令和2(わ)1925 強盗殺人

裁判年月日・裁判所
令和5年3月2日 名古屋地方裁判所
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判決文本文16,662 文字)

- 1 - 主文 被告人を死刑に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、A(当時83歳)及びB(当時80歳)を殺害して金品を強取しようと企て、平成29年3月1日午後8時頃、名古屋市a区bc丁目d番e号A方において第1 Aに対し、殺意をもって、同人の頸部等を手に持った刃物で突き刺し、よって、その頃、同所において、同人を右内頸動脈、右外頸動脈切断による出血性ショックにより死亡させて殺害し第2 Bに対し、殺意をもって、同人の頸部等を手に持った刃物で突き刺し、よって、その頃、同所において、同人を左頸静脈切損による出血性ショックにより死亡させて殺害しその際、A又はB所有の現金少なくとも1227円及びB所有の診察券等15点在中の財布1個を強取した。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第1 争点及び審理経過の概要 1 差戻前第一審(平成31年3月8日判決宣告)⑴ 差戻前第一審における公訴事実の内容は、前記罪となるべき事実と同旨である。そして、被告人がA及びBを殺害した点並びに被告人が財布を奪取した点については争いがなく、差戻前第一審の争点は、被告人に強盗目的があったか(争点1)、被告人が犯行当時、完全責任能力の状態であったか、それとも心神耗弱の状態であったか(争点2)、被告人の量刑(争点3)であった。 ⑵ 差戻前第一審の検察官は、争点1について、①被告人が経済的に困窮する中、借金やツケの支払をしなければならないことを気にしていたこと、②A方に金銭があると - 2 -思っていたこと、③Aらを殺害後、A方内を物色し、現金が入った財布を持ち去ったことを挙げ、強盗目的が認められると主張した。 これに対し、被告人は、本件犯行前に、Bから あると - 2 -思っていたこと、③Aらを殺害後、A方内を物色し、現金が入った財布を持ち去ったことを挙げ、強盗目的が認められると主張した。 これに対し、被告人は、本件犯行前に、Bから、仕事もしていないのに遊ぶなどいいご身分ねといった趣旨のことを言われ、Bに対する怒りを覚え、その結果殺害に及んだものであり、夫のAまで殺したのはAと目が合い反射的あるいは衝動的にしたものである、その後財布を見て衝動的に取ったと述べ、当初から強盗する目的はなかった旨弁解した。 差戻前第一審判決は、①被告人の当時の経済状況からすると借金等の返済のことが頭にあった可能性はあるが、金品を得るためにAらを殺害しようと考えるほどまで追い詰められていたとはいえない、②A方に特に高額の金銭があると被告人が認識していたことを認める証拠がない、③被告人に怒りを抱かせるような発言をBがしたとの被告人の供述が信用できないとはいえず、怒りの対象であったBより先にAを殺害した点は、軽度知的障害により衝動的に行動する傾向がある被告人において、AがBへの攻撃の妨げになっていたため、Aをとっさに攻撃したことが不自然であるとまではいえず、被告人がAらの殺害後まもなくA方室内にあったトートバッグを物色し、実際に現金が入った財布を持ち去っていることは強盗目的があったことをうかがわせる事情であるが、当初から強盗目的を有していたのであれば、より広範囲を物色するのが自然であるのに、トートバッグを物色し、財布を持ち去るにとどめたことからすると、Aらを殺害後に初めて金品窃取を思い立った可能性を否定できないとした上、被告人の供述が信用できないとはいえないことから、Aらを殺害した後に金品窃取を思い立ち、財布を持ち去るなどした可能性が否定できないとして、強盗目的を否定した。そして、殺人罪と 否定できないとした上、被告人の供述が信用できないとはいえないことから、Aらを殺害した後に金品窃取を思い立ち、財布を持ち去るなどした可能性が否定できないとして、強盗目的を否定した。そして、殺人罪と窃盗罪が成立することを前提に、争点2について、犯行当時、完全責任能力であったと認め、争点3について、死刑を選択することが真にやむを得ないとまでは認められないとして、強盗殺人罪の成立を前提とした検察官の死刑求刑に対し、無期懲役刑を言い渡した。 2 控訴審(令和2年1月9日判決宣告) - 3 -⑴ 差戻前第一審判決に対し、検察官及び弁護人はそれぞれ控訴した。検察官の控訴趣意は、強盗目的を否定した差戻前第一審の事実認定に対する事実誤認の主張であり、弁護人の控訴趣意は、事実誤認及び量刑不当の主張である。 ⑵ 控訴審判決は、検察官の事実誤認の主張を認め、強盗目的を認めず殺人罪と窃盗罪を認定した差戻前第一審判決には事実の誤認があると判断した。