平成27年11月13日判決言渡平成26年(行ウ)第64号懲戒処分取消請求事件主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求大阪法務局長が平成25年10月7日付けで原告に対してした司法書士法47条2号の規定により同月8日から1か月の業務の停止に処する旨の処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,大阪司法書士会に所属する司法書士である原告が,大阪法務局長から,司法書士法47条2号の規定により,1か月の業務の停止に処する旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,本件処分が違法であるとして,被告に対し,本件処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め(1) 司法書士法(以下「法」という。)の定めア司法書士は,常に品位を保持し,業務に関する法令及び実務に精通して,公正かつ誠実にその業務を行わなければならない(2条)。 イ司法書士は,その所属する司法書士会及び日本司法書士会連合会(以下「連合会」という。)の会則を守らなければならない(23条)。 ウ司法書士が法又は法に基づく命令に違反したときは,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長(以下「法務局長等」という。)は,当該司法書士に対し,戒告(1号),2年以内の業務の停止(2号)又は業務の禁止(3号)の処分をすることができる(47条)。 (2) 司法書士法施行規則(以下「規則」という。)の定め ア司法書士は,他人をしてその業務を取り扱わせてはならない(24条)。 イ司法書士は,その業務の補助をさせるため補助者を置くことができる(25条1項)。 (3) 大阪司法書士会会則(以下「会則」という。)の定め(乙12)ア司法書士会員(大阪法務局の管轄区域 イ司法書士は,その業務の補助をさせるため補助者を置くことができる(25条1項)。 (3) 大阪司法書士会会則(以下「会則」という。)の定め(乙12)ア司法書士会員(大阪法務局の管轄区域内に事務所を有する司法書士である大阪司法書士会の会員をいう(5条2項)。以下同じ。)は,正当な事由がなければ,綱紀調査委員会の調査,委員会への出頭その他の指示及び参考人としての事情聴取を拒んではならない(53条)。 イ司法書士会員は,法律学その他必要な学術の研究及び実務の研鑽に努めるとともに,たえず人格の向上を図り,司法書士としての品位を保持しなければならない(90条1項)。 ウ司法書士会員は,公正かつ誠実にその業務を行わなければならない(同条2項)。 エ司法書士会員は,連合会,大阪司法書士会の会則,規則,規程及び支部規則を守り,総会の決議に従わねばならない(109条)。 (4) 大阪司法書士会司法書士執務規則(以下「執務規則」という。)の定め(乙14)ア当事者の本人確認及び意思確認並びに立会執務は,必ず司法書士が行わなければならない(60条1項)。 イ立会執務とは,利害関係にある当事者が出席している取引の場で,司法書士が当事者の意図する真正な登記実現のための諸条件(当事者,目的物件,登記の権利関係,登記申請意思等)について審査確認し,事件の内容を総合判断して登記手続を受任することによって,当該取引が進行,完結する場合の司法書士の提供する法的事務をいう(同条2項)。 (5) 大阪司法書士会司法書士相談実施規則(以下「相談実施規則」という。)の定め(甲7) ア司法書士会員が,相談事業(大阪司法書士会が実施し,又は各種自治体等他団体との契約に基づき相談員を派遣する,法3条1項各号に規定する事務に係る各種の相談事 という。)の定め(甲7) ア司法書士会員が,相談事業(大阪司法書士会が実施し,又は各種自治体等他団体との契約に基づき相談員を派遣する,法3条1項各号に規定する事務に係る各種の相談事業をいう(1条)。以下同じ。)において相談を担当しようとするときは,その者の申請により,大阪司法書士会に備え置く名簿(以下「相談員名簿」という。)に登録をしなければならない(5条1項)。 イ司法書士会員が法47条2号の懲戒処分(2年以内の業務の停止)を受けている場合は,相談員名簿に登録するには,その処分の期間が終了した日の翌日から2年が経過していなければならない(同条3項(1)⑤)。 2 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 (1) 原告は,大阪司法書士会に司法書士の登録(昭和63年1月11日大阪第○号)をし,肩書住所地に事務所を置いて司法書士業務を行う者である。 (甲1,乙26)(2)ア原告は,大阪市α区所在の土地の売買及び同土地に対する抵当権の設定(以下「本件取引」という。)について,売主A(以下「A」という。),買主兼根抵当権設定者株式会社B(以下「B」という。)及び根抵当権者C信用金庫(以下「C信金」という。)から,本件取引に係る所有権移転登記事務及び根抵当権設定登記事務を受任した。(甲3)イ本件取引に係る決済(契約当事者が一堂に介し,代金の支払及び登記関係書類の授受等を行うことをいう。以下同じ。)は,平成23年6月27日午後1時頃,C信金の店舗において行われた。当該決済に立ち会ったのは,原告ではなく,原告の補助者であるDであった。 (3) 大阪司法書士会会長(以下「会長」という。)は,原告が補助者に立会執務を行わせている疑いがあるとの報告を て行われた。当該決済に立ち会ったのは,原告ではなく,原告の補助者であるDであった。 (3) 大阪司法書士会会長(以下「会長」という。)は,原告が補助者に立会執務を行わせている疑いがあるとの報告を受けたため,原告に対する調査を 大阪司法書士会綱紀調査委員会(以下「綱紀調査委員会」という。)に付託した。(甲5)付託を受けた綱紀調査委員会は,原告に対し平成23年1月から同年9月までの事件簿及び立会記録(以下「事件簿等」という。)の提出を要請したほか,同年12月13日,原告に対する事情聴取(以下「本件事情聴取」という。)を実施するなどの調査を行った。(乙2,10)(4) 大阪司法書士会注意勧告小理事会(以下「小理事会」という。)は,上記調査の結果を受けて,平成24年8月10日,原告に対し,補助者に立会執務を行わせていた事実について注意を促すとともに,今後,同様の行為を行わないよう勧告する旨の決議をした。 会長は,平成24年11月1日付けで,原告に対し上記決議がされたことを告知した上,同年12月13日,大阪法務局長に対し,原告に対して上記注意勧告をした旨を報告するとともに,原告を1か月の業務の停止処分とすることが相当であり,その処分を求める旨の意見を示した。 (甲5,乙3)(5) 上記報告等を受けた大阪法務局長は,大阪法務局職員に命じて,平成25年5月23日,原告に対する口頭聴取(以下「本件口頭聴取」という。)を実施した。(乙4)大阪法務局長は,本件口頭聴取の結果等を踏まえ,原告に対する懲戒の手続を行うこととし,大阪法務局職員に命じて,同年9月10日,原告に対する聴聞を行った(以下「本件聴聞」という。)