主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 控訴人が平成12年4月20日付けで被控訴人に対してした別表1記載の土地にかかる平成12年度分の固定資産税の固定資産課税台帳の登録価格に関する審査の申出について,被控訴人が平成12年5月30日付けでした審査申出を棄却する旨の決定を取り消す。 2 被控訴人控訴棄却第2 事案の概要 1 本件は,別表1記載の土地(本件土地)の共有持分を有する控訴人が,本件土地にかかる平成12年度分の固定資産税の固定資産課税台帳に登録された価格に関し,被控訴人に審査の申出をしたが,審査申出を棄却する旨の決定を受けたため,被控訴人に対し,棄却決定の取消しを求めた事案である。 原判決は,控訴人の請求を棄却したので,これに対して控訴人が不服を申し立てたものである。 2 以上のほかの事案の概要は,次のとおり付加するほか,原判決の該当欄記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の当審における主張)(1) 原判決は,本件審査決定手続は適法に行われたと認定したが,これは,事実を誤認したものである。本件土地にかかる平成12年度分の固定資産税の固定資産課税台帳は,縦覧手続を経ておらず,登録された価格は無効である。 (2) 原判決は,固定資産課税台帳に登録された金額は固定資産評価基準に則り評価されたもので適法であるとしたが,これは誤りである。土地については,地上権,借地権等の利用収益権の価格分にのみ課税すべきであり,利用収益権の価格を評価すべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次に記載するほか(原判決の判示と本判決の判示が抵触するときは,本判決の 用収益権の価格を評価すべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次に記載するほか(原判決の判示と本判決の判示が抵触するときは,本判決の判示による趣旨である。),原判決の理由記載と同一であるからこれを引用する。 (控訴人の当審における主張について)(1) 台帳の縦覧手続に対する不服について地方税法432条1項によって,固定資産評価審査委員会に対する不服申立事項は,固定資産課税台帳に登録された価格についての事項に限られており,評価の手続についての不服を申し立てることはできない。評価の手続についての不服は,固定資産税の賦課処分を争う方法によるべきである。 したがって,固定資産課税台帳の縦覧を経ているかどうかは不服申立事項にあたらず,このことについて被控訴人が判断しなくても,審査決定手続の瑕疵にはあたらない。また,登録された価格が無効であるなどということはできない。 控訴人の当審における主張の(1)は,採用することができない。(2) 固定資産の価格についてア固定資産評価基準による価格評価地方税法403条1項によれば,市町村長は,同法388条1項の固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならず,乙3によれば,同項により定められた固定資産評価基準では,市街地宅地の評価を次のようにするものとしている。 a 市町村の宅地を普通商業地区,普通住宅地区,中小工場地区等に区分し,当該各地区について,その状況が相当に相違する地域ごとに,その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定する。 b 標準宅地の適正な時価を求め,これに基づいて当該標準宅地の沿接する主要な街路について路線価を付設し,これに比準して主要な街路以外の街路の路線価を付設する。 標準宅地の適正時価を求めるにつ する。 b 標準宅地の適正な時価を求め,これに基づいて当該標準宅地の沿接する主要な街路について路線価を付設し,これに比準して主要な街路以外の街路の路線価を付設する。 標準宅地の適正時価を求めるについて,経過措置によれば,宅地の評価にあたっては,鑑定評価価格等を活用し,これらの価格の7割を目途とすることとされている。 c 路線価を基礎として「画地計算法」を適用して,各筆の評点数を付設し,これに評点1点あたりの価額(1円)を乗じて評価額を求める。 乙4の1ないし5及び弁論の全趣旨によれば,加茂市長は,本件土地について,上記固定資産評価基準に則り,評価を行ったことが認められる。 