具体的には、検察官が主張する前記①から③までの各事情を総合考慮すれば、被告人に強盗目的があったことが優に推認できるところ、各事情に対し被告人の弁解を排斥することができないなどとして強盗目的が認められないとした差戻前第一審の判断は、複数の事情を総合的に評価する観点を欠くなどの問題があり、論理則、経験則等に照らして不合理であり、事実の誤認がある旨指摘した。その上で、強盗目的が認められることを前提に、改めて本件犯行当時の被告人の精神障害の有無・程度、それが犯行に与えた影響の有無・程度、本件犯行の計画性の有無・程度等の事情や、被告人の反省の有無・程度、自首の評価を含む情状等を認定・評価し、事案に相応しい刑の量定を行う必要があり、裁判員の参加する合議体での審理及び評議を尽くして判断することが相当であるとして、差 事情や、被告人の反省の有無・程度、自首の評価を含む情状等を認定・評価し、事案に相応しい刑の量定を行う必要があり、裁判員の参加する合議体での審理及び評議を尽くして判断することが相当であるとして、差戻前第一審判決を破棄し、本件を名古屋地方裁判所に差し戻した。 控訴審判決に対し、弁護人は上告したが、最高裁判所は、適法な上告理由に当たらないことを理由に上告を棄却し、控訴審判決が確定した。 3 当審における争点及び証拠整理弁護人は、当審において、新たな主張として、被告人は、軽度知的障害により、同時に二つ以上の目的を持って行動すること(後述のとおり、C医師は、これを「マルチタスク」と表現する。)が困難であったところ、犯行前にBが被告人に怒りを抱かせるような発言をしたことで、被告人には、怒りによる殺害の目的が先にあり、これと併せて金を取る目的を持つことが難しい状態にあったため、強盗目的があったことには合理的疑いが残る旨主張し、検察官はこれを否定する。そこで、当審における争点は、差戻前第一審と同様に、被告人に強盗目的があったか(争点1)、被告人が犯行当時、完全責任能力の状態であったか、それとも心神耗弱の状態であったか(争点2)、被告人の量 - 4 -刑、すなわち、被告人を死刑に処すべきか(争点3)である。 当審においては、公判手続の更新に際し、差戻前第一審の証拠をすべて取り調べたほか、前記新たな主張について、精神科医であるC医師及びD医師の証人尋問を行うとともに、被告人質問を実施するなどの新たな証拠調べを行った。 第2 破棄判決の拘束力 1 拘束力の範囲当審における事実認定の前提として、差戻前第一審判決を破棄した控訴審判決が示した事実判断のうち、どの部分につき拘束力が生じるか検討する。 破棄判決の拘束 の拘束力 1 拘束力の範囲当審における事実認定の前提として、差戻前第一審判決を破棄した控訴審判決が示した事実判断のうち、どの部分につき拘束力が生じるか検討する。 破棄判決の拘束力(裁判所法4条)は、破棄の直接の理由、すなわち原判決に対する消極的否定的判断についてのみ生じるものである(最高裁昭和43年10月25日第二小法廷判決)。これを本件についてみると、差戻前第一審判決に対する消極的否定的判断は、検察官が主張する前記①から③までの各事情に対し、被告人の弁解を排斥することができないとする事情を挙げて、強盗目的が認められないとした判断は、論理則、経験則等に照らして不合理であるとした部分である。 2 拘束力からの解放当裁判所は、前記破棄判決の拘束力により、争点1について、控訴審判決時から実質的な証拠関係の変動がない限り、前記部分につき差戻前第一審判決と同様の判断をすることは許されない。そこで、まずは当審での新たな証拠調べの結果、控訴審判決時から実質的な証拠関係の変動があったとして、前記破棄判決の拘束力から解放されるか否かを検討することになる。具体的には、C医師の証言の信用性を検討し、前記破棄判決の拘束力から解放されるか否かを判断する。 第3 拘束力からの解放の有無当裁判所は、新たに取り調べた証拠につき検討した結果、控訴審判決時から実質的な証拠関係の変動がないものと認められ、前記破棄判決の拘束力から解放されないと判断したので、その理由につき以下詳述する。 1 精神科医であるC医師は、当公判廷において、要旨次のとおり証言する。 - 5 -C医師は、前提として、「単行動」とは、一つの目的を持って行動すること、「マルチタスク」とは、同時に二つ以上の目的を持って行動することと定義づけ、両者は、目 とおり証言する。 - 5 -C医師は、前提として、「単行動」とは、一つの目的を持って行動すること、「マルチタスク」とは、同時に二つ以上の目的を持って行動することと定義づけ、両者は、目的が一つか二つ以上かによって区別されるとした上で、知的障害のある人はマルチタスクを行うことが困難であるとの見解を述べる。 