平成13(ネ)2076 不当利得金返還等請求控訴,同年(ネ)第2251号同附帯控訴

裁判年月日・裁判所
平成14年2月27日 大阪高等裁判所
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判決文本文22,305 文字)

主文 1 本件控訴に基づき原判決主文1,3項を次のとおり変更する。 (一) 控訴人は,被控訴人に対し,685万2098円及びこれに対する平成12年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (二) 被控訴人のその余の請求を棄却する。 2 本件附帯控訴を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その4を控訴人の,その余を被控訴人の各負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人 (一) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。 (二) 被控訴人の本件附帯控訴を棄却する。 (三) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人 (一) 原判決主文1項を次のとおり変更する。控訴人は被控訴人に対し,892万1942円及びこれに対する平成12年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (二) 控訴人の本件控訴を棄却する。 (三) 訴訟費用は第1,2審とも控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 本件事案の概要は,後記2のとおり当審における当事者の主張を付加し,1のとおり訂正するほか原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決2頁末行の「貸金業」から3頁1行目の「という。)」までを「貸金業法」と,同4頁3行目括弧書きの「平成10年7月8日」を「平成10年6月8日」とそれぞれ改める。 2 当審における当事者の主張 (一) 控訴人 (1) 利息天引の場合と本条項適用の可否 ①利息制限法2条は利息天引の場合の利率の算出方法及び同法1条1項の ぞれ改める。 2 当審における当事者の主張(一) 控訴人(1) 利息天引の場合と本条項適用の可否①利息制限法2条は利息天引の場合の利率の算出方法及び同法1条1項の制限利率超過分の法的取扱を定めたものであるから,同法1条1項の適用を前提とするものである。本条項は一定の要件のもとに利息制限法1条1項の適用を排除することを定めたものであるから,その要件を充足する限り同条項を前提とする同法2条も適用の余地はない。②また出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)及び貸金業法は利息の支払時期ではなく実質年率で貸金業者を規制する金利体系を取っているもので,みなし弁済を利息後払いについては認めるが,天引の場合に認めないのは公平を欠く。③貸金業法は出資法5条2項に違反する場合を本条項適用の除外事由としているところ,出資法5条4項は利息天引の場合の5条2項の利率の算出方法を交付額を元本額とする旨定めており,利息天引の場合を排除する趣旨は見受けられない。 (2) 貸金業法17条書面及び18条書面の交付など① 17条書面について包括契約に基づき貸付を行った場合,包括契約の書面と個々の貸付の書面を合わせ読んで17条の要件を充たせば足りると解される。本件では基本契約の約定書と貸付金明細書(乙1,枝番を含む。以下同じ。)を合わせ読めば17条に規定する要件を充たすといえる。 ② 18条書面について(ア) 利息天引の場合この場合,貸付と同時に利息の授受があるから,17条の書面によって同時に利息の授受まで明らかになり,同書面は18条書面と一体をなし,一通の書面が両方の機能を果たす。そして貸付金額は乙1の「差引合計」あるいは「手渡金額合計」欄,受 があるから,17条の書面によって同時に利息の授受まで明らかになり,同書面は18条書面と一体をなし,一通の書面が両方の機能を果たす。そして貸付金額は乙1の「差引合計」あるいは「手渡金額合計」欄,受取金額及びその利息,賠償金または元本への充当額は「利息合計」欄で利息に充てられたことが明らかとなり,当該弁済後の残存債務の額は「差引合計」あるいは「手渡金額合計」欄から明らかである。また「弁済を受けた旨を示す文字」についても貸付金明細書の「利息合計」欄の記載によってこれが示されている。以上のとおり利息支払については基本約定及び乙1の書面が交付されており,18条書面の交付があったというべきである。しかも利息支払の場で乙1の各書面が交付されたから「直ちに」交付したといえる。 (イ) 利息後払い(平成10年6月8日以降)の場合この場合,控訴人は被控訴人に乙52の内容の各領収書を乙53の様式の書面で交付しており,所定事項のうち,貸付金額は「貸付元金」欄で,受取金額は「ご入金金額」,その利息,賠償金または元本への充当額は「計算基礎元金」,「利息」,「値引き額」の各欄で,受領年月日は「支払期日」欄で明らかとなる。「直ちに」の要件については弁済が振込送金の方法によって行われたときは,貸金業者が振込を確認して18条書面を送付するまでに相当の日数を要することは当然予想され,本件では概ね入金後1週間で領収書を発行しているから上記要件を充たすというべきである。なお仮にこれら貸付が利息後払いでなく利息天引の方法によるものであるとしても,上記(ア)のとおり本条項の適用がある。 ③ 任意性について本条項に規定する「利息として任意に支払った」とは,債務者が利息の契約に基づく利息または賠償額の予定に基づく賠償金の おり本条項の適用がある。 ③ 任意性について本条項に規定する「利息として任意に支払った」とは,債務者が利息の契約に基づく利息または賠償額の予定に基づく賠償金の支払に充当されることを認識した上,自己の自由な意思によって支払ったことで足りると解される(最高裁平成2年1月22日判決)。本件では被控訴人に利息の支払に充てる認識は十分あり,控訴人が被控訴人の意思を抑圧した事情はないから任意性は認められるべきである。 利息天引の場合についても,貸金業法43条,出資法5条2項,4項も条文上当然これを前提としているから,利息天引の場合一般的に任意性がないということは各規定の内容と矛盾することになるし,そもそも利息天引の条件を付して手形貸付をしたとしても,契約自由の原則の問題であり任意性は問題とならない。 (3) 過払分の別口債権への充当の可否①民法489条及び491条は,当事者の意思が不明な場合の意思補充規定であるが,本件で債務者は当該手形で決済される債務の支払をする意思しかなかったのであり,過払いが発生したからといって他の債務の支払に充てる意思はなかったから,同条の要件を欠くし,②本件で過払分につき別口債権への充当を認めると,複数の貸付がある場合,別個の取引によって生じたものであっても,同一当事者間で発生したというだけで事実上常に弁済充当されてしまうことになり,明らかに当事者の意思に反する結果となる。 また仮に法定充当の規定が適用されるとしても,まず数個の債務のうち全ての利息に充当し,残額があれば元本に充当されるべきである。 (二) 被控訴人(1) 貸付の個数及び利率について①本件取引の基本約定には貸付極度額の定めがあるほか,高額の極度額 利息に充当し,残額があれば元本に充当されるべきである。 (二) 被控訴人(1) 貸付の個数及び利率について①本件取引の基本約定には貸付極度額の定めがあるほか,高額の極度額を定めた包括根保証人を徴求しているが,各貸付が別個独立ならば,その都度貸付契約書を作成すべきであるし,極度額の定めや包括根保証人を徴求する必要はない,②控訴人が貸付の対象としているのは中小零細業者であり,高額な貸付を高利息で行えば各手形の決済日に自力で決済できる筈はなく,多くの顧客が各手形の決済資金を決済日直近に控訴人から当座入金を受けてまかなっていて,各入金額は直ちに控訴人の元に環流する仕組みとなっており,しかも基本約定で,各手形のうち1通でも支払停止になれば他の手形貸付についても全て期限の利益を失い一括請求が可能となる旨が定められていることから,倒産を覚悟しない限り顧客の自由となる資金ではない,③そして(ア)各手形取引ごとに利率に差があるとしても,利率の変動は一個の貸付期間中でもあり得ることであり,別口となる根拠たり得ず,(イ)また各手形取引ごとに控訴人の社内稟議がなされていたとしても,稟議は手形の切り返しを行うか否かを判断するために行ったものとみることもでき,現に稟議書の欄に「別口」「継続」のいずれかに丸を付ける扱いとなっているところ継続にチェックされ(乙8ないし10),継続回数の欄もあること,稟議は前紙の引き写しや,各紙毎に数回の取引が列挙されるなど継続時に実質的に稟議がなされたとはいえない,以上の点から,控訴人及び被控訴人間の取引は長期間にわたり基本契約のもとで手形切り返しによる貸し増しを予定して行われた一連・一体の取引というべきであるから,利息制限法の適用において基礎とすべき貸付金額は,貸付元本金額の合計金額となる。 わたり基本契約のもとで手形切り返しによる貸し増しを予定して行われた一連・一体の取引というべきであるから,利息制限法の適用において基礎とすべき貸付金額は,貸付元本金額の合計金額となる。 仮に貸付の一体性が否定されるとしても,貸付の複数小口化による利息制限法の脱法を防止する観点からは,形式的に新たな貸付であっても実質的には従前の債務の借り増しにすぎないとみるべきであるから,各貸付日における残元本額と当該貸付にかかる交付額の合計額を基準として利息制限法所定の制限利率を定めるべきである。 また,原判決は現実の交付額を基準に利率を定めているが,貸付元本額は利息天引前の金額を基準とすべきである。 (2) 過払金発生後の新たな貸付について過払金発生後に新たに貸付がなされた場合でも,公平の見地及びその時点で別口債権が存在する場合には過払金を法定充当する処理との均衡上,過払金額を上記貸付額から控除すべきである。その場合,法定充当あるいは相殺(新たな貸付債権との相殺の黙示的な予約)によるか,あるいは新たな貸付金として借主に交付された金員のうち過払額に達するまでの金員は過払金の返還として交付され,その残金が新たな貸付の元金として交付されたとみるべきである。 仮に上記控除がされないのであれば,控訴人は被控訴人に対し,不当利得金について利息制限法所定の上限金利を付して返還すべきである(民法704条)。 (3) 乙52,53号証について控訴人は,当審において,上記書面を被控訴人に交付したと主張立証するに至ったが,原審段階から18条書面の交付の有無などが争点となっていたことからすれば,時機に遅れた攻撃防御方法であるから却下すべきである。 第3 争点に対する判断当裁判所は,被控訴人の本件請求は主文1項 原審段階から18条書面の交付の有無などが争点となっていたことからすれば,時機に遅れた攻撃防御方法であるから却下すべきである。 第3 争点に対する判断当裁判所は,被控訴人の本件請求は主文1項(一)の限度で理由があると判断するが,その理由は後記2のとおり当審における当事者の主張に対する判断をし,1のとおり付加,訂正,削除するほか原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する。 1(一) 原判決8頁末行の次に改行の上「控訴人は平成10年6月8日以降の取引は利息後払いによる貸付であると主張し,乙52(控訴人作成の平成10年6月8日から平成11年9月11日までの間の領収書データ)にはこれに沿う記載(利息額も約束手形の額面ではなく,貸付元金欄の金額を基礎に算出している。)があるが,乙1の1ないし27(ほぼ同期間内の控訴人作成の貸付金明細書)では,貸付元金欄には利息を控除した後の金額が形式的に記載されているものの,計算された利息額は被控訴人が発行した約束手形の額面金額を貸付額として利息天引したことを前提とした記載となっていることに照らして採用できない。」を加え,同9頁14行目の「本条項」を「本条項(及び貸金業法43条3項)」と改め,同23行目の「契約書面」の次に「(以下「17条書面」ともいう。)」を,同行目の「受取証書」の次に「(以下「18条書面」ともいう。)」をそれぞれ加える。 (二) 同10頁1行目括弧書きの「(平成10年7月8日以降の貸付け)」を削り,同3行目の「確かに,」の前に「しかしながら,前記のとおり平成10年6月8日以降の貸付は利息天引の方法で行われたものであるから,本条項の適用はない。それ以外の平成2年4月24日までの貸付については,」を加え,同12頁9行目の「相殺に」を「相殺の」 とおり平成10年6月8日以降の貸付は利息天引の方法で行われたものであるから,本条項の適用はない。それ以外の平成2年4月24日までの貸付については,」を加え,同12頁9行目の「相殺に」を「相殺の」と改め,同行目の「必ずしも」を削り,同11行目の「そして」から同15行目までを削り,同13頁4行目の「争いのない事実で認定した」を「争いのない事実の」と改める。 (三) 同13頁6行目から7行目にかけての「別紙計算書3」を「別紙計算書(但し,原判決別紙計算書3の違算を訂正し,閏年について計算の起算日から数えて向こう1年の間に2月29日が入る場合に年利の366分の1として日数を乗じる立場により利息金額を算出したもの。)」と,同10行目から12行目までを次のとおりそれぞれ改める。 「① 過払金返還請求権の合計金額 693万1403円② 貸付金残債権 7万9305円③ ①から②の金額を控除すると,685万2098円となる。」 2 当審における当事者の主張に対する判断(一) 利息天引の場合と本条項適用の可否について(控訴人の主張)控訴人は,①利息制限法2条は利息天引の場合の利率の算出方法及び同法1条1項の制限利率超過分の法的取扱を定めたものであるから,同法1条1項を前提とするものであり,他方本条項は一定の要件のもとに利息制限法1条1項の適用を排除することを定めたものである,②貸金業法は利息の支払時期ではなく実質年率により貸金業者を規制する立場を取っているもので,みなし弁済を利息後払いについては認めるが,利息天引の場合に認めない根拠はない,③貸金業法43条2項に定められた同条1項の除外事由には利息天引の場合を規定しておらず,除外事由である出資法5条2項に みなし弁済を利息後払いについては認めるが,利息天引の場合に認めない根拠はない,③貸金業法43条2項に定められた同条1項の除外事由には利息天引の場合を規定しておらず,除外事由である出資法5条2項に違反する貸付について,出資法5条4項は利息天引の場合の利率の算出方法を交付額を元本額とする旨定めているから,本条項に利息天引の場合を排除する趣旨は窺えない,以上の点から利息天引の場合にあっても,本条項の適用は否定されないと解すべきであると主張する。 しかしながら,(ア)本条項(及び貸金業法43条3項)は,利息制限法の制限利率を超える無効な利息につき,政策的見地から例外的に一定の厳格な要件のもとに有効な債務の弁済とみなす規定であるところ,例外規定としては利息制限法1条1項,4条1項のみを挙げ,利息天引に関する同法2条については敢えて触れていないこと,(イ)実質的にも,利息天引は借主が貸金業者から金員を受領する際に貸付条件として行われるもので,これを拒絶すれば通常貸付が拒否される関係にあり,支払の際に弁済者が利息制限法に従って元利充当すべき旨などを主張することが可能な利息後払いの場合とは異なるものであることからすれば,上記条項は利息制限法2条の特則ではなく,利息天引による貸付の場合,本条項の適用は否定されるものと解するのが相当である。 控訴人の主張する①及び②については,上記(ア)及び(イ)に説示したところから採用できないし,③については,出資法は専ら刑事罰の対象としての高利の約定とその受領を禁止しているもので,その趣旨からすれば,利息天引の場合も包含することはむしろ当然であり,これと上記のとおり政策的見地から貸金業者に有利な特例を設けた本条項とを同列に扱うことはできず,上記主張も採用できない。 以上のとおりで,利息天引の場合 場合も包含することはむしろ当然であり,これと上記のとおり政策的見地から貸金業者に有利な特例を設けた本条項とを同列に扱うことはできず,上記主張も採用できない。 以上のとおりで,利息天引の場合は,本条項のその余の要件を具備しているかについて判断するまでもなく,本条項を適用する余地はなく,この点の控訴人の主張は採用できない。 (二) 利息後払いの場合における,17条書面及び18条書面などについて(控訴人の主張)前記判示及び引用にかかる原判決9頁22行目から同10頁13行目までのとおりであるほか,控訴人は,18条書面について,乙52と同内容の書面(乙53)を受領後約1週間後に被控訴人に宛てて郵送していると主張するが,前記のとおり乙52は利息天引により貸付がされた期間内にかかるものであるほか,乙1の1ないし27と内容においても合致せず,また特段の事情も窺えないのに当審に至って提出された経緯に照らしても,これら書面が被控訴人が手形金額を支払った都度直ちに被控訴人に交付されたとは考え難く,まして利息後払いによる貸付期間中にこれらと同様式の書面が被控訴人に交付されたことを認めるに足りる証拠もない。したがって,控訴人の上記主張は採用できず,本条項の定める他の要件について検討するまでもなく,利息後払いの場合についても,本条項を適用する余地はなく,この点の控訴人の主張も採用できない。 なお被控訴人は上記書証の提出は時機に遅れたものであるから却下すべきであると主張するが,さらに証人などの尋問を必要とするものとは認められないから,これにより訴訟の完結を遅延させることになるとは認められず,上記主張は採用できない。 (三) 貸付の個数及び利率について(被控訴人の主張)(1) 被控訴人は,①本件取引の基本約定には貸付極度額の定 り訴訟の完結を遅延させることになるとは認められず,上記主張は採用できない。 (三) 貸付の個数及び利率について(被控訴人の主張)(1) 被控訴人は,①本件取引の基本約定には貸付極度額の定めがあるほか,高額の極度額を定めた包括根保証人を徴求しているが,各貸付が別個独立ならば,その都度貸付契約書を作成すべきであるし,極度額の定めや包括根保証人を徴求する必要はない,②控訴人が貸付の対象としているのは中小零細業者であって各手形の決済日に自力で決済できる筈はなく,控訴人からの各入金額は直ちに控訴人の元に環流する仕組みとなっており,しかも基本約定で,各手形のうち1通でも支払停止になれば他の手形貸付についても全て期限の利益を失い一括請求が可能となる旨が定められているから,顧客の自由となる資金ではない,③そして(ア)各手形取引ごとに利率に差があるとしても,利率の変動は一個の貸付期間中でもあり得ることであり,別口となる根拠たり得ず,(イ)また各手形取引ごとに控訴人の社内稟議がなされていたとしても,稟議は手形の切り返しを行うか否かを判断するために行ったものとみることもでき,継続時に実質的に稟議がなされたとはいえない,以上の点から,控訴人及び被控訴人間の取引は長期間にわたり基本契約のもとで手形切り返しによる貸し増しを予定して行われた一連・一体の取引というべきであるから,利息制限法の適用において基礎とすべき貸付金額は,貸付元本金額の合計金額となると主張する。 しかしながら引用にかかる原判決判示(原判決10頁18行目から11頁10行目まで)のとおりであるほか,被控訴人の主張する上記①,②の事情があるとしても(もっとも,②の点については,貸付金が現実に被控訴人の預金口座に振り込まれる以上,被控訴人がこれを予定された手形の決済以 目まで)のとおりであるほか,被控訴人の主張する上記①,②の事情があるとしても(もっとも,②の点については,貸付金が現実に被控訴人の預金口座に振り込まれる以上,被控訴人がこれを予定された手形の決済以外の用途に充てることを防止することは不可能である。),継続的貸付が当然に1個の貸付になるものということはできず,被控訴人の上記主張は採用できない。 (2) 被控訴人は,仮に貸付の一体性が否定されるとしても,貸付の複数小口化による利息制限法の脱法を防止する観点からは,形式的に新たな貸付であっても実質的には従前の債務の借り増しにすぎないとみるべきであるから,各貸付日における残元本額と当該貸付にかかる交付額の合計額を基準として利息制限法所定の制限利率を定めるべきであると主張する。 しかしながら,各貸付日における残元本額と新規の貸付にかかる交付額の合計額をもって,改めて消費貸借ないし準消費貸借の目的とする新たな合意がなされたと認めるに足りる証拠はないから,貸付としては別個とみるほかはなく,同合計額を基準として利息制限法所定の制限利率を定めるべきであるとする上記主張は採用できない。 また被控訴人は,各貸付の利率について,利息天引前の貸付元本額を基準とすべきであると主張するが,天引額と比較すべき金額は受領額を基準として算出された弁済期までの利息額であると解すべきことは利息制限法の規定及び趣旨から明らかである。なお,弁済期後の遅延損害金については契約金額を基準に利率を定めることになるが,別紙計算書のとおり本件ではこのような事例はないから,上記主張は採用できない。 (四) 過払分の別口債権への充当の可否(控訴人の主張)控訴人は,民法489条及び491条は,当事者の意思が不明な場合の意思補充規定であるが,本件で債務者は当 上記主張は採用できない。 (四) 過払分の別口債権への充当の可否(控訴人の主張)控訴人は,民法489条及び491条は,当事者の意思が不明な場合の意思補充規定であるが,本件で債務者は当該手形で決済される債務の支払をする意思のみを有し,過払いが発生したからといって他の別口債務の支払に充てる意思まではなかったから,上記の要件を欠くものであり,その場合でも法定充当を認めることになると,複数の貸付がある場合,別個の取引によって生じたものであっても,同一当事者間で発生したというだけで事実上常に弁済充当されてしまうことになり,明らかに当事者の意思に反する結果となると主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件の各貸付は基本約定に基づき継続して行われ,かつ新規の貸付金をもって旧債務を弁済することが当事者間で予定された一連の取引であって,このような貸付取引においては準消費貸借契約を締結するなどして貸付債権を一本化することも通常行われている実態(当裁判所に顕著な事実)や,被控訴人自身も単に期限の猶予を得ていたという認識で取引を続け,その都度貸付債権が成立することについては厳密に意識していなかったこと(被控訴人本人)に照らせば,債務者が特段の意思表示をしない限り,過払分については当時存在する別口の貸付債権に充当されるとみるのが債務者の通常の意思や利息制限法2条の趣旨に合致するというべきである。控訴人の上記主張は採用できない。 また控訴人は,仮に法定充当の規定が適用されるとしても,まず数個の債務のうち全ての利息に充当し,残額があれば元本に充当されるべきであると主張する。 しかしながら,本件は数口の債務のうちの1つについて指定してなされた過払利息が,指定された元本に充当され,なお過払いとなった場合の処理に関するものであるから 当されるべきであると主張する。 しかしながら,本件は数口の債務のうちの1つについて指定してなされた過払利息が,指定された元本に充当され,なお過払いとなった場合の処理に関するものであるから,控訴人の上記主張とは前提を異にし同主張は採用できない。 (五) 過払金発生後の新たな貸付について(被控訴人の主張)(1) 被控訴人は,過払金発生後に新たに貸付がなされた場合でも,公平の見地及びその時点で別口債権が存在する場合には過払金を法定充当する処理との均衡上,過払金額を上記貸付債権に充当すべきであると主張するが,引用にかかる原判決判示のとおり,過払を生じた時点で別口の債権が存在しなければ充当の問題は生じないと解すべきであり,上記主張は採用できない。 (2) 被控訴人は,過払金返還請求権と新たな貸付債権との相殺を主張するが,同主張が採用できないことは,引用にかかる原判決判示のとおりである。また,被控訴人は新たな貸付債権との相殺の黙示的予約の成立も主張するかのようであるが,この事実を認めるに足りる証拠はない。 (3) 被控訴人は,新たな貸付金として借主に交付された金員のうち過払額に達するまでの金員は過払金の返還として交付され,その残金が新たな貸付の元金として交付されたとみることもできると主張するが,控訴人がそのような意思のもとに貸付金を交付したことを認めるに足りる証拠はない(なお被控訴人は,仮に上記充当ないし相殺などがされないのであれば,控訴人は民法704条に基づき不当利得金について利息制限法所定の上限金利を付して返還すべきであるとも主張するが,附帯控訴の趣旨と整合しないし,これが民法704条の悪意の受益者が負担すべき不当利得により被った損害に該当しないことは明らかであるから,同主張は採用できない。)。 第4 以上によれ も主張するが,附帯控訴の趣旨と整合しないし,これが民法704条の悪意の受益者が負担すべき不当利得により被った損害に該当しないことは明らかであるから,同主張は採用できない。)。 第4 以上によれば,被控訴人の本件請求は上記の限度で理由があるから認容し,その余は失当として棄却すべきである。よって,これと一部異なる原判決を変更し,本件附帯控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官武田多喜子 裁判官松本久 裁判官小林秀和(別紙省略)原審判決神戸地方裁判所平成12年(ワ)第137号不当利得金返還等請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,687万7401円及びこれに対する平成12年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告に対し別紙手形目録記載の各手形を引き渡せ。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,5分し,その4を被告の負担とし,その余を原告の各負担とする。 