主文 被告は,原告に対し,金734万7795円及びこれに対する平成18年1月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを4分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 請求の趣旨(1)被告は,原告に対し,金2870万1071円及びこれに対する平成18年1月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)訴訟費用は被告の負担とする。 (3)仮執行宣言 請求の趣旨に対する答弁(1)原告の請求を棄却する。 (2)訴訟費用は原告の負担とする。 (3)仮執行免脱宣言第2事案の概要 事案の要旨本件は,原告が,原告の夫である亡A(昭和4年8月5日生,平成19年2月25死亡,以下「亡A」という。)の救急搬送を被告に依頼し,被告の救急隊員が救急搬送を行う際に,救急隊員の過失により亡Aが右上腕部を骨折したと主張して,国家賠償法1条1項に基づき金2870万1071円及びこれに対する不法行為日である平成18年1月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 前提事実(証拠を掲記しないものは,当事者間に争いがない。)(1)当事者ア原告は,亡Aの妻である。亡Aと原告との間には長男B,次男C,長女Dがおり,本件損害賠償請求権は,遺産分割協議により原告が全て取得した。 (甲2の1ないし9)イ被告は,朝霞市,志木市,和光市,新座市によって構成され,消防,救急等の事務を処理する一部事務組合である。 ウE(以下「E」という。),F(以下「F」という。)及びG(以下「G」といい,3名 イ被告は,朝霞市,志木市,和光市,新座市によって構成され,消防,救急等の事務を処理する一部事務組合である。 ウE(以下「E」という。),F(以下「F」という。)及びG(以下「G」といい,3名を併せて「被告救急隊員ら」という。)は,平成18年1月当時,被告に所属する救急隊員であり,平成18年1月12日に,原告の出動要請により,原告宅に出動した者である。 (2)亡Aの搬送の際の経緯ア亡Aは,平成12年以来,脳梗塞が原因で右片麻痺及び失語症を抱えており,また,糖尿病等の持病も有していた。 イ原告は,平成18年1月12日午前7時49分ころ,原告方に設置されていた緊急連絡通話装置を用いて,被告に救急車の出動を要請した。被告は,原告の要請に応じて救急車を出動させ,午前7時55分ころ救急車が原告方に到着した。同救急車には,隊長であるE,隊員であるF,機関員であるGが乗車していた。 (乙1)ウ被告救急隊員らは,亡Aを原告宅の外に搬送し(搬送の具体的態様には当事者間に争いがある。以下「本件搬送」という。),亡Aを救急車に乗せた。 エ亡Aは,同日午前中に,首の腫れの検査のため日本大学医学部附属板橋病院(以下「日大板橋病院」という。)の血液内科での診察を予定してい たため,Eは,日大板橋病院への搬送の手配をしていたが,日大板橋病院から受入を拒否され,そのころ,亡Aの呼吸が落ち着いてきたことから,原告が被告救急隊員らと協議をし,救急車による病院への搬送を取り止め,一度原告方に戻ることとした。原告宅に戻る際には,救急車に備え付けてあった担架を用いて亡Aを搬送した。 オその後,亡Aは,日大板橋病院での診察の際に,整形外科での診察を受けることとなり,診察の結果,亡Aの右上腕骨頚部が骨折していることが判明した。 カ亡Aは,平成19年2月25日 亡Aを搬送した。 オその後,亡Aは,日大板橋病院での診察の際に,整形外科での診察を受けることとなり,診察の結果,亡Aの右上腕骨頚部が骨折していることが判明した。 カ亡Aは,平成19年2月25日,死亡した。 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 争点 本件の争点は,①亡Aの骨折が本件搬送により発生したものであるか否か(争点1),②亡Aの骨折が本件搬送により発生したものであるとして,被告救急隊員らに過失が存するか(争点2),③被告救急隊員らの違法性が阻却されるか(争点3),④損害及び因果関係(争点4)である。 (2)争点に関する当事者の主張ア争点1(亡Aの骨折が本件搬送により発生したものであるか否か)(ア)原告本件搬送当時,亡Aの右肩は拘縮していて,右肩の可動範囲が外転70度程度,外旋10度程度に過ぎず,にもかかわらず,被告救急隊員らにより,右肩の可動域を超え,かつ肩に自身の体重が加わる状態で搬送されたこと,本件搬送以前は亡Aが痛がる様子は全くなかったこと,本件搬送の途中で,亡Aがうめき声を発したこと,救急車に搬送された後も亡Aは救急車内で苦しんでおり,Fが亡Aの右手で血圧を測ろうとしたところ,亡Aが嫌がったため,左手で測定を行ったこと,本件搬送直後に亡Aの右上腕骨頚部の骨折が判明したことの各事実によれば,本件 搬送により亡Aが骨折したことは明らかである。 (イ)被告亡Aの骨折が本件搬送により生じたとする客観的な証拠は存在せず,原告主張の事実のみによって本件搬送から亡Aの骨折が生じたことを基礎付けることはできない。 