固定資産評価基準による価格の評価は,多数にのぼる対象土地について,逐一鑑定するなどの手数と費用をかけて評価することに代えて,地域ごとにいわば全体を代表する土地(標準宅地)を決めて,これを正確に評価し,残りの土地については,これをもとに類推して,価格を決める仕組みである。課税にかかるコストを低減しながら,ある程度の幅での価格の妥当性を確保する手法として,法によって認められたものであるから,この基準によって評価されていれば,その価格に一応の妥当性があるものと推認することができる。しかしながら,例えば標準宅地の選定や価格の判定においては,一義的に決定し難い様々な要素や価値判断が混入してくるのであり,この基準によって評価されたというだけでは,常に評価の妥当性が保証されるものでもないものである。したがって,訴訟における審理や評価審査委員会における審査の結果,この基準による評価と異なる価格をもって相当と認められる場合には,審理や審査の結果相当と認められる価格に修正しなければならないものである。 そこで,以下この見地に立って,価格の妥当性を検証することとする。 イ固定資産税と土地の をもって相当と認められる場合には,審理や審査の結果相当と認められる価格に修正しなければならないものである。 そこで,以下この見地に立って,価格の妥当性を検証することとする。 イ固定資産税と土地の収益性土地は,本来,それを利用することによって収益を生み出すことが予定されているものである。土地を売買することによって収益を生み出すことがあるが,それは本来の姿ではない。国民の多くが土地売買による収益に期待して土地の利用をおろそかにすれば,国民全体の経済活動は成り立ち得なくなる。したがって,土地の売買価格も,土地を買い受けた者がこれを利用することによってどれだけの収益を得ることができるかとの観点から定められるべきものであって,土地の収益性からかい離したものであってはならないはずである。しかし,バブル経済時を中心として,我が国においては,土地の売買価格が,土地の収益性からかい離し,これを転売すればどれだけの収益を得ることができるかとの観点から定められてきた。 一方,固定資産税は,原則として,土地を所有することを課税の根拠とする税金である。 土地の取引価格が,収益性を反映したものであるときは,ある土地について,類似の土地から上がる収益を参考にしなくとも,類似の土地の取引価格を参考にすれば,当該土地の価格を,簡便かつ正確に把握することができた。そして,その価格をもとに土地を所有することを課税の根拠とする税金を課しても,土地所有者に対し過酷な結果とはならなかった。しかし,土地の取引価格がその土地の収益性からかい離して定められているときは,ある土地について,類似の土地の取引価格から,課税の基準となる土地価格を算定することは,土地所有者に対し過酷な結果をもたらしかねない。すなわち,課税の根拠をその土地の所有に置くということは,その土地が誰に帰属するかにか の土地の取引価格から,課税の基準となる土地価格を算定することは,土地所有者に対し過酷な結果をもたらしかねない。すなわち,課税の根拠をその土地の所有に置くということは,その土地が誰に帰属するかにかかわりなく,一定の税金を課すことを意味する。もし,その税金を支払うのに土地から上がる収益で足りなければ,持主は税金を支払うために,その土地を売却せざるをえない。しかし,その土地を買い受けた者も,その土地所有を根拠に,前所有者と同額の税金を課される。しかもその税金が土地から上がる収益では支払えないのであるから,その者もまた,土地を売却して税金を支払わざるをえない。このような事態になれば,土地を所有すること自体が禁止されたのと同じことになる。したがって,固定資産税のように,課税の根拠を土地の所有に置く税金の場合は,その税額は土地の収益力の範囲内に限定されねばならないものである。 そしてまた,土地の収益力に対する課税の割合(封建時代に五公五民などといわれた割合)は,土地利用の採算性を維持し,国民全体の経済活動を委縮させないように,法の予定する一定の範囲(現行法の固定資産税(1.4%)と都市計画税(0.2~0.3%)の税率と民事法定利率(5%)とを前提とすると,法の予定する課税割合は,ほぼ三公七民の程度であると考えられる。)に納めなければならないものである。 ところが,土地の収益性とかい離した取引価格を基準に土地を評価し課税したのでは,課税の割合が土地の収益力のうちの法の予定する一定割合の範囲内に限定されているかどうかが不明であり,課税の適正を担保することができない。