。(乙5~7)(6) 大阪法務局長は,同年10月7日付けで,下記ア及びイの事実等を認定した上で,当該各事実に係る原 に命じて,同年9月10日,原告に対する聴聞を行った(以下「本件聴聞」という。)。(乙5~7)(6) 大阪法務局長は,同年10月7日付けで,下記ア及びイの事実等を認定した上で,当該各事実に係る原告の行為は非違行為に当たり,司法書士制度に対する国民の信頼を損なうものであるとし,原告が本件口頭聴取において自己の見解に固執して大阪司法書士会の対応を非難したこと,同会が実施する研修を受講することについて消極的な態度を示したこと等の事情をも踏ま えれば,原告が大阪法務局の調査に協力していること,綱紀調査委員会の調査を拒否したことについて一応反省の態度を示していること等の有利な事情を斟酌しても,その責任は重いとして,原告に対し,法47条2号の規定により,同月8日から1か月間の業務停止に処する本件処分をした。(甲1,乙9)ア原告は,本件取引に係る登記事務を受任したにもかかわらず,本件取引の決済には自ら立ち会わず,代わりに補助者であるDを立ち会わせた。かかる行為は,規則24条,執務規則60条に違反し,したがって,法2条,23条のほか,会則90条,109条(それぞれ上記行為時に適用のあった大阪司法書士会会則89条,108条に相当)に違反するものである。 イ原告は,本件事情聴取において,補助者の立会いは認めたものの,その詳細については回答を拒否し,それまでの補助者立会いの有無等についても,原告が万難を排して立ち会い,日程調整ができないときは補助者が立ち会っているが,その件数等についてはいえないなどと述べた。また,原告は,綱紀調査委員会から求められた上記立会いに関する書類を提出しなかった。かかる行為は,いずれも会則53条に違反するものである。 (7) 本件処分に伴う業務停止の効力は,平成25年11月7日の経過により消滅した。(顕著な事 られた上記立会いに関する書類を提出しなかった。かかる行為は,いずれも会則53条に違反するものである。 (7) 本件処分に伴う業務停止の効力は,平成25年11月7日の経過により消滅した。(顕著な事実)(8) 申立人は,平成26年3月28日,本件訴えを提起した。(顕著な事実) 3 争点及び当事者の主張本件の争点は,①本件処分の取消訴訟に訴えの利益が認められるか,②本件取引の決済に補助者を立ち会わせた行為が規則24条(他人による業務取扱いの禁止),執務規則60条(司法書士以外の立会執務等の禁止)に違反し懲戒事由に該当するか,③綱紀調査委員会の調査に対する原告の対応が会則53条(調査受忍義務)に違反し懲戒事由に該当するか,④本件処分に裁量権の逸脱,濫用が認められるかである。 (1) 争点①(訴えの利益)について(原告の主張)本件処分に基づく業務停止の期間は,既に経過しているが,原告は,本件処分により,関係先の多くから取引を拒絶されるなど,業務に著しい制約を受け続けているのであるから,本件処分に伴う法的な不利益は,今なお残存しているというべきである。また,大阪司法書士会に司法書士の登録をした者は,法47条2号の懲戒処分(2年以内の業務の停止)を受けている場合,その処分の期間が終了した日の翌日から2年が経過していなければ,相談員名簿に登録することができず,その結果,相談事業において相談を担当することができないこととなる(相談実施規則5条1項,3項(1)⑤)。この点においても,本件処分に伴う法的な不利益は,今なお残存しているというべきである。したがって,本件処分の取消訴訟に訴えの利益が認められることは明らかである。 (被告の主張)原告が取消しを求めている本件処分の内容は,平成25年10月8日から1か月間の業務停 いうべきである。したがって,本件処分の取消訴訟に訴えの利益が認められることは明らかである。 (被告の主張)原告が取消しを求めている本件処分の内容は,平成25年10月8日から1か月間の業務停止処分であるところ,当該期間は既に経過しているから,本件処分の法的効果は失われているというべきである。 なお,原告が主張する,関係先の多くから取引を拒絶されるなどの業務上の制約は,本件処分がもたらす事実上の効果にすぎず,これをもって処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を認めることはできない。また,原告が主張する,本件処分の期間終了日の翌日から2年間,相談員名簿に登録することができず,相談事業において相談を担当することができないという制約は,法及び規則等が定める司法書士本来の業務に対するものではなく,大阪司法書士会が私的に行う相談業務の内部的な担当者になることができないという事実上のものにすぎない。関係法令をみても,上記相談業務の担当者となるべき地位を法的に保護する規定は存在しないし,上記相談業務の性 質等に鑑みても,これに携わる地位が法的に保護されているということはできない。 したがって,本件処分の取消しを求めなければ回復できない法律上の不利益が残存しているとはいえないから,本件処分の取消訴訟に訴えの利益は認められない。 (2) 争点②(補助者立会の懲戒事由該当性)について(原告の主張)本件取引の決済に補助者を立ち会わせた行為は,以下のとおり規則24条,執務規則60条のいずれにも違反せず,懲戒事由に該当しない。 ア規則24条(他人による業務取扱いの禁止)について規則24条は,司法書士は,他人をしてその業務を取り扱わせてはならないと定めるが,他方,規則25条1項は,司法書士は,その業務の補助をさせるため補助者を置 条(他人による業務取扱いの禁止)について規則24条は,司法書士は,他人をしてその業務を取り扱わせてはならないと定めるが,他方,規則25条1項は,司法書士は,その業務の補助をさせるため補助者を置くことができると定めている。上記両規定を合理的に解釈すれば,司法書士の業務のうち,国民の財産等を守るために重要で必要不可欠な行為は,司法書士自らが行うことを要するが,その余の補助的な業務については,司法書士の指導監督の下,補助者に行わせることが許されると解するのが相当である。 これを本件についてみれば,原告は,本件取引の決済に先立つ平成23年6月24日,Aの自宅を訪れ本人確認並びに本件取引に係る意思確認,書類確認を行い,同日,B担当者と面談して同様の確認を行い,また,C信金についても,電話で意思確認を行った上で,事前に書類確認を済ませていた。すなわち,本件取引当事者の財産等を守るために重要で必要不可欠な行為は,決済前に全て終了していたのであるから,本件取引の決済に立ち会う行為は,補助的な業務にすぎないというべきであって,これをDに行わせた行為が規則24条に違反しないことは明らかである。 イ執務規則60条(司法書士以外の立会執務等の禁止)について (ア) 執務規則60条は,司法書士以外の者が行う立会執務を一律に禁止するという点で,不動産取引の自由を不当に制限するものであり,その結果,不動産物権変動の対抗要件とされている不動産登記の遅滞を招き,取引当事者の財産権を危うくするものであるから,国民の財産権に合理性を欠く制約を加えるものとして憲法29条に違反するというべきである。