イ争点2(被告救急隊員らに過失が存するか)(ア)原告一般に救急隊員は,傷病者の観察,傷病者の事情の聴取を十分に行い,適切な処置及び搬送を行う義務を負っており,また,救急出動においては,ストレッチ 点2(被告救急隊員らに過失が存するか)(ア)原告一般に救急隊員は,傷病者の観察,傷病者の事情の聴取を十分に行い,適切な処置及び搬送を行う義務を負っており,また,救急出動においては,ストレッチャーによる収容が原則とされている。 本件において,被告救急隊員らは,観察・事情聴取義務を怠り,亡Aが片麻痺であり,右肩関節に拘縮があること,失語の状態であることを把握せず,原告が亡Aの麻痺の状態を強く訴え,搬送方法についての要望を行っているにもかかわらず,既往症の確認を怠り,また,ストレッチャーによる搬送が物理的に可能であるにもかかわらず,ストレッチャーによる搬送を行わず,肩関節に無理がかかる徒手搬送を行い,亡Aに骨折を生じさせた。 (イ)被告亡Aに右片麻痺があるからといって,右肩関節が拘縮をしているとは限らず,拘縮の程度も様々である。また,亡Aの右肩関節が拘縮していたとしても,抱きかかえ搬送によって骨折の結果が生じることは予見が困難である。現に,亡Aの右手は肘を肩まで上げることはできたのであり,抱きかかえ搬送で骨折が生じるようなことはない。 また,原告からもおんぶして下さいといった指示がされたこともなく,亡Aが呼吸苦を訴えており,横にすると苦しさが増加するためにストレッチャーによる搬送を消極として,玄関まで歩いた上,外階段を抱きか かえて搬送するとの選択をしたものであり,その選択も適切な選択であった。実際に,被告救急隊員らが行った抱きかかえ搬送は,右肩関節や右上腕に大きな負担を掛けるものとはなっていない。 よって,被告救急隊員らに過失は認められない。 ウ争点3(被告救急隊員らの違法性が阻却されるか)(ア)被告救急隊員は,迅速に医療機関への搬送を行うことが求められており,必ずしも対象者についての十分な情報が得られるとは限らず,検査等 ない。 ウ争点3(被告救急隊員らの違法性が阻却されるか)(ア)被告救急隊員は,迅速に医療機関への搬送を行うことが求められており,必ずしも対象者についての十分な情報が得られるとは限らず,検査等を十分に行える訳ではない中で搬送方法を決定することになるのであるから,ある搬送方法によって傷害が発生したとしても,事後的に他の搬送方法であればその傷害を回避できたなどとしてその違法性を認めるべきではなく,搬送方法を選択する時点における状況に基づき,著しく不合理であるとか,明らかに不適切であるということが明確でない限り,その搬送方法の選択について違法とすることはできないというべきである。 本件においても,抱きかかえて搬送を行うことが著しく不合理であるとか,一見して明らかに不適切ということはなく,本件搬送が違法ということはできない。 (イ)原告救急車が出動する場合,人命に関わる傷病が発生していることが多いのであって,救急隊員は,対象者の状況を適切に確認・判断した上で必要な措置を行い,迅速に医療機関に搬送することが求められていることは,被告も認めているところである。そのような職務の重要性,専門性からは,救急隊員の行為の違法性判断に当たり,判断基準が緩和されることは有り得ない。 エ争点4(損害及び因果関係)(ア)原告 a治療費(a)症状固定前の治療費3万9580円本件搬送による骨折により原告が入院や通院を余儀なくされたことは明らかである。リハビリについても骨折治療による拘縮に対するものとして必要とされたものである。具体的な内容は,別紙治療経過1のとおりである。 (b)症状固定後の治療費5784円症状固定後も症状の悪化を防止するために保存的加療としてリハビリが必要となることは明らかである。具体的な内容は別紙治療経過2のとお 療経過1のとおりである。 (b)症状固定後の治療費5784円症状固定後も症状の悪化を防止するために保存的加療としてリハビリが必要となることは明らかである。具体的な内容は別紙治療経過2のとおりである。 b付添看護費(a)入院付添費58万5000円90日間の入院中,原告は毎日付添看護を行っており,1日当たり6500円の損害が生じている。 入院先の病院は,完全看護の態勢であったが,亡Aの身の回りの世話を行うには程遠い状態であり,あらゆる動作において介助が必要であった。 (b)通院付添費12万8700円症状固定までの間,39日通院しており,その際,原告は亡Aに付き添っている。亡Aは,歩行不能かつ失語症であり,付添が不可欠であり,1日3300円の損害が生じている。 c交通費(a)本人通院交通費5万3704円本件搬送による骨折がなければ,通院の必要がないことは明らかである。具体的内容は別紙本人通院交通費記載のとおりである。 (b)付添人交通費10万3910円 入院に付き添う際の病院を訪れる交通費である。 上記a及びbのとおり,入院及び通院に付添が必要であった以上,交通費も因果関係を有する。原告は,当初電車と徒歩で病院に通っていたが,それが原因で左膝と腰を痛め,入院期間の途中からタクシーを利用せざるを得なくなった。具体的な内容は,別紙付添人交通費記載のとおりである。 d損害賠償請求費用2万3340円診断書取得費用6300円,損害賠償責任保険後遺障害診断書取得費用1万0500円,診療報酬明細書取得費用240円,診断書取得費用1050円である。 