主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告が,原告に対する公正取引委員会平成▲年(判)第▲号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,平成22年2月24日付けでした審決のうち,1億1711万円を超えて課徴金の納付を命じた部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,被告が,A株式会社(以下「A」という。)が他の事業者と共同してポリプロピレン(原料であるナフサの価格に連動して販売価格を設定する旨の契約を締結しているものを除く。)の販売価格の引き上げを決定し,相互にその事業活動を拘束することにより,公共の利益に反して,我が国におけるポリプロピレンの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって,独占禁止法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法7条の2第1項に規定する商品の対価に係るものであり,同法3条に違反するとして,Aを吸収合併した原告に対して課徴金1億4215万円の納付を命じる審決(以下「本件審決」という。)をしたのに対し,原告がその一部取消しを求める事案である。 2 前提事実(1) 被告は,平成19年8月8日,原告ほか2名の被審人に対し,A及び被審人株式会社B(以下「B」という。)が,C株式会社(以下「C」とい う。),株式会社D(以下「D」という。),E株式会社(以下「E」という。),被審人F株式会社(以下「F」という。)及び被審人G株式会社(以下「G」という。)と )が,C株式会社(以下「C」とい う。),株式会社D(以下「D」という。),E株式会社(以下「E」という。),被審人F株式会社(以下「F」という。)及び被審人G株式会社(以下「G」という。)と共同して,平成12年3月6日に,同年4月以降,ポリプロピレンの需要者向け販売価格を1キログラム当たり10円をめどに引き上げることを決定した行為は,独占禁止法3条の規定に違反するものであり,かつ,当該行為は,既になくなっていると認めることなどを内容とする審決をした(公正取引委員会平成▲年(判)第▲号,以下「本案審決」という。)。 (2) 本案審決において認定された事実は,次のとおりである。 アポリプロピレンは,ナフサを分解・精製することによって生産されるプロピレンを重合して製造される合成樹脂であり,その用途は,日用品等広範囲に及んでいる。ポリプロピレンの市場規模は,平成12年当時国産品約3240億円,輸入品約186億円の合計約3426億円であった。 イ平成12年1月から5月までの当時,ポリプロピレンの製造販売業者として,Aのほか,F(当時の商号H工業株式会社),G(当時の商号I株式会社),B,C(当時の商号J株式会社),D,Eが存在した(以下,上記7社を総称して「7社」という。)。 ウ当時の7社の市場占有率の合計は販売数量ベースで約91パーセントであり,市場占有率第1位のC及び同第2位のDの2社の国内販売における市場占有率の合計は販売数量ベースで約45パーセントであった。 エ 7社は,ポリプロピレンをそれぞれ直接または販売業者を通じて需要者に販売しており,需要者の多くは7社のうち2社以上からポリプロピレンの供給を受けていた。ポリプロピレンの販売価格について,7社は,ほとんどの場合,直接又は販売業者を通じて需要者との間で価格交渉を 者に販売しており,需要者の多くは7社のうち2社以上からポリプロピレンの供給を受けていた。ポリプロピレンの販売価格について,7社は,ほとんどの場合,直接又は販売業者を通じて需要者との間で価格交渉を行い,個別に需要者渡し価格を定めていた。 オポリプロピレンは,ナフサを分解して得られるプロピレンを原料としており,ナフサのコストがプロピレンのコストに占める割合が高く,かつ,プロピレンのコストがポリプロピレンのコストに占める割合が高いことから,ナフサの価格の動向がポリプロピレンのコストに大きな影響を及ぼす関係にあり,ナフサ価格が1キロリットル当たり1000円上昇すれば,ポリプロピレンの価格を1キログラム当たり2円値上げする必要があるというのが,ポリプロピレンの製造販売業者における共通認識となっていた。7社は,販売するポリプロピレンの一部について一部の需要者との間で,あらかじめナフサ価格に連動して一定の算式の下にポリプロピレンの販売価格を設定する方式(以下「ナフサリンク方式」という。)による契約を締結している。 カ平成12年当時,ポリプロピレン等の石油化学製品の製造業者の事業者団体として東京都千代田区α×番1号に事務所を置くK協会(以下「K協」という。)があり,7社はその会員となっていた。K協が製品別に設けている委員会として,7社の役員級の者を構成員とするポリプロピレン委員会があり,その下部機関として7社の営業部長級の者を構成員とするポリプロピレン委員会企画調査小委員会(以下「ポリプロピレン小委員会」という。)があった。 キポリプロピレン製造販売業者は,かねてから,各社の営業部長級の者らによる会合(以下「部長会」という。)を開催し,ポリプロピレンの販売に関する情報交換を行っていたところ,7社は,平成11年11月ころ以降,ポリプ ン製造販売業者は,かねてから,各社の営業部長級の者らによる会合(以下「部長会」という。)を開催し,ポリプロピレンの販売に関する情報交換を行っていたところ,7社は,平成11年11月ころ以降,ポリプロピレン小委員会が開催される機会を利用して部長会を開催するようになり,ナフサ価格の先行きの見通し,ポリプロピレンの採算状況,ポリプロピレンの値上げの必要性等について協議していた。 ク平成12年1月21日,K協においてポリプロピレン小委員会が開催された際,7社のうちCを除く6社が出席して部長会が開催され,当時 上昇が続いていたナフサ価格の見通し及びポリプロピレンの値上げの必要性について意見交換を行った。その内容は,Cの部長会構成員に対しても通知された。7社は,同年2月7日,部長会を開催し,現状のポリプロピレンの販売価格で採算がとれるナフサ価格の水準は1キロリットル当たり1万7000円から1万8000円とすることについて共通認識を得るとともに,以後,ポリプロピレンの値上げについて検討を行うこととした。部長会構成員は,その後,同年4月以降のナフサ価格の見通し及びポリプロピレンの値上げに関して意見交換を重ね,同年3月6日,K協において開催された部長会において,7社は,同年4月以降のナフサ価格は1キロリットル当たり2万2000円から2万3000円となる見通しであることにつき一致し,同月以降,ポリプロピレンの需要者向け販売価格を1キログラム当たり10円をめどに引き上げることを合意した(以下「本件合意」という。)。 ケ 7社のうちE及びBを除く5社は,平成12年3月17日,C本社において部長会を開催し,その際,Aは同年4月21日出荷分からポリプロピレン価格を1キログラム当たり10円から15円の値上げ,Cは同月21日出荷分から1キログラム当たり10 12年3月17日,C本社において部長会を開催し,その際,Aは同年4月21日出荷分からポリプロピレン価格を1キログラム当たり10円から15円の値上げ,Cは同月21日出荷分から1キログラム当たり10円の値上げ,Dは同月15日出荷分から1キログラム当たり10円から15円の値上げ,Fは同月20日出荷分から1キログラム当たり10円の値上げを行うとの予定を表明し,Gの値上げの具体的日程は未定であった。5社は,各社が大手の需要者を分担し,それぞれ,責任をもってポリプロピレンの値上げ交渉を行うことを合意し,その内容は,当日部長会を欠席したE及びBの部長会構成員にも伝えられた。 コ 7社は,平成12年3月27日,東京都中央区内の飲食店において部長会を開催し,各社がそれぞれ責任を持って値上げ交渉を行う大手需要者を取り決めた。 サ 7社は,平成12年3月17日から4月11日にかけて,順次,対外発表又は需要者に対するポリプロピレンの値上げ交渉を開始してポリプロピレンの値上げを打ち出し,Aは同年3月17日に同年4月21日からポリプロピレンの価格を1キログラム当たり10円から15円値上げする旨を公式発表した。7社は,値上げを打ち出すのと同時に,取引先販売業者及び需要者に対しポリプロピレンの値上げを行う旨を通告し,交渉を開始し,一部において値上げを実現した。 シ 7社は,その間,平成12年4月中に部長会を開催し,各社が交渉を担当する需要者に対する値上げ交渉の進捗状況について情報交換を行った。 ス平成12年5月30日,公正取引委員会が立入検査を行い,Eは同年9月5日ころ,Cは同月7日ころ,Dは同月22日ころ,それぞれ,本件合意から離脱することを,他の参加各社に通知して表明し,さらに,Cは同年10月25日,取引先販売業者及び需要者に対し,本件違反行 9月5日ころ,Cは同月7日ころ,Dは同月22日ころ,それぞれ,本件合意から離脱することを,他の参加各社に通知して表明し,さらに,Cは同年10月25日,取引先販売業者及び需要者に対し,本件違反行為から離脱した旨を通知した。