令和2年2月19日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和元年(ワ)第26326号著作権侵害,ツアー企画主催奪取請求事件口頭弁論終結日令和元年12月20日判決原告A 被告B同訴訟代理人弁護士田中太陽主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,1500万円を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,被告に対し,原告が著作権を有する文章を被告が無断で改 変し,新聞に掲載したことなどが著作権侵害に当たり,原告が主催・企画したツアーの内容を勝手に変更するなどしたことなどが不法行為を構成するとして,被告に対し,合計1500万円の損害賠償金の支払を求める事案である。 2 当事者の主張 (原告)(1) 著作権侵害についてア原告は,旅行業者などを対象に「日刊霞が関運輸省特別版」を出版していた者であるが,昭和62年,原告の世話でJTBに入社し,国会議員を目指していた被告から,「議員になるのを断念した。やめるに当た って,顔の立つような内容の新聞を作ってほしい。」という要望を受け た。 イそこで,原告は,約2年間をかけ,「日刊霞が関運輸省特別版」の被告特集号(平成元年1月31日付け)を作成した上,昭和63年12月頃,被告に対し,JTB直営の印刷会社で印刷代を調べてほしいと述べ,前記特集号のオフセット印刷用の版下フィルムを渡した。 ウところが,次に被告が原告の前に現れた平成元年3月末頃,被告は,既に前記特集号を印刷した新聞200部~300部を所持していた。それまでの間,被告は,原告の許可を得ることなく,当該新聞を実家や出身大学のある地 次に被告が原告の前に現れた平成元年3月末頃,被告は,既に前記特集号を印刷した新聞200部~300部を所持していた。それまでの間,被告は,原告の許可を得ることなく,当該新聞を実家や出身大学のある地域に大量に送付したとのことであった。 エしかも,当該新聞(甲1。以下「甲1新聞」という。)の内容は,前 記版下フィルムの内容を改ざんしたものであった。具体的には,甲2,甲7の1・2,甲8の1・2の赤枠部分及び赤丸を付した一問一答の部分が改ざん箇所である。 また,被告は,その「第2号」に当たる平成元年5月22日付け新聞(甲3。以下「甲3新聞」という。)も作成していたが,これも原告作 成の文章を利用したものであった。同新聞における改ざん箇所は,甲9の赤枠内で示された部分である。 オ原告が甲1新聞の記事が改ざんされたものであることに気付いたのは,平成12~13年頃であり,ある会合に出席した際に指摘を受けて認識したものである。その際,原告は,被告に対し,被告の行為に苦情を述 べるとともに前記版下フィルムの返還を求めたが,被告の返事は「なくした。」というものであった。甲3新聞の発行を知ったのは,上記会合の後であるが,時期としては平成12~13年頃である。 なお,原告は,平成元年頃,被告から,写植代及び版下フィルム代として1万数千円を受け取ったが,それ以上の支払を受けたことはない。 カその後,「日刊霞が関運輸省特別版」は,廃刊に追い込まれた。その 大きな原因は,前記のとおり,被告が,原告の記事を大幅に改ざんし,大分合同新聞や西日本新聞も協賛しているかのようにした上,原告と霞が関通信社の名で出したことにある。 (2) ツアー企画主催奪取についてア原告は,平成5年ころ,JIJA(ジャパン・インターナ 分合同新聞や西日本新聞も協賛しているかのようにした上,原告と霞が関通信社の名で出したことにある。 (2) ツアー企画主催奪取についてア原告は,平成5年ころ,JIJA(ジャパン・インターナショナル・ ジャーナリスト・クラブ)の事業に関連し,同年末に実施されるマレーシアのサラワクへの「エコツアー」を主催することとなり,ベルナマ通信社の支局長やJTBの子会社の担当者らとともに,その企画を進めた。 イ同ツアーは,予定どおり平成5年末に実施されたが(甲6),被告は,原告の知らないうちに同ツアーに同行することとなっており,出発前に は予定になかった記念式典を実施し,ツアーの現地では予定していた1泊ツアーをキャンセルするなどした上,ツアーの途中で帰国したため,ツアー参加者は多大な迷惑を被った。 ウ原告も,同ツアーには同行していたが,全く無視され,ツアーが原告の手を離れてしまったことを感じた。このように,被告が,原告が企画 していたツアーの主催者であるかのように振る舞い,ツアーの内容も変えてしまったことは,「企画奪取」の不法行為を構成する。 なお,同ツアーは,第2弾のエコツアーであり,第1弾のエコツアーはその半年ほど前に実施されたが,第1弾のツアーは本訴の対象としていない。 (被告の主張)(1) 著作権侵害についてア原告が,「日刊霞が関運輸省特別版」を出版していた者であることは否認する。