平成25年12月6日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成24年(ワ)第14492号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成25年10月8日判決東京都渋谷区<以下略>原告A 同訴訟代理人弁護士大濱正裕同石田達郎東京都港区<以下略>被告株式会社扶桑社(以下「被告扶桑社」という。)横浜市港北区<以下略>被告B (以下「被告B」という。)●省略●被告 C (以下「被告C」という。)被告3名訴訟代理人弁護士加藤義樹同矢野京介同毛塚重行 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して3193万5000円及びこれに対する被 告扶桑社及び被告Bにつき平成24年6月15日から,被告Cにつき平成25年5月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告扶桑社の出版する別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)の表紙,帯及び本文には,その内容,品質について誤認をさせるような表示をした部分があるから,上記書籍の出版は不正競争防止法 が,被告扶桑社の出版する別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)の表紙,帯及び本文には,その内容,品質について誤認をさせるような表示をした部分があるから,上記書籍の出版は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項13号所定の不正競争及び平成17年法律第87号による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)2条9項所定の不公正な取引方法(一般指定8項のぎまん的顧客誘引)に該当し,被告らの共同不法行為(民法719条1項)を構成すると主張し,被告らに対し,不競法4条又は民法709条及び同法719条1項に基づき,逸失利益2593万5000円,慰謝料300万円及び弁護士費用300万円の合計額である3193万5000円(附帯請求として,被告らに対する各訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の連帯支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者等ア原告は個人投資家であり,平成17年7月28日にダイヤモンド社から出版された「月100万円儲ける!『株』チャートパターン投資術」と題する書籍(以下「原告書籍」という。)の著者である(甲3の1・2,4)。 イ被告扶桑社は雑誌・書籍出版業,雑誌・書籍の編集及び販売受託等を業とする株式会社である。 ウ被告Cは本件書籍の著者であり,「C」はその筆名である。 エ被告Bは本件書籍のライターである。 (2) 本件書籍の発行等 ア被告扶桑社は,平成17年8月10日,本件書籍を出版した。 イ本件書籍の表紙には別紙表示目録記載1の,帯には同目録記載2の,本文中には同目録記載3の表示をした部分がある(以下,上 ア被告扶桑社は,平成17年8月10日,本件書籍を出版した。 イ本件書籍の表紙には別紙表示目録記載1の,帯には同目録記載2の,本文中には同目録記載3の表示をした部分がある(以下,上記表示をそれぞれ「本件表示1」などといい,これらを併せて「本件表示」という。)(甲1の1・2,15)。 (3) 本件訴訟の経緯等ア原告は,被告Cの氏名を「C」,その住所を被告扶桑社の本店所在地と表示して本件訴訟を提起したが,上記氏名及び場所による送達をすることができなかった(当裁判所に顕著)。 イ当裁判所は,平成24年7月11日の第1回口頭弁論期日において,本件の弁論から被告Cについての弁論を分離し,口頭弁論期日を追って指定とした(第1回口頭弁論調書)。 ウ被告Cは,平成25年5月28日,被告ら代理人に対する訴訟委任状(被告Cの本名を併記したもの。)を当裁判所に提出し,同日,訴状等の送達を受けた(当裁判所に顕著)。 エ原告は,平成25年5月31日付け当事者の表示の訂正申立書により被告Cの氏名及び住所を訂正し,当裁判所は,同年6月19日,被告扶桑社及び被告Bについての弁論に被告Cについての弁論を併合した(当裁判所に顕著)。 2 争点(1) 本件書籍の出版が不競法2条1項13号所定の不正競争に該当するか。 (2) 本件書籍の出版が独禁法2条9項の不公正な取引方法に該当し,不法行為を構成するか。 (3) 損害賠償請求の可否・損害額第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)(本件書籍の出版が不競法2条1項13号所定の不正競争に該当す るか。)(原告の主張)(1) 本件表示の内容等本件書籍の表紙及び帯には,「平凡な大学生のボクがネット株で3億円稼いだ 書籍の出版が不競法2条1項13号所定の不正競争に該当す るか。)(原告の主張)(1) 本件表示の内容等本件書籍の表紙及び帯には,「平凡な大学生のボクがネット株で3億円稼いだ秘術教えます!」,「…ボクは2年と3か月で30万円を3億円にすることができたのです!」,「資産1000倍」,「30万円→3億円」などという表示がされている上,本件書籍の本文においては,第1章「偏差値45大学生,3億円株長者への道」で,被告Cのプロフィール及び資産を3億円に増やした経緯が詳細に記載されており,被告Cがいかに平凡な大学生であるかが強調されるとともに,被告Cが平凡であるにもかかわらず,2年3か月という短期間で,わずか30万円の元手で3億円という実績を上げたということが強調されている。 (2) 本件表示の品質等誤認表示該当性アある表示が「その商品の品質,内容等について誤認させるような表示」(不競法2条1項13号。以下「品質等誤認表示」という。)に該当するか否かは,誤認の主体となる需要者の視点に立った上で,当該商品の品質,内容等について誤認が惹起されるおそれがある表示か否かが問題とされなければならない。そして,ここでいう「需要者」とは,同号の趣旨が需要者の利益を前面に押し出したものであることに鑑み,表示に対する需要者心理を前提とした上で,理性的な人間ではなく,誤りを起こしやすく,欲望,見栄,感情等に動かされやすい普通の生活人を想定するべきであり,当該表示が品質等誤認表示に該当するか否かは,当該表示の誇張の程度等が,社会一般に許容される限度を超えて,上記のような一般需要者による商品選択に誤りを起こさせるものであるかどうかという見地から判断されるべきである。 イ本件表示が,品質を誤認させる表示に該当すること 限度を超えて,上記のような一般需要者による商品選択に誤りを起こさせるものであるかどうかという見地から判断されるべきである。 イ本件表示が,品質を誤認させる表示に該当すること (ア) 本件書籍における上記(1)の表示に接した一般需要者は,本件書籍の著者がごく普通の大学生であるにもかかわらず,2年3か月という短期間で30万円というわずかな資産を元手にしてインターネットで株式投資を行うことにより,3億円という極めて多額の利益をあげたと認識し,さらに,そのような平凡な人間であるにもかかわらず上記のような実績を挙げた著者が記載した書籍であれば,知識も才能もない平凡な人間であっても少ない元手から多額の経済的利益を得ることができる,秘術ともいうべき方法論を知ることができると認識するはずである。すなわち,需要者は,本件書籍における本件表示の強調又はレッテル効果により投資手法の内容を判断し,本件書籍に,「平凡な大学生が2年3か月で30万円を3億円にすることができた秘術」,さらには「実際に2年3か月で平凡な大学生が資金を1000倍にすることができた株式投資手法」が記載されているものと認識し,購入を選択するものであるということができる。 (イ) しかるに,実際には,下記(3)でみるとおり,本件書籍の著者である被告Cには,その表示どおりの実績が存在しないのであるから,本件書籍に「2年3か月で30万円を3億円にすることができた投資手法」や,「実際に2年3か月で平凡な大学生が資金を1000倍にすることができた株式投資手法」など記載されているはずがない。 よって,30万円を3億円にすることが「できた」投資手法そのものが存在しないということになるところ,上記表示が,一般需要者の購入の選択を誤らせるものであることは されているはずがない。 よって,30万円を3億円にすることが「できた」投資手法そのものが存在しないということになるところ,上記表示が,一般需要者の購入の選択を誤らせるものであることは,本件書籍に本件表示がなければ,19万部もの販売部数を達成し得なかったであろうことからも明らかである。 したがって,本件表示は,本件書籍の品質を誤認させる表示に該当する。 (ウ) 加えて,著者の虚偽又は誇張された実績を表示して,記載された投資手法が優良なものであると保証又は誇大広告しているという点においても,本件表示は,本件書籍の品質を誤認させる表示に該当する。 