その余の各社は,本件合意ないし本件違反行為から離脱する旨の外部的な意思表明を行っていないが,本件違反行為は5月30日以降,遅くとも10月25日までに違反行為者全員についてなくなり,本件合意は消滅した。 セ原告は,平成16年8月1日,Aを吸収合併し,平成17年4月1日,M株式会社と共同新設分割により株式会社Nを設立し,両社のポリプロピレン製造販売業を包括承継させ,その後,自らはポリプロピレンの製造販売業を営んでいない。 (3) 以上の事実に基づき,本案審決は次のとおり判断した。 独占禁止法3条において禁止されている不当な取引制限,すなわち,事業者が,他の事業者と共同して対価を引き上げる等相互に事業活動を拘束し,又は,遂行することにより一定の取引分野における競争を実質的に制 限すること(独禁法2条6項)にいう,「共同して」に当たるためには,複数事業者が対価を引き上げるに当たって,相互の間に意思の連絡があったと認められることが必要であると解される。Aらは,平成12年1月21日の部長会においてナフサ価格の高騰を背景に,同年4月以降のナフサ価格の見通し及びポリプロピレンの値上げについて部長会において検討していくこととし,これに基づき同年2月7日及び同月21日の部長会において,当該値上げについて意見交換が行われ,同年3月6日の部長会後の同月17日の会合において,各社の値上げのための社内手続の進捗状況,値上げの打ち出しの内容,対外発表時期等につき確認をし,同月27日の会合において,各社が責任をもって値上げ交渉を行う需 の部長会後の同月17日の会合において,各社の値上げのための社内手続の進捗状況,値上げの打ち出しの内容,対外発表時期等につき確認をし,同月27日の会合において,各社が責任をもって値上げ交渉を行う需要者に対する分担を決める案を持ち寄ることとし,同日の会合においてその分担が決められ,その後,実際に値上げの交渉が行われた。これらのことからすると,同月17日の会合までには,ポリプロピレンの値上げについてAらの間に「意思の連絡」が既に存在していたと考えられ,Aらが,同月6日の部長会において,相互にポリプロピレンの需要者向け販売価格の引き上げを実施することを認識ないし予測し,これと歩調をそろえる意思を有し,もって上記「意思の連絡」に当たる本件合意が成立した。 本件においては,ポリプロピレン(ナフサリンク方式により販売価格を決定しているものを除く。)全体で1個の「一定の取引分野」を形成している。 原告と株式会社Nとは別法人であって,原告がポリプロピレン製造販売業を実質的に営んでいるということはできず,原告について独占禁止法54条2項にいう「特に必要があると認めるとき」には当たらない。 (4) 被告は,平成20年6月20日,原告に対し,独占禁止法48条の2第1項の規定に基づき課徴金1億4215万円の納付を命じ,原告は,同月26日,同条5項の規定に基づき審判手続の開始を請求し,被告は,独占 禁止法49条2項の規定により審判手続を開始した。 (5) 原告は,同審判手続において要旨次のとおり主張した。 ア Aが,他の事業者と共同して,平成12年3月6日に,同年4月以降,ポリプロピレンの需要者向け販売価格を1キログラム当たり10円をめどに引き上げることを決定した事実は存在しない。 イ Oは平成16年8月1日以前はAの全額出資子会社であったもの(同 同年4月以降,ポリプロピレンの需要者向け販売価格を1キログラム当たり10円をめどに引き上げることを決定した事実は存在しない。 イ Oは平成16年8月1日以前はAの全額出資子会社であったもの(同日以後は原告の全額出資子会社)であり,AのOに対するポリプロピレンの売上げは,経理上売上げとしているものであっても同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るものであるから,Oに対する売上額1億9674万0467円は課徴金の算定の基礎となる売上額から控除されるべきである。 ウ P株式会社(以下「P」という。)は平成11年2月以降Aの全額出資子会社となったもの(その後,原告の全額出資子会社)であり,AのPに対する売上げは,経理上売上げとしているものであっても同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るものであるから,AのPに対する売上額526万6044円は課徴金の算定の基礎となる売上額から控除されるべきである。 エ Q株式会社(以下「Q」という。)は,Aの全額出資子会社であるOの製品の製造を受託し,その主要原料であるポリプロピレンについてOから全量支給を受け,受託製造した製品はOからQに販売した原料価格に委託加工料を加えた価格でOが全量引き取っており,Q向けのポリプロピレンの売上げは,Aの自家消費又は同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るものであるから,AのOを通じてのQに対する売上額3593万4780円は,課徴金の算定の基礎となる売上額から控除されるべきである。 オ R株式会社(以下「R」という。)に対するAからの合成樹脂の販売 価格については,第三者に対する価格(国内ナチュラルプロパーの平均価格(R向け及び二次加工品を除く)の90パーセントといった一定のフォーミュラに基づき自動的に設定されており,競争 合成樹脂の販売 価格については,第三者に対する価格(国内ナチュラルプロパーの平均価格(R向け及び二次加工品を除く)の90パーセントといった一定のフォーミュラに基づき自動的に設定されており,競争の余地の全くないもので,一般の需要者との間の販売価格決定方法とは全く異なっていたから,Rは実質的にAの完全子会社と同視されて扱われていたものであり,AのRに対するポリプロピレンの売上げは実質的にAの加工部門への物資の移動と同視し得るものあるいは明示的又は黙示的にカルテルの対象から除外したか又はこれと同視し得る合理的な理由がある特段の事情が認められる場合に当たり,Rに対する売上額1億7935万4166円は課徴金の算定の基礎となる売上額から控除されるべきである。 (6) これに対し,審査官は次のとおり意見を述べた。 ア独占禁止法7条の2第1項は,「当該商品の実行としての事業活動」が行われた期間における「当該商品の(中略)売上額」を基礎として計算した額の課徴金の納付を命ずる旨規定している。「当該商品」とは,一定の取引分野における競争を実質的に制限する違反行為が行われた場合において,その対象商品の範ちゅうに属する商品であって,当該違反行為による拘束を受けたものをいう。対象商品の範ちゅうに属する商品については,当該行為を行った事業者又は事業団体が明示的又は黙示的に当該行為の対象からあえて除外したこと,あるいは,これと同視し得る合理的な理由によって定型的に当該行為による拘束から除外されていることを示す特段の事由がない限り「当該商品」に該当し,課徴金の算定対象に含まれると推定される。本件違反行為の対象商品は,ナフサリンク方式により販売価格を設定しているものを除く我が国において販売されるポリプロピレンである。また,資本関係のある事業者との取引に係る 対象に含まれると推定される。本件違反行為の対象商品は,ナフサリンク方式により販売価格を設定しているものを除く我が国において販売されるポリプロピレンである。また,資本関係のある事業者との取引に係る売上額が課徴金の算定対象から一律に除外されるものではない。 イ AのO向け商品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに含まれ,O 向け商品は本件違反行為による拘束を受けており,本件違反行為による拘束から除外されていることを示す特段の事情は存在しない。したがって,O向け製品の売上額は,課徴金の算定対象から除外されない。 ウ P及びQは,ポリプロピレンの全量をOから購入しており,両社を需要者とする取引は物流上はAから両社に直接配送しているが販売先はOである。したがって,P及びQ向けに販売したポリプロピレンはO向け製品に含まれ,課徴金の算定対象となる。 エ R向け商品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに含まれ,本件違反行為による拘束を受けており,本件違反行為による拘束から除外されていることを示す特段の事情は存在しない。したがって,R向け商品の売上額は,課徴金の算定対象から除外されない。 (7) 審判官らは,平成21年12月14日,原告に対し課徴金として1億4215万円を国庫に納付することを命ずる審決案を作成し,同審決案は,平成22年1月5日原告に送達され,これに対し,原告が異議の申し立てをした。 3 本件審決被告は,平成22年2月24日,本件審決をした。その要旨は,次のとおりである。 (1) Aは,他の事業者と共同してポリプロピレン(ナフサリンク方式による契約を締結しているものを除く。)の販売価格の引き上げを決定し,相互にその事業活動を拘束することにより,公共の利益に反して,我が国におけるポリプロピレンの販売分野における競争を実質的に ク方式による契約を締結しているものを除く。)