また,規則25条が司法書士に補助者の利用を認めていることからすれば,補助者に立会執務を行わせることを事情の如何を問わずに禁止する執務規則60条は,規則25条に 法29条に違反するというべきである。また,規則25条が司法書士に補助者の利用を認めていることからすれば,補助者に立会執務を行わせることを事情の如何を問わずに禁止する執務規則60条は,規則25条にも違反するというべきである。加えて,執務規則60条にいう「立会執務」の意義は極めて不明確であるから,明確性の原則に照らしても,同条は,違憲無効であるというべきである。 以上のように,執務規則60条は,憲法29条及び規則25条に違反し無効であるから,本件取引の決済に補助者を立ち会わせた行為について,執務規則60条に違反し懲戒事由に該当すると解する余地はない。 (イ) 仮に,執務規則60条が無効でなかったとしても,本件取引の決済にDを立ち会わせた行為は,以下のとおり同条に違反せず,懲戒事由には該当しない。 執務規則60条は,司法書士が立会執務を受任していることを前提とする規定であると解されるところ,原告は本件取引について立会執務を受任していないから,本件取引の決済にDを立ち会わせた行為が同条に違反すると解する余地はない。すなわち,原告は,本件取引に関し,Bから立会執務を含む登記事務を受任したものの,決済日である平成23年6月27日に別件の立会執務が入ってしまい,本件取引の決済日を変更することもできなかったため,Bとの契約を変更して立会執務を受任の対象から外し,A及びC信金からも,立会執務は受任していなかったのであるから,原告の行為は執務規則60条に違反しない。 加えて,本件取引では,前記(ア)のとおり,事前に当事者の意思確認や書類確認を行っていたため,決済当日に「当事者の意図する真正な登記実現のための諸条件…について審査確認」をする必要はなかったのであるから,本件取引の決済に立ち会う行為は,立会執務には当たらない。 したがって 行っていたため,決済当日に「当事者の意図する真正な登記実現のための諸条件…について審査確認」をする必要はなかったのであるから,本件取引の決済に立ち会う行為は,立会執務には当たらない。 したがって,本件取引の決済に立ち会う行為は,執務規則60条の「立会執務」には当たらないから,本件取引の決済にDを立ち会わせた行為が同条に違反すると解する余地はない。 (被告の主張)本件取引の決済に補助者を立ち会わせた行為は,以下のとおり規則24条,執務規則60条の双方に違反し,懲戒事由に該当する。 ア規則24条(他人による業務取扱いの禁止)について司法書士は,他人をしてその業務を取り扱わせてはならず(規則24条),司法書士が行うべき業務は,必ず司法書士が行わなければならない。司法書士は,その業務を補助させるため補助者を置くことができるが(規則25条),補助者が行うことができるのは,司法書士の指導・監督により,司法書士としての判断を要しない業務のみである。そして,本件取引のような不動産の取引において,司法書士が当該不動産に係る登記事務を受任している場合,当該取引の決済に立ち会い,登記の手続に関する諸条件(人定質問,不動産の特定,既登記及び新たに申請すべき登記の権利関係の確認,登記申請意思の聴取・了得等)について審査し,事案の内容を総合判断して登記の申請を受託することにより,当該取引が完結することになる。 したがって,本件取引の決済に立ち会う業務は,補助者が単独で行うことが許されない司法書士が行うべき業務であることは明らかであるから,本件取引の決済にDを立ち会わせた行為は規則24条に違反する。 イ執務規則60条(司法書士以外の立会執務等の禁止)について(ア) 司法書士が取引の決済に立ち会い,登記の手続に関する諸条件を審 査すること 立ち会わせた行為は規則24条に違反する。 イ執務規則60条(司法書士以外の立会執務等の禁止)について(ア) 司法書士が取引の決済に立ち会い,登記の手続に関する諸条件を審 査することは,依頼者の利益に資するものであるから,立会執務を司法書士本人が行うよう定める執務規則60条の内容は適切かつ合理的なものであって,同規定が憲法29条及び規則25条に違反しないことは明らかである。 (イ) 執務規則60条は,立会執務は必ず司法書士が行わなければならないと定めているから,本件取引の決済にDを立ち会わせた原告の行為が同条に違反することは明らかである。 この点,原告は,本人尋問において,本件取引の契約当事者から立会執務を受任していなかったと供述をする。しかし,原告が,本件処分に関する手続においてこのような主張を一切していないこと,また,原告が,補助者であるDを決済に立ち会わせた上で,原告が本件取引の決済の場に到着するまで「時間を引き延ばしてほしい」旨指示をするなど,立会執務の受任を前提とした行動をとっていること等の事情に照らせば,原告の供述はおよそ信用することができない。原告がBから立会執務を受任していたことは,同社の代表者の陳述書(甲3)の記載に照らし明らかというべきである。 また,原告は,事前に当事者の意思確認や書類確認を行っていたため,本件取引の決済に立ち会う行為は,執務規則60条の「立会執務」には当たらないと主張する。しかし,同条は,司法書士自らが,決済の場において,不動産取引における登記の手続に関する諸条件が現実に具備されていることを確認することを求めているのであり,いかに取引前に準備をしていたとしても,決済の場に司法書士自らがいなければ立会執務を行ったことにはならないから,原告の主張は失当である。 (3) 争点③ いることを確認することを求めているのであり,いかに取引前に準備をしていたとしても,決済の場に司法書士自らがいなければ立会執務を行ったことにはならないから,原告の主張は失当である。 (3) 争点③(調査受忍義務違反に係る懲戒事由の有無)について(原告の主張)綱紀調査委員会の調査に対する原告の対応は,以下のとおり会則53条(調 査受忍義務)に違反せず,懲戒事由に該当しない。 ア原告は,補助者の立会いの詳細について,平成24年8月10日付けの回答書(以下「本件回答書」という。)で回答をしているから,本件事情聴取の際に回答を拒否したことにはならない。なお,本件事情聴取の際に,補助者の立会件数について「いえない」と述べた事実はあるが,これは,直ちに具体的かつ特定した数字を説明することはできないという趣旨の発言であり,回答を拒む趣旨の発言ではない。 イ原告は,確かに事件簿等の提出要請には応じなかったが,これには正当な理由がある。すなわち,原告は,事情聴取の席上で会長らに対し執務規則60条2項の趣旨を明確にするよう求めたが,合理的な回答を得られなかったことから,大阪司法書士会に対し不信感を抱いていたところ,原告が綱紀調査委員会委員長(以下「綱紀委員長」という。)に宛てて親展扱いで送付した信書(以下「本件信書」という。)について,大阪司法書士会事務局長(以下「事務局長」という。)が無断でこれを開披し,しかも事務局内において大声で読み上げるという不適切な行為を行ったことから,綱紀調査委員会に資料を提出した場合も同様の扱いを受け,原告独自のノウハウや依頼者の個人情報が外部に流出するのではないかと考え,事件簿等の提出要請に応じなかったのである。