令和6年8月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第9112号損害賠償請求事件(甲事件)令和4年(ワ)第11173号損害賠償請求事件(乙事件)口頭弁論終結日令和6年5月23日判決 甲事件・乙事件原告三和テクノ株式会社 (以下「原告」という。)代表者代表取締役 訴訟代理人弁護士森本純 訴訟代理人弁理士西野卓嗣同河上哲也同東毅補佐人弁理士阿部勇喜同岸本昌平 甲事件被告槌屋ティスコ株式会社代表者代表取締役 乙事件被告株式会社槌屋 代表者代表取締役 上記両名訴訟代理人弁護士飯塚卓也同桑原秀明同堺有光子同小島義博 上記両名補佐人弁理士瀬崎幸典 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 被告らは、原告に対し、連帯して1億円及びこれに対する令和4年12月23日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本判決における略称(1) 本件特許(権):別紙特許公報記載の特許(に係る特許権) (2) 本件明細書:本件特許の明細書及び図面(3) 本件発明1:後記本件訂正による訂正前の本件特許権の特許請求の範囲請求項1の発明(訂正後のものは本件訂正発明1)(4) 本件発明2:後記本件訂正による訂正前の本件特許権の特許請求の範囲請求項4の発明(訂正後のものは本件訂正発明2) (5) 本件各発明:本件発明1及び同2(訂正後のものは本件各訂正発明)(6) 本件訂正審判請求:訂正2023-39 特許権の特許請求の範囲請求項4の発明(訂正後のものは本件訂正発明2) (5) 本件各発明:本件発明1及び同2(訂正後のものは本件各訂正発明)(6) 本件訂正審判請求:訂正2023-390075の訂正審判請求。これによる本件特許権の訂正は本件訂正。 (7) 本件審決:本件訂正審判請求を認める令和5年11月15日付け審決(8) 被告製品:別紙被告製品目録記載の物件 (9) キヤノン:キヤノン株式会社(10) 甲20検査:被告製品の画像データについて原告が第三者機関に依頼した甲20号証に係る画像解析の検査 2 訴訟物本件特許権を有する原告の、被告製品を製造、販売する被告らに対する、特許 権侵害の共同不法行為に基づく損害賠償金及びこれに対する不法行為の後日(乙 事件被告に対する訴状送達日の翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払請求 3 前提事実(争点整理手続において当事者間で確認済)(1) 当事者ア原告は、自動車用ゴム、プラスチック製品の開発、設計、製造、販売等を目的とする株式会社である。 イ甲事件被告は、建築物、輸送用機器のウェザーストリッピング、その他工業用密閉具として使用されるパイルファブリックの製造、販売、輸出入、その他の取引等を目的とする株式会社である。 ウ乙事件被告は、塗料、接着・シール剤、表面保護剤、研磨剤その他の化学製品の販売並びに輸出及び輸入の業務等を目的とする株式会社である。 (2) 本件特許権ア原告は、本件特許権の持分2分の1を有している。原告は、本件訂正発明1及び同2を権利行使の根拠とする。 以下、「【4桁の数字】」は、本件明細書の段落を指し、「【図●】」は、本件明細書の図面を指す。 イ本件発明1の構成要件は次のとおり分説され 訂正発明1及び同2を権利行使の根拠とする。 以下、「【4桁の数字】」は、本件明細書の段落を指し、「【図●】」は、本件明細書の図面を指す。 イ本件発明1の構成要件は次のとおり分説される。 1A:微細粉粒体を担持する回転体の外周面にパイルを摺接させながら軸線方向へのもれを防ぐ、画像形成装置における微細粉粒体のもれ防止用シール材であって、1B:多数の微細長繊維を束ねて構成されるパイル糸が基布の表面に切断さ れた状態で立設されるカットパイル織物を主体とし、1C:カットパイル織物は、地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており、経糸と緯糸の径が同じ、もしくは経糸と緯糸が異なる径を用いてパイル織りされた織物であり、1D: パイル糸は、基布の製織方向の少なくとも一方に平行な方向に沿うよ うに配列され、該基布の表面に対して、該配列の方向から予め定める角度 θだけ開く方向に傾斜する斜毛状態で、パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形成され、かつパイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされており、1E: 使用状態では、回転体の回転方向に対し、該配列の方向が該予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように、該配列の方向を該接線方向に 対して傾斜させることを特徴とする1F:画像形成装置における微細粉粒体のもれ防止用シール材。 ウ本件発明2の構成要件は次のとおり分説される。 2A:前記パイル糸は、単繊維の集合または複数種類の単繊維で構成されていることを特徴とする 2B:請求項1~3のいずれか1つに記載の微細粉粒体のもれ防止用シール材。 (3) 本件訂正原告は、本件各発明の構成要件を次のとおり訂正する等の本件訂正に係る審判請求(本件訂正審判請求)をした(訂正 項1~3のいずれか1つに記載の微細粉粒体のもれ防止用シール材。 (3) 本件訂正原告は、本件各発明の構成要件を次のとおり訂正する等の本件訂正に係る審判請求(本件訂正審判請求)をした(訂正部分に係る構成要件のみを摘示。下 線部が訂正された部分。)。 ア本件訂正発明11E: 使用状態では、回転体の回転方向に対し、該配列の方向が該予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように、該配列の方向を該回転方向に対して傾斜させることを特徴とする イ本件訂正発明22A:前記パイル糸は、単繊維の集合または複数種類の単繊維で構成され、前記パイルは、前記微細粉粒体が前記もれ防止用シール材を越えて移動しようとしても、前記回転体の前記軸線方向の逆方向に案内されるように傾いていることを特徴とする (4) 本件審決 令和5年11月15日、本件審決がされ、同審決は確定した(これに伴い、【0032】【0039】に「配列の方向4a」とあるのはいずれも「配列の方向2a」と、【図3】に「4a」とあるのは「2a」とそれぞれ訂正された(下線部が訂正部分)。 (5) 被告らの行為 甲事件被告は、キヤノンが販売する各種プリンターに使用されるシール材(被告製品)を製造し、乙事件被告に販売し、乙事件被告は、被告製品を甲事件被告から購入し、これをキヤノン及びその関連会社に販売している。 (6) 充足につき争いのない構成要件被告製品が、構成要件1B、同1F、同2A(「前記パイル糸は、単繊維の集 合または複数種類の単繊維で構成され、」の部分に限る。)を備えることは争いがない。 4 争点(充足論)(1) 被告製品が、構成要件1Cの構成(地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の 径よりも細くされており)を備えるか れ、」の部分に限る。)を備えることは争いがない。 