5 この判決は,1,2項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,892万1942円及びこれに対する平成12年2月5日(訴状送達に日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事実の概要など 1 事実の概要本件は,被告から利息天引などの方法で継続的に貸付けを受け,順次返済をしてきた原告が利息制限法所定の利率で利息を計算した場合,別紙計算書1のとおりの過払い 2 事実の概要など 1 事実の概要本件は,被告から利息天引などの方法で継続的に貸付けを受け,順次返済をしてきた原告が利息制限法所定の利率で利息を計算した場合,別紙計算書1のとおりの過払いが生じているとして不当利得返還請求権に基づき右過払い分の返還とともにこれに対する平成12年2月5日(本件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払い及び被告に所持すべき正当事由がないとして別紙手形目録記載の手形5通(以下,5通をあわせて単に「本件手形」という。)の引渡しを求める事案である。 2 当事者間に争いのない事実(1)① 被告は,貸金業規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)3条1項による登録を受けたいわゆる商工ローン業者の大手であり,貸金を業としている。 ② 原告は,Aの屋号で,ケミカルシューズの製造・販売を業とするものであるが,昭和61年11月27日より被告との間で基本取引約定を締結し,それ以降継続して被告から金銭の借入れを行ってきた。 (2) 原告と被告の金銭消費貸借の状況は,別紙計算書1記載の取引日欄,借入額欄,返済額欄のとおりである(以下,原告と被告間の全体の取引を「本件貸付け」という。)。 なお,被告は,上記計算書中の平成6年7月25日から平成10年3月13日までの貸付けについて,利息天引の方法で行ってきた。 (3) 被告は,原告から原告への貸付金の担保として交付を受けた本件手形(但し,振出時,振出日が白地かどうかの点は,除く。)を占有している。 (4) 被告は,原告に対し,平成12年9月22日,原告が受領した被告の同日付け準備書面で,被告の原告に対する本件貸付残金債権を自動債権とし,原告の被告に対する過払いによる不当利得債権を受動債権として対当額で相殺 ,原告に対し,平成12年9月22日,原告が受領した被告の同日付け準備書面で,被告の原告に対する本件貸付残金債権を自動債権とし,原告の被告に対する過払いによる不当利得債権を受動債権として対当額で相殺する旨の意思表示をした。 3 主要な争点及びそれに対する当事者の主張(1) 争点1被告から原告への本件貸付けに貸金業の規制等の関する法律(以下「貸金業法」という。)43条1項(以下「本条項」という。)のみなし弁済の規定の適用があるか。 (被告の主張)① 利息を天引きした貸付けにおける利息にも,以下のとおり本条項の適用がある。 a 出資法及び貸金業法は,利息の支払時期でなく,実質年利で貸金業者側を規制する金利体系をとり,利息を天引きした場合と後払いする場合における債務者の負担額の平均化を図っている。この法体系からすると,「みなし弁済」を「後払い」の場合には認めるが,「天引」の場合に認めないというのでは公平を欠くことになる。 b 貸金業法43条2項3号,出資法5条4項の規定に従うと,利息天引の場合は,交付額を元本として計算した利息が出資法5条2項の制限内(年40,004%)で有れば,他の要件の充足を前提として,利息制限法の制限金利を超過した支払いも有効となる(同法1条1項の適用を排除している。)うえ,利息制限法2条は,同法1条1項の適用を前提とするもので,天引額を含む全額について消費貸借の成立を認め,天引で利息の支払いが済んだと認めている。 上記のような事情からすると,利息制限法1条1項の適用が排除される場合は,同条項を前提とする同法2条も適用する余地がなく,本条項は,利息を支払ったと同様の経済関係が成立した場合も含むと解するのが自然である。 ②a 包括契約に基づく貸付けの場合,包括契約の る場合は,同条項を前提とする同法2条も適用する余地がなく,本条項は,利息を支払ったと同様の経済関係が成立した場合も含むと解するのが自然である。 ②a 包括契約に基づく貸付けの場合,包括契約の書面と個々の貸付けの書面を合わせ読んで,貸金業法17条の要件を満たせばよい(大蔵省銀行局長通達第2の4(2)ハ,乙4)。 b 被告は,原告に対する本件各貸付けにおいて,原告に基本約定書(乙5)を交付しているところ,これらの包括契約の書面と個々の貸付けの際の貸付金明細書(乙1)を合わせると,貸金業法17条の要件を満たすことになる。 ところで,利息天引の場合,貸付けと同時に利息の支払いもあるので,同法17条1項の貸付内容を明らかにする書面が同時に同法18条書面としての意義も有している。利息後払いの場合(平成10年7月8日以降の貸付け)は,同各書面の他に領収書を原告に発行している。したがって,利息天引の場合は,基本の約定書(乙4の1ないし4)及び貸付金明細書(乙1)の書面の交付がある以上,また,利息後払いの場合には,同各書面の他に領収書を交付している以上,同法18条書面の交付はあるというべきである。 ③a 「利息として任意に支払った」とは,債務者が利息の契約に基づく利息の支払いに充当されることを認識したうえ,自己の自由な意思によって支払ったことをいい,債務者において,その支払った金額の額が利息制限法1条1項または4条1項に定める利息の制限額を越えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しない(最高裁判所平成2年1月22日判決・判時1349号58頁)。 b 原告は,被告から融資を受ける際,貸付金明細書(乙1)を受領しているところ,同書面には,「利息合計」という欄があることから,どれだけ 判所平成2年1月22日判決・判時1349号58頁)。 b 原告は,被告から融資を受ける際,貸付金明細書(乙1)を受領しているところ,同書面には,「利息合計」という欄があることから,どれだけ利息に充当されるか容易に認識できたうえ,被告の従業員からも利息に関する説明を受けている。 原告は,被告が利息制限法を超える金利を天引きする方法で貸し付けていることを知りながら借入れを繰り返していたもので,少なくとも,どれだけの金額が利息の支払いに充当されるか,認識していたもので,原告の利息の支払いは,任意による支払いということができる。 (原告の主張)① 本条項は,利息制限法1条1項又は4条1項の特則であり,同法2条に対する特則でないから,利息を天引きした貸付けについては適用されない。 ② 本条項が適用されるためには,貸金業法17条1項の要件を満たす契約書面,18条1項の要件を満たす受取証書を直ちに交付することが要件となっている。しかし,本件の被告から原告への各貸付けに当たっては,同各要件を満たしていない。 ③ また,本条項が適用されるためには,「債務者が利息として任意に支払った」ことが要件とされている。 しかし,被告から原告への貸付けは,利息を先取りするという方法で,その借り換え時にも利息を天引きするという方法で行われているところ,かような貸付形態は,利息の先払いがなければ貸付を受けられない,あるいは,借り換えをしてもらえず,それを受け入れない限り,担保で被告に交付した手形が不渡となる危険にさらされるというもので,到底任意性を認めることはできない(東京地判平成2年12月10日判タ748号169頁,富山地判平成4年10月15日判時1463号144頁参照)。 更に,本件貸付けの場合,原告は,当座 ので,到底任意性を認めることはできない(東京地判平成2年12月10日判タ748号169頁,富山地判平成4年10月15日判時1463号144頁参照)。 更に,本件貸付けの場合,原告は,当座預金に担保手形の決済のため,予めその決済資金を準備し,それを前提として被告は担保手形を取立に回し,それによって支払を受けているところ,以上のような処理は,被告への決済資金を上回る金額が預けられている当座預金から原告の判断を何ら経ることなく被告が弁済を受けるもので,原告は,利息制限法超過部分を認識したうえであえて支払ったという情況にはない。したがって,この点からも任意性の要件を満たしていない。 (2) 争点2① 本件貸付けは,一個の契約か,それとも,個々の金銭の授受毎の貸付け契約か。 ② 利息制限法を超過して支払った利息の残債務に対する充当方法は如何にあるべきか。原告の被告に対する超過利息分の不当利得返還請求権を自動債権とし,被告の貸金返還請求権を受動債権とする相殺適状の時期,効果について(原告の主張)①a 被告から原告への本件貸付けは,原告と被告との間で締結された基本契約に基づいてなされ,高額の極度額を定めた包括根保証人が存在している(乙4)うえ,本件貸付けは,手形の「切り返し」による貸付け(貸付けで交付される金員は,従前,担保として振出された手形の決済にあてられる。)が繰り返されたもので,新たな貸付けをもって別口の新規の貸付けということはできない,すなわち,担保手形の決済日と貸付日が連続ないし近接する一連の貸付取引で,一体の取引というべきものである。したがって,過払金は,当然に残存元本に充当される。 b 形式的には,別個の契約による金銭消費貸借であったとしても,同じ当事者間で事実上継続する貸借であって,実 体の取引というべきものである。したがって,過払金は,当然に残存元本に充当される。 b 形式的には,別個の契約による金銭消費貸借であったとしても,同じ当事者間で事実上継続する貸借であって,実質的に一個の契約と見られる場合は,利息制限法の制限利率を超過する支払分については,当然に残存元本に充当される。本件貸付けは,実質的には,一個の契約と認められる。 ② 仮に,本件貸付けがその個々の貸付けごとに独立しているとしても,過払利息・損害金は,その都度,法的に有効に存在する別口債務に充当される。 ③ また,過払い金が生じた時点で別口の債務が存在しない場合でも,その後に新たに別口の借入れを行った場合には,同借入れに過払金返還請求権との相殺による充当の意思表示があったものと解され,したがって,その借入れによる債務の発生時点で同債務と過払金返還請求権とが相殺され,その限度で同借入債務が消滅する。 なお,上記の場合,債務者が過払金の返還請求権を自働債権として,別口の貸付金債権を受動債権とする相殺の意思表示を行えば,債務者は期限の利益を放棄することができるから,相殺の効果はその後に生じた別口の貸金の発生時点まで遡り,別口の貸金の元本債権はその発生の時点で過払金返還請求権の額の限度で消滅するというべきである。 ④ 原告は,過払金返還請求権と残存債務とを相殺する旨の意思表示をした。 ⑤ なお,被告の「過払金が生じた場合,別口の貸付けへの充当計算は認められない。」との主張は,確立された最高裁判所の判例(昭和39年1月18日大法廷判決・民集,昭和43年10月29日判決・民集,昭和43年11月13日大法廷判決・民集)及び裁判実務にも反する。 (被告の主張)① 被告から原告への本件貸付けは,以下のような事情から一個の貸付 ・民集,昭和43年10月29日判決・民集,昭和43年11月13日大法廷判決・民集)及び裁判実務にも反する。 (被告の主張)① 被告から原告への本件貸付けは,以下のような事情から一個の貸付けではなく,それぞれ別個の貸付けであることが明らかである。 a 被告は,融資を受けようとする者からの申し込みを受けると,基本的には大阪本社審査部で稟議にかけ,審査部で希望借入額,信用力,保証人の信用料などを審査し,融資の可否を決定し,手形貸付けを実行するが,それはその後になされる個々の借入れについても当初の借入申込と同様大阪本社審査部の稟議にかけてその融資の可否を決定している。 b また,本件貸付けは,その貸付けに際して原告から手形が振出され,それに見合う金銭が原告に交付されている。 c 本件貸付けのうち,平成6年ころまでの貸付けは,支払日とは無関係に,つまり,手形の決済のためではなく,原告の要請に基づいて別途貸付けを行っている。 ② 複数の貸付けがある場合,一個の貸付けについて過払いが生じても,当事者の意思が不明な場合の意思補充規定である民法489条は適用されず,したがって,その部分については非債弁済として不当利得金返還請求権が発生するに過ぎず,当然に別口の債務に充当されることにはならない。同弁済は,当該債務に対する弁済であって,他の債務に対する弁済ではないからである。 ③ 原告は,過払金返還請求権が生じた後に再び借入れをしたときには,債務者である原告が,追加借入れの時点で期限の利益を喪失して相殺の意思表示をすることになるため,過払金返還請求権と追加借入れで発生した債務とが対当額で消滅する旨主張する。しかし,同主張によれば,債権者が持つ追加債権の期限の利益を一方的に奪う結果となる。そして,追加借入れをする際 とになるため,過払金返還請求権と追加借入れで発生した債務とが対当額で消滅する旨主張する。しかし,同主張によれば,債権者が持つ追加債権の期限の利益を一方的に奪う結果となる。そして,追加借入れをする際の債務者である原告の意思には,同相殺の意思表示をするとの意思はなかった。したがって,原告の同主張は,理由がない。 (3) 争点3本件貸付けで適用されるべき利率について(原告の主張)被告から原告への本件貸付けは,全体を総合してみれば,一体であるからその当初の借入金額が100万円を超えている以上,返済が繰り返されてその途中で残高が100万円を下回る時期があっても,本件で適用される利息制限法の制限利率は,終始年15パーセントである。 (被告の主張)被告から原告への本件貸付けは,個々の貸付けがそれぞれ別個のもであるため,その貸付金額に応じて利息制限法の制限利率が適用されるべきである。 なお,争点1ないし3に対する被告の主張を前提とした本件貸付けにかかる計算は,別紙計算書2記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実及び証拠(甲4の1ないし43,7,乙1の1ないし80,4の1ないし3,5)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 被告は,原告に対し,貸付けに当たって,約定書(基本約定)(平成4年8月19日付けのもの〔乙4の1〕,平成9年9月25日付けのもの〔乙4の2〕),又は,基本取引約定書(平成10年6月11日付けのもの〔乙4の3〕,平成10年10月17日付けのもの〔乙4の4〕)を交付している。 同約定書などには,遅延損害金の率として,年40.004パーセントとの定めがある。 (2) 昭和61年11月27日から平成2年4月24日までの被告の原告への貸付けは,利息天引 している。 同約定書などには,遅延損害金の率として,年40.004パーセントとの定めがある。 (2) 昭和61年11月27日から平成2年4月24日までの被告の原告への貸付けは,利息天引でなく,融資した金額を利息後払いで元金を分割して弁済するという約束であった(甲4の1ないし9,甲7)。 (3) 原告は,平成2年12月29日以降の借り入れに当たっては,被告から利息天引で借り入れをし,手形・小切手によってその返済を約束している。その場合,被告に対し,同各借り入れによって返済期日に支払うべき金額を額面金額とする手形・小切手を振り出している(甲4の10ないし43,甲7,乙1の1ないし80)。 (4) 原告と被告間の本件貸付けに当たっては,被告からの借入の誘因があった場合があるが,原告からの貸付けの申込みに応じた被告の承諾があったところ,被告は,本件での原告に対する各貸付けの際,原告に対し,被告の商号・被告の住所・契約年月日・貸付けの金額・貸付けの利率・支払期日・支払額(手形額面)・支払場所(但し,平成6年5月25日以前の分については,その記載がない。)についての各記載のあるPEYMENT,又は,貸付金明細書を交付している(甲4の1ないし43,乙1の1ないし80)。 なお,上記PEYMENT及び貸付金明細書には,遅延損害金に関する記載がない(甲4の1ないし43,乙1の1ないし80)。 2 争点1について(1) 被告は,天引きされた利息にも,本条項の適用があるとして,本件では,同法18条所定の書面を交付し,そして,それが任意になされたものであるから,みなし弁済の規定が適用される旨主張する。 (2) しかし,本条項は,利息制限法1条1項又は4条1項の特則にすぎず,同法2条に対する特則ではないと解するのが相当である。 になされたものであるから,みなし弁済の規定が適用される旨主張する。 (2) しかし,本条項は,利息制限法1条1項又は4条1項の特則にすぎず,同法2条に対する特則ではないと解するのが相当である。したがって,利息の天引については,それが合意の上で,天引の際に法定の契約書面,受取証書を交付するなど本条項の要件を充足していたとしても,利息制限法2条が適用され,同条により計算される超過部分は,元本の支払いに充当されたものとみなされる。 (3)① 本件では,前記認定したとおり利息天引以外の貸付けも存在する。そこで,そのような場合において本条項が適用されるか,検討する。 ② 本条項が適用されるためには,少なくとも,貸金業法17条1項の要件を満たす契約書面,18条1項の要件を満たす受取証書を直ちに交付することが要件となっている。 ③ 被告は,原告に対する本件貸付けに当たって,原告に基本の約定書(乙4の1ないし4)を交付するとともに本件各貸付けの際,貸付金明細書(乙1の1ないし80)を交付しているところ,以上の各書面の交付は,貸金業法17条書面の交付の要件を満たしているし,また,利息後払いの場合(平成10年7月8日以降の貸付け)は,同各書面の他に領収書を原告に発行している以上,同法18条書面の交付要件も満たしている旨主張する。 ④ 確かに,被告から原告に対し,約定書(基本約定)などの基本契約に関する書面ととともに各貸付けの際にPEYMENTや貸付金明細書が交付されているが,被告から原告への昭和61年11月27日から平成2年4月24日までの各貸付けに先立って,上記基本の約定書(乙4の1ないし4に類するもの)などを交付していたか,本件の証拠上必ずしも明らかでないうえ,原告が被告にその弁済をした都度,貸金業法18条に規定された受取証書を 貸付けに先立って,上記基本の約定書(乙4の1ないし4に類するもの)などを交付していたか,本件の証拠上必ずしも明らかでないうえ,原告が被告にその弁済をした都度,貸金業法18条に規定された受取証書を交付したと認めるに足りる証拠はない。そうすると,被告から原告に対してなされた貸付けのうち,利息天引以外の貸付けに当たっても,本条項が適用される余地はないといわざるを得ない。 (4) そうすると,本件の被告から原告への各貸付けに対する各利息は,利息制限法1条1項所定の制限額によることとなる。 3 争点2について(1) 原告は,被告に対する本件貸付けは,担保手形の決済日と貸付日が連続ないし近接する一連の取引で,一体の取引というべきもので,実質的には,一個の契約と認められる旨主張する。 確かに,被告の原告に対する本件貸付けは,前記認定したとおり,担保手形の決済日と貸付日が連続ないし近接する一連の取引であって,昭和61年11月27日から平成11年11月8日まで128回にわたって継続的にその貸付けがなされているし,また,その一部においては,事後に行われる個々の契約に先立って当事者間で基本的事項を定める基本契約が締結されたり,また,個々の貸付けに当たっては,被告からの貸付けを誘引する行為があった場合もある。