平成13(行ケ)454 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年6月7日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文33,316 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告が、原告に対する公正取引委員会平成11年(判)第1号不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)違反事件につき、平成13年9月12日付けでした審決(以下「本件審決」という。)を取り消す。 (2) 訴訟費用は、被告の負担とする。 2 被告主文と同旨。 第2 本件審決の事実認定及び法令の適用 1 原告は、平成11年3月1日、横浜地方裁判所の決定に基づき、株式会社カンキョー(以下「カンキョー」という。)について会社更生手続が開始されたことに伴い、同社の管財人に選任された者である。カンキョーは、家庭用空気清浄機(以下「空気清浄機」という。)等の製造販売等を営む者であり、会社更生手続開始後においても同様である。 2 カンキョーが製造販売している「クリアベールCR」、「クリアベールRE」、「クリアベールCA」、「クリアベール3」、「クリアベールKT」及び「クリアベールCX」と称する空気清浄機(以下「本件空気清浄機」という。)は、マイナスイオンを放出して空気中の粉塵をマイナスに荷電し、クーロン力を利用して空気清浄機本体に備えたプラスの電極に集めるという集塵方式の空気清浄機であり、イオン式又は電子式空気清浄機(以下「イオン式空気清浄機」という。)と呼ばれている。これに対して、空気清浄機に備えたファンによって強制的に室内の空気をフィルターなどに通して空気中の粉塵を集めるという集塵方式の空気清浄機は、フィルター式又はファン式空気清浄機(以下「フィルター式空気清浄機」という。)と呼ばれている。 3(1) カンキョーは、① 「クリアベールCR」、「クリアベールRE」、「クリアベールCA」及び「クリアベ ター式又はファン式空気清浄機(以下「フィルター式空気清浄機」という。)と呼ばれている。 3(1) カンキョーは、① 「クリアベールCR」、「クリアベールRE」、「クリアベールCA」及び「クリアベール3」と称する空気清浄機の販売を行うため、平成10年2月から同年4月までの間に店頭配布用のパンフレット(本件審決が引用する審決案(以下「本件審決案」という。)別添写し1及び2。以下「本件広告1」及び「本件広告2」という。)を約2万部配布し、② 「クリアベールKT」と称する空気清浄機の販売を行うため、平成10年1月から同年10月までの間に店頭配布用のパンフレット(本件審決案別添写し3。以下「本件広告3」という。)を約5万部配布し、③ 「クリアベールCX」と称する空気清浄機の販売を行うため、平成10年1月30日付け毎日新聞に広告(本件審決案別添写し4。以下「本件広告4」という。)を掲載することにより、一般消費者に広告した。 (2) そして、カンキョーは、① 「クリアベールCR」、「クリアベールRE」、「クリアベールCA」及び「クリアベール3」と称する空気清浄機について、本件広告1及び2に、「クリアベールは電子の力で花粉を強力に捕集するだけでなく、ダニの死骸・カビの胞子・ウイルスなどにも有効な頼もしい味方です。」、「有害微粒子を集塵」、「フィルター式では集塵が難しい微細なウイルスやバクテリア、カビの胞子、ダニの死骸の砕片までもホコリと一緒に捕集します。」、「●適用範囲/最大14畳まで」等と、② 「クリアベールKT」と称する空気清浄機について、本件広告3に、「一見、きれいそうな室内の空気。でも実際は、アレルギーを引き起こすと言われるダニやカビ、ウイルス、バクテリアなどがうようよ。このような目に見えない有害物質を確実に集塵するのが、クリアベール 3に、「一見、きれいそうな室内の空気。でも実際は、アレルギーを引き起こすと言われるダニやカビ、ウイルス、バクテリアなどがうようよ。このような目に見えない有害物質を確実に集塵するのが、クリアベールです。」、「有害微粒子を集塵」、「フィルター式では集塵が難しい微細なウイルスやバクテリア、カビの胞子、ダニの死骸の砕片までもホコリと一緒に捕集します。」、「驚異の集塵力」、「適用範囲最大14畳まで」等と、③ 「クリアベールCX」と称する空気清浄機について、本件広告4に、「クリアベールの集塵紙上でウイルスの捕集を確認。」、「ハウスダストもウイルスも捕れる。」と強調して表示した上で、「目に見えるタバコの煙をファンで取り除くのとは違う次元で、目に見えないアレルゲンやサブミクロン・サイズのウイルスまでも取り除くことが実証されています。」、「◎最大14畳まで(目安)」等と、それぞれ記載した。 4 カンキョーは、本件広告1ないし4(以下、併せて「本件広告」という。)において、上記3の各記載をすることにより、広告された本件空気清浄機は、あたかも、①他のフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高く、また、②室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有しているかのような表示をしているが、実際には、そのような性能を有するものではない。したがって、本件広告は、本件空気清浄機の性能について、カンキョーと競争関係にある他の事業者に係るもの及び実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるものである。 5 以上によれば、カンキョーは、本件空気清浄機の性能について、実際のもの及びカンキョーと競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示を 能について、実際のもの及びカンキョーと競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示をしていたものであって、かかる行為は、景品表示法4条1号の規定に違反するものである。よって、被告は、原告に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)54条2項並びに景品表示法7条1項及び2項の規定に基づき、審決により排除措置を命じる。 第3 原告の主張 1 本件審決は、本件広告が、本件空気清浄機はあたかも①他のフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高く、また、②室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有するかのような表示をしている、とするが、これは、本件広告の意味を誤ってとらえるものである。 すなわち、本件広告は、本件空気清浄機が電子の力を基にして「有害微粒子を集塵」、「脱臭効果」、「マイナスイオン供給」及び「無騒音・無風設計」という4大特長を有していることを明らかにし、一般消費者の商品選択の重要な事項である基本的性能を正しく表示するものである。本件空気清浄機は、従来のフィルター式空気清浄機とは異なり、周辺の空気をマイナスイオン化して清浄な空気環境を維持することを特徴としており、無騒音かつ無風に近い状態で長時間稼働することが可能であり、かつ、フィルター式空気清浄機では捕集することが難しい微細な浮遊粒子を捕集することができる性能を有している。本件広告は、このようなフィルター式空気清浄機に比した本件空気清浄機の特質・優位性を訴えており、その次元において本件空気清浄機が他のフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いことを表示したものである。本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも即効性があるなど 機の特質・優位性を訴えており、その次元において本件空気清浄機が他のフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いことを表示したものである。本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも即効性があるなどとは何も言及していない。空気清浄機の集塵能力を評価する場合は、即効性のみでなく、集塵可能な粒径の範囲や、集塵に伴う弊害の排除、付随効果などを総合して、その優劣を判断すべきものである。現在、他社は、集塵方式についてフィルター式(又はファン式)とイオン式(又は類似方式)の両方式を一台の中に取り入れた空気清浄機を発売し、イオン式で稼働させる場合には、無風・無騒音で長時間使用が可能であり、フィルター式では取れない細菌やウイルスの捕集ができることを謳った広告を行っているが、このことは、空気清浄機の集塵能力の評価に当たり、無風・無騒音、長時間使用等の要素を考慮すべきことを物語るものである。本件審決は、吸引力及び即効性という指標のみで集塵能力をとらえた上、本件広告は本件空気清浄機が他のフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いと表示するものであるとするが、本件広告はそのような趣旨のものではない。 また、ウイルスに関しても、本件広告は、微細なものの代表としてウイルスを挙げ、本件空気清浄機がウイルスを捕集することができるという事実を表示するものにすぎない。ウイルスに起因する風邪などの疾病防止になると誤解されるおそれのある表現を慎重に避け、ウイルスを捕集するという事実のみを表示したものである。 2 本件審決が引用する本件審決案の「第3 審判官の判断」のうち、次に掲げる①ないし⑨の認定判断は、実質的証拠を欠き、合理性のないものであり、この点からして「本件広告は、あたかも、①他のフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高く、また、②室内の空気中のウイルスを実用的な意味 ないし⑨の認定判断は、実質的証拠を欠き、合理性のないものであり、この点からして「本件広告は、あたかも、①他のフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高く、また、②室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有しているかのような表示をしているが、実際には、そのような性能を有するものではない。」