そして、その根拠として、海外の医学論文において、知的障害のあるアスリートと知的障害のないアスリートにタスクを与えてパフォーマンスを比較したところ、台の上で平衡を保つという一つのタスクを与えた場合は、同等のパフォーマンスが得られたが、台の上で平衡を保ちながら単語を覚えるという二つのタスクを同時に与えた場合は、知的障害のあるアスリートの方がパフォーマンスが顕著に低下したと示されていること、検索システムを用いて過去の日本の裁判例を調査したところ、知的障害のある人が単独で強盗殺人を行った事案がほとんど認められないことなどを挙げている。 その上で、被告人は、IQ65であり、軽度知的障害であると認められるところ、本件犯行について、単独でマルチタスクを行うことは困難であった、つまり、被告人には、怒りを晴らすためにBを殺害する目的が先にあったところ、これと同時に、金を取る目的を持つことが困難であった。したがって、A方に向かった時点で、被告人において殺人と強盗の二つの目的が同時にあったとは考えにくく、殺人と窃盗の単行動の連続である可能性が高い旨証言した。 2 C医師は、精神科医として臨床及び精神鑑定の豊富な経験を有し、その能力や専門的知見につき疑うべき点は見受けられない。 しかし、マルチタスクに関するC医師の見解については、その信用性に疑問が残るといわざるを得ない。すなわち、D医師が指摘するように、マルチタスクや単行動という 知見につき疑うべき点は見受けられない。 しかし、マルチタスクに関するC医師の見解については、その信用性に疑問が残るといわざるを得ない。すなわち、D医師が指摘するように、マルチタスクや単行動という用語につき精神医学上の定義が確立された概念とはいい難い。C医師は、単行動の定義は行動の数ではなく目的の数が一つか否かで決まると述べるが、何をもって目的の数を一つと見るかについて判然としない部分がある。また、根拠として挙げられた海外の医学論文について、その検証内容は、二つの異なる作業を同時にさせた場合のパフォーマンスの差を比較検討したものであり、殺害目的を持った者が同時に金品奪取目的を持つ - 6 -ことができるかという場合とどのように関連するのか不明であり、C医師の見解を根拠付けるとは評価できない。過去の裁判例の調査についても、知的障害のある人が単独で強盗殺人を行った裁判例が認められないからといって、知的障害のある人が殺害目的と同時に金品奪取の目的を持つことが困難であると結論付けるには飛躍がある。さらに、D医師は、C医師の見解について、精神科の診断法(操作的診断)からすると、特定の精神疾患の診断基準を満たすとしても、そこから遡って具体的能力を特定・決定できないことと整合的ではないことも指摘するところ、この指摘は妥当なものである。 したがって、C医師の見解は、その定義や内容が確立されたものとはいい難く、学術的・精神医学的な観点からも疑問が残るため、採用し得ない。 3 よって、控訴審判決時から実質的な証拠関係の変動がないものと認められ、破棄判決の拘束力から解放されない(なお、当審において臨床心理士であるEの証人尋問も行ったが、その証言内容は差戻前第一審の証言と同趣旨であり、これにより実質的な証拠関係の変動があったといえないことは明ら 決の拘束力から解放されない(なお、当審において臨床心理士であるEの証人尋問も行ったが、その証言内容は差戻前第一審の証言と同趣旨であり、これにより実質的な証拠関係の変動があったといえないことは明らかである。)。 第4 強盗目的の有無(争点1)についての当裁判所の判断前記のとおり、破棄判決の拘束力により、争点1については、強盗目的が認められないとした差戻前第一審判決と同様の判断をすることは許されず、被告人が強盗目的を有していたと認められる。なお、当裁判所において改めて検討したところでも、被告人が、Aらを殺害した時点で強盗目的を有していたと判断したので、その理由につき以下補足して説明する。 1 関係各証拠(被告人の供述中、客観的状況との整合性等から信用性を肯定できる供述部分を含む。)によれば、以下の諸事実が認められる。 ⑴ 被告人は、A方の斜向かいにあるFに居住し、AとBが二人暮らしであることを知っており、かつて救急車を呼ぶためにA方に入って電話を借りたことがあった。 ⑵ 被告人は、平成29年頃、定職に就かず、毎月受給する生活保護費を唯一の収入としていた。また、毎月にわたり、知人等から借金し、飲食店でツケ払いをして、翌月1日に生活保護費が入るとその返済をするという生活を続けていた。 - 7 -犯行当日である平成29年3月1日時点において、被告人には、返済すべき借金やツケが合計6万6000円あった。しかし、被告人は、同日午後7時頃までに、その日に受給したばかりの生活保護費約8万2000円の大半である約6万円をパチンコに費消し、すぐには借金やツケの全額を返済できない状態となった。 ⑶ 被告人は、同日午後8時頃、自宅にあった包丁を持ってA方に行き、無施錠の玄関から靴を脱いで中に入ると、まず、居間に座った状態のAの 費消し、すぐには借金やツケの全額を返済できない状態となった。 ⑶ 被告人は、同日午後8時頃、自宅にあった包丁を持ってA方に行き、無施錠の玄関から靴を脱いで中に入ると、まず、居間に座った状態のAの首を包丁で突き刺した。 