平成30(行ヒ)139 固定資産価格審査申出棄却決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年7月16日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所 平成29(行コ)127
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判決文本文4,136 文字)

- 1 -平成30年(行ヒ)第139号固定資産価格審査申出棄却決定取消請求事件令和元年7月16日第三小法廷判決 主文 原判決を破棄する。 本件を東京高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人私市大介の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について 1 本件は,第1審判決別紙物件目録記載の鉄骨・鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付き9階建事務所(平成元年10月建築。以下「本件建物」という。)を所有している上告人が,東京都知事によって決定され固定資産課税台帳に登録された本件建物の平成24年度の価格を不服として東京都固定資産評価審査委員会(以下「本件委員会」という。)に対して審査の申出をしたところ,これを棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)を受けたため,被上告人を相手に,その取消しを求める事案である。 2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 本件建物の平成24年度の評価に適用される固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。平成26年総務省告示第217号による改正前のもの。 以下「平成24年度評価基準」という。)は,次のとおり定める。 ア家屋の評価は,木造家屋及び木造家屋以外の家屋(以下「非木造家屋」という。)の区分に従い,各個の家屋について評点数を付設し,当該評点数を評点1点当たりの価額に乗じて各個の家屋の価額を求める方法によるものとし(第2章第1節一),各個の家屋の評点数は,当該家屋の再建築費評点数を基礎とし,これに家屋の損耗の状況による減点補正率を乗じて付設するものとする(同二)。 イ非木造家屋の損耗の状況による減点補正率は,通常の維持管理を行うものと- は,当該家屋の再建築費評点数を基礎とし,これに家屋の損耗の状況による減点補正率を乗じて付設するものとする(同二)。 イ非木造家屋の損耗の状況による減点補正率は,通常の維持管理を行うものと- 2 -した場合において,その年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定められた経過年数に応ずる減点補正率(以下「経年減点補正率」という。)によるものとする(第2章第3節五)。 ウ在来分の非木造家屋(当該年度において新たに課税の対象となる非木造家屋以外の非木造家屋をいう。以下同じ。)に係る再建築費評点数は,原則として,基準年度の前年度における再建築費評点数に再建築費評点補正率を乗じて算出するものとする(第2章第3節四)。 (2) 在来分の非木造家屋である本件建物の再建築費評点数は,本件建物の建築当初の評価に適用される固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。平成2年自治省告示第203号による改正前のもの)により算出される再建築費評点数について,その後の基準年度ごとに再建築費評点補正率による補正をすることにより算出されることとなる。同固定資産評価基準は,鉄骨,鉄筋及びコンクリートの使用量が明確な建物の主体構造部の再建築費評点数につき,単位当たりの各標準評点数にそれぞれ実際の使用量を乗じて算出するものとする旨を定める(別表第12)。 (3) 東京都知事は,本件建物につき,平成24年度の価格を6億8802万8700円と決定し,これが固定資産課税台帳に登録された(以下,この価格を「本件登録価格」という。)。 (4) 上告人は,平成24年4月4日,本件委員会に対し,本件登録価格につき,経年減点補正率の適用に誤りがあるなどとして地方税法(平成26年法律第69号による改正前のもの。以下同じ。)432条1項の規定による審査の申出をし 4年4月4日,本件委員会に対し,本件登録価格につき,経年減点補正率の適用に誤りがあるなどとして地方税法(平成26年法律第69号による改正前のもの。以下同じ。)432条1項の規定による審査の申出をした。その際,上告人は,本件建物の再建築費評点数の算出の基礎とされた主体構造部の鉄筋及びコンクリートの使用量に誤りがあるとの主張をしていなかった。本件委員会は,平成27年2月24日,上記申出を棄却する旨の本件決定をした。 (5) 上告人は,本件決定のうち価格5億8711万5400円を超える部分の取消しを求めて本件訴えを提起したが,第1審で請求棄却の判決を受けた。上告人- 3 -は,同判決を不服として,控訴を提起するとともに,本件建物の再建築費評点数の算出の基礎とされた主体構造部の鉄筋及びコンクリートの使用量に誤りがある旨の主張の追加(以下「本件主張追加」という。)をし,これに伴い本件決定のうち価格5億4727万8800円を超える部分の取消しを求めるとして請求の趣旨の変更(以下「本件請求の趣旨変更」という。)