したがって,固定資産税の課税対象である土地の評価は,その制度本来の趣旨からして,土地の収益力を資本還元した価格(収益還元価格)を上限とすべきものである。そこで,土地の取引価格がその土地の きない。したがって,固定資産税の課税対象である土地の評価は,その制度本来の趣旨からして,土地の収益力を資本還元した価格(収益還元価格)を上限とすべきものである。そこで,土地の取引価格がその土地の収益性からかい離して定められているおそれがあるときは,別途,土地の収益性を検証することが必要である。 ウ土地の収益性からみた検証乙10によれば,本件においては,標準宅地の価格を鑑定するにあたり,取引事例比較法,収益還元法,原価法のうち,「加茂市内には工場の賃貸事例はなく,賃料水準も把握できない」との理由で収益還元法は行われず,また,「採用可能な造成事例が把握できなかった」とのことで原価法も行われず,取引事例比較法のみによって評価が行われたこと,採用された取引事例は,平成8年2月,同年6月及び平成9年2月のものであったことが認められる。平成8年や9年の取引価格であれば,土地が投機の対象としてとらえられている傾向は否めず,また,平成8年や9年の取引事例しか参考にできないことは,当該地域の経済活動が低調であることを示している。そうであるとすると,平成8年や9年の価格を参考にするのでは,これらの価格が現在の土地の収益性を反映しているかどうかは疑問であるといわざるをえない。 これに対し,乙9,11によれば,本件土地と国道403号線を挟んだ反対側に位置する土地1785平方メートルが,平成12年11月に1平方メートルあたり年額2178円の賃料で医薬品・日用雑貨品小売用店舗とその駐車場として賃貸されたことが認められる。この金額が,土地に対し,年5パーセントの収益をもたらしているとすれば,土地の価格は,賃料を年5パーセントの利廻りで資本還元して(算式=2178×100÷5),1平方メートルあたり4万3560円ということになる。 本件土地のうち別表1の9番の土 たらしているとすれば,土地の価格は,賃料を年5パーセントの利廻りで資本還元して(算式=2178×100÷5),1平方メートルあたり4万3560円ということになる。 本件土地のうち別表1の9番の土地を除く8筆の1平方メートルあたりの評価額は4万0649円と評価されているので,この価格は,上記の賃貸事例から算定した収益還元価格と隔たっていないということができる。 もっとも,本件土地と国道を挟んだ反対側の土地とでは,同じく国道に面するといってもその有用性が同程度であるかは検討の余地がある。また,本件土地は,広い面積を持ち(9番を除いて合計2710.72平方メートル),形としては不整形であるから,その土地が同一の単価で賃貸することができるかも検討の余地がある。しかしながら,これらの点について,控訴人は適切な判断資料を提出しておらず,本件土地と国道を挟んだ反対側の土地との違いをうかがわせる証拠はない。そこで,本件では,本件土地のうち上記8筆の土地が同一の賃料で賃貸できるものとして考えるほかはない。 なお,乙11によれば,本件土地のうち上記8筆の土地の年間の税金は1平方メートルあたり固定資産税が426円,都市計画税が81円,合計507円であることが認められるから,2178円の賃料が得られるとすれば,税金の割合は約23パーセントであって,土地所有者にとって過酷な割合ということはできない。 したがって,結果としては,標準宅地の鑑定評価額から算定された本件土地の評価額は,本件土地の収益性から考えても,一応適法なものと認めることができる。 控訴人の当審における主張の(2)は,独自の見解を述べるもので採用することはできない。 2 したがって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当で,本件控訴は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第19民事部 (2)は,独自の見解を述べるもので採用することはできない。 2 したがって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当で,本件控訴は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第19民事部裁判長裁判官淺生重機裁判官西島幸夫裁判官江口とし子
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