- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決中,原判決にいう各事業年度(以下において,略称は原判決の例による)の法人税にかかる更正処分の一部取消しの請求及び同更正。 処分に伴う過少申告加算税の各賦課決定処分の取消しの請求を棄却した部分をいずれも取り消す。 被控訴人が平成14年11月29日付けで破産会社に対してした平成11事業年度の法人税についての更正処分のうち所得金額マイナス2億7579万6729円及び納付すべき法人税額0円を超える部分並びにこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 被控訴人が前同日付けで破産会社に対してした平成12事業年度の法人税についての更正処分のうち所得金額マイナス2億4737万6025円及び納付すべき法人税額0円を超える部分並びにこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 被控訴人が前同日付けで破産会社に対してした平成13事業年度の法人税についての更正処分のうち所得金額マイナス6161万3274円及び納付すべき法人税額0円を超える部分並びにこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2事案の概要及び訴訟の経過 事案の要旨及び訴訟の経過本件は,本件各法人税更正処分等の取消しを求める訴訟である。 破産会社は,各事業年度において,Aから,BのAに対する債務につ- 2 -いて,法人格否認の法理(信義則)により,破産会社もBと同一の債務を負うとして,同債務にかかる債権の一部を被保全債権として,破産会社所有不動産の仮差押登記及び強制管理等の方法による仮差押えを受けていたことから,強制管理により強制管理人が収受していた賃料収入を除外して(破産会社に帰 にかかる債権の一部を被保全債権として,破産会社所有不動産の仮差押登記及び強制管理等の方法による仮差押えを受けていたことから,強制管理により強制管理人が収受していた賃料収入を除外して(破産会社に帰属する益金ではないとして,法人税の申告を)したところ,強制管理により強制管理人が収受している賃料も破産会社の収入にあたるとして,本件各法人税更正処分等を受けたので,破産会社は,確定申告と同様に,上記賃料収入は,破産会社の益金ではないと主張して,本件各法人税更正処分等の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 本件訴訟が原審に係属中に破産会社について破産手続が開始され,控訴人が本件訴訟を受継した。 原審において,控訴人は,上記賃料収入が破産会社に帰属する益金であることを認めた上,上記仮差押えの請求債権の各事業年度ごとの遅延損害金が破産会社の費用として益金の額から控除されるべきであると主張した。 ,,原審は控訴人の上記請求をいずれも理由がないとして棄却したので控訴人が本件控訴を提起し,当審において,後記2(3)のとおり,上記仮差押命令に請求債権として表示された遅延損害金(平成10年5月31日までに発生したもの)も,確定した債務として,欠損金の繰越により,各事業年度の益金の額から控除されるべきであるとの主張を追加した。 以上のとおり,本件の主たる争点は,上記のように保全処分で請求債権として認められた債権の遅延損害金が,法人税法22条3項2号によ,「」,,り当該事業年度の損金に算入できる費用にあたるのかあるいは同号かっこ書きにより費用から除かれる「当該事業年度終了の日までに- 3 -債務の確定しないもの」にあたるのか,である。 なお,原審では,控訴人は,本件控訴の対象となっている本件各法人税更正処分等の取消しを求めるほか,本件各 除かれる「当該事業年度終了の日までに- 3 -債務の確定しないもの」にあたるのか,である。 なお,原審では,控訴人は,本件控訴の対象となっている本件各法人税更正処分等の取消しを求めるほか,本件各消費税等更正処分等の取消しも求めていたところ,原審は,その請求もすべて棄却したが,当該部分については,控訴人の控訴がないので,控訴人の請求を棄却した原判決が確定しており,当審での審理の対象外である。 事案の概要事案の概要は,以下に付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」のうち,本件各法人税更正処分等に関する部分に摘示のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決5頁5行目の冒頭に「本件訴訟は,破産会社が提起し,控,訴人がこれを受継したものであるが」を加える。 ,(2) 原判決6頁26行目の「11月17日」の次に「ごろ」を加え,同7頁3行目の次に,改行の上,次のとおり加える。 「法人税法は,課税の公平という観点から,所得計算は,可能な限り,客観的事実関係に基づいて計算すべきであるとの立場にたち,企業の恣意性が入りやすい費用の見越計上や引当金の設定は,別段の定めによるものを除き認めないこととしている。このような債務確定基準は,権利確定主義の考え方を費用・損失の面で明示したものと考えられている。 ,,このことは損失の損金計上時期についても妥当するものであり企業の恣意性排除ひいては課税の公平確保のため,法人税法が特に認める場合を除き,引当金や見越費用の損金計上は認められないものである。 破産会社の場合には,破産会社が,Aの申立てにかかる保全命令を受けて,Aに対して,その請求債権又は本件損害金について自認- 4 -部分として申し出た金額はなく,Aに対する申し出に代えて,第三。 ,,者に寄託した事実もない ,Aの申立てにかかる保全命令を受けて,Aに対して,その請求債権又は本件損害金について自認- 4 -部分として申し出た金額はなく,Aに対する申し出に代えて,第三。 ,,者に寄託した事実もないそうすると本件損害金が確定したのは前記のとおり,別件訴訟にかかる大阪高等裁判所の判決が確定した平成16年11月17日ごろであるということになり,それ以前に本件損害金を損金として計上することは,予想損失の見積計上をするか,損失見込額の引当てをするものといわざるを得ないし,破産会社とBにおいて本件損害金の双方計上となる可能性もあるから,上記の債務確定基準の趣旨に照らして,許されるものではない」。 (3) 原判決8頁5行目の次に,改行の上,次のとおり加える。 「,,これに加えてAの破産会社に対する仮差押命令の請求債権にはAのBに対する貸金の平成10年5月31日までの遅延損害金合計43億2570万2737円が含まれており,これは,仮差押命令が発せられた平成10年1月1日から同年12月31日までの事業年度に確定したものであって,破産会社は,同事業年度に欠損金を生じたから,これを各事業年度の所得金額が0になるまで,損金の額に算入することができる。そうすると,本件損害金全額について債務確定が認められなくても,各事業年度の破産会社の所得金額は0となる」。 第3当裁判所の判断 前記事案の概要中の基礎となる事実(引用にかかる原判決3頁17行目から6頁20行目まで)のほか,証拠(甲7,8)によれば,本件損害金にかかる別件訴訟の経過について,以下の事実を認めることができる。 (1) 別件訴訟は,各事業年度以前である平成10年に提起されたものであるが,その第一審において,原告であるAは,被告である破産会社は,Bに対する強制執行を回避するために設立され ることができる。 (1) 別件訴訟は,各事業年度以前である平成10年に提起されたものであるが,その第一審において,原告であるAは,被告である破産会社は,Bに対する強制執行を回避するために設立されたものであり,法- 5 -人としての独立した組織的実体を全く有せず,Bに対する強制執行を回避しつつ,同社の資産を温存するために,その法人格を濫用したものであって,法人格否認の法理により,信義則上,Bと別法人であることを主張できないと主張し,その根拠となる事実として,株主,役員の共通という人的関連性,営業拠点,資金の一括管理,B等から破産会社への営業実態の移転,強制執行を回避する目的で実質Bに帰属する不動産を破産会社名義で登記したこと等の物的関連性の存在を主張した。これに対して,破産会社は,Aの主張を全面的に争い,破産会社には独立した営業の実態がある,Bから破産会社への資金の移動は資金の運用目的であり,既に返済している,不動産の移転は強制執行の回避目的ではない,B・破産会社と株式会社Cとは,Bと破産会社が別法人であることを前提に,債務返済計画の基本的合意をしており,Aが破産会社の法人格を否認することは信義則上許されない,と反論した。 (2) 別件訴訟の第一審の裁判所は,各事業年度経過後の,平成15年3,,月28日に株式会社CとBとの平成4年以来の債務返済交渉の経過Bと破産会社の人的・物的共通性等の事実を認定し,特に,株式会社Cが,Bとの間で債務返済計画について合意に至っていない状況で,Aに債権を譲渡したのと相前後して,B所有地上のBが建築注文・建築確認申請したものを含む建物の登記名義を破産会社としたことをとらえて,これらの登記は,将来のAのBに対する担保権実行や強制執行を免れる目的でしたものと認められるとし,Aの法人格否認の主張を ・建築確認申請したものを含む建物の登記名義を破産会社としたことをとらえて,これらの登記は,将来のAのBに対する担保権実行や強制執行を免れる目的でしたものと認められるとし,Aの法人格否認の主張を容れて,破産会社に請求債権全額の支払いを命じる判決を言い渡した。 (3) これに対して,破産会社が控訴したが,控訴審の裁判所は,平成16年9月15日,Bと破産会社における資金管理の実態,関係不動産- 6 -の状況,平成4年の破産会社設立前後の資金移動の実情,破産会社所有物件の建設の経過,A設立の前後における資金移動の実情等の事実を認定した上,破産会社はB代表者によって支配され利用されていた会社であって,その法人としての独立性は乏しく,法人格が形骸化している,破産会社の法人格は,Bの債務の履行強制を免れるため,B代表者によって悪用されたことが明らかである,として,破産会社は株式会社Cとの関係では,Bと別人格であることを主張できない立場にあり,破産会社はAのBに対する債権に関して,Bと同一人格者とみなされると判断し,上記第一審判決は結論において正当であるとして控訴棄却の判決を言い渡した。 本件損害金に関係する法人税法の規定は,以下のとおりである。 (1) 法人税法21条は「内国法人に課する各事業年度の所得に対する,法人税の課税標準は,各事業年度の所得の金額とする」と定め,同。 法22条1項は「内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業,。」年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とすると定め,同条3項は「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする」として,同項2号で「当該事業年。 ,度の販売費、一般管理費その他の費用の額」を損 所得の金額の計算上,当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする」として,同項2号で「当該事業年。 ,度の販売費、一般管理費その他の費用の額」を損金に算入すべき金額としているが,そのかっこ書きで「償却費以外の費用で当該事業年,度終了の日までに債務の確定しないものを除く」という制限を置い。 ている。 (2) また,同条4項は,同条3項2号の費用の額は「一般に公正妥当,と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする」と規定している。 (3) 他方,法人税法(平成14年法律79号による改正前〔各事業年度- 7 -当時〕のもの)は,貸倒引当金,返品調整引当金,退職給与引当金の3つの引当金を損金に算入することを認めているが,これら以外の引当金については,前記法人税法22条3項2号のかっこ書きに照らして,会計慣行上一般に認められているものであっても,法人税の課税上は,損金に算入することは認められないと解されるものである。 (4) なお,上記引当金のうち,退職給与引当金に関する規定(当時の法人税法54条)は,上記平成14年法律79号によって廃止され,同法附則8条により,それまでに積み立てた退職給与引当金も取り崩して益金に算入することとされた。 以上の事実及び法律の規定により検討する。 (1) 上記事実によれば,各事業年度当時,本件損害金の基本債権であるAのBに対する貸金債権(元金)と,その遅延損害金の一部分(本件損害金を含まない部分)につき,法人格否認の法理が適用されて,破産会社もBと同一の債務を負うとして,同債権が,破産会社所有名義の不動産に対する仮差押命令によって保全されており,特に,そのうちの収益物件については,強制管理命令が発せられて,その賃料が強制管理人によって収受され の債務を負うとして,同債権が,破産会社所有名義の不動産に対する仮差押命令によって保全されており,特に,そのうちの収益物件については,強制管理命令が発せられて,その賃料が強制管理人によって収受されている状況にあったこと,及び,上記基本債権にかかる破産会社の債務については,別件訴訟において,多数の事実関係とそれに対する評価を実質的な争点として係争中であったことが明らかである。 (2) ところで,法人格否認の法理は,法人格が全くの形骸にすぎない場合や,法人格が法律の適用を回避するため濫用される場合など,法人格を認めることがその本来の目的に照らして許されるべきでないときに適用される法理であるが,その適用は慎重になされるべきであるとされていること(最高裁昭和49年9月26日判決・民集28巻6号1306頁参照)に加えて,その適用要件である「法人格の形骸化」- 8 -や「法人格の濫用」は,いずれも法的評価を含む概念であって,様々な具体的事実から認定されるものであること(現に,前記のとおり,別件訴訟においても,多くの事実が認定されて,それに基づいて法人格否認の法理の適用の当否が判断されている)を考えると,本案訴。 訟に先立つ保全処分において,疎明に基づき法人格否認の法理の適用が認められたからといって,本案訴訟においても,同法理の適用が高い確率で認められるとはいえないというべきである。 このことからすると,上記仮差押命令において,法人格否認の法理,,の適用が認められたからといってAのBに対する貸金債権について破産会社がBと同一の責任を負うことが客観的に確定したとは,到底いうことができない。 (3) のみならず,各事業年度においては,前記仮差押命令によって強制管理されていた賃料は,現実にAのBに対する債権の弁済に充てられたものではなく,強制管 に確定したとは,到底いうことができない。 (3) のみならず,各事業年度においては,前記仮差押命令によって強制管理されていた賃料は,現実にAのBに対する債権の弁済に充てられたものではなく,強制管理人が管理・保管していたものであって,執行力のある債務名義が得られて初めて,その弁済に充てられるものである。仮に,各事業年度において,Aが,B等の他の財産から,その債権の弁済に充てることのできる金銭を回収した場合には,破産会社もその限りにおいて責任を免れることになるものであって(現にAは別件訴訟の控訴審において請求を減縮している,本案訴訟の判決。)に至るまで,債権額の変動が予想されていたものでもある。さらに,法人格否認の法理は,法人格否認を主張する相手方との間で,相対的に認められるものにすぎないから,破産会社が,その出捐によってBのAに対する債務を支払った場合には,破産会社との関係では別人格であるBに対する求償債権を取得することになって,出捐額の全額が破産会社の損金とならないこともありうるところである。 ,,,(4) 以上によれば各事業年度においては本件損害金にかかる債務は- 9 -民法の観点からしても,客観的に破産会社がそれを負担しているかどうかが,必ずしも明らかではなく,破産会社が最終的に負担すべき金額も確定していなかったというべきである。 (5) 他方,前記の法人税法22条3項2号は,法人の益金から控除され,,る費用について債務確定基準を採ることを明らかにしているところ「」,,,そこにいう債務の確定とは同法が別途に引当金の規定を設け限定された種類の引当金のみを損金に算入することを認めていることに照らすと,引当金の対象となる債務よりも,より確実に債務の存在及び金額が確定していることを意味していると解され 途に引当金の規定を設け限定された種類の引当金のみを損金に算入することを認めていることに照らすと,引当金の対象となる債務よりも,より確実に債務の存在及び金額が確定していることを意味していると解されるところである。 これを,前記の各事業年度当時における本件損害金の存否及び金額の確実性に照らしてみると,本件損害金は,その存否についても,金額についても,なおその確実性に十分ならざるものがあったといわな,,,ければならないから民法の観点のみならず税法の観点においても法人税法22条3項2号にいう「債務の確定しないもの」にあたるといわざるを得ないものである。 (6) よって,本件損害金を,法人税法上,債務の確定したものとして,各事業年度の益金から控除することはできないというべきである。 (7) また,控訴人は,当審において,破産会社に対する仮差押命令において,請求債権として認められた平成10年5月31日までの損害金について,これが確定した債務であるとの主張を追加した(前記第2の2(3) 。しかし,その損害金についても,前示のところから明ら)かなとおり,本件損害金と同様に,その基本債権であるAのBに対する貸金債権について,破産会社がBと同一の責任を負うことが客観的に確定したとはいうことができず,その金額も確定したとはいえないものであるから,その支分債権である上記損害金についても,法人税- 10 -法22条3項2号にいう「債務の確定しないもの」にあたるといわざるを得ない。 そうすると,破産会社の平成10年の事業年度において,破産会社に欠損金が生じたということはできないから,その欠損金の各事業年度への繰越も認めることができないといわざるを得ず,控訴人の上記主張は採用できない。 