なお,原告は,情報管理を厳格に行う大阪法務局に対しては,事件簿等を含む全ての関係資料を提 のノウハウや依頼者の個人情報が外部に流出するのではないかと考え,事件簿等の提出要請に応じなかったのである。なお,原告は,情報管理を厳格に行う大阪法務局に対しては,事件簿等を含む全ての関係資料を提出している。 (被告の主張)綱紀調査委員会の調査に対する原告の対応は,以下のとおり会則53条(調査受忍義務)に違反し,懲戒事由に該当する。 ア原告は,本件事情聴取の際,本件取引における立会いについての回答を拒否している。なお,原告が後日提出した本件回答書(ただし,綱紀調査委員会に対して提出されたものではない。)には,「他の1件について補 助者立会となった旨を説明した。」(乙8の10枚目)との記載があるだけで,本件取引における立会いについての詳細(日時,場所,当事者等)は一切記載されていない。 イ原告が綱紀委員長に宛てて信書を送付した事実,及び事務局長がこれを無断で開披し読み上げた事実は知らない。仮にこのような事実が認められたとしても,事務局長は,綱紀調査委員会の業務に関して委員長に宛てて提出された文書を処理する権限を有しているのだから,原告が提出した文書に対する処理は適正なものである。したがって,上記事実は,原告が事件簿等の提出要請に応じなかったことを正当化する事情とはなり得ない。 (4) 争点④(裁量権の逸脱,濫用)について(原告の主張)大阪法務局長は,原告が本件口頭聴取において,大阪司法書士会が実施する講習を受講した際,講師が質問に対する回答をはぐらかしていたなどと述べたこと等の事情を殊更否定的にとらえ,一方で,原告が連合会の年次研修を受講していたことや,原告が自己に不利益となる事実を供述し,真摯な反省の態度を見せたこと等の事情を不当に軽視し,類似の事案との均衡を失する過度に重い本件処分をしている。 以上 が連合会の年次研修を受講していたことや,原告が自己に不利益となる事実を供述し,真摯な反省の態度を見せたこと等の事情を不当に軽視し,類似の事案との均衡を失する過度に重い本件処分をしている。 以上のように,大阪法務局長は,考慮すべき事項の選択及び考慮すべき程度の判断を誤り,その結果,比例原則及び平等原則に著しく反する本件処分をしたものであるから,本件処分は,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用してされたものとして違法というべきである。 (被告の主張)原告は,本件口頭聴取において大阪司法書士会の研修について消極的な発言をしており,実際の研修参加状況をみても,本件処分前の3年半の間,取得すべき単位を全く取得していないなど,研修に消極的な態度がうかがわれるから,原告が研修を受講することに対して消極的であったことは明らかで ある。 また,原告は,本件聴聞において「司法書士本人による立会いをやれという論理が私には理解できない」などと述べるなど,補助者に立会執務をさせたことについて自己を正当化する発言を繰り返しており,この点について反省をしていないことは明らかである。原告は,綱紀調査委員会の調査に協力しなかったことに限って反省の弁を述べているにすぎない。 大阪法務局長は,前記2(6)ア及びイの非違行為を認定した上で,原告が研修に消極的な態度を示していることや,原告が補助者に立会執務をさせたことを全く反省せず,改善の見込みがないなどを適正に考慮した上で,本件処分を行ったのであって,本件処分に社会通念上著しく妥当性を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる事情は存在しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(訴えの利益)について行政事件訴訟法9条1項は,「処分の取消しの訴え…は,当該処分…の取消しを求めるにつ し,又はこれを濫用したと認められる事情は存在しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(訴えの利益)について行政事件訴訟法9条1項は,「処分の取消しの訴え…は,当該処分…の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分…の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分…の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者も含む。)に限り,提起することができる。」と規定しており,処分について取消訴訟を提起することができるのは,その処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限られる旨規定している。 これを本件についてみると,前記前提となる事実⑺記載のとおり,本件処分の効果は,業務停止期間の終期である平成25年11月7日の経過をもって消滅したことが明らかである。そして,その他に,原告が本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有することを根拠づける事情は認められない。 したがって,原告が本件処分の取消しを求める訴えの利益は失われたというべきであるから,本件訴えは不適法である。 この点,原告は,本件処分により,関係先の多くから取引を拒絶されるなど, 自己の業務に著しい制約を受け続けているから,本件処分に伴う法的な不利益は,今なお残存していると主張する。しかしながら,このような制約は,本件処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであるから,これをもって原告が本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とすることはできない。 また,原告は,本件処分を受けたことにより,処分の期間が終了した日の翌日から2年間を経過しない間,相談員名簿に登録することができず,その結果,相談事業において相談を担当することができないから,本件処分に伴う法的な不利益は今なお残存していると主張する。 しかし の翌日から2年間を経過しない間,相談員名簿に登録することができず,その結果,相談事業において相談を担当することができないから,本件処分に伴う法的な不利益は今なお残存していると主張する。 しかしながら,大阪司法書士会は,その会則において,相談事業に関する事項を行うものとし(3条(5)),相談事業の実施運営に関して相談実施規則を定め,その中で,相談事業を担当することができる者を相談員名簿に登録された者に限った(5条1項)上,この相談員名簿に登録する要件を規定しているが(同条3項),会則及び相談実施規則は,法令の委任を受けて定められたものではなく,大阪司法書士会が定めた自律的規範であって,相談員及び相談員名簿制度も,相談事業の公共性及び社会的重要性に鑑み,あらかじめ不適格者を排除し,司法書士業務の適正と司法書士制度に対する信頼を確保するための自主的な措置であるというべきである。