平成1(行ケ)1 参議院議員選挙無効等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成2年5月30日 名古屋高等裁判所 金沢支部 選挙
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【DRY-RUN】○ 主文 一 原告らの本件選挙無効請求を棄却する。 二 原告Aの本件当選無効請求を棄却する。 三 訴訟費用は原告らの負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 原告ら 1 (全員) 平成元年

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○ 主文一原告らの本件選挙無効請求を棄却する。 二原告Aの本件当選無効請求を棄却する。 三訴訟費用は原告らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一原告ら 1 (全員)平成元年七月二三日執行された石川県選挙区における参議院選挙区選出議員選挙(以下「本件選挙」という)は無効とする。 2 (原告A)本件選挙における候補者Bの当選は無効とする。 3 (全員)訴訟費用は被告の負担とする。 二被告主文同旨第二当事者の主張一請求原因 1 原告Aは本件選挙の候補者であり、その余の原告らは本件選挙の選挙人である。 2 本件選挙には、C、B、原告A、Dらが立候補して、Bが当選の決定を受けた。 3 選挙無効について本件選挙は、次のとおり選挙の結果に異動を及ぼすおそれのある違法があるから無効である。 (一) 金沢市第一ないし第五開票区における本件選挙の最終得票結果の発表は、従来の選挙では投票日の午後九時五〇分ころに行われていた。ところが、本件選挙においては、選挙管理委員会が右各開票区の確定投票数を発表したのが投票日の翌日の二四日午前零時ころであった。しかも、確定投票数を発表した直後に、金沢市第三開票区(兼六中学校)において集計ミスがあったとして、最終得票結果を訂正するというトラブルがあった。これは効力判定に回された疑問票二二一二票のうち一〇〇六票の有効票を無効票にカウントした結果であり、この一事をもってしても本件選挙の開票手続には違法があった疑いが強い。 (二) また、各市町村の開票区における投票の効力の決定については、その判定基準が統一されているべきであるのに、「E」「F」「G」「H」と記載された投票について、有効投票とするものと無効投票とするものとがあり、その判定基準が統一されていなかった。さらに、「B」「I」と記載された 統一されているべきであるのに、「E」「F」「G」「H」と記載された投票について、有効投票とするものと無効投票とするものとがあり、その判定基準が統一されていなかった。さらに、「B」「I」と記載された投票についても有効投票とするものと無効投票とするものがあり、その判定基準が統一されていなかった。 (三) 本件選挙における最終得票は、Bが二七万六〇九五票、原告Aが二七万四九二四票であって、得票数の差が僅か一一七一票であったことに鑑みれば、右違法が本件選挙の結果に異動を及ぼすことは明らかである。 (四) なお、本件選挙における無効投票数は、従来の石川県の参議院議員選挙における無効投票数に比較して左記のとおり極端に少ない。 記年度投票総数無効投票数昭和四九年度五四万八四二〇 二万八〇一四昭和五二年度五二万五九三七三万〇六〇七昭和五五年度六〇万八一七九五万九〇九二昭和五八年度四三万五七三九二万三五三一昭和六一年度五九万八五七〇 五万八四六二平成元年度(本件選挙)六〇万九〇三三一万六九三八よって、本件選挙を無効とする旨の判決を求める。 4 当選無効について(一) 本件選挙において無効投票とされた投票中、以下のとおり、原告Aの有効投票とすべき投票が一九五五票あるから、Bを当選人とした決定は無効である。 (二) 原告Aが有効投票と主張する投票は次のとおりである。 (1) 「J」「K」「G」等と記載された投票合計一六三七票(以下「L」票という。検証調書中、右各投票に付された番号―検証番号―は、別紙一(一)のとおりであり、その分類は次のとおりである。以下、投票を特定する場合は、検証番号をもって示す。)及び右各投票と類似する投票七一票(以 。検証調書中、右各投票に付された番号―検証番号―は、別紙一(一)のとおりであり、その分類は次のとおりである。以下、投票を特定する場合は、検証番号をもって示す。)及び右各投票と類似する投票七一票(以下「L」類似票という。 右各投票の検証番号は、別紙一(二)のとおりである。 )(a)「J」又は「M」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票四三一票(b) 「N」又は「O」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票一四票(c) 「E」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票八票(d) 「K」「P」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票六五四票(e) 「Q」「R」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票二四票(f) 「S」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票一四票(g) 「G」「T」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票二七〇票(h) 「U」「V」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票一六〇票(i) 「W」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票二四票(j) 「X」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票二〇票(k) 「自民党J」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票一八票(2) 「Y」「Z」「P1」等と記載された投票合計一二四票、その詳細は、別紙二のとおり)(3) 「P2「P3」「P4」「P5」等と記載された投票合計一二三票(その詳細は、別紙三のとおり)(三) 「L」票の有効性(1) 本件選挙の特徴本件選挙は、「消費税問題」、「リクルート問題」、「農政問題」の三点が争点(いわゆる三点セット) れた投票合計一二三票(その詳細は、別紙三のとおり)(三) 「L」票の有効性(1) 本件選挙の特徴本件選挙は、「消費税問題」、「リクルート問題」、「農政問題」の三点が争点(いわゆる三点セット)となり、与野党間で激しく戦われた選挙であり、特にリクルート事件、消費税の強引な導入等が、いずれも自民党長期政権の帰結であるとの主張が強く、選挙人が自民党政治そのものにどのような審判を下すかが最大の焦点となり、選挙直前の各種世論調査においても与野党の逆転が予想され、選挙人の関心を一層高いものにしていた。 このような情況のもとで、石川県選挙区においては、保守王国の面目にかけて議席を死守しようとする自民党現職の原告Aと、社会・民主両党の推薦と公明党の支持を得た初の連合候補Bとの間で激しいつば競り合いが続けられ、選挙人の関心はきわめて高いものとなっていった。 このような本件選挙の情況は、各候補者の演説・ポスター・宣伝カー等により石川県選挙区の選挙人に直接伝達され、また、新聞・テレビなどのマスコミも公示前から本件選挙の争点や趨勢などについて繰り返し報道を続け、公示後も「A(自民)、B(連合)、C(共産)、D(無所属)」等の大見出のもとに投票日までほとんど連日にわたり報道を続けていたため、これらを通して選挙人の意識に深く浸透していった。 以上のような本件選挙の情況のもとに、自民=A、A=自民、連合=B、B=連合という意識が石川県下の選挙人に深く浸透・定着した。 しかも、本件選挙は、参議院比例代表選出議員の選挙と同時に執行されたものである。