との本件審決の認定判断は根拠を欠くものである。 ① 「「無騒音」、「無風」などは、本件審判で審理の対象とされている本件空気清浄機の集塵能力とは直接には関係がない事柄である。」(本件審決案11頁ないし12頁。以下「①認定」という。)② 「一般的に空気清浄機には即効性が求められており、発塵が起こったときに自然減衰よりもいかに短時間に対応できるかが空気清浄機の重要な性能であるとされている」(本件審決案12頁。以下「②認定」という。)③ 「その実験結果については、研究者の評価を得たもの(a報告書)、あるいは、その当時、学会等の専門的な研究会に報告されたもの(b教授及びc教授の実験結果)であって、その実験結果にも客観性があるものである。」(本件審決案22頁。以下「③認定」という。)④ 「被審人の援用に係る医療機関の使用実績については、これは、本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いことを示すものではない」(本件審決案23頁。以下「④認定」という。)⑤ 「実験実施者であるa教授がカンキョーあるいは本件空気清浄機を含むイオン式空気清浄機に対してどのような考えを持っていたにせよ、そのことをもって、その実験者が行った実験内容や実験結果の妥当性を直ちに左右するものということはできないし(なお、被審人は、そのような実験者が実験を行ったことにより、その実験自体にどのような欠陥ないし不当な結果が生じたのかを具体的に指摘するものではない。)、 を直ちに左右するものということはできないし(なお、被審人は、そのような実験者が実験を行ったことにより、その実験自体にどのような欠陥ないし不当な結果が生じたのかを具体的に指摘するものではない。)、本件証拠を検討しても、a教授が、実験実施者として不適当であるとか、そのために実験結果の妥当性を欠く事情が存したと認めるに足りない。」(本件審決案25頁。以下「⑤認定」という。)⑥ 「実験環境がそのようなものであることが、直ちにフィルター式空気清浄機に有利に作用したとは認めるに足りない」、「このような現象が生じたことをもって、実験内容が不合理なものであると直ちにいうことはできないし、そのような現象を解明しなかったことをもって、ウイルスの捕集能力に係る実験結果そのものの信頼性を左右するものであるとまでは認めるに足りない。」(本件審決案26頁。 以下「⑥認定」という。)⑦ 「空気清浄機による粉塵の除去能力を確認するための実験において、このような方法により大量の粉塵を発生させたことをもって不合理であるとすべき根拠は見当たらない。」(本件審決案27頁。以下「⑦認定」という。)⑧ 「実際には、本件空気清浄機は、様々な粒径(0.3ミクロンないし5ミクロン)の粉塵について、フィルター式空気清浄機よりも集塵能力が低いものであり、かつ、空気中のウイルスを有効に捕集する能力を有しないものであり、本件広告は、根拠がなく、事実に反するものと認められる。」(本件審決案29頁。以下「⑧認定」という。)⑨ 「被審人がカンキョーと同様又はより問題の多い表示であると主張する広告の表示は、いずれもフィルター式空気清浄機についてのものであり、これらの表示が本件広告と同種同様の表示であると認めることはできない。」(本件審決案34頁。以下「⑨認定」という。) 3 本件審決は主に北里大 は、いずれもフィルター式空気清浄機についてのものであり、これらの表示が本件広告と同種同様の表示であると認めることはできない。」(本件審決案34頁。以下「⑨認定」という。) 3 本件審決は主に北里大学医療衛生学部教授a(以下「a教授」という。)の実験結果(査第9ないし第11号証)等に依拠しているが、a教授の実験は、アクリル樹脂の壁面に囲まれた1立方メートルの空間中の実験であり、実験環境が実際の使用環境と異なる上、狭い空間でファンにより大きな風量を発生させているなど、フィルター式空気清浄機に有利に働く環境での実験である。本件空気清浄機は、長時間マイナスイオンを放出させることにより、有害微粒子等を捕集するという設計思想に基づくもので、そのような特性を有するものであるから、日常の使用空間において比較的長時間稼働させることによりはじめてフィルター式空気清浄機との優劣が判断される。原告は、そのことを強調し、a教授の実験結果等は実験内容・実験方法等において不当であるとの観点から、本件審判において、平成11年8月10日付けで本件空気清浄機の性能に関する鑑定の申出(以下「本件鑑定の申出」という。)をしたところ、審判官は、平成12年7月17日、本件鑑定の申出を却下した。本件鑑定の申出の却下は、公平の理念に反し、適正手続を保障した憲法31条の規定に違反する。 4 本件審決は、景品表示法4条1号の「著しく」の解釈適用を誤るものである。 本件広告がなされたころ、他社の空気清浄機の広告には、例えば、「従来のフィルター式清浄機と異なり99パーセント以上の驚異的集塵力を発揮。ウイルスまでも集塵して除菌」等の広告が存在しており(本件審決案7頁)、また現今では、マイナスイオンの放出効果を強調しつつ「フィルター式では取れない細菌やウイルスなども逃しません。」と表示した広告 ウイルスまでも集塵して除菌」等の広告が存在しており(本件審決案7頁)、また現今では、マイナスイオンの放出効果を強調しつつ「フィルター式では取れない細菌やウイルスなども逃しません。」と表示した広告(東芝)、「こんなものを除去します」として「ハウスダスト・ペットの毛、フケ、ダニのフン・死骸、花粉、カビ胞子・カビ臭、ウイルス・雑菌、タバコのニオイ・煙、排ガス(NOX)・粉塵」と表示した広告(東芝)、「東芝独自のパワフルなクーロンULPAなら空気中の汚れを吸い寄せ、0.15マイクロメートルの微細粒子を99.9995%除去。それよりも小さな0.006マイクロメートルのウイルスなみの微細粒子も99.9999%とさらに高い捕集率を発揮します」と表示した広告(東芝)、「空気中に浮遊しているウイルスは風邪など病気の原因になります。」、「花粉・タバコはもちろん、ダニやウイルスもしっかりキャッチ」と表示した広告(松下電工)、「お部屋の空気中を浮遊するウイルスや雑菌をすばやく取り囲みます」、「ウイルス、カビなど雑菌類の繁殖を抑制」と表示した広告(シャープ)、「チリやホコリ、ウイルスも強力に除去」と表示した広告(象印)等々が存在することは公知の事実である。これらの各表示と比較対照してみても、本件広告の表示は社会通念上許される程度内のものであり、景品表示法4条1号所定の「著しく」の要件に該当しない。 また、景品表示法4条1号の「競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される・・・表示」に該当するというためには、「競争関係にある他の事業者」が行う表示よりも「著しく」誤認される表示でなければならないが、本件広告はこれに当たらない。 5 被告は、景品表示法6条1項の規定に基づき、平成11年1月26日、カンキョー保全管理人に対し、本件 者」が行う表示よりも「著しく」誤認される表示でなければならないが、本件広告はこれに当たらない。 5 被告は、景品表示法6条1項の規定に基づき、平成11年1月26日、カンキョー保全管理人に対し、本件空気清浄機につき、排除命令(平成11年(排)第1号。以下「本件排除命令」という。)を行った。そして、被告は、同日、カンキョー保全管理人に対し、カンキョーが製造販売する空気清浄機につき、警告(平成11年公取監第5号。以下「本件警告」という。)を行い、本件排除命令と一括して同時にこれを公表した。本件警告は、カンキョーが製造販売している空気清浄機の「脱臭能力」及び「花粉症を軽減する効果」につき、「実際には、かかる能力(効果)を有しているとする根拠は認められない」と断定している。本件警告が指摘する上記能力(効果)は、本件空気清浄機の基本的性能ないし設計思想と密接不可分のものであり、本件空気清浄機の消費者層にも、上記能力(効果)に注目して本件空気清浄機を購入する向きが圧倒的に多い。したがって、本件警告は、重大かつ深刻な不利益を課する処分であり、行政指導の域を超えて実質的に同法6条1項の排除命令に該当する。そこで、原告は、同法8条1項の規定に基づき、同年3月4日、被告に対し、本件排除命令と本件警告とを一体のものとして両者について審判手続の開始を請求したところ、被告は、本件警告については審判開始の決定をせずに、同年4月14日、同法8条2項の規定に基づき、本件排除命令についてのみ審判開始決定をした上、平成13年9月12日、本件審決を行った。しかし、本件警告と本件排除命令の双方について審判するのでなければ、実体に迫り公正を確保することができない。本件審決は、景品表示法8条1項の規定の解釈適用を誤るものである。 6 本件審決は、行政手続法12条ないし14条の規定 命令の双方について審判するのでなければ、実体に迫り公正を確保することができない。本件審決は、景品表示法8条1項の規定の解釈適用を誤るものである。 6 本件審決は、行政手続法12条ないし14条の規定の解釈適用を誤るものである。 本件排除命令及び本件警告並びにその公表は、カンキョーに対して、消費者離れと売上減少をもたらすなど、致命的な打撃を与えるもので、不利益な行政処分に当たる。したがって、行政手続法12条ないし14条の規定に従い、適正な基準ないし手続に従って行われるべきであった。 すなわち、被告は、本件排除命令及び本件警告を行うに当たっては、行政手続法12条の規定に基づき、「不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについて」、できる限り具体的な処分基準「を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない」が、これを全く遵守していない。 