昭和41(行コ)9 自作農創設特別措置法による買収処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
昭和45年7月30日 大阪高等裁判所 公用負担・公用収用など
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【DRY-RUN】主   文 原判決を取り消す。 被控訴人の請求はこれを棄却する。 訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。        事   実 控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判

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主文原判決を取り消す。 被控訴人の請求はこれを棄却する。 訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。 事実控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の主張ならびに証拠関係はつぎに加えるほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。 (控訴人および補助参加人Aの主張)(一) 本件農地が「加美、巽、長瀬三箇村耕地整理組合」の事業地区内にあつたことは相違ないが、右組合設立の目的は、同地区における用水・排水の不良を改善不整形農地の整理・道路の整備・溜池の改廃等農耕の便益増進を図るためであつて、昭和一四年五月頃までに組合事業は終了したため、「加美、巽、長瀬普通水利組合」に組織変更し、さらに現在の「加美、巽、長瀬土地改良区」へ引継がれたものである。右耕地整理事業により稲作の収穫は急増し、従来の湿田は乾田に変り、従来の一毛作耕地も二毛作が可能となり、農業生産の飛躍的増進を見るに至つた。 この耕地整理事業が都市計画法による土地区画整理事業とその目的性質を異にすることはいうまでもない。 (二) 本件買収処分の対象たる農地は大池橋の南約九〇〇米の場所に位し、その東方約九〇〇米に巽町西足代部落の一部農家三、四軒、北方に本件農地に接して田一枚があり、その北に借家五、六軒が存在し、西方約一八〇米のところに孫営電線株式会社(約五〇坪)があり、東方約一五〇米に南北に走る府県平野線(但し舗装は部落内だけで幅員五・五〇米位)があつて、北西方約一、〇〇〇米に田島小学校・南方約八〇〇米に巽町大部落と四条部落の一部農家六五〇戸が存し、更に西方に四条部落一〇〇戸、南東方約一八〇米に巽町矢柄・伊賀部落の農家二一〇戸、南方一八〇米に巽町西足代部落の農家一五〇戸が存在していたが、他は農地であり、本件農地は 落の一部農家六五〇戸が存し、更に西方に四条部落一〇〇戸、南東方約一八〇米に巽町矢柄・伊賀部落の農家二一〇戸、南方一八〇米に巽町西足代部落の農家一五〇戸が存在していたが、他は農地であり、本件農地は広大な米作地帯の区域内に存在していたのである。 とくに、本件農地の存する巽地区に主要排水路である「平野川分水路」が完備せず、本件農地買収計画当時の昭和二三年頃は、雨が降れば附近一帯は道路まで水没し、その位置すら分らない状態になることが屡々であつて、四囲の環境上宅地化されるというようなことはとうてい予想できなかつたし、またそのような客観的状況ではなかつた。むしろ戦後の食糧難を反映して農業生産力の増強が要請され、それに資するため前記「加美、巽、長瀬土地改良区」が昭和二七年五月に設立された程であつた。 (三) 本件農地を含む附近一帯の宅地化が始まり出したのは、平野川分水路開設の治水事業が昭和三四年から昭和三九年頃にかけて行われ、本件地区の用排水が改良されてから後のことである。即ち本件買収処分後十数年を経過してからのことであつて、その頃から今まで見向きもされなかつた本地区にも、めざましい産業の発達と宅地需要急増の影響により、ぼつぼつ農地の宅地転用が行われ始めたのである。 