆる「用途発明」に該当する必要が ある。 本件明細書の【0006】ないし【0009】に記載されているとおり、本件訂正前の請求項1に記載された構成を有する噴射製品及び本件訂正前の請求項3に記載された噴射方法であれば、「粘膜への刺激が低減され」るとの作用効果が得られるとされており、その他、本件明細書に は、本件訂正前の請求項1に記載された構成を有する噴射製品及び本件 訂正前の請求項3に記載された噴射方法を実施した場合において、「粘膜への刺激が低減され」ない場合について記載はない。すなわち、本件明細書からは、粒子径比(r30/r15)と50%平均粒子径r30とが本件発明の数値範囲に入っている場合には、「粘膜への刺激が低減され」るとの作用効果が得られるとされている。そうすると、本件訂正前の請求項 1に記載された構成を有する噴射製品及び本件訂正前の請求項3に記載された噴射方法に加えて、「粘膜への刺激が低減された」との用途の限定をすることで、その用途に特に適した構造等を付加したものとは解釈されない。 したがって、「粘膜への刺激が低減された」などの訂正事項1及び2は、 用途限定が付された物や方法が、「その用途に特に適した物や方法」を意味し 適した構造等を付加したものとは解釈されない。 したがって、「粘膜への刺激が低減された」などの訂正事項1及び2は、 用途限定が付された物や方法が、「その用途に特に適した物や方法」を意味しているとはいえず、その用途限定が物や方法を特定するための意味を有しているとは認定できない。 また、いわゆる「用途発明」とは、ある物の未知の属性を発見し、この属性により、その物が新たな用途への使用に適することを見いだした ことに基づく発明をいうのであり、機械、器具、物品、装置等には通常適用されないから、本件発明1がいわゆる「用途発明」に該当しないことは明らかである。 したがって、「粘膜への刺激が低減された」などの訂正事項1及び2が用途を限定したものであるとしても、本件訂正は特許請求の範囲の減縮 を目的とするものには該当しない。 (イ) 作用を限定する場合物や方法が固有に有している機能、特性等が請求項中に記載されている場合は、その機能、特性等を示す記載は、その物や方法を特定するのに役に立っていないから、その記載については、その物や方法自体を意 味しているものと認定しなければならない。 前記(ア)のとおり、本件明細書には、本件訂正前の請求項1に記載された構成を有する噴射製品及び本件訂正前の請求項3に記載された噴射方法であれば、「粘膜への刺激が低減され」るとの作用効果が得られるとされていることからすれば、「粘膜への刺激が低減された」との作用は、本件訂正前の請求項1に記載された構成を有する噴射製品及び本件訂正 前の請求項3に記載された噴射方法が有している機能、特性にすぎず、本件訂正前と本件訂正後では発明の内容に変化はないこととなる。 したがって、訂正事項1及び2が作用を限定したものであるとしても、本 前の請求項3に記載された噴射方法が有している機能、特性にすぎず、本件訂正前と本件訂正後では発明の内容に変化はないこととなる。 したがって、訂正事項1及び2が作用を限定したものであるとしても、本件訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。 (ウ) 小括 以上によれば、本件訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとした本件審決の判断は、誤りである。 イ新規事項に関する判断の誤り本件審決は、本件明細書の【0009】、【0023】、【0028】、【0051】、【0052】の記載によれば、訂正事項1及び2は、願書に添付 した明細書、特許請求の範囲内においてしたものといえるから、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項の規定に適合すると判断した。 しかし、本件明細書には、本件訂正前の請求項1に記載された構成を有する噴射製品及び本件訂正前の請求項3に記載された噴射方法を実施し た場合において、更にいかなる構成を採用すると「粘膜への刺激が低減され」る噴射製品及び噴射方法となるかについて記載はない。仮に「粘膜への刺激が低減された」などの訂正事項1及び2によって特許請求の範囲が減縮されたとすれば、「粘膜への刺激が低減され」るための構成等によって限定されることとなるが、そのような構成は、願書に添付した明細書等に 記載した事項の範囲内においてされたものではないから、新規事項の追加 となる。 したがって、本件審決の上記判断には誤りがある。 ⑵ 被告の主張ア訂正の目的の判断の誤りの主張に対し訂正事項1は、害虫忌避組成物を充填した物の発明(本件訂正前の請求 項1)において、その害虫忌避組成物が有している粘膜への刺激という作用に対し、当該粘膜への刺 正の目的の判断の誤りの主張に対し訂正事項1は、害虫忌避組成物を充填した物の発明(本件訂正前の請求 項1)において、その害虫忌避組成物が有している粘膜への刺激という作用に対し、当該粘膜への刺激を低減したものと、実質的に害虫忌避組成物を充填した物の発明の用途又は作用が、発明の構成として限定されたものと理解することができ、また、訂正事項2は、害虫忌避組成物を噴射する噴射方法の発明(本件訂正前の請求項3)において、その害虫忌避組成物 が有している粘膜への刺激という作用に対し、当該粘膜への刺激を低減したものと、実質的に害虫忌避組成物を噴射する方法の発明の用途又は作用が、発明の構成として限定されたものと理解することができるから、訂正事項1及び2は、少なくとも用途又は作用を限定しているものであることが明らかである。 この点に関し、原告は、訂正事項が作用を発明の構成として限定した場合について、物や方法が固有に有している機能、特性等が請求項中に記載されている場合は、その機能、特性等を示す記載は、その物や方法を特定するのに役に立っていないから、その記載については、その物や方法自体を意味しているものと認定しなければならない旨主張する。 しかし、「物が固有に有している機能、特性等が請求項中に記載されている場合」における「その物」とは、化合物そのものを記載しているような場合を指すところ、本件発明1ないし3に係る害虫忌避組成物のような「組成物」は、上記「その物」には当たらないから、原告の主張は失当である。 したがって、本件訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものである とした本件審決の判断に誤りはない。 イ新規事項に関する判断の誤りの主張に対し前記アのとおり、訂正事項1及び2は、本件訂正前の が特許請求の範囲の減縮を目的とするものである とした本件審決の判断に誤りはない。 イ新規事項に関する判断の誤りの主張に対し前記アのとおり、訂正事項1及び2は、本件訂正前の請求項1の「噴射製品」及び本件訂正前の請求項3の「噴射方法」の用途又は作用を限定しているから、本件訂正は、新規事項の追加には当たらない。 したがって、本件訂正が特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するとした本件審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(甲1製品に係る発明(公然実施発明)を主引用例とする本件発明1ないし3の新規性の判断の誤り)(無効理由1関係)⑴ 原告の主張 ア本件発明1の新規性の判断の誤り(ア) 「技術的思想」の認識可能性を本件発明1と公然実施発明1-1の同一性判断の基準とした判断手法の誤り本件審決は、相違点2及び3に関し、本件発明1は、害虫忌避組成物の噴霧された粒子径比(r30/r15)に着目して、当該粒子径比(r3 0/r15)を0.6以上となるように調整し、及び、50%平均粒子径r30に着目して、当該r30が50μm以上となるように調整することによって、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、「粘膜への刺激が低減された噴射製品」となるという技術的思想であると認定した上で、公然実施発明1-1は、当該粒子径比(r30/r1 5)が0.6以上となるように調整され、及び、当該50%平均粒子径r30が50μm以上となるように調整されることにより、粘膜への刺激が低減された噴射製品であると認識されていたものとは認められず、公然実施発明1-1に上記技術的思想が存在したとはいえないから、相違点2及び3は、本件発明1と公然実施発明1-1の により、粘膜への刺激が低減された噴射製品であると認識されていたものとは認められず、公然実施発明1-1に上記技術的思想が存在したとはいえないから、相違点2及び3は、本件発明1と公然実施発明1-1の実質的な相違点である 旨判断した。 しかし、新規性欠如の場面において、技術思想(技術的思想)を認識していたか否かによって公然実施発明との同一性を判断し、他方で、特許権の侵害行為があったかどうかという場面において、技術思想(技術的思想)を認識していたか否かを問題とすることなく、特許発明の技術的範囲に属することを肯定するとすれば、出願日又は優先権主張日以前 から販売されていた製品(公然実施品)に係る発明では特許を無効とすることはできず、他方で、その製品は特許権を侵害するという著しく不合理な結論となる。 そのため、新規性欠如の判断における公然実施品に係る判断は、物又は方法としての同一性を特許請求の範囲の記載に基づいて判断すれば足 り、技術思想(技術的思想)を認識できるか否かは問題としてはならない。 したがって、本件審決の上記判断は、その判断手法において誤りがある。 (イ) 相違点2の認定判断の誤り 本件審決は、本件発明1の「調整され」の用語について、「調整され」た状態を表しているものと理解され、プロダクトバイプロセスクレームであるとは認められないとした上で、甲1製品は、粒子径比(r30/r15)や50%平均粒子径r30が本件発明1の数値範囲内にあるにもかかわらず、「調整され」た状態ではないと判断した。 しかし、噴霧粒子の粒子径比(r30/r15)や50%平均粒子径r30が所定の数値範囲にあるにもかかわらず、「調整され」た状態にはないというためには、「調整」するというプロセスを規定している場合 しかし、噴霧粒子の粒子径比(r30/r15)や50%平均粒子径r30が所定の数値範囲にあるにもかかわらず、「調整され」た状態にはないというためには、「調整」するというプロセスを規定している場合か、「調整」するという実施者の主観的意図の有無で区別する場合かのいずれしかあり得ないが、本件審決は、プロダクトバイプロセスクレームである ことを否定しているから、「調整」するという実施者の主観的意図を要求 する解釈をしているとしか考えられない。しかし、特許発明の要旨認定は客観的に定まるものであって、実施者の主観的意図を問題とする解釈は許されないから、本件審決の「調整され」の解釈には誤りがある。 そして、本件発明1の「調整され」の用語については、本件発明1において規定する数値範囲に収まっていれば足りると解釈すべきであるか ら、甲1製品に係る発明(公然実施発明)は、粒子径比(r30/r15)が、0.80「となるよう調整」され、平均粒子径r30が、236.27μm「となるよう調整され」た「噴射製品」の発明と認定すべきである。 したがって、本件審決における公然実施発明1-1の認定には誤りが あり、ひいては、相違点2は実質的な相違点であるとした本件審決の判断には誤りがある。 (ウ) 相違点1の認定判断の誤り本件審決は、公然実施発明1-1は、本件発明1の「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分」を含むか明らかでない点を相違点1と認 定した上で、①甲1製品において、水は「溶剤」として添加されており、水の添加目的が「噴射後の揮発を抑制するため」のものではないこと、②公然実施発明1-1において、水が含まれているからといって、当該水が、「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分」として作用し、「粒子径比(r30/r 後の揮発を抑制するため」のものではないこと、②公然実施発明1-1において、水が含まれているからといって、当該水が、「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分」として作用し、「粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるように調整され」、及び、 「50%平均粒子径r30が50μm以上となるように調整され」ることにより、「粘膜への刺激が低減された、噴射製品」となるという技術的思想が認識されたとは認められないことの二つの理由により、相違点1は実質的な相違点であると判断した。 しかし、①については、新規性欠如の無効理由の判断における発明の 要旨認定の場面においては、製造者の主観的目的とは無関係に、特許請 求の範囲及び明細書の記載に基づいて、「揮発抑制成分」に該当するか否かを判断すべきである。本件明細書の【0014】には、揮発抑制成分の一例として「水」が記載されており、公然実施発明1-1は、揮発抑制成分たる水を含んでいるから、公然実施発明1-1は、本件発明1の「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分」を含むものである。 次に、②については、前記(ア)のとおり、公然実施発明による新規性欠如の無効理由の判断においては、物又は方法として同一か否かを特許請求の範囲の記載に基づいて判断すれば足り、技術思想(技術的思想)を認識できるか否かは問題としてはならない。 したがって、相違点1は実質的な相違点であるとした本件審決の上記 判断は誤りである。 (エ) 相違点3の認定判断の誤り本件審決は、相違点3に関し、前記(ア)のとおり、相違点2(「調整され」の構成に関する相違点)と併せて、公然実施発明1-1は、粒子径比(r30/r15)及び50%平均粒子径r30が調整されることにより、 粘膜への刺激が低減された噴 とおり、相違点2(「調整され」の構成に関する相違点)と併せて、公然実施発明1-1は、粒子径比(r30/r15)及び50%平均粒子径r30が調整されることにより、 粘膜への刺激が低減された噴射製品」であると認識されていたものとは認められず、公然実施発明1-1に前記の技術的思想が存在したとはいえないとして、相違点3は実質的な相違点である旨判断した。 しかし、新規性欠如の判断における公然実施品に係る判断は、物又は方法としての同一性を特許請求の範囲の記載に基づいて判断すれば足 り、技術思想(技術的思想)を認識できるか否かは問題としてはならないことは、前記(ア)のとおりであり、相違点2が実質的な相違点といえないことは前記(イ)のとおりである。 そして、本件明細書の【0006】ないし【0009】記載のとおり、粒子径比(r30/r15)及び50%平均粒子径r30が所定の数値範囲 にある噴射製品であれば、「粘膜への刺激が低減され」るとの作用効果が 得られるとされており、「粘膜への刺激が低減された」との構成(相違点3に係る本件発明1の構成)は、本件発明1の他の構成に加えて、何らかの構成を付加する限定をする意義を有しないのであるから、そもそも相違点として考慮してはならないものである。 さらに、本件明細書の【0051】によれば、本件発明1の作用効果 である「粘膜への刺激が低減」することは、噴射製品を25℃に保持し、被験者の肩口に15cmの距離から噴射し、刺激感を評価させることで行っているが、甲1製品(公然実施品)は、衣類から約10cm離して、衣類にまんべんなくスプレーするという方法で用いられているから、上記【0051】と同様の状況において、甲1製品による刺激の程度を感 じることができるものである。 そして、 約10cm離して、衣類にまんべんなくスプレーするという方法で用いられているから、上記【0051】と同様の状況において、甲1製品による刺激の程度を感 じることができるものである。 そして、甲1製品は、数値範囲も含めて本件発明1の他の構成を全て満たしているのであるから、当然に、「粘膜への刺激が低減され」るとの作用効果を認識できることは明らかである。 したがって、公然実施発明1-1は、「粘膜への刺激が低減された」と の構成を有しているから、相違点3が実質的な相違点であるとした本件審決の判断は誤りである。 (オ) 被告の予備的主張についてa 被告は、後記のとおり、本件審判の手続には手続上の瑕疵がある旨主張するが、仮に手続上の瑕疵があったとしても、原告がこれを取消 事由として主張しない限り、審理判断の対象とする必要はないから、被告の上記主張は、主張自体理由がない。 b 被告は、後記のとおり、甲1製品について、甲5の実験を行った時点において、その成分組成・濃度の経時的変化等により、粒子径比や粒子径が影響を受けていた可能性を否定できないなどとして公然実施 発明1-1及び1-3の認定を争い、ひいては本件審決認定の相違点 と異なる相違点を主張するものと考えられる。 しかし、それらの相違点が実質的な相違点といえるかについて、本件審決は判断しておらず、また、原告においては、本件審決が具体的に審理判断をしていない内容について本件訴訟において審理判断することを望んでいないから、本件訴訟において審理の対象とする必要は なく、再度審決において審理判断すべきである。 (カ) 小括以上のとおり、本件審決における相違点1ないし3の認定判断には誤りがあり、本件発明1は、甲1製品に する必要は なく、再度審決において審理判断すべきである。 (カ) 小括以上のとおり、本件審決における相違点1ないし3の認定判断には誤りがあり、本件発明1は、甲1製品に係る発明(公然実施発明)と同一の発明である。これと異なる本件審決の判断は誤りである。 イ本件発明2の新規性の判断の誤り本件審決は、本件発明2は、本件発明1を直接引用し、さらに、ポンプ容器やアクチュエータを備えることで限定していることから、本件発明2についても、本件発明1と同様に、本件第1優先日前に公然実施された発明であるとはいえないと判断している。 しかし、公然実施発明1-1を主引用例とする本件発明1の新規性欠如の無効理由に関する本件審決の判断が誤りであることは、前記アのとおりである。また、公然実施発明1-1を主引用例とする本件発明2の新規性欠如の無効理由に関する本件審決の判断についても、公然実施発明1-1の認定及び本件発明2との一致点の認定において誤りがある。 したがって、本件審決の上記判断は誤りである。 ウ本件発明3の新規性の判断の誤り(ア) 本件発明3は、本件発明1と異なり、粒子径比(r30/r15)や50%平均粒子径r30を「調整」するとの文言は特許請求の範囲に規定されていないから、本件発明1と公然実施発明1-1のように形式的にも 相違点を認定することはできない。 また、そもそも、本件審決は、公然実施発明1-3について、粒子径比(r30/r15)や50%平均粒子径r30が本件発明3の数値範囲にある噴射方法であると認定しているのであるから、相違点2が存在しないことは明らかである。 (イ) 公然実施発明1-1と本件発明1の相違点に係る本件審決の判断が いず 発明3の数値範囲にある噴射方法であると認定しているのであるから、相違点2が存在しないことは明らかである。 (イ) 公然実施発明1-1と本件発明1の相違点に係る本件審決の判断が いずれも誤りであることは、前記アのとおりであり、この判断を引用する本件発明3に係る本件審決の判断も誤りである。 (ウ) 以上によれば、本件発明3は第1優先日前に公然実施された発明であるとはいえないとした本件審決の判断は誤りである。 ⑵ 被告の主張 ア本件発明1の新規性の判断の誤りの主張に対し(ア) 「技術的思想」の認識可能性を本件発明1と公然実施発明1-1の同一性判断の基準とした判断手法の誤りの主張に対し原告は、新規性欠如の判断における公然実施品に係る判断は物又は方法としての同一性を特許請求の範囲の記載に基づいて判断すれば足り、 技術思想を認識できるか否かは問題としてはならない旨主張するが、そのような手法は、法の定めるところのものではないから、原告の上記主張は失当である。 (イ) 相違点2の認定判断の誤りの主張に対し仮に甲1製品の粒子径比(r30/r15)や50%平均粒子径r30が、 原告が主張するように本件発明1の調整された範囲に入るとしても、このような一点の値を示すにすぎない甲1製品からは、「粘膜刺激低減のため、揮発抑制成分を用いて、r30/r15及びr30を所定の範囲内に調整する」という技術的思想は把握できないから、本件発明1の「調整され」たものであることを示すことにはならない。 また、本件発明1は、①所定量の揮発抑制成分を含むこと、②粒子径 比(r30/r15)及び粒子径r30が所定の範囲内となるよう調整されたものであること、及び、③これによ らない。 また、本件発明1は、①所定量の揮発抑制成分を含むこと、②粒子径 比(r30/r15)及び粒子径r30が所定の範囲内となるよう調整されたものであること、及び、③これにより粘膜への刺激が低減されることが、一体不可分の重要な技術的思想をなすものであるところ、甲1製品から、このような技術的思想は把握できないので、本件審決の公然実施発明1-1の認定に誤りはない。 したがって、相違点2は実質的な相違点であるとした本件審決の判断に誤りはない。 (ウ) 相違点1の認定判断の誤りの主張に対し原告は、本件明細書の【0014】に、揮発抑制成分の一例として「水」が記載されていることをもって、公然実施発明1-1の「水」と本件発 明1の「揮発抑制成分」とは相違点に当たらない旨主張するが、本件明細書の記載を公然実施発明の解釈・認定のために参照すべきではない。 そして、公然実施発明1-1では、水は「溶剤」として添加されていたのであるから、水が、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分として認識されていたとは認められないし、また、公然実施発明1-1に おいて、水が含まれているからといって、当該水が、「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分」として作用し、「粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるように調整され」、及び、「50%平均粒子径r30が50μm以上となるように調整され」ることにより、「粘膜への刺激が低減された、噴射製品」となるという技術的思想が認識されていたとは認 められない。 したがって、相違点1は実質的な相違点であるとした本件審決の判断に誤りはない。 (エ) 相違点3の認定判断の誤りの主張に対し本件発明1は、実質的に害虫忌避組成物を充填した物の発明の用途又 は作用が、発明の構 は実質的な相違点であるとした本件審決の判断に誤りはない。 (エ) 相違点3の認定判断の誤りの主張に対し本件発明1は、実質的に害虫忌避組成物を充填した物の発明の用途又 は作用が、発明の構成として限定されたものと理解することができるか ら、少なくとも作用を限定しているものであることが明らかである。 そして、本件審決は、甲1製品から認定される公然実施発明が、粒子径比(r30/r15)や粒子径r30が調整されたものであるとは認められないことから、粘膜への刺激についても低減されたものと認識されていたとは認められないと判断したのであって、かかる判断に誤りはない。 したがって、相違点3は実質的な相違点であるとした本件審決の判断に誤りはない。 (オ) 予備的主張仮に本件発明1と公然実施発明1-1が同一の発明であると判断されるのであれば、本件審決における公然実施発明1-1の認定には、次の ような誤りがある。 