平成15年1月28日宣告平成13年特(わ)第4477号消費税法違反,地方税法違反 主文 被告人株式会社Aを罰金3000万円に,被告人Bを懲役2年6月に処する。 被告人Bに対し,この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人株式会社A(以下「被告会社」という)は,東京都世田谷区CD丁目E番F号に本店を置き,ゴルフ用品製造販売等を目的とする資本金30億2765万円の株式会社であり,被告人B(以下「被告人」という)は,被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括掌理していたものであるが,被告人は,被告会社の業務に関し,消費税及び地方消費税の譲渡割を免れるとともに,不正に還付を受けようと企て,別表記載の輸出物品販売場において,課税売上に該当するゴルフ用品等を販売したにもかかわらず,外国人旅行者への免税売上であるかのように仮装した上,第1 1 平成9年4月1日から平成10年3月31日までの課税期間における被告会社の実際の消費税の課税標準額が288億3580万4000円(別紙1の修正課税標準額計算書参照)で,これに対する消費税額が11億5332万4950円であり,これから控除されるべき消費税額が14億6766万1495円で,控除不足還付税額が3億1433万6545円であったにもかかわらず,平成10年5月29日,東京都世田谷区GH丁目I番J号所轄K税務署において,同税務署長に対し,課税標準額が273億9710万2000円で,これに対する消費税額が10億9577万7400円であり,これから控除されるべき消費税額が14億6690万4543円で,控除不足還付税額が3億7112 し,課税標準額が273億9710万2000円で,これに対する消費税額が10億9577万7400円であり,これから控除されるべき消費税額が14億6690万4543円で,控除不足還付税額が3億7112万7143円である旨の内容虚偽の消費税及び地方消費税の確定申告書(平成14年押第160号の1)を提出し,よって,同税務署長をして,上記控除不足還付税額3億7112万7143円を被告会社に還付することを決定させた上,同年6月29日,神奈川県横浜市L区MN丁目O番P号Q銀行R支店に開設した株式会社A代表取締役B(以下「被告会社名義」という)の当座預金口座に振込入金させ,もって,不正の行為により,上記課税期間の正規の控除不足還付税額3億1433万6545円と上記申告にかかる控除不足還付税額3億7112万7143円との差額5679万0598円(別紙2のほ脱税額計算書参照)の還付を受け 2 前記課税期間における被告会社の実際の地方消費税の控除不足還付税額が1640万5477円で,これに対する還付譲渡割額が410万1369円であったにもかかわらず,同年5月29日,前記K税務署において,同税務署長に対し,地方消費税の控除不足還付税額が7319万4365円で,これに対する還付譲渡割額が1829万8591円である旨の内容虚偽の前記確定申告書を提出し,よって,同税務署長をして,上記譲渡割額1829万8591円を被告会社に還付することを決定させた上,同年6月29日,前記Q銀行R支店に開設した被告会社名義の当座預金口座に振込入金させ,もって,不正の行為により,上記課税期間の正規の還付譲渡割額410万1369円と上記申告にかかる還付譲渡割額1829万8591円との差額1419万7222円(別紙2のほ脱税額計算書参照)の還付を受け第2 1 平成10年4月1日 間の正規の還付譲渡割額410万1369円と上記申告にかかる還付譲渡割額1829万8591円との差額1419万7222円(別紙2のほ脱税額計算書参照)の還付を受け第2 1 平成10年4月1日から平成11年3月31日までの課税期間における被告会社の実際の消費税の課税標準額が293億1277万8000円(別紙1の修正課税標準額計算書参照)で,これに対する消費税額が11億7251万1120円であり,これから控除されるべき消費税額が6億8324万0971円であって,納付すべき消費税額が4億8927万0100円であったにもかかわらず,同年5月28日,前記K税務署において,同税務署長に対し,課税標準額が282億9755万6000円で,これに対する消費税額が11億3190万2240円であり,これから控除されるべき消費税額が6億8301万2400円であって,納付すべき消費税額が4億4888万9800円である旨の内容虚偽の消費税及び地方消費税の確定申告書(同押号の2)を提出し,もって,不正の行為により,上記課税期間の正規の納付すべき消費税額4億8927万0100円と上記申告にかかる納付すべき消費税額4億4888万9800円との差額4038万0300円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ 2 前記課税期間における被告会社の実際の地方消費税の課税標準額が5億0314万9600円でこれに対する譲渡割額が1億2578万7400円であったにもかかわらず,同年5月28日,前記K税務署において,同税務署長に対し,地方消費税の課税標準額が4億6276万9300円で,これに対する譲渡割額が1億1569万2300円である旨の内容虚偽の前記確定申告書を提出し,もって,不正の行為により,上記課税期間の正規の納付すべき譲渡割額1億2578万7400円と上記申告にかか これに対する譲渡割額が1億1569万2300円である旨の内容虚偽の前記確定申告書を提出し,もって,不正の行為により,上記課税期間の正規の納付すべき譲渡割額1億2578万7400円と上記申告にかかる納付すべき譲渡割額1億1569万2300円との差額1009万5100円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ第3 1 平成11年4月1日から平成12年3月31日までの課税期間における被告会社の実際の消費税の課税標準額が249億5209万3000円(別紙1の修正課税標準額計算書参照)で,これに対する消費税額が9億9808万3720円であり,これから控除されるべき消費税額が6億3496万9051円であって,納付すべき消費税額が3億6311万4600円であったにもかかわらず,同年5月31日,前記K税務署において,同税務署長に対し,課税標準額が228億6084万7000円で,これに対する消費税額が9億1443万3880円であり,これから控除されるべき消費税額が6億3496万9051円であって,納付すべき消費税額が2億7946万4800円である旨の内容虚偽の消費税及び地方消費税の確定申告書(同押号の3)を提出し,もって,不正の行為により,上記課税期間の正規の納付すべき消費税額3億6311万4600円と上記申告にかかる納付すべき消費税額2億7946万4800円との差額8364万9800円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ 2 前記課税期間における被告会社の実際の地方消費税の課税標準額が3億6435万7200円で,これに対する譲渡割額が9108万9300円であったにもかかわらず,同年5月31日,前記K税務署において,同税務署長に対し,地方消費税の課税標準額が2億8070万7300円で,これに対する譲渡割額が7017万6800円である旨の内容虚偽 円であったにもかかわらず,同年5月31日,前記K税務署において,同税務署長に対し,地方消費税の課税標準額が2億8070万7300円で,これに対する譲渡割額が7017万6800円である旨の内容虚偽の前記確定申告書を提出し,もって,不正の行為により,上記課税期間の正規の納付すべき譲渡割額9108万9300円と上記申告にかかる納付すべき消費税額7017万6800円との差額2091万2500円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れたものである。(別表及び別紙添付省略)(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,被告人が輸出物品販売場においていわゆる韓国人バイヤーに対し免税販売できるものと信じていたから,ほ脱の犯意がなく,被告人及び被告会社とも無罪である旨主張し,被告人及び被告会社代表者Sもこれに沿う供述をしている。 しかしながら,被告人のほ脱の犯意は,以下の理由から,これを認定することができる。 2 消費税法8条1項は,輸出物品販売場(いわゆる免税店)において,非居住者に対し政令で定める物品で輸出のため所定の方法で購入しようとするものを譲渡する場合,免税店を経営する事業者に対し消費税を免除する旨を定め,同法施行令18条1項は,上記物品を,「通常生活の用に供する物品」と規定している。この「通常生活の用に供する物品」とは,当該非居住者が通常の生活において用いようとする物品を指すのであって,その者が国外における事業用又は販売用として購入することが明らかな物品は含まれないと解するのが,いわゆる輸出免税等(同法7条)のほかに免税店制度を設けた趣旨に照らし相当である。 