ウ本件表示が,内容を誤認させる表示に該当すること(ア) 本件書籍の本件表示に接した一般需要者は,本件書籍が,「平凡な大学生が2年3か月で30万円を3億円にした株式投資手法」について,実際に体験した事実に基づき記載した,いわゆるノンフィクション作品であると認識するものということができる。 (イ) しかし実際には,下記(3)でみるとおり,本件書籍の著者である被告Cに本件表示どおりの実績が存在しないのであるから,「平凡な大学生が2年3か月で30万円を3億円にした」という非常に重要な内容において,本件書籍はフィクションを記載したものであるということになる。 上記の点が一般需要者の購入意欲に影響を与えることは明らかであるから,本件表示は,本件書籍の内容を誤認させる表示に該当する。 エ被告らの主張に対する反論(ア) 被告らは,本件書籍の品質又は内容の対象を投資手法そのものであると捉えた上で,本件書籍の著者である被告Cの属性・実績の真実性は品質等誤認表示該当性の検討に当たり問題とならない旨主張する。 (イ) しかし,一般需要者が投資関連書籍を購入する際に 法そのものであると捉えた上で,本件書籍の著者である被告Cの属性・実績の真実性は品質等誤認表示該当性の検討に当たり問題とならない旨主張する。 (イ) しかし,一般需要者が投資関連書籍を購入する際に,投資手法そのものを通読して確認することはできないのであるから,一般需要者の購入時の視点に立って検討した際に,本件書籍の品質又は内容として投資手法のみを問題とすることは相当ではない。 むしろ,一般需要者は,投資関連書籍を購入するに際し,単に投資手法のみに着目とするものでなく,投資手法と著者の属性・実績を不可分一体のものとして把握し,これに着目して購入するかどうかを決定するものであるから,本件書籍の品質又は内容として,著者の属性・実績は 当然に問題とされるべきである。 これは,本件書籍と同じ投資手法につき,例えば「30万円を300万円にした方法」として表示した場合に,本件書籍と同じ19万部の販売実績が確保されることはあり得ないと考えられることからも明らかである。 (ウ) なお,仮に,本件書籍の本質が投資手法それ自体であるとしても,本件書籍における著者の属性・実績は,当該投資手法が優良なものであることを保証し,又は広告する表示とも捉えられるのであるから,著者の属性・実績の真実性は,品質等誤認表示該当性の検討に当たり,当然に問題とされるべきである。 (3) 本件表示に係る著者の属性・実績が虚偽であること本件表示に係る被告Cの属性(平凡な大学生であること)及び実績(30万円というわずかな元手を,2年3か月という短期間で,株取引により3億円に増やしたこと)が虚偽であることは,次の点から明らかである。 ア本件書籍において,被告Cは,①30万円を数百万円に増やした段階,②上記数百万円を数千万円に増やした段階,③上記数千万 により3億円に増やしたこと)が虚偽であることは,次の点から明らかである。 ア本件書籍において,被告Cは,①30万円を数百万円に増やした段階,②上記数百万円を数千万円に増やした段階,③上記数千万円を3億円に増やした段階を経てその資産を3億円に増やしたものとされているところ,本件書籍中の,被告Cが株取引を開始し,その資産を30万円から数百万円に増やしたとする過程(上記①の段階)において,下記(ア)ないし(ウ)のとおり,明らかに虚偽の創作部分が存在する。したがって,上記①の段階に引き続く段階である上記②及び③の段階も,同様に虚偽の創作であるとみるべきである。 (ア) 口座開設時期についてa 本件書籍中には,被告Cが2003年2月に楽天証券株式会社(以下「楽天証券」という。)において口座を開設した旨の記載がある。 b しかし,楽天証券では未成年者の口座開設はできず,かつ,本件書籍 によれば,被告Cが満20歳になるのは2003年4月以降であるから,上記記載は虚偽である。 (イ) ソニー株,セガ株についてa 本件書籍中には,①被告Cは,2003年,大学2年生のときに,70万円を元手にして株取引を始め,セガ株及びソニー株を購入したが,ソニー株は1株2000円台まで下げ続け,資金が30万円程度まで減少した旨の記載及び②「口座を開設,半年で30万円から60万円に」との記載がある。 b 上記記載のうち,①については,ソニー株の実際の値動きに反するものであるところ,被告扶桑社自身,上記記載が創作であったことを認めているのであるから,上記記載は虚偽である。 c また,ソニー株の実際の値動きに照らし,被告Cの口座残高が30万円まで減った時期は2003年4月28日から5月22日までしかあり得ない。そ めているのであるから,上記記載は虚偽である。 c また,ソニー株の実際の値動きに照らし,被告Cの口座残高が30万円まで減った時期は2003年4月28日から5月22日までしかあり得ない。そして,上記時期から半年後は同年10月から11月であるから,上記aの記載を前提とすれば,その頃に被告Cの口座残高は60万円になっているはずである。しかし,本件書籍51頁のグラフによれば,同年10月の口座残高は127万円,11月の口座残高は97万円となっており,整合していない。 d なお,被告らは,本件書籍の上記②の記載は2003年2月時点の口座残高である36万円からの口座残高の増減を示したものであると釈明した。しかし,本件書籍には,被告Cが大学2年にキッチンカブーの会員になり,利益を出していった旨の記載があるところ,被告の釈明はこの点とも整合しないことになる。 (ウ) 南野建設株についてa 本件書籍28頁には,「南野建設では,34円で10万株買って43円で全株売り払い,調整した後,再び43円で買って翌日58円で売る ことで,2日で240万円の大儲け!」との記載がある。 b 上記記載は,34円で10万株を購入し,同日に43円で全株を売却し,更に同日に再度43円で10万株を購入し,翌日に58円で全株を売却したことを記載したものである。しかし,上記取引は,ループトレードのルール(同一資金で同日中に同じ銘柄を再度買い付けることはできない)及び受渡日のルール(売却益を得た日に,上記売却益を元手にして,同日中に株を購入することはできない)に反するものであり,虚偽である。 イまた,被告Cが著者であるとされる本件書籍と他の書籍又は雑誌との間,あるいは他の書籍と他の雑誌との間には,次に挙げる点において齟齬ないし矛盾が存在 ない)に反するものであり,虚偽である。 イまた,被告Cが著者であるとされる本件書籍と他の書籍又は雑誌との間,あるいは他の書籍と他の雑誌との間には,次に挙げる点において齟齬ないし矛盾が存在するところ,被告Cが真実をありのままに記述しているのであれば,このような齟齬や食い違いが生じることは考えられない。したがって,このような齟齬又は矛盾が存在すること自体,本件書籍の記載が虚偽の創作であることを裏付けるものというべきである。 (ア) 被告扶桑社発行の雑誌「週刊SPA!」2005年3月29日号(甲35)には,平成16年3月時点で資産が100万円に回復した旨の記載があるのに対し,本件書籍51頁のグラフでは,同月時点において被告Cが841万円を達成した旨の記載がある。 (イ) 被告Cを著者とし,被告扶桑社を発行所とする書籍「3億円大学生が徹底指導した勝利の鉄則」(甲36の1・2)には,大学2年の春から株投資を始め,同年夏休みに30万円の資産で株投資を再スタートした旨の記述があるのに対し,本件書籍には,平成15年8月に資産を60万円にした旨が記載されている。 (ウ) 上記(イ)の書籍には,被告Cが大学2年の終わり頃(平成16年2月~3月頃)に資産100万円を突破したとの記載があるのに対し,本件書籍には,資産100万円達成時期は平成15年9月とされ,平成1 6年2月~3月頃には資産が841万円になった旨の記載がある。 (エ) 上記ア(ウ)でみた南野建設株の売買に関し,株式会社ダイヤモンド社発行の雑誌記事に掲載された被告C作成であるとされるノート(甲47)では買い直し価格が51円と記載されているのに対し,本件書籍では43円と記載されている。 (オ) 上記(エ)のノートには,平成17年6月24日の資産 た被告C作成であるとされるノート(甲47)では買い直し価格が51円と記載されているのに対し,本件書籍では43円と記載されている。 (オ) 上記(エ)のノートには,平成17年6月24日の資産残高は3億0974万4688円と記載されているが,本件書籍51頁の口座画像には「前日比+2301万2500円」と表示されているのであるから,同日時点の資産残高は2億8673万2188円となるはずであり,これが反映されていない。 ウその他,次に挙げる点も,被告Cの属性・実績が虚偽であることを裏付けるものである。 (ア) 本件書籍の制作には少なくとも半年間程度を要するところ,本件書籍によれば,被告Cの資産が3億円に到達した日は平成17年6月27日であるとされるにもかかわらず,本件書籍は同年8月10日に出版されており,3億円の達成時期と本件書籍の出版時期が近すぎる。 (イ) 被告Cが被告扶桑社の発行する雑誌において掲載していたコラム(甲21ないし24)には,被告Cがカネボウ株主代表訴訟(東京地裁平成18年(ワ)第28061号事件)の原告団の一員であり,同株式1万株を保有していた旨が記載されている。 