しかし,前記認定したとおり本件の貸付けのうち,平成6年ころまでの貸付けは,必ずしも次期の貸付時期とその直前などの返済時期とが一致しているわけでないうえ,個々の貸付けに当たっては,原告からの申込みを受けて被告がその貸付けを承諾するという合意が成立し,その際,個々の貸付けを示す貸付明細書が作成され,現実に貸付けにかかる金員(利息天引〔取立料,事務手数料も天引〕場合は,それらを引いた金員)が原告に交付され,その金員の使途について,原告と被告 立し,その際,個々の貸付けを示す貸付明細書が作成され,現実に貸付けにかかる金員(利息天引〔取立料,事務手数料も天引〕場合は,それらを引いた金員)が原告に交付され,その金員の使途について,原告と被告との間で特に定めがあったわけでもなかったことからすると,個々の貸付けごとに貸付けが成立していたとするのが相当である。 ところで,原告と被告との間では,個々の貸し付け契約とは別個に貸付けにかかる基本契約が締結されているが,継続的契約の場合,個々の契約に先立って個々の契約に共通する事項を定めるための基本契約は,継続的な契約関係が予定されている場合,よく見られるものであって,本件においても基本契約が締結されているからといって,本件貸付契約が一体のものとして一個の契約ということができないことはいうまでもない。 (2)① 原告は,ある一口の貸付けに対する弁済について,利息制限法所定の制限利率を適用すると,過払金が生じる場合,その過払金は,その都度,法的に有効に存在する別口債務に充当され,仮に,その時点で別口債務が残っていない場合には,その後の新たな貸付けで生じた債権と過払金返還請求権との相殺による充当の意思表示があったものと解され,したがって,その貸付けによる債権発生時点で同債権と過払金返還請求権とが相殺され,その限度で同貸付金債権が消滅する旨主張する。他方,被告は,複数の貸付けがある場合,一個の貸付けについて過払いが生じても,当事者の意思が不明な場合の意思補充規定である民法489条は適用されず,したがって,その部分については非債弁済として不当利得金返還請求権が発生するに過ぎず,当然に別口の債務に充当されることにはならない旨主張する。 金銭の支払いは,基本的には,ある特定の債務に対する弁済としてなされたとき,初めてその効力が生ずるもので 還請求権が発生するに過ぎず,当然に別口の債務に充当されることにはならない旨主張する。 金銭の支払いは,基本的には,ある特定の債務に対する弁済としてなされたとき,初めてその効力が生ずるものである。ところで,本件でも存在するが,特定の債務に対する弁済がなされた当時,その当事者間に弁済の対象となった債務以外に複数の借受金債務があった場合で,上記特定の債務に対する弁済が,利息制限法所定の制限利率を適用すると,過払金が生じるとき,その過払金は,債務者が特段の意思表示をしていない限り,民法489条,491条に基づいて他の別口の債務の支払いに充当されると解するのが相当である。しかし,同過払いがが生じた時点において,他に債務がない場合には,他の債務があった場合のような充当の問題が生じる余地はなく,その後,新たに生じた借受金債務の元本に充当されるということはないと解するのが相当である。 ② ところで,原告は,被告に対する過払金債権が生じた時点で別口債務が残っていない場合でも,同債権発生後,新たな貸付けで生じた貸付金債権発生時点で同債権と原告の過払金返還請求権との相殺による充当の意思表示があったものと主張する。しかし,原告が主張する上記のような場合に,原告が当然に相殺に意思表示の意思を有していたか,必ずしも疑問があるうえ,本件において,同主張するような場合に原告が被告に対し,相殺の意思表示をしたと認めるに足りる証拠はない。そして,仮に,原告が主張するような場合に,相殺の意思表示がなされていたとしても,相殺の効力は,相殺適状の時に遡るに過ぎないため(民法506条2項),相殺の意思表示があった場合でも新たな貸付金債権の弁済期が到来した時点で相殺適状が生じ,その時点で初めて相殺の効力が生じる。 ③ 原告は,本件貸付けは,全体を総合してみれば,一体 506条2項),相殺の意思表示があった場合でも新たな貸付金債権の弁済期が到来した時点で相殺適状が生じ,その時点で初めて相殺の効力が生じる。 ③ 原告は,本件貸付けは,全体を総合してみれば,一体であるからその当初の借入金額が100万円を超えている以上,返済が繰り返されてその途中で残高が100万円を下回る時期があっても,本件で適用される利息制限法の制限利率は,終始年15パーセントである旨主張する。 しかし,本件貸付けが原告が主張するように全体を通じて一個の取引と認められないことは,前記認定したとおりであるが,同一日に複数の貸付けがなされている場合は,その担保となる手形が複数交付され,そして,その弁済期が相違していたとしても,その合計額による一個の貸付けで弁済期が相違するに過ぎないものと解するのが相当である。 したがって,貸付け元本額が10万円以上100万円未満の場合は,年1割8分,同元本額が100万円以上の場合は,年1割5分となる(利息制限法1条)。 4 別紙計算書1記載の「取引日」欄記載の日に被告が「借入額」欄記載の額を原告に貸付け,原告が「返済額」欄記載の額を被告に返済していること,そして,被告が被告の原告に対する貸付金残債権を自動債権とし,原告の過払金返還請求権(不当利得返還請求権)を受働債権として,その対当額で相殺の意思表示をしていることは上記当事者間で争いのない事実で認定したとおりである。そこで,本件貸付けによる利息の充当などについて,上記2,3で説示した方法により利息制限法1条1項所定の制限利率を適用して計算すると,別紙計算書3記載のとおりとなる。 同計算書を踏まえ,上記相殺の計算をすると以下のとおりとなる。 記① 過払金返還請求権の合計金額 695万5577円 ,別紙計算書3記載のとおりとなる。 同計算書を踏まえ,上記相殺の計算をすると以下のとおりとなる。 記① 過払金返還請求権の合計金額 695万5577円② 貸付金残債権 7万8176円③ ①から②の金額を控除すると687万7401円となる。 5 そこで,被告が所持する本件手形であるが,それに対応する貸付金債権は,上記4で説示したとおり全て返済されているから,被告において,それを所持しておくべき正当な理由がない。 6 以上の次第であるから,原告の金員の支払いを求める請求は,687万7401円及びこれに対する平成12年2月5日(本件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は,理由がないから棄却することとし,手形の引渡しを求める請求は,理由があるから認容することとする。 よって,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部 (別紙省略)

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