また、被告は、行政手続法13条1項の規定に反し、本件排除命令及び本件警告の公表につき、カンキョーに対して聴聞ないし弁明の機会を与えていない。 さらに、被告は、行政手続法14条1項の規定に反し、本件排除命令及び本件警告をするについて、証拠資料に基づいた理由を示していない。 したがって、本件排除命令を肯認した本件審決も、行政手続法12条ないし14条の規定に違反するものというべきである。 第4 被告の認否と主張 1 原告の主張第3の1について原告の主張は争う。本件広告は、本件空気清浄機について、微細な浮遊物を集塵できることを強調しながらも、一般的に集塵能力がフィルター式空気清浄機よりも優れており、また、室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力、すなわちウイルス感染の防止に効果があるなどの実用的な能力があるという印象ないし期待を一般消費者に与えるものである。したがって、 おり、また、室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力、すなわちウイルス感染の防止に効果があるなどの実用的な能力があるという印象ないし期待を一般消費者に与えるものである。したがって、本件広告は、本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高く、また、室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有していることを表示するものである。本件審決において認定した不当な表示とは、空気清浄機の空気中の集塵能力及びウイルスの捕集能力に係る表示であり、脱臭効果、マイナスイオン供給及び無騒音・無風設計は、集塵能力やウイルス捕集能力とは直接には関係のない事柄である。 2 原告の主張第3の2について(1) 本件審決が引用する本件審決案に、①ないし⑨認定の認定判断があることは認めるが、それが実質的証拠を欠き、合理性のないものであるとの主張は争う。 (2)ア ①認定について本件審決が認定した不当な表示は、本件空気清浄機の集塵能力及び空気中のウイルスの捕集能力に係る表示である。「無騒音、無風など」が集塵能力やウイルス捕集能力とは直接には関係のない事柄であることは明白である。 イ ②認定について空気清浄機に即効性が求められることは、査第40号証及び審第3号証から認定できる。カンキョー自身も、本件広告4において、「クリアベールを運転した場合、0.006~0.015ミクロンの粒子はすべて2分後に99%以上減衰。クリアベールが停止している場合(自然減衰)は10分後でも粒子が計測されました。」と記載し、その他、本件広告と時期を前後して行った広告において「国立公衆衛生院において0.3~5ミクロンの粒子が、クリアベール運転後わずか60分で1/50に激減したことが実証されました。」と記載する(査第2及び第3号証)など、即効性を強調してい 広告において「国立公衆衛生院において0.3~5ミクロンの粒子が、クリアベール運転後わずか60分で1/50に激減したことが実証されました。」と記載する(査第2及び第3号証)など、即効性を強調していた。 ウ ③認定について本件審決は、本件広告が根拠があるものかどうかを判断する際に、審査官提出に係る実験結果を客観的なものであるとして採用したが、a教授の実験結果が元国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)所長のd博士や元国立予防衛生研究所のウイルス学の研究者であるe博士といった研究者の評価を得ていたことは、査第12、第13及び第40号証から、信州大学教育学部教授b(以下「b教授」という。)の実験結果が、平成8年4月18日の第14回空気清浄機とコンタミネーションコントロール研究大会において発表され、その内容が「室内型空気清浄機の性能比較(その1)ファン式とイオン式について」と題する論文として発表されたことは、査第14及び第16号証から、東京理科大学工学部建築学科教授c(以下「c教授」という。)が国立公衆衛生院建築衛生学部長に就任していた昭和62年当時、室内環境における空気清浄機の浄化性能を実験的に検討し、その結果を昭和63年10月に開催された日本建築学会で発表したことは、査第17及び第18号証から、それぞれ認められる。したがって、a教授、b教授及びc教授の各実験結果が、研究者の評価を得たもの、あるいは、その当時、学会等の専門的な研究会に報告されたものであって、その実験結果にも客観性があるとの認定には実質的証拠がある。 エ ④認定について本件空気清浄機の医療機関における使用実績が、本件空気清浄機の方がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いことを示すものであることを認めるべき証拠はない。 オ ⑤認定についてa教授の実験結果が、上記の 清浄機の医療機関における使用実績が、本件空気清浄機の方がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いことを示すものであることを認めるべき証拠はない。 オ ⑤認定についてa教授の実験結果が、上記のとおり、客観的に評価されている以上、a教授のカンキョーあるいは本件空気清浄機に対する考え方がどのようなものであるかによってその評価が変わるものではなく、また、a教授が実験実施者として不適当であるとか、そのために実験結果の妥当性を欠く事情が存したと認めるべき証拠はない。 カ ⑥認定についてa教授の採用した実験環境がフィルター式空気清浄機に有利に作用したと認めるに足りないことは、査第11及び第40号証により明らかである。また、a教授の実験において解明できない現象が生じたとしても、b教授の実験(査第14号証)や東京工業大学の研究者らによる実験(査第41号証の2)の際にも同様の現象が見られたということからすれば、このような現象が生じたこと及びその現象解明を行わなかったことをもって、実験内容及び結果の合理性を損なうものということはできない。 キ ⑦認定についてb教授の実験が、試験室内で布団をたたいたりするなどして発塵した環境の下での実験であっても、このような実験方法が不合理であるということを示す証拠はない。 ク ⑧認定について上記のような評価を得た各実験結果によって、イオン式空気清浄機である本件空気清浄機が、フィルター式空気清浄機よりも、様々な粒径(0.3ミクロンないし5ミクロン)の粉塵について、集塵能力が低いものであり、また、空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有するものではないことが認められるとした本件審決の事実認定は、十分な証拠を備え、合理性があるといえる。 ケ ⑨認定について⑨認定についても、実質的証拠がある。原告は、 な意味で有効に捕集する能力を有するものではないことが認められるとした本件審決の事実認定は、十分な証拠を備え、合理性があるといえる。 ケ ⑨認定について⑨認定についても、実質的証拠がある。原告は、他社の空気清浄機の広告について問題とするが、被告の排除命令が平等原則に違背する違法なものとなるのは、同種同様の不当表示をした事業者が複数ある場合に、排除命令を受けた事業者以外の不当表示をした事業者に対しては排除命令をする意思がなく、排除命令を受けた事業者に対してのみ、差別的意図をもって当該排除命令をしたような場合に限られるところ、被告は、イオン式空気清浄機についてカンキョーと同様の広告を行っていたティアック株式会社に対しても本件排除命令と同様に排除命令を出した(査第38号証)のであるから、被告がカンキョーのみに対して差別的意図をもって排除命令をしたと認めることはできない。 3 原告の主張第3の3について(1) 本件審判において審判官が本件鑑定の申出を却下したことは認めるが、それが違憲であるという主張は争う。 (2) 審判官は、審判の進行状況その他を勘案してその合理的な裁量により取り調べる必要がないと判断した証拠についてはその申出を却下することができる。審判官は、本件鑑定の申出につき、平成11年8月27日の第3回審判期日ないし平成12年2月9日の第6回審判期日において、双方から実験結果などに関する証拠の提出を求め、これにより鑑定の必要性について検討した上、同年7月17日の第9回審判期日において、既に双方から本件空気清浄機の性能、効果に関する実験結果等の書証が多数提出されていること、本件空気清浄機の考案者である参考人fの審訊を行ったこと、原告としては、既にしかるべき実験結果があればこれを提出するなり、自ら研究機関に依頼するなどの立証手段を有してい 書証が多数提出されていること、本件空気清浄機の考案者である参考人fの審訊を行ったこと、原告としては、既にしかるべき実験結果があればこれを提出するなり、自ら研究機関に依頼するなどの立証手段を有していることからすれば、更に鑑定を行う必要がないとして、本件鑑定の申出を却下したものであり、この判断には合理的理由がある。 また、本件鑑定の申出を採用しなくても、本件空気清浄機の性能について認定判断できることは、既に述べたところから明らかである。更に敷衍すると、一般に、事業者が広告により商品の性能・効果を標ぼうする場合には、事業者において、その根拠となる実験、データ等を有していることが期待され、特に、その商品が一般消費者になじみが薄く、また、標ぼうする内容において新しい型であること、新しい性能・効果であることなどを強調する場合には、根拠となる実験結果やデータ等を有していることが不可欠のこととして期待されているといえる。そして、審査官において当該広告が不当表示であることを立証するためには、当該商品が標ぼうされている性能・効果を有していないことの根拠となる実験の方法やその結果に客観性や合理性が必要であるが、基本的には、被審人の有する根拠となる実験・データとの比較において、実験方法や実験結果に客観性や合理性が確保されていれば足りるものであって、それ以上に、例えば、実際に使用する環境と実験環境とが完全に一致しているという条件を満たさなければ、その実験結果を根拠に不当表示と認定できないというものではない。 