平成27年1月28日判決言渡平成24年(ワ)第14472号賃金請求事件主文 1 被告は,別紙認容額等一覧表の「原告」欄記載の各原告に対し,それぞれ対応する同表の「認容額」欄記載の金員及びこれに対する同表の「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙認容額等一覧表の「原告」欄記載の各原告に対し,同表の「請求額(未払賃金)」欄記載の金員及びこれに対する同表の「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで同表の「遅延損害金利率」欄記載の割合による金員を支払え。 2 被告は,別紙認容額等一覧表の「原告」欄記載の各原告に対し,同表の「請求額(付加金)」欄記載の金員及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告に雇用されていた原告らが,歩合給の計算に当たり残業手当等に相当する額を控除する旨を定める被告の賃金規則上の規定は無効であり,被告は,控除された残業手当等相当額の賃金支払義務を負うと主張して,被告に対し,雇用契約に基づき,未払賃金(主位的には時間外,休日及び深夜の割増賃金として,予備的には歩合給として)及びこれに対する最終支払期日の翌日 以降(被告を退職した原告らについては,退職日の翌日以降)の遅延損害金の支払を求めるとともに,労働基準法(以下「法」という。)114条に基づき,上記未払賃金のうち法37条の規定に違反して支払われていない時間外,休日及び深夜の割増賃金( 退職日の翌日以降)の遅延損害金の支払を求めるとともに,労働基準法(以下「法」という。)114条に基づき,上記未払賃金のうち法37条の規定に違反して支払われていない時間外,休日及び深夜の割増賃金(主位的請求に対応する。ただし,その支払期日から本件訴えの提起までの間に2年が経過したものを除く。)と同一額の付加金及びこれに対する判決確定の日の翌日以降の遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠〔各項に掲記のもの〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 被告は,タクシーによる一般旅客自動車運送事業等を営む株式会社である。 (2) 原告らは,別紙雇用日等一覧表の「雇用年月日」欄記載の年月日頃,被告との間で期間の定めのない雇用契約を締結し,同日以降,被告において,タクシー乗務員として就労してきた。原告らのうち,同表の「退職年月日」欄に記載のある者は,いずれも同欄記載の日に(ただし,原告aについては,遅くとも同欄記載の日までに)被告を退職した。 (3) 被告の就業規則の一部であるタクシー乗務員賃金規則(以下「被告賃金規則」という。)は,本採用されてタクシー乗務員として就業する従業員の賃金について,次のとおり定めている。(甲1)ア基本給として,1乗務(15時間30分)当たり1万2500円を支給する。 イ服務手当(タクシーに乗務せずに勤務した場合の賃金)として,タクシーに乗務しないことにつき従業員に責任のない場合は1時間1200円,責任のある場合は1時間1000円を支給する。 ウ交通費として,交通機関を利用して通勤する者に対し,非課税限度額の範囲内で実費支給する。 エ(ア) 割増金及び歩合給を求めるための対象額(以下「対象額A」とい う。)を,次のとおり算出する。 対象額A={ 通機関を利用して通勤する者に対し,非課税限度額の範囲内で実費支給する。 エ(ア) 割増金及び歩合給を求めるための対象額(以下「対象額A」とい う。)を,次のとおり算出する。 対象額A={(所定内揚高-所定内基礎控除額)×0.53}+{(公出揚高-公出基礎控除額)×0.62}(イ) 「所定内基礎控除額」は,所定就労日の1乗務の控除額(平日2万9000円〔ただし,「A乗務」とされる乗務の場合は1万0600円〕,土曜日1万6300円,日曜祝日1万3200円)に,平日,土曜日,日曜祝日の各乗務日数を乗じた額とする。また,「公出基礎控除額」は,公出(休日出勤)の1乗務の控除額を平日2万4100円(ただし,「A乗務」の場合は7900円),土曜日1万1300円,日曜祝日8200円として,所定内基礎控除額と同様に算出した額とする。 オ深夜手当は,次のとおりとする。 ×××+深夜労働時間時間出勤日数服務手当基本給0.2515.5+××深夜労働時間総労働時間対象額A0.25 カ残業手当は,次のとおりとする。 ×××+残業時間時間出勤日数服務手当基本給1.2515.5+××残業時間総労働時間対象額A0.25 キ(ア) 公出手当のうち,法定外休日労働分は,次のとおりとする。 ×××+休日労働時間時間出勤日数服務手当基本給0.2515.5+××休日労働時間総労働時間対象額A0.25 (イ) 公出手当のうち,法定休日労働分は,次のとおりとする。 ×××+休日労働時間時 ××休日労働時間総労働時間対象額A0.25 (イ) 公出手当のうち,法定休日労働分は,次のとおりとする。 ×××+休日労働時間時間出勤日数服務手当基本給0.3515.5+ ××休日労働時間総労働時間対象額A0.35 ク歩合給(1)は,次のとおりとする(ただし,交通費は,7時間45分の乗務につき片道分として計算。以下,この定めを「本件規定」という。)。 対象額A-{割増金(深夜手当,残業手当及び公出手当の合計)+交通費}ケ歩合給(2)は,次のとおりとする。 (所定内税抜揚高-341,000 円)×0.05(4) ただし,被告賃金規則は,平成22年4月に改定されたものであり,それ以前の賃金規則は,次の点が上記(3)の定めと異なっていた。(乙1)ア安全手当として,有過失事故が皆無の者に,1乗務(15時間30分)当たり3000円を支給するものとされていた。 イ所定内基礎控除額の基準となる1乗務の控除額が,平日3万5000円(ただし,「A乗務」の場合は1万3500円),土曜日2万2200円,日曜祝日1万8800円であった。また,公出基礎控除額の基準となる1乗務の控除額が,平日2万9200円(ただし,「A乗務」の場合は1万0400円),土曜日1万6400円,日曜祝日1万3000円であった。 ウ上記(3)オ,カ,キ(ア)及びキ(イ)の各計算式において「基本給+服務手当」とされている部分が,いずれも「基本給+安全手当+服務手当」とされていた。 エ上記(3)ケの「歩合給(2)」に相当する定めはなく,「歩合給」として,上記(3)クの「歩合給(1)」と同様の定めがあった。 (5) 原告らの賃金は,毎月17日締め, 務手当」とされていた。 エ上記(3)ケの「歩合給(2)」に相当する定めはなく,「歩合給」として,上記(3)クの「歩合給(1)」と同様の定めがあった。 (5) 原告らの賃金は,毎月17日締め,当月27日払であった。ただし,賃金支給日が土曜日,日曜日及び祝日の場合は,その前日となる。 (6)ア原告らは,平成22年2月から平成24年2月までの間,被告賃金規則上の本採用の乗務員として,別紙個人別賃金計算書の「所定乗務数」及び「公出乗務数」の各欄記載のとおり就労した。 イ原告らは,交通費として,別紙個人別賃金計算書の「通勤交通手当」欄記載の金額を支出した。 ウ上記アの期間における原告らの揚高(売上)は,別紙個人別賃金計算書の「所定税抜揚高」及び「公出税抜揚高」の各欄記載のとおりであった。 これらに基づいて,被告賃金規則の定めにより(ただし,平成22年3月支給分は,同年4月の改定前の定めによる。)残業手当,深夜手当,公出手当,交通費及び歩合給(1)(平成22年3月支給分については,歩合給。 以下,両者を区別せずに「歩合給」という。)の額を計算すると,それぞれ,同計算書の「残業手当」,「深夜手当」,「公出手当」,「通勤交通手当」及び「歩合給」の各欄記載のとおりであり,被告は,原告らに対し,上記各欄記載の額の金員を支払った。また,上記の期間において,原告ごとに各月の対象額Aの金額を計算すると,同計算書の「対象額A」欄記載のとおりであった。 2 争点(1) 本件規定の有効性(2) 遅延損害金の利率(原告a,同b及び同c関係)(3) 付加金の支払を命じることの可否及び相当性 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件規定の有効性)について【原告らの主張】ア割増金の控除について(ア) 法37条 ) 付加金の支払を命じることの可否及び相当性 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件規定の有効性)について【原告らの主張】ア割増金の控除について(ア) 法37条は,時間外労働等に対して割増賃金を支払うことを要請し,使用者に経済的負担を負わせることで,時間外労働等を抑制することを目的としたものであり,同条の規定に反して割増賃金を支払わなかった場合には刑事罰まで科せられることからすれば,同条の規定は強行法規であり,同条に反する就業規則は無効となる。 本件規定によれば,歩合給は,実際に発生した歩合の額から,残業手当等の割増賃金と交通費(通勤手当)を差し引いて支給されることになるから,原告らがどれだけ時間外労働等を行っても,本来の歩合給の額が割増賃金と交通費の合計額を下回る場合でない限り,原告らへの支給額は全く増加せず,原告らに対して全く割増賃金が支払われないのと同様の結果になるものである。 また,本件規定によると,残業手当等の額を算出しなければ,歩合給を算出することができず,したがって残業代を算出する基礎となる賃金を計算することができないという矛盾が生じるのであって,法は,本件規定のように歩合給から割増賃金を差し引くということを想定していないというべきである。 したがって,本件規定は,法37条の趣旨を没却し,同条による法規制を潜脱するものであって,同条に違反する。また,被告賃金規則の定めは,公序良俗(民法90条)に反し,条理にも反するものというべきである。 (イ) これに対し,被告は,歩合給をどのように算定するかは契約自由の原則に基づき自由であると主張するが,強行法規である法37条を潜脱し,同条に違反するような算定方法は違法であり,契約自由の原則の範囲外である。 