平成16(わ)394 殺人,死体損壊,死体遺棄被告

裁判年月日・裁判所
平成17年3月16日 甲府地方裁判所
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判決文本文5,566 文字)

出席検察官倉持俊宏同弁護人被告人Aにつき国選弁護人松本成輔被告人Bにつき国選弁護人吉澤宏治 主文 被告人Aを懲役13年に,被告人Bを懲役1年にそれぞれ処する。 被告人らに対し,未決勾留日数中各100日を,それぞれその刑に算入する。 被告人Bに対し,この裁判が確定した日から3年間,その刑の執行を猶予する。 理由 (犯罪事実)第1 被告人Aは,平成16年7月27日午前6時30分ころ,東京都葛飾区ab丁目c番d号Ce号室において,殺意をもって,D(当時61歳)の頭部をガラス製のビールジョッキやガラス製の灰皿で多数回殴打し,さらに,包丁で同人の頸部を切るなどし,よって,そのころ同所において,同人を左頭頂骨陥没骨折による硬膜外出血等により死亡させて殺害した第2 被告人Aは,平成16年7月28日ころ,東京都葛飾区ab丁目c番d号Ce号室において,包丁等を用いてD(当時61歳)の死体の頸部,両肩関節部,両股関節部を切断し,同月29日ころ,同所から上記死体を普通乗用自動車に積載して走行し,東京都立川市f町g丁目h番所在の駐車場に至り,同所付近において,被告人両名は共謀の上,同所から更に上記死体を積載した上記普通乗用自動車を走行させ,同月30日ころ,上記死体の両下肢を山梨県塩山市ij番地klm地内に,同両上肢を同市in番地olp地内に,同胴体部を同市qr番地s西方約200メートル先国道t号線南側斜面にそれぞれ投棄し,同所から上記死体の頭部を積載した上記普通乗用自動車を走行させて,東京都葛飾区ab丁目u番所在の駐車場に至り,同所におい 部を同市qr番地s西方約200メートル先国道t号線南側斜面にそれぞれ投棄し,同所から上記死体の頭部を積載した上記普通乗用自動車を走行させて,東京都葛飾区ab丁目u番所在の駐車場に至り,同所において,上記死体の頭部を普通貨物自動車に積み替えた上,同年8月4日ころ,同所から上記普通貨物自動車を走行させ,千葉県千葉市v区w町x番yの笹やぶ内において,同所に穴を掘り,上記死体の頭部を同所に埋没し,もって死体を損壊,遺棄したものである。 (法令の適用) 1 被告人Aについて被告人Aの判示第1の所為は,行為時においては平成16年法律第156号(刑法等の一部を改正する法律)による改正前の刑法199条(有期懲役刑の長期はその改正前の刑法12条1項による。)に,裁判時においてはその改正後の刑法199条(有期懲役刑の長期はその改正後の刑法12条1項による。)に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから,刑法6条,10条により軽い行為時法の刑によることとし,判示第2の所為は包括して刑法60条,190条にそれぞれ該当するところ,判示第1の罪について所定刑中有期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役13年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中100日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して同被告人に負担させないこととする。 2 被告人Bについて被告人Bの判示所為は,刑法60条,190条に該当するので,その所定刑期の範囲内で同被告人を懲役1年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中100日をその刑に算入し,情状により同法25条1項を 被告人Bの判示所為は,刑法60条,190条に該当するので,その所定刑期の範囲内で同被告人を懲役1年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中100日をその刑に算入し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して同被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 1 本件は,被告人A(以下「被告人A」という。)が,借家の賃料の支払い等をめぐり,同居していた被害者の態度に激高し,その頭部をビールジョッキ等で殴打するなどして被害者を殺害したという殺人の事案(判示第1)と,被告人Aが被害者の死体を包丁等でバラバラに切断した上,長女である被告人B(以下「被告人B」という。)