Aは仰向けに倒れた。その後、被告人は、Bの首を包丁で複数回突き刺し、包丁が折れると、A方にあった小刀を手に取ってBの首を複数回突き刺し、Aの首も小刀で突き刺した。 ⑷ 被告人は、同日午後10時頃、飲食店「G」を訪れ、3万3000円あったツケの一部として2万5000円を支払った。 2 また、被告人は、A及びBを殺害後、直ちに居間に置かれたトートバッグ内を物色した上、居間と通じる車庫に停められた自動車内も物色し、現金が入った財布を持ち去ったことが認められる。 ⑴ 居間のカラーボックスの手前に置かれたトートバッグには、外側の表裏面全体及び持ち手並びに内側の二つのサイドポケット周辺に、手で触れたものとみられる血痕が多数付着している。 これらの血痕は、いずれも犯行の際に付着したものと認められるが、被告人からの最初の攻撃で致命傷を負ったAがトートバッグを触った可能性はおよそ考え難い。また、Bについては、血だまりがあった、居間に隣接する寝室付近で攻撃された後、更に小刀で刺されて致命傷を負い、居間で亡くなるまでの間には、ある程度の動きがあったと考えられるが、Bの頸部の複数の創傷や右手の防御創、端の切れた座布団を両手に挟んでトートバッグに背を向けていたというBの遺体発見状況も考慮すると、Bは、被告人からの攻撃に対し、座布団等で身を守ろうとする中で亡くなったことがうかがわれる。このような生命への危険が切迫した状況下において、Bがトートバッグ内側のサイドポケットを触る可能性は想定し難い。そうすると、トートバッグを触っ - ろうとする中で亡くなったことがうかがわれる。このような生命への危険が切迫した状況下において、Bがトートバッグ内側のサイドポケットを触る可能性は想定し難い。そうすると、トートバッグを触っ - 8 -た者は被告人とみるほかなく、血痕の量や付着状況、特に内側のサイドポケット周辺に血痕が集中していることからすると、被告人が、A及びBの殺害直後、手に血が付いた状態で、金品を探すためにトートバッグ内を物色したものと認められる。 これに対し、被告人は、トートバッグを物色したことを覚えていない旨供述し、弁護人は、頸部を刺されたBが携帯電話等を探すためにトートバッグ内を探った可能性を主張する。しかし、生命への危険が切迫した状況下のBが110番通報を考えてトートバッグ内側を触ったとはおよそ想定し難い上、そもそも携帯電話はトートバッグ内に入っていない。また、弁護人は、トートバッグ内にあったカードケースに血痕が付着していないところ、被告人がトートバッグ内を物色したのであれば、財布のようにも見えるカードケースを触らなかったことが不自然であることも指摘するが、トートバッグ内の状況等からすると、その内部を物色した際にカードケースの存在に気付かなかったことも十分考えられるため、不自然とはいえない。トートバッグの位置や向きが変わった可能性等、弁護人のその他の主張も、被告人が金品を探すためにトートバッグ内を物色したとの認定に疑いを差し挟むものではない。 なお、居間に置かれたカラーボックスについても、天板や側面に手で触れたとみられる血痕等が認められるが、Bが寝室付近で攻撃された後、居間で亡くなるまでの間に、血液の付着した手でカラーボックスに触れた可能性は否定できず、血痕の付着状況等からすると、物色により血痕が付着したものとも認め難く、被告人がカラーボッ 付近で攻撃された後、居間で亡くなるまでの間に、血液の付着した手でカラーボックスに触れた可能性は否定できず、血痕の付着状況等からすると、物色により血痕が付着したものとも認め難く、被告人がカラーボックスを物色したとする点には合理的疑いが残る。 ⑵ 車庫に停められた自動車内の物色について、その目的が、金品を探すつもりであったか逃走するために車のキーを探すつもりであったかにつき争いがあるものの、被告人が自動車内を物色したことには変わりがない。 ⑶ トートバッグ、自動車内のサンバイザー及び財布の血痕付着状況等をみると、トートバッグに最も多量の血痕が付着していることから、被告人がトートバッグ内を物色した後に、現金が入ったBの財布を発見し、自宅に持ち去ったものと認められる。 3 被告人は、犯行当日、生活保護費の大半を費消し、借金等がすぐには返済できない状 - 9 -況に陥るなど、経済的に困窮していたところ、近所のA方に行き、A及びBを殺害後、直ちにトートバッグ内及び自動車内を物色し、現金が入った財布を持ち去り、犯行後すぐに、飲食店でツケを支払ったものである。被告人は、Aらの殺害前後を通じて借金等のことが念頭にあり、殺害直後に金品奪取に向けた諸々の行動を取っていることからすると、被告人は、Aらを殺害した時点で強盗目的を有していたと認められる。特に、トートバッグに血痕がはっきりと付着している状況からすると、被告人は、A及びBを殺害し、手に相当量の血が付着している状態でトートバッグを物色したものと認められ、このことは少なくとも両名を殺害する時点で強盗目的を有していなければ説明が困難な事情である。 