a 本件審決は、甲15の1ないし3に基づいて、甲1製品について、本件第1優先日前に、少なくとも「AmazonVine 先取りプログラム」のカスタマーレビュー投稿者に対してそのサンプルが譲渡されていたと認められるとした上で、甲1製品が本件第1優先日前 に公然実施されていたと認定した。 しかし、かかる公然実施の理由は、請求人である原告が主張していた甲1製品の全国での店頭での販売とは異なる理由であるから、被請求人である被告に対し、反論する機会が保障されなければならなかったが、本件審判の手続において、そのような反論の機会が与えられる ことなく、本件審決がされた。 したがって、本件審判の手続には、審決の結論に影響を及ぼし得る手続上の瑕疵がある。 b 甲1製品は、それ自 判の手続において、そのような反論の機会が与えられる ことなく、本件審決がされた。 したがって、本件審判の手続には、審決の結論に影響を及ぼし得る手続上の瑕疵がある。 b 甲1製品は、それ自体から「r30/r15」及び「r30」が直接把握できるものでもないから、たとえ、それが譲渡されても、「r30/r15」 や「r30」が公然知られ得る状況にはならなかった。 また、本件発明1の公開前においては、何人も、「r30/r15」や「r30」の意義を知らず、これを知る由もないから、わざわざ甲1製品をその通常の使用方法を逸脱して(例えば、単に空間に吹き付けるなどして)使用し、さらに、噴口から15cmや30cmという距離を設定して、「r30/r15」や「r30」を測定することもないことから すると、甲1製品については、そもそも、「r30/r15」及び「r30」が知られ得る状況というものが想定できない。 さらに、甲1製品は、甲5の実験を行った時点において、その成分組成・濃度の経時的変化等により、粒子径比や粒子径が影響を受けていた可能性を否定できない。 したがって、本件審決における公然実施発明1-1及び1-3の認定には誤りがある。 イ本件発明2の新規性の判断の誤りの主張に対し前記アと同旨ウ本件発明3の新規性の判断の誤りの主張に対し (ア) 本件発明3では、「前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となり、かつ、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう前記害虫忌避 子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となり、かつ、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう前記害虫忌避組 成物を噴射し、」と規定されており、これらの「…となり」、「…となるよう…」との文言の意味するところは、本件発明1の「調整され」と同義である。 したがって、本件審決における認定及び判断に誤りはない。 (イ) 原告は、公然実施発明1-1と本件発明1との相違点に係る本件審決 の判断が誤りであることから、この判断を引用する本件発明3に係る本 件審決の判断も誤りであると主張する。 しかし、前記アで述べたのと同様の理由により、原告の上記主張は失当である。 3 取消事由3(甲8製品に係る発明(公然実施発明)を主引用例とする本件発明1ないし3の新規性の判断の誤り)(無効理由2関係) ⑴ 原告の主張ア本件審決は、甲8製品と甲5、8、10及び29の記載事項に基づいて、次のとおりの「公然実施発明2-1」及び「公然実施発明2-3」(以下、これらを併せて「公然実施発明2」という。)を認定した。 (ア) 公然実施発明2-1 「 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であり、前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.6722質量%含み、 前記害虫忌避成分は、1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートであり、前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15 害虫忌避成分は、1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートであり、前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30 との粒子径比(r30/r15)が、1.16であり、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、271.40μmである、噴射製品であり、前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填された容器と、前記容 器に取り付けられ、前記噴口が形成されたトリガーポンプを備えるポ ンプ製品である、噴射製品」の発明(イ) 公然実施発明2-3「 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.6722質量%含み、前記害虫忌避成分は、1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートであり、前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避 組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、1.16となり、かつ、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、271.40μmとなる、噴射方 法」 r30/r15)が、1.16となり、かつ、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、271.40μmとなる、噴射方 法」の発明イ本件出願は、平成28年3月31日を出願日とする特願2016-71925号(以下「優先権出願1」という。甲11)及び同年11月25日を出願日とする特願2016-229406号(以下「優先権出願2」という。甲12)の2件の特許出願を、優先権主張の基礎として主張する日 本を指定国に含む国際出願である(甲13)。 そして、本件発明1ないし3の要旨となる技術的事項のうち少なくとも、害虫忌避成分を「1−メチルプロピル 2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボキシレート」(イカリジン)とする部分に対応する実施例は、優先権出願1の出願書類(甲11)には記載されておらず、優先権出願2 の出願書類(甲12)において補充されたものである。 しかるところ、本件審決は、本件発明1ないし3の要旨となる技術的事項のうち害虫忌避成分を「1−メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」(イカリジン)とする部分に、優先権出願1を基礎とする優先権主張の効果を認めた上で、害虫忌避成分として、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1 -ピペリジンカルボキシレートを選択した場合の本件発明1ないし3の優先日は、本件第1優先日(平成28年3月31日)であり、甲8製品は、本件第1優先日(同日)より後であって、本件第2優先日(同年11月25日)前に公然実施されていたといえるものであから、甲8製品に係る発明(公然実施発明2)が、本件発明1ないし3の優先日前に公然実施され ていた発明 より後であって、本件第2優先日(同年11月25日)前に公然実施されていたといえるものであから、甲8製品に係る発明(公然実施発明2)が、本件発明1ないし3の優先日前に公然実施され ていた発明であるとは認められないと判断した。 しかしながら、「3-(N-n―ブチル―N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」とイカリジンとでは、これらの害虫忌避成分に対して使用者が感じる粘膜刺激性の相違が存在するにもかかわらず、これを考慮することなく、イカリジンの場合も、優先権出願1の実施例に記載の「3 -(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」と同様に粘膜刺激性が低減されると当業者が理解すると判断したものであるから、その判断は誤りである。 したがって、本件発明1ないし3の要旨となる技術的事項のうち害虫忌避成分をイカリジンとする部分に、優先権出願1を基礎とする優先権主張 の効果は認められない。 ウ本件審決は、公然実施発明2について、①本件発明1と公然実施発明2-1との間には相違点1ないし3があると認定した上で、公然実施発明1と同様に、本件発明1は、本件第2優先日前に公然実施された発明であるとはいえない、②本件発明2は、本件第2優先日前に公然実施された発明 であるとはいえない、③本件発明3と公然実施発明2-3との間には相違 点1ないし3があると認定した上で、公然実施発明1と同様に、本件発明3は、本件第2優先日前に公然実施された発明であるとはいえないと判断した。 しかしながら、前記2⑴で述べたのと同様の理由により、本件審決の判断には誤りがある。 エ以上のとおり、本件審決における公然実施発明2に係る新規性の判断には誤りがある。 ⑵ 被告の主張ア優先権出願1(甲1 たのと同様の理由により、本件審決の判断には誤りがある。 エ以上のとおり、本件審決における公然実施発明2に係る新規性の判断には誤りがある。 ⑵ 被告の主張ア優先権出願1(甲11)の特許請求の範囲及び明細書の記載によれば、当業者であれば、イカリジンについても優先権出願1の実施例に記載の 「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」と同様の処方によれば、粘膜刺激性が低減されるものと理解することができる。 したがって、優先権出願2(甲12)でのイカリジンについての実施例の追加は、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項の追加に は当たらないから、本件発明のうち、害虫忌避成分をイカリジンとする部分についても、その優先日は、本件第1優先日である。 イ原告は、公然実施発明1と同様に、公然実施発明2が本件第2優先日前に公然実施された発明であるとはいえないとした本件審決の判断には誤りがある旨主張する。 しかし、本件審決の判断に誤りがないことは、前記2⑵のとおりである。 4 取消事由4(実施可能要件の判断の誤り)(無効理由3関係)⑴ 原告の主張取消事由1ないし3に係る本件審決の判断を前提とすると、本件発明1の「粘膜への刺激が低減された」との構成は、本件発明1の害虫忌避成分及び 粒子径に関する構成を備えた噴射製品又は噴射方法であっても、粘膜への刺 激が低減されない場合があることを示す構成であるということになる。 しかしながら、本件明細書の【0010】において、本件発明1ないし3を実施するためには害虫忌避成分及び粒子径比を所定のものとすれば足り、害虫忌避成分及び粒子径比以外の構成は、所定の粒子径比の範囲を満たすものであれば特に限定されないと記載され て、本件発明1ないし3を実施するためには害虫忌避成分及び粒子径比を所定のものとすれば足り、害虫忌避成分及び粒子径比以外の構成は、所定の粒子径比の範囲を満たすものであれば特に限定されないと記載されていることから明らかなように、本 件明細書においては、害虫忌避成分及び粒子径(比)以外に、本件発明1ないし3を実施するために必要となる構成は一切開示されていない。 本件第1優先日当時の当業者が、上記害虫忌避成分及び粒子径に関する構成に加えて、いかなる構成を備えれば粘膜への刺激の低減という作用効果を奏することになるのか理解できないため、過度の試行錯誤を要することなく 「粘膜への刺激が低減された」噴射製品又は噴射方法を製造又は使用することは不可能又は困難であったことが明らかである。 