選挙人は、本件選挙については候補者名を記入するが、比例代表選出議員の選挙については政党名を記入することになっており、そのため必然的に政党を強く意識することを余儀なくされる情況下にあったから、本件選挙において、「P6・・・・ 候補者名を記入するが、比例代表選出議員の選挙については政党名を記入することになっており、そのため必然的に政党を強く意識することを余儀なくされる情況下にあったから、本件選挙において、「P6・・・・・・」「P7・・・・・・」と記載した選挙人は、その意識において「自民党のA」を指向して記入したものと強く推定される。 したがって、本件選挙において、およそ「P6・・・・・・」「P8・・・・・・」「P7・・・・・・」等と記載された投票はすべて自民党公認候補Aを指向して記載されたものであると解すべきである。特に公職選挙法六七条後段及び同法六八条の二の規定の趣旨にも徴すると、「L」票は、すべて原告Aを指向しつつ誤記されたものであり、同人に対する有効投票と解すべきであって、これを本件選挙では立候補していない社会党所属の現職の衆議院議員であるEを指向して記載されたと解する余地は全くない。 (2) 原告Aと訴外Eの経歴等(イ) 原告Aの経歴等昭和二二年大蔵省入省同二五年津税務署長同三九年大蔵省主計局主計官同四四年大蔵省大臣官房文書課長同四五年大蔵省大臣官房審議官同四六年二月七日参議院議員選挙(補欠選挙)に当選(1)自民党所属(以下同じ)得票数二四万二四三四票同四六年六月二七日参議院議員選挙に当選(2)得票数二三万九二六九票同四六年大蔵委員会理事、予算委員会理事参議院自民党国会対策副委員長同五二年一月参議院議院運営委員会筆頭理事同五二年七月一〇日参議院議員選挙に当選(3)得票数二八万八九七三票大蔵常任委員長同五四年一月予算委員会理事同五八年三月予算委員会筆頭理事同五 会筆頭理事同五二年七月一〇日参議院議員選挙に当選(3)得票数二八万八九七三票大蔵常任委員長同五四年一月予算委員会理事同五八年三月予算委員会筆頭理事同五八年六月二六日参議院議員選挙に当選(4)得票数二六万九五四七票同五八年七月参議院自民党政策審議会会長同五九年一一月法務大臣同六一年七月参議院議院運営委員長(ロ) 訴外Eの経歴等昭和四二年九州大学法学部教授同四七年一二月一〇日衆議院議員選挙に当選(1)社会党所属(以下同じ)得票数七万五一二〇票同五〇年社会党石川県本部委員長同五一年一二月五日衆議院議員選挙に当選(2)得票数八万〇五四五票同五四年一〇月七日衆議院議員選挙に当選(3)得票数六万四八九三票同五五年六月二二日衆議院議員選挙に当選(4)得票数七万九一二八票同五七年社会党政策審議会会長同五八年一二月一八日衆議院議員選挙に当選(5)得票数六万七三四九票同六一年衆議院文教委員会理事社会党私鉄対策特別委員会委員長同六二年衆議院予算委員会委員同六三年社会党林業対策特別委員会副委員長衆議院物価問題に関する特別委員会委員長平成元年社会党教育政策委員会委員長(ハ) 以上のとおり、ほぼ一七年間という長い期間にわたり、石川県において、原告Aは自民党所属の参議院議員として、Eは社会党所属の衆議院議員として活動し、さらに、その間行われた前記各選挙に立候補してそれぞれ当選していた。 その間に、原告Aが自民党所属の参議院議員、Eが社会党所属の衆議院議員であるという意識が石川県下の選挙人に深く 院議員として活動し、さらに、その間行われた前記各選挙に立候補してそれぞれ当選していた。 その間に、原告Aが自民党所属の参議院議員、Eが社会党所属の衆議院議員であるという意識が石川県下の選挙人に深く浸透し定着していった。 したがって、石川県下の選挙人が、本件の参議院議員選挙において、両者を誤認混同して、社会党所属の現職の衆議院議員であるEが立候補していると思い違いすることはおよそありえないことである。特に前記のような本件選挙の情況下において、「自民党のA」という意識が選挙人により深く浸透していた情況を合わせ考えれば、E票は、候補者Aの誤記であり、同人を指向した有効投票と解すべきである。なお、「自民党J」等と政党名を記入した投票が一八票存在することも右主張を裏付けるものである。 (3) 「L」票のうち(k)について前記のとおり「自民党J」等と政党名を記入した投票が一八票(他に「自民党P9」一票、「自民P10」一票)存在するが、右「自民党」という所属政党名の記載は、他事を記載したものではなく、身分を記載したものとして有効と解される。 右各投票をした選挙人は、自民党公認候補Aを指向して、特に「自民党」と記載したものであることは明白であり、また、そのうちの何人かは内心で候補者の名前を書き間違えることがありうることを意識して、特に自民党公認候補Aを指向して「自民党」と記入し、結局名前を書き間違ってしまったものであると推測される。 右各投票が、Aに対して投票する意思で、名前を「L」だと誤解して記載した票であることは疑問の余地がない。 (4) 「L」票の分布状況「L」票(「L」類似票を含む)の分布状況は、加賀地区(衆議院議員選挙石川第一区の選挙区に対応する)投票総数四〇万八四三九票中一二七一票、能登地区(同選挙石川第二区に対応する)投票総数二〇万〇五九四 「L」票(「L」類似票を含む)の分布状況は、加賀地区(衆議院議員選挙石川第一区の選挙区に対応する)投票総数四〇万八四三九票中一二七一票、能登地区(同選挙石川第二区に対応する)投票総数二〇万〇五九四票中四三七票である。 能登地区は衆議院議員Eの選挙区ではないから、能登地区の選挙人には加賀地区の選挙人に比べてEという名前に馴染みが薄く、誤記の数も相対的に少なかったものと解される。 Eは能登地区から一度も立候補したことがないから、同地区の選挙人が本件選挙にEが立候補しているものと思い違いすることはおよそありえず、同地区の「L」票は候補者Aの誤記であることは明らかである。 他方、加賀地区における「L」票が能登地区のそれより相対的に多いのは、加賀地区がEの選挙区であり、より馴染みが深かったためと思われるが、加賀地区の選挙人にはEが社会党所属の現職の衆議院議員であることがより周知徹底していたと考えられるから、加賀地区の選挙人がEが本件選挙に立候補しているものと思い違いすることは能登地区の選挙人以上にありえず、Aの誤記であることは明らかである。 (5) 誤記発生の原因原告Aは、Eの二歳年長の兄であるが、年齢が似かよい、名前も漢字一字で似ているため、幼少のころからお互いに名前を呼び間違えられたり、誤記されることがよくあった。特に本件選挙当時、両名とも石川県選出の国会議員であり、石川県下で広く名前が知られていたため、以前にも増して間違えられる場合が多くなっていた。そのような事例は枚挙にいとまがないが、本件選挙の運動期間中においても、同原告の熱心な支持者一人であるP11が、同原告の選挙演説後に万歳三唱の音頭をとる際、「A先生万歳」と発声すべきところを間違えて「E先生万歳」と発声してしまったことがあり、同原告の熱心な支持者でさえかかる間違いをするのである。 P11が、同原告の選挙演説後に万歳三唱の音頭をとる際、「A先生万歳」と発声すべきところを間違えて「E先生万歳」と発声してしまったことがあり、同原告の熱心な支持者でさえかかる間違いをするのである。また、過去数回の選挙で同原告が当選した際、祝電のうちの何通かは「E」宛になっていた。 (6) 効力判定の基準(イ) 公職選挙法の解釈について公職選挙法(以下「法」という)は、六八条一項において、投票が無効となる場合を列挙しているが、その無効事由は、公正な選挙を実現する上で不可欠な選挙法上の基本原則である平等主義や秘密投票主義に反する投票(一・三・五・六号)、若しくは全く有効とする余地のない投票(二号後段・四号)に限定されている。七号の「公職の候補者の何人を記載したかを確認し難いもの」についても、全てが無効とされるわけではなく、法六八条の二第一項により按分比例される場合もあり、これに該当しない場合でも、全体として一方に対する投票であると識別できる場合はその候補者に対する投票として有効とされている。 本件は、二号前段の「公職の候補者でない者の氏名を記載したもの」に該当するかが問題であるが、この場合においても他の無効事由と同程度に無効であることが明白であるもの、すなわちおよそ候補者の氏名を記載したものとは一見明白に認められないものを指すと解すべきであり、二号前段のみこれを拡大解釈して、常識的にみれば特定の候補者に対して投票したものと推認できるにもかかわらず、立候補していない実在人に対する投票と解する余地もあるというような理由から、安易に無効投票の範囲を拡大することは許されないというべきである。この点は、選挙権を中核とする参政権が最も重要な基本的人権の一つであり、選挙人の意思は極力これを尊重する必要があることからも当然に導き出される要請である。