令和7年7月31日宣告東京高等裁判所第4刑事部判決令和7年(う)第321号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件 主文 本件各控訴を棄却する。 理由 第1 事案の概要と各控訴の趣意 1 原判示の罪となるべき事実の要旨は次のとおりである(以下、関係者等の呼称、略称等は原判決の例によることがある。)。 被告会社(令和元年12月31日以前の商号は株式会社B)は広告代理 業等を営む事業者であり、同社のスポーツ局局長補等の地位にあった被告人はその従業者として、第32回オリンピック競技大会(2020/東京)及び東京2020パラリンピック競技大会(以下、両大会を合わせて「東京大会」という。)に関し、テストイベント計画立案等業務委託契約等(組織委員会が競技・会場ごとに順次発注する各テストイベント計画立案等業 務委託契約並びに同契約受注者との間で締結されることとされていた各テストイベント実施等業務委託契約及び各本大会運営等業務委託契約からなるもの。)の受注等に関する業務に従事していたものであるが、被告人は、組織委員会大会準備運営第一局次長等としてその発注等の業務に従事していたC、被告会社を含む関係事業者7社の従業者として同様の受注等 に関する業務に従事していた者等と共謀の上、関係事業者7社の業務に関し、平成30年2月頃から同年7月頃までの間、面談等の方法により、テストイベント計画立案等業務委託契約等につき関係事業者7社の受注希望等を考慮して受注予定事業者を決定するとともに、基本的に当該受注予定事業者のみがテストイベント計画立案等業務委託契約に係る入札を行 うことなどを合意した上(本件基本合意)、同合意 社の受注希望等を考慮して受注予定事業者を決定するとともに、基本的に当該受注予定事業者のみがテストイベント計画立案等業務委託契約に係る入札を行 うことなどを合意した上(本件基本合意)、同合意に従ってテストイベント 計画立案等業務委託契約等についてそれぞれ受注予定事業者を決定するなどし、もって関係事業者7社が共同して、同委託契約等の受注に関し、相互にその事業活動を拘束し、遂行することにより、公共の利益に反して同委託契約等の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した。 2 各控訴の趣意は、それぞれ訴訟手続の法令違反、事実誤認及び量刑不当 の主張であるが、以下、各事実誤認の主張から検討する。 第2 各事実誤認の主張について 1 各論旨は要するに、本件基本合意及び前記取引分野に、テストイベント実施等業務及び本大会運営等業務は含まれていないから、これらが含まれるとした原判決には事実の誤認がある、というのである。 2 原判決の概略原判決は、概略次のように説示した。 ⑴ 事実関係等ア東京大会、組織委員会及び各事業者の概要、テストイベント業務の発注方式の決定経緯、Cらの面談の経緯等 ① 東京大会では、本大会の運営能力向上のため、本大会で使用する競技会場において、競技や会場ごとに競技運営、会場運営等のテストイベントを行うこととされていた。テストイベント業務は、テストイベント計画立案等業務(以下「計画業務」又は「本件計画業務」という。)とテストイベント実施等業務(以下「実施業務」又は「本件実施業務」という。)とに分け られ、入札の単位となった会場、競技の案件(以下「会場案件」という。)ごとに発注されたが、計画業務については一般競争入札により、その実施業務及びその後の本大会運営等業務(以下「 。)とに分け られ、入札の単位となった会場、競技の案件(以下「会場案件」という。)ごとに発注されたが、計画業務については一般競争入札により、その実施業務及びその後の本大会運営等業務(以下「本大会業務」又は「本件本大会業務」という。)は随意契約により発注された。なお、組織委員会における物品、役務等の調達は、会計処理規程に基づき、原則として競争入札に より、それ以外の方法によって調達するには例外的な場合に当たる必要が あるとされていた。 ② Cは組織委員会内で、テストイベントに関連する業務を担当するテストイベントマネジメント課(TEM)が置かれていた大会準備運営第一局の次長として、テストイベント業務の発注に中心的に関与していた。被告会社は、国内で圧倒的に最大手の広告代理店として競技大会の運営等を行っ ており、東京大会でも組織委員会からマーケティング専任代理店に選定され、従業者を同委員会の幹部職員として出向させるなど東京大会全体の運営に対し大きな影響力を有していた。株式会社D(平成30年7月16日以前の商号は株式会社E)、株式会社F及びA社も広告代理店として、株式会社G、株式会社H及び株式会社Iは、イベントの企画、運営等の事業者 として、それぞれ競技大会の運営等を行っていた。これら関係事業者7社は、大会の運営実績、競技団体との関係性等に応じ、それぞれ運営等を得意とする競技、会場があり、日本でスポーツ競技大会の運営等を行うことのできる実績、能力のある事業者はこれらをはじめとする一定の事業者に限られていた。 ③ Cは平成29年7月頃から、テストイベントの実施が遅延する中検討した結果、各競技について競技大会の運営実績等を有する事業者を確保するためには、随意契約により発注する必要があると考えた。同年 ③ Cは平成29年7月頃から、テストイベントの実施が遅延する中検討した結果、各競技について競技大会の運営実績等を有する事業者を確保するためには、随意契約により発注する必要があると考えた。