したがって、本件発明1ないし3は実施可能要件を満たすものといえないから、これと異なる本件審決の判断には誤りがある。 ⑵ 被告の主張 原告の主張は争う。 5 取消事由5(明確性要件の判断の誤り)(無効理由4関係)⑴ 原告の主張本件発明1の「粘膜への刺激が低減された」との構成のうち、「低減」は相対的な概念であり、何と比較して「低減された」ことを意味するのか不明確 である。 また、前記4⑴のとおり、本件発明1の「粘膜への刺激が低減された」との構成は、本件発明の害虫忌避成分及び粒子径に関する構成を備えた噴射製品又は噴射方法であっても、粘膜への刺激が低減されない場合があることを示す構成であるから、噴射された忌避組成物の粒子径の条件が特定された噴 射製品又は噴射方法が、そうでないものに比べて、粘膜への刺激が低減され たものといえるか否かでその内容を理解することができないことになり、その構成がいかなる構成を意味する された噴 射製品又は噴射方法が、そうでないものに比べて、粘膜への刺激が低減され たものといえるか否かでその内容を理解することができないことになり、その構成がいかなる構成を意味するのか不明確である。 したがって、本件発明1の「粘膜への刺激が低減された」との構成は不明確であるから、本件発明1ないし3は、明確性要件を満たしていない。これと異なる本件審決の判断には誤りがある。 ⑵ 被告の主張原告の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載事項について⑴ 本件明細書(甲14)には、次のような記載がある(下記記載中に引用す る表1ないし3については別紙を参照)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は、噴射製品および噴射方法に関する。より詳細には、本発明は、内容物である害虫忌避組成物が噴射された際の、使用者の鼻や喉等の粘膜 への刺激が低い噴射製品および噴射方法に関する。 【背景技術】【0002】従来、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)を配合した害虫忌避剤が知られている。しかしながら、ディートは、皮膚吸収作用による 安全性の点から、6ヵ月未満の乳児には使用できず、12歳未満は使用回数が制限される。そこで、ディートに代えて、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート等を配合した害虫忌避剤が検討されている(特 許文献1~3)。 【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら、ディートに代わる上記害虫忌避成分の配合された害虫忌避剤は、たとえ 討されている(特 許文献1~3)。 【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら、ディートに代わる上記害虫忌避成分の配合された害虫忌避剤は、たとえばポンプ製品やエアゾール製品として噴射された際に、噴射された粒子が使用者やその周囲の者の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすい。 その結果、使用者等は、粘膜に違和感を感じたり、咳き込んだりしやすい。 なお、従来使用されていたディートでは、上記害虫忌避成分よりも粘膜への刺激が小さい。そのため、ディートの配合された害虫忌避剤では、粘膜刺激に関するこのような課題はそもそも生じにくい。 【0005】 本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、使用者の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、粘膜への刺激が低減された噴射製品および噴射方法を提供することを目的とする。 イ 【課題を解決するための手段】 【0006】本発明者らは、上記害虫忌避成分が配合されている場合における粘膜への刺激の原因について鋭意研究し、以下の知見を得た。すなわち、噴射された害虫忌避剤の中には、皮膚や髪等の適用箇所に付着せずに、適用距離(たとえば噴口から15cmの距離)を超えてさらに離れた位置(たとえ ば噴口から30cm離れた位置)に到達し、浮遊するものがある。このような離れた位置では、粒子径は、適用距離における粒子径よりも小さくなる。その結果、小さくなった粒子は、吸引されやすく粘膜を刺激しやすい。 そこで、本発明者らは、適用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も考慮し、それぞれの位置における粒子径の比 が所定の値以上となるよう調整された噴射製品であれば い。 そこで、本発明者らは、適用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も考慮し、それぞれの位置における粒子径の比 が所定の値以上となるよう調整された噴射製品であれば、粘膜を刺激しや すい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺激が低減され、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。 【0007】上記課題を解決する本発明の噴射製品は、害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射 製品であり、前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の 50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された、噴射製品である。 【0008】また、上記課題を解決する本発明の噴射方法は、害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオ ン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピ いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオ ン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との比(r30/r15)が、0.6 以上となるよう前記害虫忌避組成物を噴射する、噴射方法である。 ウ 【発明の効果】【0009】本発明によれば、使用者の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、粘膜への刺激が低減された噴射製品および噴射方法を提供することができる。 エ 【発明を実施するための形態】【0010】<噴射製品>本発明の一実施形態の噴射製品は、害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品である。 また、本実施形態の噴射製品は、害虫忌避成分として、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分を含む。さらに、本実施形態の噴射製品は、噴口から15cm 離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整されている。なお、 避組成物の50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整されている。なお、本実施形態の噴射製品は、噴射された際の粒子径比が特定の範囲となるよう調整されていることを特徴とする。そのため、 その他の構成(たとえば噴射製品の形状、他の成分および配合、容器内圧等の各種物性等)は、上記粒子径比の範囲を満たすものであればよく、特に限定されない。したがって、以下の詳細な説明のうち、害虫忌避成分および粒子径比以外の構成は、いずれも例示である。 【0011】 (第1の実施形態) 本実施形態では、噴射製品の一態様として、噴射製品がポンプ製品である場合について説明する。本実施形態の噴射製品は、害虫忌避組成物が充填されたポンプ容器と、ポンプ容器に取り付けられ、噴口が形成されたアクチュエータとを備えるポンプ製品である。 【0012】 ・害虫忌避組成物害虫忌避組成物は、ポンプ容器に充填される内容物であり、害虫を忌避するための害虫忌避成分を含む。本実施形態の害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシ エチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分を含む。これら害虫忌避成分は、蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、ナンキンムシ等の衛生害虫に加え、ユスリカ、チョウバエ等の不快害虫も好適に忌避し得る。ところで、これら害虫忌避成分は、一般に、噴射された後に経時的に微粒子化され続けると、使用者やその周囲の者 (以下、使用者等ともいう) え、ユスリカ、チョウバエ等の不快害虫も好適に忌避し得る。ところで、これら害虫忌避成分は、一般に、噴射された後に経時的に微粒子化され続けると、使用者やその周囲の者 (以下、使用者等ともいう)の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすい。その結果、使用者等は、粘膜に違和感を感じたり、咳き込んだりしやすい。なお、このような課題は、他の害虫忌避成分では生じにくく、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオールおよび1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル) -1-ピペリジンカルボキシレートに特有の課題である。しかしながら、本実施形態の噴射製品は、このような粘膜を刺激しやすい成分が含まれる場合であっても、後述するとおり、噴射された際の害虫忌避組成物の粒子径比が特定の範囲となるよう調整されているため、使用者等の粘膜を刺激しにくい。 【0013】 害虫忌避成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、害虫忌避成分の含有量は、害虫忌避組成物中、5質量%以上であることが好ましい。 一方、害虫忌避成分の含有量は、害虫忌避組成物中、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。害虫忌避成分の含有量が5質量%未満である場合、噴射製品は、害虫忌避効果を充 分に発揮できない可能性がある。一方、害虫忌避成分の含有量が50質量%を超える場合、噴射製品は、期待される効力の増加よりも使用感の低下の方が大きくなりやすい。害虫忌避成分は複数の害虫忌避成分を組み合わせて使用するより、単一の害虫忌避成分を使用して5質量%以上とした場合の方が粘膜への刺激が強くなる傾向がある。本実施形態は、単一の害 虫忌避成分としたほうが、より粘膜への刺激感の軽 を組み合わせて使用するより、単一の害虫忌避成分を使用して5質量%以上とした場合の方が粘膜への刺激が強くなる傾向がある。本実施形態は、単一の害 虫忌避成分としたほうが、より粘膜への刺激感の軽減を感じやすい。 【0014】害虫忌避組成物は、上記害虫忌避成分のほかに、噴射後の揮発を抑制するため、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下となる揮発抑制成分を好適に含む。これにより、噴射された害虫忌避組成物は、揮発が抑制され、粒 子径が小さくなりにくい。揮発抑制成分は特に限定されない。一例を挙げると、揮発抑制成分は、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ヤシ油等の植物油、流動パラフィン、水からなる 群から選択される少なくとも1の成分である。