そうすると,本件処分の法的効果として,原告が司法書士として相談業務(法3条)を行うことができる法的地位を喪失することになるということはできない。なお,相談員名簿の登録については,原告が摘示する点を含め複数の要件が課されているため(相談実施規則5条3項(1)参照),本件処分を取り消したとしても,相談員名簿に登録できる地位が直ちに回復されるものではなく,さらに,相談員名簿に登録されたとしても,相談事業において相談を担当することが直ちに可能となるものではない(同規則5条4項,5項参照)のであるから,結局,本件処分を取り消すことで,相談事業の担当者となるべき地位が直ちに回復されることにはならず,そ のような観点からも,相談事業において相談を担当することができないことをもって,原告が本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とすることはでき ことにはならず,そ のような観点からも,相談事業において相談を担当することができないことをもって,原告が本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とすることはできない。 そして,その他に業務停止期間の経過によって本件処分の法的効果が失われた後も本件処分を受けたことを理由として法令上不利益な取扱いがされるなどの事情は認められない。 2 以上のとおり,本件訴えは不適法であり却下を免れないが,この点を措くとしても,以下のとおり,原告の請求は理由がない。 (1) 認定事実前記前提となる事実,証拠(後掲のほか,甲11,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア本件取引に関する経緯(ア) 原告は,平成23年6月上旬頃,Bから依頼を受け,本件取引に係る所有権移転登記事務及び根抵当権設定登記事務を受任した。 また,原告は,同じ頃,別件の不動産売買(以下「別件取引」という。)に係る所有権移転登記事務を受任した。なお,別件取引に係る抵当権設定登記事務は,原告ではなくE司法書士が受任していた。 (イ) ところが,その後,本件取引の決済と別件取引の決済が,いずれも同月27日月曜日午後1時頃に行われることとなったため,原告は,Bに対し,決済の時刻を午後2時頃に遅らせるか,午前中に変更するよう要請した。Bは,一旦これを了承したが,Aとの調整がうまくいかず,結局決済の時刻を変更することはできなかった。 そこで,原告は,Bから承諾を得た上で,別件取引の決済に立ち会った後,急ぎ本件取引の決済の場に駆けつけることとし,間に合わない場合には,原告の代わりに補助者であるDを本件取引の決済に立ち会わせることとした。また,決済の場で行うべき契約当事者の本人確認及び意 思確認並びに登記関係書類 つけることとし,間に合わない場合には,原告の代わりに補助者であるDを本件取引の決済に立ち会わせることとした。また,決済の場で行うべき契約当事者の本人確認及び意 思確認並びに登記関係書類の確認(以下,併せて「意思確認等」という。)については,事前に行っておくこととした。 (甲3)(ウ) 原告は,同月24日金曜日,Bの担当者と面談をして,本件取引について意思確認等を行った。また,Aとも面談をし,本件取引について意思確認等を行うとともに,同人から所有権移転登記事務を受任した。 さらに,同日から決済までの間に,C信金の担当者と面談をして,本件取引について意思確認等を行うとともに,同金庫から根抵当権設定登記事務を受任した。なお,原告は,A及びC信金に対しても,自ら決済に立ち会うことができない場合には,代わりにDを立ち会わせる旨伝えていた。 (甲2,3)(エ) 原告は,同月27日,大阪市β区所在のF銀行G支店を訪れ,午後1時から行われた別件取引の決済に立ち会った。 取引確認及び買主が売買代金を売主の預貯金口座へ送金したことの確認を終えた原告は,関係者に対し,本件取引の決済に立ち会うため,売買代金が買主の預貯金口座へ振り込まれたことの確認(以下「着金確認」という。)を補助者であるDに任せ,自らは中座したい旨申し出た。 しかし,その場に立ち会っていたE司法書士が,原告に対し着金確認が終わるまで立会いを継続するよう求めたため,これに応じ,結局,原告は本件取引の決済に立ち会うことができなかった。 (オ) 本件取引の決済は,同日午後1時頃から,大阪市γ区所在のC信金の店舗において,取引当事者であるB,C信金及び不動産仲介業者の各担当者並びにAの代理人であるHが参集して行われた。 Dは,原告の代わりに当該決裁に立ち会い,着金確認を行 ら,大阪市γ区所在のC信金の店舗において,取引当事者であるB,C信金及び不動産仲介業者の各担当者並びにAの代理人であるHが参集して行われた。 Dは,原告の代わりに当該決裁に立ち会い,着金確認を行った上で,本件取引に係る登記関係書類を受領した。なお,本件取引においては, 売買代金完済時に所有権を移転するとの合意がされていた。 (甲10)(カ) その後,原告は,B,A及びC信金を代理して,本件取引に係る所有権移転登記及び根抵当権設定登記を経由し,また,別件取引の当事者を代理して,別件取引に係る所有権移転登記を経由した。 イ綱紀調査委員会における調査(ア) E司法書士は,平成23年7月22日,大阪司法書士会に対し,原告が補助者に立会執務を行わせている疑いがある旨報告した。(乙1)(イ) 会長は,同年8月17日,原告に対する事情聴取を行った上で,綱紀調査委員会に対し,原告について「不動産取引において自ら立ち会わず,補助者に立会いを行わせている」事実の有無を調査するよう付託した。会長から付託を受けた綱紀調査委員会は,同月30日,原告に対し,綱紀調査委員会としての調査を開始する旨通知した。(甲5,乙2,3)(ウ) 綱紀調査委員会は,同年10月6日,原告に対し,事件簿等を提出するよう求めた。これに対し,原告は,綱紀委員長に宛てた信書(以下「本件信書」という。)を送付し,事件簿等を提出するかどうかについては検討中である旨回答した。なお,本件信書の封筒には「親展」の文字が記載されていた。(乙2,10)(エ) 事務局長は,同年11月17日,原告に電話をかけ,綱紀調査委員会が実施する事情聴取の日時を調整しようとしたが,綱紀調査委員会の委員ではない事務局長からの電話に不快感を覚えた原告は,日時の調整に応じなかった。また,事務 月17日,原告に電話をかけ,綱紀調査委員会が実施する事情聴取の日時を調整しようとしたが,綱紀調査委員会の委員ではない事務局長からの電話に不快感を覚えた原告は,日時の調整に応じなかった。また,事務局長は,併せて事件簿等の提出を再度要請したが,このとき事務局長が本件信書を読み上げたことから,原告は親展扱いで送付した本件信書が無断で開披されたと考えて立腹し,事件簿等の提出要請を拒絶した。(乙2)(オ) 綱紀調査委員会の委員は,同月22日,原告に電話をかけ,事情聴 取を実施する日時を調整するとともに,事件簿等の提出を再度要請した。 しかし,原告は,日時の調整には応じたものの,事件簿等の提出には応じなかった。(乙2)(カ) 綱紀調査委員会は,同年12月13日,原告に対する事情聴取(本件事情聴取)を実施した。 