同年10月11日及び翌12日、財務全般の責任者であったJやその部下で調達部の部長であったKに、テストイベント業務の委託先事業者の選定は本大会を見据 え、テストイベント及び本大会の準備、実施を遂行できる十分な制作能力等がある事業者を選定するため随意契約により発注することが適当であるなどと説明し、組織委員会内部での調整を進めたが、J及びKは、前記会計処理規程に照らし随意契約による調達を承諾しなかった。平成30年1月11日には、本件計画業務については委託先事業者を総合評価方式の 入札によって選定することなどが事実上決定され、同年3月15日には組 織委員会の経営会議で、本件計画業務を入札によって発注することが決定された。その場でCは、本大会に向けては別途検討するが、当然本大会を見据えてのテストイベントであるから、基本的には同じ事業者でいくことを考えている旨発言し、L事務総長も、テストイベントと本番の委託業者は基本的には一致しないと意味がないなどと発言した。 ④ この経営会議での意思決定等を踏まえ、平成30年3月22日の調達管理委員会で、本件計画業務の調達方式を総合評価方式の入札とすることが審議され、その際、今回はテストイベントの計画立案のみであるが、引き続き特別契約(随意契約)にてテストイベントの運営を委託することを想定しているなどといった説明がされた。審議の結果、「事業者の選定にあた っては、技術点70点、価格点30点の総合評価方式とする。なお、本大会における運営業務を見据え、本大会のコスト最適化に向けた提案を などといった説明がされた。審議の結果、「事業者の選定にあた っては、技術点70点、価格点30点の総合評価方式とする。なお、本大会における運営業務を見据え、本大会のコスト最適化に向けた提案を技術点の評価項目に含める」との内容を盛り込んだ議案が了承された。同議案のうち「なお」以下は、事業者が本大会業務を随意契約により受託する際に価格を安くするための仕組みであった。本件計画業務の発注に関する事 業者決定基準においては、満点100点のうち、価格点30点、技術点70点とされ、技術点中20点は「対象競技テストイベント事業実施における予算計画の管理手法及び本大会コスト最適化に向けた提案」に充てられた。この事業者決定基準は入札の際に事業者に公表された。 ⑤ Cは、入札により本件計画業務が発注されることになったことを受け、 東京大会の運営等を遺漏なく行うためには、各事業者の実績等を把握した上で、各事業者に受注してもらいたい競技を伝えたり、その意向を取りまとめたりなどして調整を行うことが必要と考え、平成30年1月25日及び同月30日、被告人ら被告会社の従業者らと打ち合わせ、Cや被告会社の従業者らで、被告会社を除く関係事業者7社を含む複数の事業者の従業 者らと順次面談等のやり取りを行うこととした。Cや被告人らは、以前か ら競技ごとに大会運営実績等を有する事業者を記載した一覧表を作成するなどしていたところ、前記面談等の結果を踏まえ、各事業者の実績、受注希望、本件計画業務全体における委託先事業者のバランス等を踏まえたCの意向等も考慮して、前記一覧表を修正するなどし、平成30年4月2日の打合せを経て、同日までの面談等の結果を集約し、Cが、各事業者と の間で計画業務の入札行動、協業体制等につき認識の一致した会場案件に も考慮して、前記一覧表を修正するなどし、平成30年4月2日の打合せを経て、同日までの面談等の結果を集約し、Cが、各事業者と の間で計画業務の入札行動、協業体制等につき認識の一致した会場案件について整理するなどして前記一覧表の最終更新をした。 イ入札結果等相当数の会場案件において、Cの意向に沿って関係事業者7社中では1社のみの入札が行われ、その結果、全26会場案件中二つを除く24会場 案件でCの意向に沿った事業者が受注し、そのうち16会場案件でCの意向に沿った事業者のみが入札に参加した。また計画業務の発注後、実施業務及び本大会業務が発注されたところ、同一会場の競技の本大会業務は同一の事業者が行った方が効率的であるなどとの理由から別の事業者に本大会業務を委託したサッカー及びマラソンスイミングを除き、計画業務の 受注業者が、その会場案件の実施業務及び本大会業務を随意契約により受注した。 ⑵ 争点に対する判断ア平成29年10月11日のJへの説明資料(前記⑴ア③)や同月24日のTEMと調達部職員との検討時の資料では、委託先の選定要件として 「テストイベント、本大会の準備・実施運営を遂行しうる充分な制作能力を有していること」との記載があるところ、Cは、同年12月時点で本件計画業務の委託先が本件実施業務及び本件本大会業務も行うのが効果的、効率的であることが明らかであり、反対に委託先を変えて大会運営がうまくいくはずもなかったことから、Cら第一局では、本件計画業務、本件実 施業務及び本件本大会業務の3つの契約を一気通貫のものと考えていた 旨供述している。こうした状況等を踏まえ、平成30年3月15日の経営会議の場で、Cの発言を受けてLが発言するなどしている(前記⑴ア③)。 イその上でKは、平成3 貫のものと考えていた 旨供述している。こうした状況等を踏まえ、平成30年3月15日の経営会議の場で、Cの発言を受けてLが発言するなどしている(前記⑴ア③)。 