4 争点(充足論)(1) 被告製品が、構成要件1Cの構成(地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の 径よりも細くされており)を備えるか(争点1)(2) 被告製品が、構成要件1Dの構成(該配列の方向から予め定める角度θだけ開く方向に傾斜する斜毛状態)を備えるか(争点2)(3) 被告製品が、構成要件1Eの構成(使用状態では、回転体の回転方向に対し、該配列の方向が該予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように、該配列 の方向を該回転方向に対して傾斜させる)を備えるか(争点3)(無効論)(4) 本件特許に、糸の「径」(構成要件1C)を測定することができないことによる明確性要件違反、実施可能要件違反の無効理由があるか(争点4)(5) 本件特許に、「あらかじめ定める角度θ」(構成要件1D)が不明確であるこ と等による明確性要件違反、サポート要件違反の無効理由があるか(争点5) (6) 本件特許に、「パイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされており」(構成要件1D)の記載が不明確であることによる明確性要件違反、及びこれに関する本件明細書の記載に係る実施可能要件違反の無効理由があるか(争点6)(7) 本件特許に、「予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように、該配列の 方向を該回転方向に対して傾斜させる」(構成要件1E)構成が、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件訂正発明1の課題を解決できない形状のものを含むことによるサポート要件違反の無効理由があるか(争点7)(8) 本件特許に、「使用状態」(構成要件1E)の記載が不明確であることによる明確性要件違反、及びこれに関する本件明細書の記載に係る実施可能要件違反 の無効理由があるか( あるか(争点7)(8) 本件特許に、「使用状態」(構成要件1E)の記載が不明確であることによる明確性要件違反、及びこれに関する本件明細書の記載に係る実施可能要件違反 の無効理由があるか(争点8)(9) 本件特許に、「前記パイルは、前記微細粉粒体が前記もれ防止用シール材を越えて移動しようとしても、前記回転体の前記軸線方向の逆方向に案内されるように傾いている」(構成要件2A)の記載が不明確であること等による明確性違反、サポート要件違反及びこれに関する本件明細書の記載に係る実施可能要 件違反の無効理由があるか(争点9)第3 争点に関する当事者の主張 1 被告製品が、構成要件1Cの構成(地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており)を備えるか(争点1)【原告の主張】 (1) 構成要件の解釈ア径の比較は断面積の比較によるべきこと各糸の「径」は、糸の断面積を測定することにより比較判断することが可能である。 この点、構成要件1Cの径に関して【0043】に記載があり、構成要件 1C「地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており」の 意義が、パイル糸を太くして、より多数の微細長繊維を含ませることにある旨示されている。 また、糸の径の比較は「大小」であるところ、本件発明のクレーム及び本件明細書の発明の詳細な説明では、これを「細く」「太く」としている。物の「太さ」を断面積で比較判断するのは一般的な判断手法であり、かかる意味 でも、上記の糸の断面積での比較判断は、特許請求の範囲の文言や本件明細書の記載に即したものである。 イ比較は製品状態において行うべきこと構成要件1Cは、「カットパイル織物は、地糸の経糸又は緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされてお 求の範囲の文言や本件明細書の記載に即したものである。 イ比較は製品状態において行うべきこと構成要件1Cは、「カットパイル織物は、地糸の経糸又は緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており」との文言のとおり、「カットパイル織物」(製 品状態)において地糸の経糸又は緯糸の径とパイル糸の径を比較しているものである。【0008】【0009】【0043】【図4】【図5】もこのことを前提としている。 すなわち、構成要件1Cにおける径の比較は、原材料の状態ではなく、製品状態で測定すべきものであり、製品段階で糸にテンションが掛かり、糸径 が細く維持されているのであれば、その状態で測定すべきものである。 (2) 被告製品の構成被告製品を構成するパイル糸と経糸の断面積を比較した結果(甲19の1、別紙表・図面等の〔表1〕。以下、「後記〔表2〕」などとする表、グラフ及び図は全て同別紙に掲げるものを指す。)により、被告製品が構成要件1Cを充足し ていることが裏付けられる。 【被告らの主張】(1) 構成要件の解釈ア糸の断面の直径をノギスやシックネスゲージ等の一般的な寸法測定具で測定して、その長さを一義的に確定することは困難、不正確である。 そして、当業者には、「繊維の断面は正しい円形であるというような場合は 少ないから、実際に繊維の断面を顕微鏡で観察してこれを測定することは簡単ではない」ことが常識として認識されている(乙5)。 当業者は、一般に、糸の長さと重量を用いた「恒長式番手(一定の長さに使用されている繊維の重量)」又は「恒重式番手(一定の重さの原料から製造される糸の長さ)」を測定する方法により糸の太さを認識する(乙6)。通例、 フィラメント糸は前者、紡績糸は後者で表し(乙6)、糸の直 ている繊維の重量)」又は「恒重式番手(一定の重さの原料から製造される糸の長さ)」を測定する方法により糸の太さを認識する(乙6)。通例、 フィラメント糸は前者、紡績糸は後者で表し(乙6)、糸の直径を測定する方法は用いられない。当業者が取引先メーカーから糸の太さを指定される際にも、糸の「直径」で数値を指定されることはない。 このように、当業者においては、糸の太さを糸の直径を用いて表すことは行われておらず、当業者の技術常識に基づいて糸の直径を測定する方法を特 定することはできない。 イ構成要件1Cの「経糸と緯糸が異なる径を用いて」という部分は、カットパイル織物の製造に用いられる原材料としての経糸及び緯糸の径の大小を比較したものと解される(なお、【0008】【0009】も参照)。上記文言からすれば、「地糸の経糸または緯糸の径」と「パイル糸の径」の大小を比較す るのも、原材料の状態で測定して比較するものと解釈する方が自然である。 加えて、各糸は、製織時に糸同士が影響し合うことに伴い、製品状態では部位により各糸が不揃いに変形したり空隙が生じたりするから、そもそも「糸の径」を正確に測定することはおよそ困難である。これに対し、原材料の状態であれば、少なくとも製織に伴う重なりやつぶれが生じているということ はなく、製品状態で測定しようとする場合と比較すれば、各糸の「径」として測定部位等に左右されることの少ない値を導き出すことはできる。 本件明細書に「カットパイル織物は」又は「カットパイル織物では」という文言があるからといって、「糸の径」の測定方法として製品状態で測定するのが相当であるとする根拠にはならない。 (2) 被告製品の構成 甲事件被告が第三者機関に依頼し、被告製品の原材料としての経糸、緯糸 「糸の径」の測定方法として製品状態で測定するのが相当であるとする根拠にはならない。 (2) 被告製品の構成 甲事件被告が第三者機関に依頼し、被告製品の原材料としての経糸、緯糸及びパイル糸の直径を測定したところ、後記〔表2〕のとおりとなった(乙1)ほか、原告の実施した実験(甲15)と同一の負荷をかけた状態で被告製品の経糸及びパイル糸の直径を測定した結果も、後記〔表3〕の「負荷状態」欄記載のとおりとなった(乙22)。さらに、各糸について理論値を算定した結果も、 後記〔グラフ1〕のとおりとなった(乙21)。 上記測定結果に示されるように、被告製品の経糸及び緯糸の直径は、いずれもパイル糸の直径よりも太いから、被告製品は、構成要件1Cを充足しない。 2 被告製品が、構成要件1Dの構成(該配列の方向から予め定める角度θだけ開く方向に傾斜する斜毛状態)を備えるか(争点2) 【原告の主張】(1) 構成要件の解釈ア構成要件1Dは、基布の表面に対し、<パイル糸の配列方向から予め定める角度θだけ開いた方向>に傾斜する斜毛状態において、パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形成された構成を定めたものである。 この<パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形成された構成>は、パイル糸がカットされることにより、パイル糸を構成する多数の微細長繊維の撚りが解消されて、繊維が毛先方向に向かって広がり、毛羽立ち状態となって、構成要件1Dが定める「パイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされており」となるものである。 なお、本件明細書において、「斜毛状態」とは、基布の表面に対して角度δで傾斜する状態をいい、「角度θ」は、扇形状に広がっているパイルの中心線と配列方向とがなす角 おり」となるものである。 