自創法第五条五号にいわゆる「近く土地使用の目的を変更することを相当とする農地」とは、自創法による農地改革事業が遅くとも昭和二三年一二月末日までに完了すべきものとされていたこと(自創法施行令旧二一条((昭和二三年一二月二七日政令第三八三号による改正前のもの)))からすれば、当該買収計画を樹立する時点において、近い将来(大体一年以内)、具体的に土地使用の目的を変更するための実現確実な転用計画が存し、かつそのことが当該農地をめぐる客観的条件からして相当と認められるものを指し、かゝる農地に る時点において、近い将来(大体一年以内)、具体的に土地使用の目的を変更するための実現確実な転用計画が存し、かつそのことが当該農地をめぐる客観的条件からして相当と認められるものを指し、かゝる農地についてのみ買収から除外しようとしたものであつて、自ら厳格性が要請されることは、急速広汎な自作農の創設といつた同法の目的に照して明らかである。既述の本件土地の水利・地形・立地条件等の四囲の環境からすれば、本件買収計画当時右法条による買収除外指定をなすべき農地でなかつたことは明らかであり、その後十数年後に異常な社会情勢の変化により宅地化が進められて来たことから推して、買収計画当時当然そのことが予想できたとすることはできないし、況んや近く使用目的変更を相当とする農地であつたとみることができないのは、前述のとおりである。 (補助参加人B及び同Cの主張)本件農地は、買収処分を経て昭和二三年七月二日補助参加人Aに売渡処分がなされ、昭和二五年一一月一七日同参加人に所有権移転登記がなされた後、昭和三五年一二月九日分筆されて(イ)大阪市<以下略>、畑二畝六歩と(ロ)同所<以下略>、畑二畝二〇歩の二筆になり、同補助参加人において、昭和三六年三月二八日右(イ)の畑を補助参加人Bに、また同年三月二日(ロ)の畑を補助参加人Cに各売渡し、前者については同年四月一四日、後者については同月一七日それぞれ所有権移転登記がなされた。補助参加人Aは売渡処分による所有権移転登記がなされた昭和二五年一一月一七日以降所有の意思を以て平穏公然に本件土地を占有使用し、かつ占有の始め善意であつて過失がなかつたことは、その占有の開始が売渡処分に基づくことから考察して明らかであるから、右登記の日から起算し一〇年を経過した昭和三五年一一月一六日を以て取得時効が完成したのであり、同人よりその後本件 失がなかつたことは、その占有の開始が売渡処分に基づくことから考察して明らかであるから、右登記の日から起算し一〇年を経過した昭和三五年一一月一六日を以て取得時効が完成したのであり、同人よりその後本件土地を買受けた補助参加人B及び同Cにおいてそれぞれ右取得時効の援用をする。 さすれば、被控訴人は本訴の勝敗如何にかゝわらず、本件土地の所有権を失い、これを回復することはできないのであるから、本訴は訴えの利益を欠くに至つたものである。 なお取得時効の中断事由たる裁判上の請求は、取得時効の援用をなしうる者に対してなすことを必要とし、行政庁に対する買収計画取消訴訟ないしは買収処分取消訴訟の提起を以て中断事由とすることはできない。また被控訴人は行政処分取消訴訟に併合して、占有者に対する所有権確認訴訟を提起することができるのであるから、被控訴人に取得時効中断の方法がないとすることは誤りである。 (被控訴人の主張)一補助参加人主張の取得時効は完成していない。 (イ) 補助参加人主張の如く本件農地が補助参加人Aに対し売渡処分がなされ、同人よりさらに補助参加人B及び同Cに売却されたことは認める。 しかし、一般に農地の買収処分あるいはその前提をなす買収計画の処分に対し取消を求める訴訟を提起するときは、それによつて買収農地の売渡処分により当該農地を占有している者の取得時効は中断されるものと解すべきである。したがつて本訴取消訴訟の係属している限り取得時効は中断中であるというべきである。けだし被買収者が売渡処分をした知事もしくは売渡処分を受けた者を相手方として、売渡処分無効確認あるいは所有権取得登記抹消請求の訴えを起すことはできないからである。売渡処分に先行する買収処分あるいは買収計画につき取消の判決が確定してから後時効中断の手段を講ずれば足りると解するのが妥当で 効確認あるいは所有権取得登記抹消請求の訴えを起すことはできないからである。