イその上でKは、平成30年1月にTEMとの間で入札によることを事実上決定した頃(前記⑴ア③)、本件計画業務を行った事業者に対し、会計処理規程の要件を満たすとして本件実施業務及び本件本大会業務を随意契 約で発注することになると認識していた、同年3月15日の経営会議にオブザーバーとして出席したところ、同会議でのCやLの発言に反対する出席者はおらず、CやLの発言は基本的には、本件計画業務、本件実施業務及び本件本大会業務は同一事業者であるとの趣旨と認識した、そこで経営会議や調達管理委員会での議論の趣旨に沿って、自身の権限に基づき、最 終的に本件の契約単位ごとの調達方式を決めた旨証言している。このK証言は十分に信用できる。 ウそうすると組織委員会内で、基本的には本件計画業務を受注した事業者が本件実施業務及び本件本大会業務を受注する方針と認識されており、同認識の下、本件計画業務が発注されたと認定できる。前記のとおり、本件 計画業務の事業者決定基準がこの点を踏まえた内容となっていることや、実際ほとんどの会場案件について、本件計画業務の受注事業者が本件実施業務及び本件本大会業務を随意契約により受注しており、そうでない会場案件が生じたのはこれとは全く別の理由等によるものであった(前記⑴イ)こともそのような認定を裏付ける。 エその上でCは、平成29年7月頃以降、被告人やその部下のM等の被告会社関係者らとテストイベント定例会を持って検討していたところ、平成30年3月当時も同定例会を継続的に行い、発注方式に関する第一局と企画財務局との協議や経営会議の状況 、被告人やその部下のM等の被告会社関係者らとテストイベント定例会を持って検討していたところ、平成30年3月当時も同定例会を継続的に行い、発注方式に関する第一局と企画財務局との協議や経営会議の状況等についても同定例会等の機会に被告会社側に共有していたと供述している。この供述は信用でき、被告会社 従業者らは、Cからこの点を伝え聞き組織委員会内の前記ウの方針を認識 したと認定できる。 オさらに、HのNが、平成30年2月の同社役員ミーティングで、「テストイベントと本大会は紐付きでの発注となる」旨発言し、参加者において、組織委員会内でテストイベント関連業務を受注できれば本大会業務も受注できることになっていると理解したこと、Nは同年4月の同社役員合宿 でも、テストイベントについて「基本的に」「計画調査業務」を取った会社がそのまま「本ちゃん」の大会まで行くと思われているなどと発言したことが認められる。これらの事実は、組織委員会内の前記方針が入札参加事業者にとって重要であったことを示すとともに、被告会社ほどまでにはCと緊密な関係になかった事業者においても前記方針を把握していたこと を示すものといえるから、この点も前記エの認定を支える。そして、関係事業者7社中被告会社以外の事業者にとっても、テストイベントが本大会の運営能力向上のため、本大会で使用する競技会場で行うものであることは明らかだったといえるから、本件計画業務の受注事業者が本件実施業務及び本件本大会業務を受注するのが合理的と考えられていたと認められ る。その上で各事業者は、前記事業者決定基準等の公表資料を見て入札に臨み、その際当該基準の趣旨等について疑問等を述べたことはうかがえない。その後も各事業者は、計画業務を受注していないものについて本大会業務受注 各事業者は、前記事業者決定基準等の公表資料を見て入札に臨み、その際当該基準の趣旨等について疑問等を述べたことはうかがえない。その後も各事業者は、計画業務を受注していないものについて本大会業務受注のための営業活動を行うなど、計画業務とその後の業務の受注者が異なり得ることを前提とした活動をしたとうかがわせる客観的な証拠 もない。以上の事情を踏まえれば、被告会社を含む各事業者においても、本件計画業務の受注事業者が本件実施業務及び本件本大会業務を受注する可能性が高いことを前提としていたと認められる。 カ不当な取引制限罪が成立するには、複数事業者間で取決めに基づいた行動をとることを認識ないし予測し、これと歩調を合わせるという意思の連 絡が必要と解されるところ、そのような意思の連絡があるというためには、 事業者相互間で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、直接又は特定の者を媒介として、相互に他の事業者の入札行動等に関する行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りると解され、本件計画業務については、このような意思の連絡が認められ不当な取引制限罪が成立することには被告会社、被告人にも争いがなく、関係証拠によりこ れを認定できる。そして、本件基本合意をした際、組織委員会において、本件計画業務を受注した事業者と同一の事業者が本件実施業務及び本件本大会業務を受注することを基本的な方針としており、各事業者においても、そのような受注となる可能性が相当高いことを前提として、自らの受注の可能性を高めるためCの意向に沿って入札行動等をとることを相当 程度の確実性をもって相互に認識ないし予測した上で、自らも歩調を合わせた入札行動等を行う意思を共有していたといえるから、本件基本合意の対象である「一定の取引分野 て入札行動等をとることを相当 程度の確実性をもって相互に認識ないし予測した上で、自らも歩調を合わせた入札行動等を行う意思を共有していたといえるから、本件基本合意の対象である「一定の取引分野」に本件実施業務及び本件本大会業務も含まれると認定するに十分である。 