した 大することは許されないというべきである。この点は、選挙権を中核とする参政権が最も重要な基本的人権の一つであり、選挙人の意思は極力これを尊重する必要があることからも当然に導き出される要請である。したがって、他に同姓の候補者がおらず、単に名前のみ候補者の名前と一致しない場合について、誤記の可能性が極めて大きいにもかかわらず、記載された氏名と同一の実在人が存在するので当該実在人に投票した疑いもあるという理由からこれを無効とすることは、法六八条一項の解釈を誤ったものといわなければならない。 このことは、同一の氏名、氏又は名の候補者が二人以上存在する場合、同一の氏名、氏又は名のみ記載した投票は、厳密に言えばその二人以上の候補者の内の誰に投票する意思であったか不明であり、これを確定することは不可能であるうえ、このような投票が必ずその他の有効投票数に比例して存在するという保証もないから、法六八条一項七号により無効とせざるをえないが、法六八条の二第一項、第三項は、選挙人の有する参政権を最大限・実質的に保証するため、選挙人のした投票をできるだけ有効とする趣旨で、按分比例方式を取り入れたものであり、本件においてもその趣旨は十分尊重されるべきである。 (ロ) 判例の示す判定基準について一般に、候補者制度をとる現行公職選挙法のもとにおいては、選挙人は候補者に投票する意思をもって投票を記載したと推定すべきであり、また、公職選挙法六七条後段及び同法六八条の二の規定の趣旨に徴すれば、選挙人は真摯に選挙権を行使しようとする意思、すなわち適法有効な投票をしようとする意思で投票を記載したと推定すべきであり(最高裁昭和五一年六月三〇日判決・裁判集一一八号一六三頁参照、以下「五一年判決」という)、これが投票の効力を判定する基本原則である。 したがって、投票記載の氏名が正確には 記載したと推定すべきであり(最高裁昭和五一年六月三〇日判決・裁判集一一八号一六三頁参照、以下「五一年判決」という)、これが投票の効力を判定する基本原則である。 したがって、投票記載の氏名が正確には候補者の氏名を書いたものでなくとも、投票記載の氏名と類似の候補者が存在していて諸般の情況から該候補者に投票する意思で書かれたものと認められる限り該候補者のための有効投票と判断すべきである(最高裁昭和二三年一二月七日判決・民集二巻一三号四二五頁参照)。 ところで、投票の記載が候補者の氏名の誤記と認められるほどに近似しているが、同時にそれが候補者以外の実在する人物の氏名に合致する場合について、五一年判決は、「投票に記載された氏名と同じ氏名を持つ者が同一選挙区に実在する場合でも、投票の記載がその実在人を指向するものと認められるためには、その者が地方的に著名であるなどその記載が特に当該実在人を表示したと推認すべき特段の事情があることを要する」とし、いわゆる著名人の理論を採用している。 しかし、右判決の「地方的に著名であるなど」という部分は、そのような場合には「特段の事情がある」と推認される場合もあり得ることを例示的に述べたに過ぎず、政治的に著名である場合を含めて、地方的に著名な場合には直ちに「特段の事情」があることを判示したものではない。単に、同一地域から選出された国会議員の氏名と合致するだけで無効であるとするならば、氏名を誤解されただけであり、当該国会議員に投票する意思でなかったことが明白であっても、その投票は無効とされることになり、同姓の著名人がいるという理由だけで不当に不利益をうける結果となって、法の下の平等に反する。 したがって、右判決のいう特段の事情とは、単に「地方的に著名である」だけでは足らず、「その投票の記載に合致する実在の人物につき、その 由だけで不当に不利益をうける結果となって、法の下の平等に反する。 したがって、右判決のいう特段の事情とは、単に「地方的に著名である」だけでは足らず、「その投票の記載に合致する実在の人物につき、その者がその選挙に立候補しているものと選挙人が思い違いすることも十分あり得ると認められる情況」をさすものであり、そのような情況があると認められる場合には、その投票は実在の人物を指向して記載されたものと推定すべきものとしてその投票を無効とする立場をとっていると解される。 そして、五一年判決が定立した判定基準からすれば、「選挙人は候補者に投票する意思をもって投票したと推定」されるから、この推定を覆して、例外的に無効とされる場合の「特段の事情」の立証責任は、当該投票の無効を主張する当事者が負担すべきである。 なお、最高裁昭和四〇年二月九日判決は、「P12」が立候補した八代市長選挙において、同市を含む熊本二区選出の衆議院議員である「P13」の氏名を記載した投票を無効とし、「本件選挙において道太に投票する意思の選挙人のありえなかった事情を是認しがたいかぎり、P13票を無効と断じた原判決の結論は動かしがたく、論旨は採用しがたい」と判示しているが、選挙人の通常の意思を無視するものであるばかりか、この論旨でいえば、政治的著名人であろうとなかろうと、実在人に一致する氏名を記載している限り、「その者に投票する意思の選挙人のありえなかった」ことを立証することは不可能であるから、およそ実在の他人の氏名に合致する投票である限り、これを有効とする余地は皆無ということになるが、右判示部分は、五一年判決の示す前記判断基準により事実上変更されていると解すべきである。 (7) まとめ以上の事実並びに法及び判例の解釈に則して、「L」票の効力について検討するに、先ず第一に、「L」票が 部分は、五一年判決の示す前記判断基準により事実上変更されていると解すべきである。 (7) まとめ以上の事実並びに法及び判例の解釈に則して、「L」票の効力について検討するに、先ず第一に、「L」票が一六〇〇票以上存在するという事実自体が、候補者Aの名前を「L」だと誤解している選挙人が相当多数存在することを裏付けている。 すなわち、一般に、人の氏名を正確に記憶せず、ことに人を呼ぶ場合に通常は姓のみを呼び、名前までは呼ばないことが極めて多い我が国においては、名前を誤解しているケースは日常茶飯事といってよいくらいに多い。これに対し、いかに選挙に無関心な人といえども、立候補していない人を立候補したものと誤解するケースは極めて稀であると思われるからである。換言すれば、社会党の衆議院議員であるEが本件参議院議員選挙に立候補していると誤解して投票したあわて者が一六〇〇人以上も存在するとは到底考えられないのである。また、Eが立候補していないことを知りながら、いわば冷やかし的に、Eに投票する意思をもって「E」と記載したと解することもできない。「L」票は大部分筆力が十分でなく、稚拙な文字で記載されている上、これが不真面目な投票であることを窺わせる事情は皆無であるから、このような解釈をすることは、五一年判決のいう「選挙人は真摯に選挙権を行使しようとする意思、すなわち適法有効な投票をしようとする意思で投票を記載したものと推定すべきである」との判断基準に明白に反することになる。 第二に、石川県選挙区の選挙人の中には、Aの名前を「L」と誤解している者が多数存在する。この点は、前記(5)に記述したような事実が存在するうえに、無効票の中に候補者Aに投票する意思で名前を「L」だと誤解して記載したことが明白な「自民党J」等と記載した投票(「L」票のうちの(k))が一八票も存 前記(5)に記述したような事実が存在するうえに、無効票の中に候補者Aに投票する意思で名前を「L」だと誤解して記載したことが明白な「自民党J」等と記載した投票(「L」票のうちの(k))が一八票も存在することからも明らかである。さらに、「A」と漢字で記載し、「P14」という漢字に「L」と振り仮名を付した投票が三票も存在する。この票もAの名前の呼び方を「L」だと誤解したものであることは明白である。 これに対し、いわゆる著名人の理論を適用するためには、特段の事情すなわち「Eが本件選挙に立候補しているものと選挙人が思い違いすることも十分ありうると思われる情況があったこと」が必要であるところ、本件選挙の選挙区は全県一区の一人区であり、社会・民社両党推薦、公明党支持の連合候補Bが立候補していたのであるから、社会党所属のEが本件選挙に立候補することは全くありえないことであり、前記本件選挙の特徴や原告A及びEの経歴等に照らしても、Eが本件選挙に立候補しているものと選挙人が思い違いする前提ないし条件は全くなかったから、選挙人がEが本件選挙に立候補しているものと思い違いすることもおよそありえなかったというべきである。 