e傷害慰謝料145万0000円亡Aは,約10か月,骨折による治療を行った。 f後遺障害慰謝料2370万0000円亡Aには,本件搬送により生じた骨折のため,右肩関節 費用1050円である。 e傷害慰謝料145万0000円亡Aは,約10か月,骨折による治療を行った。 f後遺障害慰謝料2370万0000円亡Aには,本件搬送により生じた骨折のため,右肩関節の可動域が骨折前以上に制限され,骨折箇所の治療のため固定をしていたため,右肘関節,手関節が曲げたまま伸ばせない状態となった。さらに,本件搬送による骨折の治療を通じて下肢の廃用症候群が発生し,歩行不能となり,さらには日常生活やリハビリに対する意欲を急激に失い,うつ状態にまで陥り,精神的な廃用症候群に至った。亡Aは,骨折後後,脱水症状で入院し,その後肺炎を併発して,本件搬送による骨折から約1年1か月後に死亡したものであり,亡Aに生じた精神的損害の慰謝料は2400万円を下ることはない。 g弁護士費用261万0000円原告は,本件搬送による骨折により,被告との交渉及び本件訴訟提起等の手続を弁護士に委任せざるを得なくなり,その費用は261万円を下らない。 h合計2870万1071円なお,上記aからgの合計額は2870円0018円であるが,原告の当初請求は,上記2870万1071円であり,上記請求が現在も維持されている。 (イ)被告a治療費・付添費・交通費原告の入院は,骨折によるものではなく,血糖コントロールのためのものであり,入院にかかる治療費,雑費,付添看護費などは本件搬送とは因果関係を有しないものである。 症状固定日を平成18年10月30日とする点は争うものではなく,症状固定日までのリハビリに亡Aの右上腕骨頚部骨折に関するリハビリが含まれていたことも認めるが,それ以外のリハビリも含まれており,素因減額が行われるべきである。 b損害賠償請求費用不知c傷害慰謝料亡Aの通院期間は,平成18年1月12日から平成18年10月3 含まれていたことも認めるが,それ以外のリハビリも含まれており,素因減額が行われるべきである。 b損害賠償請求費用不知c傷害慰謝料亡Aの通院期間は,平成18年1月12日から平成18年10月30日の292日であり,実通院日数は32日であり,実通院日数の3倍程度の通院期間を目安に傷害慰謝料を算出すべきである。 d後遺障害慰謝料仮に亡Aの骨折が本件搬送により生じたとしても,亡Aの骨折前の右肩関節の可動域と骨折後の可動域とは大きく変わるものではなく,右肩関節につき原告のいう廃用症候群は生じていない。また,右肘と右手関節の拘縮が本件搬送により生じた亡Aの骨折を原因として発生したものかは明らかではなく,また,下肢の廃用症候群も,下肢のリハビリの開始時期などを考慮すれば,本件搬送により発生したことは 有り得ない。さらに精神的な廃用症候群についても,既往の脳梗塞による右片麻痺,失語症が原因となっているものというべきである。 e弁護士費用否認ないし争う。 第3当裁判所の判断 各項掲記の認定根拠によれば,以下の事実が認められる。 (1)原告は,亡Aの妻である。亡Aと原告との間には長男B,次男C,長女Dがおり,本件損害賠償請求権は,遺産分割協議により原告が全て取得した。 (甲2の1ないし9)(2)亡Aは,昭和4年8月5日生の男性であり,平成12年5月18日に脳梗塞を発症し,それ以降,脳梗塞による右片麻痺及び失語症を患っていた。 亡Aは,平成13年10月3日には,胃潰瘍により大量に吐血をして入院するなどもした。本件搬送直前には,要介護度4,身体障害者1級の認定を受けていた。 (甲31)(3)本件搬送前後の状況ア原告は,平成18年1月12日午前7時20分ころ,亡Aを起こしに行き,亡Aが普段は挨拶をして答えるところが返事がなく,呼吸の 害者1級の認定を受けていた。 (甲31)(3)本件搬送前後の状況ア原告は,平成18年1月12日午前7時20分ころ,亡Aを起こしに行き,亡Aが普段は挨拶をして答えるところが返事がなく,呼吸の様子がおかしかったので,原告が「息,苦しいの」と尋ねたところ,亡Aが肯いたため,しばらく様子を見ていた。亡Aがその後も辛そうにしていたため,原告は,亡Aの着がえを終え,午前7時49分ころに,朝霞市が原告宅に設置した緊急連絡通話装置から亡Aの呼吸が苦しいと伝えて救急車出動の要請をした。原告は,救急車を呼んだ後,玄関脇の洋間のベッドに横になっていた亡Aをベッドのすぐ脇の背もたれのある黒椅子に移動させ,救急車の到着を待っていた,救急車は午前7時55分ころに原告宅に到着した。 (甲31,33,乙1,原告)イ救急車には,隊長であるEと隊員であるF,機関員であるGの3名が乗っており,3名で原告宅に臨場し,EとFが原告宅の亡Aがいる部屋に入った。先に部屋に入ったEは,黒椅子に座っていた亡Aの前に座って,手を取って脈拍を触りながら,どのような状態かについて亡Aに問い掛けた。亡Aは,問い掛けに対してうなずいたり,首を振ったりといった反応をするものの,言葉での返答はなく,ウーというような返答をするのみであった。