3 当裁判所の判断 ⑴ 前記のような原判決の認定、判断には、論理則、経験則等に照らし不合理な点は見当たらない。以下、主な所論に鑑み補足して説明する。 ⑵ 所論は、客観証拠によれば、犯行時期とされる平成30年2月頃から同年7月頃までの間に組織委員会が、計画業務の受注事業者が実施業務及び本大会業務も受注するとの方針(本方針)を決めたとは認められない、な どと主張し、その具体的理由として以下のように指摘する。①TEMと財務部及び調達部との協議に係る平成30年1月11日付けメモ(原審甲12添付資料4の2枚目)には、一旦計画業務と実施業務とは切り離して進める、計画業務の受託業者が不十分な場合実施業務の履行に影響が出てリスクとなるためという趣旨の記載があるから、組織委員会はこの時点で、 計画業務の成果を踏まえて実施業務を改めて別契約で発注し、別の事業者 に委託できる仕組みを採用したと認められる。②同月12日のテストイベント定例会の議事録(原審甲366添付資料)には、本大会はプロポーザルまたは総合評価になる予定と記載されているから、この時点では本大会業務をプロポーザル方式又は総合評価方式で選定する可能性が想定されていたと認められる。③同年2月5日のテストイベント関係局長会議で、 Jが本方針に否定的意見を述べ、これが関係各所に共有されている(原審甲11添付資料2-1の2枚目、同2-2の2枚目)。④TEMが当初作成した説明資料(原審甲162添付資 ベント関係局長会議で、 Jが本方針に否定的意見を述べ、これが関係各所に共有されている(原審甲11添付資料2-1の2枚目、同2-2の2枚目)。④TEMが当初作成した説明資料(原審甲162添付資料1の9枚目)には、実施業務につき「随意契約」、本大会業務につき「随意契約?」と記載されていたのに、同年3月15日の経営会議(本経営会議)で使用された説明資料の決定稿(原 審甲140添付資料5-2の10枚目)では両文字が消去されていたところ、本経営会議で本方針を了承してもらうのは困難と考えられたからにほかならない。⑤本経営会議の議事録には実施業務や本大会業務の発注方式について一切記載されていないから、両業務の調達方針は議題になっておらず了承もされていないと認められ、またそうであれば、Lの発言に対す る反対意見が出ないのは当然であり、この事実は本方針の了承、決定があったことの裏付けとはならない。⑥同月23日のテストイベント定例会の議事録には、本方針が了承されたとの記載や調達方針に関する説明の記載が一切ないから、本経営会議で本方針が了承された事実も、被告人らがその情報を共有した事実も認められない。⑦同年4月25日の被告会社幹部 会議の際の説明資料(原審甲338添付資料1-2の1枚目)には、本大会業務が競争方式での調達になる可能性があるとされている。⑧平成31年2月28日の経営会議の議事録(原審甲41添付資料1の2、3枚目)や令和元年9月19日の経営会議の議事録(原審甲46添付資料2の2枚目)等によれば、実施業務を計画業務の受注事業者に発注することが了承 されたのは前者の経営会議であり、本大会業務を実施業務の受注事業者に 発注することが了承されたのは後者の経営会議であったと認められる。 しかしながら、① 発注することが了承 されたのは前者の経営会議であり、本大会業務を実施業務の受注事業者に 発注することが了承されたのは後者の経営会議であったと認められる。 しかしながら、①についてみると、計画業務及び実施業務の受注事業者を同一事業者としたとしても、万が一実施業務の受注に堪えないことが判明した場合に備えておくのはむしろ当然であって、所論指摘の仕組みがあることと本方針とは両立するものといえる。②についてみると、原判決は 原審弁護人の同旨の主張に対し、当該議事録には当時の客観的事実に明確に反する記載があり、会議内容を正確に把握、理解した者による記載とは認められず、記載内容の信用性は認められない旨説示しているところ、この判断に誤りはない。所論は、同議事録に「テストイベント実施業務をやった点はポイントになると思われる」とあり、これは本大会業務が競争性 のある調達方式になるとの説明がなければ成り立たない記載であるなどともいうが、同議事録の正確性を裏付けるものとはいえない。③についてみると、Jの検察官調書(原審甲11)によれば、当該会議における発言は、計画業務の委託先事業者に本大会業務を委託するとしても、テストイベントに関する業務を受注した実績だけでは随意契約によることが許さ れる特別な理由にはならない、IFやNFからの推薦があれば特別な理由とする重要な判断材料の一つになり得る、いずれにしても、組織委員会が随意契約を結ぶには、それが許される特別な理由が必要であり、組織委員会が随意契約を結ぶのはよっぽどのことであると認識してもらいたい旨を述べたものだというのである。要するに、手続を慎重に進めるよう、い わば釘を刺したものであって、本方針を否定するような発言とはいえない。 ④、⑤についてみると、本経営会議 認識してもらいたい旨を述べたものだというのである。要するに、手続を慎重に進めるよう、い わば釘を刺したものであって、本方針を否定するような発言とはいえない。 ④、⑤についてみると、本経営会議の議事要旨によれば、テストイベント業務に関する正式の審議事項は計画業務の発注方式であって、実施業務及び本大会業務は審議事項ではなかったのであり、そこで配布する説明資料から、いまだ協議中であった両業務に関する記載を削除したことは不自然 ではない。