4 原告の主張第3の4について(1) 本件審決案に記載された他社の広告が存在することは認め、それ以外の他社の広告の存在は知らず、その主張は争う。 (2) 景品表示法4条1号の「著しく」とは、当該商品の品質等が実際のもの又は競争事業者のものよりも優良である た他社の広告が存在することは認め、それ以外の他社の広告の存在は知らず、その主張は争う。 (2) 景品表示法4条1号の「著しく」とは、当該商品の品質等が実際のもの又は競争事業者のものよりも優良であると一般消費者に誤認される程度が軽微ではないとの趣旨であり、社会通念上許される程度の誇張や消費者の商品選択に与える影響が軽微なものは「著しく」の要件には当たらないが、その限度を超えるものは不当表示に当たる。そして、社会的に許容される程度を超えるか否かについては、商品の性質、一般消費者の知識水準、取引の実態、表示の内容・方法などを勘案して判断すべきところ、本件広告は、イオン式という、これまでの空気清浄機とは異なる、新しい集塵方法による空気清浄機という一般消費者にとってなじみの薄い商品につき、パンフレットや新聞広告をもって、広く一般消費者に対し、従来のフィルター式空気清浄機よりも一般的に集塵能力が優れていること、ウイルスまでも実用的な意味で有効に捕集できることを表示して、一般消費者が空気清浄機を選択するに当たっての商品選択の重要な事項である基本的な性能において優れていることを強調するものであるにもかかわらず、実際には、本件空気清浄機は、集塵能力において、フィルター式空気清浄機よりも劣るものであり、また、ウイルスを捕集する能力についても、実用的な意味を有していないのである。そうすると、本件広告は、一般消費者に与える誤認の程度が大きいものというべきであるから、「著しく」の要件に該当し、不当表示となる。 また、原告は、カンキョーと競争関係にある他社の空気清浄機の広告における表示との比較において、「著しく」の要件該当性を判断すべきであると主張するが、独自の見解というべきである。 5 原告の主張第3の5について(1) 被告が、平成11年1月26日、本件排除 広告における表示との比較において、「著しく」の要件該当性を判断すべきであると主張するが、独自の見解というべきである。 5 原告の主張第3の5について(1) 被告が、平成11年1月26日、本件排除命令及び、これに併せて、本件警告を行ったこと、原告が、同年3月4日、本件排除命令と本件警告の両者について審判開始請求を行ったこと、被告が、同年4月14日、本件排除命令に係る行為についてのみ審判開始決定を行った上、本件審決に至ったこと、本件警告に原告主張の記載があることは認めるが、その主張は争う。 (2) 審判手続における審判の対象は排除命令に係る事実に限られ、本件審判手続の対象も、本件排除命令に係る事実に限られる。本件警告に係る事実は、本件排除命令に係る事実とは同一性がなく、それとは区別されたものであるから、本件審判手続の対象となるものではない。したがって、本件審判が、本件警告に係る事実について審判しなかったからといって、違法となるものではない。 6 原告の主張第3の6について本件警告は、本件審判の対象外であるから、本件警告に係る原告の主張は失当である。 また、景品表示法8条1項が、排除命令に不服がある者は、公正取引委員会に対し、当該排除命令に係る行為について、審判手続の開始を請求することができると規定していることから明らかなとおり、審判手続の開始の請求は、当該排除命令に係る行為自体についてするものであり、この請求によって開始される審判手続における審判の対象も上記行為の存否等であって、当該排除命令の当否ではないから、排除命令及びこれに先立つ手続の瑕疵の存否につき、審判手続における審判の対象とすべき余地がない。したがって、本件排除命令に係る原告の主張も失当である。 なお、念のため、本件排除命令に係る手続に違法な点がないことについて述べる。 疵の存否につき、審判手続における審判の対象とすべき余地がない。したがって、本件排除命令に係る原告の主張も失当である。 なお、念のため、本件排除命令に係る手続に違法な点がないことについて述べる。 景品表示法は、その規制対象である不当な表示等が、複雑多様であって絶えず変化する企業活動にかかわるものである上、不当表示等の行為が波及性と高進性を有するものであることから、公正取引委員会に対して、不当表示等の行為が認められる場合に、当該行為の実態に即して、機動的かつ迅速に規制権限を行使できるように、排除命令をすることについても、またいかなる内容の措置を命じるかについても、広範な裁量権を付与しているものであるところ、同法は、公正取引委員会が、上記規制権限を行使するに当たって、裁量基準をあらかじめ定立し、これを規制対象事業者に周知させることを求める規定を置いていないのであるから、公正取引委員会は、不当表示行為等について、裁量基準をあらかじめ定めることなく規制権限を行使することができる。行政手続法12条に処分基準を設定する旨の努力規定があるとしても、公正取引委員会は、上記の性格を有する不当表示等を機動的かつ迅速に規制するという法目的の実現を図るため、不当表示等の類型、内容、広がり等の実態を勘案して、裁量基準を定め、周知し、これに基づき規制を行うか、又は、個別の事案ごとに規制していくかを決定することができるのであって、必ずしも裁量基準を定めなければならないものではない。 次に、排除命令については、これを行政手続法13条1項2号に該当する処分と位置付け、弁明の機会の付与の手続を執ることとされている(不当景品類及び不当表示防止法に規定する公正競争規約の認定の取消しに係る聴聞及び排除命令に係る弁明の機会の付与に関する規則5条)上、排除命令につき、審判手続開 機会の付与の手続を執ることとされている(不当景品類及び不当表示防止法に規定する公正競争規約の認定の取消しに係る聴聞及び排除命令に係る弁明の機会の付与に関する規則5条)上、排除命令につき、審判手続開始請求をすれば、準司法的手続による審判が行われ、審決がされることにより排除命令は失効することが制度的に保障されている(景品表示法8条及び9条2項)。そして、実際に、被告は、本件排除命令に先立ち、カンキョーに対して弁明の機会を与え、カンキョー保全管理人が平成10年12月9日付けの書面(査第39号証)を提出した。したがって、本件排除命令につき、聴聞ないし弁明の機会を付与していないとの原告の主張は、失当である。 また、行政手続法14条1項の規定に基づく理由付記の程度としては、一般に、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して処分がなされたかを明らかにするものでなければならないところ、本件排除命令では、審判開始決定書記載の事実及び法令の適用と同程度の理由が記載されていたのであるから、本件排除命令の理由付記に瑕疵があるということはできない。 理由 第1 原告の主張第3の1について 1 本件審決は、まず、「本件広告は、本件空気清浄機が他のフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いと表示するものである。」とする。 空気清浄機は、空気中のほこりやにおいなどの汚れを自然減衰以上の速さで取り除き、空気を清潔な状態にすることを機能とする機器であるから(査第40号証及び審第3号証)、どれだけの時間でどれだけの種類及び量の粉塵等を捕集することができるかという意味の集塵能力は、空気清浄機の基本的性能であって、一般消費者が商品選択の上で最も重視するものということができる。本件審決が本件広告について問題とする「集塵能力」も、このような一般的な意味の かという意味の集塵能力は、空気清浄機の基本的性能であって、一般消費者が商品選択の上で最も重視するものということができる。本件審決が本件広告について問題とする「集塵能力」も、このような一般的な意味の集塵能力である。 本件広告は、本件空気清浄機が「ファンレス/電子式空気清浄機」であること及びその適用範囲が「最大14畳まで」であることを記載した上、その性能につき、「有害微粒子を集塵」(本件広告1ないし3)、「フィルター式では集塵が難しい微細なウイルスやバクテリア、カビの胞子、ダニの死骸の砕片までもホコリと一緒に捕集します。」(本件広告1ないし3)、「フィルターを素通りしてしまった小さなホコリをまき散らしたり、排気風で部屋のホコリをかき立てる、といった心配も無用です。」(本件広告1ないし3)、「このような目に見えない有害物質を確実に集塵するのが、クリアベールです。タバコの煙や花粉対策にもパワーを発揮」(本件広告3)、一般のフィルター式空気清浄機の集塵範囲が0.1ミクロンないし40ミクロンであるのに比してクリアベールの集塵範囲は0.005ミクロンないし40ミクロンとかなり広範囲である旨(本件広告3)、「驚異の集塵力」(本件広告3)、「ハウスダストもウイルスも捕れる。」(本件広告4)、「目に見えるタバコの煙をファンで取り除くのとは違う次元で、目に見えないアレルゲンやサブミクロン・サイズのウイルスまでも取り除くことが実証されています。」(本件広告4)、「クリアベールを運転した場合、0.006~0.015ミクロンの粒子は、すべて2分後に99%以上減衰。クリアベールが停止している場合(自然減衰)は10分後でも粒子が計測されました。」(本件広告4)等と記載している。 上記の記載からすれば、本件広告は、本件空気清浄機は14畳までの室内の空気中に現に存する ベールが停止している場合(自然減衰)は10分後でも粒子が計測されました。」(本件広告4)等と記載している。 上記の記載からすれば、本件広告は、本件空気清浄機は14畳までの室内の空気中に現に存する様々な種類・粒径の浮遊物を確実に集塵できるものであり、上記室内の浮遊物一般の集塵において、本件空気清浄機の集塵能力がフィルター式空気清浄機のそれよりも優れているという印象ないし期待を一般消費者に与えるものということができる。 