をした。 3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,上告人の訴えのうち本件請求の趣旨変更に係る部分を却下し,その余の部分につき請求を棄却すべきものとした。 固定資産課税台帳に登録された価格を不服として固定資産評価審査委員会に審査の申出をした者(以下「審査申出人」という。)が,当該申出に対する同委員会の決定(以下「審査決定」という。)の取消訴訟において,同委員会による審査の際に主張しなかった事由を主張することは,同事由について審査を経ていない以上,そのことに正当な理由(行政事件訴訟法8条2項3号)があると認められる特別の事情がない限り,地方税法434条2項,行政事件訴訟法8条1項ただし書の趣旨に反し,許されないも いて審査を経ていない以上,そのことに正当な理由(行政事件訴訟法8条2項3号)があると認められる特別の事情がない限り,地方税法434条2項,行政事件訴訟法8条1項ただし書の趣旨に反し,許されないものと解するのが相当である。本件では,本件主張追加に係る事由について本件委員会の審査決定を経ないことにつき正当な理由があるとは認められないから,上告人の訴えのうち本件請求の趣旨変更に係る部分は,審査請求前置の要件を充足せず,不適法である。 そこで,上告人の訴えのうちその余の部分についてみると,本件登録価格は,平成24年度評価基準によって決定される価格を上回るものではないと認められ,本件登録価格の決定を違法ということはできないから,本件登録価格について不服があるとしてされた審査の申出を棄却する旨の本件決定は適法である。 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1) 固定資産税の納税者は,その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格(以下「登録価格」という。)に- 4 -不服がある場合には,固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができ(地方税法432条1項),同委員会に審査を申し出ることができる事項について不服がある固定資産税の納税者は,同委員会に対する審査の申出及び審査決定の取消訴訟によることによってのみ争うことができる(同法434条2項)とされている。 上記審査は,納税者の権利を保護するとともに,固定資産税の賦課に係る行政の適正な運営の確保を図る趣旨に出るものであり,同委員会が,職権により,審査に必要な資料の収集等をすることができるものとされていること(同法433条3項,11項,行政不服審査法(平成26年法律第68号による改正前のもの) る趣旨に出るものであり,同委員会が,職権により,審査に必要な資料の収集等をすることができるものとされていること(同法433条3項,11項,行政不服審査法(平成26年法律第68号による改正前のもの)27条,29条,30条)をも併せ考えると,同委員会は,審査申出人の主張しない事由についても審査の対象とすることができると解すべきである。そうすると,同委員会による審査の対象は,登録価格の適否を判断するのに必要な事項全般に及ぶというべきであり,審査決定の取消訴訟においては,同委員会による価格の認定の適否が問題となるのであって,当該価格の認定の違法性を基礎付ける具体的な主張は,単なる攻撃防御方法にすぎないから,審査申出人が審査の際に主張しなかった違法事由を同訴訟において主張することが,地方税法434条2項等の趣旨に反するものであるとはいえない。 (2) 以上によれば,審査申出人は,固定資産評価審査委員会による審査の際に主張しなかった事由であっても,審査決定の取消訴訟において,その違法性を基礎付ける事由として,これを主張することが許されるというべきである。 そして,上記(1)で説示したところに照らすと,審査申出人が審査決定のうち一定の価格を超える部分に限定してその取消しを求める場合であっても,これは,裁判所が当該固定資産の価格を認定して審査決定を取り消す場合における勝訴判決の上限を画する訴訟行為としての意味を持つにすぎないところ,本件請求の趣旨変更は,本件主張追加に伴って上記上限を変更するにとどまるものであって,これが許されないと解すべき事情は存しない。 5 ところが,原審は,本件訴えのうち本件請求の趣旨変更に係る部分を不適法- 5 -として却下するとともに,本件主張追加に係る事由によって,本件登録価格が平成24年度評価基準により決定さ い。 5 ところが,原審は,本件訴えのうち本件請求の趣旨変更に係る部分を不適法- 5 -として却下するとともに,本件主張追加に係る事由によって,本件登録価格が平成24年度評価基準により決定される本件建物の価格を上回ることとならないか否かについて審理判断することなく本件決定を適法としたものであり,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこれと同旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上記の点について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官宮崎裕子裁判官山崎敏充裁判官戸倉三郎裁判官林景一)

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