また,被告は,歩合給か ように算定するかは契約自由の原則に基づき自由であると主張するが,強行法規である法37条を潜脱し,同条に違反するような算定方法は違法であり,契約自由の原則の範囲外である。 また,被告は,歩合給から残業手当等を控除しなければ,労働時間が長くなることで賃金が増えることになり,時間外労働を助長するから,それを避けるために賃金規則の定めには合理性があるとも主張するが,この主張は,いい換えれば,労働者の労働時間を少なくするために残業手当を払わないというものであり,これが法37条に違反するものであることはいうまでもない。 さらに,被告は,多数派組合であるd労働組合(以下「d労組」とい う。)から異議が出たことがないと主張するが,d労組は,被告と一心同体の存在であり,被告の方針,決定に全く異議を唱えることがないのであって,被告のこの主張も理由がない。 (ウ) したがって,本件規定のうち,歩合給の計算において割増金を差し引くとしている部分は,違法,無効であるから,歩合給の金額は,これを差し引かないで計算すべきことになる。 ここで,被告賃金規則は,その実態をみれば,原告らの出来高に応じて計算された対象額Aを,歩合給,残業手当,深夜手当,公出手当及び交通費に分配していることにほかならず,残業手当等の名目で支払われていた賃金は,いずれも時間外等の割増賃金の実質を有するものとはいえず,歩合給の一部としての実質を有するものであるから,これらの支払をもって時間外等の割増賃金を支払ったとは認められない。 (エ) 以上によれば,被告らは,対象額Aから差し引いた残業手当,深夜手当及び公出手当と同額の未払賃金を,法37条所定の割増賃金として(仮にそうでないとしても,歩合給の一部として)支払う義務を負うというべきである。 イ交通費の控除について被告 残業手当,深夜手当及び公出手当と同額の未払賃金を,法37条所定の割増賃金として(仮にそうでないとしても,歩合給の一部として)支払う義務を負うというべきである。 イ交通費の控除について被告賃金規則には,交通費を実費支給するとの記載があるところ,この記載は,合理的に解釈する限り,通常支払われる賃金に加え,別途,労働者が勤務先まで通勤するのに必要な実費を支給するということを意味するものである。また,このような記載が存在する以上,被告の従業員としても,通常支払われる賃金に加えて,別途,交通費の実費が支給されると理解し,期待するのが当然である。なお,通勤手当を支給する旨の合意は,一般通念上も,上記のような合意内容であることが通常であるといえる。 そうすると,交通費を実費支給する旨の規定の合理的解釈として,通常の賃金に交通費を加算した金額が支払われるというべきであるところ,本 件規定のうち,歩合給の計算において交通費を差し引くとしている部分は,実質的に交通費を支払わないという結果をもたらすことになるから,当該部分については無効であると解すべきものである。 したがって,被告は,原告らの交通費に相当する額の賃金を支払っていないことになり,これは被告の債務不履行であるから,被告が,交通費又は歩合給(の一部)として,交通費相当額の未払賃金の支払義務を負うことは明らかである。 ウ未払賃金の金額について以上のとおり,被告は,原告らに対し,歩合給の計算に当たり控除した割増金及び交通費と同額の賃金の支払義務を負うところ,その金額は,別紙個人別賃金計算書の「不払額(原告)」欄記載のとおりであり,これを原告ごとに合計すると,別紙認容額等一覧表の「請求額(未払賃金)」欄記載のとおりとなる。 【被告の主張】ア割増金の控除について原告 金計算書の「不払額(原告)」欄記載のとおりであり,これを原告ごとに合計すると,別紙認容額等一覧表の「請求額(未払賃金)」欄記載のとおりとなる。 【被告の主張】ア割増金の控除について原告らは,歩合給の計算における残業手当等の控除が法37条に違反すると主張するが,被告は,歩合給とは別に,残業手当,深夜手当及び公出手当を支払っているのであるから,本件で法37条が問題となる余地はなく,一般条項としての民法90条が問題となるにすぎない。原告らの主張は,対象額Aが実際に発生した歩合の額であり,本来支給されるべき歩合給の額であるということを出発点にするものであるが,対象額Aは,歩合給算出のための仮の数字にすぎず,本来支給される歩合給などではない。 そもそも,賃金は,使用者と労働者との間の労働契約における労働の対価であり,その決定に際しては,基本的に契約自由の原則が支配,妥当する。そして,タクシー事業に対する厳しい規制のもとにおいて,乗務員の上げた揚高を会社と乗務員との間でどのように配分するのかは,強行法規 に反しない限り,労使協議の上で,使用者が,その裁量により決定すべき事項である。本件規定は,使用者の有する上記裁量の範囲内で定められたものであり,下記①ないし⑥の各事情に照らし,その内容は合理的で,手続的にも合理性があり,公序良俗に反するものではない。