4 被告人の弁解について⑴ 被告人は、①自転車に乗ってA方付近に来た時、Bがいたので声をかけたところ、Bから「遊びに行ってきたの。」、「仕 目的を有していなければ説明が困難な事情である。 4 被告人の弁解について⑴ 被告人は、①自転車に乗ってA方付近に来た時、Bがいたので声をかけたところ、Bから「遊びに行ってきたの。」、「仕事もしてないのにいい御身分ね。」などと言われ、自分を全否定されたように感じて怒りを覚え、Bへの怒りを晴らす目的で犯行に及んだ、②Aと目が合い、Bに対する攻撃の妨げとなっていたのでとっさに攻撃した、③Aらを殺害した後、手に付着した血が気になりその場にあった靴下を手にはめると、逃げるために車のキーを探そうと自動車内を物色し、その後居間に戻った際に、テーブル上にあった財布が目に留まり、逃走資金になると考えて持ち去ったなどと弁解し、強盗目的を否定する。 ⑵ 犯行直前のBの発言(前記①)に関し、検察官は、会話が始まる状況や会話内容の不自然さ、Aへの攻撃を合理的に説明できないことなどを指摘し、被告人の供述は信用できない旨主張する。しかし、犯行直前の時間帯に被告人と隣人のBが言葉を交わす状況が特段不自然とはいえないこと、被告人が、犯行翌日にも友人のHに同様の話をしていること(H証言。なお、H証言の信用性につき特段疑うべき点は認められない。)、近隣の家に強盗に入った理由として、Bの発言が切っ掛けであったというのは十分考えられることなどからすると、犯行直前にBの発言があったことは否定できない。Aへの攻撃についても、後記のとおり、被告人が強盗目的をも有していたので - 10 -あれば、合理的に説明できる。 ⑶ 前記①以外の被告人の弁解の当否について検討すると、被告人が、Aらを殺害した後、居間のテーブル上にあった財布を見て初めて金品を奪うことを思い立ったとする点(前記③)は、犯行前のBの発言の有無に関わらず、被告人がAらを殺害後、直ちにトートバッグ内を 被告人が、Aらを殺害した後、居間のテーブル上にあった財布を見て初めて金品を奪うことを思い立ったとする点(前記③)は、犯行前のBの発言の有無に関わらず、被告人がAらを殺害後、直ちにトートバッグ内を物色した事実とは明らかに矛盾する。 また、Bに対する攻撃の妨げとなっていたので、目が合っただけのAをとっさに攻撃したとの点(前記②)は、被告人が、怒りの対象ではなく殺害動機もないAを、Bより先に、その姿を認めるや何ら逡巡することなく、いきなりその首を包丁で刺して殺害した事実と整合しない。弁護人は、被告人が軽度知的障害により衝動的に攻撃する傾向があることからAへの攻撃も不自然とはいえない旨主張する。しかし、被告人が、Aを刺した時点では、その奥にいたBの姿が見えていないとも供述していることからすると、Aを先にいきなり攻撃したことを合理的に説明するものではなく、この点を衝動性の表れとみることもできない。むしろ、Bへの怒りを晴らす目的のみならず、強盗目的をも有していたからこそ、Bより先にAの姿を認めるや、強盗の障害となるAの首を刺して殺害したものとみるのが相当である。 したがって、前記①以外の被告人の弁解は信用性を肯定できない。 5 弁護人の主張について⑴ 弁護人は、被告人が、Hらへの犯行告白や自首の時点から、一貫して、強盗目的ではなくBへの怒りを晴らす目的であったと話していることからすると、被告人が強盗目的を有していたことには疑いが残る旨主張するが、前記3の認定に反するほか、犯行の切っ掛けや二人殺害という結果の重大性等からすると、被告人が怒りを晴らす目的を強調したり、Aらの殺害行為についてのみ詳細に述べることも不自然ではなく、前記認定を覆す事情ではない。 ⑵ また、弁護人は、被告人が、犯行当日にパチンコで費消した後も約5万5000 を晴らす目的を強調したり、Aらの殺害行為についてのみ詳細に述べることも不自然ではなく、前記認定を覆す事情ではない。 ⑵ また、弁護人は、被告人が、犯行当日にパチンコで費消した後も約5万5000円の金銭を所持しており、借金等の支払催促もなかったため、強盗殺人をするほど金に困っていなかったこと、当初から強盗目的を有していたのであれば、事前準備を行 - 11 -い、より疑われない場所を選ぶはずであること、被告人がAらに金品を要求していないこと、犯行後に凶器や衣服を置いたまま自宅を出て、遠くに逃げていないなど場当たり的犯行であり、犯行後に「G」にツケを払い、Hらに犯行を告白し、自首するなど、予定通りの強盗殺人であったならばしないはずの行動をしていることなどの事情を指摘し、強盗目的を有していたとするには疑いが残るとも主張する。しかし、被告人はBの発言を切っ掛けに短時間の間に強盗をすることを思い立ち、それを実行に移したものと認められるのであり、被告人が綿密な計画を立てて犯行に及んだものではないから、行動が場当たり的になっていることなどは、被告人が強盗目的を有していたとしても矛盾するものではなく、その他の主張も強盗目的の認定に疑いを差し挟むものではない。 