本件書籍によれば,被告Cは,上記事件の訴え提起時である平成18年12月頃には愛知県名古屋市又はその近郊に,上記事件の控訴提起時である平成19年10月頃には東京都内に居住していたとされるが,「カネボウ個人株主の権利を守る会」への照会結果によれば,カネボウ株主代表訴訟の原告らのうち,その住所地が同訴訟提起時において愛知県,その控訴時において東京都となっている者は存在せず,かつ,提訴 時に愛知県在住で1万株を保有していた者は,平成24年10月22日時点において67歳,76歳,33歳の3名のみであっ て愛知県,その控訴時において東京都となっている者は存在せず,かつ,提訴 時に愛知県在住で1万株を保有していた者は,平成24年10月22日時点において67歳,76歳,33歳の3名のみであって,原告Cの年齢(本件書籍によれば平成24年時点で29歳)に該当する者は存在しない。 したがって,本件書籍における原告Cの経歴がねつ造されたものである疑いが濃厚であるといえる。 (ウ) 3億円達成時の口座残高画像について本件書籍51頁には,被告Cの口座残高画像であるとして,3億円を超える残高を表示する口座画像が掲載されているが,上記画像のうち,「前日比」欄の2箇所の金額の数字(180万2700円と2301万2500円)がかけ離れすぎており,いずれかの数字が修正された画像である可能性が高い。 (4) 被告らの立証についてアこれに対し,被告らは,本件書籍に記載された被告Cの属性及び実績が事実に基づくものであることを示す証拠として,被告C及びその母親の楽天証券における特定口座年間取引報告書(乙10ないし12),入出金記録(乙13,14)並びに資産推移一覧表(乙15の1~5,16の1~3)を提出するが,次のとおり,上記各証拠はいずれも偽造されたものである。 イ楽天証券において,特定口座を開設するためには,その前に総合取引口座を開設していなければならないところ(甲58),乙11及び12によれば,被告Cの特定口座開設日は平成15年10月7日であるとされるから,被告Cは,楽天証券において,平成15年10月7日以前に総合取引口座を開設したということになる。したがって,被告Cは,乙16の2・3作成時点である平成25年6月時点において,少なくとも平成15年10月から117か月間の いて,平成15年10月7日以前に総合取引口座を開設したということになる。したがって,被告Cは,乙16の2・3作成時点である平成25年6月時点において,少なくとも平成15年10月から117か月間の取引期間を有していることになる。また,楽天証 券の資産推移一覧において,取引期間中から一部の期間を抜粋して表示させることはできない(甲58)。 しかるに,乙16の2・3には,取引期間が111か月間と表示された上,平成16年4月からの資産推移のみが表示されているのであるから,乙16の2・3は,被告Cの実績を偽装する意図で偽造された証拠である疑いが極めて強いというほかなく,また,仮に乙16の2・3が真正に成立したものであれば,これと矛盾する乙11,12が偽造されたものであるということになる。 ウ加えて,乙13ないし16(枝番を含む。)は,スクリーンショットの写しにすぎないところ,原告が,実際に,原告名義の資産推移一覧表のスクリーンショットを容易に改変できたこと(甲62ないし65)からも明らかなとおり,スクリーンショットの改変は極めて容易であり,かつ,その真贋の見極めは容易につくものではない。 また,乙15の4の写し(甲66)の赤丸のA部分を拡大したもの(甲67)と,乙15の5の写し(甲68)の赤丸のB部分を拡大したもの(甲69)を対比すると,数字体のにじみの有無などの点でばらばらのフォントが混在していることが判明した。 また,原告の資産推移一覧画面のスクリーンショットの一部を拡大したもの(甲72)には,数字の周りに青色の点がびっしり付いているが,乙15の4・5を各拡大したもの(甲66,68)には,青い点がほとんど見当たらない。 これらの点は,乙13ないし16(枝番を含む。)が偽造されたもので ,数字の周りに青色の点がびっしり付いているが,乙15の4・5を各拡大したもの(甲66,68)には,青い点がほとんど見当たらない。 これらの点は,乙13ないし16(枝番を含む。)が偽造されたものであることを具体的に疑わせるものである。 エさらに,乙10ないし12についても,①その印影が,原告が楽天証券から送付を受けた特定口座取引報告書に押捺されていた印影と同一のものではないこと,②楽天証券から郵送される際に三つ折りにして封筒に入れ ることよる折り目がないことから,偽造されたものであるおそれが高い。 オ以上のとおり,乙10ないし16(枝番を含む。)はいずれも偽造の疑いが濃厚であり無価値なものであって,これらにより,被告Cの実績が裏付けられるものではない。 カ仮にこの点を措くとしても,被告Cの母親名義の口座における取引は,母親自身によるものであり,上記運用により得られた資金が被告Cの口座に贈与されたものとしかみることができず,被告Cの母親名義の口座における実績が被告Cによるものであるとは到底解されない。 (5) 検証及び調査嘱託の必要性ア上記(4)のとおり,被告Cの実績に関する被告らの立証は極めて疑わしいものであるから,①被告C及びその母親の楽天証券における口座の検証と,②被告Cの住所地を管轄する税務署に対する,被告C及びその母親の株式等譲渡所得額,上記株式等譲渡所得に係る納税額等の調査嘱託が必要である。 イまた,乙10ないし16(枝番を含む。)によっても,被告Cの母親名義の口座における取引は,被告Cの母親自身によるものとしか解されないことは前記(4)カのとおりであるところ,被告らは,母親名義口座から運用益を引き出して被告C名義口座に移動したことに関し,税務署に相談した上で適法に行 は,被告Cの母親自身によるものとしか解されないことは前記(4)カのとおりであるところ,被告らは,母親名義口座から運用益を引き出して被告C名義口座に移動したことに関し,税務署に相談した上で適法に行っている旨の主張をしているのであるから,この点の確認は,税務署に対する調査嘱託によってしか果たされないものであり,調査嘱託の必要性は一層高いというべきである。 ウ仮に上記調査嘱託を行わない場合には,悪質業者により虚偽の実績を偽装して広告するなどといった不正行為の横行や,犯罪収益移転防止法違反,贈与税の脱税等を助長する結果になりかねず,到底許されるべきではない。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 (2)ア投資関連書籍という本件書籍の特性を考慮すれば,その需要者としては自己の利益を最大限に追求すべく,自己責任において的確な選択をすることができる,合理的経済人を想定すべきである。 イ(ア) 上記のような合理的経済人である需要者が,本件書籍のような投資関連書籍に接した場合,当該書籍に記載された投資手法を自ら投資を行う際の参考にできるかどうかに最大の関心を寄せるものであり,当該書籍の著者ないし投資家の属性や,その投資結果に関心を寄せるものではない。また,投資一般において,必ず利益の出る投資手法など確立されていないことは公知の事実であるから,本件書籍に接した需要者が,本件書籍に記載された投資手法を実践すれば,必ず本件表示1及び2のとおりの投資結果(2年3か月で30万円を3億円にすることができるという結果)が得られると認識することも考えられない。 したがって,本件において,「商品」である本件書籍の「品質」(不競法2条1項13号)を検討すべき対象は,本件書籍に記載された投資手法であって,その著者ないし投資家の属 認識することも考えられない。 したがって,本件において,「商品」である本件書籍の「品質」(不競法2条1項13号)を検討すべき対象は,本件書籍に記載された投資手法であって,その著者ないし投資家の属性や,その投資結果が,その「品質」の検討に当たり,問題となるものではない。 (イ) そして,投資手法の「品質」,すなわちその優劣,当否等の評価は,当該書籍を読んだ者各自の判断に委ねられる事項であり,個人の選好や主観に大きく左右されるものであって,その品質ないし評価基準を一義的に定めることできないことは明らかである。 (ウ) 以上のとおり,本件書籍における「品質」の対象が投資手法であり,その優劣を一義的に評価することができないものであること及び需要者が,本件書籍に記載された投資手法を実践すれば,必ず本件表示1及び2のとおりの投資結果が得られるものと認識することがあり得ないことに照らせば,本件書籍の表紙及び帯において,投資結果としてどのような金額が表示されていようとも,投資手法に係る「品質」に誤認が生じ ることはあり得ない。 (エ) この点,原告は,投資手法と著者の実績(投資結果)は不可分一体であり,本件表示に係る著者の実績等の表示は,当該投資手法が優良なものであることを保証又は広告するものであると主張するが,何をもって投資手法を優良と評価するのかにつき,何ら具体的に主張するものではない。 また,たとえ,著者の実績(投資結果)が多額のものであったとしても,これをもって投資手法の優劣を論じることができないことはいうまでもない。