平成元年ころ,そのような名称のFAX通信を発行していたのは,株式会社霞が関通信社である。被告が,JTBに入社したこと, 国会議員になる道を探っていたことは認める。ただし,被告が原告に依 頼したのは,出馬の挨拶回りのためのパンフレットの作成である。 イ被告が,「日刊霞が関運輸省特別版」の被告特集号 と, 国会議員になる道を探っていたことは認める。ただし,被告が原告に依 頼したのは,出馬の挨拶回りのためのパンフレットの作成である。 イ被告が,「日刊霞が関運輸省特別版」の被告特集号(甲1)の版下フィルムを受け取ったことは認める。ただし,その時点で,所要の1000部は印刷済みであった。被告は,原告に対し,作成料及び印刷料50数万円を支払った上,当該版下フィルムの譲渡を受けたものである。し かも,原告が,その返還を求めてきたのは,平成14年以降になってのことである。 ウ被告が,前記被告特集号を改ざんしたとの主張は否認する。被告に著作権侵害の事実は存在しない。そもそも,前記被告特集号の著作権は,「日刊霞が関運輸省特別版」の発行人である株式会社霞が関通信社にあ り,原告には属しない可能性がある。また,「日刊霞が関運輸省特別版」が,被告の行為のために廃刊に追い込まれたとの主張も否認する。 エ仮に,被告に損害賠償責任が認められるとしても,著作権侵害があったとされる時期は,原告の主張によれば,平成元年から数年間のことであり,法定の消滅時効期間が経過している。そこで,被告は,原告に対 し,令和元年12月13日付け被告第1準備書面において,原告の被告に対する損害賠償請求権について,その消滅時効を援用する。 (2) ツアー企画主催奪取について被告が,原告の指摘する「エコツアー」に参加した事実は認めるが,その余の事実は否認し,又は知らない。仮に,被告に損害賠償責任が認められる としても,原告が問題とする被告の行為の時期は平成5年7月頃のことであったと解されるから,法定の消滅時効期間が経過している。そこで,被告は,原告に対し,令和元年12月13日付け被告第1準備書面において,原告の被告に対する損害賠償請 為の時期は平成5年7月頃のことであったと解されるから,法定の消滅時効期間が経過している。そこで,被告は,原告に対し,令和元年12月13日付け被告第1準備書面において,原告の被告に対する損害賠償請求権について,その消滅時効を援用する。 第3 当裁判所の判断 1 著作権侵害について この点に関する原告の請求は,被告が,原告が著作権を有する記事を改変した上で複製し,公表するなどしたことによる著作権侵害,著作者人格権侵害の不法行為を理由とするものであると理解されるところ,原告の主張によれば,原告は,甲1記事及び甲3記事のいずれの改変,複製,公表等についても,遅くとも平成12年~13年頃には,これらの事実を知っていたということにな るから,不法行為に対する損害賠償請求権の消滅時効期間3年が経過している。 また,原告は,原告が作成した版下フィルムを被告が返還しないという事情も指摘するが,仮に,この点に何らかの不法行為を観念し得るとしても,同様に,その消滅時効が完成していることも明らかである。 なお,被告の主張は,これらの点に対する消滅時効の援用を含むものと理解 されるところ,被告が,令和元年12月20日に陳述された被告第1準備書面において,当該時効を援用したことは当裁判所に顕著である。 したがって,その余の点を検討するまでもなく,著作権侵害を理由とする原告の請求は理由がない。 2 ツアー企画主催奪取について この点に関する原告の請求は,平成5年末に実施されたツアーに関する被告の行為を問題とするものと理解されるところ,原告の主張によると,原告も当該ツアーの準備に関与し,ツアーにも参加していたというのであるから,原告が被告の上記行為をその頃に認識していたと認められる。そうすると,仮に,被告の当該 解されるところ,原告の主張によると,原告も当該ツアーの準備に関与し,ツアーにも参加していたというのであるから,原告が被告の上記行為をその頃に認識していたと認められる。そうすると,仮に,被告の当該行為が不法行為を構成するとしても,その損害賠償請求権に係る消 滅時効が完成していることは明らかである。 そして,被告の主張は,この点に対する消滅時効の援用を含むものと理解されるところ,被告が,令和元年12月20日に陳述された被告第1準備書面において,当該時効を援用したことは当裁判所に顕著である。 したがって,その余の点を検討するまでもなく,ツアー企画主催奪取を理由 とする原告の請求は理由がない。 3 結論よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 𠮷野俊太郎 裁判官 今野智紀
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