その上でCは、第一局ないしTEMで適切と考えており、Kら 調達部側でも共通の認識となっていた本方針を組織委員会の方針とすべく、本経営会議で、本大会に向けては別途検討するが、当然本大会を見据えてのテストイベントであるから、基本的には同じ事業者でいくことを考えている旨発言し、Lも、テストイベントと本番の委託業者は基本的には一致しないと意味がないなどと発言してこれに賛同し、この点に対し反対 意見等もなかったため、以後本方針のように進めていくことが組織委員会内での了解事項になったとみるのが自然かつ合理的である。この点原判決14頁12行目には、本方針につき「同経営会議で決定した方針」との記載があるところ、この部分は表現として適切でないというべきであるが、原判決の認定、判断も同旨と解される。⑥についてみると、原判決は原審 弁護人の同旨の主張に対し、Cはテストイベント定例会「など」の機会に被告会社側に共有していたと供述しており、情報共有が同定例会の機会に限られたとは述べていないこと、前記②でみたように、同定例会議事録の正確性等自体が疑わしいことを理由に同主張を排斥している。ほかにもCが、入札前の調整に関する話はおおっぴらにできるものではなかったので、 OやM以外の者も参加するテ たように、同定例会議事録の正確性等自体が疑わしいことを理由に同主張を排斥している。ほかにもCが、入札前の調整に関する話はおおっぴらにできるものではなかったので、 OやM以外の者も参加するテストイベント定例会とは別に、O、M及び被告会社から組織委員会に出向していたPに絞って打合せを行うことにした旨供述している(原審甲62)ことなども考慮すれば、同定例会議事録に記載がないからといって、所論指摘の事実が認められないことにはならないというべきであり、原判決の判断に誤りはない。⑦についてみると、 Mは、平成30年4月以前より、打合せの場でCらから、計画業務を落札した事業者に問題がなければ、実施業務や本大会業務まで随意契約で委託できるように考えているなどと説明されていた、ただ、自分もOも、これが正式決定したと聞いていたわけでもなく、組織委員会の確約を得ていたわけでもなかった、本大会業務の発注方式について、公の機関からの発注 の際の原則ともいえる「原則コンペ」のトーンで当該説明資料を作成した 旨供述している(原審甲338)。そうすると、組織委員会で正式な決定がされていないにせよ、Cの主導の下で本方針のとおり事態が進んでいることを前提に、情を知らない被告会社幹部にはその旨を秘して報告したということにすぎず、所論指摘の点は原判決の判断を左右するような事情とはならない。⑧についてみると、原判決は原審弁護人の同旨の主張に対し、 当該議事録等の記載をみると、本方針に沿って随意契約により委託する例外的な場合に当たることを確認する内容となっているということができ、当該経営会議の議決等は本経営会議に沿った議決をし、会計処理規程に照らして同会議で決定した方針を正当化したものとみることができる旨説示している。前述のようにこの「 内容となっているということができ、当該経営会議の議決等は本経営会議に沿った議決をし、会計処理規程に照らして同会議で決定した方針を正当化したものとみることができる旨説示している。前述のようにこの「決定」との文言が適切とはいえないもの の、原判決の結論に誤りはない。所論は、当該議事録等には原判決の説示するように読める記載はなく、原判決は「行間」を読んだかのような判示をしているなどというが、既にみたような本経営会議でのCとLの発言やその後の経緯に照らせば、組織委員会内で了解事項になっていた本方針に基づき、所論指摘の各経営会議で正式な決定がなされたとみるのが自然か つ合理的である。以上によれば、所論はいずれも採用できない。 ⑶ 所論は、K証言に信用性を認めた原判決(前記2⑵イ)は誤っていると主張し、その具体的理由として以下のように指摘する。①K証言を裏付ける議事録やメモ等の客観証拠は一切存在しない。②Kは、Jがテストイベント関係局長会議で、本大会業務の随意契約での発注に対し否定的発言を したことについて、上司の発言に重きを置いていないなどと不合理な証言をしている。③Kは、L発言を聞いての個人的な受け止め方を証言しているにすぎず、事実認定に資するような証言とはいえないし、発言者本人であるLは、その供述調書(原審甲26)による限り、計画業務の受注事業者に本大会業務も行わせる趣旨で発言したとの供述は一切しておらず、K 証言はこれと反する。 しかしながら、①についてみると、原判決は原審弁護人の同旨の主張に対し、正式な決定の場合には議事メモを作るがそれ以外はいちいち議事メモを残す習慣はなかった旨のK証言は合理的であり、その信用性に疑問はない旨説示しているところ、この判断に誤りはない。所論は、調達部が組 、正式な決定の場合には議事メモを作るがそれ以外はいちいち議事メモを残す習慣はなかった旨のK証言は合理的であり、その信用性に疑問はない旨説示しているところ、この判断に誤りはない。所論は、調達部が組織として一定の方向性を出したと言いながら、それを示す客観証拠が存在 しないということは考えられないなどというが、所論が問題とするK証言は要するに、本方針につき調達部内で異論はなかったというものにすぎず、議事メモ等がなければ不自然、不合理だなどというものではない。