平成3(オ)1380 持分権確認並びに共有物分割

裁判年月日・裁判所
平成8年10月31日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 広島高等裁判所 平成1(ネ)358
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判決文本文3,488 文字)

主文 原判決中、共有物分割請求に関する部分を破棄する。 前項の部分につき本件を広島高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人川岸伸隆の上告理由について一原審の確定した事実関係の概要及び記録によって認められる本件訴訟の経過等は、次のとおりである。 1 亡D、亡E夫婦の長女である上告人A、その夫であり同夫婦の養子であるF及び二女であるG(承継前の被上告人。以下「G」という。)の三名は、昭和四〇年七月八日、H信用組合から原判決添付物件目録記載の各不動産(以下「本件不動産」という。)を持分各三分の一の割合で買い受けた。本件不動産は、かつて亡D及びその先代が所有していたものであり、一時H信用組合に所有権が移転していたのを、右三名が共同して買い戻したものであった。 2 Fは、昭和六一年一一月三日に死亡し、同人の右持分は、上告人A及び子であるその余の上告人らがそれぞれ法定相続分に従って取得した。その結果、本件不動産についての共有持分は、上告人Aが一八分の九、その余の上告人らが各一八分の一、Gが一八分の六となった。 3 本件不動産のうち原判決添付物件目録記載一ないし三の土地上には、ほぼ一杯に同目録記載四の建物(以下「本件建物」という。)が存在しており、しかも、本件建物は、構造上一体を成していることから、上告人らとGの持分に応じた区分所有とすることができず、したがって、本件不動産を現物分割することは不可能である。 4 Gは、昭和四八年以来、本件建物に居住し、本件建物に接する平家建ての建物において薬局を営み、その営業収入によって生活してきたが、そのことについて- 1 -は、上告人らとの間に特段の争いもなく推移してきた。他方、上告人らは、それぞれ別に居住していて、必ずしも本件不動産を取得する必要 営み、その営業収入によって生活してきたが、そのことについて- 1 -は、上告人らとの間に特段の争いもなく推移してきた。他方、上告人らは、それぞれ別に居住していて、必ずしも本件不動産を取得する必要はない。 5 上告人らは、Gが本件不動産の分割協議に応じないため、本件不動産の共有物分割等を求める本件訴えを提起したものであるが、本件不動産の分割方法として、競売による分割を希望している。これに対し、Gは、自らが本件不動産を単独で取得し、上告人らに対してその持分の価格を賠償する方法(以下「全面的価格賠償の方法」という。)による分割を希望していた。 6 原審で実施された鑑定の結果によれば、本件不動産の評価額は合計八二六万三〇〇〇円であり、仮にこれを競売に付したとしても、これより高価に売却することができる可能性は低い。 二原審は、(1) 民法二五八条による共有物分割の方法として、全面的価格賠償の方法を採ることも許される旨を判示した上で、(2) 右一の事実関係等の下においては、本件不動産の分割方法として全面的価格賠償の方法を採用するのが相当であるとし、競売による分割を命じた第一審判決を変更して、本件不動産をGの単独所有とした上、Gに対して上告人らの持分の価格の賠償を命じた。所論は、原審の右(1)、(2)の判断に民法二五八条の解釈適用の誤りがあるというものである。 三そこで検討するに、原審の右(1)の判断は是認することができるが、右(2)の判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。 1 民法二五八条二項は、共有物分割の方法として、現物分割を原則としつつも、共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによって著しく価格を損じるおそれがあるときは、競売による分割をすることができる旨を規定している。ところで、この 割を原則としつつも、共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによって著しく価格を損じるおそれがあるときは、競売による分割をすることができる旨を規定している。ところで、この裁判所による共有物の分割は、民事訴訟上の訴えの手続により審理判断するものとされているが、その本質は非訟事件であって、法は、裁判所の適切な裁量権の行使により、共有者間の公平を保ちつつ、当該共有物の性- 2 -質や共有状態の実状に合った妥当な分割が実現されることを期したものと考えられる。したがって、右の規定は、すべての場合にその分割方法を現物分割又は競売による分割のみに限定し、他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されない。 そうすると、共有物分割の申立てを受けた裁判所としては、現物分割をするに当たって、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすることができる(最高裁昭和五九年(オ)第八〇五号同六二年四月二二日大法廷判決・民集四一巻三号四〇八頁参照)のみならず、当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許されるものというべきで は、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許されるものというべきである。 したがって、これと同旨の原審の前記(1)の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の前記大法廷判決は、価格賠償をもって現物分割の場合の過不足を調整することができる旨を判示しているにとどまり、右の判断はこれに抵触するものではない。この点に関する論旨は採用することができない。 2 次に、本件について全面的価格賠償の方法により共有物を分割することの許される特段の事情が存するか否かをみるに、本件不動産は、現物分割をすることが不可能であるところ、Gにとってはこれが生活の本拠であったものであり、他方、- 3 -上告人らは、それぞれ別に居住していて、必ずしも本件不動産を取得する必要はなく、本件不動産の分割方法として競売による分割を希望しているなど、前記一の事実関係等にかんがみると、本件不動産をGの取得としたことが相当でないとはいえない。 しかしながら、前記のとおり、全面的価格賠償の方法による共有物分割が許されるのは、これにより共有者間の実質的公平が害されない場合に限られるのであって、そのためには、賠償金の支払義務を負担する者にその支払能力があることを要するところ、原審で実施された鑑定の結果によれば、上告人らの持分の価格は合計五五〇万円余であるが、原審は、Gにその支払能力があった事実を何ら確定していない。 したがって、原審の認定した前記一の事実関係等をもってしては、いまだ本件について前記特段の事情の存在を認めることはできない。 そうすると、本件について、前記特段の事情の存在を認定することなく、全面的価格賠償による の認定した前記一の事実関係等をもってしては、いまだ本件について前記特段の事情の存在を認めることはできない。 そうすると、本件について、前記特段の事情の存在を認定することなく、全面的価格賠償による共有物分割の方法を採用し、本件不動産をGの単独所有とした上、Gに対して上告人らの持分の価格の賠償を命じた原判決には、法令の解釈適用の誤り、ひいては審理不尽、理由不備の違法があるというべきであり、この違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は右の趣旨をいうものとして理由があるから、原判決中、共有物分割請求に関する部分は破棄を免れず、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。 よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官遠藤光男裁判官小野幹雄裁判官高橋久子- 4 -裁判官井嶋一友裁判官藤井正雄- 5 -

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