関係証拠によれば,本件の不正な免税売上は,いずれも韓国人バイヤーを取引相手とするもので,同人らは,韓国に密輸して販売する目的で,被告会社の各免税店において,1取引当たり数千万円から1億円に上る 関係証拠によれば,本件の不正な免税売上は,いずれも韓国人バイヤーを取引相手とするもので,同人らは,韓国に密輸して販売する目的で,被告会社の各免税店において,1取引当たり数千万円から1億円に上る代金を支払って多数の被告会社製のゴルフクラブ等を継続的に購入していたことが認められるから,これが「通常生活の用に供する物品」の購入に該当するものとは到底いえず,韓国人バイヤーとの上記取引が免税販売の対象とならないことは明らかである。 3 そこで,韓国人バイヤーに対する免税販売の可否に関する被告人の認識について検討するに,ほ脱の犯意を自白する被告人の供述調書(不同意部分)を除くその余の各証拠によれば,以下の各事実を認めることができる。 (1) 被告会社は,ゴルフ人気が上がるとともに自社のゴルフ製品の需要が高くなっている韓国に代理店を持ち,被告会社の貿易部が担当部署となって,同代理店に対してゴルフクラブ等を輸出販売している。この場合,我が国の消費税はいわゆる輸出免税となるものの,韓国の関税が70%掛かることから,通常の3割5分から4割という低い販売価格に抑えざるを得ない状況にあった。 そのため,被告会社は,従前,韓国にゴルフクラブ等を密輸する韓国人バイヤーに対し,自社製のゴルフクラブ等を,定価販売品については定価の6割5分に,型落ち品等の特価品については定価より低い特別価格のさらに8割に各相当する卸売価格で販売していた。当初はこれに消費税3%分を上乗せして代金を取っていたが,後に,韓国人バイヤーからの値引き要求等により,消費税3%分を値引きするとともに,消費税を内税方式とする形で販売するようになった。しかし,その後も,韓国人バイヤーからの値引き要求は高まり,免税販売の要望も出るようになった。 そして,平成9年4月1日から消費税及び地方消 に,消費税を内税方式とする形で販売するようになった。しかし,その後も,韓国人バイヤーからの値引き要求は高まり,免税販売の要望も出るようになった。 そして,平成9年4月1日から消費税及び地方消費税(以下,単に「消費税」ともいう)が合計して5%に上がることとなり,その旨がマスコミ等でも取り上げられるようになった。こうして,被告会社が消費税分を値引きするといった従来の韓国人バイヤーに対する販売方法を継続したのでは,韓国人バイヤーとの取引において被告会社の負担が消費税2%分増えることが確実となる状況となった。 (2) 被告人は,被告会社の創業時からの経営者としてその営業を統括支配していたもので,韓国人バイヤー等に対する販売についても,日頃からその状況を把握し,販売価格等の詳細を自身で決定した上,各営業店に対し電話で直接指示するなどしていた。そして,被告人は,韓国人バイヤーが自己の通常の生活に用いるためではなく韓国へ密輸し商売として販売する目的で被告会社からゴルフクラブ等を大量に仕入れ購入しているということを熟知していた。 また,被告人は,前記(1)の経緯・状況を十分承知しており,平成9年4月1日からの消費税率の引き上げを踏まえ,被告会社が消費税分を実質的に負担するという従前の販売方法を続けたのでは被告会社の負担が増加し儲けが減ることになるし,他方,韓国人バイヤーから消費税分を取れば同人らが被告会社から離れてしまうと考えた。そこで,韓国人バイヤーから免税販売の要望が出るなどしたことから,同人らへの売上及び儲けを増大させるため,被告会社における主だった営業店に免税販売許可を受けさせようと決め,平成8年暮れ頃から翌9年初め頃,被告会社経理部課長代理であるTに対し,U店及びV店について免税店許可申請をするよう命じた。 (3) Tは,平成 主だった営業店に免税販売許可を受けさせようと決め,平成8年暮れ頃から翌9年初め頃,被告会社経理部課長代理であるTに対し,U店及びV店について免税店許可申請をするよう命じた。 (3) Tは,平成9年1月,所轄税務署に対し,U店及びV店等につき免税店許可申請を行い,同年2月には,免税取引の要領等についてのマニュアルを作成して免税店となる各営業店に郵送した。