の販売価格の引き上げを決定し,相互にその事業活動を拘束することにより,公共の利益に反して,我が国におけるポリプロピレンの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは独占禁止法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法3条の規定に違反するものであり,かつ,同法7条の2第1項に規定する商品の対価に係るものである(以下「本件違反行為」という。)。 (2) Aはポリプロピレンの製造販売業を営んでいた者であるが,平成16年 8月1日付けで原告との間で原告を存続会社として合併したことにより消滅し,Aがした本件違反行為は独占禁止法7条の2第5項の規定により原告がした違反行為とみなされる。 (3) Aが本件違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成12年4月21日である。Aのその実行としての事業活動は,平成12年5月29日になくなっている(以下「本件実行期間」という。)。 (4) 本件実行期間における原告のポリプロピレンの売上額は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号)附則2条のなお従前の例によることとする規定により,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成17年政令第318号)による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(以下「独占禁止法施行令」という。)5条の規定に基づき算定すると,23億6921万6502円である。そのうちOに対するものは2億3794万1291円,Rに対するものは1億7935万4166円である。 (5) 原告が納付すべき課徴金の額は,独占禁止法7条の2第1項の規定により,原告のポリプロピレンの売上額23億6921万6502円に100分の6 に対するものは1億7935万4166円である。 (5) 原告が納付すべき課徴金の額は,独占禁止法7条の2第1項の規定により,原告のポリプロピレンの売上額23億6921万6502円に100分の6を乗じて得た額から,同条4項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された1億4215万円である。 (6) 原告には,本案審決に係る審判手続において本件違反行為の存否を争う機会が与えられており,被告は原告の主張立証を踏まえて本件違反行為の存在を認定して本案審決を行ったものである。このような場合には,課徴金に係る審判において重ねて違反行為の不存在を主張することは許されない。 (7) 独占禁止法7条の2第1項所定の「当該商品」とは,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,当該行為による拘束を受けたものを いう。違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品については,当該行為を行った事業者又は事業者団体が明示的又は黙示的に当該行為の対象からあえて除外していたか又はこれと同視し得る合理的な理由によって定型的に当該行為による拘束から除外されていることを示す特段の事情がない限り,当該行為による拘束を受けたものと推定し,課徴金の算定対象に含めるのが相当である。 (8) 本件違反行為の対象商品はポリプロピレン(ナフサリンク方式による契約を締結しているものを除く。)であり取引先による限定は加えられていないから,O向け商品及びR向け商品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。O向け商品及びR向け商品が,本件違反行為の参加者らにおいて明示的又は黙示的に本件違反行為の対象からあえて除外したものに該当すると認めるべき証拠はない。 (9) Oは,Aの全額出資子会社でその支配下にあった者であるが,Aとは別個の法人格を有する者として,Aから購入し 示的に本件違反行為の対象からあえて除外したものに該当すると認めるべき証拠はない。 (9) Oは,Aの全額出資子会社でその支配下にあった者であるが,Aとは別個の法人格を有する者として,Aから購入したポリプロピレンを原料として製造した製品を自ら需要者に販売していた者であり,Aからの購入価格は,本件違反行為によるポリプロピレンの値上げ等と連動していた。かかる事情を総合考慮すると,O向け商品がその性質上客観的にみて本件違反行為の対象外のものであるとみることはできず,その売上げが同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るものということもできず,本件違反行為の参加者らにおいて明示的又は黙示的に本件違反行為の対象からあえて除外していたことと同視し得る合理的な理由によって定型的に当該行為による拘束から除外されていることを示す特段の事情があると認めることはできない。 よって,O向け商品は本件違反行為による拘束を受けたものと推定され,独占禁止法7条の2第1項所定の「当該商品」に該当するものとして課徴金算定対象に含めるのが相当である。 (10) RはAと密接な関係にあったが同社の完全な支配下にあったのではない上,同社から購入したポリプロピレンを原料として製造した製品を自ら需要者に販売していた者であり,かつ,Aからの購入価格は本件違反行為によるポリプロピレンの値上げ等と連動していたという事情に照らせば,R向け商品について,本件違反行為の参加者らにおいて明示的又は黙示的に本件違反行為の対象からあえて除外していたことと同視し得る合理的な理由によって定型的に当該行為による拘束から除外されていることを示す特段の事情があると認めることはできない。 よって,R向け商品は本件違反行為による拘束を受けたものと推定され,独占禁止法7条の2第1項所定の て定型的に当該行為による拘束から除外されていることを示す特段の事情があると認めることはできない。 よって,R向け商品は本件違反行為による拘束を受けたものと推定され,独占禁止法7条の2第1項所定の「当該商品」に該当するものとして課徴金算定対象に含めるのが相当である。 4 争いのない事実等本件審決は,本件違反行為に係る本案審決の後,本案審決と同一の当事者に対して本案審決において認定された本件違反行為に基づいてされた課徴金納付命令に関するものである。独占禁止法48条の2第1項ただし書きは,違反行為について審判手続が開始された場合には,審判手続が終了した後でなければ課徴金の納付を命ずることができない旨を規定するところ,その趣旨は,違反行為の存否について争いがある場合,まず違反行為に関する事実の存否については判断を確定し,これを前提として課徴金の納付を命ずることにより,同一の違反行為について排除措置を命ずる手続と課徴金の納付を命ずる手続との間で違反行為の事実認定が不統一となることを防止し,同一の違反行為に関する審理の重複を回避するにあると解されるから,本件課徴金納付命令に関し,本案審決において認定された本件違反行為の存否を争うことはできないと解すべきであり,原告も,本件訴訟においては,これを争っていない。 独占禁止法施行令5条の規定に従い算定した本件実行期間における原告の ポリプロピレンの売上額が23億6921万6502円であり,そのうちOに対する売上額が2億3794万1291円,Rに対する売上額が1億7935万4166円であることは,当事者間に争いがない。 5 争点(1) 本件課徴金算定の基礎となる独占禁止法7条の1第1項による原告のポリプロピレンの売上額に,Oに対するポリプロピレンの売上額が含まれるか。 (2) 同条項 事者間に争いがない。 5 争点(1) 本件課徴金算定の基礎となる独占禁止法7条の1第1項による原告のポリプロピレンの売上額に,Oに対するポリプロピレンの売上額が含まれるか。 (2) 同条項による原告のポリプロピレンの売上額に,Rに対するポリプロピレンの売上額が含まれるか。 6 争点に関する当事者の主張(1) 原告の主張ア総論独占禁止法においては,法適用上,親子会社関係という経済的実質における組織的一体性に適合する解釈がなされるべきであり,経済的実質における組織的一体性を有する子会社であるOやRに対する商品の売り上げは,課徴金の対象となる売上額に該当しない。 本件課徴金算定の基礎となる原告のポリプロピレンの売上額は,本件実行期間における原告のポリプロピレンの売上額23億6921万6502円からOに係る売上額2億3794万1291円及びRに係る売上額1億7935万4166円の合計4億1729万5457円を除外した19億5192万1045円であり,課徴金の金額は,これに100分の6を乗じて得た金額の1万円未満の端数を切り捨てた1億1711万円となる。 したがって,本件審決のうち,1億1711万円を超えて課徴金の納付を命じた部分は,独占禁止法7条の2第1項の解釈適用を誤り,課徴金を課すべき理由なくこれを課した違法があり,取消を免れない。 