売渡処分に先行する買収処分あるいは買収計画につき取消の判決が確定してから後時効中断の手段を講ずれば足りると解するのが妥当である。 (ロ) 本件農地の売渡処分を受けた補助参加人Aは、自己が後述の如く自創法所定の小作人でなく、したがつて買収農地の売渡を受ける資格を欠いていたことを知つていたものであり、かりにそうでなくても知らないことに過失があり、本件農地占有にあたり悪意・過失があるから民法一六二条二項の適用はなく、取得時効は完成していない。 二本件土地は小作地でないのみならず、自創法五条五号の買収除外地でもある。 元来被控訴人は、大阪市<以下略>、畑八畝二〇歩、同所<以下略>、畑七畝一五歩合計一反五畝二五歩を所有し、右土地は巽・加美・長瀬三箇村耕地整理組合の事業地区に属していたが、右組合事業は土地区画整理事業に準ずる宅地の利用増進を目的とするものである故、組合・土地所有者と耕作者との間にいわゆる離作契約の折衝が進められ、昭和一一年両者間に同年より昭和一三年までの賃料三ヶ年分を免除する条件の下に、昭和一三年一二月末日限り土地明渡の合意が成立し、これによつて組合は道路、下水溝の設置、土地の分合、交換、整地等の諸事業を施行し、換地処分を実施することができたのである。 しかるに補助参加人Aは右離作契約に違背し明渡しをしないため、被控訴人は再三督促の上昭和一八年一二月二一日漸く明渡を受けた。本件土地は右畑一反五畝二五歩の一部であるが、当時組合事業と併行して大阪市<以下略>より東巽町に至る難波足代線(幅員二五米)の都市計画線が設定せられ、本件土地は右計画線の北側に面し、かつ大阪市生野区(昭和三〇年四月一日大阪市生野区に編入された。)に隣接し、右都市計画線の開通に伴い周辺部は急速 る難波足代線(幅員二五米)の都市計画線が設定せられ、本件土地は右計画線の北側に面し、かつ大阪市生野区(昭和三〇年四月一日大阪市生野区に編入された。)に隣接し、右都市計画線の開通に伴い周辺部は急速に宅地化が進み、とくに本件土地は交通至便、社会的経済的にも、枢要な位置に存するが故に被控訴人は本件土地上に建物を建設すべく計画したのであつて、前記Aより明渡を受けた所以もこゝにあつたのである。しかし戦争の激化に伴い建築資材の入手は困難となるとともに食糧増産の必要性が高まり、右土地を遊ばせておくことができなくなつたので、前記Aの懇請に応じ、同人に対し期限を昭和二〇年度の一ヶ年に限定して右土地を使用せしめたが、固より新な賃貸をしたわけでなく、被控訴人より耕作に必要な資材を提供する趣旨で耕作を請負わせたに過ぎなかつた。したがつて本件土地を以て不在地主の小作地として自創法三条一項一号に基づき買収計画を樹立することが違法であることはいうまでもない。 (証拠関係)(省略) 理由一本案前の主張について補助参加人B及び同Cは、本件農地は同人らが取得時効によつて原始取得するに至つたのであるから、たとえ本訴買収計画取消訴訟において被控訴人が勝訴しても当該農地の所有権が被控訴人に復帰するわけではないから、被控訴人の本訴は訴えの利益を欠くと主張するので、まずこの点について検討する。 本件農地が本訴の買収計画を経て買収された後、補助参加人Aに売渡され、同人はこれを二筆に分筆した上補助参加人B及び同Cに売却したことは当事者間に争いがない。 そして買収計画が判決によつて取消されるときは、その効力は第三者にも及ぶのであり、また買収計画を不可欠の構成要素とする買収処分は失効し、したがつてまた売渡処分も無効となるのであるから、補助参加人Aは所有権を取 計画が判決によつて取消されるときは、その効力は第三者にも及ぶのであり、また買収計画を不可欠の構成要素とする買収処分は失効し、したがつてまた売渡処分も無効となるのであるから、補助参加人Aは所有権を取得しなかつたことになるし、補助参加人B及び同Cの所有権もまた否定される関係にある。したがつて、右の補助参加はいわゆる共同訴訟的補助参加に属し、補助参加人は必要的共同訴訟の当事者と同様の立場に立ち、自己のみが行使できる取得時効の援用権を行使し、これを以て取消訴訟の訴えの利益を否定することができるのはいうまでもない。 