本件広告は、確かに、「サブミクロン級の微細な微粒子もしっかり集塵する」(本件広告1ないし3)、「サブミクロン粒子の捕集を確認」(本件広告4)等と記載し、微細な浮遊物を捕集できることを強調してはいるが、上記の記載からすれば、単に微細な浮遊物の捕集において性能が優れているというにとどまらず、健康に有害なホコリ、タバコの煙、花粉を含め、室内の空気中に存する浮遊物一般を集塵する能力がフィルター式空気清浄機よりも優れているという印象・期待を与えるものである。 また、本件広告は、「モーター/ファンを使わない無騒音・無風設計ですから、モーター/ファン式空気清浄機のように音や風に悩まされることはありません。」(本件広告1ないし3)、「24時間・安眠・快適性能」(本件広告4)等と記載し、無騒音・無風設計を強調しているが、無騒音、無風という限定された条件の下における他の空気清浄機との集塵能力の比較を述べて本件空気清浄機の優位性を強調したものではなく、また、無騒音・無風という特徴を加味すれば集塵能力が優れているといえるという趣旨のものでもなく、そのような特徴ないし使用方法・時間とは別に、空気清浄機の一般的な使用状況の下で本件空気清浄機の集塵能力がフィルター式空気清浄機のそれよりも優れているという印象・期待を与えるものである。 本件広告は ような特徴ないし使用方法・時間とは別に、空気清浄機の一般的な使用状況の下で本件空気清浄機の集塵能力がフィルター式空気清浄機のそれよりも優れているという印象・期待を与えるものである。 本件広告は、微細な浮遊粒子の捕集能力、無騒音・無風設計等の本件空気清浄機の特質・優位性を表示しているが、そういう点を総合した性能がフィルター式空気清浄機より優良であるというにとどまらず、集塵能力自体において本件空気清浄機がより有効に機能するという印象・期待を与えるものである。 したがって、本件広告は本件空気清浄機が他のフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いと表示しているという本件審決の認定判断は正当であり、この点の違法をいう原告の主張は採用できない。 2 次に、本件審決は、「本件広告は、本件空気清浄機が室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有していると表示するものである。」とする。 本件広告は、「クリアベールは電子の力で花粉を強力に捕集するだけでなく、ダニの死骸・カビの胞子・ウイルスなどにも有効な頼もしい味方です。」(本件広告1及び2)、「わたしの健康は、ナゼカ空気から始まるのダ。一見、きれいそうな室内の空気。でも実際は、アレルギーを引き起こすと言われるダニやカビ、ウイルス、バクテリアなどがうようよ。このような目に見えない有害物質を確実に集塵するのが、クリアベールです。」(本件広告3)、「目に見えるタバコの煙をファンで取り除くのとは違う次元で、目に見えないアレルゲンやサブミクロン・サイズのウイルスまでも取り除くことが実証されています。」(本件広告4)と記載しており、一般消費者に対し、本件空気清浄機の性能につき、単にウイルスを捕集することができるというにとどまらず、ウイルス感染の防止に効果があるなどの実用的な意味でウイルスを有効 (本件広告4)と記載しており、一般消費者に対し、本件空気清浄機の性能につき、単にウイルスを捕集することができるというにとどまらず、ウイルス感染の防止に効果があるなどの実用的な意味でウイルスを有効に捕集する能力があるという印象ないし期待を与えるものということができる。 したがって、本件広告は本件空気清浄機が室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有していることを表示しているという本件審決の認定判断は正当であり、この点の違法をいう原告の主張も採用できない。 第2 原告の主張第3の2について 1 ①認定について本件審決は、上記のとおり、本件空気清浄機の品質のうち、集塵能力及びウイルス捕集能力に係る性能を一般消費者の誤認の対象ととらえ、この点に関する誤認を解くための措置を講じるよう命じているものである。「無騒音」、「無風」などは、本件審決が対象とする集塵能力及びウイルス捕集能力という性能とは関係がないから、①認定は正当な判断であるというべきである。 「無騒音」、「無風」が、本件空気清浄機の特長の一つであり、一般消費者の商品選択上の一要素であるとしても、上記のような意味の集塵能力、ウイルス捕集能力も、それ自体で一般消費者の商品選択の重要要素をなすものであり、集塵能力等について一般消費者の誤認を招けば、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあるというべきであるから、集塵能力等に関する表示は、それ自体で景品表示法4条1号の規定による規制対象となるというべきである。 2 ②認定について②認定は、本件審決の引用する証拠(審第3号証並びに査第2,第3及び第40号証。特に、国民生活センターの商品テストと暮らしの情報誌である審第3号証の「速効性については、一般家庭の平均的な居室の気密性を考えると、少なくとも30分くらいでじ 号証並びに査第2,第3及び第40号証。特に、国民生活センターの商品テストと暮らしの情報誌である審第3号証の「速効性については、一般家庭の平均的な居室の気密性を考えると、少なくとも30分くらいでじんあい(塵埃)等の除去性能が期待できなければ実用性がないと考えられます。」との記載及びb教授(平成11年4月からは国立公衆衛生院建築衛生学部特別研究員)の供述調書である査第40号証の「一旦発塵した粒子が1時間や2時間で浄化できなければ、長い時間の間には次々に起きる発塵に対応できず、また、外気が汚れている場合、換気による汚染の侵入があるため、十分な浄化は期待できないと思います。一般的に最近の気密なアルミサッシを用いた住宅における部屋では1時間に部屋の容積の半分くらいの空気が入れ替わるといわれています。」という記述。)から合理的なものということができる。 3 ③認定についてa教授の平成10年3月31日付け試験報告書は、本件空気清浄機の一つであるクリアベールREを含むイオン式空気清浄機は、細菌とウイルスの除去能力において、フィルター式空気清浄機よりも著しく劣り、また、ウイルスの捕捉能及び除去能が極めて低いかほとんど証明できない程度であって、人間が感染する可能性を減らすことができるほどの意味のある量を捕集することができず、さらに、粒径別にみても、すべての粒径(0.3ミクロン、0.5ミクロン、1ミクロン、2ミクロン、5ミクロン)について、フィルター式空気清浄機よりも除去の能力が著しく低いというものである(査第9ないし第11号証)。この試験報告書は、元国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)所長d博士(査第12号証)、元国立予防衛生研究所のウイルス学研究者e(査第13号証)及びb教授(査第40号証)により、妥当なものとして評価されている。 b教授の平 衛生研究所(現国立感染症研究所)所長d博士(査第12号証)、元国立予防衛生研究所のウイルス学研究者e(査第13号証)及びb教授(査第40号証)により、妥当なものとして評価されている。 b教授の平成7年8月下旬から同年10月下旬にかけての実験結果は、粒径0. 3ミクロンないし5ミクロンのたばこの煙、粉塵、細菌、真菌及びダニアレルゲンの除去能力において、本件空気清浄機の一つであるクリアベール3を含むイオン式空気清浄機はフィルター式空気清浄機よりも大幅に劣るというものである(査第14ないし第16及び第40号証)。この実験結果は、平成8年4月18日の第14回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会において発表され、その内容が「室内型空気清浄機の性能比較(その1)ファン式とイオン式について」と題する論文として公表された(査第14及び第16号証。なお、本論文については、査第32号証で補足説明及び一部修正が施されているが、これにより本論文の結論が変更されたり影響を受けるものではない。)。カンキョーの技術課長のgも、被告の係官から上記論文を示されたが、これに対して何ら反論を加えていない(査第26号証)。 c教授が国立公衆衛生院建築衛生学部長当時の昭和62年に、室内環境における空気清浄機の浄化能力を実験的に検討した結果は、カンキョーが製造販売するイオン式空気清浄機クリアベール(以下「クリアベール」という。)は、粒径0.3ミクロンないし2ミクロンの浮遊粉塵について、フィルター式空気清浄機よりも浄化能力が極めて低いというものである(査第第17、第18及び第42号証)。この実験結果は、「空気清浄装置の粉塵捕集率と室内空気の浄化性能」という論文にまとめられ、昭和63年10月開催の日本建築学会において発表された(査第17及び第18号証)。上記のgも、被 42号証)。この実験結果は、「空気清浄装置の粉塵捕集率と室内空気の浄化性能」という論文にまとめられ、昭和63年10月開催の日本建築学会において発表された(査第17及び第18号証)。上記のgも、被告の係官から上記論文を示されたが、これに対して何ら反論を加えていない(査第26号証)。 したがって、上記の各実験結果は客観性を有するものということができ、③認定は、本件審決が引用する上記証拠から合理的なものということができる。 4 ④認定について本件審判において被審人側が提出した医療機関における使用実績のうち、上天草総合病院の使用実績は、気管支喘息で入院していた児童の一部の試験外泊に際して、自宅にクリアベールを設置したところ、空気中の浮遊塵量が有意に減少し、児童の気管支喘息の発作点数、治療点数ともに有意に減少したというものである(審第18号証)が、本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いことを示すものとはいえない。同じく神奈川県立こども医療センターの使用実績は、同病院アレルギー科に通院中の気管支喘息患者26名について、うち使用群13名の自宅にクリアベールを設置し、対照群13名にはこれを設置せず、その臨床的効果を比較検討したところ、「その結果は、設置前に比べて設置後はピークフロー値が低下する頻度が有意に下がった。喘息発作、鼻炎症状に改善傾向を認めたが、統計的には有意とはいえなかった。