②、③についてみると、上司の発言に重きを置いていないなどの証言部分が、その証言全体の信用性を減殺するようなものでないことは明らかである。そ もそも所論は、Jが否定的発言をしたというが、そのように解されないことは前記⑵の③についてみたとおりであるし、Kも、Jと認識がずれることは多々あったとしながら、基本的に余り否定されたという記憶はない旨証言している。この点Lも、検察官調書(前記原審甲26)で、本経営会議でのCの発言に理解を示した上で、計画業務の委託先事業者の選定に当 たっては本大会業務の遂行能力のある事業者を選べるようにしなければならないと話した、ただ、随意契約とするには特別の理由が必要であり、調達管理委員会でその適否を厳密に審査することとしていたので、随意契約により委託するに際して、その都度特別な理由があることを確認した上で同委員会の審査を経る必要があることに変わりはなかった旨供述して おり、これによれば、JとLとは、特別な理由につき慎重に検討しなければならないという点で一致した考えであったといえる。そして、こうしたLの供述、本経営会議の録音反訳文から明らかな、テストイベントの委託業者と本番の委託業者は基本的には一致しないと意味がないとのL発言によれば、その 点で一致した考えであったといえる。そして、こうしたLの供述、本経営会議の録音反訳文から明らかな、テストイベントの委託業者と本番の委託業者は基本的には一致しないと意味がないとのL発言によれば、その趣旨は、基本的に本件計画業務、本件実施業務及び本件本 大会業務は同一事業者であることが望ましいというものであったと認め られ、そのように認識したとのK証言も十分信用できるといえる。所論はいずれも採用できない。 ⑷ 所論は、実施業務及び本大会業務についても本件基本合意があったとした原判決は誤っている、などと主張し、その具体的理由として以下のように指摘する。①Cは本方針を被告会社側に伝えた具体的状況について何も 供述しておらず、むしろ、伝えていたとすると矛盾する議事録等の客観証拠がある。②原判決は組織委員会の方針に関するHの認識状況を認定しているが、被告会社側が認識もしていないH内のやり取りによって、被告会社側の認識が認定できるものではない。③仮に各事業者が、テストイベント業務の受注事業者が本大会業務も受注するのが合理的だと理解したと しても、組織委員会が実施業務及び本大会業務まで同一事業者に発注するだろうとの見通しが立つものではなく、原判決は各事業者の主観的な期待感と本方針に関する事実認識とを混同している。④計画業務の入札で各事業者が公表資料に疑義を呈さなかったとの原判決の説示は、それがどのように各事業者の合意対象を画する理由となるのかが不明である。⑤被告会 社は、計画業務の成果物の納品直後という、およそ本大会業務の営業活動を行うような時期でもなければそのような余裕もない時期に、本大会業務について膨大な業務の見積りを一方的に求められ、準備に忙殺されていたにすぎないから、本大会業務受注のための営業活動をして の営業活動を行うような時期でもなければそのような余裕もない時期に、本大会業務について膨大な業務の見積りを一方的に求められ、準備に忙殺されていたにすぎないから、本大会業務受注のための営業活動をしていないことが、本大会業務についても本件基本合意があったことを裏付けるなどとはい えない。 しかしながら、①についてみると、Cと被告人らがテストイベント定例会や、被告会社関係者に限った打合せを継続的に行っていた状況、本方針の重要性等に鑑みれば、本方針を伝えたとのCの供述は、その具体的状況を供述していない点を踏まえても十分信用できるし、所論のいう客観証拠 がCの供述と矛盾するものではないことは、前記⑵での検討から明らかで ある。②についてみると、原判決(前記2⑵オ)はH内でのNの発言等が、入札参加事業者にとって本方針が重要であったこと、被告会社ほどにCと緊密でなかった事業者(H)すら本方針を把握していたことを示しており、このことは、被告人ら被告会社従業者がCから本方針を伝え聞いて認識したとの認定を支えるとしたものである。この判断に誤りはないところ、H 内のやり取りから被告会社側の認識を認定しているのでないことは明らかであって、所論は原判決を正解しないものである。③についてみると、組織委員会内でテストイベント業務の発注業務に中心的に関与していたCと、東京大会全体の運営に対して大きな影響力を有していた被告会社側から本方針を伝え聞いたのであれば、各事業者が本大会業務までの一貫し た受注を期待して本件基本合意に参加したとしても何ら不自然、不合理ではない。④についてみると、原判決は、本方針を踏まえた内容となっている事業者決定基準等の公表資料を見て入札に臨んだ各事業者が、この内容に疑問等を述べていないことをもって としても何ら不自然、不合理ではない。④についてみると、原判決は、本方針を踏まえた内容となっている事業者決定基準等の公表資料を見て入札に臨んだ各事業者が、この内容に疑問等を述べていないことをもって、各事業者も本方針のとおりになる可能性が高いことを前提としていたと推認させる事情の一つとした上で、 各事業者が本方針を前提にして互いに歩調を合わせた行動を取る意思を共有したといえるから、本件基本合意の対象に本件実施業務及び本件本大会業務も含まれると認定したものと解されるのであり、この判断に誤りはない。