なお、本件明細書において、「斜毛状態」とは、基布の表面に対して角度δで傾斜する状態をいい、「角度θ」は、扇形状に広がっているパイルの中心線と配列方向とがなす角度である(【0032】)(後記〔図1〕参照)。 イ本件特許発明の技術的特徴点は、①微細粉粒体のもれ防止用シール材を構成するパイル糸の配列方向が、回転体の回転方向に対し角度φだけ傾斜する ように配置され、かつ、②基布の表面に対し、<パイル糸の配列方向から予 め定める角度θだけ開いた方向>に傾斜する斜毛状態において、パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形成され、パイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされており、かつ、パイルが、平面視において、回転体の回転方向に対して回転体の中央側に傾斜する構成を備えることにより、(ⅰ)シール材に侵入しようとするトナーが、回転体の回転作用により、 パイルの毛の流れ方向に沿って、回転体の中央側に案内され、また、(ⅱ)パイルが、隣接する配列方向のパイルに接触し、隣接する配列方向との間に隙間が生じることを防ぐとともに、パイルが重なり合う部分で高密度のシールを行うことができ、(ⅲ)これにより、パイル糸としての立毛密度を低くすることが可能となり、当接負荷を軽減することができる点である(後記〔図7〕)。 ウ 「予め定める角度θ」は、製品状態において、パイル糸が、配列方向から開く方向に傾斜していれば足りる。「予め定める角度θ」は、設計段階で、特定の角度θが定められていて、製品状態で、その角度θだけ開く方向に傾斜していることを要求するものではない。また、すべてのパイルが、配列方向に対し、特定の一つの「角度θ」だけ開くことを要求するものではなく、開 く角度のばらつきを許容するもの θだけ開く方向に傾斜していることを要求するものではない。また、すべてのパイルが、配列方向に対し、特定の一つの「角度θ」だけ開くことを要求するものではなく、開 く角度のばらつきを許容するものである。 エ本件訂正発明1の「パイル糸」は、多数の繊維を撚り合わせて形成されている糸を意味する用語であり、「パイル」及び「カットパイル」は、パイル糸がカットされて、パイル糸を構成する多数の微細長繊維の撚りが解消されて、パイルの繊維が毛先方向に向かって広がり、毛羽立ち状態となったものを意 味する用語である(【0003】【0009】【0049】)。 「パイル間のピッチが狭められるよう毛羽立たされており」とは、パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形成され、パイルが、パイル間のピッチ(パイル糸間のピッチではない)が狭められるように毛羽立たされている構成を定めたものである。 (2) 被告製品の構成 ア被告製品では、パイルが、基布の表面に対して、パイル糸の配列方向から角度θだけ開く方向に傾斜する斜毛状態となっているから(甲6)、構成要件1Dの「該基布の表面に対して、該配列の方向から予め定める角度θだけ開く方向に傾斜する斜毛状態で、」を満たす。 さらに、被告製品では、パイル糸がカットされていて、これにより、パイ ル糸を構成する多数の微細長繊維がほぐれ、パイルの繊維が毛先方向に向かって広がり、パイルを形成しているから、構成要件1Dの「パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形成され、かつパイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされており、」を満たす。 したがって、被告製品は、本件訂正発明1の構成要件1Dを充足する。 イ後記〔図2〕は、傾斜機排出後の被告製品(製造過程のもの)のパ チが狭められるように毛羽立たされており、」を満たす。 したがって、被告製品は、本件訂正発明1の構成要件1Dを充足する。 イ後記〔図2〕は、傾斜機排出後の被告製品(製造過程のもの)のパイル糸の状態を示す写真として、被告らが提出したものであるが(乙3)、同写真は、被告製品(製造過程)が、傾斜機排出後の段階で、既に、「パイルは、基布の表面に対して、パイル糸の配列方向から角度θだけ開く方向に傾斜する斜毛状態となっている」ことを示している。 ウ原告は、被告らが提出した被告製品の画像データ(乙3、14の元となるデータ)について、角度θの存在につき、画像解析による判定を依頼した(甲20検査)。 甲20号証(報告書。なお、補充報告(甲23)がある。)は、その解析結果であり、被告製品は、傾斜機排出後の状態(乙3の写真2、抜き型プレス 工程前)、及び製品完成直後の状態(乙14の写真)において、構成要件1Dが定める「角度θ」を具備するものである。 すなわち、角度θは、パイルを形成する各単繊維が配列方向に対してなす角度の平均値を求める方法により得られるところ、甲20検査によって、同方法により、被告製品が「パイルは、基布の表面に対して、パイル糸の配列 方向から角度θだけ開く方向に傾斜する斜毛状態となっている」ことが確認 された。 【被告らの主張】(1) 構成要件の解釈構成要件1Dにおいて、パイルと配列方向とがなす角度θは、「予め定める」ものと明記されており、「予め」という文言が「まえもって」しておくという意 味であることは一義的に明らかである(乙9)。したがって、「角度θ」は設計段階において前もって特定の角度として定められている必要がある。 加えて、「角度θ」は、使用状態のパイル いう意 味であることは一義的に明らかである(乙9)。したがって、「角度θ」は設計段階において前もって特定の角度として定められている必要がある。 加えて、「角度θ」は、使用状態のパイル糸の配列方向と回転方向とがなす傾斜角度φとの関係で「角度φは角度θよりも大きい」と定められ、角度φとの関係で角度が規定されている(構成要件1E)。このことからすれば、「角度θ」 は、定数と考えられる「角度φ」との関係で所定の大小関係を満たす特定の設計値と解するのが自然である(角度θが特定の設計値であることを要さず何度でもよいとすれば、角度φとの比較など不可能である。)。 (2) 被告製品の構成ア被告製品は、特許第3955049号(乙2)の明細書の段落【0023】 及び図1ないし図4に開示されている方法、すなわち、直立のパイル糸を有する基布を、パイル糸を構成する繊維がパイル糸の配列方向に倒れるような形態で、加熱したヒートローラに通すという方法により製造されているので、パイル糸を、その配列方向以外の方向に倒してはいない(乙3)。したがって、被告製品において、パイルの傾斜する方向とパイル糸の配列方向とがなす角 度は、零度である(構成要件1Dの「角度θ」が零度を含むものではないことは当事者間に争いがない。)。 よって、被告製品は、パイル糸が配列される方向と同じ方向に、パイル糸を構成する繊維が傾斜するように設計され製造されていることから、構成要件1Dを充足しない(被告製品が「傾斜機排出後の状態」において、パイル 列の間に上(溝)ヒートローラが通った跡として、当該ローラの溝による隙 間が発生している(甲20)ことは、このことを裏付ける。)。 イ仮にパイル糸の「斜毛方向」が配列方向から角度θだけ開く方向に傾斜し 溝)ヒートローラが通った跡として、当該ローラの溝による隙 間が発生している(甲20)ことは、このことを裏付ける。)。 イ仮にパイル糸の「斜毛方向」が配列方向から角度θだけ開く方向に傾斜しているとしても、当該角度θは、少なくとも、「予め定める」ものではない。 ウパイル間の「ピッチ」は、そもそもパイル糸の織込み密度により既定値として決定されるものであり、パイルを「毛羽立た」せることで「狭められる」 ことはない(原告自らが出願する特許発明に係る公開特許公報(乙12)【0035】、【0036】も参照。)。したがって、「パイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされて」の意味は不明確であるが、少なくとも、被告製品では、パイル糸をカットして毛先を毛羽立たせる際に「パイル間のピッチ」を変化させておらず(「狭められるように」してはおらず)、その意味でも、 被告製品は、構成要件1Dを充足しない。 