ところで、農地買収計画ないし買収処分取消訴訟の係属中において、当該農地の取得時効の完成を肯定するためには、被買収者たる旧所有者において、時効中断の法的手段をとりうることを前提としなければならないことは、時効制度の趣旨に照して明らかである。そしてその法的手段は任意の承認が期待できない通常の場合は裁判上の請求であるが、買収計画ないし買収処分取消の判決が確定しない以上、被買収者が売渡を受けた農地占有者に対し農地の返還請求、所有権確認請求あるいは承認請求(民法一六六条二項但書参照)等の訴えを提起しても請求棄却の判決を免れず、時効中断の目的を達し得ない。さればといつて買収計画ないし買収処分取消判決の確定を条件とする返還請求といつた将来の給付の訴えを提起しても、その請求権の発生する私法上の基礎的関係を欠く点で不適法であり(基礎的関係は右の取消訴訟で判定すべき事項に属する。)排斥を免れないし(最判、昭和四四・一一・一三、判例時報五七九号六三頁参照)、将来の所有権確認請求その他の請求も許されないこというまでもない。もつとも行政訴訟では取消訴訟と右の如き返還請求訴訟とを関連請求として併合提起することを許しているが、右は、返還請求とその先決関係をな 来の所有権確認請求その他の請求も許されないこというまでもない。もつとも行政訴訟では取消訴訟と右の如き返還請求訴訟とを関連請求として併合提起することを許しているが、右は、返還請求とその先決関係をなす処分取消請求につき共通の審理判定が行われ、両個の請求について同時に矛盾のない判決がなされうることを考慮して設けられたものであり、訴訟経済的な観点に立つ便宜的な制度に過ぎない。したがつて右併合訴訟の下では、取消判決をなしうることが明らかとなつたときは、その確定前でも、返還請求を認容する判決をなしうることを予定するものではあるけれども、そのことから右併合訴訟の提起によつて被買収農地について進行中の取得時効が中断されるとの結論を導き出すことはできない。けだし、右併合訴訟において取消判決をなすべきものとするときは、その確定をまたずに返還請求認容の判決をなしうるということと、右併合訴訟の提起が取得時効中断事由に該当するかどうかということとは別個の問題であるからである。取消訴訟と返還請求訴訟とは被告を異にする別個の訴訟であり、取得時効の中断に役立つのは後者の訴訟であつて、しかも右訴訟においてなされる返還請求認容の判決も、最終の口頭弁論期日を基準にして考察するときは、その実質はやはり取消判決の確定を条件とした将来の給付の判決であることには変りはなく、この点、形成、給付を内容とする一つの実体上の権利について訴訟上の行使を必要とされる場合(たとえば詐害行為取消と返還請求、否認権行使による返還請求)と自ら異なるものがあるのであつて、取消請求と返還請求とを含めた併合訴訟を以て中断事由たる裁判上の請求とみることはできない。両者の請求の併合訴訟が許されているのは、両請求についての判決が通常同時に確定するからであろうが、訴訟法上は右のような同時確定の保障はない。とくに 以て中断事由たる裁判上の請求とみることはできない。両者の請求の併合訴訟が許されているのは、両請求についての判決が通常同時に確定するからであろうが、訴訟法上は右のような同時確定の保障はない。とくに両個の請求について普通の共同訴訟の形態をとる関係上、返還請求認容の判決が確定しているのに取消判決が未確定の場合は勿論、上告の結果敗訴になることも絶無ではない。そして敗訴の判決が確定すれば、返還請求認容の判決は効力を生じないことになるし、また取消判決が返還請求認容の判決に遅れて確定するときは、その時から時効中断の効力を生ずるものというべきである。けだし、右返還請求の実質が取消判決の確定を条件とする将来の給付請求である限り、たとえ右請求を認容する判決が確定しても、取消判決の確定を伴わない限り、取得時効の対象物件に対する継続的な占有状態を否定して権利関係を確定するとか、権利関係を明確化させる機能は殆んどもつていないのであつて、この返還請求だけでは、時効中断事由たる裁判上の請求に値しないものというべく、この返還請求に、別訴における取消判決の確定という外来的な要素が加わり、将来の請求から現在の請求に変化するに至つて始めて中断事由にふさわしい右の機能を生じ、裁判上の請求たる適格をもつに至るのであるから、その前段階における返還請求の訴え提起の時に遡つて時効中断の効力を生ずるものとなすに由なきことは、訴えの変更による時効中断の効力が変更申立書提出の時から効力を生ずるものとされているのと趣旨を同じくする。