本調査の対象は、症状と治療内容からみると中等症から重症であり、濃厚な治療をすでに受けて症状がコントロールされており、このような症例では、環境整備のみで臨床症状をさらに改善させるのはかなり困難であろう。」というものである(審第19号証)が、本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いことを示すものとはいえない。同じく大阪医科大学の使 床症状をさらに改善させるのはかなり困難であろう。」というものである(審第19号証)が、本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いことを示すものとはいえない。同じく大阪医科大学の使用実績は、患者のいる病室(個室)4室について、夏期と冬期に各2室各3日間、クリアベールを設置して、その能力を検討したところ、クリアベールの集塵紙には使用前にはなかった菌が多く認められ、室内落下菌数が有意に減少したというものである(審第20号証)が、これについて、上記dは、細菌数の減少の程度が低く、また、3日間という長期にわたる試験結果なので、この減少がクリアベールによる吸着によるものか、それ以外の細菌に対する不活性化原因によるものか判断できないとし(査第12号証)、上記eは、再現性の実験を経なければクリアベールの有用性についての一般的な結論を導くには無理があるとの批判を加えている(査13号証)。いずれにしても、大阪医科大学の使用実績は、本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いことを示すものとはいえない。同じく福岡大学病院の使用実績は、患者のいる個室内にクリアベールを7日間設置し、また、MRSA排出患者の個室にクリアベールを4日間設置し、落下菌数の変動を調べたところ、浮遊菌数・浮遊MRSAが有意に減少することが確認されたというものである(審第21号証)が、これについて、上記dは、7日間という長期にわたる実験なので、菌数の減少が何によるものなのかが明らかでなく、また、MRSAの検出菌数そのものの量が少ないので、信頼性が低いとし(査第12号証)、上記eは、再現性の実験を経なければ、クリアベールの有用性について一般的な結論を導くことはできず、また、クリアベールを運転した状態と運転しない状態で、集塵紙に細菌が付着しているかどうかを確認 号証)、上記eは、再現性の実験を経なければ、クリアベールの有用性について一般的な結論を導くことはできず、また、クリアベールを運転した状態と運転しない状態で、集塵紙に細菌が付着しているかどうかを確認する対照実験が行われていない点も問題であるとの批判を加えている(査第13号証)。いずれにしても、福岡大学病院の使用実績は、本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いことを示すものとはいえない。 その他、本件審判において取り調べた全証拠を検討しても、本件空気清浄機の医療機関における使用実績が、本件空気清浄機の方がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高いことを示すものであると認めるべき証拠は見あたらないから、④認定は合理的である。 5 ⑤認定について本件審判において取り調べた全証拠を検討しても、a教授が実験実施者として不適当であるとか、そのために実験結果の妥当性を欠く事情が存したと認めるべき証拠は見あたらないから、⑤認定は合理的である。 6 ⑥認定についてa教授の上記試験報告書に係る実験の環境がアクリル製の1立方メートルの空間であったことがフィルター式空気清浄機に有利に作用したとは認めるに足りないとの認定は、a教授の供述調書である査第11号証の「フィルター式の空気清浄機の場合には、狭い空間内で最大性能の運転を行ったため、かえって吸い込んだ空気がフィルターを通らず横から漏れるような状態になり、ウイルスの捕捉能力が低く計測されたと考えられる」及び「空間に浮遊している物質を直接物理的な力で引き寄せているわけではなく、粒径の大きい物質を引き寄せることが難しいと思われるイオン式の空気清浄機にとっては、試験を行った空間が狭く、捕集する物質の粒径が小さいために有利な値が出るものであり」との記述、並びにb教授の供述調書である査第40号証 き寄せることが難しいと思われるイオン式の空気清浄機にとっては、試験を行った空間が狭く、捕集する物質の粒径が小さいために有利な値が出るものであり」との記述、並びにb教授の供述調書である査第40号証の「試験室が1辺1メートルの立方体であることは、イオン放出の範囲から考えて、イオン式空気清浄機にとっては、実際の20~30立方メートルの室で使用する場合に比較して、高い効力が示されることが考えられます。実験室の壁面への付着については、これまでの知見から申しますと、ファン式の空気清浄機により室内気流が生じた場合、室内の表面に粒子が衝突して付着する現象が考えられます。気流、粒子、壁面等の性状によっては表面付着現象により数時間の間に最大20パーセントくらい濃度減少を示す場合があります。しかし、ファン・フィルタ式によるa教授の15分という短時間での試験結果に影響を与えるとは考えられません。」との記述から合理的なものということができる。 また、a教授の上記試験報告書には、本件空気清浄機の一つであるクリアベールREを作動させると2ミクロンと5ミクロンの粒子数が急激に増加するという不思議な動態を示した、との記載があるが、同様の現象は、b教授の上記実験(査第14号証)や東京工業大学の研究者らによる実験(査第41号証の2)の際にもみられたことからすると、このような現象が生じたことのみをもって、上記試験報告書に係る実験内容が不合理なものと直ちにいうことはできないし、そのような現象を解明しなかったことをもってウイルスの捕集能力に係る実験結果の信頼性を左右するものとまではいえないと考えられる。 したがって、⑥認定は合理的なものということができる。 7 ⑦認定についてb教授の上記実験が、試験室内で布団をたたくなどして発塵した環境の下での実験であっても、このような方 えないと考えられる。 したがって、⑥認定は合理的なものということができる。 7 ⑦認定についてb教授の上記実験が、試験室内で布団をたたくなどして発塵した環境の下での実験であっても、このような方法により大量の粉塵を発生させたことをもって不合理とする根拠は、本件審判において取り調べた全証拠を検討しても見あたらない。 したがって、⑦認定は合理的なものということができる。 8 ⑧認定について(1) 以上の1ないし7で摘示した証拠及びそれに基づく認定判断からすると、本件空気清浄機が、様々な粒径(0.3ミクロンないし5ミクロン)の粉塵について、フィルター式空気清浄機よりも集塵能力が低いものであり、かつ、空気中のウイルスを有効に捕集する能力を有しないものということができる。 (2) これに対し、カンキョーが審査手続で提出し、あるいは原告が審判手続で直接提出した実験結果等をみると、次のとおりである。 アアメリカ合衆国に所在する測定や調査を業とするハウザー・ケミカル・リサーチ・インコーポレイテッドは、同国に所在するカンキョーの代理店クリアベール・コーポレーションからのクリアベールの性能に関する調査依頼に基づき、平成4年11月18日付けのテスト・リポートを作成した(査第21及び第22号証)。同テスト・リポートは、クリアベールとHEPAフィルターを使用したフィルター式空気清浄機を、実験室内で、それぞれ168時間稼働させた後、クリアベールの集塵紙とHEPAフィルターの各0.1ミリメートル四方に付着した微粒子の数を計測したところ、0.3ミクロン以下の微粒子については、クリアベールの集塵紙には135個付着していたが、HEPAフィルターには5個付着していたのみである、ただし、この168時間稼働後の5個という相対的に少ない数値は統計的に意味のある評価を可能にする 、クリアベールの集塵紙には135個付着していたが、HEPAフィルターには5個付着していたのみである、ただし、この168時間稼働後の5個という相対的に少ない数値は統計的に意味のある評価を可能にするものではない、としている。このテスト・リポートは、0.1ミリメートル四方に付着した微粒子の数を比較したものであって、各集塵紙全体としての集塵能力を比較するものではなく、上記の数値も必ずしも統計的に有意なものではない。 イ東京工業大学生命理工学部助教授hは、カンキョーから、クリアベールがウイルスを捕集するか否かの確認を依頼され、平成9年10月7日付けの試験研究報告書を作成した(査第3、第23ないし第26号証)。同報告書は、91リットルのアクリルの箱内に、インフルエンザウイルスを入れた溶液を10分間噴霧しながら、本件空気清浄機の一つであるクリアベール3を稼働させ、又は稼働させない状態で置いたところ、稼働させたクリアベール3の集塵紙からは噴霧した量の38パーセントに当たるインフルエンザウイルスの遺伝子が検出されたが、稼働させなかったクリアベール3の集塵紙からはインフルエンザウイルスが検出されなかったとしている。この実験結果について、h助教授自身も、クリアベール3が定性的な意味においてウイルスを捕集することを確認したものにすぎず、実用的な意味でウイルスを捕集する能力を有するかどうかはわからない、と述べている(査第25号証)。同実験について、上記dは、空気清浄機を稼働させながら新たなウイルスを実験環境に入れていることから、もともと存在していたウイルスをどの程度捕集できるかを示すものではなく、また、噴霧されたウイルスは不活化されており、これを捕集しても、どのような意味を持つか不明であると述べている(査第12号証)。同じく、上記eは、ウイルスを散布しなが 捕集できるかを示すものではなく、また、噴霧されたウイルスは不活化されており、これを捕集しても、どのような意味を持つか不明であると述べている(査第12号証)。同じく、上記eは、ウイルスを散布しながらクリアベールを稼働させることになれば、フィルター式空気清浄機と同じように実験空間に空気の動きが生じることになり、この実験によっては、ファンを有しないクリアベールのウイルス捕集能力を評価できないと述べている(査第13号証)。 