同マニュアルには,免税販売できる場合として一般の海外旅行者が通常生活の用に供する物品を輸出するために購入する場合である旨明記されているほか,免税販売の要件が満たされない場合には購入者から消費税を受け取っていない販売でも課税販売とみなされて被告会社が消費税相当額を負担することになる旨の注意喚起がなされていた。 被告会社経理部には,V店及びU店の各店長から,韓国人バイヤーに対して免税販売ができないのではないかという問い合わせがなされたが,被告人は,各店長に対し,韓国人バイヤーを対象にしてゴルフクラブ等の免税販売を積極的に行うよう指示した。こうして,被告会社は,平成9年3月から,免税店許可が下りた営業店において,韓国人バイヤーに対する免税販売を開始した。被告人は,従前どおり,同バイヤーとの取引状況を詳細に把握し,販売価格を決定しこれを各免税店の店長等に指示して実行させた。 (4) 被告会社においては,経理部副部長であるW及び同部課長代理である前記T(平成9年4月以降は課長)が,被告人の腹心として経理部門における事務を取り扱っていた。両名は,免税店で免税販売できるのは外国人旅行者による土産品程度の買い物であって,被告会社の各免税店において開始した韓国人バイヤーに対するゴルフクラブ等の販売は免税の対象ではなく消費税は免税されないことを承知していた。なお,被告人の実弟で被告会社においてはゴ の買い物であって,被告会社の各免税店において開始した韓国人バイヤーに対するゴルフクラブ等の販売は免税の対象ではなく消費税は免税されないことを承知していた。なお,被告人の実弟で被告会社においてはゴルフクラブ等の製造部門を統括する副社長のSも,韓国人バイヤーに対する免税販売ができないことを知っていた。 以上の各事実,殊に,被告人は,被告会社の営業を統括支配し,韓国人バイヤーとの取引の詳細を把握し決定していたもので,同人らが密輸・販売目的でゴルフクラブ等を大量に購入していることを熟知していたこと,また,従前,韓国人バイヤーに対し消費税の掛かる販売方法をとり続けて来たのに,同人らへの売上を増大させるため自ら免税店許可申請を決定し,韓国人バイヤーへの免税販売を積極的に行うよう指示したこと,被告人の腹心の部下である経理部の担当者のみならず,製造部門を統括していた被告人の実弟でさえ,韓国人バイヤーに対する免税販売ができないことを知っており,さらに,各営業店の店長も韓国人バイヤーへの免税販売を疑問視する問い合わせを行っていたことを総合すると,被告人において,韓国人バイヤーに免税販売できると認識していたとするのは極めて不自然かつ不合理であり,逆に免税販売ができないとの認識を有していたものと推認するのが相当である。 4 ところで,被告人は検察官に対し,ほ脱の犯意を自白し,その旨の調書(乙2,3,6,7,9及び10の各不同意部分)が作成されている。その自白(以下「本件自白」という)の概要は,「免税店制度とは通常の海外旅行者が土産品として購入する物について免税で販売する制度であると認識していた。韓国人バイヤーはいわゆるヤミ屋で,商品を密輸し販売する商売人であるから,免税販売のできない相手であることは,はじめから分かっていた。しかし,売上を少しでも伸ばし で販売する制度であると認識していた。韓国人バイヤーはいわゆるヤミ屋で,商品を密輸し販売する商売人であるから,免税販売のできない相手であることは,はじめから分かっていた。しかし,売上を少しでも伸ばしたいと考えて,韓国人バイヤーに免税販売することを決めて,免税店許可の申請を行い,同人らへの免税販売を実行した。」というものである。以下,本件自白の任意性及び信用性について検討する。 まず,任意性からみると,関係証拠によれば,被告人は,平成13年2,3月に国税局で事情聴取を受け,暫くの間ほ脱の犯意を否認していたが中途から自白に転じ,その後同年10月に検察官の取調べを受けて本件自白をしたこと,本件はいわゆる在宅事件であって,被告人は身柄拘束を受けていないこと,被告人は,国税局及び検察庁での各取調べに際し,被告会社の顧問弁護士(本件の主任弁護人)から助言を得ることが可能だったもので,殊に,検察庁での取調べの開始前及びその最中には,既に弁護人として選任されていた同弁護士から,自分の意思を貫くよう,そして,意に反する供述調書に対しては訂正申立や署名指印の拒否をするようアドバイスを受け,また,取調べ後その様子を同弁護士に報告していたこと,検察官は取調べに当たり,高齢で喘息等の持病のある被告人の体調に配慮していたことが認められる。これらの事情に照らすと,本件自白の任意性を肯定することができ,それを否定する弁護人の主張及び被告人の公判供述は採用できない。 