したがって、「L」票について、右著名人の理論を適用してこれを無効とすることは許されず、本件はいわゆる著名人の理論の射程距離外にあると考えられる。 以上の次第で、「L」票は、原告Aの誤記であり、候補者Aに投票する意思で記載された有効投票と解すべきである。 (四) 「L」類似票について「L」類似票は、別紙一(二)の「有効理由」欄記載のとおり、いずれも「J」等と記載したものと認められるから、前記「L」票と同様の理由で原告Aに対する有効投票と解すべきである。 (五) 別紙二及び三の各投票について右各投票につき、原告Aの有効票と認定すべき理由は、別紙二 等と記載したものと認められるから、前記「L」票と同様の理由で原告Aに対する有効投票と解すべきである。 (五) 別紙二及び三の各投票について右各投票につき、原告Aの有効票と認定すべき理由は、別紙二及び三の各投票の「有効理由」欄に記載のとおりである。 なお被告は、Fは小松市において著名人であるから、小松市第一及び第二開票区においては、「F」と記載された投票及びこれと同様の記載と認められる投票は無効であると主張するところ、Fは原告Aの実兄で、株式会社雲井の社長であり、過去に小松市議会議員であったことはあるが、株式会社雲井が粟津温泉で有名な旅館であっても、その代表者がFであることを知る者はなく、小松市議会議員も二〇年前にわずか一期勤めただけであり、Fが立候補していると誤解されるおそれは全くなく、被告の主張は理由がない。「P15」と「P16」は一字違うだけであり、「と」と「ろ」を誤記したと認めるのが相当である。 5 被告がBの有効票と主張する投票について(一) 被告は、無効票のうち四七票をBの有効票と主張するが、選挙管理委員会として一旦無効票と判断した投票の判定を自ら覆すものであって、禁反言の原則の趣旨に反して許されない。 (二) 選挙管理委員会が無効と判断した投票につき被告がこれを有効と主張することが許されるとしても、被告が有効と主張する四七票中、以下の一二票については有効票とすることに疑問がある。 (1) 二四八は、裏面に「B」と一旦記載した後に、投票用紙の表と裏の誤りに気付き、表に「P17」と記載したものであり、裏面で正確に「B」と記載していることからすれば、表面ではあえて「P17」と記載したと考えられるから、「候補者でない者の氏名を記載したもの」であり無効票とすべきである。 (2) 四七九は、文字の稚拙さから平素文字を書き馴れない者が書 ことからすれば、表面ではあえて「P17」と記載したと考えられるから、「候補者でない者の氏名を記載したもの」であり無効票とすべきである。 (2) 四七九は、文字の稚拙さから平素文字を書き馴れない者が書いたと解されるが、四・五字目を「たか」と判読するのは困難であり、六字目は判読不能であるから、全体的に考慮してもなお「候補者の何人を記載したかを確認し難いもの」と解すべきである。 (3) 七五八は、一字目は「な」もしくは「お」と読むべきであり、二字目は「の」又は「か」と読むべきであり、三字目は判読困難である。すると「B」と共通するのは最後の「り」のみであって、Bの有効票と見ることはできない。 (4) 九三一は、一字目は「お」又は「ま」と見るのが相当であり、二字目も「め」であり、これを「P18」と判読するのは無理である。 (5) 九九八は、三字からなるものと考えられ、一字目が「西」又は「一四」、二字目が「代」、三字目が「様」又は「枯」と解される。一字目と二字目を一字とみるのは長すぎて不自然であり、これを「粟」と読むのも困難である。 (6) 一七八四は、三字目は「か」か「わ」と読め、これを「も」の誤字と解するのは困難であり、Bの有効票とすることは困難である。 (7) 一七八七及び一八六三は、いずれも「P19」と記載したものであって、「粟」と「栗」、「森」と「林」はそれぞれ字形に類似性はあるが、「P18」との間に発音上相当違いがあり、二字とも書き誤っている以上「B」に対する投票と解するのは困難である。 (8) 二〇四三は、「P20」と読むのが相当であり、候補者の何人を記載したか確認し難いものであるから、無効票とすべきである。 (9) 二〇四四は、一字目は「ぬ」、三字目は「川」又は「ツ」であり、一字目横の文字は「ま」と読むか、同じ行にないことから別の字を書き、 を記載したか確認し難いものであるから、無効票とすべきである。 (9) 二〇四四は、一字目は「ぬ」、三字目は「川」又は「ツ」であり、一字目横の文字は「ま」と読むか、同じ行にないことから別の字を書き、中止したものと解するのが相当であり、無効票とすべきである。 (10) 二〇四六は、字体があまりに不明確であって、「P18」と読むことは不可能である。 (11) 一九〇〇は、点字によるものであるが、通常の点字器操作方法によれば、左から右に点字が打ち出されるものであるから、本票はあえて氏を逆の順序で並べたものと解すべきである。したがって、投票の記載自体から選挙人の選挙意思がまじめに表現されていないと認められるから無効票とすべきである。 二請求原因に対する認否ならびに被告の主張 1 請求原因1及び2の事実は認める。 2 請求原因3(選挙無効)について(一) (1)(一)の事実中、金沢市第三開票区において集計ミスがあったこと及び最終得票結果を訂正したことは認めるが、その余の事実は否認する。 (2) 金沢地区における参議院選挙区選出議員選挙における最終得票結果の発表が、過去において、投票日の午後九時五〇分ころに行われたことはなく、従来の開票結果速報受信時刻は別紙四のとおりである。 (3) 本件選挙において、被告石川県選挙管理委員会が金沢市第一ないし第五開票区の最終得票数を発表したのは平成元年七月二四日午前零時三七分である。 (4) 集計ミスは、効力判定に回された疑問票二二一二票のうち一〇〇六票を無効票にカウントした結果ではなく、金沢市第三開票区の開票管理者が、被告に対する開票結果速報を急ぐ余り、開票台に束ねて置いてあった有効票一〇〇六票を無効票と見間違えて集計したものであり、開票速報のための単純な集計ミスに過ぎない。なお、開票速報の訂正についての詳細は別紙五 する開票結果速報を急ぐ余り、開票台に束ねて置いてあった有効票一〇〇六票を無効票と見間違えて集計したものであり、開票速報のための単純な集計ミスに過ぎない。なお、開票速報の訂正についての詳細は別紙五のとおりである。 (二) (二)の主張は争う。 投票の効力の判定は、各開票管理者が各開票立会人の意見を聴いて決定すべきものであり、被告は統一した判断基準は示していない。 (三) (三)の事実中、B及びAの最終得票数は認めるが、その余の主張は争う。 (四) (四)の事実は認めるが、選挙無効の原因とはなり得ない。 なお、昭和五五年度及び昭和六一年度はいわゆる同日選挙であったため、参議院議員と衆議院議員の各候補者を間違えて書いたこと等により、昭和五八年度は初めて比例代表制度が導入された選挙であったため、選挙区選挙の投票用紙に比例代表の政党名を書いたこと等により、無効投票が多かったものと考えられる。 (五) 選挙無効に対する反論金沢市第三開票区において、一旦被告に対して開票結果を速報した後、当該速報を訂正したことは、開票速報の事務処理が適切でなかったことに基づくものであるが、その適正を欠いた事務処理の内容は前記のとおり単純な集計ミスであって、本件選挙の管理執行に違法はない。 開票速報は、公職選挙法六条二項に基づいて行われるものであり、開票については、同法第七章において規定され、具体的な開票手続は同法六六条以下に規定されており、開票と開票速報は、互いに密接な関係があるものの、その根拠を異にしており、開票速報のための集計ミスは、開票手続の違法とはなり得ない。 投票の効力の決定は、開票管理者が開票立会人の意見を聴いて正しく行われており、また開票管理者による各候補者の得票数の朗読も訂正後の得票数で行われており、開票事務としては何ら違法はない。 原告らが選挙無効原因 力の決定は、開票管理者が開票立会人の意見を聴いて正しく行われており、また開票管理者による各候補者の得票数の朗読も訂正後の得票数で行われており、開票事務としては何ら違法はない。 原告らが選挙無効原因として主張している事実は、いずれも投票の効力を争うものであり、選挙の効力を争い選挙を求めるための選挙無効の要件に該当しない。 3 請求原因4(当選無効)について(一) (一)の事実は否認する。 (二) (二)の事実中、原告Aが同人に対すろ有効投票と主張する別紙一(一)の「L」票一六三七票については、(a)のうち一九六一、(d)のうち四〇五、(g)のうち一一三八・一六三六及び(k)の全部(合計二二票)を除く一六一五票が、別紙一(二)の「L」類似票七一票については、そのうち七八・一〇六・三三四・一六〇五・一六六四・一八八四の六票が、いずれも漢字、平仮名、片仮名で又はこれを混用して「G」と読まれる投票及びこれと同様の記載と認められる投票であることは認める。 なお、原告AとBの票差は一一七一票であるから、「L」票についてのみ判断すれば、本件選挙の当選の効力に影響を及ぼすか否かが判明するから、別紙二、三の各投票(合計二四七票)については、仮にこれがすべて原告Aの有効票であったとしても当選の効力に影響を及ぼすことはない。 (三) (三)の事実中、「L」票が原告Aに対する有効票であるとの主張は争う。 候補者の氏名に類似した氏名を記載した投票の効力は、一般的には、候補者の氏名の誤記あるいは脱字として取り扱い、有効とすべき場合が多いと考えられる。しかし、記載に係る氏名が著名人と全く同一である場合のごときは、「候補者でない者の氏名を記載したもの」として無効とすべきである。これらの投票の有効・無効を決するに際しては、氏名の類似の程度、記載にかかる者の存否、生否、著名の 名人と全く同一である場合のごときは、「候補者でない者の氏名を記載したもの」として無効とすべきである。これらの投票の有効・無効を決するに際しては、氏名の類似の程度、記載にかかる者の存否、生否、著名の程度、その者と候補者の関係、その他を考慮して決すべきであるところ、これらの基準に照らし、「L」票及び「L」類似票は、いずれも無効票と解すべきである。その理由は次のとおりである。 (1) 原告Aは、昭和四六年二月七日執行の参議院地方選出議員(石川県選挙区)補欠選挙に当選以来、平成元年七月九日まで参議院議員であり、この間に自民党主党石川県支部連合会会長を勤めたこともあり、また、昭和五九年一〇月から昭和六〇年二月まで法務大臣を勤めるなど、石川県はもとより全国的な著名人であった。 一方、Eは、昭和四七年一二月一〇日執行の衆議院議員総選挙に当選して以来、現在も衆議院石川県第一区選出の国会議員であり、その間、昭和五〇年三月から昭和五七年四月まで及び昭和五八年八月から平成元年二月まで日本社会党石川県本部執行委員長を勤め、また、日本社会党においては昭和五七年二月から昭和六一年九月まで政策審議会会長を勤めるなど、原告A同様石川県はもとより全国的な著名人である。 このことは、AとEが兄弟であること以上に、石川県下では通常の選挙人に知れ渡っている公知の事実である。したがって、本件選挙において、一般的にはAに投票する意思をもって「E」等と記載することはおよそありえない。 (2) また、本件選挙では、消費税の導入が選挙における最大の争点となり、原告Aは自民党の公認候補として消費税の必要性を訴え、一方Eは社会党の党員として消費税反対を訴えて参議院議員通常選挙の比例代表選出議員選挙を戦うとともに選挙区選出議員選挙の候補者を応援した。通常の選挙人は最大の争点となった消費税に 税の必要性を訴え、一方Eは社会党の党員として消費税反対を訴えて参議院議員通常選挙の比例代表選出議員選挙を戦うとともに選挙区選出議員選挙の候補者を応援した。通常の選挙人は最大の争点となった消費税について賛否相反する主義主張の候補者の氏名を誤記することは、一般的にありえない。 Eは、本件選挙において、候補者Bの応援者として、比例代表選出議員選挙における社会党の中心として県下各地で街頭演説等の選挙運動を繰り返しており、一般選挙人がEが立候補したものと勘違いし、Eに投票する意思をもって「E」等と記載することもありうる。 (3) 原告AとEは兄弟であるからP6の姓は同じであるが、「P14」と「P21」とでは字形に全く類似性がなく、「P14」を「P21」と誤記することはおよそありえない。 さらに、「L」票の名の部分はほとんどが平仮名又は片仮名で記載されているが、およそ「P14」を「L」と読み間違えることは考えられず、「L」票は一般的にEを指向して投票したものと推認すべきである。 (4) 「L」票のうちで一番多く存在するのは「K(J)」と記載された投票である。 その記載方法は、Sが昭和四七年一二月二七日執行の衆議院議員総選挙以来公職選挙法施行令八八条の規定により、選挙長の認定を受けて投票所内の氏名掲示等の選挙公営において本名に代えて使用した通称「K」に一致する。 一方、原告Aは、昭和四六年の前記補欠選挙以来、立候補した選挙には通称の認定を受けたことがなく、「A」の本名を選挙公営において使用してきた。 一般的に、「K(J)」と記載された投票が一番多いということは、「L」票はEを指向して投票したものと推認すべきである。 (5) 以上のように、「L」票は原告Aに投票する意思ではなく、むしろ著名人であるEを指向して投票したものと考えるべきであるが、仮に、原告Aに 「L」票はEを指向して投票したものと推認すべきである。 (5) 以上のように、「L」票は原告Aに投票する意思ではなく、むしろ著名人であるEを指向して投票したものと考えるべきであるが、仮に、原告Aに投票する意思をもって「E」等と記載した場合が考えられるとしても、どれだけが原告Aに宛てた投票であるか、どれだけがEに宛てた投票であるか不明であるといわざるをえない。このことと「L」票が被告の主張によっても一六二一票と相当多数あったことを併せ考えると、「L」票は「候補者でない者の氏名を記載したもの」として無効とすべきである。 4 Bの有効票本件選挙において無効票とされた投票のうち、別紙六の四七票についてはBに対する有効票と解すべきであり、その理由は別紙六の「有効理由」欄記載のとおりである。 第三証拠(省略)○ 理由第一選挙無効について一原告Aが本件選挙の候補者であり、その余の原告らが本件選挙の選挙人であること、本件選挙に原告Aの他、C、B、Dらが立候補し、Bが当選の決定を受けたこと、Bが二七万六〇九五票、原告Aが二七万四九二四票で、その差は一一七一票であったことは、当事者間に争いがない。 二原告らは、本件選挙において、選挙の規定に違反することがあり、選挙の結果に異動を及ぼす虞れがあるから、本件選挙は無効であると主張するので、以下検討する。 1 原告らは、金沢市第一ないし第五開票区における従来の選挙の最終得票結果の発表は、投票日の午後九時五〇分ころに行われていたが、本件選挙では投票日の翌日の二四日午前零時ころであったとして、本件選挙の開票手続に違法があった疑いがあると主張する。しかし、疑いだけでは無効事由とはならない。のみならず、成立に争いのない乙第一号証によれば、本件選挙最終得票数の発表が投票日の翌日である平成元年七月二四日午前零 に違法があった疑いがあると主張する。しかし、疑いだけでは無効事由とはならない。のみならず、成立に争いのない乙第一号証によれば、本件選挙最終得票数の発表が投票日の翌日である平成元年七月二四日午前零時三七分であったことが認められるものの、従前の選挙の最終得票数の発表が投票日当日の午後九時五〇分ころであったことを認めるに足る証拠はない。もっとも、被告の主張によれば、別紙四のとおり、昭和五八年六月二六日に執行された選挙において金沢市第四開票区の最終得票結果の発表が投票日の午後九時五六分に行われた例があるというのであるが、右選挙の投票総数は四三万五七三九票であるのに対し、本件選挙の投票総数は六〇万九〇三三票(この点は当事者間に争いがない)であり、このような投票総数の多寡により結果の発表が遅れることは十分考えられるところである。よって、本件選挙において、従来の選挙と比べて最終得票数の発表が多少遅れたとしても、それは投票総数の違いによるものと考えられるから、開票手続に違法があったともいいがたい。 原告らの右主張は採用できない。 2 原告らは、金沢市第三開票区において集計ミスがあり、最終得票結果が訂正されたと主張し、右事実は当事者間に争いがないところ、成立に争いのない乙第二号証の一、二によれば、右開票区における開票事務の最終段階で、疑問票を効力判定係が有効票と無効票に分類し、分類した票束に効力決定用紙を貼付し、第一集計係で集計し、開票立会人の意見を聴き、開票管理者が有効・無効の決定をし、決定済の票束を第二集計係で点検集計をしていたところ、開票管理者が確定報告を急ぐあまり、第二集計係の整理台に区分けして重ねてあった票束の一番上が無効の決定をされたものであったため、重ねられた票束(二二一二票)すべてを無効票と即断して集計し、それまでに報告した票数と未報告 急ぐあまり、第二集計係の整理台に区分けして重ねてあった票束の一番上が無効の決定をされたものであったため、重ねられた票束(二二一二票)すべてを無効票と即断して集計し、それまでに報告した票数と未報告の票数の合計が投票総数と合致したので、開票結果確定報告書を作成し、開票立会人にその内容を朗読し、県選挙管理委員会に報告したこと、その後、第一及び第二集計係の念査が行われている途中で、無効票の票束の中に一〇〇六票(C八九票、B四五〇票、原告A四一八票、D四九票)の有効票束が存在することが発見されたため、開票管理者は、開票立会人に前の確定報告が間違っていることを告げ、確定報告書を修正し、正しい確定報告を行い、さらに県選挙管理委員会にも確定報告書の修正を依頼したことが認められる。 