⑤についてみると、原判決は、時期を限らずおよそ本大会業務受注のための営業活動があったとはうかがわれないとしている上、真実、本大 会業務が本件基本合意の内容となっていなかったのであれば、最も利益を上げられるはずの本大会業務について、随意契約により受注を得るべく営業活動をしていないことこそが不自然というべきである。所論は、実施業務も始まっていないうちに、組織委員会からいきなり本大会業務の見積書の提出を求められたなどというが、そうであればむしろ、計画業務を受注 した事業者が本大会業務も受注することが前提となっていたことを裏付 ける事情といえる。所論はいずれも採用できない。 ⑸ その他所論の種々主張するところを検討してみても、原判決の判断に誤りは見いだせない。 各論旨は理由がない。 第3 各訴訟手続の法令違反の主張について 1 各論旨は要するに、原審裁判所の訴訟手続には、①本経営会議におけるL発言の意味内容等の重要な点について争点整理をせず、釈明権を行使する義務を怠った違法があり、また、②原審弁護人によるLの証人尋問請求や東京都の調査報告書(原審弁26)の取調請求を却下した点に裁量権を著しく逸脱した違法があっ について争点整理をせず、釈明権を行使する義務を怠った違法があり、また、②原審弁護人によるLの証人尋問請求や東京都の調査報告書(原審弁26)の取調請求を却下した点に裁量権を著しく逸脱した違法があって、これらの違法が判決に影響を及ぼすことは 明らかである、というのである。 2⑴ 所論は①について、原審検察官が本経営会議でのL発言を、組織委員会として本方針を了承するとの意思決定があったことの決定的な根拠とし、原審弁護人はL発言を争うことを明示したのに、原審裁判所は原審検察官をして、どの証拠で何を立証することにより本経営会議での本方針了承の 事実が認定できると主張するのか、Lが何について証言することができるのか等を明らかにさせず、争点の明確化や顕在化、立証手段の整理や必要性の吟味を著しく怠った違法がある、などと主張する。 ⑵ しかしながら、原審検察官は冒頭陳述で、組織委員会の大会準備運営第一局と企画財務局調達部は、計画業務の委託先事業者選定後に実施業務や 本大会業務の委託先事業者を改めて選定することが、時間及び費用の面でかえって不利又は不適切なこととなる旨の認識を共有しながら協議を持っており、遅くとも平成30年1月11日頃までには、特段の問題がない限り、計画業務の委託先事業者に実施業務及び本大会業務を随意契約により委託するとの方針を固めたこと、それにより、第一局と調達部においては、 計画業務の入札が事実上、実施業務及び本大会業務の委託先事業者の選定 を兼ねるものと位置付けられ、そして組織委員会では、本経営会議において本方針が了承された旨や、組織委員会は本方針を踏まえ、実施業務及び本大会業務における契約金額が高止まりとならないようにするため、計画業務の入札参加業者に実施業務及び本大会業務のコスト抑制方 において本方針が了承された旨や、組織委員会は本方針を踏まえ、実施業務及び本大会業務における契約金額が高止まりとならないようにするため、計画業務の入札参加業者に実施業務及び本大会業務のコスト抑制方法の提案を課した旨を主張している(冒頭陳述要旨6、7頁)。これによれば原審検察 官は、L発言を本方針了承の決定的な根拠であるなどとはしておらず、本経営会議の前後の経緯から同会議で本方針が了承されたと認められる旨主張し、その経緯を立証する意図であったといえる。また、Lの検察官調書(前記原審甲26)の同意部分等の証拠によれば、本経営会議でのL発言の内容は録音反訳文から客観的に明らかであった上、本方針が第一局ない しTEMや調達部で共通の認識となっていたところ、本経営会議でのC発言、それを受けたL発言の内容や出席者の様子等から、更に組織委員会における了解事項ともなっていったと認められることは既にみたとおりである。そうすると、原審裁判所がL発言に関し、争点整理をするべきであったなどとはいえない。 3⑴ 所論は②について、本経営会議でのL発言の意味内容やそれを踏まえた議論の内容等を明らかにするためには、Lが証人として最も的確であることは明白であり、しかも、Lが原審検察官の見立てのような証言をしない蓋然性があった上、組織委員会の後続組織である清算法人の回答を載せた前記調査報告書には、むしろ原審検察官の主張を否定するような回答が 記載されていたから、Lの証人尋問を実施し前記調査報告書を取り調べることは、原審弁護人の主張の当否を判断するために必要不可欠であったのに、原審裁判所はこれらの取調請求を却下したのであり、証拠の必要性、関連性の判断を誤り、被告会社らの防御権を著しく侵害した違法がある、などと主張する。 ⑵ しか めに必要不可欠であったのに、原審裁判所はこれらの取調請求を却下したのであり、証拠の必要性、関連性の判断を誤り、被告会社らの防御権を著しく侵害した違法がある、などと主張する。 ⑵ しかしながら、前記2でみたとおり、L発言の内容が客観的に明らかで あったことや、本方針が組織委員会において了解事項となった経緯に照らせば、Lの証人尋問が必要不可欠であったとはいえず、また、L発言に関し請求された前記調査報告書の取調べも必要不可欠であったとはいえないから、それらの取調請求を却下した原審裁判所の判断に違法があったとは認められないというべきである。なお所論は、その一方で原審裁判所が、 原審検察官の請求したKを証人採用して尋問を行った点について、不公平であるなどとも主張する。