揮発抑制成分としてこれらの成分が含有される場合、噴射された害虫忌避組成物は、揮発がより抑制されやすく、適用箇所を超えた範囲(たとえば噴口から30cm離れた位置)にまで噴射された場合であっても、粒子径が小さくなりにくい。 【0015】 揮発抑制成分が含有される場合、揮発抑制成分の含有量は特に限定され ない。一例を挙げると、揮発抑制成分の含有量は、害虫忌避組成物中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。揮発抑制成分の含有量が10質量%未満である場合、噴射製品は、揮発抑制成分を含有させることによる効果が充分に発揮できない可能性がある。 【0016】また、本実施形態の効果を阻害しない限り、害虫忌避組成物は、従来、害虫忌避組成物に配合される 抑制成分を含有させることによる効果が充分に発揮できない可能性がある。 【0016】また、本実施形態の効果を阻害しない限り、害虫忌避組成物は、従来、害虫忌避組成物に配合される任意成分が適宜配合されてもよい。一例を挙げると、任意成分は、上記害虫忌避成分以外の他の害虫忌避成分、上記揮発抑制成分以外の溶剤、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イ オン界面活性剤、ブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤、エデト酸ナトリウム、クエン酸やアスコルビン酸等の安定化剤、タルクや珪酸等の無機粉体、殺菌剤(防黴剤)、消臭剤、芳香剤(香料)、色素、pH調整剤、感触付与剤、UV吸収抑制剤等である。 【0017】 他の害虫忌避成分としては、フェノトリン、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジ-n-プロピルイソシンコメロネート、p-ジクロロベンゼン、ジ-n-ブチルサクシネート、カラン-3,4-ジオール、カプリン酸ジエチルアミド、n-プロピルアセトアニリド、 β-ナフトール、カンファー、植物精油等が例示される。植物精油としては、ユーカリオイル、シトロネラオイル、レモングラスオイル、ゼラニウムオイル、シナモンリーフオイル、ピメントツリーオイル、クローブオイル、タイムオイル等のオイル類、チモール、カルバクロール、オイゲノール、リモネン等の単品のテルペン類が例示される。 【0018】 溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、アセトン、ヘキサン、ジエチルエーテルが例示される。 【0019】・ポンプ容器噴射製品全体の説明に戻り、害虫忌避組成物は、ポ エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、アセトン、ヘキサン、ジエチルエーテルが例示される。 【0019】・ポンプ容器噴射製品全体の説明に戻り、害虫忌避組成物は、ポンプ容器に充填され る。ポンプ容器は、特に限定されない。一例を挙げると、ポンプ容器は、上部に開口が形成された略円筒状の容器である。開口は、害虫忌避組成物を充填するための充填口であり、害虫忌避組成物が充填されたのち、後述するアクチュエータによって閉止される。 【0020】 ポンプ容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、ポンプ容器の材質は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂である。 【0021】・アクチュエータ アクチュエータは、ポンプ容器の開口を閉止するとともに、ポンプ容器内に充填された害虫忌避組成物を噴射するための部材である。アクチュエータは、ポンプ容器内に充填された害虫忌避組成物を取り出すためのバルブ機構と、バルブ機構を作動するためのステム機構と、ステム機構と連動し、バルブ機構によって取り出された害虫忌避組成物を噴射するための噴 射部材とを備える。噴射部材には、害虫忌避組成物を噴射するための噴口が形成されている。また、噴射部材は、使用者に操作されるトリガー部を備える。 【0022】本実施形態の噴射製品は、使用者によってトリガー部が操作されること により、ステム機構およびバルブ機構が作動し、ポンプ容器から害虫忌避 組成物を取り出して、噴射部材の噴口から噴射することができる。噴口から噴射される害虫忌避組成物は、所定の粒子径に調整され、霧状に噴射される。 オ 【0023】本実施形態の噴射製品 物を取り出して、噴射部材の噴口から噴射することができる。噴口から噴射される害虫忌避組成物は、所定の粒子径に調整され、霧状に噴射される。 オ 【0023】本実施形態の噴射製品によって噴射される害虫忌避組成物は、噴口から 15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整されればよく、1.0以上となるよう調整されることが好ましい。なお、本実施形態において、噴口から15cmという距離は、噴射製品を使用する使用者が適用箇所(皮膚や髪等)に噴射する 場合の距離が想定されている。また、本実施形態において、噴口から30cmという距離は、噴射された害虫忌避組成物のうち、適用箇所に付着せずに、さらに離れた位置に到達した際の距離を想定している。このような離れた位置では、従来の害虫忌避組成物は、粒子径が小さくなりやすく、使用者等の粘膜を刺激しやすいと考えられた。しかしながら、本実施形態 の噴射製品は、粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるよう調整されている。そのため、噴射された害虫忌避組成物は、噴口から30cm離れた位置であっても粒子径が維持されたままである。その結果、噴射製品は、粘膜を刺激しやすい上記特定の害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、粘膜への刺激が低減され得る。なお、噴射された害虫忌避組成物 の粒子径および粒子径比(r30/r15)は、レーザー光回折式粒度測定装置(LDSA-1400A マイクロトラック・ベル(株)製)を用いて測定し得る。 【0024】このように、本実施形態の噴射製品は、噴射された害虫忌避組成物の粒 子径比(r30/r15)が0. 00A マイクロトラック・ベル(株)製)を用いて測定し得る。 【0024】このように、本実施形態の噴射製品は、噴射された害虫忌避組成物の粒 子径比(r30/r15)が0.6以上に調整されていればよく、このような 粒子径比を上記範囲に調整する方法は特に限定されない。一例を挙げると、害虫忌避組成物の粒子径比(r30/r15)は、害虫忌避組成物の処方(たとえばそれぞれの成分の種類および含有量、忌避抑制成分の有無および含有量等)、アクチュエータの形状、寸法(たとえば噴口の大きさ、形状等)、または、単位時間当たりの噴射量(噴射速度)、噴射圧等の各種物性が調整 されることにより調整されればよい。一例を挙げると、アクチュエータの形状は、トリガータイプ、フィンガーポンプタイプ等であってもよい。これらのアクチュエータの噴口の大きさは、φ0.1~1.0mmであってもよく、噴口は複数であってもよい。ディップチューブの内径は1~10mmであってもよく、1~5mmが好ましく、1~3mmがより好ましい。 1回噴射当たりの噴射量は、0.05~3.0mLであってもよく、0. 05~1.5mLが好ましく、0.05~0.5mLであることがより好ましい。噴射角は10~80°が好ましく、20~70°がより好ましい。 蓄圧式ポンプの場合、1秒当たりの噴射量は、0.1~5.0gであってもよい。噴射圧は、デジタルフォースゲージ(DS2-2N (株)イマ ダ製)で15cmの距離から測定した場合において0.01~0.50Nであってもよい。 【0025】また、本実施形態の噴射製品によって噴射された害虫忌避組成物は、噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15が50μm以 上であることが好ましく、10 【0025】また、本実施形態の噴射製品によって噴射された害虫忌避組成物は、噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15が50μm以 上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、50%平均粒子径r15が300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。50%平均粒子径r15が50μm未満である場合、使用者等は、粘膜が刺激されやすい。 【0026】 本実施形態の噴射製品によって噴射された害虫忌避組成物は、噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30が50μm以上であればよく、70μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、50%平均粒子径r30が300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm 以下であることがさらに好ましい。50%平均粒子径r30が50μm未満である場合、使用者等は、粘膜が刺激されやすい。 【0027】本実施形態の噴射製品の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、噴射製品は、ポンプ容器に害虫忌避組成物を充填し、アクチュエータによ ってポンプ容器の開口を閉止することによって製造することができる。 【0028】以上、本実施形態の噴射製品(ポンプ製品)によれば、粘膜を刺激しやすい上記特定の害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、噴射された害虫忌避組成物は、噴射後に粒子径比(r30/r15)が0.6以上に維 持されているため、粘膜への刺激が低減され得る。 カ 【0042】<噴射方法>本発明の一実施形態の噴 忌避組成物は、噴射後に粒子径比(r30/r15)が0.6以上に維 持されているため、粘膜への刺激が低減され得る。 カ 【0042】<噴射方法>本発明の一実施形態の噴射方法は、害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品を用い て害虫忌避組成物を噴射する噴射方法である。また、本実施形態の噴射方法において使用される害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1つの成分を 含む。さらに、本実施形態の噴射方法は、噴口から15cm離れた位置に おける噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるように害虫忌避組成物を噴射する。 【0043】 本実施形態の噴射方法を実施するにあたり、害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物および噴射製品は、いずれも上記第1の実施形態および第2の実施形態において説明したものと同様のものを使用し得る。また、本実施形態の噴射方法は、ポンプ製品である噴射製品を用いて実施することもでき、エアゾール製品である噴射製品を用いて実施することもできる。 【0044】本実施形態の噴射方法によれば、粘膜を刺激しやすい上記特定の害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、噴射された害虫忌避組成物は、噴射後に粒子径比(r30/r15)が0.6以上に維持されるよう噴射される。