3 被告製品が、構成要件1Eの構成(使用状態では、回転体の回転方向に対し、該配列の方向が該予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように、該配列の方向を該回転方向に対して傾斜させる)を備えるか(争点3)【原告の主張】 (1) 構成要件の解釈構成要件1Eにいう「使用状態」は、微細粉粒体もれ防止用シール材がトナーカートリッジに設置されて現像ローラもしくは感光ドラムが回転している状態を指す(なお、トナーカートリッジから回転体を取り外した状態と、回転体を設置した状態(回転体が回転していない状態)と、回転体が回転する状態とで、 角度θに変化は生じない。)。したがって、構成要件1Eは、本件訂正発明1の微細粉粒体のもれ防止用シール材について、回転体の回転方向に対する取付方向を定めたものである。 なお、構成要件1Eには、斜毛方 θに変化は生じない。)。したがって、構成要件1Eは、本件訂正発明1の微細粉粒体のもれ防止用シール材について、回転体の回転方向に対する取付方向を定めたものである。 なお、構成要件1Eには、斜毛方向が配列方向を軸として回転方向と反対側に存在する場合も含まれる。 (2) 被告製品の構成 ア被告製品は、使用状態において、パイル糸の配列方向が、回転体の回転方向に対し角度φをなすように傾斜して取り付けられていて、角度φは角度θよりも大きい(甲6、20、23)。したがって、被告製品は、構成要件1Eを充足する。 イ被告製品は、ブレードの両端の取付位置に適合するよう、略L字形あるい は略逆L字形をしているから、その形状により、トナーカートリッジに対する取付位置(ブレードの両端のいずれに取り付けるシール材か)、及び回転体の回転方向に対する取付方向は、一意に定まるところである。また、被告らは、メーカーとして、当然、キヤノンあるいはその関連会社との間で、サンプルの試作・提供等にあたり打合せを行い、被告製品の意義、及びその取付 位置や取付方向を正しく認識しているところである(甲16)。 【被告らの主張】(1) 構成要件の解釈ア構成要件1Eは「該予め定める角度θよりも大きな角度φ」と規定しているところ、原告は、「該予め定める角度θ」が一定の設計数値であることを主 張しないから、角度φとの大小関係も定まらず、原告の主張はそれ自体失当である。 また、構成要件1Eは「該予め定める角度θ」と規定するから、この角度θ(パイル糸がその配列方向に対して開く角度)は、「使用状態」、すなわち回転状態であっても、構成要件1Dの角度θと同値であることを要すると解 される。しかし、原告の実施した実験によってさえ(ただし、同 ル糸がその配列方向に対して開く角度)は、「使用状態」、すなわち回転状態であっても、構成要件1Dの角度θと同値であることを要すると解 される。しかし、原告の実施した実験によってさえ(ただし、同実験は、被告製品を現像ローラ等に取り付けた際の回転状態を再現するものとは評価できない。)、パイル糸の上記角度θは、回転状態と非回転状態との間で変動があるから(甲17・15頁表4参照)、この事実から既に、原告の主張は失当である。 イ本件明細書の【0010】では、使用状態で、「回転体の回転方向に対し、 パイルの配列方向が予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように、製織方向を回転方向に対して傾斜させ」ることで、「傾斜するパイルの方向は、回転体の回転方向よりも、パイルの配列方向側に傾く」と記載されていることからすれば、「使用状態」においては、傾斜したパイルがパイル糸の配列方向側に向かって倒れることを念頭に置いていると解される。そうすると、原 告が主張するように、「斜毛方向」が配列方向を軸として回転方向とは反対側に存在することを前提に、配列方向と各方向のなす角度を比較して、その絶対値が大きければ足りるという解釈は取り得ない(「斜毛方向」が配列方向を軸として回転方向とは反対側に存在する場合には、使用状態でパイルが更に斜毛方向に倒れると、パイルは配列方向側から離れることになり、「回転体の 回転方向よりも、パイルの配列方向に傾く」ことはないから、原告主張の解釈は取り得ない。)。 仮に、原告主張によったとしても、甲17号証による実験は、実機における再現性に欠けるものである。 (2) 被告製品の構成 被告製品の「使用」方法や「使用」に係る設計事項である「使用状態」は、キヤノンの決定事項であり、被告らの関知す る実験は、実機における再現性に欠けるものである。 (2) 被告製品の構成 被告製品の「使用」方法や「使用」に係る設計事項である「使用状態」は、キヤノンの決定事項であり、被告らの関知するところではない。 被告らは、設計段階において、キヤノン又はその関連会社から感光体用シール材について、使用状態の取付位置や取付方向を開示されたことはなく、甲16発明は、感光体用シール材に関し当業者が一般論として認識している事項を 基に作成したものに過ぎず、被告製品の取付位置や取付方向等を認識している根拠とはならない。 前記(1)に加え、上記で述べたことからすれば、被告製品は、構成要件1Eを充足しない。 4 本件特許に、糸の「径」(構成要件1C)を測定することができないことによる 明確性要件違反、実施可能要件違反の無効理由があるか(争点4) 【被告らの主張】(1) 前述のとおり、当業者において、糸の太さを表す数値として糸の断面の直径は用いられない。そして、「径」という語は、辞書を参照しても、「直径」以外の意味を合理的に導出し得ない(乙7)。そうすると、糸の「径」という請求項の記載は、それ自体明確とはいえない。のみならず、本件明細書には、糸の「径」 についての定義や説明が全く記載されていない。 したがって、「地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており」という、地糸とパイル糸の「径」の大小関係を構成に含む本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載は、明確性要件に違反する。 (2) 本件明細書に各糸の「径」の測定方法等の記載が全くないから、当業者にお いて、各糸の「径」をどのように測定ないし算定すればよいのかも不明である。 また、上述のとおり、糸の「径」を測定する方法について当業者間でコンセンサス 定方法等の記載が全くないから、当業者にお いて、各糸の「径」をどのように測定ないし算定すればよいのかも不明である。 また、上述のとおり、糸の「径」を測定する方法について当業者間でコンセンサスを得た技術常識もないから、当業者が本件明細書全体の記載、又は出願時の技術常識に基づき糸の「径」を測定できるともいえない。したがって、本件明細書における発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に違反する。 【原告の主張】本件訂正発明1は、特許請求の範囲の記載や本件明細書の発明の詳細な説明の記載が示すとおり、糸の「径」の厳密な絶対値を問題とするものではなく、パイル糸と、地糸の経糸または緯糸との間で、糸の太さを相対的に比較して、その大小関係を定めたものである。このことは、特許請求の範囲の記載や本件明細書の 発明の詳細な説明の記載の文言それ自体から、当業者において、容易に明確に理解されるところであり、明確性要件違反及び実施可能要件違反はない。 5 本件特許に、「予め定める角度θ」(構成要件1D)が不明確であること等による明確性要件違反、サポート要件違反の無効理由があるか(争点5)【被告らの主張】 (1) 構成要件1Dには「予め定める角度θ」との語が存在するが、「角度θ」とい う用語は、文言上、零度から360度までの任意の角度を意味する。 他方で、【0046】及び図面【図8】においては、角度θは角度φよりも小さくすると記載されているところ、角度φが「0度以上45度以下」以外の範囲をもとり得る旨の記載はない(これが一実施例にすぎない旨の記載もない。)。 そうすると、上記の本件明細書の記載からは、角度θは「0度以上45度以下」 よりも小さい零度以上45度未満の範囲で定めなければならないと解される。 以上からすれば すぎない旨の記載もない。)。 そうすると、上記の本件明細書の記載からは、角度θは「0度以上45度以下」 よりも小さい零度以上45度未満の範囲で定めなければならないと解される。 