Eは,血圧や血中酸素濃度の測定を行い,その際,原告は,横にいて,年末からの亡Aの体調等について話をし,今日は朝から息が苦しいので救急車を呼んだこと,当日,日大板橋病院の血液内科に診察の予定があること,亡Aは,右片麻痺を患っており,おんぶによる搬送ができれば,その方法をとって欲しいことなどを伝えた。Eは,具体的な搬送先はともかく,病院に搬送する必要があると判断し,搬送に着手した。搬送が開始した後は,原告は,部屋を出て,戸締まりや救急車に乗る準備 れば,その方法をとって欲しいことなどを伝えた。Eは,具体的な搬送先はともかく,病院に搬送する必要があると判断し,搬送に着手した。搬送が開始した後は,原告は,部屋を出て,戸締まりや救急車に乗る準備をするなどしていた。 (甲31,乙1,乙10(一部),E(一部),原告)原告は,被告救急隊員らに対して,亡Aが右片麻痺を患っていることからおんぶで搬送して欲しいと伝えた旨主張する。原告の陳述書や尋問では,一貫してその旨記載・供述されていること,本件搬送の直後に原告により作成された甲34の病状記録にそのことが明確に記載されていること,上記のとおりEによる原告に対する一定時間の事情の聴取が行われており,亡Aが言葉を発しない状況は一目瞭然であったのであり,救急隊員であれば,当然,亡Aの脳梗塞や右片麻痺の可能性を考え,それらの点について言及するはずであり,その場合に,原告から搬送方法の要請がされるのは極めて自然であって,逆に一定時間の聴取が行われながら,通常時の搬送方法の聴取も搬送方法の要請もされないのは不自然であること,これらに よれば,上記のような要請の事実が存在したものと認められる。一方,被告は,上記の事実を否認しており,EとFもそれに沿った供述をするが,これらを信用することはできない。 ウEは,亡Aの状況や亡Aが歩けるかという問いにうなずいたことなどから,手を携えながら歩いて搬送を行うとの判断をした。Eが亡Aの左側に回り,亡Aを立たせて,出入口に対しての外側になる左側から介助しながら部屋の出入口まで進んだ。出入口付近からはFも介助に加わり,Fは,右側から右手を亡Aの腰の辺りに添え,左手で亡Aの右腕をつかみ,2人で介助しながら玄関先に来た。玄関先では,Eが亡Aを支えて,Fが靴を履かせて,表玄関を出た。表玄関の先の階段に差し掛かり,Eが は,右側から右手を亡Aの腰の辺りに添え,左手で亡Aの右腕をつかみ,2人で介助しながら玄関先に来た。玄関先では,Eが亡Aを支えて,Fが靴を履かせて,表玄関を出た。表玄関の先の階段に差し掛かり,Eがそのまま抱えて降りるとの指示をしたため,Eが亡Aの左腕を自分の右肩に掛けて,右手で亡Aの体を抱き抱え,左手で亡Aの脚を支えて,Fが亡Aの右腕を自分の左肩に掛けて,左手で亡Aの体を抱き抱え,右手で亡Aの脚を支えて,玄関を出た後はGが応援に加わり,両手で両脚を抱えて,階段を下りた。玄関先を出て階段に差し掛かる手前で,亡Aが大きなうめき声を上げた。その際,Eは,もうすぐですから頑張って下さいと声を掛け,3名で,亡Aを救急車に運びこんだ。 (乙1,4,10,11,E,F)搬送開始から救急車に搬入されるまでの具体的な事実については,原告の主張及び供述と若干異なる点があるが,原告は,戸締まりや救急車に乗るための準備を行っていて具体的な状況を見ておらず,原告の主張を採用することはできない。 エFは,亡Aを救急車に搬入した後,再度バイタルサインの確認を行うため,右腕で血圧の測定を行おうとしたが,亡Aが痛そうな素振りをしたため,左腕で測定を行った。Eは,救急車内で亡Aが当日受診の予定がある日大板橋病院への搬送のための連絡を行ったが,断られてしまい,他の病 院への搬送なども検討したが,亡Aの検査のバイタルサインの数値に問題がなく,状態も安定していたため,亡Aは日大板橋病院に予約の時間に合わせて行くこととして,救急車による搬送を中止した。被告救急隊員らは,亡Aを自宅に戻す際には,スクープストレッチャーという簡易な担架を用いて,庭から直接洋間に入る経路で搬送を行った。 (甲31,乙1,10,11,原告,E,F)オ原告は,福祉タクシーを用いて日大板橋病院に 自宅に戻す際には,スクープストレッチャーという簡易な担架を用いて,庭から直接洋間に入る経路で搬送を行った。 (甲31,乙1,10,11,原告,E,F)オ原告は,福祉タクシーを用いて日大板橋病院に向かうこととしたが,その間も亡Aが右肩の痛みを訴えていたため,福祉タクシーに乗車する際には,福祉タクシーの運転手らが2名で車いすごと階段を通って亡Aを下ろしてタクシーに乗せた。 日大板橋病院血液内科の診察の際,担当医が亡Aに診察台に仰向けになるように指示をし,原告,医師,看護師の3名で亡Aを車いすから診察台に移したが,その際,亡Aが尋常ではない痛がり方をしたため,医師が不審に思い,診察を中断し,その場で整形外科の診察を手配し,レントゲン撮影の結果,亡Aの右上腕骨頚部が骨折していることが判明した。 (甲31,乙7,原告) 争点1(亡Aの骨折が本件搬送により発生したものであるか否か)前記1認定の事実によれば,亡Aは,本件搬送当日の起床後,息苦しさを訴えてはいたものの,本件搬送前に,右上腕部等に何らの異常を訴えていたものではなく,本件搬送後に受診した日大板橋病院の血液内科の医師が異変に気付き骨折が判明していると認められる。 