その結 方法によれば、粘膜を刺激しやすい上記特定の害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、噴射された害虫忌避組成物は、噴射後に粒子径比(r30/r15)が0.6以上に維持されるよう噴射される。その結果、本実施形態の噴射方法によって噴射された害虫忌避組成物 は、使用者等の粘膜を刺激しにくい。 キ 【実施例】【0045】以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。 【0046】<ポンプ製品>使用したポンプ製品の詳細を以下に示す。 (ポンプ製品1)ポンプ製品1は、実施例1~10、14、比較例1~6、8および参考 例1において使用した。ポンプ製品1は、以下のアクチュエータ1を備え る。ポンプ製品1の内容積は約240mLである。以下の実施例および比較例では、約150mLの害虫忌避組成物を充填した。 アクチュエータ1:(株)三谷バルブ製(品番:Z-305-101T7)、トリガー式噴射部材(品番:ND-97-0、噴口径:φ0.45mm、ディップチューブ内径φ2.4mm、噴射角64°(参考値)、1回吐出量: 約0.3cc)(ポンプ製品2)ポンプ製品2は、実施例11~13、比較例7において使用した。ポンプ製品2は、以下のアクチュエータ2を備える。ポンプ製品1の内容積は約70mLである。以下の実施例および比較例では、約50mLの害虫忌 避組成物を充填した。 アクチュエータ2:(株)三谷バルブ製(品番:Z-75-C115)、プッシュダウン式噴射部材(品番:ND-913、噴口径:φ0.32mm、ディップチューブ内径φ2.1mm、噴射角21°(参考値)、1回吐出量:約0. (株)三谷バルブ製(品番:Z-75-C115)、プッシュダウン式噴射部材(品番:ND-913、噴口径:φ0.32mm、ディップチューブ内径φ2.1mm、噴射角21°(参考値)、1回吐出量:約0.075cc) 【0047】(実施例1~14、比較例1~8、参考例1)表1または表2に記載の処方にしたがって害虫忌避組成物を調製した。 得られた害虫忌避組成物を、それぞれ上記ポンプ製品1またはポンプ製品2にセット可能なポンプ容器に、ポンプ製品1またはポンプ製品2のディ ップチューブが充分に浸かることを確認して充填し、ポンプ製品1またはポンプ製品2を取り付け、噴射製品を作製した。なお、表中の無水エタノール以外のそれぞれの配合成分の配合量の数値の単位は、(wt/v%)である。 【0050】 <50%平均粒子径> 噴射製品を25℃に保持し、レーザー光回折式粒度測定装置(LDSA-1400A マイクロトラック・ベル(株)製)を用いて50%平均粒子径を測定した。測定は、噴口から15cmの位置および30cmの位置から1回噴射し害虫忌避組成物の平均粒子径を測定した。得られた測定結果に基づいて、50%平均粒子径r15と50%平均粒子径r30との粒子径 比(r30/r15)を算出した。なお、測定は5回行い、最大値および最小値を除く3点の平均を算出した。結果を表1に示す。 【0051】<粘膜刺激性>噴射製品を25℃に保持し、被験者の肩口に15cmの距離から噴射し、 刺激感を評価させた。吐出量が同程度となるように、噴射回数は、ポンプ製品1に関しては1回とし、ポンプ製品2に関しては4回とした。以下の評価基準にしたがって、粘膜刺激性を評価した。評価は、10人の被験者によ 評価させた。吐出量が同程度となるように、噴射回数は、ポンプ製品1に関しては1回とし、ポンプ製品2に関しては4回とした。以下の評価基準にしたがって、粘膜刺激性を評価した。評価は、10人の被験者によって行い、平均を算出した。結果を表1に示す。 (評価基準) 1:粘膜刺激が感じられなかった。 2:弱い粘膜刺激が感じられた。 3:粘膜刺激が感じられた。 4:強い粘膜刺激が感じられた。 5:許容範囲を超える強い粘膜刺激が感じられた。 【0052】表1に示されるように、粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるよう調整された実施例1~14の噴射製品は、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)を配合した噴射製品(たとえば表2に示される参考例1)と同程度まで粘膜刺激が低減された。また、たとえば実施例1~3と 実施例11~13との比較から分かるように、本発明の噴射製品は、使用 するポンプ製品(アクチュエータ)の寸法等(噴射方式、噴口径、1回吐出量等の諸条件)が異なる場合であっても、粒子径比(r30/r15)が0. 6以上となるよう調整されていることにより、粘膜刺激低減効果が得られることがわかった。さらに、実施例5~6と比較例4との比較や、実施例7~8と比較例5との比較、実施例14と比較例8との比較から分かるよ うに、配合される水や溶剤の量を調整することによっても平均粒子径r30を調整することができ、かつ、それによって粒子径比(r30/r15)が0. 6以上となるよう調整されれば、粘膜刺激低減効果が得られることがわかった。また、実施例4と比較例3との比較から分かるように、実施例4の噴射製品は、平均粒子径r30の値が比較例3の噴射製品より小さかった 以上となるよう調整されれば、粘膜刺激低減効果が得られることがわかった。また、実施例4と比較例3との比較から分かるように、実施例4の噴射製品は、平均粒子径r30の値が比較例3の噴射製品より小さかったが、 粒子径比(r30/r15)が大きかった。すなわち、実施例4の噴射製品の方が、比較例3の噴射製品よりも、経時的に微粒子化されにくく、これにより粘膜刺激が低減されることが分かった。一方、表2に示されるように、粒子径比(r30/r15)が0.6未満となるよう調整された比較例1~8の噴射製品は、実施例1~14と比べ、強い粘膜刺激が感じられた。 【0053】(実施例14~16、比較例8~9)表3に記載の処方にしたがって、実施例14~16および比較例8~9の害虫忌避組成物を調製した。得られた害虫忌避組成物のうち、実施例14~15および比較例8の害虫忌避組成物を、上記ポンプ製品1にセット 可能なポンプ容器にポンプ製品1のディップチューブが充分に浸かることを確認して充填し、ポンプ製品1を取り付け、噴射製品を作製した。同様に、実施例16および比較例9の害虫忌避組成物を、上記ポンプ製品2にセット可能なポンプ容器にポンプ製品2のディップチューブが充分に浸かることを確認して充填し、ポンプ製品2を取り付け、噴射製品を作製 した。なお、表中の無水エタノール以外のそれぞれの配合成分の配合量の 数値の単位は、(wt/v%)である。得られた噴射製品に関して、以下の評価方法により、落下量測定を行った。結果を表3に示す。 【0054】<落下量測定>バットの中心にティッシュ(セレナーデフラワー 200mm×205 mm、イデシギョー(株)製)を5枚重ねてバットの中央に設置した。バットの中心から 0054】<落下量測定>バットの中心にティッシュ(セレナーデフラワー 200mm×205 mm、イデシギョー(株)製)を5枚重ねてバットの中央に設置した。バットの中心から水平方向に30cm、垂直方向に100cm離れた位置から、地面と水平方向へ検体を噴霧した。噴霧から20秒後にティッシュを回収し、重量測定によってティッシュへの製剤付着重量、検体の噴射重量を求め、下記式より付着率を算出した。 付着率(%)=ティッシュへの製剤付着重量/検体の噴射重量×10 【0056】表3に示されるように、実施例14~16の噴射製品は、噴霧方向へ薬剤が多く落下しており、薬剤の舞い散りが少なく、効率よく薬剤が噴射方 向へ噴霧されていることがわかった。一方、比較例8、9の噴射製品は、噴射量に対する薬剤落下量が少なく、薬剤が空中へ舞い散っていることがわかった。よって、本発明は薬剤の舞い散りが少ないことも刺激感の軽減の要因であると推測された。 ⑵ 前記⑴の記載事項によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発 明1に関し、次のような開示があることが認められる。 ア従来、害虫忌避剤に使用されていた害虫忌避成分であるN,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)に代えて、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペ リジンカルボキシレートが害虫忌避成分として配合された害虫忌避剤は、 例えば、ポンプ製品やエアゾール製品として噴射された際に、噴射された粒子が使用者やその周囲の者の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすく、使用者等が、粘膜に違和感を感じたり、咳き込んだりしやす は、 例えば、ポンプ製品やエアゾール製品として噴射された際に、噴射された粒子が使用者やその周囲の者の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすく、使用者等が、粘膜に違和感を感じたり、咳き込んだりしやすいという問題があった(【0002】、【0004】)。 イ 「本発明」は、このような問題に鑑み、使用者の鼻や喉等の粘膜を刺激 しやすい害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、粘膜への刺激が低減された噴射製品及び噴射方法を提供することを目的とし、上記噴射製品及び噴射方法を提供することを課題とするものである(【0005】)。 「本発明者ら」は、噴射された害虫忌避剤の中には、皮膚や髪等の適用箇所に付着せずに、適用距離(たとえば噴口から15cmの距離)を超え てさらに離れた位置(たとえば噴口から30cm離れた位置)に到達し、浮遊するものがあること、このような離れた位置(適用箇所を超えた位置)では、粒子径は、適用距離における粒子径よりも小さくなる結果、小さくなった粒子は、吸引されやすく粘膜を刺激しやすいとの知見を得て、適用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も 考慮し、それぞれの位置における粒子径の比が所定の値以上となるよう調整された噴射製品であれば、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺激が低減され、上記課題を解決し得ることを見出し、「本発明」を完成させた(【0006】)。 「本発明」の噴射製品は、上記課題を解決するための手段として、3- (N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分で ル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分である害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品であり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成 物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された構成を採用した(【0007】)。 「本発明」の噴射製品によれば、使用者の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、噴射された害虫忌避組成物は、噴射後に粒子径比(r30/r15)が0.6以上に維持されているため、粘膜への刺激が低減され得るという効果を奏する(【0009】、【0028】)。 