ウ金沢大学工学部物質化学工学科微粒子プロセス研究室i助手は、平成9年にカンキョーからの依頼に基づき、クリアベールがナノメートルサイズの粒子を捕集することができるかどうかを確認する実験を行い、研究報告書を作成した(査第22、第27号証)。同報告書は、112リットルのアクリル製の容器に、6ナノメートルないし15ナノメートルサイズの粒子を充満させ、本件空気清浄機の一つであるクリアベール3を10分間稼働させ、又は稼働させない状態で置いたところ、クリアベール3を稼働させることにより、自然減衰に比べて明らかに高効率で粒子を捕集することができた、同様の実験を2ナノメートル及び5ナノメートルの粒子を用いて実施したところ、定性的に捕集できることが示された、というものである。ただし、ウイルスは通常20ナノメートルから260ナノメートル程度の大きさであるとされているので、同実験結果からは、クリアベール3がウイルスを捕集することができるという結論にはならない(査第22号証)。 エカンキョーは、0.3ミクロンないし5ミクロンの粒子について、クリアベールの集塵能力を確認するための試験を行い、平成11年2月10日付けで報告書を作成した(審第8号証)。同報告書は、3.9立方メートルの研究用チャンバー内で、大気塵につき、自然減衰8時間後に、本件空気清浄 の集塵能力を確認するための試験を行い、平成11年2月10日付けで報告書を作成した(審第8号証)。同報告書は、3.9立方メートルの研究用チャンバー内で、大気塵につき、自然減衰8時間後に、本件空気清浄機の一つであるクリアベール3を8時間稼働させたところ、5ミクロンの粒子は約100分の1ないし1000分の1と最大の減少を示し、0.3ミクロンの粒子は約4分の1と最小の減少を示した、とする。 (3) 上記(2)に掲げた実験結果等は、他の研究者から積極的な評価を受けたり、学会等で発表されたものではなく、その客観性は明らかでないが、いずれにしても、本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高く、また、本件空気清浄機が室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力があることを示すものではなく、上記(1)の認定を覆すものではない。その他、本件空気清浄機の考案者であるfの審訊の結果など本件審判に現れた証拠を検討しても、本件広告が、根拠がなく、事実に反するとする⑧認定は、合理的であるということができ、実質的証拠に欠けるところがない。 9 ⑨認定について本件審判において被審人がカンキョーと同様又はより問題の多い表示であると主張した広告の表示は、いずれも本件空気清浄機とは集塵方式を異にする空気清浄機についてのものである(審第22ないし第32及び第48号証)から、その表示が本件広告の表示と同種同様のものとはいうことができず、⑨認定は合理的であるというべきである。 そして、被告は、イオン式空気清浄機についてカンキョーと同様の広告を行っていたティアック株式会社に対しても、平成11年1月26日付け排除命令で、本件審決と同旨の排除措置を命じており(査第38号証)、本件審決がカンキョーに対する差別的意図に基づくものということもできない。 10 ま ック株式会社に対しても、平成11年1月26日付け排除命令で、本件審決と同旨の排除措置を命じており(査第38号証)、本件審決がカンキョーに対する差別的意図に基づくものということもできない。 10 まとめ以上のように、①ないし⑨認定は、合理的で正当なものであり、本件空気清浄機が、フィルター式空気清浄機よりも集塵能力が劣り、また、室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有するものではない、との本件審決の認定は、実質的証拠を備えた合理的なものというべきであるから、この点の違法をいう原告の主張は採用できない。 第3 原告の主張第3の3について本件審判において、審判官が平成12年7月17日の第9回審判期日において本件鑑定の申出を却下したことは、当事者間に争いがない。 審判官は、平成11年8月27日の第3回審判期日及び平成12年2月9日の第6回審判期日において、原告及び審査官に鑑定についての意見を求めるとともに、双方から実験結果などに関する証拠の提出を求め、第9回審判期日において、双方から本件空気清浄機の性能、効果に関する実験結果等の書証が多数提出されていること、本件空気清浄機の考案者である参考人fの審訊を行ったこと、審判官が再三指摘してきたように、原告としては、既に実験結果があればこれを提出するなり、自ら研究機関に依頼するなどの立証手段を有していることからすれば、更に鑑定を行う必要がないとして、本件鑑定の申出を却下した(上記審判期日調書)。 独禁法の規定に基づく審判において、被審人は、公正取引委員会に対し、証拠調の請求の一環として、鑑定人に鑑定を命じることを求めることができる(同法52条1項)。公正取引委員会は、証拠調の請求があったときは、その採否を決定しなければならず(平成13年公正取引委員会規則8号による改正前の公正取 、鑑定人に鑑定を命じることを求めることができる(同法52条1項)。公正取引委員会は、証拠調の請求があったときは、その採否を決定しなければならず(平成13年公正取引委員会規則8号による改正前の公正取引委員会の審査及び審判に関する規則50条)、被審人等から申出のあった証拠を採用しないときは、その理由を示さなければならない(独禁法52条の2)ところ、正当な理由があれば、被審人の証拠調の請求を採用しないことができることはいうまでもない。このことは、独禁法81条1項1号が、「公正取引委員会が、正当な理由がなくて、当該証拠を採用しなかった場合」に、公正取引委員会の審決の取消請求訴訟において、当事者は、裁判所に対し、当該証拠を、公正取引委員会が認定した事実に関する新しい証拠として申し出ることができると規定していることからも、明らかである。そして、当事者双方の提出に係る証拠から一定の認定ができ、被審人の申出に係る証拠を採用してもその認定が覆らないと認められる場合には、当該証拠を取り調べる必要性がなく、公正取引委員会において当該証拠の申出を採用しない正当な理由があるものというべきである。なお、本件鑑定の申出の却下は、独禁法51条の2の規定に基づき公正取引委員会から審判手続の一部を委任された審判官が、上記の公正取引委員会の審査及び審判に関する規則27条1項の規定に基づき行ったものであるが、審判官による審判においても、上記の理は変わらない。 本件審決が正当であるというためには、「カンキョーは、本件広告において、本件空気清浄機は、あたかも、他のフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高く、また、室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有しているかのような表示をしているが、実際には、そのような性能を有するものではない。」という認定事実を立証す よりも集塵能力が高く、また、室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有しているかのような表示をしているが、実際には、そのような性能を有するものではない。」という認定事実を立証する実質的な証拠がなければならないが、この点が肯定できることは、上記第2で説明したとおりである。一般に、事業者が広告により商品の性能・効果を標ぼうする場合には、事業者においてその根拠となる実験結果等を有していることが期待され、事業者は審判に際し自己に最も有利な実験結果等を提出するものと考えられるところ、本件審判においては、カンキョーが審査手続で提出し、あるいは原告が審判手続で直接提出した実験結果等が証拠として取り調べられ、更に本件空気清浄機の考案者であるfの審訊も行われているが、それによっても上記認定が覆らないことは、上記第2の8(3)で説明したとおりである。 したがって、審判官において、本件鑑定の申出を採用しても、上記認定を覆すべき結果が出るとは考えられないとして、これを却下したことは合理的な判断というべきである。そうすると、審判官が本件鑑定の申出を却下したことは、正当な理由があり、この点の違法・違憲をいう原告の主張は理由がないといわざるを得ない。 第4 原告の主張第3の4について 1 およそ広告であって自己の商品等について大なり小なり賛辞を語らないものはほとんどなく、広告にある程度の誇張・誇大が含まれることはやむを得ないと社会一般に受け止められていて、一般消費者の側も商品選択の上でそのことを考慮に入れているが、その誇張・誇大の程度が一般に許容されている限度を超え、一般消費者に誤認を与える程度に至ると、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれが生ずる。そこで、景品表示法4条1号は、「著しく優良であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を 度を超え、一般消費者に誤認を与える程度に至ると、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれが生ずる。そこで、景品表示法4条1号は、「著しく優良であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」を禁止したもので、ここにいう「著しく」とは、誇張・誇大の程度が社会一般に許容されている程度を超えていることを指しているものであり、誇張・誇大が社会一般に許容される程度を超えるものであるかどうかは、当該表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかで判断され、その誤認がなければ顧客が誘引されることは通常ないであろうと認められる程度に達する誇大表示であれば「著しく優良であると一般消費者に誤認される」表示に当たると解される。 