そして,本件搬送の途中,玄関と玄関先の階段の間で,亡Aが大きなうめき声を上げ,その後,右肩を痛がるようになったこと,その際,亡Aの右側から搬送をしていたFが亡Aの右腕を自身の首に掛け,左側から搬送していたEが亡Aの左腕を自身の首に掛け,亡Aの両腕に相当の負荷がかかっていたこと,本件搬送前の亡Aの右肩の可動域は外転70度程度であるが(乙7,99ペー ジ),それを越える動きを強いられた可能性があること,他に亡Aの右上腕部に骨折が発生するような事象は起こっていないことによれば,亡Aの骨折は,本件搬送の際に発生したものと認められ 7,99ペー ジ),それを越える動きを強いられた可能性があること,他に亡Aの右上腕部に骨折が発生するような事象は起こっていないことによれば,亡Aの骨折は,本件搬送の際に発生したものと認められる。 争点2(被告救急隊員らに過失が存するか)(1)一般に,救急隊員は,現場到着後,初期評価として,環境観察(傷病者を中心として周囲の状況を把握すること)を開始し,傷病者に近づきながらと傷病者に接触してからの2段階での傷病者観察(傷病者の状態を把握すること)を行うものとされ,環境観察により傷病者の搬送経路の把握などをし,傷病者観察により傷病者の重症度,緊急度を判断するものとされる。そして,傷病者観察としては,傷病者本人,関係者又は現場に居合わせた救助者などから傷病者の主訴,現病歴,既往症,服用薬の有無,かかりつけ医療機関などの情報の聴取を行い,また,呼吸,血圧,脈拍などのバイタルサインを把握し,評価するものである(甲37参照)。 その上で,初期評価の内容に基づき,応急処置を行ったり,搬送を行うこととなるが,搬送は,傷病者に大きな負担となる行為でもあるので,継続的な観察と安全管理の下,行うものとされ,そして,搬送方法は,各種ストレッチャーの活用や搬送路が狭い場合には簡易担架や徒手による搬送を行うものとされている(甲37参照)。 (2)これを本件ついてみるに,本件において,搬送方法の決定は,第一義的には隊長であるEが行うこととなるが,Eは,原告宅に到着の後,亡Aの部屋に到着する間に,玄関前に階段があることやそれが狭いものであることを容易に把握し得るものであるし,現にそのことを認識していたものと認められる。また,前記1認定のとおり,亡Aが失語症の症状を呈していたことは一見明白であり,その上で,原告は,亡Aの右片麻痺の症状を伝え,搬送方法と るものであるし,現にそのことを認識していたものと認められる。また,前記1認定のとおり,亡Aが失語症の症状を呈していたことは一見明白であり,その上で,原告は,亡Aの右片麻痺の症状を伝え,搬送方法としておんぶをして欲しい旨を伝えているのであって,亡Aが右片麻痺を患っていることは,十分認識可能な状態だったものと認められる。現に,E は,原告の上記依頼の存在を否定しているものの,遅くとも亡Aが歩き始めた時点では,亡Aの動きが悪いことに気づいたと述べているものであり,本件搬送の当初の段階で,片麻痺の存在に気づいているものであるといえ,亡Aの上肢や下肢の可動範囲に大きな制限がある可能性も認識し得たものであると認められる。そうすると,本件搬送の方法が亡Aに危険を生じさせる可能性があり,場合によっては,可動範囲に制限のある上肢や下肢に骨折等の障害を生じさせる可能性があることも十分認識可能であったといえる。 一方,亡Aの主訴は,呼吸苦というものであるが,到着直後に行った検査の結果,バイタルサインとして特に問題になるような点はなかったし,呼吸苦も救急搬送の要請の直前に始まったものではなく,症状も特に激しいものではなかったのであるから,搬送に特段の緊急性が生じていたとも認められない。そうすると,Eは,搬送の経路についても原告から詳しく事情を聴取するなど,搬送経路の決定に多少の時間を掛けたとしても特に問題はなかったし,搬送そのものが時間を要する形になっても,亡Aに何らかの大きな障害が生じる状況にはなかったものであって,本件搬送以外の方法を取り得ない状況は認められないものである。現に,原告は,Eに対して,おんぶによる搬送という方法を提示しているものであり,E及びFも,救急車から原告宅に再搬送する際には,簡易な担架を用いているものであり,同日,亡Aを日大 れないものである。現に,原告は,Eに対して,おんぶによる搬送という方法を提示しているものであり,E及びFも,救急車から原告宅に再搬送する際には,簡易な担架を用いているものであり,同日,亡Aを日大板橋病院に搬送した福祉タクシーの運転手も亡Aを車いすに乗せて搬送しているのである。すなわち,Eは,本件搬送とは別のより安全な方法での搬送を行い,危険の発生を回避することは可能であったと認められる。 にもかかわらず,Eは,環境観察による適切な搬送経路,搬送方法の把握を怠り,また,片麻痺を患っているものに対しては危険がある徒手による搬送を選び,誤った選択を行ったものであり,Eには,搬送方法決定の前提となる情報の把握及び搬送方法の選択について注意義務違反が存したものと認められる。 被告は,原告が呼吸苦を訴えているため,横にすると苦しさが増加するためにストレッチャーによる搬送を消極とした旨述べるが,E自身,おんぶでは搬送することが駄目だと考える積極的な理由はない旨を述べているところであり,被告の主張は採用し得ない。 