そうすると、右は開票手続の過誤ではあるが、法第七章の開票に関する手続規定に違反した結果ではなく、単純な集計ミスに過ぎず、また、それも速やかに発見され修正されているから、これをもって選挙の規定に違反したとはいえず、勿論選挙の結果に異動を及ぼす虞れがあったともいいがたい。 原告らの右主張は理由がない。 3 原告らは、各市町村の開票区における投票の効力の決定について、その判定基準が統一されていなかったとして、これが選挙の規定違反と主張するところ、被告も県選挙管理委員会として統一した判断基準を示していないことは認めるところであるが、法六七条により、投票の効力は、開票立会人の意見を聴き、開票管理者が決定しなければならないとされており、開票管理者の地位では独立で、自らの判断で有効・無効を決定すべきものとされているから、県選挙管理委員会において、投票の効力の決定について統一した判断基準を定めて開票管理者に指示しあるいは指導しなかったことはなんら法の趣旨に反するものではなく、選挙の規定違反に きものとされているから、県選挙管理委員会において、投票の効力の決定について統一した判断基準を定めて開票管理者に指示しあるいは指導しなかったことはなんら法の趣旨に反するものではなく、選挙の規定違反にならないことは明らかである。 原告らの右主張も採用しがたい。 4 原告らは、本件選挙における無効投票数が従来の石川県選挙区の参議院議員選挙における無効投票数と比較して極端に少ないと主張するところ、それ自体は選挙無効の事由とはならない。そのうえ、昭和四九年以降の参議院議員選挙における投票総数と無効投票数が原告らの主張するとおりであることは当事者間に争いがないが、五万票を超える無効投票があった昭和五五年度及び昭和六一年度の選挙はいずれも衆議院議員選挙と参議院議員選挙が同時に執行されたことは公知の事実であり、衆議院議員と参議院議員候補を間違えて記載すること等により無効投票が従来より多数発生したと推測され、本件選挙とは異なる事情があったことが窺える。また、無効票の多寡のみにより、選挙の管理執行の手続に関する規定に違反することがあったと推測することもできない。 原告らの右主張も理由がない。 三すると、原告らの選挙無効請求は理由がなく、棄却を免れない。 第二当選無効について一原告Aは、本件選挙において無効票とされた投票中、一九五五票は、原告Aの有効票であると主張し、右一九五五票を次のように三分類する。 第一分類漢字、平仮名、片仮名などで「U」「G」と読めるもの。これは更に(a)ないし(k)に細分類される。 一六三七票(別紙一(一)(a)ないし(k))―以下これらをまとめて『K』票という。 その類似票七一票(別紙一(二))第二分類漢字、平仮名、片仮名などで「P22」「P10」などと読めるもの一二四票(別紙二)第三分類漢字、平仮名などで「P5」 れらをまとめて『K』票という。 その類似票七一票(別紙一(二))第二分類漢字、平仮名、片仮名などで「P22」「P10」などと読めるもの一二四票(別紙二)第三分類漢字、平仮名などで「P5」などと読めるもの一二三票(別紙三)二そこで、まず第一分類の『K』票一六三七票及びその類似票七一票につき判断するに、別紙一(一)のうち検証番号一、一七、一五七、一九二、一九七、四〇五、四二二、四二三、五三一、九四七、一〇七六、一一三八、一一四一、一二三八、一三二〇、一六三六、一六三八、一六九四、一七二三、一八二五、一九二五、一九六一の合計二二票を除く一六一五票及び別紙一(二)のうち検証番号七八、一〇六、三三四、一六〇五、一六六四、一八八四の六票の合計一六二一票が、いずれも漢字、平仮名、片仮名で、又はこれを混用して「U」と読まれる投票及びこれと類似の記載と認められる投票であることは当事者間に争いがない。 そして検証の結果によると、右争いある投票も原告A主張のとおり、ともかく「U」「G」などと読める票であること、これを細分類すると別紙一(一)(a)ないし(k)、別紙一(二)のようになることが認められる。 三ところで、原告たる本件選挙の立候補者の氏名は「A」であり「P23」あるいは「P24」と読むところ、前記『K』票は漢字あるいは仮名で「U」と読める票であるから候補者氏名に完全に合致しない票である。 そこでまず、候補者氏名と完全に合致しないが候補者氏名に類似する記載の投票の効力判定について基本的にどのように考えたらよいかにつき判断する。勿論候補者の氏名と合致せずかつ類似もしない記載は、法六八条二号の候補者でない者の氏名を記載した投票にあたり、無効となることが明らかであるから、解釈上問題となることは少ない。以下は候補者氏名に類似する記載の投票の効力判 致せずかつ類似もしない記載は、法六八条二号の候補者でない者の氏名を記載した投票にあたり、無効となることが明らかであるから、解釈上問題となることは少ない。以下は候補者氏名に類似する記載の投票の効力判定に関する判断である。 1 投票の効力決定にあたっては、法六八条(無効投票)の規定に反しない限りにおいて、その投票した選挙人の意思が明白であれば、その投票を有効とするようにしなければならない(法六七条)。 2 したがって、投票記載の氏名が正確には候補者の氏名を書いたものでなくとも、投票記載の氏名と類似の候補者が存在していて、諸般の状況から該候補者に投票する意思で書かれたものと認められる限り該候補者のための有効投票と判断すべきである(最判昭二三年一二月七日)。 3 そしてその理を押し進めると、一般に候補者制度をとる現行の公職選挙法のもとにおいては、選挙人は候補者に投票する意思をもって投票を記載したと推定すべきであり、また法六七条後段及び法六八条の二の規定の趣旨に徴すれば、選挙人は真摯に選挙権を行使しようとする意思、すなわち適法有効な投票をしようとする意思で投票を記載したと推定すべきである(五一年判決)。 4 ところで候補者の氏名と完全に合致せず、類似しているが、それが候補者以外の実在する人物の氏名に合致する場合どうなるか。この場合候補者に対する投票ではなく実在人に対する投票であると安易に推定してはならない。投票に記載された氏名と同じ氏名をもつ者が同一選挙区内に実在する場合でも、投票の記載がその実在人を指向するものと認められるためには、その者が地方的に著名であるなどその記載が特に当該実在人を表示したと推認すべき特段の事情があることを要するものというべきである(五一年判決)。換言すれば、当該実在人を表示したと推認すべき特段の事情がないのに、単に記載さ あるなどその記載が特に当該実在人を表示したと推認すべき特段の事情があることを要するものというべきである(五一年判決)。換言すれば、当該実在人を表示したと推認すべき特段の事情がないのに、単に記載された氏名に該当する実在人が存在するというだけで、候補者でない者の氏名を記載した投票と推定しこれを無効としてはならないと解される(著名人の理論)。 5 そして、前記特段の事情は、当該実在人の政治的・社会的活動歴から、当該実在人が立候補しているものと選挙人が思い違いすることも十分ありうる状況、或いはその実在人の知名度の高さから、立候補者したのはその知名度の高い実在人であると選挙人が人物の誤認・混同をきたすことも十分ありうる状況をさすものと解するのが相当である。 6 以上のとおり、基本的には、選挙人は候補者に投票する意思をもって投票を記載したと推定すべきであり、その推定は強いものといえるから、前記著名人の理論の適用に当たっても、右基本的意思推定のもとに判断すべく、その場合の「特段の事情」をむやみに広げ、いたずらに無効票を増加させることがあってはならない。 勿論その反対に、合理的限界をこえて「特段の事情」を厳格に解し、いたずらに有効票扱いにすることができないことは、他の候補者のことを考慮すれば当然である。以上のように考えられる。 