原告は,立会執務を補助者に行わせているかとの問いに対し,「万難を排して(原告自らが)立会いをしている。しかし,どうしても日程調整がつかないときは,補助者が立会いをする。その件数等については,言えない。」と回答した。 また,原告は,事件簿等の提出を再度要請されると,「一切提出するつもりはない。事務局の対応や守秘義務等について疑問がある。」としてこれを拒否するとともに,提出に応じられない理由を記載した書面を,平成24年1月20日までに提出する旨述べた。もっとも,上記書面が綱紀調査委員会に提出されることはなかった。 (乙2)(キ) 綱紀調査委員会は,同年4月23日,原告に対する調査の結果をまとめた調査結果報告書(以下「本件調査報告書」という。)を会長に提出した。(乙2)ウ大阪司法書士会の注意勧告(ア) 会長は,平成24年6月6日,本件調査報告書の内容につき,小理事会に対し,注意勧告手続開始の可否の判断を求めた。 告書」という。)を会長に提出した。(乙2)ウ大阪司法書士会の注意勧告(ア) 会長は,平成24年6月6日,本件調査報告書の内容につき,小理事会に対し,注意勧告手続開始の可否の判断を求めた。(乙3)(イ) 小理事会は,同年7月4日,原告に対する注意又は勧告の手続を開始することを議決し,その後,弁明の期日を同年8月10日と定め,これを原告に通知した。 原告は,上記弁明の期日に出頭せず,代わりに同日付けの「回答書」と題する書面(本件回答書)を小理事会に提出した。本件回答書には, ①本件取引に補助者を立ち会わせる結果となったのは,別件取引においてE司法書士が原告の途中退席を許さなかったためである,②事件簿等の提出を拒んだのは,綱紀調査委員会が守秘義務に違背する行為を行っていたためであるなどの弁明事項が記載されていたが,事実関係の詳細等については特段記載されていなかった。 (乙3,8)(ウ) 小理事会は,同年8月10日,原告に対し,補助者に立会執務を行わせていた事実について注意を促すとともに,今後かかる行為を行わないよう勧告する旨の決議をした。(乙3)(エ) 会長は,同年11月1日付けで,原告に対し,注意勧告をする旨の決議がされたことを告知した上,同年12月13日,大阪法務局長に対し,原告に対して上記注意勧告をした旨を報告するとともに,原告を1か月の業務の停止処分とすることが相当であり,その処分を求める旨の意見を示した。(甲5,乙3)エ本件処分(ア) 大阪法務局長は,原告について司法書士法違反等に関する調査を実施することとし,大阪法務局職員に命じて,原告に事件簿等の提出を促した。原告は,これに応じ,平成25年5月頃,大阪法務局長に事件簿等を提出した。(乙4)(イ) 大阪法務局長は,大阪法務局の職員に 施することとし,大阪法務局職員に命じて,原告に事件簿等の提出を促した。原告は,これに応じ,平成25年5月頃,大阪法務局長に事件簿等を提出した。(乙4)(イ) 大阪法務局長は,大阪法務局の職員に命じて,同月23日,原告に対する口頭聴取(本件口頭聴取)を実施した。 原告は,本件口頭聴取において,本件取引の立会執務を補助者であるDに行わせた旨述べた上で,補助者に立会執務を行わせることは法の範囲内にある行為であり,憲法や法の趣旨を考慮することなくこれを一律に禁止しようとする大阪司法書士会幹部の態度は不当である旨述べた。 また,綱紀調査委員会からの事件簿等の提出要請に応じなかったので はないかと問われると,提出を拒否したのは,綱紀調査委員会が情報漏えいをしたからであって,正当な理由に基づくものである旨述べた。 さらに,連合会が実施する研修(以下「研修」という。)における単位取得状況について問われると,「実際にはほとんど取ってないですね。」,「行っても,それほどメリットがない。で,それやったら,もう,自分でしようと。」などと述べた。 (乙4)(ウ) 大阪法務局長は,上記調査の結果を踏まえ,原告に対する懲戒の手続を行うこととし,同年8月21日,原告に対し聴聞通知書を発して,聴聞の期日や予定される不利益処分の内容等を通知した。(乙5)(エ) 原告は,同年9月10日,大阪法務局内で開催された本件聴聞に代理人と共に出頭し,「Eさんは,最初から最後まで途中退席も許さないとはっきり言っています,Eさんがそう言ったから…他方の立会いに補助者が行かなければならなくなりました。」「利益を求めている国民の意見を取り入れずに,司法書士本人による立会いをやれと言う論理が私には理解できないんです。」などと意見を述べた。なお,本件聴聞に提出され が行かなければならなくなりました。」「利益を求めている国民の意見を取り入れずに,司法書士本人による立会いをやれと言う論理が私には理解できないんです。」などと意見を述べた。なお,本件聴聞に提出された代理人作成の意見書には,事件簿等の提出を拒絶した行為について,「全く問題がなかったとは言えず,その点については深く反省しております。」との記載がされていた。(乙6~8)(オ) 大阪法務局長は,同年10月7日付けで,原告に対し,本件処分をした。(甲1,乙9)オ連合会が実施する研修と原告の受講状況(ア) 連合会は,司法書士に対し,単位制の研修(一定の年限において一定の単位を取得することによる研修をいう。以下同じ。)と年次制の研修(司法書士名簿登録から3年経過後及び以降5年経過ごとに参加する研修をいう。以下同じ。)を実施している。(乙21,22) (イ) 司法書士会員は,連合会が実施する単位制の研修を受講して,1年度に12単位を取得することが義務付けられている。(乙22,23)(ウ) 大阪司法書士会は,単位制の研修について,取得単位に不足が生じた場合であっても,司法書士会員が理由書を提出してこれを申告し,取得単位が不足したことに正当な理由があると認められたときは,当該司法書士会員を注意勧告等の対象としない扱いをしている。 (エ) 原告の平成22年度から平成25年度までの単位取得状況は以下のとおりである。また,原告は,平成23年度に,年次制の研修(司法書士名簿登録から23年経過後の研修)に参加している。(甲8,乙25,26,29の1~4)a 平成22年度取得単位 0不足の理由育児・介護・看護(正当な理由として承認。)b 平成23年度取得単位 0不足の理由仕事上の都合・業務多忙(正当な理 の1~4)a 平成22年度取得単位 0不足の理由育児・介護・看護(正当な理由として承認。)b 平成23年度取得単位 0不足の理由仕事上の都合・業務多忙(正当な理由として承認されず。)c 平成24年度取得単位 0不足の理由理由書未提出d 平成25年度取得単位 0不足の理由身体,健康上の理由(正当な理由として承認。)(2) 争点②(補助者立会の懲戒事由該当性)について ア執務規則60条の違法性について原告は,執務規則60条は規則24条に違反する旨主張する。そこで,この点について検討する。 法は,司法書士の業務の公共性及び社会的重要性に鑑み,司法書士となる者の資格を限定した上(4条),司法書士会に入会している司法書士以外の者が司法書士の業務を行うことを禁止し(73条1項,78条1項),規則24条は,司法書士自身も他人をしてその業務を取り扱わせてはならないこととしている。