以上からすれば、請求項に用いられている「角度θ」には何らの限定も付されていないにもかかわらず、上記の本件明細書の詳細な説明の記載では、「角度θ」という用語を零度以上45度未満の範囲の角度と説明しているので、両者を統一的に理解することができない。その結果、請求項の「角度θ」という用 語の意義が不明確になっており、本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載は、明確性要件に違反する。 (2) パイル糸が配列方向とほとんど変わらない方向に斜毛しているにすぎない場合(例えばθを1度から10度程度とした場合等)を想起すると、本件明細書の記載を参照しても、そのような角度θでは、当業者が、本件訂正発明1の「微 細粉粒体に対するシールを確実に行い、しかも当接負荷を軽減する」という課題(【0007】)を解決できると認識できるとはいえず、また、出願時の技術常識に照らし本件訂正発明1の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるともいえない。よって、本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載は、サポート要件に違反する。 【原告の主張】(1) 本件明細書の発明の詳細な説明に示された一実施例についての記載によって、直ちにクレーム解釈が限定されるべき理由はなく、本件訂正発明1の技術的特徴点に照らせば、角度θが零度以上45度未満と限定されるべき理由はないから、「角度θ」について明確性要件違反はない。 (2) 角度θが小さな値の場合であっても、角度θ>零度であれば、パイルが、隣 接する配列方向のパイルに接触し、隣接する配列方向との間に隙間が生じること ついて明確性要件違反はない。 (2) 角度θが小さな値の場合であっても、角度θ>零度であれば、パイルが、隣 接する配列方向のパイルに接触し、隣接する配列方向との間に隙間が生じることを防ぐとともに、パイルが重なり合う部分で高密度のシールを行うことができるのであって、これにより、パイル糸としての立毛密度を低くすることが可能となり、当接負荷の軽減を実現すること(本件訂正発明1の技術的意義)が可能となるのであって、課題解決が否定されることはない。本件訂正発明1が 定める「角度θ」についてサポート要件違反はない。 6 本件特許に、「パイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされており」(構成要件1D)の記載が不明確であることによる明確性要件違反、及びこれに関する本件明細書の記載に係る実施可能要件違反の無効理由があるか(争点6)【被告らの主張】 パイルの「ピッチ」は、パイルを「毛羽立た」せることで「狭められる」ことはない。このような理解に基づくと、構成要件1Dの「パイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされ」という記載は、どのような状態を意味しているのか、それ自体不明確である。また、本件明細書にも、当該記載の意味を理解できるような定義又は説明は存在しない。「パイル間のピッチ」という文言につき、本件審 決と原告の主張にも齟齬がある。したがって、本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載は、明確性要件に違反する。 また、本件明細書の詳細な説明には、パイル糸を「パイル間のピッチが狭められるように毛羽立た」せるという構成を具体的に理解できる記載が全くないし、また、当業者が本件明細書全体の記載又は出願時の技術常識に基づき、パイル糸 を「パイル間のピッチが狭められるように毛羽立た」せることができるともいえない を具体的に理解できる記載が全くないし、また、当業者が本件明細書全体の記載又は出願時の技術常識に基づき、パイル糸 を「パイル間のピッチが狭められるように毛羽立た」せることができるともいえない。したがって、本件明細書における発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件にも違反する。 【原告の主張】本件訂正発明1の「パイル糸」は、多数の繊維を撚り合わせて形成されている 糸を意味する用語であり、「パイル」及び「カットパイル」は、パイル糸がカット されて、パイル糸を構成する多数の微細長繊維の撚りが解消されて、パイルの繊維が毛先方向に向かって広がり、毛羽立ち状態となったものを意味する用語である(【0003】【0009】【0049】)。 すなわち、パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形成されることにより、パイルが、パイル間のピッチ(パイル糸間のピッチではない。)が 狭められるように(「狭められた」ではなく「狭められるように」である。)毛羽立たされている構成(換言すれば、パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離されることにより、パイルが毛先方向に向かって広がり、パイル間の間隔が狭まったような状態となっている構成)を定めたものと明確に理解される。 したがって、本件訂正発明1が定める「パイル間のピッチが狭められるように 毛羽立たされ」について、明確性要件違反及び実施可能要件違反はない。 7 本件特許に、「予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように、該配列の方向を該回転方向に対して傾斜させる」(構成要件1E)構成が、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件訂正発明1の課題を解決できない形状のものを含むことによるサポート要件違反の無効理由があるか(争点7) 【被告らの主張】構成要 1E)構成が、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件訂正発明1の課題を解決できない形状のものを含むことによるサポート要件違反の無効理由があるか(争点7) 【被告らの主張】構成要件1Eの「予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように・・・傾斜させる」という部分の解釈について、原告の主張(斜毛方向が回転方向に対し配列方向を軸として反対側に存在する場合も構成要件1Eを充足する)のとおり解するならば、本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載は、当業者が「微細粉粒 体に対するシールを確実に行い、しかも当接負荷を軽減する」という本件訂正発明1の課題(【0007】)を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 すなわち、【0010】には、上記課題を解決する手段として、「使用状態では、回転体の回転方向に対し、パイルの配列方向が予め定める角度θよりも大きな角 度φをなすように、製織方向を回転方向に対して傾斜させ」、「回転の軸線方向は 回転方向に垂直であるので、パイルの傾きによって、微細粉粒体の回転の軸線方向に、シール材を越えて移動しようとしても、パイルの傾斜で軸線方向の逆方向に案内されて、もれを防ぐことができる。」との記載がある。これらの記載からは、少なくとも、「斜毛方向(「開く方向」)」が、(回転方向と垂直である)回転の軸線方向を越えて傾くことは想定されていない。そうでなければ、微細粉粒体は、回 転の「軸線方向の逆方向に案内され」ずに、軸線方向側に流れ出てしまうこととなり、本件訂正発明1の作用効果を発揮しないことになる。 また、後記〔図4〕は、斜毛方向(「開く方向」)が配列方向を軸として回転方向の反対側に存在する場合のうち、斜毛方向(「開く方向」)と回転方向の角度が略直角となる状態を示し 揮しないことになる。 また、後記〔図4〕は、斜毛方向(「開く方向」)が配列方向を軸として回転方向の反対側に存在する場合のうち、斜毛方向(「開く方向」)と回転方向の角度が略直角となる状態を示している。このような場合には、配列方向と斜毛方向(「開 く方向」)のなす角度(θ)が、配列方向と回転方向のなす角度(φ)よりも小さくても、パイルの毛流れ方向に沿って微細粉粒体がそのまま軸線方向に誘導されるので、文言上は構成要件1Eを充足するにもかかわらず、「パイルの傾きによって、微細粉粒体の回転の軸線方向に、シール材を越えて移動しようとしても、パイルの傾斜で軸線方向の逆方向に案内されて、もれを防ぐことができる」という 上記の効果を有しないことは明らかである。 