そしてまたこの理論を以てすれば、取消判決と返還請求認容の判決とが同時に確定した場合も、その結論を異にしないことはいうまでもない。 以上のような次第であつて、被買収農地の取得時効中断事由たる裁判上の請求は、第三者即ち被買収農地の占有者に対しても効力の及ぶ、買収 同時に確定した場合も、その結論を異にしないことはいうまでもない。 以上のような次第であつて、被買収農地の取得時効中断事由たる裁判上の請求は、第三者即ち被買収農地の占有者に対しても効力の及ぶ、買収計画ないし買収処分取消判決の確定を伴つて始めて中断の効力を生ずるのであるから、右処分取消訴訟係属中に取得時効完成を理由に訴えの利益を否定することは、即ち被買収者から有効な時効中断の法的手段を奪うことになつて不合理である。むしろ買収計画ないし買収処分の取消訴訟については極めて短期の出訴期間が定められ、取得時効期間経過後の出訴などは全く考えられないこと、被買収地の返還請求権は取消判決が確定しない以上発生しないことから、被買収者にとつては先ず取消判決を得ることが肝要であり、返還請求はそれから後でも事足ると考えるのが通常であつて、取消訴訟に返還請求の訴えを併合提起しなくても、権利の上に眠るものとはいえないこと等の諸点を併せ考慮するとき、被買収地についての取得時効の進行は、中断事由たる裁判上の請求が無条件に可能かつ容易となつたとき、即ち右取消の判決が確定したときから始めて進行するものと解するのが相当である。 この点は、被買収者がいつでも占有者に対し返還請求その他私法上の請求のできる買収処分無効の場合と異るところであつて、買収計画ないし買収処分取消の場合は、たとえ取消訴訟に併合して返還請求の訴えを提起しなくても、権利の上に眠る者とはいえず、取得時効の進行しないこと前記のとおりであるから、取得時効の完成を理由に、本件訴訟の訴えの利益を否定する補助参加人らの主張は採用できない。 二よつて本案について判断する。 被控訴人の所有であつた本件土地について、被控訴人主張のとおり自創法三条一項一号に基づいて買収計画が定められ、異議、訴願の手続を経て訴願棄却の裁決が 用できない。 二よつて本案について判断する。 被控訴人の所有であつた本件土地について、被控訴人主張のとおり自創法三条一項一号に基づいて買収計画が定められ、異議、訴願の手続を経て訴願棄却の裁決があつたことは控訴人の明らかに争わないところであり、また本件土地が農地であることは当事者に争いのないところである。被控訴人が右買収計画の瑕疵として主張するところは、本件土地が小作地でなかつたこと及び本件土地が自創法五条五号所定の買収除外地であつたとの二点であり、その他の買収計画に必要な実体上あるいは形式上の要件を備えていたものであることは明らかに争わないところであるから、以下被控訴人主張の右瑕疵の有無について判断する。 三本件土地は小作地であつたか。 原審ならびに当審証人A、当審証人Dの各証言によると、本件土地は補助参加人Aの父Eが明治時代に被控訴人から賃借し、本件買収計画樹立の昭和二三年当時はAが親の代からの賃借関係を引継ぎ、本件土地を耕作していたものであり、いわゆる小作地であつたことが認められる。 もつとも原審ならびに当審証人Fは本件土地の賃貸借は昭和一三年末に合意解除され、一旦本件土地の返還を受けた上、前記Eに耕作を請負わせたものであると証言しているのであるが、前記A証人は本件土地の耕作関係及び賃料支払関係は従前通りであつてその実態は少しも変わつていないと証言しているのみならず、成立に争いのない乙第一号証は、被控訴人の土地管理人である木村土地合名会社(この点は前記F証人の証言に照して明らかである)が、昭和二一年二月七日付でEに宛てた四二円の領収書であること明らかであるところ、右金員の性質については当初「土地賃貸料」と記載しながらこれを「耕作地請負料」と訂正していること書面上明らかであるが、請負料であれば請負人たるEが木村土地合名会社に 