四以上を基礎として、本件『K』票につき判断するに、原告Aは、候補者Aの氏名に類似し、かつ選挙人が、Eが本件選挙に立候補していると誤解する可能性はないから、原告Aの誤記と認むべく、同原告に投票する意思で記載された有効票と解すべきであると主張するのに対し、被告は、『K』票の記載は候補者Aの氏名に類似せず、Aの弟で石川県に実在するEを指向するものと認められる特段の事情があると主張するので、右類似性を含め以下特段の事情につき判断する。 主張するのに対し、被告は、『K』票の記載は候補者Aの氏名に類似せず、Aの弟で石川県に実在するEを指向するものと認められる特段の事情があると主張するので、右類似性を含め以下特段の事情につき判断する。 1 氏名の類似性について(一) 候補者の氏名に類似するかどうかは、投票の記載自体から判断すべきであって、投票者の主観を基準に判断すべきではない。 (二) 記載自体からみると、『K』票記載の氏は「P6」または「P8」あるいはその仮名書きであって、候補者の氏と合致或いは殆ど合致といえるが、名は「P21」「L」であって、いずれも「P14」「P15」に字画・語感とも全く類似しない。ただ氏名を通じて比較すると「E」「A」となり三字中二字まで同じで名は一字となっているから視覚的には類似点があり、その意味でやや類似するといえる。「U」と「P23」の比較では氏のみ同一で名の部分は全く違うから、類似性は少ない。 2 候補者Aと実在人Eの社会的地位と知名度の比較(一) 原告A本人尋問の結果によれば、同原告及びEの経歴等が、同原告の主張するとおりであることが認められる。 右事実並びに公知の事実によれば、原告Aは、大蔵省大臣官房審議官から昭和四六年二月七日執行の参議院議員補欠選挙に自民党公認候補として立候補して当選して以来、本件選挙まで昭和四六年六月二七日(二回目)、昭和五二年七月一〇日(三回目)、昭和五八年六月二六日(四回目)と四期連続して参議院議員に当選し、参議院議院運営委員会や予算委員会の筆頭理事、大蔵常任委員長、議院運営委員長、法務大臣等を歴任し、参議院自民党の政策審議会会長等の要職にあった政治家として、石川県はもとより全国的にも著名人であった。一方、Eは九州大学法学部教授から昭和四七年一二月一〇日執行の衆議院議院総選挙に出馬して以来、昭和五一年一二月五日 審議会会長等の要職にあった政治家として、石川県はもとより全国的にも著名人であった。一方、Eは九州大学法学部教授から昭和四七年一二月一〇日執行の衆議院議院総選挙に出馬して以来、昭和五一年一二月五日(二回目)、昭和五四年一〇月七日(三回目)、昭和五五年六月二二日(四回目)、昭和五八年一二月一八日(五回目)、昭和六一年七月六日(六回目)と本件選挙当時まで、石川県第一区選出の衆議院議員(社会党所属)に六期連続当選しており、本件選挙当時も現職の衆議院議員であり、衆議院文教委員会理事、予算委員会委員、物価問題に関する特別委員会委員長を歴任し、また、社会党の石川県本部執行委員長、政策審議会会長等を歴任した政治家として、石川県はもとより全国的にも著名な人物であることが認められる。 (二) 一方、成立に争いのない甲第六号証、証人P11、同P25、同P26の各証言及び原告A本人尋問の結果によれば、原告Aは、Eの二歳年長の兄であるが、共に著名人のため、手紙や年賀状、電話等が間違われることがままあり、本件選挙期間中にも、原告Aの支持者が、万歳の音頭をとった際に、誤って「A先生万歳」と発声すべきところを「E先生万歳」と発声したことがあり、同様の言い間違いが他にもあったことが認められる。 この事実は、実在人Eが候補者Aと兄弟であり、所属政党は異なるが、社会的にも国会議員として同種の職業・地位にあり、共に著名人であったことを現しているばかりか、Eは衆議院議員で選挙の回数が参議院議員のAより多く、その意味で県内での知名度は相当のもので、Aの支持者の意識内にまでEの名が深く浸透していたことを物語るものである。 3 本件選挙の状況(一) (1)成立に争いのない甲第七号証の一、二、第八、第九号証の各一ないし三、第一〇号証の一ないし四及び原告A本人尋問の結果によれば、本件選 していたことを物語るものである。 3 本件選挙の状況(一) (1)成立に争いのない甲第七号証の一、二、第八、第九号証の各一ないし三、第一〇号証の一ないし四及び原告A本人尋問の結果によれば、本件選挙は、消費税問題やリクルート問題、農政問題が中心的争点となって与野党間で激しく戦われた選挙であり、与野党逆転が焦点となり、有権者の関心も高く、消費税を是とする自民党公認候補Aと消費税の廃止を強く主張する社会・民社両党の推薦と公明党の支持を得た初の連合候補Bとの対決に共産党のC、無所属のDらが加わった戦いとして、新聞・テレビのマスコミも連日のように選挙情勢を報道し続けていたことが認められる。 (2) 一方、前記甲第八号証の一によれば、Eは、B候補の推薦人の筆頭として新聞でも報道されていることが認められ、また、原告A本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、Eは、本件選挙において、比例代表選出議員選挙の社会党の応援者及び選挙区選出議員選挙のBの応援者として、石川県下各地で街頭演説等の選挙運動を展開してきたことが認められる。 (3) なお前認定のように、原告Aが自民党の参議院議員であり、Eが社会党の衆議院議員であることは、石川県内においては一般の選挙人に知れ渡っていたと推測できるが、証人P11も、両者の政治的立場の相違等について、ある程度の勉強家は知っていると思うが、年寄りの人は知らないと思う旨証言している。 (二) 以上認定によると、国政に関心を持つ選挙人であれば、また新聞等を注意深く読んでいる者であれば、本件選挙における候補者の政治的見解や選挙情勢は理解していたと思われ、自民党=A、連合=Bという意識は相当深く浸透していたといえる。しかも、本件選挙は、参議院比例代表選出議員の選挙と同時に執行されたもので、関心の強い選挙人は候補者の所属政党について深 ていたと思われ、自民党=A、連合=Bという意識は相当深く浸透していたといえる。しかも、本件選挙は、参議院比例代表選出議員の選挙と同時に執行されたもので、関心の強い選挙人は候補者の所属政党について深い関心を抱いていたと思われ、したがってこれら大多数の選挙人にとっては、A=社会党という意識はおよそ生じ得なかったということができる。 しかし、本件選挙では少なかったとはいえ、無効投票は一万数千票を数える状況であるから、選挙人の総てが前記のような選挙情勢等を正確に理解していたかというと、必ずしもそのようにはいえず、これを認める証拠もない。しかも、Eが選挙運動をしていたことを考えると、軽率な選挙人のなかには、Eの知名度の高さから、Eが本件選挙に立候補していると誤解する者もあったのではないかと認められる。 結局、本件選挙人は総て参議院議員選挙であれば原告A、衆議院議員選挙であればEを直ちに想起し、これを誤認することはありえないとは断言はできず、ある程度の誤認者は現実に存在したと認めざるを得ないというべきである。 ちなみに、証人P26の証言によれば、Eが立候補した平成二年二月一八日執行の衆議院議員総選挙において、加賀市開票区において相当数の「A」票が存在したこと、そしてその票はEに対する有効票とはされず、すべて無効票とされたことが認められ、本件が提起されこれが新聞報道された後においても、選挙人間にEとAの誤認・混同が存在したことが窺えるのである。 4 本件投票の分析(一) (1)検証の結果によれば、原告Aの所属政党である自民党を肩書として記載しながら、「J」等と記載した投票が一八票(別紙一(一)(k))存在することが認められる。 右は、人物の誤認はないが、名前付けに誤りがあったことを窺わせるものである。 そして、右票は一八票であるが、肩書を付さない同種誤 と記載した投票が一八票(別紙一(一)(k))存在することが認められる。 右は、人物の誤認はないが、名前付けに誤りがあったことを窺わせるものである。 そして、右票は一八票であるが、肩書を付さない同種誤認票も他にあったと推定される。 (2) また、検証の結果によれば、無効票の中に、「A」と漢字でほぼ正確に記載し、「P14」の横に「L」と振り仮名を付した投票(三八七)、「P27」と漢字でほぼ正確に記載し、その横に「U」と振り仮名を付した投票(四〇七)、「A」と漢字でほぼ正確に記載し、その横に「X」と振り仮名を付した投票(八九五)が各一票宛存在していることが認められる。 右事実によると、人物或いは名前付けのいずれかに誤りがあったことが窺える。