争点3(被告救急隊員らの違法性が阻却されるか)確かに,救急搬送は,重要な業務であり,正当な業務が尽くされた結果,何らかの損害が生じた場合に,正当な業務行為であるとして不法行為責任が発生しないという場合は否定し得ないところである(民法720条参照)。しかし,本件は,上記のとおり,業務中の被告救急隊員らの義務違反により,亡Aに権利侵害が発生しているのであり,民法720条の緊急避難の要件が充足される場合などであればともかく,上記1認定の事実からみれば,そのような緊急性が認められる余地は全くないのであるから,被告の主張は採用し得ない。 争点4(損害及び因果関係)(1)亡Aの入院についてア証拠によれば,以下の事実が認められる。 ( みれば,そのような緊急性が認められる余地は全くないのであるから,被告の主張は採用し得ない。 争点4(損害及び因果関係)(1)亡Aの入院についてア証拠によれば,以下の事実が認められる。 (ア)亡Aは,平成18年1月12日に日大板橋病院で右上腕骨頚部骨折と診断された。治療としては保存的加療が可能であると診察され,同日三角巾で右腕を吊し,バストベルトで固定して自宅に帰り,翌日通院においても,経過観察を行い,自宅に帰宅している。 (乙7(123丁以下),甲31)(イ)亡Aは,平成18年1月16日に日大板橋病院に入院し,同年3月3日に退院した。同病院のレセプト(甲6)の主傷病名及び入院の契機となった傷病名はリンパ腫の疑いとされおり,入院診療録の「腎内泌科入院病歴概要」(乙7,134丁)の主訴欄には,血糖高値,リンパ節腫脹精査と記載され,現病歴欄には,入院の契機として,血糖値高値のため入院となった旨の記載がされ,右上腕骨頚部骨折との記載はされて いない。入院中は同年1月18日,同年1月30日,同年2月13日と2週間に1回程度の整形外科の外来の受診をしているが,経過観察が中心の診察であり,同年2月13日にはレントゲン撮影の結果,仮骨形成が認められ,固定具を外すように指示がされている。日大板橋病院で整形外科の受診は,その際で終了となっている。 (甲6の1,乙7(127丁以下))(ウ)その後,亡Aは,日大板橋病院の退院日である平成18年3月3日に埼玉県和光市の菅野病院に入院した。同病院においては,当初から食事療法や血糖降下薬により,血糖コントロールを行い,右不全麻痺に対しリハビリを行うとの計画が立てられた。亡Aは,翌4日に整形外科を受診したが,骨癒合良好との診断がされ,右片麻痺について右肘,肩,膝の拘縮があるとして,リハビリテー ントロールを行い,右不全麻痺に対しリハビリを行うとの計画が立てられた。亡Aは,翌4日に整形外科を受診したが,骨癒合良好との診断がされ,右片麻痺について右肘,肩,膝の拘縮があるとして,リハビリテーションの指示がされた。入院期間中は,内科的な検査に基づき主に投薬治療と食事コントロールが施され,同年3月4日以降整形外科を受診した形跡はない。同年3月10日からはリハビリを開始したが,リハビリは計9日程度行われたにとどまり,亡Aは,同年4月15日に同病院を退院した。 (甲7の1及び2,乙8(19丁,67丁以下))イ上記アの経過により,原告が入院付添費や付添人交通費を請求する根拠となる亡Aの入院について,本件搬送との因果関係を検討するに,骨折は,一般には,発症の後,患部の固定などの当初の治療の後は,特別な事情のない限り,自然の治癒力により徐々に軽快し,治癒に向かっていくという回復の経過をたどるものであり,本件においても当初から保存的治療が可能であるとの診断がされ,初診日に帰宅が許され,その後,別の理由で入院に至ったものの,実際に2週間に1度程度の経過観察中心の保存的治療が行われるのみで,仮骨形成に至っている。これらの事実に鑑みれば,本件の右上腕骨頚部骨折の治療のために入院が必要であったとは認められな い。 日大板橋病院及び菅野病院においては,入院に際して,併存傷病名として右上腕骨頚部骨折が挙げられているものの,具体的にはレントゲン撮影や経過観察,さらには多少のリハビリテーションがされたにとどまり,これらの診察,治療のためのみに特に入院が必要であるとは考えられず,本件の入院は,むしろ骨折の治療のためではなく,血糖コントロールと右片麻痺についてのリハビリを行うためのものであるというべきである。 以上によれば,亡Aの入院は,他の傷病の治療のた るとは考えられず,本件の入院は,むしろ骨折の治療のためではなく,血糖コントロールと右片麻痺についてのリハビリを行うためのものであるというべきである。 以上によれば,亡Aの入院は,他の傷病の治療のためのものと認めるのが相当であり,右上腕骨頚部骨折についてみれば,本来通院によっても可能であった治療を別の理由で入院した際に入院先の病院で行ったものにすぎないというべきである。 (2)亡Aに生じた障害の程度及び因果関係ア上記1の認定によれば,亡Aの右上腕骨頚部骨折が本件搬送により生じたものであると認められるが,原告がその骨折を契機にして生じたと主張する右肩関節の拘縮,右肘関節・右手関節の拘縮,下肢の廃用症候群及び精神的な廃用症候群が実際に生じているものであるか,また,本件搬送と因果関係を有するかは,当事者間に争いがある。 