イ争点(1)について(ア) Oは,Aが開発した合成樹脂シート及びフィルム等の加工製品の製造工場として,昭和59年1月11日Aの全額出資により設立され,平成12年3月29日,経営戦略・経営管理上の観点からAの加工製品事業を営業譲渡する形で分社化し,合成樹脂加工製品の研究開発,製造及び販売を行っており,平成16年8月1日,Aが原告との間で原告を存続会社として合併し,同日以降 略・経営管理上の観点からAの加工製品事業を営業譲渡する形で分社化し,合成樹脂加工製品の研究開発,製造及び販売を行っており,平成16年8月1日,Aが原告との間で原告を存続会社として合併し,同日以降,原告の全額出資子会社となるまでは,Aの全額出資子会社であり,現在に至るまでその資本構成に変化はなく,その代表取締役は原告(A)から派遣され,役員も全て原告(A)の関係者で占められ,実質的にもAの加工部門として位置づけられてきた会社にほかならない。 (イ) Oは本件違反期間中Aの全額出資子会社であったものであり,このような全額出資子会社については,経理上AのOに対するポリプロピレンの売上げとされているものであったとしても,同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るものであるから,独占禁止法7条の2第1項にいう「売上額」に当たらず,課徴金算定の基礎となる売上額から除外されるべきである(公正取引委員会昭和59年2月2日審決・公正取引委員会審決集30巻56頁参照)。 (ウ) Oは,Aの加工部門として位置づけられている全額出資子会社であり,もっぱら同社から原材料としてのポリプロピレンの支給を受け,これを原料に合成樹脂加工製品を製造し,当該製品を一般需要者に販売している。したがって,AがOを隠れ蓑にして市場にポリプロピレンを出荷している関係にもなく,同社に対する売上げを課徴金の対象となる売上げとしなければ不当に課徴金を免れることになることもない。 (エ) O向けのポリプロピレンが独占禁止法7条の2第1項に規定する 「当該商品」に該当するかとの観点からみても,対象商品の範ちゅうが,違反行為の内容に応じ,商品の種類,取引地域,取引段階,取引相手方等の要素により画定されることは被告が認めており,全額出資子会社は,ここでいう「取引先」に との観点からみても,対象商品の範ちゅうが,違反行為の内容に応じ,商品の種類,取引地域,取引段階,取引相手方等の要素により画定されることは被告が認めており,全額出資子会社は,ここでいう「取引先」に該当するものでなく,同社に対する販売も実質的に支給であって「取引」に該当せず,全額出資子会社であるO向けのポリプロピレンは,そもそも違反行為の対象商品の範ちゅうに属しないか,少なくとも「定型的に当該行為による拘束から除外されることを示す特段の事情」がある。 (オ) 本件違反行為の内容とされているのは,「ポリプロピレンを1キログラムあたり10円をめどに値上げを行うことの合意」による相互拘束であるから,かかる相互拘束の対象となるのは,値上げを行うことについての交渉を行うことができ,その必要性がある取引であり,そのような取引先向けの「当該商品」である。そのような余地,必要性のない,全額出資子会社であり一定のフォーミュラに基づき自動的,機械的に設定されていたO向けのポリプロピレンについては,被告のいう「違反行為の対象商品の範ちゅう」に属しない。Oについて,大手需要家向け販売価格(一定期間の実績値)の90パーセントという販売価格の決定方式を取っているのは,実質的にはAの加工部門であるOへのポリプロピレンの原料支給でありながら,経理上売り上げの形を取らざるを得ないポリプロピレンの販売について何らかの販売価格の設定をするに当たり,廉価に販売し実質的に子会社への原料支給とするためという,親子会社関係ゆえの政策的な観点から設定された価格決定方法にすぎず,通常の取引先との取引関係に基づく価格決定方法とは,質的に全く異なるものであり,本件違反行為の実施に伴って価格改定が行われることを企図したものでなく,そのような趣旨,性質のものでもない。また,全額出資子会 引先との取引関係に基づく価格決定方法とは,質的に全く異なるものであり,本件違反行為の実施に伴って価格改定が行われることを企図したものでなく,そのような趣旨,性質のものでもない。また,全額出資子会社が親会社から購入できる ポリプロピレンを,親会社から100パーセント購入することは当然のことであり,親会社以外のポリプロピレンメーカーから購入することは現実的にあり得ないから,そのような全額出資子会社向けのポリプロピレンは定型的に違反行為による拘束から除外されている類型に当たる。Oについては,当初から競争が行われる分野でなく,カルテル行為による不当な経済的利得を剥奪することによって,違反行為の抑止を図り,その実効性を確保するという課徴金制度の趣旨は当てはまらない。 (カ) なお,被告は,「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(付)親子会社間の取引」(以下「指針」という。)において,「事業者」(親会社)が他の事業者(子会社)の株式を所有している場合に,親子会社間の取引が不公正な取引方法による規制の対象となるか否かについて,「親会社が株式の100パーセントを所有している子会社の場合には,通常,親子会社間の取引は実質的に同一企業内の行為に準ずるものと認められ,親子会社間の取引は,原則として不公正な取引方法による規制を受けない。親会社の株式所有比率が100パーセントに満たない子会社(原則として株式所有比率が50パーセント超)の場合についても,親子会社間の取引が実質的に同一企業内の行為に準ずるものと認められるときには,親子会社間の取引は,原則として不公正な取引方法による規制を受けない。」としており,100パーセント子会社の場合を含め,親子会社間の取引が,実質的に同一企業内の行為に準ずるものと認められる場合があることを認めている。 として不公正な取引方法による規制を受けない。」としており,100パーセント子会社の場合を含め,親子会社間の取引が,実質的に同一企業内の行為に準ずるものと認められる場合があることを認めている。 指針が独占禁止法7条の2第1項の解釈にただちに準用されるものでないとしても,その基礎にある考え方においては,親子会社に関して経済的実質の観点を踏まえた解釈,運用を行っていることに変わり はなく,その基礎にある考え方は,課徴金賦課の問題においても共通するというべきである。 ウ争点(2)について(ア) Rは,昭和54年5月26日,AとS株式会社(当時,以下「S」という。)の均等出資により設立され,複合樹脂材料の開発,生産,販売を行う会社であり,その資本構成は設立以来変化がなく,Rの代表取締役は,設立時から一貫してAから派遣され,取締役,監査役については各2分の1の人数をA及びSから出していた。Rの取り扱う複合樹脂はポリオレフィン(ポリプロピレンとポリエチレンの総称)等の合成樹脂を主要原料としており,AとS間の昭和54年5月7日付け「合弁会社設立に関する基本契約書」(以下「合弁基本契約書」という。)の定めにより,R向けの合成樹脂については,Aが供給責任を負い,市場競争力ある価格及び条件で供給するものとされており,Rはポリプロピレン等の合成樹脂については全量Aから購入し他社から購入することはなく,RについてAと競合しようとするメーカーもなかった。 (イ) Rに対するAからの合成樹脂の販売価格については,合弁基本契約書を踏まえ,常に第三者に対する市場価格より優遇した価格とするため,R向けに販売したポリプロピレンと加工品である樹脂製品を除いたAのナチュラル品のポリプロピレンの平均単価に0.9を乗じた金額がR向けのポリプロピレンの単価にな る市場価格より優遇した価格とするため,R向けに販売したポリプロピレンと加工品である樹脂製品を除いたAのナチュラル品のポリプロピレンの平均単価に0.9を乗じた金額がR向けのポリプロピレンの単価になるという形で予め一定のフォーミュラが設定され,かかるフォーミュラに基づき四半期ごとに直前四半期の実績に基づいて自動的,機械的に設定されていたものであり,当該販売価格についてRとAとの間で個別に価格交渉が行われることはなかった。 本件において,需要者との価格をナフサリンク方式で決定している 売上げは課徴金の対象から除外されているが,R向け販売価格については,一般需要者に対して値上げを依頼するか否かにかかわらず,また,一般需要者に対する値上げ交渉の時期如何にかかわらず,さらに,一般需要者に対する関係で現実に値上げを実施できたか否かにかかわらず,四半期毎に定期的に過去の実績値に基づいて自動的に販売価格が決まり,一定のフォーミュラに従って自動的,機械的に価格が決まるという点で,ナフサリンク方式とRに対する売上げとで何ら差異はなく,R向けのポリプロピレンの売上げは課徴金の対象となる売上額から除外されるべきである。 (ウ) R向けのポリプロピレンの販売価格の決定方法は,一般の需要者との間の販売価格の決定方法とは全く異なっており,Rはポリプロピレンに関して実質的にAの完全子会社と同視されて取り扱われていたものであり,AのRに対するポリプロピレンの販売は,Aの加工部門への物資の移動又は同一事業者内での供給の延長と位置づけられていた。