換言すれば、立候補者はEであると誤認して公報記載の「A」と記載し、念のため自己が指向しているEの名前を注記した、或いは立候補者は「A」であるが、「A」は著名な政治家である「L」と呼ばれている人物と同一人であると誤解して、認識の中にはEを描いて「L」と注記したと思われる。また、このような振り仮名を付さない同種誤認票もほかにあったことは推定される。 (3) 成立に争いのない乙第一号証及び検証の結果によれば、原告Aの主張する『K』票一六三七票及びその類似票七一票合計一七〇八票は、衆議院議員選挙石川県第一区に対応する加賀地区で投票総数四〇万八四三九票中一二七一票、同第二区に対応する能登地区で投票総数二〇万〇五九四票中四三七票であることが認められる。 右事実によると、『K』票及びその類似票は、能登地区に比し加賀地区において高比率で発生している。能登地区は衆議院議員Eの選挙区ではないためなじみが薄く、人物・名前の誤認が少なかったが、加賀地区ではEの選挙区であるため「L」の名前のなじみが深く、Eが立候補していると誤解した選 率で発生している。能登地区は衆議院議員Eの選挙区ではないためなじみが薄く、人物・名前の誤認が少なかったが、加賀地区ではEの選挙区であるため「L」の名前のなじみが深く、Eが立候補していると誤解した選挙人が多かったと思われる。結局Eの知名度の高い地区ほどEが立候補したとの誤認率が高いということになる。 (4) 前認定によると、『K』票一六三七票の細分類中最も多いのは、(d) 「K」「P」票六五四票(a) 「J」「M」票四三一票であり、ついで多いのは、(g) 「G」「T」票二七〇票(h) 「U」「V」票一六〇票であり、名前を「L」或いは「P28」と平仮名で記載したものは一五一五票に及び九二パーセントを超え圧倒的に多い。 これに対し、名前を「P29」「P30」と片仮名で記載した票(b) (e)(i)(j) 八二票名前を「P21」と漢字で記載した票(c) (f) 二二票と極めて少ない。 ところで、Eが昭和四七年一二月二七日執行の衆議院議員総選挙以来公職選挙法施行令八八条六項の規定により、選挙長の認定を受けて「K」を通名として使用し、選挙公報・ポスター等に記載していたことは原告Aにおいて明らかに争わない。 前記圧倒的に多い平仮名の「L」「P28」票は、Eが衆議院議員総選挙に使用した右通名に一致或いはほぼ一致し、これに強く影響され、その認識に基礎を置いて記載されたものと認められる。 (二) 以上認定によると、実在人Eの知名度の高さから、また同人の昭和四七年以来一七年間で前後六回に及ぶ選挙運動と当選によって、戸籍名である「E」よりも選挙用の通名「K」が選挙人の意識に強く浸透し、そのため、本件候補者Aとの間に誤認・混同が生じ、その結果本件選挙ではEが立候補したとの誤認のもとに投 ぶ選挙運動と当選によって、戸籍名である「E」よりも選挙用の通名「K」が選挙人の意識に強く浸透し、そのため、本件候補者Aとの間に誤認・混同が生じ、その結果本件選挙ではEが立候補したとの誤認のもとに投票に記載した者が存在したと認められる。 5 その他(一) 原告Aは、AとEは年齢の似かよった兄弟であり、名前も漢字一字で似ているため、幼少のころからお互いに名前を呼び間違えられたり誤記されることがよくあったと主張し、そのようなことがあったことは、原告A本人尋問の結果により認められる。また、A宛ての手紙や年賀状、電話等がEの名前となっていたり、本件選挙期間中にも、原告Aの支持者が、万歳の音頭をとった際に、誤って「E先生万歳」と言ってしまったことがあり、同様の言い間違いが他にもあったことは前認定のとおりである。 しかし、投票は、投票所において平静な雰囲気のもとで候補者の氏名を所定の用紙に記載するといった様式の行為であるから、これと異なる状況のもとでの前記事例をそのまま本件投票に当てはめることは相当でない。 しかも、原告A本人尋問の結果によれば、原告Aは、従前の選挙においてもEと誤って投票された事例があることを承知していながら、これまで大差で当選してきていたこともあり、選挙対策上そのような無効票の発生を防止する措置を講じてこなかったことが認められる。 したがって『K』票またはその類似票の内のあるものが、同種誤記に基づくものであると認めるにしても、すべてがAの誤記と推定することはできない。同原告の主張は理由がない。 (二) その他、『K』票またはその類似票が「A」の誤記であるとする原告Aの主張はいずれも採用できない。 6 要約以上を総合すると、『K』票またはその類似票の記載自体は原告Aの氏名とは類似しないところ、本件選挙において、実在人Eがその選挙活 A」の誤記であるとする原告Aの主張はいずれも採用できない。 6 要約以上を総合すると、『K』票またはその類似票の記載自体は原告Aの氏名とは類似しないところ、本件選挙において、実在人Eがその選挙活動歴並びに当選歴からあまりにも著名であったため(もっともその知名度が更に徹底すれば、選挙人は両者の区別に曖昧さが残らない程正確な認識に到達し、人物・行動に関し誤認・混同が起こらないはずであるが、それほどまでに完全な認識度には至っていなかったため)、軽率な選挙人のなかにはAと誤認・混同を生じ、Eが本件選挙に立候補していると思い違いすることも十分ありうると認められる状況が存在したことが認められる。 もっとも両者が兄弟であるとか、ともに国会議員であるとか名前が一字であることなどから、うつかり表示錯誤をする条件があったことも認定でき、少なくとも前記4、(一)、(1)で認定の「自民党E」票一八票はそのようなAの誤記であるといえるが、『K』票またはその類似票の全部がそのような誤記に基づくものであったともいえない。そして、右一八票を除くその余の『K』票またはその類似票の内どれだけが立候補者の誤認混同票で、どれだけが氏名誤記票であるか内訳を認定することは困難である。したがって、全部を候補者の氏名を記載しない投票として無効とせざるを得ないところである。しいていえば、前記4、(一)、(4)で認定の名前を「L」「P28」と記載した一五一五票はEの選挙用通名に合致(ほぼ合致)するからこれらの殆どは候補者誤認票と認めるのが相当である。 結局原告A主張の『K』票またはその類似票一七〇八票の内少なくとも前記一八票は原告Aの有効投票といえるが、反面少なくとも約一五〇〇票は実在人Eを表示したと推認すべき特段の事情があると認められるから候補者でない者の氏名を記載した投票として無 七〇八票の内少なくとも前記一八票は原告Aの有効投票といえるが、反面少なくとも約一五〇〇票は実在人Eを表示したと推認すべき特段の事情があると認められるから候補者でない者の氏名を記載した投票として無効というべきである。 五当選の効力原告Aは、本件選挙において無効票とされた投票中、別紙一(一)(二)、二、三の合計一九五五票を原告Aの有効票であると主張するところ、前認定によると、そのうち別紙一(一)の『K』票中約一五〇〇票は無効であると判断されるから、右原告主張票一九五五票から右無効と認定される票を差し引くと残りは四五五票となる。 この中には、別紙一(二)、二、三の「L」類似票とか「P22」或いは「P5」票があるのであるが、原告AとBの票差は前記のとおり一一七一票であるから、これら残り四五五票を全部原告Aの有効票と仮定しても、Bとの票差に満たないことが明らかである。 なお、原告Aは、Bの有効票中にも無効票がかなり存在するとの疑問を提起するけれども、無効を来す理由について何ら具体的な主張を伴わないものであって、右主張は採用できない。 また、被告が無効票のうちBの有効票と主張するのは別紙六の四七票であるが、それらを有効と認めても認めなくても、右計算からいうとBの当選の効力は動かない。 以上の次第であるから、原告Aが同人の有効票と主張するその余の投票及び被告がBの有効票と主張する投票について判断するまでもなく、Bを当選人とした決定は正当であり、これを無効と主張する原告Aの請求は理由がなく棄却すべきである。 第三結論よって、原告らの本件選挙無効の請求及び原告Aの当選無効の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官井上孝一井垣敏生紙浦健二) び原告Aの当選無効の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官井上孝一井垣敏生紙浦健二)別紙一(二)、二~六(省略)

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