イ右肩関節の拘縮乙7(99丁)及び甲4によれば,症状固定後の平成18年12月25日の時点において原告の右肩の自動運動の可動域が,本件搬送前から制限されていた外旋を除き大幅に制限されていることが認められる。そして,亡Aは,症状固定後も右肩に痛みを伴っていたものと認められ(甲4),また,骨折の治療のために患部を固定した期間について,その固定に伴う筋力の低下が発生したものと推認され,そのような場合,痛みや筋力の低下等により自動が制限されている以上は,それを含めて後遺症として判断すべきであって(甲32参照),他動により関節が可動することをもって障 害が生じることはないと判断することは相当でない。この点,被告は,骨折による可動域制限は,神経損傷や腱断裂と異なり,他動による可動域で判断すべきで,他動による可動域にほぼ変化がない点をもって後遺症が存しないものと述べるが,骨折そのもののみならず,治療の過程において患部の固定を余 限は,神経損傷や腱断裂と異なり,他動による可動域で判断すべきで,他動による可動域にほぼ変化がない点をもって後遺症が存しないものと述べるが,骨折そのもののみならず,治療の過程において患部の固定を余儀なくされ,それによる筋力低下によって,骨格的には機能障害が存しなくとも動かすことができないとの症状も考えられるのであるから,自動による可動域に制限が生じていることも後遺症と判断すべきである。 そして,右肩関節の拘縮については,患部に至近の部位であり,亡Aは,治療中,少なくとも約4週間程度は,患部の固定を余儀なくされたのであるから,それが本件搬送と因果関係を有することは明らかというべきである。 ウ右肘関節・右手関節の拘縮右肘関節・右手関節について,本件搬送による骨折後に拘縮が生じていることは被告も認めるところである。そして,乙6,乙7など本件搬送による骨折前のカルテ等に亡Aの右肘や右手の関節について拘縮が生じていた旨の記載はなく,上記のとおり,骨折の治療として,バストベルトや三角巾で右上肢を固定したことが認められるのであるから,右肘や右手の拘縮については,本件搬送との間に因果関係が存するものというべきである。 エ下肢の廃用症候群及び精神的廃用症候群原告は,本件搬送による骨折の治療のために安静を余儀なくされたことから,下肢の廃用症候群及び精神的廃用症候群が生じ,ひいては,本件搬送による骨折後1年1か月後に死の結果が生じた旨の主張をするところであり,そして,原告の主張によれば,下肢の廃用症候群は,安静を余儀なくされたことにより生じたものであり,下肢の廃用による日常生活能力の低下,特に歩行能力の低下が精神的な廃用の大きな要因となったと述べる ところである。 しかし,上記(1)のとおり,本件搬送による骨折後の入院が右上腕骨頚部骨折のための の廃用による日常生活能力の低下,特に歩行能力の低下が精神的な廃用の大きな要因となったと述べる ところである。 しかし,上記(1)のとおり,本件搬送による骨折後の入院が右上腕骨頚部骨折のためのものとは認められないことによれば,亡Aが入院をしたことにより生じた障害については,本件搬送により生じたものとみることはできないこととなる。そうすると,亡Aが本件搬送による骨折後に入院を余儀なくされ,安静を強いられた主な原因は,他の傷病にあったのであるから,原告の主張は最も重要な前提を欠くものというべきである。 そして,原告は,甲27,甲30といった,廃用症候群の一般的見識にかかる書証を提出するものの,本件において具体的に原告が廃用症候群を発症し,それが本件搬送と因果関係を有することを基礎付ける具体的な証拠を提出するには至っていない。 以上によれば,原告の本件搬送による骨折により下肢の廃用症候群及び精神的廃用症候群が生じたとの主張は,これを採用することはできない。 (3)損害額の算定ア治療費(ア)症状固定前の治療費上記2のとおり,原告が本件搬送により骨折したことが認められるが,上記(1)認定の事実によれば,本件搬送による骨折での入院の必要は認められない。しかし,原告の請求は,別紙治療経過1のとおり,通院と入院中の診察のうち右上腕骨頚部骨折にかかる診察・治療にかかる部分に限定されているものと認められ,原告主張の3万9580円について本件搬送と因果関係のある損害と認められる。 (イ)症状固定後の治療費甲11の1ないし6,甲12の1ないし3によれば,亡Aが症状固定日である平成18年10月31日より後の時期においても朝霞台中央総合病院に通院し,堀ノ内クリニックに訪問リハビリテーションを受診し ている事実が認められる。しかし,乙6によれば ,亡Aが症状固定日である平成18年10月31日より後の時期においても朝霞台中央総合病院に通院し,堀ノ内クリニックに訪問リハビリテーションを受診し ている事実が認められる。しかし,乙6によれば平成18年11月7日から同年11月20日までの通院は,脳外科への通院であり,カルテにも脳血管疾患等リハビリテーションとの記載がされている(乙6(82丁以下))。さらに,亡Aは,平成18年11月22日にけいれんの発作により救急車で朝霞台中央総合病院に搬送され緊急入院し,同月29日に退院している(乙6(136丁以下))。その後の同年12月4日,18日,25日にも通院をしているが,受診したのは脳外科であり,カルテには脳血管疾患等リハビリテーションと記載されている(乙6(85丁以下))。