また,RがポリプロピレンをAから100パーセント購入することも当然のことであって,同社以外の事業者からポリプロピレンを購入することは現実的にあり得ない。 (エ) 本件で違反行為とされているカルテル行為は,交渉等により ンをAから100パーセント購入することも当然のことであって,同社以外の事業者からポリプロピレンを購入することは現実的にあり得ない。 (エ) 本件で違反行為とされているカルテル行為は,交渉等により取引先に対して値上げを行いたいとする場合に,1社単独で取引先と交渉するのでは交渉力が弱く実現性に困難が生じることから,当該市場の主だった市場占有率を占める複数社間で合意をして,その相互拘束の下,共同して値上げ交渉を遂行することにより値上げを実現しやすくする行為が問題とされるものである。本件違反行為において,違反行為者の間で本件合意により相互拘束の対象となっているのも,これから交渉により値上げを行おうとする取引先に販売するポリプロピレンであることは明らかである。Rに対する販売価格の決定方法は,違反 行為に基づいてその相互拘束力を背景に一般の需要者に対すると同様に値上げの実現に向けて行動していくという関係に立つものではなく,一般の需要者と同様に本件違反行為の実施に連動して値上げが行われる取引関係でもなく,個別の交渉により販売価格を決定し販売する一般の需要者との取引関係とは質的に大きく異なっていた。すなわちRに関しても,当初から競争が行われ得る分野ではなかったものであり,同社向けのポリプロピレンは,「明示的又は黙示的にカルテルの対象から除外したかまたはこれと同視し得る合理的な理由がある特段の事情が認められる場合」に当たることは明らかであり,Rに対する売上額は,課徴金の算定の基礎となる売上額から控除されるべきものである。 (2) 被告の主張ア総論(ア) Aは,他の事業者と共同してポリプロピレンの販売価格の引き上げを決定し,相互にその事業活動を拘束することにより,公共の利益に反して我が国におけるポリプロピレンの販売分野における競争 総論(ア) Aは,他の事業者と共同してポリプロピレンの販売価格の引き上げを決定し,相互にその事業活動を拘束することにより,公共の利益に反して我が国におけるポリプロピレンの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって,独占禁止法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法3条の規定に違反するものであり,同法7条の2第1項に規定する商品の対価に係るものである。 Aはポリプロピレンの製造販売業を営んでいたものであるが,平成16年8月1日付けで原告との間で原告を存続会社として合併したことにより消滅し,同法7条の2第5項の規定によりAがした違反行為は,原告がした違反行為とみなされる。 (イ) 独占禁止法7条の2第1項は,事業者が商品の対価に係る不当な取引制限をしたときは,事業者に対し,当該行為の実行としての事業活動が行われた期間における「当該商品」の売上額を基礎として計算 した額の課徴金の納付を命ずる旨を規定している。 「不当な取引制限」とは,同法2条6項において「業者が(中略)他の事業者と共同して(中略)相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」をいうから,同法7条の2第1項にいう「当該商品」とは,「当該行為」,すなわち一定の取引分野における競争を実質的に制限する違反行為が行われた場合において,違反行為である相互拘束の対象とされた商品全体である。そして,対象商品の範ちゅうに属さない商品は「当該商品」に該当しないのはいうまでもないから,独占禁止法7条の2第1項所定の「当該商品」とは,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,当該行為による拘束を受けたものをいうと解される。また,対象商品の範ちゅうは,違反行為の内容に応じ,商品の 法7条の2第1項所定の「当該商品」とは,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,当該行為による拘束を受けたものをいうと解される。また,対象商品の範ちゅうは,違反行為の内容に応じ,商品の種類,取引地域,取引段階,取引相手方等の要素によって画定されるものであるところ,これらの要素によって画定された対象商品の範ちゅうに属する商品については,当該違反行為による拘束を受け,定性的に違反行為の影響が及ぶものであるから,原則として当該範ちゅうに属する商品全体が課徴金の算定対象となる。したがって,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品については,当該行為を行った事業者が明示的に又は黙示的に当該行為の対象から除外したこと,あるいは,これと同視し得る合理的な理由によって定型的に当該行為による拘束から除外されていることを示す特段の事情がない限り,当該行為による拘束を受けたものと推定し,当該商品に該当するものとして課徴金の算定対象に含めるのが相当である。 (ウ) また,親会社と子会社は,あくまで別の法人格を有するのであるから原則としてそれぞれ独立した別個の事業者と解するべきであり, 違反行為を行った事業者(親会社)が,違反行為の対象となった商品を子会社に対して販売した場合であっても,課徴金の算定の基礎となるべき当該商品の売上額は,違反行為を行った事業者の当該商品に係る売上額を意味し,当該事業者に当該商品に係る売上げが発生している以上は,この売上げは「当該商品」の売上額に該当し,課徴金算定の基礎となる売上げとなることは,条文上明確であり,親子会社間の取引か否かは「当該商品」の売上額にかかる認定に影響を与える関係にはない。そもそも,独占禁止法の定める課徴金の制度は,カルテルの摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし,カルテ 社間の取引か否かは「当該商品」の売上額にかかる認定に影響を与える関係にはない。そもそも,独占禁止法の定める課徴金の制度は,カルテルの摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし,カルテルの予防効果を強化することを目的として設けられたものであり(最高裁平成14年(行ヒ)第72号平成17年9月13日第三小法廷判決・民集59巻7号1950頁),独占禁止法7条の2は,課徴金の算定について,違反行為の実行期間における対象商品の又は役務の売上額に一定率を乗ずる方法を採用していることに照らすと,親子会社間の取引を課徴金の対象から除外すべきと解する根拠はない。 (エ) 本件審決において認定された本件違反行為の対象商品はポリプロピレンであり,その取引先による限定は加えられていないのであるから,O向け商品及びR向け商品は,いずれも本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品である。また,O向け商品及びR向け商品について,本件違反行為の参加者らが,明示的又は黙示的に本件違反行為の対象からあえて除外したという事情は認められないから,O向け商品及びR向け商品が定型的に本件違反行為による拘束から除外されていることを示す特段の事情の有無が問題となるが,O向け商品及びR向け商品について,そのような事情も認められないから,これらの商品については,本件違反行為による拘束を受けたものと推定し「当該商品」に該当するものとして課徴金算定対象に含めるべきである。 イ争点(1)について(ア) 本件では,AがOに販売したO向け商品が違反行為の対象となったポリプロピレンに該当する以上,違反行為者間の明示又は黙示の合意によってO向け商品が本件違反行為の対象から除外された等のO向け商品が違反行為の拘束を受けたものではないことをうかがわせる特段の事情が存在しな ピレンに該当する以上,違反行為者間の明示又は黙示の合意によってO向け商品が本件違反行為の対象から除外された等のO向け商品が違反行為の拘束を受けたものではないことをうかがわせる特段の事情が存在しない限り,O向け商品に係る売上げは「当該商品」の売上げに該当すると解すべきところ,AとOが親子会社であったとの事情の存在のみでは,上記特段の事情に該当するものとはいえない。むしろ,本件では,O向け商品の価格は,本件違反行為によるポリプロピレンの値上げ等と連動していたというのであるから,O向け商品が本件違反行為の対象となるものであったことは明らかである。 仮に,対象商品に係る取引が同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得る場合には,「当該商品」の売上額には該当しないと解するとしても,同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るか否かは,対象となった商品の販売先が,その商品を原料として別の商品に加工し,加工された商品を当該販売先自ら需要者に販売するか否か等の諸事情を総合考慮した上で判断されるものであり,違反行為の対象となった商品の販売相手が全額出資子会社か否か,又は,子会社が親会社の支配下にあったか否かの事実のみによって判断されるものではない。