次に,信用性についてみると,次の各事情を総合すれば,本件自白の信用性を優に肯定することができる。第1に,自白内容が前記3で認定した各事実と非常によく符合しており,具体性・自然性・合理性が認められる。第2に,前述のとおり,本件自白に先立つ国税局での事情聴取において,被告人はほ脱の犯意を自白しており ,自白内容が前記3で認定した各事実と非常によく符合しており,具体性・自然性・合理性が認められる。第2に,前述のとおり,本件自白に先立つ国税局での事情聴取において,被告人はほ脱の犯意を自白しており,その内容は本件自白に至るまで一貫している。さらに,国税局での当初の否認供述を録取した質問てん末書の中にも,免税店制度が適用されるのは通常の海外旅行者が土産品程度の物を購入する場合であると認識していた旨の,本件自白につながる不利益供述の記載が見られる(乙22)。第3に,被告会社のV店の店長及びU店の副店長は,被告人から受けた指示内容をそれぞれノート(平成14年押第160号の9及び10)に記載しているところ,各記載からは,被告人の意図が韓国人バイヤーに限定して免税販売を行うものであったと読み取ることができ,これは,「免税販売のできない相手であると分かっていた韓国人バイヤーに免税販売することを決めて,免税店許可申請を行った。」旨の本件自白を裏付けるものといえる。第4に,本件自白に関連して,被告人の検察官調書(乙3の不同意部分)中には,「部下のT課長から,細かな言葉の言い回しは忘れたが,韓国人バイヤーへの販売は免税の対象とはならない旨の進言を受けた。しかし,これを聞かずに同課長に免税店許可申請を指示した。」との供述部分があるが,同部分は,証人Tの「被告人に対し,遠回しに韓国人バイヤーへの販売は免税の対象とはならないという意味を込めた進言をした。」旨の証言(第2回公判調書中の同証人の供述部分)に裏付けられている。なお,同証人は,進言の際被告人が韓国人バイヤーに対して免税販売できると思い込んでいると感じた旨証言しているが,仮にそう感じたとしても,上記の被告人の供述部分と両立し得るのであって,同供述部分の信用性を否定するものではない。以上の各事情のほか ーに対して免税販売できると思い込んでいると感じた旨証言しているが,仮にそう感じたとしても,上記の被告人の供述部分と両立し得るのであって,同供述部分の信用性を否定するものではない。以上の各事情のほか,第5に,前述のとおり,本件自白の任意性を肯定できることも併せ考慮すると,本件自白の信用性を十分肯定することができるのである。 5 弁護人は,被告人のほ脱の犯意を否定する事情として,被告人が居住するシンガポールの免税販売制度は,一般旅行者に限定されず,いわゆるバイヤーでも誰でも免税購入の上,空港で消費税分を返してもらえるもので,被告人は,これと同様に,日本の免税店でも韓国人バイヤーに対する免税販売ができると考えていたと主張し,被告人も公判で同旨の弁解をしている。しかし,被告人は,捜査の初期の段階から海外旅行での土産品購入の例を挙げて免税販売制度一般に関する供述をしており,免税店許可申請に当たりシンガポールの免税販売制度が真実被告人の脳裏にあったのであれば,捜査段階でそれに言及しないはずがなく,当公判廷で初めて同制度を言い出したのは,いかにも唐突であって不自然というほかない。なお,シンガポールの免税販売制度の実態は証拠上つまびらかではないが,日本の免税店制度とは明らかにシステムが異なっており,この点でも被告人の上記弁解は疑わしいというべきである。したがって,弁護人の上記主張は採用できない。 弁護人はまた,被告人が証拠の隠蔽工作をしなかったのは,ほ脱の犯意がなかったことの証左であると主張する。しかし,この点につき,被告人は検察官に対し,「免税店販売が摘発されたという話を聞いたことがなかったので高をくくっていた。もし見つかったら,その時はその時であり,そこで止めればいいと思っていた。」旨供述しており(乙10),前記T証言中にも「違法行為と分か が摘発されたという話を聞いたことがなかったので高をくくっていた。もし見つかったら,その時はその時であり,そこで止めればいいと思っていた。」旨供述しており(乙10),前記T証言中にも「違法行為と分かっていたが,それが公になっても,国税局から更正通知を受ける程度だと思っていた。」旨の同様の供述部分が存するほか,免税扱いを受けるためには所要の書類を作成・保存して確定申告をする必要があり,韓国人バイヤーに免税販売した事実を明らかにする書類を廃棄・改変するのが困難であるということも併せ考えると,弁護人の上記主張も採用することができない。 