6 以上から、被告人が、Aらを殺害した時点で強盗目的を有していたことは、合理的疑いなく認められる。 (法令の適用)罰条判示第1及び第2についていずれも刑法240条後段刑種の選択判示第1及び第2についていずれも死刑を選択併合罪の処理刑法45条前段、46条1項本文、10条(犯情に差異がなく、いずれが重いかを決し得ないため、各罪のうちいずれかを特定することなく、そのうちの1罪について死刑に処し、他の刑は科さない。)訴訟費用の 45条前段、46条1項本文、10条(犯情に差異がなく、いずれが重いかを決し得ないため、各罪のうちいずれかを特定することなく、そのうちの1罪について死刑に処し、他の刑は科さない。)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(弁護人の主張に対する判断)弁護人は、犯行当時、被告人は、軽度知的障害の影響により短絡的、衝動的に行動する性質があり、また、幼少期の虐待体験等による複雑性PTSDとそれに伴う解離性症状を生じ、善悪を判断する能力又はその判断に従い行動をコントロールする能力が著し - 12 -く低下した状態で本件犯行に及んだものであり、心神耗弱の状態にあった旨主張する。 当裁判所は、犯行当時、被告人は、完全責任能力を有していたと判断したので、その理由につき以下説明する。 1 精神障害の有無について⑴ 被告人の精神鑑定を行った鑑定人であるC医師は、差戻前第一審の公判廷において、被告人には、犯行当時、軽度知的障害及びギャンブル障害があったが、他に犯行に影響を与え得る精神障害は認められないこと、被告人は、軽度知的障害により、衝動を十分に抑制できず、また、行動の結果を十分に予測できない性質(衝動性、短絡性)を有しており、犯行にも影響を与えていることなどを証言する。 C医師は、精神科医として臨床及び精神鑑定の豊富な経験を有し、その能力や専門的知見につき疑うべき点は見受けられない。被告人の精神鑑定についても、標準的な診断基準に則って実施されており、その証言は十分信用できる。 ⑵ 他方で、臨床心理士であるE証人は、差戻前第一審の公判廷において、被告人が軽度知的障害に加え、幼少期の父母からの虐待体験により複雑性PTSDに罹患していたこと、犯行当時、被告人は、Bへの強い怒り等を覚えたことを切っ掛けに、被虐待 、差戻前第一審の公判廷において、被告人が軽度知的障害に加え、幼少期の父母からの虐待体験により複雑性PTSDに罹患していたこと、犯行当時、被告人は、Bへの強い怒り等を覚えたことを切っ掛けに、被虐待の記憶が想起されてフラッシュバックを起こし、無意識のうちに体が勝手に動き出すような離人感を伴う解離性症状を起こした旨証言する。 しかし、被告人から聞き取ったとされる虐待体験は、それ自体曖昧で、複雑性PTSDに罹患するほどの心的外傷を負わせるものか疑わしい。また、一連の犯行経過をみても、虐待体験を再体験してフラッシュバックを起こす切っ掛けが見当たらず、被告人自身もフラッシュバックについて一切供述していない。さらに、被告人が過去に複雑性PTSDに伴う解離性症状を生じ記憶の欠落がみられた五つのエピソードについても、いずれも被虐待の記憶が想起されるような内容とは言い難く、根拠として不十分である上、犯行当時の被告人は、E証人が被告人において解離性症状を起こしたと指摘する時点以降についても、大半の記憶を保っており、記憶の大部分が欠落するとされる解離の症状とも異なる。加えて、精神科医であるC医師が、被告人が複雑性 - 13 -PTSDに伴う解離性症状を生じていたことを否定していることも考慮すれば、E証人の証言を信用することはできない。 2 精神障害が犯行に与えた影響についてC医師によると、被告人の軽度知的障害の程度は正常に近いレベルであり、被告人にはタクシー運転手としての稼働歴があり、本件当時も、被告人は、自分なりのルールに従って借金等を返済し、生活を破綻させないよう金銭管理をすることができ、交際女性や友人との関係も維持できていたのであるから、日常生活において、軽度知的障害による衝動性、短絡性の影響は認められない。 また、被告人は、包 活を破綻させないよう金銭管理をすることができ、交際女性や友人との関係も維持できていたのであるから、日常生活において、軽度知的障害による衝動性、短絡性の影響は認められない。 また、被告人は、包丁を自宅から持ち出し、ポケットに入れて隠しながらA方に向かい、包丁が折れるとその場にあった小刀に持ち替えてBらを突き刺し、殺害後直ちにトートバッグ内及び自動車内を物色し、財布を持ち去るなど、強盗殺人を遂げるため合目的的かつ一貫した行動を取っている。さらに、被告人は、指紋を残さないように靴下を手にはめ、犯行に用いた包丁や小刀を自宅に持ち帰り、包丁を洗うなど、自らの行為の違法性を認識した行動も取っている。