さらに、斜毛方向(「開く方向」)が配列方向を軸として回転方向の反対側に存在する場合のうち、後記〔図5〕のように、斜毛方向(「開く方向」)と回転方向の角度が略直角を超え180度未満となる場合には、微細粉粒体がシール材に侵入しようとした場合に、パイルの間に微細粉粒体が軸線方向外側に流れる隙間が できるので、「微細粉粒体に対するシールを確実に行い、しかも当該負荷を軽減する」という本件訂正発明1の課題(【0007】)を解決できるものではないし、当業者もそのように認識できるものではない。加えて、原告の主張を前提とすると、配列方向、回転方向、斜毛方向(「開く方向」)が後記〔図6〕のような構成さえ含むこととなるが、この例において、本件訂正発明1の上記課題を解決でき ないことは明らかである。 したがって、構成要件1Eの「予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように・・・傾斜させる」という構成は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件訂正発明1の課題を解決で かである。 したがって、構成要件1Eの「予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように・・・傾斜させる」という構成は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件訂正発明1の課題を解決できない形状の物を含むことになるから、本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載は、サポート要件に違反する。 【原告の主張】 【0010】は、単に、角度φ>角度θであることを言い換えて説明したものでしかなく、これは、回転方向、配列方向及び斜毛方向の並び順を限定した記載ではない。同記載が「配列方向」を軸として同じ側に「斜毛方向」と「回転方向」が存在する構成を示したものであると解釈されるとしても、これは、発明の構成例の一つでしかないから、被告らが主張するような限定解釈が成り立つものでは ない。 また、本件訂正発明1の構成要件1E「予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように・・・傾斜させる」は、角度φ≠角度θの構成により、パイルが、隣接する配列方向のパイルに接触し、隣接する配列方向との間に隙間が生じることを防ぐとともに、パイルが重なり合う部分で高密度のシールを行うことができ、 これにより、パイル糸としての立毛密度を低くすることが可能となり、当接負荷を軽減することができるというものである。それゆえ、当業者は、本件訂正発明1について、構成「予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように・・・傾斜させる」により、本件訂正発明1の課題を解決することができるものと認識する。 したがって、本件訂正発明1が定める「予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように・・・傾斜させる」について、サポート要件違反はない。 8 本件特許に、「使用状態」(構成要件1E)の記載が不明確であることによる明確性要件違反、及びこれに関する本件明 りも大きな角度φをなすように・・・傾斜させる」について、サポート要件違反はない。 8 本件特許に、「使用状態」(構成要件1E)の記載が不明確であることによる明確性要件違反、及びこれに関する本件明細書の記載に係る実施可能要件違反の無効理由があるか(争点8) 【被告らの主張】 (1) 構成要件1Eの「使用状態」という用語は、それ自体明確な記載であるとはいえない。さらに、当該用語に関しては、【0036】【0046】【0047】に記載があるだけであるが、上記各記載からは、「使用状態」につき、微細粉粒体のもれ防止用シール材が画像形成装置に設置されて現像ローラ等が回転している状態を指すのか、単に設置されたのみの状態であるのか、あるいはその全 てを含む状態なのかなど、いかなる場合を指すのかが不明である。 よって、本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載は、明確性要件に違反する。 (2) また、本件明細書からは「使用状態」の意味が分からない以上、「使用状態」を前提とした画像形成装置における微細粉粒体のもれ防止用シール材の構成を明確かつ十分に把握することができない。したがって、本件明細書の記載は、 実施可能要件にも違反するものである。 なお、原告主張のように「使用状態」を解釈するとすれば、「使用状態」である回転状態における角度θや角度φは、パイルの摺接状態や回転体の摩擦係数、回転速度等によっても当然変化するものであるから、角度θの立証は一層困難であり、当業者が回転状態のいかなる状態及びいかなる条件で角度θを測定す ればよいかも分からないから、やはり実施可能要件に違反する。 【原告の主張】(1) 本件訂正発明1は、画像形成装置について、軸線方向の外方などにトナーが漏れることを防止する微細粉粒体もれ防止用シール よいかも分からないから、やはり実施可能要件に違反する。 【原告の主張】(1) 本件訂正発明1は、画像形成装置について、軸線方向の外方などにトナーが漏れることを防止する微細粉粒体もれ防止用シール材についての発明である(【0002】)。また、微細粉粒体もれ防止用シール材が、現像ローラもしくは感光 ドラムが回転し、現像ブレードもしくはクリーニングブレードにより掻き落されたトナーが軸線方向へもれることを防止するためのシール材であることは、本件特許の出願日前の技術常識である(甲6)。 本件訂正発明1の「使用状態」とは、微細粉粒体もれ防止用シール材がトナーカートリッジに設置されて現像ローラもしくは感光ドラムが回転している状態 を指す用語であると自然に解釈される。 本件訂正発明1が定める「使用状態」の意義は明確であり、これについて明確性要件違反及び実施可能要件違反はない。 (2) トナーカートリッジから回転体を取り外した状態と、回転体を設置した状態(回転体が回転していない状態)と、本件訂正発明1が定める「使用状態」との間で、角度θに差異はなく、現像ローラや感光ドラムの回転により角度θと 角度φとの大小関係が逆転することもない(甲17)。 9 本件特許に、「前記パイルは、前記微細粉粒体が前記もれ防止用シール材を越えて移動しようとしても、前記回転体の前記軸線方向の逆方向に案内されるように傾いている」(構成要件2A)の記載が不明確であること等による明確性違反、サポート要件違反及びこれに関する本件明細書の記載に係る実施可能要件違反の無 効理由があるか(争点9)【被告らの主張】(1) 構成要件2Aのうち、少なくとも、「・・・軸線方向の逆方向に案内されるように傾」くについては、どのような作用を指しているのか、ま 反の無 効理由があるか(争点9)【被告らの主張】(1) 構成要件2Aのうち、少なくとも、「・・・軸線方向の逆方向に案内されるように傾」くについては、どのような作用を指しているのか、またその効果を得られる具体的な角度θは不明であるし、このような場合における角度φと角度 θの関係性が明確にされていない。 また、パイルが「微細粉粒体が・・・前記回転体の前記軸線方向の逆方向に案内されるように傾い」ているという構成要件2Aの記載に従えば、当然、パイル糸の斜毛方向は、回転方向に対し配列方向を軸として同じ側に存在する場合のみを意味することとなるはずである。それにもかかわらず、原告は、「『配 列方向』を軸として反対側に『斜毛方向』と『回転方向』が存在する構成を広く除外するものではない」とも主張することから、上記記載部分の意味内容は不明確である。 よって、本件訂正発明2の特許請求の範囲の記載は、明確性要件に違反する。 (2) 斜毛方向(「開く方向」)と回転方向の角度が略直角の場合(斜毛方向〔「開く 方向」〕がおおむね回転の軸線方向と重なる場合)や斜毛方向(「開く方向」)と 回転方向の角度が略直角を超え180度未満の場合に、「微細粉粒体が・・・回転体の前記軸線方向の逆方向に案内される」ことがないことは明らかであるが、このような場合以外も、角度θと角度φとの関係性次第で、パイルとパイルの間の隙間を通じて微細粉粒体が軸線方向にそのまま流れ出ることはあり得る。 しかし、本件明細書を見ても、当業者において、「微細粉粒体が・・・回転体の 前記軸線方向の逆方向に案内さ」せる方法を明確かつ十分に把握することはできないから、本件明細書における発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に違反する。 (3) パイルが「微細粉粒体 転体の 前記軸線方向の逆方向に案内さ」せる方法を明確かつ十分に把握することはできないから、本件明細書における発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に違反する。 (3) パイルが「微細粉粒体が・・・前記回転体の前記軸線方向の逆方向に案内されるように傾い」ているという構成要件2Aの記載にもかかわらず、原告が主 張するように、パイル糸の「斜毛方向」が、「配列方向」を軸として「回転方向」とは反対側に存在するという構成を含むと解釈するならば、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件訂正発明2の課題を解決できない形状の物を含むことになるから、本件訂正発明2の特許請求の範囲の記載は、サポート要件に違反する。 【原告の主張】(1) 【0036】及び【0038】の記載からすれば、構成要件2Aの「前記パイルは、前記微細粉粒体が前記もれ防止用シール材を越えて移動しようとしても、前記回転体の前記軸線方向の逆方向に案内されるように傾い」ているとの記載に係る構成において、パイルが、微細粉粒体が回転体の軸線7a方向の逆 方向に案内されるように傾いていることは明らかであり、当業者は、上記記載に係る作用効果を十分に理解することができる。 さらに、パイルが「微細粉粒体が・・・前記回転体の前記軸線方向の逆方向に案内されるように傾い」ているという構成要件2Aの記載は、パイル糸の「斜毛方向」が、「配列方向」を軸として「回転方向」の反対側に存在する構成を排 除するものではなく、被告らの主張は独自の見解である。 したがって、本件訂正発明2の特許請求の範囲の記載は、明確性要件に違反するものではない。 (2) 【0036】及び【0038】の記載を踏まえれば、当業者は、「微細粉粒体が・・・回転体の前記軸線方向の逆方向に案内さ」せるこ 2の特許請求の範囲の記載は、明確性要件に違反するものではない。 (2) 【0036】及び【0038】の記載を踏まえれば、当業者は、「微細粉粒体が・・・回転体の前記軸線方向の逆方向に案内さ」せることができることを明確かつ十分に把握することができるから、本件明細書における発明の詳細な説 明の記載に実施可能要件違反はない。 (3) パイルが「微細粉粒体が・・・前記回転体の前記軸線方向の逆方向に案内されるように傾い」ているという構成要件2Aの記載は、パイル糸の「斜毛方向」が、「配列方向」を軸として「回転方向」の反対側に存在する構成を排除するものではないし、構成要件2Aの訂正により、課題を解決できない形状の物を含 まないことが明確となったのであるから、被告らの主張は成り立たず、本件訂正発明2の特許請求の範囲の記載にサポート要件違反はない。 第4 当裁判所の判断 1 判断の大要当裁判所は、被告製品は少なくとも本件特許の構成要件1C及び1Eを充足す るものと認められず(争点1及び3)、請求原因に理由がないものと判断する。これにより、抗弁(無効論)については、判断を要しないこととなる。 以下、充足論に係る上記争点につき判断を示すこととする。 2 争点1(被告製品が、構成要件1Cの構成(地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており)を備えるか)について (1) 本件明細書の記載本件明細書の発明の詳細な説明のうち、【課題を解決するための手段】(【0008】から【0023】まで)には、経糸、緯糸、パイル糸の「径」を認識する方法及び経糸又は緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされることについての技術的意義に関する記述はない。 【0030】(発明の効果の記載中)には、「また本発明によれ イル糸の「径」を認識する方法及び経糸又は緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされることについての技術的意義に関する記述はない。 【0030】(発明の効果の記載中)には、「また本発明によれば、高分子材 料を素材して繊維径が25μm以下の単繊維または複合繊維からなる微細長繊維を・(中略)・束ねて構成するパイル糸から微細長繊維を分離させて、これらの微細長繊維によるパイルを容易に形成することができる。」との記載がある(ただし、本件特許の請求項7のうち、「前記パイル糸を」から「特徴とする」までの部分に係る発明の効果の記載と認められる。)。 【0033】(発明を実施するための最良の形態の記載中)には、「パイル糸4を構成する・・微細長繊維の繊維径は平均で25μm以下であり」との記載がある。 【0043】(同)には、「図4および図5では、パイル糸4として、地経糸21および地緯糸22よりも太い径の使用する例を・(中略)・示す。パイル糸 4としての径を太くすることによって、多数の微細長繊維を含ませることができ、繊維密度を高めることができる。」との記載がある。 【0050】(同)には、「たとえば、径が数D(デニール)程度の複数種類の単繊維」との記載が、【0052】には、「たとえば、300D(デニール)程度の複合繊維糸30をパイル糸4として・・」との記載がそれぞれある。 (2) 技術常識ア上記本件明細書の記載からは、経糸、緯糸、パイル糸の「径」を認識する方法は見当たらず、また、経糸又は緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされることについての技術的意義に関する記述はない以上、そこから上記の「径」を認識する方法を推測することもできない(原告は【0043】の記載を指 摘するが、パイル糸に「多数の微細長繊維 も細くされることについての技術的意義に関する記述はない以上、そこから上記の「径」を認識する方法を推測することもできない(原告は【0043】の記載を指 摘するが、パイル糸に「多数の微細長繊維を含ませる」ことと、基布の経糸又は緯糸の繊度(太さ・細さ)との関係は不明というほかない。)から、これらは当業者の理解する技術常識によって決すべきこととなる。 イこの点、繊維の形態的な太さは、一般的にその断面が不規則な形状を示しているので、正確な計測は困難であり、したがって、一定の長さ当たりの重 量で繊維の太さが示されているとされ、また断面の形状にあっては、天然繊 維の形状は、それぞれ特有の形をしており、化学繊維は、その形状も人為的に自由につくることができ、断面は主として紡績方法によって決まり、円形・だ円形その他複雑なものもある、とされている(乙4。三訂版「繊維」(昭和61年刊行))。 また、繊維における細さ(繊度)にはいろいろの表し方があり、メートル 法の番手(1グラムの糸が何メートルの長さを持つかを示すもの。番手が大きいほど糸は細い。)や、デニール、テックス(いずれも一定長の糸の重量)が用いられ、デニールと繊維ごとの比重を用いて断面積を算出する方法もある(乙5。「繊維の科学」(昭和53年刊行))。撚りの強さによっても見た目の太さが変わる(乙6。令和2年当時のウェブサイト。)。本件明細書におい ても、パイル糸の繊度に関し、デニールが用いられている部分がある。 ウところで、「径」の字義は、「①さしわたし。直径。②みち。小道。近道。」というものである(乙7(広辞林第六版))。また、広辞苑第七版においては、「まっすぐ結ぶ道。さしわたし。」とされており、「差渡し(さしわたし)」の字義は、「①さしわたすこと。一方から他 。近道。」というものである(乙7(広辞林第六版))。また、広辞苑第七版においては、「まっすぐ結ぶ道。さしわたし。」とされており、「差渡し(さしわたし)」の字義は、「①さしわたすこと。一方から他方へかけ渡すこと。また、その長さ。 ②直径。わたり。