収書であること明らかであるところ、右金員の性質については当初「土地賃貸料」と記載しながらこれを「耕作地請負料」と訂正していること書面上明らかであるが、請負料であれば請負人たるEが木村土地合名会社に宛てた領収書を作成して同会社に交付しなければならないのに、これが逆になつているところをみると、右訂正にかかわらず、実質は賃料の領収書であると認められるほか、原本の存在及び成立に争いのない乙第五号証には別件における証人Gの証言として、「支那事変前被控訴人よりその所有小作地一部を世話していたGに対し、土地の発展を図るという理由で小作地返還交渉の要求があり、小作人等と相談した結果、地主の条件は地主が必要なとき直ぐ返還するというのであれば、三年や四年間は無償で耕作させるということであつたので、一旦これを諒承したのであるが、その後被控訴人から年貢反当り三〇円で引続いて耕作して貰うことにしたといわれ、他の小作人も承諾し、土地はずつと耕作を続けて来たものである」旨の記載があるのであつて、これらを綜合すると前記F証人の証言は容易に信用し難く、したがつて甲第一六号証の一、二(土地返還証書)も右証言のみによつて成立を認めるに由なく、他にこれを認めるべき証拠もない。そのほか本件に現われた全証拠によるも、いまだ前記認定を覆し本件土地が被控訴人主張の耕作請負地であつた事実を認定するのに十分でない。 四本件土地は、自創法五条五号該当地であつたか。 (1) 被控訴人は本件土地は右の買収除外地であつたと主張するがこれを認めるに足る証拠がない。 (2) 昭和二三年一二月当時の本件土地附近の航空写真であることについて争いのない検乙第一号証の一、その説明図であることについて争いのない同号証の二、右航空写真の本件土地を中心とした拡大写真であることについて争いのない検乙第二号証、本 附近の航空写真であることについて争いのない検乙第一号証の一、その説明図であることについて争いのない同号証の二、右航空写真の本件土地を中心とした拡大写真であることについて争いのない検乙第二号証、本件買収当時の本件土地附近の図面であることについて争いのない検乙第三号証、当審証人Dの証言によつて昭和二三年撮影した本件の土地西側隣地(九六番地)附近の写真であることが認められる検乙第四号証の一、二、原審における検証の結果とくに検証調書添付見取図中当事者に争いのない買収当時の宅地部分の表示、前記証人D・原審ならびに当審証人A・同F(但し一部)当審証人Hの各証言を綜合すると、買収計画当時における本件土地の立地条件ならびに附近宅地の状況は概ね原判決添付図面のとおりであり、さらにこれを細説すると、本件土地の南側は府道大阪八尾線(難波、足代線又は勝山線とも称する)に面し、西側は北方に通ずる四・五米の道路に面する角地であつて附近の状況はつぎのとおりである。 (イ) 本件土地の北側は西側の道路に沿つてその両側に家屋が六軒位建ち並び、その道路が前記府道の北側約一〇〇米のところでこれに平行して東西に通ずる道路(なお現在はその中間にも東西に通ずる道路があるが、本件買収計画当時この道路が存在していたかどうか明らかでない。)と交叉し、さらに北に進む両側も宅地になつていた。なお、右交叉点を東西に通ずる道路の北方一帯は、大阪市の接続町村をなし、本件買収後に、自創法五条四号の買収除外指定地域となつた。 (ロ) 東側も西側も田畑が前記府道に沿つて続き、府道とその北方平行に走る前記道路との間は人家がまばらであり、同所より最も近距離の人家は東北方五〇米位の所に存する少数の人家と西方二〇〇米足らずの地点にある弥栄電線株式会社工場である。 (ハ) 南方は府道を隔てて西足代部落約一五〇戸 の間は人家がまばらであり、同所より最も近距離の人家は東北方五〇米位の所に存する少数の人家と西方二〇〇米足らずの地点にある弥栄電線株式会社工場である。 (ハ) 南方は府道を隔てて西足代部落約一五〇戸があるが、その殆んどは農家であつてその周辺一帯は広大な田畑である。 (ニ) 前記府道は戦前から存在していたが、終戦近い頃からその拡張が企てられ、そのため本件土地も七畝五歩から四畝二六歩に削減されたのであるが、昭和三一、二年頃には幅員六米が舗装され、更にその後幅員二五米(車道部分の幅員二〇米は舗装)に拡張された。 (ホ) 要するに、本件土地はその北方巽町の人家集団地域の末端にあつて、人家まばらな町はずれに属し、その東西両側一帯は農地であり、南方は前記府道を越えて四方に広がる広大な農地に面していたといえる。 (3) 土地区画整理地であつたか。 被控訴人は本件土地ならびにその周辺地域について宅地化のための土地区画整理が行われたかのように主張し、原審ならびに当審証人Fはほぼ右主張に添うような証言をしているが、後記証拠に照して信用し難く、他にこれを認めるに足る証拠はない。むしろ成立に争いのない丙第一、ないし三号証、同第五号証(別件における証人Iの証言調書)、成立に争いのない乙第二号証(別件におけるJの本人尋問調書)、当審証人D及び同Hの証言によると、昭和二年頃、加美、巽、長瀬三箇村耕地整理組合が設けられ、その整理事業は昭和一三、四年頃に至つて完成したのであるが、右組合は大正一三年頃の大旱魃が直接のきつかけとなり、本件土地を含む右三箇村の広大な耕地を対象としてその用水、排水の便をはかり、乾田、湿田の改良に重点をおき、併せて耕地区画の整正、農業道路の敷設等、農業生産の向上を目的としたものであつて、市街地ないし宅地の造成あるいはその利用の増進を目的とするもの 用水、排水の便をはかり、乾田、湿田の改良に重点をおき、併せて耕地区画の整正、農業道路の敷設等、農業生産の向上を目的としたものであつて、市街地ないし宅地の造成あるいはその利用の増進を目的とするものでなかつたこと、そして右整理事業完成後は加美、巽、長瀬普通水利組合がそのあとを引継ぎ、昭和二一年五月一日からこれが土地改良区に組織変更され、農業生産の向上に貢献して来たことが認められるから、被控訴人の右主張は採用できない。 (4) 本件土地附近の宅地化はいつ始まつたか。 前記成立に争いのない乙第五号証、原審証人F(但し一部)、当審証人D、同Hの各証言に弁論の全趣旨を綜合すると、本件土地附近が宅地化され始めたのは大体昭和三〇年から昭和三四年にかけてであつて、昭和三〇年に本件土地附近が大阪市生野区に編入され、その後昭和三一・二年頃前記府道の拡張舗装が進み、バスの通行により交通の便がよくなるに伴い、徐々に人家が建ち始め、昭和三四年以降からは社会情勢の変化とともに急速に宅地化が進み、府道の拡張整備、平野川分水路による排水の改善は更にこれを助長し、昭和四〇年頃には、原審検証の結果によつて明らかなような市街地の様相を呈するに至つたものであることが認められる。 (5) 本件買収計画当時の本件土地の状況は前記(2)で認定したとおりであつて、その周辺は大体農地で囲まれていたといつても過言でない。当時の立地条件その他四囲の環境から前記のような宅地化を予想することは困難である。 右のような急速な宅地化にはむしろ予測できない社会情勢の急激な変化が与つて力あつたといえる。それにしても昭和二三年の買収計画当時から一〇年近い歳月を要しているのであるから本件買収計画当時において本件土地が「近く使用目的変更を相当とする農地」であり、自創法五条五号該当地であつたとすることはできな しても昭和二三年の買収計画当時から一〇年近い歳月を要しているのであるから本件買収計画当時において本件土地が「近く使用目的変更を相当とする農地」であり、自創法五条五号該当地であつたとすることはできない。 五そうであれば、本件土地を自創法五条五号所定の買収除外地とせずに、不在地主の小作地であることを理由にしてなされた本件買収計画ならびに訴願棄却の裁決に何ら瑕疵はないものといわなければならない(なお大阪府農地委員会に対する本訴が控訴人に受け継がれたものであることは、法律上明らかである。)。 したがつて、控訴人に対し買収計画ならびに訴願棄却の裁決の取消を求める被控訴人の本訴請求は失当として棄却すべく、これと異る原判決は取消を免れない。 よつて訴訟費用の負担につき、民訴法九六条、八九条を適用し、主文のとおり判決する。 (裁判官金田宇佐夫西山要中川臣朗)

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