本件では,そもそも,Oは,Aから購入したポリプロピレンを原料として製造した商品を自ら需要者に販売していたのであり,販売としての事業活動を実施していたのであるから,上記場合にも該当しないことは明らかである。 (イ) 以上の事情によれば,O向け商品が,本件違反行為の参加者らが明示的又は黙示的に当該行為の対象からあえて除外していたこと と同視し得る合理的な理由によって定型的に当該行為による拘束から除外されていることを示す特段の事情があると認めることもできない。 (ウ) ナフサリンク 該行為の対象からあえて除外していたこと と同視し得る合理的な理由によって定型的に当該行為による拘束から除外されていることを示す特段の事情があると認めることもできない。 (ウ) ナフサリンク方式は,原料であるナフサの価格に連動して販売価格を設定する旨の契約によるものであり,本件違反行為の実施に伴って価格改定が行われるようなものでないのに対し,O向け商品の販売価格の決定方法は,Oが製造販売するフィルム,シート及び不織布の3分野ごとに,Aの販売するポリプロピレンに係る代表的な大手需要者としてあらかじめ定められた者向けのポリプロピレンの販売単価の90パーセントとすることとされていたのであり,本件違反行為によるポリプロピレンの値上げ等が行われた場合には,O向け商品の販売価格もそれと連動して値上げ等される関係にあった。したがって,O向け商品の販売価格の決定方法は,本件違反行為の影響を受けるという点でナフサリンク方式と全く異なるものであり,販売価格の決定方法によって,O向け商品が定型的に本件違反行為による拘束から除外されていることを示す特段の事情は認められない。 (エ) 原告は,Oに対する販売価格が,平均的市場価格より優遇された価格であって,Oは実質的にAからポリプロピレンの支給を受けていたといえ,OがA以外の他の事業者からポリプロピレンを購入することが現実にあり得ず,O向け商品は当初から競争が行われる分野ではなかったから,定型的に違反行為による拘束から除外されていると主張する。しかし,Oに対する取引が経理上売買の形をとっている以上,OがAからポリプロピレンの支給を受けていたとはいえず,OがA以外の業者からポリプロピレンを購入する可能性が否定されるわけではないから,O向け商品が,競争が行われる分野 でなかったとはいえず,原告の からポリプロピレンの支給を受けていたとはいえず,OがA以外の業者からポリプロピレンを購入する可能性が否定されるわけではないから,O向け商品が,競争が行われる分野 でなかったとはいえず,原告の主張は失当である。 (オ) Oがポリプロピレンを加工等せず単純に転売している事実はなくAがOを隠れ蓑にして市場にポリプロピレンを出荷している関係にないことは,O向け商品の売上げを課徴金の算定対象とするか否かとは関係がない。 (カ) 原告の援用する公正取引委員会昭和59年2月2日付け審決は,全額出資の子会社に対する取引であることのみによってその売上げを課徴金算定の基礎から一律に除外するのではなく,個々の事案ごとに他の事情も勘案して課徴金算定の基礎から除外するか否かを判断する立場をとっているものと解され,OがAの全額出資子会社であることのみをもって,O向け商品の売上げが課徴金算定の基礎から除外されるべきであるということはできない。 (キ) 「指針」に関しては,「事業者は不公正な取引方法を用いてはならない。」と規定されている(独占禁止法19条)ところ,親会社と子会社は,あくまで別の法人格を有する以上,別の事業者として独占禁止法が適用されるのであり,親会社と子会社を一体のものと見て,一体としての親子会社を一つの事業者として独占禁止法が適用されるわけではない。しかしながら,子会社は,法人格としては別に存在していても,独立の取引単位としての機能を有していない場合があり,親会社が,その製品を子会社を通じて販売するに際して,子会社に対し,子会社がその取引先に販売すべき価格を指示する場合等,親子会社間の行為が,独占禁止法の保護目的である「競争」に影響を及ぼすものでない場合があるが,そのような場合にも,親子会社はそれぞれ別の事業者であるとの前提に立って 販売すべき価格を指示する場合等,親子会社間の行為が,独占禁止法の保護目的である「競争」に影響を及ぼすものでない場合があるが,そのような場合にも,親子会社はそれぞれ別の事業者であるとの前提に立って,親子会社間の行為に不公正な取引方法に係る規定を機械的に当てはめると,外形上不公正な取引方法として禁止される行為に該当するかのよう に見える場合がある。このような場合は,原則として,不公正な取引方法による規制を受けないことを明確化したものである。「指針」は一定の親子会社間の取引は,その実態を考慮して不公正な取引方法の規制の対象とならないことを明確にしたものにとどまり,その適用は不公正な取引方法の対象となる親子会社間の取引の局面に限定される。ただし,親会社が子会社以外の取引先に対しても,子会社と同様の制限を課している場合には,全額出資子会社の場合であっても,当該子会社に対しても一取引先事業者として制限を課していると認められるから,不公正な取引方法による規制の対象となる。不公正な取引方法以外の独占禁止法違反行為には,「指針」の考え方は,そのまま適用されるものではなく,例えば不当な取引制限について,親子会社又は兄弟会社間のみで不当な取引制限行為を行っている場合に,これら事業者の間で不当な取引制限が成立しているとみるべきか否かは,個々の事案の具体的な事情に応じて実態に即した事実認定がなされるのであり,親子会社間取引について一律に同一企業内の行為に準ずるものとする運用を行っている事実はない。 ウ争点(2)について(ア) ナフサリンク方式は原料であるナフサの価格に連動して販売価格を設定する旨の契約によるものであり,本件違反行為の実施に伴って価格改定が行われるようなものでないのに対し,R向け商品の販売価格は,Aが販売する「ナチュラル品 料であるナフサの価格に連動して販売価格を設定する旨の契約によるものであり,本件違反行為の実施に伴って価格改定が行われるようなものでないのに対し,R向け商品の販売価格は,Aが販売する「ナチュラル品」と呼ばれるポリプロピレン(ただし,R向けのものを除く。)の平均単価の90パーセントとすることとされ,平均単価にはナフサ連動や輸入品価格連動によるものもすべて含まれており,AとRとの間であらかじめ一定の指標を決め,これを基準として計算方式を定めてそれに基づく四半 期ごとに前四半期の実績値に基づき自動的,機械的に販売価格を設定していたとしても,本件違反行為によるポリプロピレンの値上げ等が行われた場合には,R向け商品の販売価格もそれと連動して値上げ等される関係にあったのであり,本件違反行為の影響を受けるという点で,ナフサリンク方式と全く異なるものである。企業間の商品取引における販売価格の設定方法としては様々なものがあり得るところ,その一つとしてR向け商品の販売価格の設定方法が,一般の需要者と異なり,一定の計算式によって自動的に定まる方法が採用されていたからといって,AとRとの間の取引関係がAと他社との間の取引関係と質的に異なるものであったとはいえない。 一般の需要者のようにAとRとの間で個別の価格交渉等が行われなかったとの点についても,一定の計算式によって自動的に定まる販売価格の設定方法が採用されていたことの結果にすぎず,これが,両社間の取引関係がAと他社との間の取引関係と質的に異なるものであった根拠にはならない。 (イ) Rが,AとSとの均等出資により設立され,Rの代表取締役は一貫してAから派遣され,Rの取締役,監査役はそれぞれAとSから各2分の1の人数を派遣しているとしても,Rは,Aと別個の法人格を有するものとして,Aから購入し 等出資により設立され,Rの代表取締役は一貫してAから派遣され,Rの取締役,監査役はそれぞれAとSから各2分の1の人数を派遣しているとしても,Rは,Aと別個の法人格を有するものとして,Aから購入したポリプロピレンを原料として製造した製品をAではなく他の需要者に販売していた者であることから,Rに対する取引について同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るものということはできない。 (ウ) 原告は,合弁基本契約書の定めにより,R向けの合成樹脂についてはAが供給責任を負い,かつ,市場競争力ある価格及び条件で供給するものとされており,Rはポリプロピレン等の合成樹脂については,全量Aから購入し,他社から購入することはなく,Rにつ いてAと競合しようとするメーカーはなかった旨主張する。しかし,合弁基本契約書に,R自身の原料調達に何らかの制約を課す条項はなく,また,AのR向けポリプロピレンの販売価格は,「ナチュラル品」と呼ばれるポリプロピレンの90パーセントとすることとされていたところ,それが他のポリプロピレン製造業者から提示されることがあり得ないほどの低価格であったとはいえず,その他の事情を考慮しても,Rにおけるポリプロピレンの仕入れについて,およそA以外の業者が参入する余地が全くなかったとはいえないのであるから,原告の主張は失当である。 