2 取消事由1(訂正要件の判断の誤り)について⑴ 訂正の目的の判断の誤りについてア 「特許請求の範囲の減縮」の目的の有無について原告は、本件審決は、本件訂正について、①訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「噴射製品」を「粘膜への刺激が低減された、噴射製品」と 訂正するものであるが、当該噴射製品は、害虫忌避組成物を充填した物の発明であり、その害虫忌避組成物が有している粘膜への刺激という作用に対し、当該粘膜への刺激を低減したものと、実質的に害虫忌避組成物を充填した物の発明の作用・用途が、発明の構成 避組成物を充填した物の発明であり、その害虫忌避組成物が有している粘膜への刺激という作用に対し、当該粘膜への刺激を低減したものと、実質的に害虫忌避組成物を充填した物の発明の作用・用途が、発明の構成として限定されたものと理解することができるから、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」(特許法 134条の2第1項ただし書1号)を目的とするものということができる、②訂正事項2は、本件訂正前の請求項3の「噴射方法」を「粘膜への刺激を低減する、噴射方法」とするものであるが、当該噴射方法は、「害虫忌避組成物を噴射する噴射方法」の発明であり、その害虫忌避組成物が有している粘膜への刺激という作用に対し、当該粘膜への刺激を低減したものと、 実質的に害虫忌避組成物を噴射する方法の発明の作用・用途が、発明の構 成として限定されたものと理解することができるから、訂正事項2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものということができる旨判断したが、かかる本件審決の判断は誤りである旨主張するので、以下において判断する。 (ア) 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「噴射製品」を「粘膜への刺 激が低減された、噴射製品」と訂正し、訂正事項2は、本件訂正前の請求項3の「噴射方法」を「粘膜への刺激を低減する、噴射方法」と訂正するものであり(甲46)、本件訂正前の請求項1の「噴射製品」及び本件訂正前の請求項3の「噴射方法」の各記載事項に、それぞれ「粘膜への刺激が低減された」又は「粘膜への刺激を低減する」という作用に係 る記載事項を加えたものと認められる。 しかるところ、本件明細書には、「粘膜への刺激の低減」に関し、「本発明者らは、適用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も考慮し、それぞれの位置における のと認められる。 しかるところ、本件明細書には、「粘膜への刺激の低減」に関し、「本発明者らは、適用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も考慮し、それぞれの位置における粒子径の比が所定の値以上となるよう調整された噴射製品であれば、粘膜を刺激しやすい 害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺激が低減され、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。」(【0006】)、「本実施形態の噴射製品は、噴口から15cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径 r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整されている。なお、本実施形態の噴射製品は、噴射された際の粒子径比が特定の範囲となるよう調整されていることを特徴とする。そのため、その他の構成(たとえば噴射製品の形状、他の成分および配合、容器内圧等の各種物性等)は、上記粒子径比の範囲を満たすものであればよく、特に 限定されない。」(【0010】)、「本実施形態の噴射製品は、粒子径比(r 30/r15)が0.6以上となるよう調整されている。そのため、噴射された害虫忌避組成物は、噴口から30cm離れた位置であっても粒子径が維持されたままである。その結果、噴射製品は、粘膜を刺激しやすい上記特定の害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、粘膜への刺激が低減され得る。」(【0023】)、「このように、本実施形態の噴射製 品は、噴射された害虫忌避組成物の粒子径比(r30/r15)が0.6以上に調整されていればよく、このような粒子径比を上記範囲に調整する方法は特に限定されない。」(【0024】)、「以 の噴射製 品は、噴射された害虫忌避組成物の粒子径比(r30/r15)が0.6以上に調整されていればよく、このような粒子径比を上記範囲に調整する方法は特に限定されない。」(【0024】)、「以上、本実施形態の噴射製品(ポンプ製品)によれば、粘膜を刺激しやすい上記特定の害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、噴射された害虫忌避組成物は、噴 射後に粒子径比(r30/r15)が0.6以上に維持されているため、粘膜への刺激が低減され得る。」(【0028】)、「本実施形態の噴射方法によれば、粘膜を刺激しやすい上記特定の害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、噴射された害虫忌避組成物は、噴射後に粒子径比(r30/r15)が0.6以上に維持されるよう噴射される。その結果、本実 施形態の噴射方法によって噴射された害虫忌避組成物は、使用者等の粘膜を刺激しにくい。」(【0044】)、「表1に示されるように、粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるよう調整された実施例1~14の噴射製品は、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)を配合した噴射製品(たとえば表2に示される参考例1)と同程度まで粘膜刺激が 低減された。また、たとえば実施例1~3と実施例11~13との比較から分かるように、本発明の噴射製品は、使用するポンプ製品(アクチュエータ)の寸法等(噴射方式、噴口径、1回吐出量等の諸条件)が異なる場合であっても、粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるよう調整されていることにより、粘膜刺激低減効果が得られることがわかっ た。」(【0052】)との記載がある。これらの記載によれば、本件明細 書には、「粘膜への刺激の低減」の作用効果は、本件訂正前の請求項1の「前記噴口から15cm離れた位置における噴射 た。」(【0052】)との記載がある。これらの記載によれば、本件明細 書には、「粘膜への刺激の低減」の作用効果は、本件訂正前の請求項1の「前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され」との構成又は 本件訂正前の請求項3の「前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となり」との構成によって奏することの開示があることが認められる。一方で、本件明細書には、本件訂正前の請求項1及び3の上記各構成にした場合 であっても、「粘膜への刺激の低減」の作用効果を奏しない場合があることについての記載も示唆もない。 そうすると、訂正事項1及び2により加えられた「粘膜への刺激が低減された」又は「粘膜への刺激を低減する」という作用に係る記載事項は、本件訂正前の請求項1及び3の上記各構成によって奏される作用効 果を記載したにすぎないものであるから、訂正事項1及び2は、本件訂正前の請求項1及び3の各発明に係る特許請求の範囲を狭くしたものと認めることはできない。 (イ) したがって、訂正事項1及び2は、「特許請求の範囲の減縮」(特許法134条の2第1項ただし書1号)を目的とするものと認めることは できないから、原告の前記主張は理由がある。 イ被告の主張について被告は、訂正事項1は、害虫忌避組成物を充填した物の発明(本件訂正前の請求項1)において、その害虫忌避組成物が有している粘膜への刺激 ないから、原告の前記主張は理由がある。 イ被告の主張について被告は、訂正事項1は、害虫忌避組成物を充填した物の発明(本件訂正前の請求項1)において、その害虫忌避組成物が有している粘膜への刺激という作用に対し、当該粘膜への刺激を低減したものと、実質的に害虫忌 避組成物を充填した物の発明の用途又は作用が、発明の構成として限定さ れたものと理解することができ、また、訂正事項2は、害虫忌避組成物を噴射する噴射方法の発明(本件訂正前の請求項3)において、その害虫忌避組成物が有している粘膜への刺激という作用に対し、当該粘膜への刺激を低減したものと、実質的に害虫忌避組成物を噴射する方法の発明の用途又は作用が、発明の構成として限定されたものと理解することができると して、訂正事項1及び2は、本件訂正前の請求項1及び3の各発明の特許請求の範囲について、少なくとも用途又は作用を限定しているから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである旨主張する。 しかしながら、被告の上記主張は、本件審決と同旨の理由を述べるものであるから、前記アで説示したとおり、採用することができない。 ⑵ 小括以上のとおり、訂正事項1及び2は、「特許請求の範囲の減縮」(特許法134条の2第1項ただし書1号)を目的とするものと認められないから、その余の点について判断するまでもなく、本件訂正は同号に適合しない。 そうすると、本件審決には、本件訂正の訂正要件の判断に誤りがあり、こ の判断の誤りは、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明の要旨認定の誤りに帰するから、本件審決は取り消されるべきものである。 3 取消事由2(甲1製品に係る発明(公然実施発明)を主引用例とする本件発明1ないし3の新規性の判断の誤り)(無効理由1関係 明の要旨認定の誤りに帰するから、本件審決は取り消されるべきものである。 3 取消事由2(甲1製品に係る発明(公然実施発明)を主引用例とする本件発明1ないし3の新規性の判断の誤り)(無効理由1関係)について本件事案に鑑み、本件訂正が適法であることを前提とする取消事由2につい て、念のため判断する。 ⑴ 本件発明1の新規性の判断の誤りについてア相違点2及び3について(ア) 本件審決は、公然実施発明1-1は、粒子径比(r30/r15)が「0. 80」及び50%平均粒子径r30が「236.27μm」であり、本件 発明1と公然実施発明1-1は、「粒子径比(r30/r15)が、0.6 以上」及び「50%平均粒子径r30が、50μm以上」である「噴射製品」である点で一致すると認定した上で、相違点2及び3に関し、公然実施発明1-1は、粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるように調整され、及び、当該50%平均粒子径r30が50μm以上となるように調整されることにより、粘膜への刺激が低減された噴射製品であると、 認識されていたものとは認められず、「害虫忌避組成物の噴霧された粒子径比(r30/r15)に着目して、当該粒子径比(r30/r15)を0. 6以上となるように調整し、及び、50%平均粒子径r30に着目して、当該r30が50μm以上となるように調整することによって、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺 激が低減された噴射製品となるという技術的思想」が存在したとはいえないから、相違点2及び3は実質的な相違点であると判断した(前記第2の3⑴ア、⑵ア、⑶ア(イ))。 しかしながら、物の発明に係る特許の特許請求の範囲は、その構造、特性等により特定されることに いえないから、相違点2及び3は実質的な相違点であると判断した(前記第2の3⑴ア、⑵ア、⑶ア(イ))。 