このような法及び規則の趣旨によれば,司法書士会に届け出た補助者であっても,司法書士がその者に司法書士業務を行わせることは許されないというべきであり,司法書士の指導監督の下であっても,補助者が独自の判断で司法書士業務を行うことはできないと解するのが相当である。 そして,大阪司法書士会は,登記制度が社会生活上極めて重要な役割を果たし,その手続が相当に技術的,専門的なものであることに鑑み,登記業務を適正円滑に行わしめ,登記制度に対する国民の信頼を確保するという観点から,執務規則56条以下において,不動産登記手続に関する規律を定め,その60条において,真正な登記実現のための諸条件について審査確認することなどを内容とする立会執務は必ず司法書士が行わなければならないことを定めている。上記のような 動産登記手続に関する規律を定め,その60条において,真正な登記実現のための諸条件について審査確認することなどを内容とする立会執務は必ず司法書士が行わなければならないことを定めている。上記のような同条の趣旨に照らせば,執務規則60条の立会執務は,登記に関する手続について代理する業務(法3条1号)の一環として,規則24条が定める他人に取り扱わせることが許されない業務に当たるというべきであり,司法書士以外の者がこれを行うことは許されないものに当たるというべきである。したがって,執務規則60条が規則24条に違反すると解する余地はなく,これに反する原告の主張は採用することができない。 イ執務規則60条の憲法適合性について なお,原告は,執務規則60条について,登記手続を遅滞させ,不動産物権変動の対抗要件とされている不動産登記の遅滞を招き,取引当事者の財産権を危うくするものであるから,国民の財産権に合理性を欠く制約を加えるものとして憲法29条に違反するとも主張する。しかしながら,そもそも,執務規則は,司法書士会が自律権に基づいて定めたものにすぎず,法令に基づく規制であるかについては疑問の余地がある上,当事者の本人確認及び意思確認並びに立会執務を司法書士自身が行ったからといって,登記手続の遅滞を直ちに招来するものではないし,また,これらの行為はいずれも登記関係当事者等の権利の保全に寄与するものであるから,執務規則60条が国民の財産権に合理性を欠く制約を加えるものであると解することはできず,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,立会執務の内容が不明確であるとも主張するが,その意義は執務規則60条2項で詳細かつ具体的に規定されているのであるから,原告の主張は失当である。 ウ補助者立会の懲戒事由該当性について ,原告は,立会執務の内容が不明確であるとも主張するが,その意義は執務規則60条2項で詳細かつ具体的に規定されているのであるから,原告の主張は失当である。 ウ補助者立会の懲戒事由該当性について原告は,本件取引当事者の委任に基づき,本件取引の決済に補助者であるDを立ち会わせ,着金確認や登記関係書類の受領等の業務を行わせているところ(前記認定事実ア),登記手続において,代金の支払及び登記関係書類の授受等を行う決済の場に立ち会う行為は,不動産取引が登記手続に関する諸条件を具備して有効に完了したことを確認する行為であるから,司法書士自らが行うべき業務であり,また,司法書士が「利害関係にある当事者が出席している取引の場で…真正な登記実現のための諸条件…について審査確認し…登記手続を受任する…法的事務」たる立会執務に当たるというべきである。したがって,Dを本件取引の決済に立ち会わせた原告の行為は,他人による業務取扱いの禁止を定めた規則24条に違反するとともに,司法書士以外の立会執務の禁止を定めた執務規則60条に違反し, 司法書士の懲戒事由に該当するというべきである(法23条,47条)。 そして,登記制度の公共性及び社会的重要性に照らせば,このことは,本件取引の契約当事者が,原告ではなく補助者が決済に立ち会うことに同意していたとしても,異なるところはない。 なお,原告は,Bとは契約を変更して立会執務を受任の対象から外しており,A及びC信金からも,立会執務を受任していなかったのであるから,本件取引の決済にDを立ち会わせた行為が執務規則60条に違反すると解する余地はないと主張し,本人尋問においてもこれと同旨の供述をする。 しかしながら,Bの代表者の陳述書(甲3)の記載からは上記のような契約変更があった様子はうかがわれない。また,立会執務 違反すると解する余地はないと主張し,本人尋問においてもこれと同旨の供述をする。 しかしながら,Bの代表者の陳述書(甲3)の記載からは上記のような契約変更があった様子はうかがわれない。また,立会執務を受任していなかったのであれば,原告は本件取引の決済に立ち会う必要がなかったはずであるが,実際には,Dに対し,原告が本件取引の決済の場に到着するまで「時間を引き延ばしてほしい」などと指示をしたり(原告本人),別件取引の決済を中座して本件取引の決済の場に向かおうとしたりするなど(前記認定事実ア(エ)),本件取引の決済に立ち会うことを前提とした行動を採っており,上記供述内容は客観的事実に整合しない。加えて,原告は,綱紀調査委員会の本件事情聴取,小理事会が指定した弁明の期日,大阪法務局における本件口頭聴取などにおいて,自己の言い分を述べることが可能であったにもかかわらず,立会執務を受任していない旨の供述はこれまで1度もしておらず,供述経緯が著しく不自然である。これらの事情からすれば,原告の上記供述は信用することができず,かえって,原告が決済時点においてB,A及びC信金から立会執務を受任していたことが強く推認されるというべきである。したがって,立会執務を受任していなかったことを前提とする原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,本件取引の決済に先立って,決済の場で行うべき取引当事者に対する意思確認等を済ませていたのであるから,本件取引の決済に 立ち会う行為は補助的な事務にすぎず,これをDに行わせた行為は規則24条,執務規則60条に違反しないと主張する。しかしながら,不動産取引の諸条件は決済に至るまで常に変動する可能性をはらむものであるし,本件取引においては,売買代金完済時に所有権を移転するとの合意がされており(前記認定事 違反しないと主張する。しかしながら,不動産取引の諸条件は決済に至るまで常に変動する可能性をはらむものであるし,本件取引においては,売買代金完済時に所有権を移転するとの合意がされており(前記認定事実ア(オ)),登記手続の前提たる所有権の移転を確認するためには,決済の場における着金確認は不可欠だったのであるから,本件取引においては,事前の確認をもって決済の場における確認に代えることはできなかったというべきである。したがって,原告の主張は,その前提を欠き失当である。 (3) 争点③(調査受忍義務違反に係る懲戒事由の有無)について原告は,綱紀調査委員会から,立会執務を補助者に行わせているかと問われたにもかかわらず,積極的な説明を行わず,また,事件簿等の提出を求められたにもかかわらず,これを拒絶している(前記認定事実イ)。原告の上記対応は,調査受忍義務を定めた会則53条に違反するものであり,司法書士の懲戒事由に該当するというべきである(法23条,47条)。 