そして、当該表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかは、商品の性質、一般消費者の知識水準、取引の実態、表示の方法、表示の対象となる内容などにより判断される。 2 これを本件についてみるに、本件広告は、従来のファン、フィルターを用いる方式の空気清浄機とは異なる集塵方式を用いたイオン式空気清浄機という、一般消費者には比較的なじみの薄い新しい方式の空気清浄機について、パンフレット及び新聞広告を用いて、広く一般消費者に対し、空気清浄機の基本的性能であり商品選択上の重要要素というべき集塵能力を訴えるものである。そして、本件広告の表示は、本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高く、室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力があると一般消費者に誤認される表示であり、一般消費者において、本件空気清浄機が、集塵能力においてフィルター式空気清浄機よりも劣るものであり、また、ウイルスを捕集する能力においても実用的な意味を有していないものであることを知っていれば、通常は本件 費者において、本件空気清浄機が、集塵能力においてフィルター式空気清浄機よりも劣るものであり、また、ウイルスを捕集する能力においても実用的な意味を有していないものであることを知っていれば、通常は本件空気清浄機の取引に誘引されることはないであろうと認められるから、本件広告の表示は「著しく優良であると一般消費者に誤認される」表示に当たるというべきである。 3 原告は、カンキョーと競争関係にある他の事業者が空気清浄機について行っている広告の表示と比較対照してみれば、本件広告の表示は社会通念上許される程度内のものというべきであり、景品表示法4条1号の「著しく」の要件に該当しない、と主張する。 競争他社がどのような表示を行っているかは、当該商品をめぐる市場状況の一端として、当該表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかを判断する際の一つの事情になり得る場合があるにしても、本件においては、競争他社が原告の指摘するような表示をしていたという市場状況にあったことを考慮に入れたとしてもなお、一般消費者は本件広告の表示により本件空気清浄機の性能を誤認することがなければ、通常は本件空気清浄機の取引に誘引されることはないであろうと考えられるのであり、本件広告の表示が「著しく優良であると一般消費者に誤認される」表示に当たるとの本件審決の認定判断を不合理なものとすることはできない。 4 また、原告は、景品表示法4条1号所定の表示に該当するというためには、「競争関係にある他の事業者」が行う表示よりも「著しく」誤認される表示でなければならない、と主張する。 しかし、景品表示法4条1号の「著しく」は、一般消費者が当該事業者の表示から受ける印象・期待感と、当該商品又は「競争関係にある他の事業者に係る」商品の実際の状態との較差に関するものであり、各表示間の較差又は各表示から一般 1号の「著しく」は、一般消費者が当該事業者の表示から受ける印象・期待感と、当該商品又は「競争関係にある他の事業者に係る」商品の実際の状態との較差に関するものであり、各表示間の較差又は各表示から一般消費者が受ける印象・期待感の較差に関するものではないから、原告の主張は採用することができない。 第5 原告の主張第3の5について景品表示法6条の規定に基づく排除命令は、官報による告示があった日から30日以内に、当該命令に係る行為について審判手続の開始請求がなければ確定し、独禁法26条及び90条3号の規定の適用については確定した審決とみなされる(景品表示法9条1項)。すなわち、排除命令が確定すると、排除命令を受けた者は、排除命令の対象行為によって損害を受けた者から無過失損害賠償請求権を裁判上で主張され得る地位に立つことになり、また、確定した排除命令に従わない場合は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられることになる。景品表示法は、排除命令に対しこのような法的効力を付与したため、排除命令を受けた者がその法的効力を争うことができるよう、排除命令に係る行為について審判手続の開始を請求することができるとし(8条1項)、審決によって当該行為に係る排除命令はその効力を失うこととしているのである(9条2項)。 しかしながら、公正取引委員会の行う警告は、上記のような法的効力を有するものではなく、法的拘束力を伴わない、いわゆる行政指導に当たるものである。すなわち、警告は、審判手続の開始を請求して消滅させるべき法的効力を有するものではないから、審判の対象となるものではない。審判手続開始請求の対象となり、審判の対象となるのは、あくまでも排除命令に係る行為である(景品表示法8条1項及び2項)。 したがって、被告が、本件警告ないし本件警告に係る行為につい るものではない。審判手続開始請求の対象となり、審判の対象となるのは、あくまでも排除命令に係る行為である(景品表示法8条1項及び2項)。 したがって、被告が、本件警告ないし本件警告に係る行為について、景品表示法8条2項の規定に基づく審判開始の決定をせず、本件排除命令に係る行為についてのみ審判開始の決定を行った上、本件審決を行ったのは、適法である。この点の違法をいう原告の主張は失当でる。 第6 原告の主張第3の6について 1 原告は、本件排除命令及び本件警告の違法を理由に、本件審決の取消しを求めているが、本件警告は、上記のとおり、本件審判の審理の対象外であるから、本件警告の違法をいう原告の主張は失当である。 2 次に、排除命令に不服がある者は、当該命令に係る行為について審判手続の開始を請求することができ(景品表示法8条1項)、公正取引委員会も、当該行為について審判手続を開始し(同法8条2項)、当該行為について審決を行うのである(同法9条2項)。すなわち、公正取引委員会の審判・審決は、排除命令自体の適法・違法を判断してその取消し・変更を行うものではなく、排除命令という手続に代わり審判手続という別な手続によって、排除命令の対象となった行為そのものについて事実の存否と適法・違法を判断した上、必要な排除措置を命じるものである(独禁法54条及び景品表示法7条)。したがって、排除命令自体の違法を理由に審決の取消しを求めることはできないから、本件排除命令の違法をいう原告の主張も失当である。 3(1) なお、原告は本件排除命令(乙第1号証)について行政手続法12条ないし14条違反を主張するものであり、同条項等は独禁法8章2節の規定による審決には適用されない(独禁法70条の2)が、本件審決も不利益処分として排除命令と共通の性質を有しているので、本件審決が行 ないし14条違反を主張するものであり、同条項等は独禁法8章2節の規定による審決には適用されない(独禁法70条の2)が、本件審決も不利益処分として排除命令と共通の性質を有しているので、本件審決が行政手続法12条ないし14条の趣旨に反するところがないか、念のため触れることとする。 (2) まず、行政手続法12条は、処分基準の設定を努力義務として規定している。景品表示法は、4条で規制対象の表示について規定しているが、その該当性について解釈の余地を残す不確定概念を用いている。また、6条及び7条で、排除措置を命じるという規制権限を行使するかどうか、どのような内容の排除措置を命じるかについて、公正取引委員会に一定の裁量権を付与している。そして、景品表示法自身は、5条所定の場合を除いて、公正取引委員会において規制権限行使の基準をあらかじめ定立し、これを規制対象事業者等に周知させるべきことを求める規定を置いていない。思うに、事業者が市場で提供する商品、事業者がその商品について行う広告その他の表示の方法・内容、更にその表示が一般消費者に与える影響の程度は、絶えず変化する企業活動や市場の情勢にかかわるものであって、広範多岐多様にわたり、流動性も認められるところである。このような状況に即応して、公正な競争を確保し、もって一般消費者の利益を保護するという目的を効果的に達成するために、景品表示法は上記のような規定の仕方をしているのであって、公正取引委員会が、規制の対象となる表示を更に具体化し、また、規制権限行使の基準を更に具体化する定めをしていなかったとしても、やむを得ないものというべきである。本件審決が行政手続法12条の趣旨に反するものということはできない。 (3) 次に、行政手続法13条は、行政庁が不利益処分をしようとする場合には、当該不利益処分の名あて人 得ないものというべきである。本件審決が行政手続法12条の趣旨に反するものということはできない。 (3) 次に、行政手続法13条は、行政庁が不利益処分をしようとする場合には、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述のための手続を執らなければならないと規定している。独禁法は、準司法的手続として被審人の防御権を保障したに審判手続を定めており、本件審決も、この審判手続によって行われたものであって、行政手続法13条の趣旨に反するところはない。 (4) 行政手続法14条は、行政庁が不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならないと規定している。 そして、この理由としては、不利益処分の原因となる事実と根拠となる法令の条項を明らかにするものでなければならないと解されるところ、本件審決の理由付記自体に不備がないことも明らかである。本件審決が行政手続法14条の趣旨に反するところもない。 第7 結論以上のとおり、本件審決には原告主張の違法はないというべきであるから、原告の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条及び民事訴訟法61条の規定を適用し、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第3特別部裁判長裁判官泉徳治裁判官秋武憲一裁判官菅野博之裁判官大段亨裁判官伊藤正晴

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