なお,原告らは,どれだけ時間外労働等を行っても支給額が全く増加しないと主張するが,割増金の額が対象額Aを上回る場合,歩合給をゼロ円にするにとどめ,差額を賃金総額から差し引くことはしておらず,この場合には歩合給を超える割増金に見合うだけ支給額が増加することになるし,そもそも,時間外労働をすれば必ず揚高が上がり,その結果支給される賃金総額も増加するのであるから,原告らの上記主張は誤り ,この場合には歩合給を超える割増金に見合うだけ支給額が増加することになるし,そもそも,時間外労働をすれば必ず揚高が上がり,その結果支給される賃金総額も増加するのであるから,原告らの上記主張は誤りである。 ① 被告賃金規則において,歩合給を計算する際に一定の控除項目を設けることが認められなければ,被告が事業を運営するために必要な営業原価及び適正利潤を確保することができない。歩合給の計算において一定の控除を設けることは,一般的に認められていることであり,これを否定することは使用者の事業主体としての存在意義を否定することと同じである。そして,歩合給の計算においてどのような控除項目を設けるかは,使用者である被告の裁量に任されなければならない。 ② 被告の乗務員は,実質的には個人事業主であり,終業時刻後に仕事を続けるか否かは原則として乗務員の判断に任されている(被告は,乗務員の時間外労働を事後的に承認しているだけであり,事前に命じているわけではない。)。こうした体制において,対象額Aから割増金を控除しないとすれば,単に長時間労働するだけで賃金が増加することになるため,時間外労働の助長につながり,乗務員の健康を害する危険が高まる。これを防止し,効率的営業をかなえるために賃金面での工夫をすることは,タクシー事業者としての責務ともいえる。本件規定は,法37条と同様に,時間外労働等を抑制することを目的としており,同条の趣 旨に反するものではない。なお,前述のとおり,本件規定のもとでも,時間外労働をすれば必ず賃金総額は増加するのであるから,本件規定は,労働者への補償という観点でも同条の趣旨に反するものではない。 ③ タクシー営業の性質上,会社が各乗務員の職務遂行を逐一監視することは不可能であり,場合によっては,乗客を乗せずに空車で流した 定は,労働者への補償という観点でも同条の趣旨に反するものではない。 ③ タクシー営業の性質上,会社が各乗務員の職務遂行を逐一監視することは不可能であり,場合によっては,乗客を乗せずに空車で流したり,車内で寝たりしているだけで賃金が増加することになるが,これがタクシー会社に過度の負担を生じさせることは明らかであり,本件規定は,これを回避するという点でも合理性がある。 ④ 歩合給の算出過程において時間外や深夜の労働時間を考慮要素とする賃金制度は,タクシー業界において一般的に採用されているものであり,被告も,被告賃金規則に明記し,入社に際しても賃金制度の説明をしていたから,全乗務員にとって周知のことであった。また,本件規定に対し,組織率約95パーセントの多数派組合であるd労組からこれまで異議が出たことはなく,原告らもd労組に所属していた当時は異議を述べていなかった。むしろ,d労組は,歩合率を下げて時間外手当等の支給を受けるのと比べ,本件規定によるほうが有利かつ公平で合理的であると判断している。 ⑤ 仮に,原告らの主張するように時間外手当等を支払わねばならないとすると,被告の経営を維持するためには,歩合率を大幅に引き下げなければならない。そうすると,深夜時間帯に勤務し,かつ残業を多くする者は賃金が増えるが,所定労働時間に深夜時間帯がない者は賃金が下がり,多くの乗務員に不利益,不公平が生じることになり,合理的ではない。 ⑥ 被告は,多数派組合のd労組と大小30回にわたり労使交渉を行い,労使双方が十分議論をし,労使協定を結んだ上で,現行の賃金規則を制定したのであり,手続的にも合理性を有する。 イ交通費の控除についてこの点に関する原告らの主張は争う。 原告らは,実質的に交通費を支払わないのと同様の結果になると主張する 則を制定したのであり,手続的にも合理性を有する。 イ交通費の控除についてこの点に関する原告らの主張は争う。 原告らは,実質的に交通費を支払わないのと同様の結果になると主張するが,実際に交通費は支払われている。そして,上記アのとおり,歩合給から何を差し引くのかは,契約自由の原則により,法令に違反しない限り自由である。 また,被告は,多数派組合のd労組から,可処分所得を増やすために,賃金として交通費を設け,非課税扱いにしてほしいとの要望を受け,d労組との間で合意した結果,現在のような規定を設けたものである。このような形で当事者間の合意が成立した以上,被告賃金規則で定める以外の通勤手当を支払う理由はない。 ウ未払賃金の金額について仮に,被告の上記主張が認められず,歩合給の計算における控除項目が無効であったとしても,当該控除項目のみを無視して計算したのでは,一方的に使用者に不利益を課し,使用者の経営が成り立たなくなるのであって,その結果は,余りに使用者に酷である。民法90条による法律行為の無効は,このような著しい不均衡を許容するものではなく,まず無効な部分を法律の規定,慣習,条理などによって補充して合理的な内容に改造し,しかる後に,この合理的な内容を強制することが当事者の目的に明らかに反する場合だけ,全部を無効とすべきものである。