控訴人の主張について(1) 控訴人は,法人税法が,債務確定 たということはできないから,その欠損金の各事業年度への繰越も認めることができないといわざるを得ず,控訴人の上記主張は採用できない。 控訴人の主張について(1) 控訴人は,法人税法が,債務確定基準を採用したのは,企業の恣意を排除し,ひいては課税の公平を確保するためである,とした上,法の趣旨やこれに基づく法人税基本通達に示された解釈等からすると,納税者の恣意を排除し,課税の公平を確保できる程度に,債務成立,具体的給付原因事実の発生及び金額の算定可能性が認められれば,法人税法上の債務の確定を認めるべきである,と主張する。 (2) しかしながら,そもそも,前記のとおり,本件損害金については,民法の観点からしても,債務の確定が認められないものであり,税法の観点からは,なおさらそうであるといわなければならないものであるから,控訴人の主張は,その点において,既に採用の余地のないものである。 (3) また,前記のとおり,法人税法は,明文で債務確定基準を採ることを明らかにしているものの,これと合わせて,企業の恣意を容れる余地がない場合,あるいは課税の公平が確保されている場合には,債務が確定していなくても,これを確定したものとして損金に算入することができるという解釈を許容する手がかりとなる規定は見当たらない。 控訴人の主張は,立法の動機又は法の趣旨の説明をいうものにすぎないものであり,そのような趣旨に沿って条文を解釈する手がかりと- 11 -なる規定がない以上は,具体的な条文の解釈は,当該条文に即してなされなければならないものである。 よって,この点からしても,控訴人の主張を採用することはできない。 (4) なお,企業会計において一般的に行われている期間損益計算の観点からすると,本件損害金の弁済金は,各事業年度の破産会社の益金によって賄われる らしても,控訴人の主張を採用することはできない。 (4) なお,企業会計において一般的に行われている期間損益計算の観点からすると,本件損害金の弁済金は,各事業年度の破産会社の益金によって賄われるべきものということができ,本件損害金にかかる破産会社の債務の存否・金額が確定した場合に,その弁済に充てるため,破産会社の各事業年度の益金の全部又は一部を留保することは,破産会社の経済活動の実情に,より合致しているということもできる。その点において,控訴人の主張に考慮すべきものがないとはいえない。 しかしながら,そのような益金の留保は,債務が確定していることによるものではなく,結局は,本件損害金債務が別件訴訟の判決によって認められるかどうか,認められるとして破産会社が現実に負担する金額がいくらになるかという見通しに従って,破産会社の将来の負担に備えるべく引当金を計上することができるかどうかの問題であるといわざるを得ないものである。 そうすると,前記のとおり,法人税法は,同法が特に認めた引当金についてのみ,損金に算入することを認めていることからすると,破産会社の会計処理上は,本件損害金相当額,あるいはその評価額を,引当金として破産会社の損金に算入することが相当であるとしても,法人税法の適用上は,そのような損金への算入はできないというしかないところである。 このことからすると,将来において確定する未確定の債務として,企業会計上は引当金を計上することが相当と考えられるものについて,法人税法上は,引当金としての損金への算入が認められないから- 12 -といって,これを確定した債務として,法人税法上の費用として損金に算入することを認めることは,法人税法が引当金の損金算入を制限した趣旨を潜脱することになるから,そのような解釈を採ることはできないといわ って,これを確定した債務として,法人税法上の費用として損金に算入することを認めることは,法人税法が引当金の損金算入を制限した趣旨を潜脱することになるから,そのような解釈を採ることはできないといわなければならない。 控訴人の主張は,この面においても採用することができない。 第4 結論 以上によれば,各事業年度において,強制管理人が収受していた賃料収入を破産会社の益金に加算し,本件損害金を損金に算入せずにした本件各法人税更正処分は適法であり,これに基づいてなされた本件各法人税にかかる賦課決定処分も適法である。よって,本件各法人税更正処分等の取消しの請求をいずれも棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第6民事部裁判長裁判官渡邉安一裁判官矢延正平裁判官松本清隆
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