なぜなら,上記のとおり,投資手法の評価は個人の選好や主観に大きく左右されるものであり,結果として多額のリターンを得ることのできた投資手法であっても,そのために大きなリスクを負うようなものであれば,その優劣 上記のとおり,投資手法の評価は個人の選好や主観に大きく左右されるものであり,結果として多額のリターンを得ることのできた投資手法であっても,そのために大きなリスクを負うようなものであれば,その優劣の評価は一義的には定まらないからである。 したがって,本件書籍の表紙及び帯における著者の実績(投資結果)の表示によって,本件書籍における投資手法の「品質」に誤認が生じることはあり得ない。 ウ以上によれば,本件表示1及び2は品質等誤認表示(不競法2条1項13号)に該当しないエなお,本件書籍の本文における記述である本件表示3が,不競法2条1項13号にいう「表示」に該当しないことは論ずるまでもない。 (3)ア以上のとおり,本件表示が品質等誤認表示に該当するか否かを検討するに当たり,著者である被告Cの属性や,その投資結果を問題とする必要はないが,仮にこの点が問題となるとしても,被告Cは,当時,名古屋市内の中堅私大に通う大学生であり,株取引により3億円以上を得たものであるから,本件表示1,2に記載された被告Cの属性や実績は事実に基づくものである。これは,被告らが提出した被告C及びその母親名義口座の特定口座年間取引報告書(乙10ないし12),入出金記録(乙13・1 4)及び資産推移一覧表(乙15の1ないし5,16の1ないし3)から明らかである。 イすなわち,被告Cは,平成14年4月,母親名義口座を借用して約20万円を元手に株取引を開始し,同年7月に約50万円を入金して口座残高が70万円となったが(乙13),同年10月から平成15年3月の間は口座残高が約30万円まで減少した(乙15の3)。被告Cはその後も母親名義口座において株取引を継続し,平成16年7月20日,上記口座から,その口座残高の全額である約4900万円を引 15年3月の間は口座残高が約30万円まで減少した(乙15の3)。被告Cはその後も母親名義口座において株取引を継続し,平成16年7月20日,上記口座から,その口座残高の全額である約4900万円を引き出し,その翌日に被告C名義口座に入金して資金を移動した(乙13,14)。なお,被告Cが母親名義口座から引き出した現金を被告C名義口座に移動したことは,平成16年6月末時点における被告Cの母親名義口座の残高が約3000万円であるのに対し,同年7月末にはゼロ円になっていること(乙15の4・5),同年6月末時点における被告C名義口座の残高が約100万円であるのに対し,同月7月末には約5000万円になっていること(乙16の2・3)からも裏付けられる。 被告C名義の上記口座の口座残高は,平成17年6月には約3億2000万円になっているのであるから(乙16の3),被告Cが,株式運用により,取引開始から2年3か月後に30万円を3億円以上にしたことは明らかである。 ウなお,原告は,母親名義口座における株取引が被告Cによって行われたものであるか否かは不明であると主張するが,同名義口座から現金を全額引き出して被告C名義口座に移動させたことを合理的に説明するには,母親名義口座における株取引は被告Cが行ったものであるとみるほかない。 これは,本件書籍において,母親名義口座における被告Cの母親自身の取引(平成16年10月以降のもの)が被告Cの取引と区別され,被告Cの運用実績に加えられていないことからも裏付けられる。 エ原告は,乙16の2が被告Cの口座開設日ではなく平成16年4月から表示されていることを挙げて,乙10ないし16(枝番を含む。)が偽造されたものであると主張する。 しかし,乙16の2の表示が平成16年4月から始まっ 2が被告Cの口座開設日ではなく平成16年4月から表示されていることを挙げて,乙10ないし16(枝番を含む。)が偽造されたものであると主張する。 しかし,乙16の2の表示が平成16年4月から始まっているのは,被告Cが自己名義の口座に初めて入金した日が平成16年4月8日である(乙14)ことによるものである。 したがって,原告の上記主張はその前提を誤っており失当である。 オ原告は,このほか,種々の点を挙げて本件表示が虚偽の創作であると主張するが,次のとおり失当である。 (ア) 口座開設時期の点等についてa 被告Cが株の運用を始めたのは,本件書籍に記載されている「2003年2月,大学2年のとき」ではなく,実際には「2002年,大学1年のとき」である。具体的には,2002年4月頃に20数万円を投入して株取引を始め,同年7月頃に50数万円を追加投入して本格的な株取引を始めた。 上記取引は,被告Cが母親名義口座を借用して行ったものであるが,これを本件書籍にそのまま記載すると,被告Cの楽天証券における今後の取引に支障を来すおそれがあったことから,被告扶桑社の判断で,取引開始時期を本件書籍記載のとおり修正し,口座残高グラフも2003年1月以前のものは掲載しないこととしたものである。被告Cの口座残高は,2002年7月時点で70数万円であったが,その後30万円台まで減少し,2003年2月時点でも30万円台が継続していたというのが実際のところである。 b 原告の指摘のうち,口座開設時期と被告Cの年齢に関する矛盾点は,上記の事情により生じたものである。また,上記修正の結果,本件書籍と「週刊SPA!」の記事や,被告Cの別書籍との間に,元手とし た資産が減少した後,回復した時期等につき,数か月の齟齬が生じたものであ により生じたものである。また,上記修正の結果,本件書籍と「週刊SPA!」の記事や,被告Cの別書籍との間に,元手とし た資産が減少した後,回復した時期等につき,数か月の齟齬が生じたものであり,ほかにも,取引開始当初の経緯の説明中で若干の齟齬が生じた可能性は否定できない。 c 原告の指摘する矛盾や齟齬が生じた理由は上記のとおりであって,上記矛盾や齟齬によって,被告Cの運用実績そのものが虚偽の創作であることが裏付けられるものではなく,被告Cの運用実績自体は紛れもない事実である。 d 上記の矛盾や齟齬は,たかだか数十万円の金額や数か月の期間に係るものであり,被告Cの株取引期間及び運用金額に鑑みれば,運用実績全体の信用性を揺るがすような根幹に関わる問題ではない。また,本件書籍で,株取引開始当初の経緯につき,若干,事実と異なる説明がされていることは否定しないが,この点は,一般需要者の本件書籍又は被告Cの株取引における実績に対する評価を直ちに左右するものではない。 (イ) ソニー株について原告の主張は,ソニー株が2000円台まで下がったときに上記株式を売却したとの理解を前提としているが,本件書籍における記載は,ソニー株の株価が取得価格より下落し被告Cの資産が減少したことを示しているにすぎず,2000円台まで下がったときに売却した等とは記載していないのであるから,原告の主張は,その前提に誤りがあり失当である。 (ウ) 南野建設株について原告は,南野建設株の売買がループトレードのルールに反するから虚偽であると主張するが,被告Cは,平成16年3月19日に南野建設株を購入し,これを同月22日に売却し,更に同日中に買い戻して,同月23日に売却したものであり,ループトレードのルール(同日中に,同 一銘 張するが,被告Cは,平成16年3月19日に南野建設株を購入し,これを同月22日に売却し,更に同日中に買い戻して,同月23日に売却したものであり,ループトレードのルール(同日中に,同 一銘柄を,同一資金で「買い→売り→買い」することを認めないというルール)に反するものではない。また,原告は,南野建設株の買戻し価格に関し,甲47と本件書籍の間に齟齬があるとも主張するが,甲47には,買戻し価格が51円であるとは記載されていない。原告は,甲47における「51円→」の表記を51円で買い戻したことの根拠とするものと考えられるが,上記表記は買戻し日の終値が51円であることを示すものであって,買戻し価格が51円であることを示すものではない。 (エ) その他の点について原告が指摘するその他の点のうち,3億円達成時期と本件書籍の出版時期が近すぎるとする点に関しては,被告扶桑社は,被告Cが資産3億円を達成する以前から取材等を進めていたところ,執筆中に被告Cの資産が3億円に達したにすぎない。 また,カネボウ株主代表訴訟に関する点は,被告Cがカネボウ株式買取価格決定事件をカネボウ株主代表訴訟と誤解したことによるものである。 さらに,3億円達成時の口座残高画像に関する点については,原告は,上記画像における2301万2500円の金額の意味についての理解を誤っており,失当である。 (4) 原告の検証及び調査嘱託申立てについて以上のとおり,被告Cの属性及び実績は,本件表示1,2の品質等誤認表示該当性を検討するに当たり問題となるものではない上,仮にこれが問題となるとしても,本件表示1及び2に係る被告Cの属性及び実績が事実であることは,乙10ないし16(枝番を含む。)で十分に立証されており,上記属性及 るに当たり問題となるものではない上,仮にこれが問題となるとしても,本件表示1及び2に係る被告Cの属性及び実績が事実であることは,乙10ないし16(枝番を含む。)