したがって,当該控除項目を単に全て無効とするのではなく,無効となる控除項目に代わる代替の控除項目が設定されるべきであり,そのような代替の控除項目としては,例えば,全乗務員の割増金の総額を乗務員の数で除した金額とすることが考えられる。 そうすると,未払賃金の額は,原告ら主張の金額にはならないというべきであって,この点においても,原告らの請求は妥当でない。 (2) 争点(2 の数で除した金額とすることが考えられる。 そうすると,未払賃金の額は,原告ら主張の金額にはならないというべきであって,この点においても,原告らの請求は妥当でない。 (2) 争点(2)(遅延損害金の利率〔原告a,同b及び同c関係〕)について【被告の主張】仮に,争点(1)に関する被告の主張が認められないとしても,被告は,この主張に基づいて未払賃金の支払義務を争っており,労使で十分に議論した賃金規則の合理性が問題となっているものであるから,賃金の支払の確保等に関する法律(以下「賃確法」という。)施行規則6条4号にいう「合理的な理由により」裁判所で争っていることは明らかである。したがって,被告を退職した原告らの未払賃金について,賃確法6条1項は適用されないから,同原告らの未払賃金に対する遅延損害金の利率は,商事法定利率である年6分の割合によるべきである。 【原告らの主張】被告の主張は争う。本件において,被告が割増賃金等の支払を実質的に免れて,法37条に違反していることは明らかであり,割増賃金等の不払が被告の恣意的な法解釈に基づくものにすぎない以上,賃確法施行規則6条4号の「合理的な理由により・・・争つている」に該当するものではない。したがって,被告を退職した原告らの未払賃金に対する遅延損害金の利率は,賃確法6条1項により,退職の日の翌日以降,年14.6パーセントとなる。 (3) 争点(3)(付加金の支払を命じることの可否及び相当性)について【原告らの主張】被告の賃金制度は,法37条に違反するものであり,未払の割増賃金は多額であって,原告らが再三にわたって被告に支払を請求しているにもかかわらず,被告は一切支払おうとしないばかりか,かえって,原告らが加入する労働組合を潰すべく,数々の不当労働行為を行っており,被告 多額であって,原告らが再三にわたって被告に支払を請求しているにもかかわらず,被告は一切支払おうとしないばかりか,かえって,原告らが加入する労働組合を潰すべく,数々の不当労働行為を行っており,被告による割増賃金の不払は悪質なものであるから,付加金の支払を命じるべきである。 被告は,本件で法37条違反は問題にならないと主張するが,争点(1)に関して主張したとおり,被告が残業手当等の名目で支払っていた賃金は,歩 合給の一部としての性質を有するものであり,割増賃金として支払われたものとは認められないから,被告は,法37条に違反して割増賃金の支払を怠っている。 未払の割増賃金の額は,別紙個人別賃金計算書の「残業手当」,「深夜手当」及び「公出手当」の各欄記載の金員の合計(ただし,当該合計額が「不払額(原告)」欄記載の金額を上回るときは,同欄記載の額)であるから,同計算書の「付加金」欄記載のとおりとなり,これを原告ごとに合計すると,認容額等一覧表の「請求額(付加金)」欄記載のとおりとなる。 【被告の主張】本件の訴訟物は,対象額Aから控除された賃金(歩合給)の一部であり,法37条違反は問題とならないのであるから,付加金は問題とならない。 仮に,本件で法37条違反が問題になるとしても,被告賃金規則は,多数派組合のd労組との間での多数回の労使協議を経て制定されたものであり,本件までd労組や乗務員から異議が出されたことはなく,労働基準監督署から指摘を受けたこともなかった。被告は,この賃金規則のとおり,実際に割増金を支払っていたのであるから,付加金の支払が命ぜられるべきではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件規定の有効性)について(1) 割増金の控除についてア法37条が,時間外,休日及び であるから,付加金の支払が命ぜられるべきではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件規定の有効性)について(1) 割増金の控除についてア法37条が,時間外,休日及び深夜(以下「時間外等」という。)の労働に対して割増賃金の支払を義務づけているのは,それによって,時間外等の労働を抑制し,労働時間制の原則の維持を図るとともに,特別の労働というべき時間外等の労働に対する労働者への補償を行おうとするものと解される。 イ被告賃金規則は,所定労働日と休日のそれぞれについて,揚高から一定の控除額を差し引いたものに歩合率を乗じ,これらを足しあわせたものを 対象額Aとした上で,時間外等の労働に対し,これを基準として計算した額の割増金を支払うものとし(前提事実(3)エないしキ),被告は,原告らを含むそのタクシー乗務員に対し,かかる計算に則って算出された割増金を支給した(前提事実(6)ウ,弁論の全趣旨)。