しかしながら、これに関し原審検察官が示した立証趣旨は、「平成30年3月頃に想定していた、テストイベント実施等業務及び本大会運営等業務の発注方式及び委託先、テストイベント実施等業務及び本大会運営等業務の発注方式決定時の組織委員会内における議論 の状況並びにその他関係事項」というものであり、調達部の部長という本件当時のKの立場等も考慮すれば、前記2でみたような原審検察官の冒頭陳述の内容に関わる証人として不必要、不相当であったとはいえない。Lの証人尋問請求及び前記調査報告書の取調請求を却下したことが違法ではないことと併せ考慮すれば、Kの証人尋問請求を採用したことが不公平 などとはいえないというべきである。 4 その他所論の指摘する点を考慮しても、原審裁判所の訴訟手続に違法があったとは認められない。 各論旨は理由がない。 第4 各量刑不当の主張について 1 各論旨は要するに、被告会社を罰金3億円に、被告人を懲役2年及び4 原審裁判所の訴訟手続に違法があったとは認められない。 各論旨は理由がない。 第4 各量刑不当の主張について 1 各論旨は要するに、被告会社を罰金3億円に、被告人を懲役2年及び4年間の執行猶予に処した原判決の量刑は重過ぎて不当である、というのである。 2 所論は次のように主張するが、いずれも採用できない。 ⑴ 所論は、被告人が調達方針の定まっていない時期に事業者の割振りを行 ったのは、オリンピックを成功させるべく組織委員会の不合理な要請に少 しでも応えようとしたからであるし、計画業務が競争方式となった以降も、Cから協力を依頼され受けざるを得なかったのであり、こうした経緯や動機に関わる重要な犯情を考慮しなかった原判決は不当である、などと主張する。 しかしながら、原判決も東京大会を成功させたいとの被告人らなりの思 いがあったことは考慮している。また被告人は、Cから調整への協力を求められたのに対し、再考を促すなどすらせず、被告会社の利益を図る目的もあって安易にこれに応じたとうかがわれるのであり、被告会社として協力せざるを得なかったとしても、さほど酌むべき事情とはならないというべきである。こうした点につき説示していない原判決が不当とはいえない。 ⑵ 所論は本件について、被告会社ら事業者側は主導しておらず、Cの他に組織委員会幹部2名も受注調整等に関与するなど、組織委員会が主導したとみるほかないのに、同人らは刑事訴追を免れており、このような不公平な訴追権の行使があったとの事情を被告会社及び被告人に対する有利な事情として考慮しなかった原判決は不当である、などと主張する。 しかしながら、そもそも原判決は被告会社ら事業者側が本件を主導したなどとはしていないのであって、たとえ 告人に対する有利な事情として考慮しなかった原判決は不当である、などと主張する。 しかしながら、そもそも原判決は被告会社ら事業者側が本件を主導したなどとはしていないのであって、たとえC以外の幹部が関与していたとしても、特段、事業者側である被告会社らに有利に考慮すべき事情とはならないから、この点について説示していない原判決が不当とはいえない。 ⑶ 所論は、原判決が実績額として指摘した約437億円の中には、談合と は無関係に組織委員会の都合で被告会社が受注させられた業務に係る支払実績も含まれており、その分については被告会社及び被告人を非難する合理的理由がないから、原判決が同金額を認定して談合の規模を論じ、被告会社らの量刑の理由としたことは誤りである、などと主張する。 しかしながら原判決は、本件が大規模な入札談合事案であるといえるこ との根拠の一つとして、合意等の対象となった契約等の規模は委託先事業 者に対して支払われた実績額で合計約437億円と多額に及んでいると説示しているにすぎないし、一方で、一連の業務を受注したことによる被告会社の売上額が証拠上60億円を上回るものであった旨を説示していることに照らせば、約437億円との金額を被告会社らの具体的な量刑の根拠としているとは解されないから、原判決が誤っているとはいえない。 ⑷ 所論は、被告会社及び被告人が本大会業務も含め、経費削減や適正価格の維持について組織委員会に全面協力し、談合によって不当に高い利益を得ようとしたこともないとの事情を考慮していない原判決は不当である、などと主張する。 しかしながら、原判決も説示するように、被告会社及び被告人は公正か つ自由であるべき競争を阻害したことについて非難されているのであり、組織委員会に協力し 判決は不当である、などと主張する。 しかしながら、原判決も説示するように、被告会社及び被告人は公正か つ自由であるべき競争を阻害したことについて非難されているのであり、組織委員会に協力したなどの事情があったとしても、さほど酌むべきものとはいえない。また原判決は、被告会社らが談合によって不当に高い利益を得ようとしたなどとは評価していないし、そうではなかったことが特に酌むべき事情となるわけでもない。原判決に所論指摘のような不当な点は ない。 3 その他所論の主張する点を考慮しても、原判決の量刑判断は、基礎とした事情及びその評価に不合理な点はなく、その量刑が重過ぎて不当であるとはいえない。 各論旨は理由がない。 第5 結論よって、刑訴法396条により、主文のとおり判決する。 令和7年7月31日東京高等裁判所第4刑事部 裁判長裁判官家令和典 裁判官早川幸男 裁判官安藤祥一郎
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