弁護人が主張するその他の点を検討しても,被告人のほ脱の犯意を疑わせるに足りる事情は見出せない。 6 以上の次第であるから,前記3の被告人のほ脱の犯意を推認させる諸事実及び前記4の信用し得る本件自白を総合すれば,被告人がほ脱の犯意を有していたと優に認定することができる。 (量刑の理由)本件は,ゴルフ用品製造販売等を営む被告会社の代表取締役である被告人が,同会社の業務に関し,3課税期間にわたり,課税売上に該当するゴルフ用品等を販売したにもかかわらず,外国人旅行者への免税売上であるかのように装って,消費税及び地方消費税を免れるなどした事案である。 本件各犯行における脱税額は,平成10年3月期は消費税及び地方消費税の各不正還付額合計7098万円余り,平成11年3月期は消費税及び地方消費税の各ほ脱額合計5047万円余り,平成12年3月期は消費税及び地方消費税の各ほ脱額合計1億0456万円余りと,総計で2億2602万円余りの多額に上り,本件結果は重大である。本件の犯行態様は,被告会社の免税店で,韓国人バイヤーに対してゴルフクラブ等の免税販売を繰り返した上,同バイヤーを外国人旅行者と装い,課税標準に計上等しな 円余りの多額に上り,本件結果は重大である。本件の犯行態様は,被告会社の免税店で,韓国人バイヤーに対してゴルフクラブ等の免税販売を繰り返した上,同バイヤーを外国人旅行者と装い,課税標準に計上等しないまま確定申告し,消費税及び地方消費税を不正に受還付し又は免れたもので,大胆かつ計画的で悪質というほかない。被告人は,被告会社のワンマン社長として,部下に指示し免税店許可申請をさせてこれを取得した上,各免税店の店長等に対し韓国人バイヤーへの免税販売を具体的に指示命令し,免税売上として経理処理させるなどして本件犯行に及んだものであり,強固な犯意に基づいた意欲性・積極性が認められる。本件のきっかけとして韓国人バイヤーから強い値引要求があったことは認められるものの,結局,犯行の動機は,脱税をしてでも韓国人バイヤーに対する売上を維持拡大したいというものであって酌量の余地がない。しかも,被告会社が韓国に有する代理店を通じて同国へ輸出するという正規のルートをもっていたことに照らすと,本件犯行がゴルフ用品の韓国への密輸を助長促進した面があることは否定し難く,この点も犯情として看過できない。さらに,被告人は,ほ脱の犯意を頑強に否認しており,その点で本件を心底反省しているとは認め難い。 以上によれば,被告人及び被告会社の刑事責任は重大であり,特に被告人については懲役刑の実刑も十分考慮されるところである。 しかし,他方,次のような斟酌すべき情状も存在する。 まず,被告会社は,早期に修正申告を行った上,本税及び加算税,延滞税等の附帯税を全て納付した。また,本件犯行は,前述した態様のものであるが,消費税脱税犯の一類型であるところの控除対象仕入税額の過大申告による詐欺的な受還付事犯とは類型を異にしており,顧客が支払った消費税相当分を除外してこれを裏金などとし は,前述した態様のものであるが,消費税脱税犯の一類型であるところの控除対象仕入税額の過大申告による詐欺的な受還付事犯とは類型を異にしており,顧客が支払った消費税相当分を除外してこれを裏金などとして留保したというわけでもなく,これらの点は犯情として相応に斟酌すべきである。さらに,本件を契機として,被告会社は,役員体制を一新し,違法行為の再発防止に向けて健全な運営を図っている。 次に,被告人の個人的情状をみるに,その前科は約40年前の交通関係の罰金刑のみであり,高齢で,しかも慢性気管支炎喘息を患うなど体調が思わしくない。また,被告人は,昭和30年代にゴルフクラブの製造販売業を始めてから本件犯行に至るまでの間,被告会社の経営に打ち込むなど真面目に人生を歩んで来たのであって,本件犯行も,個人的な私利私欲を目的としたものではない。さらに,被告人は,本件を契機に,自ら作り上げた被告会社の役員を降り,12億円弱の退職慰労金も放棄した。そして,被告人は,本件脱税の結果については自らの非と責任を認め,反省の弁を述べている。 そこで,以上の諸事情を総合考慮して,被告会社及び被告人を主文の各刑に処し,被告人に対してはその懲役刑の執行を猶予することとした。 (求刑ー被告会社に対し罰金3000万円,被告人に対し懲役2年6月)平成15年1月28日東京地方裁判所刑事第8部裁判長裁判官飯田喜信裁判官佐藤基裁判官富張邦夫
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