ところが,他方において,本件規定は,歩合給の計算に当たり,対象額Aから「割増金」及び「交通費」(以下,本件規定の定める内容を指すときは「割増金」,「交通費」と記載する。)を差し引くものとし,上記支払うものと定められている割増金及び交通費に見合う額を控除するものとしている(同(3)ク)。 これによれば,割増金と交通費の合計額が対象額Aを上回る場合を別にして,揚高が同じである限り,時間外等の労働をしていた場合もしていなかった場合も乗務員に支払われる賃金は全く同じになるのであるから,本件規定は,法37条の規制を潜脱するものといわざるを得ない。そして,法37条は,強行法規であると解され,これに反する合意は当然に無効となる上,同条の規定に違反した者には,6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑事罰が科せられる(同法 わざるを得ない。そして,法37条は,強行法規であると解され,これに反する合意は当然に無効となる上,同条の規定に違反した者には,6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑事罰が科せられる(同法119条1号)ことからすれば,本件規定のうち,歩合給の計算に当たり対象額Aから割増金に見合う額を控除している部分は,法37条の趣旨に反し,ひいては公序良俗に反するものとして,民法90条により無効であるというべきである。なお,本件規定が対象額Aから控除するものとしている「割増金」の中には,法定外休日労働に係る公出手当が含まれており,また,所定労働時間を超過するものの,法所定の労働時間の制限を超過しない,いわゆる法内残業に係る残業手当が含まれている可能性もあるが,本件規定は,これらを他と区別せず一律に控除の対象としているから,これらを含めた割増金に見合う額の控除を規定する「割増金」の控除部分全体が無効になるものと解するのが相当である。 ウ(ア) この点,被告は,本件規定は時間外等の労働の抑制を目的としたも のであるし,時間外労働をすれば揚高が上がって賃金総額も増加し,労働者への補償もされているといえるから,本件規定が法37条の趣旨に反するとはいえない旨主張する。しかしながら,本件規定が時間外等の労働の抑制を目的としている旨の被告の主張は,要するに,時間外等の労働に対して割増賃金を支払うことが時間外等の労働の助長につながるから,歩合給の計算に当たり割増賃金と同額を控除することによって時間外等の労働を抑制するというものであって,その前提とするところが法37条の趣旨と相容れないものであることは明らかである。仮に,被告の主張するように,使用者である被告が,従業員の時間外等の労働を抑制したいと考えるのであれば,時間外等の労働を原則として一定 ころが法37条の趣旨と相容れないものであることは明らかである。仮に,被告の主張するように,使用者である被告が,従業員の時間外等の労働を抑制したいと考えるのであれば,時間外等の労働を原則として一定範囲で禁止するなどの制限を加えることで容易にその目的を達成できるのであって,この点からも,本件規定が時間外等の労働の抑制を目的としたものであると認めることはできない。また,法37条は,特別の労働というべき時間外等の労働に対し,通常よりも割増しされた額の賃金による補償を行わせようとする趣旨に出たものと解されるところ,本件規定のもとでは,時間外等の労働に対して通常より割増しされた賃金が支払われる保証はない(深夜労働については,深夜のほうが通常の時間よりも必ず揚高が上がるという保証はないし,時間外労働についても,労働時間を延長したことによる賃金の増加幅は,時間外労働による揚高の大小に依存し,割増賃金に相当するだけの賃金増が保証されるものではない。)のであって,この点でも,本件規定が法37条の要請を満たすということはできない。 (イ) また,被告は,被告が乗務員らの職務遂行を逐一監視することは不可能であり,車内で寝ていても賃金が増加することになるような不合理を回避する必要があるとも主張する。しかしながら,使用者が従業員の勤務状況を逐一監視することができないということは,タクシー営業に 限ったものではなく,程度の差こそあれ他の業種にも広く当てはまることであるし,被告において,全ての乗務員の勤務状況を同時的にその就業現場において把握することは困難であるとしても,乗務日報等の報告書やタコグラフ等の運行記録用計器によって事後に勤務状況を把握し,問題があれば指導教育することはできるのであるから,この点に関する被告の主張も,本件規定を正当化する であるとしても,乗務日報等の報告書やタコグラフ等の運行記録用計器によって事後に勤務状況を把握し,問題があれば指導教育することはできるのであるから,この点に関する被告の主張も,本件規定を正当化するものとはいえない。 (ウ) さらに,被告は,本件規定に類似した賃金制度がタクシー業界で一般的に採用されていることや,多数派組合であるd労組との間で協議を重ね,協定を結んだ上で現行の賃金規則を制定したことを主張するが,法37条が強行法規であり,その違反が刑事罰の対象とされていることに鑑みれば,いずれの事情についても,同条の趣旨に反する取扱いを正当化しうる事情であるということはできない。 