で十分に立証されており,上記属性及び実績が虚偽である旨の原告の主張に合理性はない。したがって,原告の検証及び調査嘱託申立てを採用する必要性はない。 本件表示3が不競法2条1項13号にいう「表示」に該当しないことは前 記(2)エのとおりであるから,本件書籍の本文中に記載されている個別銘柄に係る株取引についても,同様に検証の必要性は認められない。 2 争点(2)(本件書籍の出版が独禁法2条9項の不公正な取引方法に該当し,不法行為を構成するか。)(原告の主張)(1) 本件書籍がその最大のアピールポイントとしている点(平凡な大学生が,2年3か月という短期間で,30万円から3億円に資産を増やしたという点)の全部又は一部が偽装されたものであることは争点(1)に関する原告の主張で述べたとおりである。 (2) したがって,本件書籍は,自社が出版する商品の内容等について,実際のもの又は競争者に当たる原告のものより著しく優良又は有利であると顧客に誤認させるものであり,本件書籍の出版は,一般指定第8項のぎまん的顧客誘引として,独禁法2条9項の不公正な取引方法に該当し,被告らがこれを共同して行ったことは明白である。 (3) 被告らの上記行為は,原告の自由な競争市場で書籍を販売できる利益を侵害するものであるから,私法上も違法性を有する。また,ぎまん的顧客誘引という行為の性質上,被告らには不法行為上の故意又は過失が認められる。 (4) したがって,本件書籍の出版は,被告らの共同不法行為を構成する。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 の性質上,被告らには不法行為上の故意又は過失が認められる。 (4) したがって,本件書籍の出版は,被告らの共同不法行為を構成する。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 争点(1)に関し主張したとおり,本件表示をもってしても,本件書籍が実際のもの又は競争者に係るものよりも「著しく優良又は有利であると顧客に誤認させる」おそれは皆無であるから,これが独禁法2条9号の不公正な取引方法にも該当しないことは明らかである。 (3) また,本件書籍と原告書籍には,どちらか一方を購入すれば他方の書籍を購入しないというような排他的な二者択一関係は存在せず,本件書籍と原 告書籍は競合しないのであるから,被告らは,原告との関係において,「競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引」したこともない。 (4) したがって,本件書籍の出版に関し,被告らに不法行為は成立しない。 3 争点(3)(損害賠償請求の可否・損害額)(原告の主張)(1) 原告の営業上の利益が侵害されたことア原告は,前記前提事実(1)アのとおり,平成17年7月28日,原告書籍を出版しているところ,前記前提事実(2)アのとおり,本件書籍の出版時期は同年8月10日であるから,両書籍の出版時期にはわずか10日程度の差しか存在しないことになる。また,両書籍は,投資・ネット株という非常に狭いジャンルで競合するものであり,さらに,本件書籍が,その表紙及び帯において「平凡な大学生のボクがネット株で3億円稼いだ秘術教えます!」,「ボクは2年と3か月で30万円を3億円にすることができたのです!」「30万円→3億円」などと表示するものであるのに対し,原告書籍は,その表紙において「1年で1500万円稼ぐサラリーマントレーダーが教える」「 と3か月で30万円を3億円にすることができたのです!」「30万円→3億円」などと表示するものであるのに対し,原告書籍は,その表紙において「1年で1500万円稼ぐサラリーマントレーダーが教える」「月100万円儲ける!株チャートパターン術」などと表示するものであり,著者の実績を金額で表示して消費者の購買意欲を高めようとしている点でも競合している。 両書籍が極めて密接な競合関係にあることは,平成17年8月当時の金融・証券・株関連書籍の月間ベストセラーにおいて,本件書籍が1位,原告書籍が3位にランクインしていること,両書籍の購入者が,いずれも20代から40代の男性が約6割を,20代から40代の女性が約2割を占めること,両書籍が,いずれも,平成17年8月から11月の約3か月間でその販売のピークを終えていることからも明らかである。 イ原告書籍の表示に接した需要者は,同書籍を読めば,月100万円を儲けることができる投資術が身につけられると認識する一方,本件書籍の表 示に接した需要者は,同書籍を読めば,30万円というわずかな元手から3億円という極めて多額の利益を得る秘術ともいうべき方法論を知ることができると認識するものと解される。そうすると,上記2冊の表示に接した投資・ネット株関連の書籍購入予定者が,後者(本件書籍)に購入意欲を示し,原告書籍ではなく本件書籍を購入したであろうことは自明である。 これは,原告書籍の発行部数が総計約2万8000部(原告の得た印税額205万8000円)にとどまっているのに対し,被告書籍の発行部数が約19万部という驚異的な数に及んでいることからも裏付けられる。 ウ以上によれば,原告が,被告らの不正競争により,原告書籍の販売を妨害され,営業上の利益を侵害されたことは明らかである。 ( 9万部という驚異的な数に及んでいることからも裏付けられる。 ウ以上によれば,原告が,被告らの不正競争により,原告書籍の販売を妨害され,営業上の利益を侵害されたことは明らかである。 (2) 被告らの故意又は過失被告扶桑社は,本件訴訟提起前に,原告からの弁護士法23条に基づく照会申出を受けてなされた東京弁護士会による被告Cの本名等の照会請求に対し,被告Cの強い要望等を理由として回答を拒否した。また,被告扶桑社は,原告が,民訴法132条の2第1項に基づく提訴前照会請求により,被告Cの実績等を確認した事実の有無及び上記確認書類の開示を求めたにもかかわらず,上記実績を確認した旨を回答したのみで,上記確認資料の提出を拒否した。 上記のとおり,被告扶桑社が,合理的な理由なく原告からの照会に応じず,資料の開示請求にも応じなかったことに照らせば,被告扶桑社及び被告Bが,本件表示が偽装されたものであることを認識して本件書籍の出版に及んだものとみるべきである。 不正競争という行為の性質上,被告らは当然他人の営業上の利益を侵害することを認識し,これを容認していたということができるから,被告らには,故意又は過失がある。 (3) 原告の損害額(不競法2条1項13号の不正競争による損害額) ア逸失利益被告らの不正競争により,原告は,原告書籍が本来得られるはずであった発行部数を妨害され,営業上の利益を侵害された。上記損害額は,被告Cが受けた利益である2593万5000円(本件書籍の価格1365円×発行部数19万部×印税率0.1=2593万5000円)と推定される(不競法5条2項)。 イ慰謝料原告は,投資業界において架空人物の創作や投資実績の偽装が横行しがちであ 円×発行部数19万部×印税率0.1=2593万5000円)と推定される(不競法5条2項)。 イ慰謝料原告は,投資業界において架空人物の創作や投資実績の偽装が横行しがちであることから,自己の投資実績等をセールスポイントとして出版活動を行う以上,当該実績を公的に証明する義務を課すことが不可欠であると考え,自己のホームページにおいて,確定申告書の控え,課税証明書,特定口座年間取引報告書を掲載し,自己の実績を社会的に立証するとともに,投資業界への信頼感を高め,一般投資家の投資成功の一助とするための活動を心がけてきた。 被告らの不正競争は,原告の上記努力を水泡に帰すものであり,原告は,これにより多大な精神的苦痛を被った。上記精神的苦痛を慰謝するに足る金額は,300万円を下らない。 ウ弁護士費用本件請求の複雑さ等に鑑み,原告が自ら訴訟遂行に当たることは困難であるから,弁護士費用は相当因果関係の範囲内の損害に当たる。その額は300万円を下らない。 エしたがって,不競法4条に基づく原告の損害額は3193万5000円を下らない。 (4) 原告の損害額(独禁法違反の不法行為による損害額)ア逸失利益被告らの不法行為により,原告は,原告書籍が本来得られるはずであっ た発行部数を妨害された。原告が得べかりし利益の額は,被告Cが受けた利益分に相当する2593万5000円(本件書籍の価格1365円×発行部数19万部×印税率0.1=2593万5000円)を下らない。 イ慰謝料前記(3)イと同じウ弁護士費用前記(3)ウと同じエしたがって,被告らの不法行為による原告の損害額は3193万5000円を下らない。 イ慰謝料前記(3)イと同じウ弁護士費用前記(3)ウと同じエしたがって,被告らの不法行為による原告の損害額は3193万5000円を下らない。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 (2)ア原告の主張は,株式投資に関心がある者が投資関連書籍を購入しようとする場合,数多く存在する投資関連書籍のうちいずれか1冊しか購入しないことを前提としているが,これらの者が,興味のある分野の書籍を複数購入することも当然考えられるところであり,本件書籍の購入者が,本件書籍に加えて原告書籍も購入することもあり得るのであって,原告の主張は,その前提において誤りがある。 