この点,原告は,補助者の立会いの詳細について本件回答書で回答しているから,この点に関する調査受忍義務の違反はないと主張する。しかしながら,そもそも本件回答書は綱紀調査委員会ではなく小理事会に提出されたものであるし(前記認定事実イ(カ),ウ(イ)),その内容をみても,補助者の立会いの詳細については特段記載されていなかったから(前記認定事実ウ(イ)),原告の主張はその前提を欠き失当である。 また,原告は,綱紀委員長に宛てて親展扱いで送付した本件信書について,事務局長が無断でこれを開披し,大阪司法書士会の事務局内において大声で読み上げるなどの不適切な行為をしたことから,事件簿等の提出に応じれば同様の取扱いを受け,原告独自のノウハウや依頼者の個人情報が外部に流出するのではないかと考え,事件 書士会の事務局内において大声で読み上げるなどの不適切な行為をしたことから,事件簿等の提出に応じれば同様の取扱いを受け,原告独自のノウハウや依頼者の個人情報が外部に流出するのではないかと考え,事件簿等の提出に応じなかったのであって,事件 簿等の提出拒絶には正当な理由があると主張する。しかしながら,大阪司法書士会事務局文書取扱規程(乙17)によれば,事務局長は,大阪司法書士会の業務に関する文書について,包括的な管理権限を有していると認められるから(6条),本件信書を開披し,大阪司法書士会の事務局内でこれを読み上げた行為は,上記包括的な管理権限内の行為であったというべきである(なお,上記行為が個人情報の外部流出を危惧させるような態様でなされたことをうかがわせる的確な証拠もない。)。したがって,事務局長の行為を不適切なものとする原告の主張は,その前提を欠き失当である。 (4) 争点④(裁量権の逸脱,濫用)についてア法は,司法書士が法又はこれに基づく命令に違反したときの当該司法書士に対する懲戒処分として,戒告,2年以内の業務の停止及び業務の禁止を定めている(法47条)。このように,司法書士に対する懲戒処分は,懲戒事由に該当し得る違反行為も多岐にわたる上,最も軽い戒告から最も重い業務の禁止まで,その軽重にも大きな差が設けられていることからすれば,司法書士について懲戒事由に当たる行為がある場合において,懲戒処分を行うか否か,懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきか(業務の停止にあっては,その期間の長短をいかに定めるべきか)は,懲戒事由に該当すると認められる行為の性質や態様等のほか,当該司法書士の上記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の司法書士及び社会に与える影響等の諸般の事情を総合的に勘案して,判断すべき 当すると認められる行為の性質や態様等のほか,当該司法書士の上記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の司法書士及び社会に与える影響等の諸般の事情を総合的に勘案して,判断すべきものである。 そして,登記等に関する事務(法務省設置法4条21号)を分掌する法務局及び地方法務局(同法18条1項)の長である法務局長等は,司法書士の業務の中心が登記手続の代理等の業務にあるため,司法書士の懲戒事由を最もよく知り得る立場にあるし,司法書士に対する指導を行うこと等を目的とする所属司法書士会との連携を十分に図り得る立場にある。これ らのことからすれば,法に定められた懲戒事由がある司法書士について,懲戒処分を行うか否か及びいかなる処分を行うかについては,法務局長等の合理的な裁量にゆだねられていると解するのが相当であって,法務局長等がかかる裁量権を行使して処分を行った以上,当該処分は,それが社会通念上著しく妥当性を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合でない限り,違法とはならないというべきである。 イ以下,本件について検討する。 前記(2),(3)で判示したとおり,本件処分における懲戒事由に事実誤認はない。そして,重大な懲戒事由というべき本件取引に補助者を立ち会わせた行為について,原告が,E司法書士や大阪司法書士会を論難する発言を繰り返す一方,自己の非を認める発言は一切していないこと(前記認定事実イ(カ),ウ(イ),エ(イ)(エ))からすれば,原告が調査受忍義務違反の点について反省の意向を表明していること(前記認定事実エ(エ))や,大阪法務局の調査には協力していること(前記認定事実エ(ア))等の事情を斟酌しても,その情状は悪いというべきである。 加えて,原告は,連合会が実施する研修について,本 と(前記認定事実エ(エ))や,大阪法務局の調査には協力していること(前記認定事実エ(ア))等の事情を斟酌しても,その情状は悪いというべきである。 加えて,原告は,連合会が実施する研修について,本件処分前の3年半のうち2年間は,取得すべきとされる単位を正当な理由なく取得しておらず(前記認定事実オ(エ)),しかも,本件口頭聴取において,研修にメリットがないと述べる(前記認定事実エ(イ))など,研修を受講することに対し消極的な姿勢を示している。 そうすると,大阪法務局長が本件処分に当たって考慮した事項,程度に誤る点はなく,本件処分が他の事例に比べて著しく重いものであると認めるに足りる証拠もないから,本件処分が社会通念上著しく妥当性を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであるということはできない。 なお,原告は,他の懲戒事例(甲6の1・2)の内容を摘示して,本件 処分は類似の事案との均衡を失する過度に重い処分であると主張する。しかしながら,前記アのとおり,司法書士に対する懲戒処分の内容は,法務局長等が,各事案の具体的な内容等諸般の事情を総合的に勘案して判断すべきものであるから,個別の事情が判然としない上記懲戒事例との比較をもって,本件処分が過度に重い処分であるということはできない。 また,原告は,指導や注意という手続を経ることなく,年次制の研修を受講していなかったことを理由に原告を処分することは,原告に対する不意打ちであって許されないと主張する。しかしながら,上記研修未受講の事情は,本件処分において懲戒事由として考慮されたものではなく,懲戒処分の内容を判断する際の情状事実として考慮されたものにすぎないところ,このような情状事実は,法務局長等による総合的な事案判断の前提として自由に考慮されるべきものであるから, れたものではなく,懲戒処分の内容を判断する際の情状事実として考慮されたものにすぎないところ,このような情状事実は,法務局長等による総合的な事案判断の前提として自由に考慮されるべきものであるから,情状事実の考慮に条件を課す原告の主張は,採用することができない。 3 結語よって,本件訴えは不適法であるからこれを却下することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官西田隆裕 裁判官角谷昌毅 裁判官松原平学
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