とともに死体を遺棄したという死体損壊・死体遺棄(判示第2)の各事案である。 2 犯行に至る経緯は以下のとおりである。 ・被告人Aは,以前勤務していた住宅リフォーム会社で被害者と寮生活を共にしたことが縁で,同社を退職した被害者が判示のCe号室(以下「被害者方」という。)を借りる際の保証人となり,同被告人が同社を退職後,被害者を頼って被害者方に居住し,同人と共に屋根瓦修理業を営むようになった。しかし,被害者と仕事の方針が合わなかったこと,被害者が積極的に営業活動をしないことや,仕事の上では対等な立場のはずなのに作業の際自分を被害者の従業員のように扱うことなど,被害者の仕事に対する姿勢や被告人Aに対する態度に対して次第に不満を抱くようになり,被害者の世話になっているという負い目から我慢していたものの,日々憤懣を蓄積させていった。 ・そのような状況下で,被告人Aは,平成16年7月27日の午前6時ころ,外出先から被害者方に戻り,台所でガラス製ビールジョッキに麦茶を入れて飲んでいたが, ものの,日々憤懣を蓄積させていった。 ・そのような状況下で,被告人Aは,平成16年7月27日の午前6時ころ,外出先から被害者方に戻り,台所でガラス製ビールジョッキに麦茶を入れて飲んでいたが,被害者が起床してきたので,いつもどおり被害者と当日の予定等仕事の話を始めた。被告人Aと被害者は,被害者方の契約更新に必要な家賃に充当するため金を貯めておき,今回は同月25日までに来月分の契約更新と家賃の支払いをする段取りになっていたところ,8月の契約更新が未了であったことから,被告人Aがこの点について問いただしたところ,被害者は曖昧な返答を繰り返し,家賃のための資金を勝手に費消したとほのめかすような発言をした。これを聞いた被告人Aは,被害者に裏切られた,このままでは部屋を追い出されて住む場所がなくなるなどという思いが込み上げてきて立腹し,激しく罵しるなどして被害者と喧嘩になった。 ・被告人Aは,被害者と揉み合い素手で殴るなどして争っていたが,被害者が台所にあった包丁を右手に持って同被告人に「刺すぞ。」などと罵声を浴びせたことから,被害者の態度に激高するとともに,ここで被害者の命を奪わなければ自分が殺されると考えて被害者の殺害を決意し,背後から被害者を襲い,判示のとおりの殺害行為に及んだ。 ・被告人Aは,被害者を殺害後,自己の犯行を隠蔽することとし,血痕で汚れた室内を清掃するなどしたほか,翌28日ころ,運搬を容易にするため被害者の死体をバラバラに切断する損壊行為に及び,さらに, 翌29日ころ,大阪にいる長女の被告人Bに電話をし,事情を説明した上で,死体遺棄の手伝いを依頼した。これを聞いた被告人Bは,当初自首を勧めるつもりで被告人Aと落ち合ったが,父親である被告人Aから人生を終わらせたくないなどと懇願されたり,被告人Bが無理 を説明した上で,死体遺棄の手伝いを依頼した。これを聞いた被告人Bは,当初自首を勧めるつもりで被告人Aと落ち合ったが,父親である被告人Aから人生を終わらせたくないなどと懇願されたり,被告人Bが無理なら被告人Bの弟に頼む旨ほのめかされたりしているうちに,困りきっている父親の力になりたい,弟を巻き込むわけにはいかないと考えるようになり,ついに断り切れずに死体の遺棄を手伝うことにした。 3 被告人Aの情状について・以上の経緯によれば,確かに,契約更新に関する被害者の曖昧な言動が被害者との争いのきっかけであり,被害者が包丁を手にしたのを見て生命の危険を感じたことが殺害に至るきっかけであったとはいえ,従前から蓄積されてきた被害者の態度等に対する一方的な憤懣が本件犯行の背景にあり,この憤懣があいまって激情のあまり被害者を殺害した挙げ句,自分の人生を終わりにしたくないという身勝手な理由から,死体をバラバラにして投棄するなどという行為に及んだものであって,短絡的かつ自己中心的な犯行であるとの非難を免れることはできない。 また,最初に包丁を持ち出したのは被害者であるとしても,ガラス製ビールジョッキで被害者の頭部を多数回殴打し,被害者の手から包丁が離れた後も,なおも同様の殴打を続け,ビールジョッキが割れると今度はガラス製灰皿を用いて被害者の頭部を殴打し続けた挙げ句,既にこれまでの攻撃で衰弱して無抵抗の状態にあった被害者の頸部を包丁で切り付けて大量に出血させたものであって,その殺害行為は執拗で残虐かつ非道であり,あまりに人命を軽視しているといわなければならず ,極めて卑劣で悪質な犯行というほかない。