第3 当裁判所の判断 1 課徴金算定の対象となる商品について独占禁止法の定める課徴金の制度は,昭和52年法律第63号による独占禁止法改正において,カルテルの摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし,カルテルの予防効果を強化することを目的として,既存の刑事罰の定めやカルテルによる損害回復をするための損害賠償制度に加えて設けられたものであり,カルテル禁止の実効性確保のための行政 誘因を小さくし,カルテルの予防効果を強化することを目的として,既存の刑事罰の定めやカルテルによる損害回復をするための損害賠償制度に加えて設けられたものであり,カルテル禁止の実効性確保のための行政上の措置として機動的に発動できるようにしたものである(前掲最高裁判所平成17年9月13日第三小法廷判決)。 独占禁止法7条の2第1項は,事業者が不当な取引制限で,商品の対価に係るものをしたときは,実行期間における当該商品の政令で定める方法により算定した売上額に100分の6を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならないものと定めており,これを受けて独占禁止法施行令5条は,その売上額の算定方法を,いわゆる引渡基準により実行期間において引き渡した商品の額を合計する方法によることとし,ここから控除すべきものとして,同条1号ないし3号の場合だけを明文で掲げており,同6条は,引渡基準によって売上額を算定すると事業活動の結果と 著しい差異を生じる事情があると認められるときは,例外としていわゆる契約基準によることとし,実行期間において締結した商品の販売に係る契約により定められた対価の額を合計する方法とすると定め,その場合の合計額から控除するものとして同5条3号だけを準用している。 以上によれば,独占禁止法は,課徴金の算定方法を具体的な法違反による現実的な経済的不当利得そのものとは切り離し,売上額に一定の比率を乗じて一律かつ画一的に算出することとして,カルテル禁止の実効性確保のための行政上の措置として機動的に発動できることを図ったものと解すべきである。 そして,独占禁止法7条の2第1項にいう「当該商品」とは,違反行為である相互拘束の対象である商品,すなわち,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,違反行為であ ものと解すべきである。 そして,独占禁止法7条の2第1項にいう「当該商品」とは,違反行為である相互拘束の対象である商品,すなわち,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,違反行為である相互拘束を受けたものをいうと解すべきであるが,上記のような課徴金制度の趣旨及び課徴金の算定方法に照らせば,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品については,一定の商品につき,違反行為を行った事業者又は事業者団体が,明示的又は黙示的に当該行為の対象から除外するなど当該商品が違反行為である相互拘束から除外されていることを示す事情が認められない限り,違反行為による拘束が及んでいるものとして,課徴金算定の対象となる当該商品に含まれ,違反行為者が,実行期間中に違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品を引き渡して得た対価の額が,課徴金の算定の基礎となる売上額となると解すべきである。 2 争点(1)について(1) Oは,Aが資本の全額を出資して昭和59年1月11日に設立され(当時の商号「T株式会社」),設立以来,ポリプロピレンを原料としたフィルム,シート等の合成樹脂製品の製造を行っており,設立以来,OとAとの間の資本関係に変化はなく,平成16年8月,Aが原告に吸収合併されて以後は,原告の全額出資子会社となった。Oの役員は全員がAからの出 向又は兼任であった。当初,Oは,Aからポリプロピレンの提供を受け,それを製品に加工してAに納入し,Aが需要者に販売する委託加工取引関係にあり,OはAから委託加工費を得ていたが,平成12年4月,Aの加工製品事業を譲り受け,同月から,Aとの間の委託加工契約を解消し,OがAからポリプロピレンを購入してフィルム等の製品を製造し自ら需要者に販売する取引形態となり,OとAとの取引関係は委託加工契約取引関係から売買契約取 け,同月から,Aとの間の委託加工契約を解消し,OがAからポリプロピレンを購入してフィルム等の製品を製造し自ら需要者に販売する取引形態となり,OとAとの取引関係は委託加工契約取引関係から売買契約取引関係へと変更された。 平成12年当時,OのAからのポリプロピレンの購入単価は,Oが製造販売するフィルム,シート,不織布の各製品の分野ごとに,Aが原料であるポリプロピレンを販売する代表的な大手需要者として定めた者向けの販売単価の90パーセントに相当する価格とすることが定められており,Oが,A以外の事業者からポリプロピレンを購入することはなかった。(査第1号証,審第1ないし3号証,第19号証)(2) 本件違反行為は,Aが,他の事業者と共同してポリプロピレン(ナフサリンク方式による契約を締結しているものを除く。)の販売価格の引き上げを決定し,相互にその事業活動を拘束することにより,公共の利益に反して,我が国におけるポリプロピレンの販売分野における競争を実質的に制限していたというものであり,その対象となる商品は,ナフサリンク方式による契約を締結しているものを除くポリプロピレン全体である。そして,AがOに対して販売したのはポリプロピレンであってその商品の範ちゅうに含まれ,本件違反行為を行った事業者が,特に,Oへ販売した商品を本件違反行為の対象から除外した事実は認められず,これが本件違反行為である相互拘束から除外されていることを示す事情も認められない。 (3)ア原告は,OがAの全額出資子会社であり,このような全額出資子会社については,経理上AのOに対するポリプロピレンの売上げとされているものであったとしても,同一企業内における加工部門への物資の移動と同 視し得るものであるから,O向けのポリプロピレンは,そもそも違反行為の対象商品の範ちゅう るポリプロピレンの売上げとされているものであったとしても,同一企業内における加工部門への物資の移動と同 視し得るものであるから,O向けのポリプロピレンは,そもそも違反行為の対象商品の範ちゅうに属しないか,少なくとも「定型的に当該行為による拘束から除外されることを示す特段の事情」があり,独占禁止法7条の2第1項にいう「売上額」に当たらず,課徴金算定の基礎となる売上額から除外されるべきであると主張する。 しかしながら,Oは,Aの全額出資の子会社であるとはいえ,違反行為者であるAとは別個の法人格を有し,法律上も独立の取引主体として活動しているものである以上,そのような子会社に販売した商品が違反行為の対象である商品から除外されているものと認めることはできない。もっとも,全額出資子会社に対する商品の販売が,同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るような事情が存在する場合には,そのような子会社へ販売した商品が,違反行為の対象となる商品から除外され,その商品の売上額が,課徴金算定の基礎となる売上額から除外されると解すべき余地はある。 しかし,本件において,Oは,平成12年4月までは,Aからポリプロピレンの提供を受け,それを製品に加工してAに納入してAが需要者に販売する委託加工取引関係にあったものの,平成12年4月から,Aとの間の委託加工契約を解消し,本件実行期間においては,Aから購入したポリプロピレンを原料として製造した製品を,自ら需要者に対して販売していたことに照らすと,OをAの同一企業内における加工部門と同視し得るような事情は認められない。また,Oに対するポリプロピレンの販売単価が大手需要者に対する販売単価の90パーセントに相当する価格とする算定方法により決定されていたことも,Oが,取引条件において優遇されていたことを められない。また,Oに対するポリプロピレンの販売単価が大手需要者に対する販売単価の90パーセントに相当する価格とする算定方法により決定されていたことも,Oが,取引条件において優遇されていたことをうかがわせるものの,そのことから,OがAの同一企業内における加工部門と同視し得るような事情があるとは認められず,他に,上記事情の存在を認めるに足りる証拠はない。 イまた,原告は,AのOに対するポリプロピレンの販売単価が,大手需要者に対する販売単価の90パーセントという決定方式により自動的,機械的に設定され,OがAとポリプロピレンの販売価格について交渉する関係にはなく,そのような販売価格の決定方法が,通常の需要者向けの販売価格の決定方法と質的に全く異なるものであり,また,OがA以外からポリプロピレンを購入することはあり得ないから,O向けのポリプロピレンの販売は,競争が行われる取引分野には当たらず,O向けのポリプロピレンは,定型的に違反行為による拘束から除外されていると主張する。 