エ以上によれば,本件規定のうち,歩合給の計算に当たり対象額Aから「割増金」として割増金に見合う額を差し引くとしている部分は無効であるから,歩合給は,対象額Aから割増金に見合う額を差し引くことなく計算すべきことになる。 (2) 交通費の控除についてア原告らは,被告賃金規則に交通費を実費支給するとの記載があるとの事実を援用し,当該規定を合理的に解釈すれば,通常の賃金に交通費を加算した金額が支払われるべきであり,本件規定のうち,歩合給から交通費に見合う額を差し引くとしている部分は無効であると主張する。 イしかしながら,証拠(乙6,証人e)によれば,被告は,賃金規則を定める労使協議において,被告乗務員の過半数で構成されるd労組に対し,当初,通勤手当を支給しない案を提示したが,d労組から,非課税である通勤手当を支給する形にして欲しい旨の要望を受け,現行の仕組みが採用されたことが認められる。そもそも,被告賃金規則には,交通費を実費支 給する旨の規定とともに,歩合給の計算に当たり対象額Aから「交通費」として交通費に見合う額を差し引く旨の規定が明記され されたことが認められる。そもそも,被告賃金規則には,交通費を実費支 給する旨の規定とともに,歩合給の計算に当たり対象額Aから「交通費」として交通費に見合う額を差し引く旨の規定が明記されているのであるから,前者の規定だけを取り上げて,後者の規定は無視すべきであると解するのは根拠に乏しいというべきであるし,上記認定のとおりの経緯からすれば,被告賃金規則に基づき支給された交通費が非課税所得と認められるかどうかはともかく,非課税所得を増やすという当事者の意図それ自体には経済合理性が認められるから,当事者の合理的意思解釈という観点からも,本件規定のうち歩合給から交通費に見合う額を差し引くとしている部分を無視して解釈すべきであるとはいえない。 ウしたがって,本件規定のうち歩合給の計算に当たり対象額Aから交通費に見合う額を差し引くとしている部分が無効であるとも,本件規定の解釈に当たり当該部分を無視すべきであるとも,認められないというべきである。この点に関する原告らの主張を採用することはできない。 (3) 未払賃金の金額についてア以上によれば,本件規定のうち,歩合給の計算に当たり対象額Aから「割増金」として割増金に見合う額を差し引くとしている部分は無効であるが,「交通費」として交通費に見合う額を差し引くとしている部分は無効であるとは認められない。そして,被告賃金規則のその余の部分については,残業手当等の割増金の支給及びその金額の計算方法を定める部分(前提事実(3)オ,カ,キ)を含め,これを無効と解すべき理由はない。 イそうすると,被告は,原告らに対し,基本給等のほか,①被告賃金規則所定の計算による割増金及び②対象額Aから交通費を差し引いた額の歩合給を支払う義務を負っていたというべきところ,被告は,原告らに対し,上記①の割増 告は,原告らに対し,基本給等のほか,①被告賃金規則所定の計算による割増金及び②対象額Aから交通費を差し引いた額の歩合給を支払う義務を負っていたというべきところ,被告は,原告らに対し,上記①の割増金と同一額の金員を支払っていたから(前提事実(6)ウ),未払賃金の額は,上記②の対象額Aから交通費を差し引いた額となる。これを各月ごとに計算すると,その結果は,別紙個人別賃金計算書の「不払 額(認定)」欄記載のとおりであり,原告ごとの合計額は,別紙認容額等一覧表の「認容額」欄記載のとおりとなる。 ウしたがって,被告は,原告らに対し,歩合給として,同表の「認容額」欄記載の金員を支払う義務を負う。 エこれに対し,被告は,本件規定のうち対象額Aから「割増金」を差し引く部分を無効とするだけでは使用者の経営が成り立たなくなり,余りに使用者に酷であるから,「割増金」に代わる控除項目を設定すべきである旨主張する。しかしながら,本件規定のうち歩合給の計算に当たり「割増金」を差し引くとしている部分が無効となる結果,従業員に対する賃金の額が被告の想定を大幅に上回り,これを放置すると経営に重大な支障が生じることになるというのであれば,被告において,時間外等の労働の抑制や被告賃金規則の改定等の対応策を講じることが検討されてしかるべきであるところ,このような対応策を講じてもなお被告の経営が立ちゆかない事態に陥るとまで認めるに足りる証拠はない。そもそも,被告賃金規則は,使用者である被告が制定したものであり,その一部が無効と判断されることによるリスクは,基本的には,被告自身が負担すべきものというべきところ,このような観点でみたときに,本件において,本件規定のうち対象額Aから「割増金」を差し引くとする部分のみを無効と解して賃金額を計算することが,著しく当 は,被告自身が負担すべきものというべきところ,このような観点でみたときに,本件において,本件規定のうち対象額Aから「割増金」を差し引くとする部分のみを無効と解して賃金額を計算することが,著しく当事者間の公平を害するとか,余りに被告に酷であるなどと評価するに足りるだけの事情は認められないというべきである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。 