殺害後も,被害者の死体を包丁や金切ばさみ等を用いて ,頚部,両肩関節部,両股関節部でバラバラに切断するという鬼気迫る ばならず ,極めて卑劣で悪質な犯行というほかない。殺害後も,被害者の死体を包丁や金切ばさみ等を用いて ,頚部,両肩関節部,両股関節部でバラバラに切断するという鬼気迫る行動に出た上,頭部,両上下肢,胴体部を別々に山中に投棄したり土の中に埋めるなど死体を冒とくする行為に及んでいるもので,その一連の行動には改悛の情は一片たりとも認めることはできず,人倫にもとる許し難い犯行といわなければならない。しかも,死体遺棄の手伝いを被告人Bに依頼し犯行に加担させているのであって,当初は父親のために自首を勧めていた実の娘をこのような犯罪に巻き込んだという点においても,非常に罪深いものといわなければならない。 もとより,被害者に殺害されるほどの落ち度は全くなく,61歳という年齢で,それまで共に居住し仕事をしてきた被告人Aの手によって生命を絶たれたのであって,その際の激しい肉体的苦痛はいうまでもなく,殺害されるまさにその瞬間に胸に去来したであろう無念さは察するに余りある。のみならず,殺害された後も,バラバラに切断された上,無惨な姿で遺棄されたのであって,哀れというほかはなく,本件犯行の結果は,誠に重大である。長年音信不通であった夫や父親がこのような形で非業の死を遂げたことを知らされた被害者の遺族の衝撃も想像するに難くなく,いまだ何ら慰藉の措置も講じられていない。 しかも,突如山中からバラバラに切断された死体が発見されたことで,近隣住民が不安感,恐怖感を覚えたであろうことは想像に難くなく,本件が地域社会に及ぼした影響も看過することはできない。 したがって,被告人Aの刑事責任は誠に重大である。 ・他方,殺人の事案は,契約更新に関する被害者の曖昧な言動に立腹して被害者と争いになる中で,被害者が先に も看過することはできない。 したがって,被告人Aの刑事責任は誠に重大である。 ・他方,殺人の事案は,契約更新に関する被害者の曖昧な言動に立腹して被害者と争いになる中で,被害者が先に包丁を手にしたのを見て身の危険を感じたことから ,激情に駆られて一気に行動をエスカレートさせてしまったものであって,被害者の前記の言動が犯行を誘発したという側面を否定することができず ,動機に同情の余地があること, 被告人Aの実子と知人が情状証人として出廷し,同被告人の帰りを待つ旨述べていること,被告人Aは,当公判廷において本件各犯行を素直に認めて反省の態度と被害者に対する謝罪の気持ちを示していること,被告人Aには前科がないこと,その他被告人Aの年齢など,同被告人にとって酌むべき事情も認められる。 4 被告人Bの情状について本件の死体遺棄の犯情が悪質であることは先に指摘したとおりであるが,被告人Bは,実の父親の頼みとはいえ,このような悪質な犯行に加担したものであるから,規範意識が鈍麻していたとの非難を免れず, その刑事責任は決して軽いものではない。 しかしながら,他方,当初は自首を勧めるつもりで大阪から被告人Aに会いに行き,懸命に自首を勧めるも父親である被告人Aから懇願されるうちに父親の力になりたいなどと考え,法律と肉親の情との狭間で葛藤した末犯行に及んだものであって,本件犯行について積極的な関与の意欲もなければ自己固有の利益も利欲的動機もないこと,終始父親である被告人Aの指示に従いながら運転の一部や見張りを分担したものにすぎず,従属的な立場で本件犯行に関与したものであること,被告人Bの交際相手が情状証人として出廷 益も利欲的動機もないこと,終始父親である被告人Aの指示に従いながら運転の一部や見張りを分担したものにすぎず,従属的な立場で本件犯行に関与したものであること,被告人Bの交際相手が情状証人として出廷し,同被告人の帰りを待つとともに同被告人と結婚して支えていく旨述べていること,被告人Bは,当公判廷において,本件犯行を素直に認めて真摯に反省し,悔悛の情が顕著であること,被告人Bには前科がないこと,その他被告人Bの年齢など,同被告人にとって酌むべき事情も認められる。 5 そこで,当裁判所は,これらの被告人らにとって有利,不利な一切の諸事情を総合考慮し,主文のとおりの刑を量定した次第である。 (求刑被告人Aにつき懲役16年,被告人Bにつき懲役1年)平成17年3月16日甲府地方裁判所刑事部裁判長裁判官川島利夫裁判官柴田誠裁判官肥田薫

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