イ株式投資の方法論に関する書籍が多数出版されており,中古市場でこれらの書籍を入手することも可能であることや,株式投資手法に関する研究結果が書籍以外の形態でも存在し,入手可能であること等を考慮すれば,原告書籍と競合する商品は無数に存在するというべきである。加えて,原告がインターネットで検索した範囲に限っても,平成17年7,8月当時,株式投資の方法論に関する書籍は67冊も出版されていたのであるから(甲5),本件書籍の出版がなければ,本件書籍の購読者が原告書籍を購入していたはずであるなどとは到底いうことができない。また,本件書籍と原告書籍との間に代替性があるとは考えられないこと,本件書籍と原告 書籍の需要者が一致しているとは限らないことを考慮すれば,本件書籍の売上げの増減が原告書籍の売上げの増減に直ちに反映されるとは到底認められない。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件書籍の出版が不競法2条1項13号所定の不正競争に該当するか。)(1) 本件表示1及び2についてア不競法2条1項1 とは到底認められない。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件書籍の出版が不競法2条1項13号所定の不正競争に該当するか。)(1) 本件表示1及び2についてア不競法2条1項13号は,事業者が商品等の品質,内容等につき誤認を与えるような表示を行うことで,需要者の需要が不当に喚起され,公正な競争秩序が阻害されることとなることを防止するため,商品等にその品質,内容等について誤認させるような表示をする行為等を不正競争と定め,禁ずるものである。 不競法2条1項13号の上記趣旨に照らせば,同号にいう「その商品の原産地,品質,内容,製造方法,用途若しくは数量…について誤認させるような表示」に該当するかどうかについては,当該表示の内容や取引業界の実情等の諸般の事情を考慮した上で,当該商品等の需要者に,当該商品等の品質,内容等につき,直接又は間接的に誤認を生じさせるおそれがあるかどうかという観点で判断するのが相当である。 イそこで本件表示1及び2の品質等誤認表示該当性について検討するに,本件表示1及び2は,具体的には,次のような態様で表示されていることが認められる(甲15)。 (ア) 本件書籍の表紙には,表表紙,背表紙及び裏表紙のいずれにも,「平凡な大学生のボクがネット株で3億円稼いだ秘術教えます!」との本件表示1(1)が表示されており,そのうち,「3億円」の部分は,他の文字と比べて著しく大きな文字で表示されており,とりわけ表表紙においては,上記文字は,表表紙の面積の3分の1以上を占める大きさで 表示されている。 (イ) 本件書籍の表表紙の右上には,上下二段の横書きで「資産1000倍/C式株投資」との表示がされている(判決注:左右については向かって左右を指す。また,「/」は改行を意味する。) る。 (イ) 本件書籍の表表紙の右上には,上下二段の横書きで「資産1000倍/C式株投資」との表示がされている(判決注:左右については向かって左右を指す。また,「/」は改行を意味する。)。原告は,上記表示のうち,「資産1000倍」の部分を本件表示1(2)として特定するものである。 (ウ) 本件書籍の表表紙のうち,上記(ア)でみた「3億円」の記載の左側には,「3」の数字の上下の終端部分の間の空間に入り込むような形で小さな白抜き矢印が配置されており,矢印の白抜き部分に「30万円」と表示されている。原告は,上記表示を,「30万円→3億円」との表示であるとみて,本件表示1(3)として特定するものである。 (エ) これらの表示に加え,本件書籍の表表紙には,著者名の横に,札束の上に座り,額に「株」と描いた男性のイラストが表示されている。また,本件書籍の背表紙の「ネット株で」の直後及び裏表紙の「3億円」の「3」の数字の右肩部分には,表表紙と同じ男性の顔のイラストが挿入されている。 (オ) 本件書籍の帯のうち,表表紙に被さる部分には,表表紙に続く形で縦書きの「億円」の「億」の文字の下部及び「円」の文字の全部並びに「教えます!」の表示があるほか,「Cクン!頼むからボクにも教えてください!!」「経済アナリストE氏も脱帽!」との表示がある。また,背表紙に被さる部分には,背表紙に続く形で「稼いだ秘術教えます!」の表示及び著者名の表示があり,裏表紙に被さる部分には,「『株で100万円を1億円にする方法』なんてタイトルの本をよく見かけますよね。いつも「ムリに決まってるじゃん。そんなことができるならみんなやっとるわ!」なんて1人で突っ込んでいました(笑)。ところが,ボクは2年と3か月で30万円を3億円にすることができたので かけますよね。いつも「ムリに決まってるじゃん。そんなことができるならみんなやっとるわ!」なんて1人で突っ込んでいました(笑)。ところが,ボクは2年と3か月で30万円を3億円にすることができたのです! (C)」との本件表示2が表示されている。 ウ本件表示から生じる需要者の認識等(ア) 本件書籍は,書店において「株式投資」(甲5),「金融・証券・株・保険・マネー・年金」(甲20)などと分類されて販売されているものであるが,①本件書籍の表紙及び帯の表示(上記イ)が,タイトル,紹介文及びイラストのいずれの点においても,くだけた軽い印象を与えるものであること,②後記エでみるとおり,本件書籍がエッセイ,漫画等の軽い読み物部分を含むものであること等を考慮すれば,本件書籍の需要者は,投機的な株式投資を行い又はこれを行うことを具体的に予定する者に限られず,一般的な成人又は成人に近い年齢の通常人を想定することが適切であるというべきである。 (イ) このような需要者が上記イでみた本件表示1及び2に接した場合,需要者は,本件表示1(1)を本件書籍のタイトルであると理解した上で,これらの表示を併せて読み,「ボク」とは本件書籍の著者として表示されている「C」を指すものであり,本件書籍は,上記著者が,大学生のときにインターネットを通じた株取引によって,2年3か月で30万円を3億円(すなわち1000倍)に増やした体験に基づき,その株取引手法を紹介するものであると認識する蓋然性が高いものと解される。 (ウ) しかし,他方で,本件書籍の「はじめに」には,「もちろん東大生に株をやらせたら,みんなが儲けられるわけはありません。それに,ファンダメンタルやテクニカル分析をたくさん勉強したからといって儲かるわけでもありません。それだったら, じめに」には,「もちろん東大生に株をやらせたら,みんなが儲けられるわけはありません。それに,ファンダメンタルやテクニカル分析をたくさん勉強したからといって儲かるわけでもありません。それだったら,アナリストのみなさんはみんな大儲けしているでしょうし,アナリストの薦める銘柄を買えば,みんなが儲けられることになります。ではなぜ,ボクはこんなに株で儲けることができたのか?ある程度の知識は必要です。しかし何よりも「経験すること」が大切だと思います。」との記載があり,この記載は,本件書 籍の需要者である通常人の株取引についての社会通念を反映して記載されたものと認められる。この記載からうかがわれる本件書籍の需要者(通常人)の社会通念に照らせば,本件書籍の需要者は,本件書籍の表紙等における上記イの表示から,本件書籍をインターネットによる株式の短期反復売買を題材として扱うものであると認識した上で,上記のような取引が投機的要素を多分に含むものであることや,上記取引により資産を3億円に又は1000倍に増やすことが容易に達成し難いものであること,そもそも一般的に,確実に多額の利益を生み出す投資手法が存在するとは考え難いことなどについても当然に理解し,さらに,投資手法を紹介する書籍において,断定的な表現が多用されがちであること(甲5)についても認識するものと解される。 そうすると,本件書籍の需要者は,上記のような理解や実情を前提として本件表示に接するものと解されるのであって,本件表示が「秘術」という表現を含むものであることや,本件表示の内容・体裁が上記イでみたとおりのものであること,イラストの画風や本件表示2の表現なども加味して考え,本件書籍を,軽い読み物としての要素を含む,株取引の手引き書であると捉え,その内容に若干の誇張や創作が含まれる可能 でみたとおりのものであること,イラストの画風や本件表示2の表現なども加味して考え,本件書籍を,軽い読み物としての要素を含む,株取引の手引き書であると捉え,その内容に若干の誇張や創作が含まれる可能性があることも,当然に含んで認識する蓋然性が高いものというべきである。 この点に関し,原告は,需要者が,本件表示1及び2から,本件書籍を,著者の実際に体験した事実を記載したいわゆるノンフィクション本であると認識するものと主張するが,以上にみたところに照らせば,本件書籍の需要者が,本件表示から,本件書籍に記載された内容のすべてについて,事実をありのままに記載したものであると認識する蓋然性が高いものとは解されず,原告の上記主張を採用することはできない。 (エ) そうすると,本件表示1及び2が品質等誤認表示に該当するか否か は,本件表示から生じる需要者の認識が上記のようなものであることを前提として,本件書籍の内容又は品質が,上記認識と齟齬するものであるか否かという観点で検討するのが相当である。 エ(ア) そこで,まず,本件書籍の内容と需要者の認識との間の齟齬の有無について検討するに,本件における「商品」(不競法2条1項13号)が書籍である以上,その「内容」は,本件書籍の本文の記載から把握するのが相当である。 (イ) 本件書籍の本文の記載に照らして検討すると,本件書籍は,以下のとおりの内容のものであると認められる(甲15)。 a 本件書籍は,書籍の内表紙及び奥付部分を除き,全207頁からなる単行本であり,「はじめに」と題する前書き部分及び「あとがき」部分を除いた部分が第1章から第7章に分けて構成されており,その途中(165頁~171頁)に,「はじめてのデイトレード」との題名の漫画が挿入されている。 b 各章の標題は 書き部分及び「あとがき」部分を除いた部分が第1章から第7章に分けて構成されており,その途中(165頁~171頁)に,「はじめてのデイトレード」との題名の漫画が挿入されている。 b 各章の標題は,第1章「偏差値45大学生,3億円株長者への道」,第2章「C式デイトレの考え方」,第3章「C式基本ツールと銘柄選びを大公開」,第4章「C式デイトレの鉄則」,第5章「C式デイトレ実況中継」,第6章「C式仕手筋のシナリオの読み方」,第7章「スペシャル対談」というものであり,第1章(11頁~51頁)において,本件書籍の著者が名古屋市内の中堅私立大学2年生のときに株取引を始め,デイトレーダーとして株式の売買を繰り返すことにより,取引開始から2年3か月後に証券口座残高が3億円を超えるに至った経緯が,著者の私生活上のエピソード等や感想等を交えた口語体のエッセイ形式で記載されている。また,第2章以降には,著者の株取引に対する考え方,取引銘柄の選び方,株取引に関わる情報の読み方・解釈の仕方・その具体的活用方法等が,著者の哲学の紹介(第2 章),著者の一日の株取引の実況中継(第5章),対談(第7章)などの形式で記載されている。 (ウ) 以上によれば,本件書籍は,株取引のエッセイ部分や漫画,対談等,読み物としての要素を含むものであり,かつ,著者の経験に基づくものとして,株取引の手法等について紹介するものであるということができるから,このような点において,上記ウでみた,本件表示1及び2から受ける需要者の本件書籍の内容についての認識と,本件書籍の内容に齟齬はないものと認められる。 オ(ア) 次に,本件書籍の品質と需要者の認識との間の齟齬の有無について検討する。 (イ) 本件表示1及び2に接した需要者が,本件書籍を,著者が,その経 齬はないものと認められる。 オ(ア) 次に,本件書籍の品質と需要者の認識との間の齟齬の有無について検討する。 (イ) 本件表示1及び2に接した需要者が,本件書籍を,著者が,その経験に基づき,取引手法を紹介するものであると認識する蓋然性が高いことは上記ウ(イ)でみたとおりであるところ,書籍において,その内容が著者の経験した事実に基づくものであるか否かという点は,その品質に関する認識を構成するものであるとみることができる。 ただし,上記ウ(ウ)でみたとおり,本件表示1及び2に接した需要者は,本件書籍について,その全部が著者の経験した事実に基づいてありのままに記載されたものであるとまで認識するものとは解されないのであるから,本件書籍が,本件表示1及び2において強調されている点について,著者の経験に基づいて記載されたものであれば,本件書籍の品質と本件表示1及び2から生じる需要者の認識に齟齬はなく,本件表示1及び2が品質等誤認表示に該当するとは評価されないものとみるのが相当である。 (ウ)a そこで検討すると,被告Cの楽天証券における平成16年及び平成17年分特定口座年間取引報告書(乙11,12)によれば,被告Cは,株取引により,平成16年において1億2469万0569円 の(乙11),平成17年において1億7786万5917円の(乙12)取引差益金を得たものであること及び被告Cが平成17年6月当時22歳であったことが認められる。 b 上記取引差益金を得た経緯につき,被告らは,被告Cが,当初,その母親名義口座で取引を行い,上記口座で得た差益金4600万円を平成16年7月に被告C名義口座に移し,その後,平成17年6月に資産3億円以上を達成したものであると主張しているところ,被告Cの ,その母親名義口座で取引を行い,上記口座で得た差益金4600万円を平成16年7月に被告C名義口座に移し,その後,平成17年6月に資産3億円以上を達成したものであると主張しているところ,被告Cの母親名義口座(なお,乙10,13及び15の1~5の口座名義人は,被告Cの母親であると認められる。)において,平成14年4月9日に23万円が入金されて取引が開始され,平成15年2ないし3月時点において資産残高が30万円程度となった後,平成16年7月20日に同口座の残高の全額である4959万2054円が出金され(乙13,15の3・4),翌21日,被告C名義口座に4600万円が入金されていること(乙14,16の2・3)や,被告Cの資産推移一覧表において,平成17年6月時点の資産残高が3億1941万2836円であること(乙16の3)は,上記主張を裏付けるものであるということができる。 (エ) この点に関し,原告は,乙10ないし16号証(枝番を含む。)はいずれも偽造されたものであるから,これらの証拠から上記事実を認定することはできないと主張するが,次のとおり採用できない。 a 乙10ないし12について乙10ないし12には,いずれも楽天証券の押印があるから,真正に成立したものと推定される(民訴法228条4項)。 これに対し原告は,楽天証券において,特定口座を開設するためには,その前に総合取引口座を開設していなければならず,かつ,乙11及び12には,被告Cの特定口座開設日は平成15年10月7日と 記載されているから,被告Cの総合取引口座開設日は同日より前であるとした上で,これにもかかわらず,乙16の2・3には,平成16年4月以降の資産推移しか表示されておらず,かつ,楽天証券においてこのような表示を選択することはできないの 引口座開設日は同日より前であるとした上で,これにもかかわらず,乙16の2・3には,平成16年4月以降の資産推移しか表示されておらず,かつ,楽天証券においてこのような表示を選択することはできないのであるから,乙11・12は乙16の2・3と矛盾するものであり,これらの証拠のいずれか又は両者が偽造されたものであると主張する。 しかし,被告ら訴訟代理人による楽天証券カスタマーサービスセンターに対する電話聴取書(乙17)によれば,楽天証券の顧客サイトにおける「資産残高の推移」は,口座開設後,入金がない期間については表示されず,入金があった月から表示が開始されるというのであり,上記説明に従えば,乙16の2・3に不自然な点は見当たらない。 原告は,上記電話聴取書は楽天証券における資産推移表示が被告らの主張するとおりのものであることを裏付ける証拠として不十分であると主張するが,楽天証券における取扱いが上記と異なるものであることを積極的に指摘するものではなく,採用できない。 また,原告は,乙10ないし12に押捺されている楽天証券の印影と,原告が楽天証券から送付を受けた特定口座取引報告書に押捺されていた楽天証券の印影とを重ね合わせても完全に一致しないから,乙10ないし12の印影は偽造されたものである旨も主張する。 しかし,そもそも,楽天証券において用いられている印鑑が,時期・対象者にかかわらず1個のみであるか否かが不明である上,原告の指摘する印影のずれは,ごくわずかなものにとどまるところ(甲76),原告は,乙10ないし12の原本ではなく,本件訴訟において被告らから受領した乙号証副本を上記重ね合わせのために用いたものと解されるのであって,上記程度のずれが写しの作成時に生じることも十分に考えられるのであるから,原告の指摘す ではなく,本件訴訟において被告らから受領した乙号証副本を上記重ね合わせのために用いたものと解されるのであって,上記程度のずれが写しの作成時に生じることも十分に考えられるのであるから,原告の指摘する点は,乙10ない し12に押捺された印影が偽造されたものであることを認めるに足りるものではない。 以上によれば,原告の主張は,乙10ないし12が真正に成立したものであることを疑わせるに足りるものではないというべきである。 b そのほか,原告は,乙15の4と乙15の5において数字体のにじみの有無等に差異があることや,乙15の4・5と原告の資産推移一覧の画面を印刷したものを対比すると,背景の写り方に差異があることなども挙げるが,いずれも,対比の対象として,乙号証の副本を用いるものであって,印刷機の違い又は印刷状態の違い等に起因する差異である可能性が考えられるものであり,偽造を疑わせるに足りない。 郵送の際の折り目の有無に関する点についても,楽天証券において,特定口座年間取引報告書が常に三つ折りで郵送されるものであるという前提自体を認めるに足りず,採用できない。 c その他の点は,単に,偽造が容易であるとして偽造の可能性を指摘するにとどまるものであり,具体的に偽造の事実を疑わせるに足りるものではない。 