2 争点(2)(遅延損害金の利率〔原告a,同b及び同c関係〕)について(1) 証拠(乙5,証人e)によれば,被告において,歩合給の計算に当たり割増金に見合う額を差し引くとする仕組みは,平成5年12月の賃金規則の改定前から存在していたこと,被告は,同改定において,被告の過半数の乗務員で構成されるd労組との間で労使協定を結んだ上,現行のものとほぼ同 様の実績給を重視した賃金体系を導入したが,その際にも,歩合給の計算に当たり割増金に見合う額を差し引くとする仕組みは維持されたこと,同改定以降,原告らから本件請求を受けるまでの間,d労組や被告の乗務員から本件規定について特段の異議が述べられたことはなく,労働基準監督署等の公的機関から本件規定の問題点を指摘されたこともなかったことが認められる。 (2) 上記認定事実によれば,本件は,被告において長年にわたり採用され,多数派組合との労使協定においても維持され,その後も長く問題視されることのなかった賃金計算の仕組みについて,その有効性が争点となった事案であるということができる。また,本件規定は公序良俗に反するというべきものではあるが,本件規定が公序良俗に反する無効なものであることが一見して明白であるとまでいうことはできない。そうすると,被告において,本件規定が有効であると主張して原告らの請求を争うことにも相応の合理性があったというべ が公序良俗に反する無効なものであることが一見して明白であるとまでいうことはできない。そうすると,被告において,本件規定が有効であると主張して原告らの請求を争うことにも相応の合理性があったというべきである。したがって,被告は,賃金の存否に係る事項について,合理的な理由により裁判所において争っているものと認めるのが相当であるから,被告を退職した原告らとの関係においても,賃確法6条1項は適用されず,未払賃金に対する遅延損害金の利率は,商事法定利率である年6分になるというべきである。 3 争点(3)(付加金の支払を命じることの可否及び相当性)について(1)ア前記1(3)において判示したとおり,本件規定のうち歩合給の計算に当たり対象額Aから割増金に見合う額を差し引くとしている部分は,公序良俗に反し無効であるが,被告賃金規則のその余の部分については,これを無効と解すべき理由はない。また,被告は,原告らに対し,別紙個人別賃金計算書の「残業手当」,「深夜手当」及び「公出手当」の各欄記載の額の金員を支払っていたところ(前提事実(6)ウ),被告は,被告賃金規則が有効であることを前提に,その定めに従って上記金員を支払っていたものと解される。そうすると,被告が原告らに支払っていた上記金員は,そ れぞれ,割増金である残業手当,深夜手当及び公出手当として支払われたものと認めるのが相当であり,したがって,前記認定に係る未払賃金は,歩合給の一部であったということになる。 イ以上によれば,本件請求に係る賃金の未払について,被告が法37条の規定自体に違反したものとは認められないことになるから,被告に対して付加金の支払を命じることはできないというべきである。 (2) なお,仮に,被告による賃金の未払が法37条に違反するものであると解したとしても,未 たものとは認められないことになるから,被告に対して付加金の支払を命じることはできないというべきである。 (2) なお,仮に,被告による賃金の未払が法37条に違反するものであると解したとしても,未払の割増金のうち法37条に違反するのは,対象額Aから交通費に見合う額を差し引いたものが歩合給となることを前提に,法所定の時間外等の労働について,法所定の方法により計算した金額の部分に限られるというべきところ,被告賃金規則にいう「割増金」は,対象額Aから交通費に見合う額を差し引くことなく計算されている上,割増金の中には,法定外休日労働に係る公出手当が含まれ,いわゆる法内残業に係る残業手当も含まれる可能性があるから,未払の割増金の全てが法37条に違反するとはいえない。しかるに,本件全証拠によっても,未払金のうち,法37条に違反する部分の金額を確定することはできないから,やはり被告に対して付加金の支払を命じることはできないというべきである。また,仮に,法37条に違反して支払われていない賃金の額を確定することができたとしても,本件に顕れた一切の事情,とりわけ前記2において認定判断したところを考慮すると,本件において,被告に対し付加金の支払を命じるのは相当でないというべきである。 第4 結論以上によれば,原告らの請求は,主文の限度で理由があり,その余は理由がない。よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第11部 裁判長裁判官佐 々 木宗啓 裁判官鷹野旭 裁判官戸畑賢太 野旭 裁判官戸畑賢太
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