したがって、被告人の軽度知的障害の程度、犯行時の行動等からすると、軽度知的障害による衝動性、短絡性の影響があるとしても限定的なものにとどまり、被告人の善悪を判断する能力及びその判断に従い行動をコントロールする能力は、いずれも著しく低下していなかったと認められる。なお、ギャンブル障害については、犯行への直接の影響は認められない。 3 よって、被告人は、犯行当時、完全責任能力を有していたと認められる。 (量刑の理由) 1 本件は、高齢の夫婦がいずれも殺害され、財布が奪われた強盗殺人の事案である。検察官が死刑を求刑したことに鑑み、死刑選択の判断要素、弁護人が主張する死刑選択を回避すべき事情等を検討した。また、同一機会に2名を殺害した、性的被害を伴わない強盗殺人事案等の裁判例を参照した。 2 2名の生命が奪われたという結果が極めて重大であることは言うまでもない。被告人は、Bの発言が犯行の切っ掛けになった旨述べるが、その発言内容自体は殺意を抱かせ - 14 -るようなものではなく、Bに悪意はなかったことは明らかであり、AはもとよりBにも落ち度はない 被告人は、Bの発言が犯行の切っ掛けになった旨述べるが、その発言内容自体は殺意を抱かせ - 14 -るようなものではなく、Bに悪意はなかったことは明らかであり、AはもとよりBにも落ち度はない。それにもかかわらず、被害者両名は、自宅で襲われ、家族に恵まれながら健やかに送っていた生活を突然絶たれたのであり、被害者両名の無念の思い、襲撃時の苦痛は察するに余りある。 遺族の悲しみ、喪失感及び苦しみは深く、長男及び次男は、いずれも公判廷において、被告人に対する極刑を希望する旨意見陳述している。このような遺族の処罰感情は当然であり、十分考慮されなければならない。 3 被告人は、Aに抵抗する時間を与えずに、包丁で首を突き刺して致命傷を負わせ、Bに対しても首を何度も包丁で突き刺し、包丁が折れた後もA方にあった小刀で首への攻撃を続け、さらに、倒れていたAの首も小刀で刺している。このように、殺害の態様は執ようかつ残虐であり、被害者両名を確実に殺害しようという強い殺意が表れている。 被告人が犯行を思い立ったのは、Bの発言を聞いて自宅に戻った後、すなわち犯行の直前であり、被告人は綿密な計画を立てて犯行に及んだものではない。しかしながら、被告人は、過去にA方に立ち入ったことがあり、A方には高齢の夫婦が住んでいるのを知っていた。その上で、包丁を自宅から持参してA方に向かっており、生命を奪う危険を高める準備行為をしている。 すなわち、犯行態様及び犯行前の準備行為からは、被告人の生命軽視の態度が認められる。 4 被告人は、生活保護を受け、就労に関する相談にも応じてもらうなど、社会的支援を継続的に受けていた。それにも関わらず、被告人は、希望条件に合わないなどの理由で就労せず、パチンコや飲酒に興じる生活を送っていた。そして、犯行当日、被告人は、受給した 応じてもらうなど、社会的支援を継続的に受けていた。それにも関わらず、被告人は、希望条件に合わないなどの理由で就労せず、パチンコや飲酒に興じる生活を送っていた。そして、犯行当日、被告人は、受給したばかりの生活保護費の大半をパチンコに費消し、借金返済資金等に窮した末に犯行に及んだものである。 犯行に至る経緯に関して弁護人が指摘する被告人の不遇な生い立ち、交通事故による足の後遺障害、軽度知的障害等は、被告人の努力で克服できるものではなく、これらの点自体には同情の余地がある。しかしながら、被告人が金銭に窮した直接の原因は、犯 - 15 -行当日のパチンコという被告人の行動にあり、自業自得というほかなく、犯行に至る経緯に酌むべき事情はない。 犯行動機について検討する。検察官は、金品を奪うため、A及びBを殺害するという犯行動機を前提に、強盗と殺人の両方について強い意図を有していたと主張する。これに対し、被告人は、自宅に帰ってからBの発言に怒りが込み上げ、足の障害、交際女性との関係、仕事が見つからないこと、母親との関係や隣人の孤独死等を思い出した後、Bへの怒りがまた込み上げ、包丁を見てとっさにA方に向かった旨述べる。 被告人は強盗目的を否定している上、自宅で思い出したことに金銭困窮状況や借金返済がなかったというのは不自然であるから、犯行動機に関し、被告人の供述をそのまま前提にすることはできない。他方、A方に強盗に入った理由として、Bの発言が切っ掛けであったというのは十分考えられる上、犯行翌日の友人に対する犯行告白内容や自首時の供述内容等からすると、被告人にはBへの怒りを晴らす目的があったと認められる。すなわち、被告人には、犯行時において、強盗目的やA及びBに対する殺意が認められるものの、犯行動機として、Bへの怒りを晴らす目的が先にあった と、被告人にはBへの怒りを晴らす目的があったと認められる。すなわち、被告人には、犯行時において、強盗目的やA及びBに対する殺意が認められるものの、犯行動機として、Bへの怒りを晴らす目的が先にあった点は否定することができない。 