d したがって,原告の上記主張はいずれも採用できず,乙10ないし16号証(枝番を含む。)によってオ(ウ)でみた事実を認定することを妨げるものではない。 (オ) また,原告は,本件書籍に記載された被告Cの取引経過のうち,初期段階に事実とは異なる部分があるから,取引経過全体についても虚偽の創作であることが疑われるとも主張する。 確かに,本件書籍には,被告Cが株式投資を始めた時期につき,20 Cの取引経過のうち,初期段階に事実とは異なる部分があるから,取引経過全体についても虚偽の創作であることが疑われるとも主張する。 確かに,本件書籍には,被告Cが株式投資を始めた時期につき,2003年(平成15年)との記載があり(甲15・14頁),上記(ウ)bでみた,実際の取引開始時期(母親名義で平成14年4月に取引を始めたこと)とは異なる時期を記載した部分があるものと認められる。 しかし,被告らは,本件書籍において,上記のとおり一部において事実と異なる記載がされていることは,被告Cが取引開始当時未成年者であり,かつ,母親名義口座を用いて取引を行っていたことを本件書籍に記載することが適切ではないとの判断によるものであると主張し,取引の具体的経過は上記(ウ)bのとおりであると主張した上で,上記主張に沿う内容の証拠(乙10,13,14,15の1~5,16の1~3)を提出しているのであるから,原告の指摘する点は,被告Cが株取引により3億円の差益金を得たことを疑わせるものではないというべきである。 (カ) さらに,原告は,仮に乙10ないし16(枝番を含む。)が偽造されたものではないとしても,被告Cの母親名義口座における取引が被告Cによってなされたものであることは何ら立証されていないとも主張する。 しかし,本件表示1及び2に接した本件書籍の需要者の認識が,本件表示1及び2において強調されている点については著者の経験に基づくものであろうというものにとどまると解されることは前記ウでみたとおりである。そして,前記イでみた本件表示1及び2の表示態様に照らし,本件表示1及び2において,需要者に最も強い印象を与えるのは,著者が大学生のときに株取引で3億円を得たという点であると解されるところ,上記オ(ウ)aでみたとおり,被告Cが,大 2の表示態様に照らし,本件表示1及び2において,需要者に最も強い印象を与えるのは,著者が大学生のときに株取引で3億円を得たという点であると解されるところ,上記オ(ウ)aでみたとおり,被告Cが,大学生に相当する年齢のときに,株取引により,平成16年及び平成17年の2年間で合計3億円を超える差益金を得たことが認められる以上,上記差益金を得るに至った経緯が被告の主張するとおりのものであるか否かにより,本件表示の品質等誤認表示該当性に関する結論が左右されるものではないというべきである。 (キ) その他,原告は,原告が被告Cの実績又は属性が虚偽であることを 裏付けるものとして種々の点を主張するが,いずれも,上記証拠によって認められる被告Cの属性及び実績を疑わせるに足りるものではない。 (ク) 以上によれば,本件書籍のうち,本件表示1及び2において強調されている点については,著者の経験に基づいているものであると評価することができ,上記の点において,上記オ(イ)でみた需要者の認識と本件書籍の品質との間に齟齬があるものとは認められない。 カしたがって,本件表示1及び2が品質等誤認表示に該当するものとは認められない。 (2) 本件表示3についてア前記(1)アでみた不競法2条1項13号の趣旨に照らし,同号にいう「商品…に表示をし」とは,商品等のうち,取引過程において需要者が商品の購入又は役務の利用等の判断に当たり通常接する部分に表示されていることを要するものと解されるところ,本件表示3は,いずれも本件書籍の本文中の記載であり,かつ,その大半が,本件書籍中の「第1章」(前記(1)エ(イ)b)に含まれるものであることが認められる(甲15)。 イ書籍の需要者が書籍の購入を検討するに当たり,書籍の本文の内容をすべて読むことが通常 その大半が,本件書籍中の「第1章」(前記(1)エ(イ)b)に含まれるものであることが認められる(甲15)。 イ書籍の需要者が書籍の購入を検討するに当たり,書籍の本文の内容をすべて読むことが通常であるとは考え難い上,本件書籍が全207頁からなるものであり(前記エ(イ)a),「第1章」が,株式の取引手法と直接関係のないエッセイ形式の読み物部分であることも考慮すれば,本件書籍の需要者において,本件表示3に接した上で本件書籍の購入を検討することが一般的であるといえるかについては疑問がないではない。 しかし,書籍の場合には,書籍の品質及び内容そのものを形成するその本文の記載が,書店の店頭等において,断片的に拾い読みされることがあることは公知の事実であり,それが書籍の品質及び内容を形成する本文全体の記載の一部としてその品質及び内容を表示するものとして受け取られることもあり得ることであるから,原告が本件表示3として主張する内容 が,本件書籍の品質及び内容を誤認させる表示といえるかについて検討する。 ウ本件表示3は,原告が①,②として整理しているとおり,①被告Cがいかに平凡な大学生であるかについて,また,②2年3か月という短期間で30万円を3億円にしたという実績について記載したものである。 本件書籍の需要者が,本件書籍の全部が著者の経験した事実に基づいて記載されたものであるとまで認識するものとは解されないことは前記(1)でみたとおりであるから,書籍本文中の記載である本件表示3についても,全体としてその主要な点が事実に基づくものであれば,本件書籍の品質又は内容を誤認させるものに当たらないというべきである。 そして,前記(1)オのとおり,被告Cが,大学生に相当する年齢のときに,株取引により,平成16年及び平成17年の2年間 ば,本件書籍の品質又は内容を誤認させるものに当たらないというべきである。 そして,前記(1)オのとおり,被告Cが,大学生に相当する年齢のときに,株取引により,平成16年及び平成17年の2年間で合計3億円を超える差益金を得たことが認められる以上,本件表示3に記載された内容についても,全体として事実と大きく異なるものではないことがうかがわれるのであるから,本件表示3が,本件書籍の品質及び内容を誤認させるものとは認められない。 エ以上によれば,本件表示3が本件書籍の品質及び内容を誤認させる表示(不競法2条1項13号)に該当するものとは認められない。 (3) 原告の検証及び調査嘱託の各申立てについてア原告は,本件書籍の本文中における矛盾点として原告が指摘した点に関する被告らの釈明事項が真実であるか否かを確認するためには,被告C及びその母親の楽天証券における口座を検証することが必要であり,また,被告Cが母親名義口座から運用益を引き出して被告C名義口座に移動したことに関し,税務署に相談した上で適法に行っている旨の主張をしているのであるから,被告Cの住所地を管轄する税務署に対し,被告C及びその母親の株式等譲渡所得額,上記譲渡所得に係る納税額等の調査嘱託を求め る必要があるとして,検証及び調査嘱託を申し立てる。 イしかし,本件表示に接した本件書籍の需要者の認識に照らし,本件表示の品質等誤認表示該当性を判断するに当たって,本件書籍の本文中の記載がすべて事実に基づくものであるか否かを検討することまでを要しないことは前記(1)及び(2)でみたとおりである。 そうすると,原告が,その真実性を確認する必要があると主張する点は,いずれも,本件書籍の本文中に記載されている事項にとどまるものであるから,これらの (1)及び(2)でみたとおりである。 そうすると,原告が,その真実性を確認する必要があると主張する点は,いずれも,本件書籍の本文中に記載されている事項にとどまるものであるから,これらの点の確認のため,検証及び調査嘱託を実施する必要性があるものとは認められない。また,前記(1)オでみたとおり,被告の提出した証拠(乙10~16〔枝番を含む。〕)により,本件書籍が,本件表示から生じる需要者の認識と合致する程度のものであると認められる以上,この点の判断のため,原告の主張する検証及び調査嘱託を実施する必要性があるものとも認められない。 ウしたがって,原告の検証及び調査嘱託の申立ては,いずれも必要性が認められないため却下する。 2 争点(2)(本件書籍の出版が独禁法2条9項の不公正な取引方法に該当し,不法行為を構成するか。)争点(1)でみたところによれば,本件表示が被告Cの実績を偽装したものとは認められないから,その余の点について検討するまでもなく,本件書籍の出版が独禁法2条9項の不公正な取引方法に該当し不法行為を構成するものとは認められない。 3 小括以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないことに帰着する。 第5 結論したがって,原告の被告らに対する請求をいずれも棄却することとし,主文 のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官西村康夫 裁判官森川さつき 康夫 裁判官森川さつき
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