しかしながら,Oに対するポリプロピレンの販売単価の決定方法が上記のようなものであるとしても,本件違反行為によりAの事業活動が相互拘束を受けた結果,一般の需要者に対するポリプロピレンの販売価格が値上げされた場合には,そのうちの大手需要者に対する販売単価の90パーセントに相当する価格と定められていたOへ販売するポリプロピレンの単価も自動的に値上げされる結果となることに照らすと,O向けのポリプロピレンが,本件違反行為による拘束から除外されていることを示す事情は認められない。 また,Oは,前判示のように法律上独立の取引主体であり,Aの全額出資の子会社であることから,当然にA以外の事業者からポリプロピレンを購入することができないものとすべき理由はなく,それ以外に,A 。 また,Oは,前判示のように法律上独立の取引主体であり,Aの全額出資の子会社であることから,当然にA以外の事業者からポリプロピレンを購入することができないものとすべき理由はなく,それ以外に,A以外の事業者からのポリプロピレンの購入を法律上,あるいは契約上禁じられていたことを認めるに足りる証拠もない。したがって,O向けポリプロピレンの販売が,競争の行われる余地のない分野での行為であるということもできない。 ウなお,原告は,「指針」が,親子会社間の取引が実質的に同一企業内の行為に準ずるものと認められる場合があることを認めており,その基礎にある考え方は,課徴金の賦課についても共通するものであると主張 する。 しかしながら,「指針」は,親子会社間における取引が不公正な取引方法による規制の対象となるか否かに関するものであり,不当な取引制限のある場合について当然に適用されるべきものではない。そして,子会社が親会社の同一企業内の加工部門と同視し得るような場合に,親会社が子会社に販売した商品が,違反行為の対象となる商品から除外されていると解すべき余地があるが,AとOとの関係は,そのような場合には当たらないことは前判示のとおりである。 エ原告の主張はいずれも採用することができない。 3 争点(2)について(1) Rは,Aが50パーセント,Sが50パーセントを出資して昭和54年5月に設立され,合成樹脂製品の複合材料の製造販売を行っており,その購入するポリプロピレンの全量を,原則としてAから購入していた。R設立に当たり,AとSとの間において,合弁基本契約書が締結され,A及びSからRの取締役を各同数,代表取締役各1名,監査役各1名を選出すること,AはRに対しその製品製造に適する合成樹脂を市場競争力ある価格及び条件で供給するものとする ,合弁基本契約書が締結され,A及びSからRの取締役を各同数,代表取締役各1名,監査役各1名を選出すること,AはRに対しその製品製造に適する合成樹脂を市場競争力ある価格及び条件で供給するものとすることなどが定められ,Rの役員はA及びSから各半数ずつが派遣されていた。 AがRに販売するポリプロピレンは,ナチュラル品と呼ばれるポリプロピレンであり,平成12年当時のAのR向けポリプロピレンの販売単価は,Aが販売するすべてのナチュラル品(R向けを除く。)の平均単価の90パーセントに設定することが決められており,四半期が終了するごとに実績を把握し,次の四半期に適用される単価が自動的に改定されていた。RがA以外の事業者からポリプロピレンを購入することは原則としてなかったが,顧客からの要望により,Aにはないグレードのポリプロピレンを少量購入することはあった。(査第1号証,第2号証,審第10ないし14 号証,第19号証,第20号証)(2) 本件違反行為は,第2の2(2)判示のとおりであり,その対象となる商品は,ナフサの価格に連動して自動的に販売価格を設定する旨の契約を締結しているものを除くポリプロピレン全体である。そして,AがRに対して販売したのはポリプロピレンであってその商品の範ちゅうに含まれ,本件違反行為を行った事業者が,特に,Rへ販売した商品を本件違反行為の対象から除外した事実は認められず,これが本件違反行為による拘束から除外されていることを示す事情も認められない。 (3)ア原告は,R向けのポリプロピレンの販売単価の決定方式が上記のようなものであり,RとAとの間においてポリプロピレンの販売単価について交渉が行われることはなく,一定の算定方法に従って自動的,機械的に価格が決定される点で,ナフサリンク方式により販売価格が決定される場 ものであり,RとAとの間においてポリプロピレンの販売単価について交渉が行われることはなく,一定の算定方法に従って自動的,機械的に価格が決定される点で,ナフサリンク方式により販売価格が決定される場合と異ならないから,R向けのポリプロピレンは,違反行為による拘束から定型的に除外されているものであり,その売上額は課徴金算定の対象となる売上額から除外されるべきであると主張する。 しかしながら,ナフサの価格に連動して自動的に販売価格を設定する旨の契約が締結されているナフサリンク方式の場合には,原料であるナフサの価格に連動して自動的にポリプロピレンの販売価格が決定されるものであって,上記ナフサの価格が本件違反行為である相互拘束を受けるものではないのであるから,ナフサリンク方式による契約がされているポリプロピレンは,本件違反行為の拘束を受けるものでないことが明らかである。これに対し,Rへ販売するポリプロピレンの販売単価は,四半期ごとのR向けを除くナチュラル品のポリプロピレンの平均販売単価の90パーセントに相当する価格と合意されていたのであるから,本件違反行為によりAの事業活動が相互拘束を受ける結果,一般の需要者に対する上記ポリプロピレンの販売価格が値上げされた場合には,R向 けのポリプロピレンの販売単価も自動的に値上げされる結果となることに照らすと,AがRへ販売したポリプロピレンが,本件違反行為による相互拘束から除外されているものとは認められない。 イまた,原告は,Rに対するポリプロピレンの販売価格の決定方法が,交渉により販売価格が決定される一般の需要者との取引関係とは質的に異なるものであり,RはAの完全子会社と実質的に同視されており,Rに対するポリプロピレンの販売は,Aの同一企業内における加工部門への物資の移動と位置づけられ,AがR 般の需要者との取引関係とは質的に異なるものであり,RはAの完全子会社と実質的に同視されており,Rに対するポリプロピレンの販売は,Aの同一企業内における加工部門への物資の移動と位置づけられ,AがR向けのポリプロピレンに対して違反行為による拘束を及ぼして高い販売単価で販売する意義はなく,また,RがA以外の事業者からポリプロピレンを購入することもあり得ないから,Rとの取引は,競争が行われる分野ではなく,R向けのポリプロピレンは,明示的又は黙示的に違反行為の対象から除外されたのと同視し得る特段の事情があると主張する。 しかしながら,AとRが上記のとおり親子会社の関係にあるとしても,Rが違反行為者であるAとは別個の法人格を有し,法律上も独立の取引主体として活動しているものである以上,そのようなRへ販売したポリプロピレンが違反行為の対象である商品から除外されているものと認めることはできない。その上,Rは,Aから購入したポリプロピレンを原料として製造した製品を,自ら需要者に対して販売していたこと,SもAと同じくRの株式の50パーセントを保有し,役員の半数を派遣していたものであって,RがAの完全な支配下にあったと認めることもできないことを総合考慮すれば,RをAの同一企業内における加工部門と同視し得るような事情は認められないというべきである。 また,Aは,合弁基本契約書に基づき,Rに対しその製品製造に適する合成樹脂を市場競争力ある価格及び条件で供給する義務を負っていたことが認められるが,Rが,顧客からの要望により,Aにはないグレー ドのポリプロピレンを少量購入することがあったことは前判示のとおりであり,A以外の事業者からポリプロピレンを購入することが,法律上,あるいは契約関係上禁じられていたと認めるに足りる証拠はない。したがって,R向けの ンを少量購入することがあったことは前判示のとおりであり,A以外の事業者からポリプロピレンを購入することが,法律上,あるいは契約関係上禁じられていたと認めるに足りる証拠はない。したがって,R向けのポリプロピレンの販売が,競争の行われる余地のない分野であり,R向けのポリプロピレンが違反行為の対象から除外されていたと認めるには足りず,そのポリプロピレンの売上額が課徴金算定の対象となる売上額から除外されるべきものとは認められない。 4 結論以上のとおり,本件実行期間におけるAのポリプロピレンの売上額からOに対する売上額及びRに対する売上額を除外すべき理由はなく,独占禁止法施行令5条の規定に基づき算定される売上額は23億6921万6502円であり,これに基づき独占禁止法7条の2第1項の規定により算出される課徴金の額は本件審決が支払を命じた1億4215万円である。 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第3特別部 裁判長裁判官大竹たかし 裁判官宇田川基 裁判官山崎まさよ 裁判官小野洋一 裁判官栗原壯太
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