そうはいっても、犯行動機は、被告人が自ら招いた金銭困窮状態を前提とした身勝手なものであることに変わりなく、Bへの怒りを晴らすために殺害も厭わないという生命軽視の態度が表れているから、酌むべき事情はない。 5 犯行当時42歳であった被告人には、窃盗罪又は同罪を含む懲役前科が4犯あり、3回服役している。直近前科は、平成24年11月に窃盗罪により懲役1年の判決宣告を受けたもので、本件の3年半ほど前に刑の執行を終えている。また、平成17年には、強盗、銃砲刀剣類所持等取締法違反、窃盗、詐欺の罪により懲役5年に処せられた前科があるところ、強盗は、共犯者と共謀の上、飲食店経営者を刃物を使って脅迫し、現金を奪ったという事案である。本件犯行は、強盗の前科と比較しても異質といえる一方、窃盗を繰り返していることからすれば、被告人の規範意識の乏しさが指摘できる。 6 被告人の軽度知的障害の程度は正常に近いレベルであり、犯行当時の被告人は、自分 - 16 -なりのルールに従って借金等を返済し、生活を破綻させないよう金銭管理をすることができ、交際女性や友人との関係も維持できており、日常生活には軽度知的障害による衝動性、短絡性の影響は認められない。犯行時に血の付いた手でトートバックを物色したこと、犯行後に包丁、小刀、被害者の財布を自宅に置いたままにしたことなど、被告人の行動にはその結果を十分に予測できていない面が見られ、犯行に対する軽度知的障害の影響は否定できない。しかしながら、金銭に窮する中でBの発言を切っ掛けに強盗殺人の犯行を思い まにしたことなど、被告人の行動にはその結果を十分に予測できていない面が見られ、犯行に対する軽度知的障害の影響は否定できない。しかしながら、金銭に窮する中でBの発言を切っ掛けに強盗殺人の犯行を思い立つという意思決定や、刃物で各被害者を何回も突き刺すという態様は、軽度知的障害の影響がなくてもあり得るもので、犯行に軽度知的障害を理由にしないと説明できない部分は特段見受けられない。すなわち、軽度知的障害が犯行に与えた影響は限定的であり、心神耗弱でなくても軽度知的障害を量刑上十分考慮されるべきとの弁護人の主張は採用できない。 7 被告人は、犯行から3日後に自ら警察署に出頭して自首している。重大犯罪である本件犯行の自首に当たっては、被告人なりの覚悟があったと認められる上、自首によって犯人が早期に特定されて捜査が進展している。しかしながら、被告人が自首の前に友人に犯行を告白していること、自宅に証拠物を残したまま帰宅しなかったことなどからすれば、早晩、被告人が犯人として特定されていたものと考えられる。また、被告人は、パチンコに金銭を費消するなどして所持金が乏しくなり、自殺を考えたが実行には移せず、行き場がなくなったことから自首したと認められ、改悛の情から自首したものではない。被告人の自首は、量刑上被告人にとって有利に考慮すべき事情であるが、刑の内容を大きく左右する事情ともいえない。 8 被告人は、令和4年2月に末期の膵臓がんの診断を受けているが、犯行後のことであって刑を減軽する事情にはならない。被告人は、夫婦殺害については一貫して認め、がんの診断を受けて命の尊さ及び儚さを知り、命日及び盆に僧侶を呼んで供養し、各被害者の写真に毎日手を合わせるとともに、遺族宛てに手紙を2通書いており、犯行を後悔していると認められる。しかしながら、2通目の手紙は、がんの の尊さ及び儚さを知り、命日及び盆に僧侶を呼んで供養し、各被害者の写真に毎日手を合わせるとともに、遺族宛てに手紙を2通書いており、犯行を後悔していると認められる。しかしながら、2通目の手紙は、がんの診断を受けた自己の境遇や医療体制への不満を訴える文面が多く、遺族に対する謝罪の意思が読み取れないな - 17 -ど、被告人が犯行に向き合って反省を深めているとは到底いえないから、被告人に改悛の情が認められるとは評価できない。 9 以上の諸事情を総合考慮すると、結果の重大さ、殺害の手段方法の執よう性・残虐性に照らせば、被告人の刑事責任は極めて重大であり、犯行に至る経緯及び動機には死刑を回避すべき事情がないことからすれば、犯行の計画性、軽度知的障害の影響、自首、犯行後の情状に加え、不遇な生い立ち、足の後遺障害等を検討した上で被告人にとって有利な事情を最大限斟酌し、かつ、究極の刑罰である死刑の適用は慎重に行わなければならないという観点及び公平性の確保の観点を踏まえても、本件については、死刑を選択することは真にやむを得ないと認められる。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑死刑)令和5年3月7日名古屋地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官森島聡 裁判官棚村治邦 裁判官吉川この実

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