しかしながら、物の発明に係る特許の特許請求の範囲は、その構造、特性等により特定されることに照らすと、本件発明1の特許請求の範囲 (請求項1)の「前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成 物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整され」の構成にいう「調整」の文言は、「調整された状態」を示すものであり、上記構成は、調整後の「粒子径比(r30/r15)」及び「50%平均粒子径r30」がそれぞれ「0.6以上」及び「50μm以上」であることを規定したものと解される。 しかるところ、公然実施発明1-1の粒子径比(r30/r15)「0. 80」及び50%平均粒子径r30「236.27μm」は、いずれも調整された状態を示すものであって、本件発明1の「粒子径比(r30/r15)」「0.6以上」及び「50%平均粒子径r30」「50μm以上」の各数値範囲に含まれるから、公然実施発明1-1は、本件発明1の上記構成を備えるものと認められる。 そうすると、相違点2は、本件発明1と公然実施発明1-1との実質的な相違点ではないものと認められるから、本件審決における相違点2の判断には誤りがある。 (イ) 次に、前記(ア)の本件審決認定の技術的思想は、本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)に記載された事項ではないから、本件発明1と 、本件審決における相違点2の判断には誤りがある。 (イ) 次に、前記(ア)の本件審決認定の技術的思想は、本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)に記載された事項ではないから、本件発明1と 公然実施発明1-1との同一性を判断するに当たり、公然実施発明1-1において上記技術的思想の存在を認識し、又は認識し得ることを判断基準とすることは、特許請求の範囲の記載に基づかないものとして、相当ではない。 そうすると、相違点2及び3は実質的な相違点であるとした本件審決 の判断は、この点において誤りがある。 これに反する被告の主張は採用することができない。 イ相違点1について本件審決は、相違点1に関し、①公然実施発明1-1には、水が含まれているが、甲2には水を「溶剤」として添加していると記載されているこ とから、本件発明1とは、水の添加目的が異なっており、水が、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分として認識されていたとは認められない、②「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分を含」ませ(相違点1に係る本件発明1の発明特定事項)、「粒子径比(r30/r15)が0. 6以上となるように調整され」、及び、「50%平均粒子径r30が50μm 以上となるように調整され」ることにより(相違点2に係る本件発明1の 発明特定事項)、「粘膜への刺激が低減された、噴射製品」(相違点3に係る本件発明1の発明特定事項)となるということは、一体の技術的思想をなすものと理解されるとした上で、公然実施発明1-1において、水が含まれているからといって、当該水が、「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分」として作用し、「粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるよ うに調整され」、及び、「50%平均粒子径 、水が含まれているからといって、当該水が、「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分」として作用し、「粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるよ うに調整され」、及び、「50%平均粒子径r30が50μm以上となるように調整され」ることにより、「粘膜への刺激が低減された、噴射製品」となるという技術的思想が認識されていたとは認められないとして、相違点1は実質的な相違点であると判断した(前記第2の3⑶イ)。 しかしながら、本件審決の上記判断は、以下のとおり誤りである。 (ア) ①についてa 本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には、「前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み」 との記載がある。上記記載から、本件発明1の「揮発抑制成分」は、噴射後の揮発を抑制するための成分であって、この成分にはグリセリンが含まれないことを理解できるが、一方で、請求項1には、グリセリン以外のいかなる成分が「揮発抑制成分」に該当するかを規定した記載はない。 次に、本件明細書には、揮発抑制成分について、「害虫忌避組成物は、上記害虫忌避成分のほかに、噴射後の揮発を抑制するため、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下となる揮発抑制成分を好適に含む。これにより、噴射された害虫忌避組成物は、揮発が抑制され、粒子径が小さくなりにくい。揮発抑制成分は特に限定されない。一例を挙げると、 揮発抑制成分は、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコー ル、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等 ない。一例を挙げると、 揮発抑制成分は、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコー ル、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ヤシ油等の植物油、流動パラフィン、水からなる群から選択される少なくとも1の成分である。」(【0014】)との記載がある。上記記載によれば、「20℃での蒸気圧が2.5kP a以下となる水」は、本件発明1の「揮発抑制成分」に該当する成分の一つであると理解できる。 そうすると、公然実施発明1-1に含まれる「20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水」は、本件発明1の「揮発抑制成分」に該当するものと認められるから、相違点1は実質的な相違点であると は認められない。 b この点に関し、本件審決は、公然実施発明1-1には、水が含まれているが、甲2によれば、水は、「溶剤」として添加されたものであり、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分として認識されていたとは認められないことを、相違点1が実質的な相違点であることの理由 の一つとして挙げている。 しかしながら、物の発明に係る特許の特許請求の範囲は、その構造、特性等により特定されることに照らすと、公然実施発明1-1に含まれる「水」が本件発明1の「揮発抑制成分」に該当するかどうかは、当該「水」が噴射後の揮発を抑制するための成分であることを客観的 に把握できるか否かによって判断すべきであるから、水の添加目的や、水が噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分として認識されていたかによって上記判断は左右されるものではない。 したがって、本件審決の上記①の判断は誤りである。 (イ) ②について が噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分として認識されていたかによって上記判断は左右されるものではない。 したがって、本件審決の上記①の判断は誤りである。 (イ) ②について 本件審決は、公然実施発明1-1において、水が含まれているからと いって、当該水が、「噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分」として作用し、「粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるように調整され」、及び、「50%平均粒子径r30が50μm以上となるように調整され」ることにより、「粘膜への刺激が低減された、噴射製品」となるという技術的思想が認識されていたとは認められないことを、相違点1が実 質的な相違点であることの理由の一つとして挙げている。 しかしながら、本件審決認定の上記技術的思想は、本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)に記載された事項ではないことからすると、本件発明1と公然実施発明1-1との同一性を判断するに当たり、公然実施発明1-1において上記技術的思想の存在を認識し、又は認識し得る ことを判断基準とすることは、特許請求の範囲の記載に基づかないものとして、相当ではないから、本件審決の上記②の判断は、誤りである。 (ウ) まとめよって、本件発明1と公然実施発明1-1との相違点1が実質的な相違点であるとした本件審決の判断は誤りである。 これに反する被告の主張は採用することができない。 ウ小括以上によれば、本件審決における相違点1ないし3の判断は誤りであるから、本件発明1は公然実施発明1-1と同一であるとはいえないとした本件審決の判断は誤りである。 ⑵ 本件発明2の新規性の判断の誤りについて本件審決は、本件発明2が本件発明1を直接引用す 発明1は公然実施発明1-1と同一であるとはいえないとした本件審決の判断は誤りである。 ⑵ 本件発明2の新規性の判断の誤りについて本件審決は、本件発明2が本件発明1を直接引用するものであることから、本件発明1と公然実施発明1-1についてした判断と同様の理由から、本件発明2が公然実施された発明であるとはいえないと判断した。 しかしながら、本件審決における本件発明1と公然実施発明1-1との同 一性の判断に誤りがあることは、前記⑴のとおりであるから、本件発明2に ついての本件審決の上記判断には誤りがある。 ⑶ 本件発明3の新規性の判断の誤りについて本件審決は、物の発明である公然実施発明1-1と方法の発明である公然実施発明1-3とは、発明のカテゴリーが異なるものの、両発明から把握される技術的事項に変わりはない、本件発明3と公然実施発明1-3の相違点 1ないし3は、本件発明1と公然実施発明1-1との相違点1ないし3と実質的に同じであるとして、本件発明1と公然実施発明1-1についてした判断と同様の理由から、本件発明3が公然実施された発明であるとはいえないと判断した。 しかしながら、本件審決における本件発明1と公然実施発明1-1との同 一性の判断に誤りがあることは、前記⑴のとおりであるから、本件発明3についての本件審決の上記判断には誤りがある。 ⑷ 小括以上によれば、本件審決における本件発明1ないし3の新規性の判断に誤りがあるから、原告主張の取消事由2は理由がある。 なお、前記2⑵のとおり、本件審決は取消事由1によって取り消されるべきであるから、この判断については、本判決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)は及ばない。 第5 結論以上のと なお、前記2⑵のとおり、本件審決は取消事由1によって取り消されるべきであるから、この判断については、本判決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)は及ばない。 第5 結論 以上のとおり、原告主張の取消事由1は理由があり、本件審決は取り消されるべきであるから、主文のとおり、判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官小川卓逸 裁判官遠山敦士 (別紙)【表1】 【表2】 【表3】
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