けい。」とされている。これらを踏まえると、「径」とは「直径」を意味するものと解される。「直径」の字義は、「円または球の中心を通って円周または球面上に両端をもつ線分。また、その長さ。さしわたし。」というものであるから(広辞苑第七版)、「直径」が認識されるためには、平面においては円又はそれに近い形状のものが想定されていると解される。 他方、前記のとおり、糸は繊維の集合体であって、繊維の断面は一般的に不規則な形状を示すものであるから、少なくとも、「径」の大小の比較に、「断面積」(空隙を除外するかどうかを問わない)を用いることはできないものと解される。この点、原告は、糸の太さを断面積で表すことが当業者にとって一般的な手法となっていたとしてその旨の証拠(甲25から27まで)を提 出するが、それらは口輪筋線維、等方性黒鉛材料の気孔、血管について画像 解析により断面積を測定した例にすぎず、技術分野が全く異なるもので、原告主張の事実は認めるに足りない。 (3) 構成要件1Cの充足の検討ア原告は、各糸の径は糸の断面積を測定することにより比較判断することが可能であり、かつこれを製品状態で測定すべきものとした上で、かかる測定 方法を採用した測定結果を証拠(甲19の1・2)として提出する。 この測定は、被告製品のシール材に対し、接着剤を滴下して浸み込ませ、乾燥後、養生テープで固定し、パイル糸の配列方向に対し垂直となるように、シール材に金尺を当てて、カット治具である剃刀刃を する。 この測定は、被告製品のシール材に対し、接着剤を滴下して浸み込ませ、乾燥後、養生テープで固定し、パイル糸の配列方向に対し垂直となるように、シール材に金尺を当てて、カット治具である剃刀刃を沿わせて一回のスライスにより切断し、断面画像を撮像した上、該画像を解析して、緯糸とパイル 糸の断面積を求めるというものである。 イしかし、本件訂正発明1の構成要件1Cは、糸の「径」の大小をその要素としており、糸の太さの比較に断面積を用いることは文言の一義的な意味に反し、また前述の当業者の技術常識にも合致しないものである。 また、具体的な測定手段をみても、上記測定は、被告製品を加工、破壊し た上で測定するものであって、原告が自らいう「製品状態での測定」とも前提を異にするものである(そもそも、製品状態では糸に様々な方向から様々な力が作用し、一定の「断面積」を得ることは困難であると考えられ、「製品状態での測定」という前提自体、本件明細書や当業者の技術常識から導き得るのかについて疑問なしとしない。)。加えて、上記切断方法は、繊維の方向 に垂直に正確に切断されることが保証されるものともいえず、切断角度、切断箇所の違いによる断面積の変化が何ら考慮されていないと見受けられ、測定の条件統制にも疑義がある。画像解析についても、糸(及びこれを構成する繊維)の外郭のとらえ方や、空隙の有無等によって「断面積」が異なり得ることが見て取れる。 これらのことからすると、甲19号証の1・2に示された測定手段は、画 像の作成過程、画像解析の双方において、測定の正確性、合理性が担保されたものとはいえないというべきである。 また、画像解析の結果報告される糸の断面(空隙を含む外郭)は、不定形で円又はそれに近い形状を備えておらず、かかる 双方において、測定の正確性、合理性が担保されたものとはいえないというべきである。 また、画像解析の結果報告される糸の断面(空隙を含む外郭)は、不定形で円又はそれに近い形状を備えておらず、かかる画像から、「径」(といえるもの)を認識することも困難である。 ウそうすると、甲19号証の1・2によって、被告製品について構成要件1Cの充足が立証されたということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 (4) 小括以上によると、被告製品が構成要件1Cの構成を備えるとの原告の主張は、 理由がない。 3 争点3(被告製品が、構成要件1Eの構成(使用状態では、回転体の回転方向に対し、該配列の方向が該予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように、該配列の方向を該回転方向に対して傾斜させる)を備えるか)について(1) 使用状態の意義について 原告は、構成要件1Eの「使用状態」につき、変遷を経て、「微細粉粒体もれ防止用シール材がトナーカートリッジに設置されて現像ローラもしくは感光ドラムが回転している状態」と特定した。 (2) 被告の実施行為について前提事実によると、被告らは、被告製品を製造し、キヤノンないしその関連 会社に販売する行為をするにとどまっている。 そして、キヤノンないしその関連会社が製造するトナーカートリッジに被告製品がどのように設置されるかについて被告らが関与していること、より具体的には、構成要件1Eの回転方向に対する角度φと配列方向に対する角度θの関係を踏まえてカートリッジに設置する行為を被告らがしていることを認める に足りる証拠はない。 原告は、被告らは、トナーカートリッジに対する取付位置(ブレードの両端のいずれに取り付けるシール材か)、及び回転体の回転方向に を被告らがしていることを認める に足りる証拠はない。 原告は、被告らは、トナーカートリッジに対する取付位置(ブレードの両端のいずれに取り付けるシール材か)、及び回転体の回転方向に対する取付方向を正しく理解して、被告製品を製造・販売していると主張するが、かかる事実のみで被告らがキヤノン及びその関連会社と共同して構成要件1Eに係る実施行為をしたことになると評価できるかはともかく、かかる事実を認めるに足りる 証拠もない(原告は、自らもキヤノンのプリンタ用シール材の調達先であることを自認しており、この立証に格別の困難があるとも解されない。)。 (3) 使用状態における各角度の立証について原告は、前記の「使用状態」における構成要件1Eの定める各角度の立証として、証拠(甲17)を提出する。 これは、くぼみを有する台座に被告製品を設置し、回転体(感光ドラム)を模したアクリル板(ただし、平面のもの)を摺動させて、模擬使用状態における被告製品の状態を撮影したものである。 しかし、本件において、被告製品が角度θを備えるかどうかについて争われる中、甲17号証による実験においては、角度θが存在することが当然の前提 とされており(少なくとも角度θを認定した経緯およびその相当性に関する記述は存しない。)、かかる事実は、当該実験の正当性に疑義を生ずるものである。 また、トナーカートリッジの製作過程(組み立て)の際に現実に被告製品に作用する力の影響が考慮されていないことや、被告製品が実際に接する感光ドラムは曲面であるのに平面で実験されていることなどを考慮すると、甲17号 証による実験は、実際のトナーカートリッジにおいて発生する事象を再現したものとは言い難く、この点からも構成要件1Eの充足を立証するに足りない。 で実験されていることなどを考慮すると、甲17号証による実験は、実際のトナーカートリッジにおいて発生する事象を再現したものとは言い難く、この点からも構成要件1Eの充足を立証するに足りない。(4) 小括以上のとおり、被告製品が構成要件1Eの構成を備えるとの原告の主張は、前提を欠くか、理由がない。 第5 結論 以上の次第で、原告の被告らに対する請求はいずれも理由がない。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 松阿彌隆 裁判官 島田美喜子 裁判官 阿波野右起 (別紙「特許公報」は添付省略) (別紙)被告製品目録 1 キヤノンが定める開発コードC360の対象トナーカートリッジ用の感光体用シール 2 キヤノンが定める開発コードC394の対象トナーカートリッジ用の感光体用シール 3 キヤノンが定める開発コードC280の対象トナーカートリッジ用の感光体用シール 4 キヤノンが定める開発コードC256の対象トナーカートリッジ用の感光体用シール以上 (別紙)表・図面等 〔表1〕 〔表2〕 〔表3〕 〔グラフ1〕 〔図1〕 〔表3〕 〔グラフ1〕 〔図1〕 〔図2〕 θδ基布配列方向2aパイル・青矢印が、配列方向から角度θ開いた方向である。この方向にパイルが傾斜して斜毛状態(基布の表面に対して角度δで傾斜)となる。 〔図3〕 〔図4〕 〔図5〕 〔図6〕 〔図7〕 以上
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