以上の事実に加え,本件の通院が症状固定後のものであることを考慮すれば,これらの通院は,本件搬送とは因果関係を有しないものと評価することが自然である。原告は,整形外科での通院が所定日数に達したことから,脳外科でリハビリテーションを受診した旨を述べるが,これを認定するに足りる証拠はない。 イ付添看護費上記(1)のとおり,亡Aの入院が他の傷病により生じたものであると認められることによれば,入院付添費については,本件搬送による骨折の有無にかかわらず生じた蓋然性が高い負担であり,本件搬送との因果関係を有しない損害というべきである。 通院付添費については,亡Aが右片麻痺を患っており,また,失語症で会話も困難な状況にあったことにかんがみれば,通院に際しての付添は不可欠なものであるといえ,原告主張の付添看護費は12万8700円の範囲で本件搬送と因果関係を有するものと認められる。 ウ通院交通費本人通院交通費は,別紙本人通院交通費記載の交通費のうち,上記(1)のとおり本件搬送と え,原告主張の付添看護費は12万8700円の範囲で本件搬送と因果関係を有するものと認められる。 ウ通院交通費本人通院交通費は,別紙本人通院交通費記載の交通費のうち,上記(1)のとおり本件搬送と因果関係があると認められる症状固定日である平成18年10月30日までのもの,すなわち4万6175円について本件搬送 と因果関係があるものと認められる。付添人交通費については,別紙付添人交通費記載のものを請求しているが,いずれも入院付添のための交通費であり,入院が本件搬送による骨折によるものではなく,他の原因により生じたものと認められる以上,本件搬送と因果関係を有しないものとみるのが相当である。 エ損害賠償請求費用甲16ないし20によれば,原告が診断書や診療報酬明細書の取得費,医師との面談料として,合計2万3340円の支出をしたことが認められ,これらは,いずれも本件搬送と因果関係を有する損害であると認められる。 オ傷害慰謝料原告は,本件搬送による骨折後,他の事由での入院期間中に並行して行った治療も含め,症状固定日である平成18年10月31日まで通院を行い,その期間は約10か月であると認められる。この傷害による苦痛を慰謝するためには,金145万円が相当である。 カ後遺症慰謝料上記(2)のとおり,本件搬送と因果関係を有する原告の障害は,右肩関節の拘縮と右肘関節・右手関節の拘縮であり,甲4によれば,右上肢は自動ではほぼ可動が困難な状況であると認められる。この状態のみを後遺障害等級に当てはめると5級6号に該当するものと認められる。一方,原告が本件搬送以前から右片麻痺を患っており,右上肢の機能は大幅に制限を受けたものであったことによれば,原告の後遺障害による慰謝料も,原告の素因による相当の減額を受けるべきこととなる。そして,その減額の割合 搬送以前から右片麻痺を患っており,右上肢の機能は大幅に制限を受けたものであったことによれば,原告の後遺障害による慰謝料も,原告の素因による相当の減額を受けるべきこととなる。そして,その減額の割合については,当事者においても明示的に主張はしておらず,一義的に決せられるものではないが,上肢の三大関節中一関節の機能に著しい障害を残した際には10級10号として,461万円の後遺障害慰謝料が認められることとなり,右肘関節・右手関節の拘縮の部分については,これに近 い金額となるものと考えられる。そして,この額に,右肩の拘縮の増悪による損害を加えて算出することとなるところ,本件搬送による骨折前後の状況を比較して勘案した場合,本件の後遺障害慰謝料は,金500万円が相当であると認められる。 キ小括上記損害額を合計すると原告の損害は668万7795円となる。 ク弁護士費用原告は,本件搬送による骨折により訴訟提起を余儀なくされ,弁護士への委任をすることとなったが,それにより生じた弁護士費用のうち66万円の範囲について,本件搬送と因果関係を有するものと認められる。 ケ損害額上記損害を合計すると金734万7795円となる。 結論 以上によれば,原告は,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権として金734万7795円の支払請求権を有することになる。 第4 結論 以上によれば、原告の請求は,主文掲記の範囲で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担について民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行の宣言について同法259条1項をそれぞれ適用し,被告の仮執行免脱宣言の申立は,相当でないからこれを却下して,主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第2民事部裁判官廣澤諭 法259条1項をそれぞれ適用し,被告の仮執行免脱宣言の申立は,相当でないからこれを却下して,主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第2民事部裁判官廣澤諭
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